(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064701
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】成形装置、及び金属部材
(51)【国際特許分類】
B21D 22/02 20060101AFI20240507BHJP
B21D 26/047 20110101ALI20240507BHJP
【FI】
B21D22/02 A
B21D26/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173473
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 遼平
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅史
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA30
4E137BA05
4E137BB01
4E137BB03
4E137CA02
4E137CA15
4E137CA21
4E137DA03
4E137EA09
4E137EA27
4E137EA36
4E137GA12
4E137GA15
(57)【要約】
【課題】金属部材と他部材との接着強度を向上できる成形装置、及び金属部材を提供する。
【解決手段】成形装置1は、アルミニウム合金の金属パイプ材料40の成形を行う金型11,12を備える。金型11,12の表面には凹凸形状70が形成されている。これにより、成形装置1は、成形された金属パイプ41に凹凸形状71を転写する。金属パイプ41の凹凸形状71の表面に接着剤を塗布すると、凹凸形状71によって表面積が拡大し、凹部に接着剤が入り込むことによるアンカー効果が得られる。そのため、アルミニウム合金の金属パイプ41と他部材との接着強度を高めることができる。以上より、金属パイプ41と他部品との接着強度を向上できる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金の金属材料を成形する成形装置であって、
前記金属材料の成形を行う金型を備え、
前記金型の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する、成形装置。
【請求項2】
前記金型は、加熱された前記金属材料の成形を行う、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記金属部材はフランジ部及びパイプ部を有し、
少なくとも前記フランジ部に前記凹凸形状を転写する、請求項1に記載の成形装置。
【請求項4】
前記金型の前記表面の前記凹凸形状は、ショットブラストまたはレーザで形成される、請求項1に記載の成形装置。
【請求項5】
金属材料を成形する成形装置であって、
前記金属材料の成形を行う部材を備え、
前記部材の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する、成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載の成形装置によって前記凹凸形状が転写された金属部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、及び金属部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料を成形する成形装置として、特許文献1に記載されたものが知られている。この成形装置は、金属材料をプレスすることによって所望の形状の部品を成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような成形装置で成形された部品は、所定の構造物を構築するために用いられる。例えば、自動車においては、燃費向上や環境保護のために軽量化が進められている。そのための方法として、部材ごとに適した材料を選択する方法が採用される場合がある。この場合、異種材料同士を接合することが求められる。アルミニウム合金は、他の金属材料よりも比重が軽いため、軽量材料として用いられる。アルミニウム合金の金属部材と他の金属部材との接合には接着剤が多く用いられる。しかし、アルミニウム合金の金属部材の表面が平滑である場合、密着強度を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、金属部材と他部材との接着強度を向上できる成形装置、及び金属部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る成形装置は、アルミニウム合金の金属材料を成形する成形装置であって、金属材料の成形を行う金型を備え、金型の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する。
【0007】
この成形装置は、アルミニウム合金の金属材料の成形を行う金型を備える。金型の表面には凹凸形状が形成されている。これにより、成形装置は、成形された金属部材に凹凸形状を転写する。金属部材の凹凸形状の表面に接着剤を塗布すると、凹凸形状によって表面積が拡大し、凹部に接着剤が入り込むことによるアンカー効果が得られる。そのため、アルミニウム合金の金属部材と他部材との接着強度を高めることができる。以上より、金属部材と他部品との接着強度を向上できる。
【0008】
金型は、加熱された金属材料の成形を行ってよい。この場合、加熱された金属材料は常温時よりも変形抵抗が小さいため、金型は低負荷で凹凸形状を金属部材に転写することができる。
【0009】
金属部材はフランジ部及びパイプ部を有し、少なくともフランジ部に凹凸形状を転写してよい。フランジ部は他部材との接合が行われる箇所であるため、当該箇所における接着強度を向上できる。
【0010】
金型の表面の凹凸形状は、ショットブラストまたはレーザで形成されてよい。この場合、金型の表面に容易に凹凸形状を形成することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る成形装置は、金属材料を成形する成形装置であって、金属材料の成形を行う部材を備え、部材の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する。
【0012】
この成形装置によれば、上述の成形装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る金属部材は、上述の成形装置によって凹凸形状が転写された金属部材。
【0014】
この金属部材によれば、他部材との接着強度を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属部材と他部材との接着強度を向上できる成形装置、及び金属部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2(a)は、加熱膨張ユニットを示す概略側面図である。
図2(b)は、ノズルが金属パイプ材料をシールした時の様子を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)(b)は、成形の様子を示す断面図である。
【
図4】成形された金属パイプの具体的な例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は凹凸形状が形成されていない金型の表面を示す断面図であり、
図6(b)は凹凸形状が形成された金型の表面を示す断面図である。
【
図7】金型の凹凸形状を金属パイプに転写する手順を示す断面図である。
【
図8】金型の凹凸形状を金属パイプに転写する手順を示す断面図である。
【
図9】金型の凹凸形状を金属パイプに転写する手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る成形装置1の概略構成図である。
図1に示すように、成形装置1は、ブロー成形によって中空形状を有する金属パイプを成形する装置である。本実施形態では、成形装置1は、水平面上に設置される。成形装置1は、成形型2と、駆動機構3と、保持部4と、加熱部5と、流体供給部6と、冷却部7と、制御部8と、を備える。なお、本明細書において、金属パイプ材料40(金属材料)は、成形装置1での成形完了前の中空物品を指す。金属パイプ材料40は、焼入れ可能な鋼種のパイプ材料である。また、水平方向のうち、成形時において金属パイプ材料40が延びる方向を「長手方向」と称し、長手方向と直交する方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0019】
成形型2は、金属パイプ材料40から金属パイプ41(
図5参照)を成形する型であり、上下方向に互いに対向する下側の金型11及び上側の金型12を備える。下側の金型11及び上側の金型12は、鋼鉄製ブロックで構成される。下側の金型11及び上側の金型12のそれぞれには、金属パイプ材料40が収容される凹部が設けられる。下側の金型11と上側の金型12は、互いに密接した状態(型閉状態)で、各々の凹部が金属パイプ材料を成形すべき目標形状の空間を形成する。従って、各々の凹部の表面が成形型2の成形面となる。下側の金型11は、ダイホルダ等を介して基台13に固定される。上側の金型12は、ダイホルダ等を介して駆動機構3のスライドに固定される。
【0020】
駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12の少なくとも一方を移動させる機構である。
図1では、駆動機構3は、上側の金型12のみを移動させる構成を有する。駆動機構3は、下側の金型11及び上側の金型12同士が合わさるように上側の金型12を移動させるスライド21と、上記スライド21を上側へ引き上げる力を発生させるアクチュエータとしての引き戻しシリンダ22と、スライド21を下降加圧する駆動源としてのメインシリンダ23と、メインシリンダ23に駆動力を付与する駆動源24と、を備えている。
【0021】
保持部4は、下側の金型11及び上側の金型12の間に配置される金属パイプ材料40を保持する機構である。保持部4は、成形型2の長手方向における一端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、成形型2の長手方向における他端側にて金属パイプ材料40を保持する下側電極26及び上側電極27と、を備える。長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27は、金属パイプ材料40の端部付近を上下方向から挟み込むことによって、当該金属パイプ材料40を保持する。なお、下側電極26の上面及び上側電極27の下面には、金属パイプ材料40の外周面に対応する形状を有する溝部が形成される。下側電極26及び上側電極27には、図示されない駆動機構が設けられており、それぞれ独立して上下方向へ移動することができる。
【0022】
加熱部5は、金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、金属パイプ材料40へ通電することで当該金属パイプ材料40を加熱する機構である。加熱部5は、下側の金型11及び上側の金型12の間にて、下側の金型11及び上側の金型12から金属パイプ材料40が離間した状態にて、当該金属パイプ材料40を加熱する。加熱部5は、上述の長手方向の両側の下側電極26及び上側電極27と、これらの電極26,27を介して金属パイプ材料40へ電流を流す電源28と、を備える。なお、加熱部は、成形装置1の前工程に配置し、外部で加熱をするものであっても良い。
【0023】
流体供給部6は、下側の金型11及び上側の金型12の間に保持された金属パイプ材料40内に高圧の流体を供給するための機構である。流体供給部6は、加熱部5で加熱されることで高温状態となった金属パイプ材料40に高圧の流体を供給して、金属パイプ材料40を膨張させる。流体供給部6は、成形型2の長手方向の両端側に設けられる。流体供給部6は、金属パイプ材料40の端部の開口部から当該金属パイプ材料40の内部へ流体を供給するノズル31と、ノズル31を金属パイプ材料40の開口部に対して進退移動させる駆動機構32と、ノズル31を介して金属パイプ材料40内へ高圧の流体を供給する供給源33と、を備える。駆動機構32は、流体供給時及び排気時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部にシール性を確保した状態で密着させ、その他の時にはノズル31を金属パイプ材料40の端部から離間させる。なお、流体供給部6は、流体として、高圧の空気や不活性ガスなどの気体を供給してよい。また、流体供給部6は、金属パイプ材料40を上下方向へ移動する機構を有する保持部4とともに、加熱部5を含めて同一装置としても良い。
【0024】
保持部4、加熱部5、及び流体供給部6の構成要素は、ユニット化された加熱膨張ユニット150として構成されてよい。
図2(a)は、加熱膨張ユニット150を示す概略側面図である。
図2(b)は、ノズル31が金属パイプ材料40をシールした時の様子を示す断面図である。
【0025】
図2(a)に示すように、加熱膨張ユニット150は、上述の下側電極26及び上側電極27と、各電極26,27を搭載した電極搭載ユニット151、上述のノズル31及び駆動機構32と、昇降ユニット152と、ユニットベース153と、を備える。電極搭載ユニット151は、昇降フレーム154と、電極フレーム156,157と、を備える。電極フレーム156,157は、各電極26,27を支持して移動させる駆動機構60の一部として機能する。駆動機構32は、ノズル31を駆動させ、電極搭載ユニット151と共に昇降する。駆動機構32は、ノズル31を保持するピストン61と、ピストンを駆動させるシリンダ62とを備えている。昇降ユニット152は、ユニットベース153の上面に取り付けられる昇降フレームベース64と、これらの昇降フレームベース64によって、電極搭載ユニット151の昇降フレーム154に対して昇降動作を付与する昇降用アクチュエータ66とを備えている。昇降フレームベース64は、ユニットベース153に対する昇降フレーム154の昇降動作をガイドするガイド部64a,64bを有する。昇降ユニット152は、保持部4の駆動機構60の一部として機能する。加熱膨張ユニット150は、上面の傾斜角度が異なる複数のユニットベース153を有し、これらを交換することにより、下側電極26及び上側電極27、ノズル31、電極搭載ユニット151、駆動機構32、昇降ユニット152の傾斜角度を一括的に変更調節することを可能としている。
【0026】
ノズル31は、金属パイプ材料40の端部を挿入可能な円筒部材である。ノズル31は、当該ノズル31の中心線が基準線SL1と一致するように、駆動機構32に支持されている。金属パイプ材料40側のノズル31の端部の供給口31aの内径は、膨張成形後の金属パイプ材料40の外径に略一致している。この状態で、ノズル31は、内部の流路63から高圧の流体を金属パイプ材料40に供給する。なお、高圧流体の一例としては、ガスなどが挙げられる。
【0027】
図1に戻り、冷却部7は、成形型2を冷却する機構である。冷却部7は、成形型2を冷却することで、膨張した金属パイプ材料40が成形型2の成形面と接触したときに、金属パイプ材料40を急速に冷却することができる。冷却部7は、下側の金型11及び上側の金型12の内部に形成された流路36と、流路36へ冷却水を供給して循環させる水循環機構37と、を備える。
【0028】
制御部8は、成形装置1全体を制御する装置である。制御部8は、駆動機構3、保持部4、加熱部5、流体供給部6、及び冷却部7を制御する。制御部8は、金属パイプ材料40を成形型2で成形する動作を繰り返し行う。
【0029】
具体的に、制御部8は、例えば、ロボットアーム等の搬送装置からの搬送タイミングを制御して、開いた状態の下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置する。あるいは、制御部8は、作業者が手動で下側の金型11及び上側の金型12の間に金属パイプ材料40を配置してよい。また、制御部8は、長手方向の両側の下側電極26で金属パイプ材料40を支持し、その後に上側電極27を降ろして当該金属パイプ材料40を挟むように、保持部4のアクチュエータ等を制御する。また、制御部8は、加熱部5を制御して、金属パイプ材料40を通電加熱する。これにより、金属パイプ材料40に軸方向の電流が流れ、金属パイプ材料40自身の電気抵抗により、金属パイプ材料40自体がジュール熱によって発熱する。
【0030】
制御部8は、駆動機構3を制御して上側の金型12を降ろして下側の金型11に近接させ、成形型2の型閉を行う。その一方、制御部8は、流体供給部6を制御して、ノズル31で金属パイプ材料40の両端の開口部をシールすると共に、流体を供給する。これにより、加熱により軟化した金属パイプ材料40が膨張して成形型2の成形面と接触する。そして、金属パイプ材料40は、成形型2の成形面の形状に沿うように成形される。なお、フランジ付きの金属パイプを形成する場合、下側の金型11と上側の金型12との間の隙間に金属パイプ材料40の一部を進入させた後、更に型閉を行って、当該進入部を押しつぶしてフランジ部とする。金属パイプ材料40が成形面に接触すると、冷却部7で冷却された成形型2で急冷されることによって、金属パイプ材料40の焼き入れが実施される。
【0031】
図4を参照して、成形品である金属パイプ41(金属部材)について説明する。金属パイプ41は、アルミニウム合金の金属パイプ材料40を成形装置1で成形することによって形成された金属部材である。金属パイプ41は、パイプ部43及びフランジ部44を有する成形本体部45と、長手方向の両端側の被保持部46と、成形本体部45と被保持部46との間の徐変部47と、を備える。成形本体部45は、レーザ加工などがなされることによって最終的な製品となる部分である。パイプ部43は中空の部分である。フランジ部44は、金属パイプ材料40の一部を押しつぶすことによってパイプ部43から突出する、複層の板状部分である。被保持部46は、電極26,27に保持される円筒状の部分である。被保持部46には、ノズル31が挿入される。徐変部47は、被保持部46の形状から、成形本体部45の形状へ変化する移行部分である。
【0032】
次に、
図3及び
図5を参照して、金型11,12について詳細に説明する。
図5は、下側の金型11の平面図である。
図3に示すように、金型11,12は、成形時に金属パイプ材料40と接触する成形面80を有する。成形面80は、パイプ部43を成形するためのパイプ部成形面81と、フランジ部44を成形するためのフランジ部成形面82と、を有する。
【0033】
このような成形型2を用いた成形の手順について説明する。
図3(a)に示すように、制御部8は、成形型2を型閉すると共に、流体供給部6で金属パイプ材料40に流体を供給することで、ブロー成形を行う(一次ブロー)。一次ブローでは、制御部8は、パイプ部成形面81によるメインキャビティ部MCでパイプ部43を成形すると共に、フランジ部44に対応する部分をフランジ部成形面82によるサブキャビティ部SCへ進入させる。そして、
図3(b)に示すように、制御部8は、成形型2を更に型閉することで、サブキャビティ部SCに進入した部分を更に潰すことで、フランジ部44を成形する。次に、制御部8は、上側の金型12を上昇させて金属パイプ材料40から離間させることで、型開を行う。これにより、金属パイプ41が成形される。
【0034】
図5に示すように、金型11の表面には凹凸形状70が形成される。なお、金型12にも金型11と同様に凹凸形状70が形成される。これにより、成形装置1は、成形された金属パイプ41に凹凸形状71(
図9参照)を転写する。金型11は、フランジ部成形面82に凹凸形状70を有する。そのため、成形装置1は、フランジ部44に凹凸形状71を転写する。
図4においては、グレースケールが塗られている箇所に凹凸形状71が転写される。
【0035】
図6(a)は、金型11,12のうち、凹凸形状70が形成されていない表面72の拡大断面図である。表面72は、パイプ部成形面81の表面や、フランジ部成形面82のうちの凹凸形状70が形成されていない表面である。
図6(b)は、金型11,12のうち、凹凸形状70が形成されている表面73の拡大断面図である。凹凸形状70が形成されている表面73は、凹凸形状70が形成されていない表面72よりも表面粗さが粗く、平滑度が低い。
【0036】
凹凸形状70は、表面73に沿って複数の突起部76が並んだ箇所である。突起部76と突起部76との間には凹部77が形成される。従って、凹凸形状70は、表面73に沿って凹部77が並んだ箇所とも言える。凹凸形状70の突起部76は、金属パイプ41の表面を粗くする程度の大きさがあればよく、金属パイプ41の成形形状に影響を及ぼす程の大きさはない。例えば、フランジ部成形面82に大きな突起部が設けられている場合、フランジ部44の接触面には大きな窪みが形成され、フランジ部44の裏側の面には押出による突起が形成される。凹凸形状70の突起部76は、そのような大きな突起部ではなく、フランジ部44の接触面だけに微細な凹部を形成する程度の大きさしかなく、裏側の面に突起が形成されるような大きさではない。具体的に、突起部76の高さは1~100μm程度である。また、突起部76は密集しており、突起部76同士の間隔は、フランジ部44の厚みに比べて極めて小さく、10~100μ程度である。
【0037】
金型11,12の表面73の凹凸形状70は、ショットブラストまたはレーザで形成されてよい。すなわち、表面73に対してショットブラストを行って粗くする加工を行うことで凹凸形状70を形成してよい。また、表面73にレーザ加工を行って凹凸形状70を形成してよい。また、表面73に対する切削加工の加工条件や加工具などを調整することで、他の表面72よりも粗くすることで凹凸形状70を形成してよい。
【0038】
次に、
図7を参照して、成形装置1が金属パイプ41に金型11,12の凹凸形状70を転写する手順について説明する。
図7に示すように、金型11,12は、加熱された金属パイプ材料40の成形を行う。前述のように、成形直前の金属パイプ材料40は加熱されている。次に、
図8に示すように、金型11,12を金属パイプ材料40に接触させることで、金属パイプ41が成形されると共に金型11,12に熱が奪われて急冷される。また、金型11,12の凹凸形状70が金属パイプ41の表面78に転写される。このとき、金属パイプ41の変形抵抗は常温時よりも小さいため、低荷重にて転写が可能となる。
図9に示すように、金属パイプ41を金型11,12から取り出すと、金属パイプ41の表面78には、凹凸形状71が転写された状態となっている。
【0039】
次に、本実施形態に係る成形装置1、金属パイプ41の作用・効果について説明する。
【0040】
本実施形態に係る成形装置1は、アルミニウム合金の金属パイプ材料40の成形を行う金型11,12を備える。金型11,12の表面には凹凸形状70が形成されている。これにより、成形装置1は、成形された金属パイプ41に凹凸形状71を転写する。金属パイプ41の凹凸形状71の表面に接着剤を塗布すると、凹凸形状71によって表面積が拡大し、凹部に接着剤が入り込むことによるアンカー効果が得られる。そのため、アルミニウム合金の金属パイプ41と他部材との接着強度を高めることができる。以上より、金属パイプ41と他部品との接着強度を向上できる。なお、本実施形態はアルミニウム合金での実施例の説明を行ったが、鉄等の他の金属材料であってもよい。
【0041】
金型11,12は、加熱された金属パイプ材料40の成形を行ってよい。この場合、加熱された金属パイプ材料40は常温時よりも変形抵抗が小さいため、金型11,12は低負荷で凹凸形状71を金属パイプ41に転写することができる。
【0042】
金属パイプ41はフランジ部44及びパイプ部43を有し、少なくともフランジ部44に凹凸形状71を転写してよい。フランジ部44は他部材との接合が行われる箇所であるため、当該箇所における接着強度を向上できる。
【0043】
金型11,12の表面の凹凸形状70は、ショットブラストまたはレーザで形成されてよい。この場合、金型11,12の表面に容易に凹凸形状70を形成することができる。
【0044】
本実施形態に係る成形装置1は、金属パイプ材料40を成形する成形装置1であって、金属パイプ材料40の成形を行う部材(金型11,12)を備え、部材の表面には凹凸形状70が形成され、成形された金属パイプ41に凹凸形状71を転写する。
【0045】
この成形装置1によれば、上述の成形装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0046】
本実施形態に係る金属パイプ41は、上述の成形装置1によって凹凸形状71が転写されている。
【0047】
この金属パイプ41によれば、他部材との接着強度を向上できる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、成形装置の全体構成は
図1に示すものに限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
成形装置は、アルミニウム合金の金属材料を成形する成形装置であればよく、ホットスタンピング法、ハイドロフォーミング法などの成形装置が採用されてもよい。
【0050】
凹凸形状を転写する箇所は、金属パイプのフランジ部のみならず、金属パイプの他の箇所にも転写されてよい。例えば本体部に凹凸形状を転写しても良い。レイアウト上、フランジ部に他部材との接着が難しい場合は金属パイプの本体部に凹凸形状を転写することで、他部材との接着性を向上させることができる。
【0051】
上述の実施形態では、金属パイプはフランジ部を有していたがフランジ部を有さなくてもよい。また、金属材料はパイプでなくともよく、板材であってもよい。
【0052】
[形態1]
アルミニウム合金の金属材料を成形する成形装置であって、
前記金属材料の成形を行う金型を備え、
前記金型の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する、成形装置。
[形態2]
前記金型は、加熱された前記金属材料の成形を行う、形態1に記載の成形装置。
[形態3]
前記金属部材はフランジ部及びパイプ部を有し、
少なくとも前記フランジ部に前記凹凸形状を転写する、形態1又は2に記載の成形装置。
[形態4]
前記金型の前記表面の前記凹凸形状は、ショットブラストまたはレーザで形成される、形態1~3の何れか一項に記載の成形装置。
[形態5]
金属材料を成形する成形装置であって、
前記金属材料の成形を行う部材を備え、
前記部材の表面には凹凸形状が形成され、成形された金属部材に凹凸形状を転写する、成形装置。
[形態6]
形態5に記載の成形装置によって前記凹凸形状が転写された金属部材。
【符号の説明】
【0053】
1…成形装置、11,12…金型、40…金属パイプ材料(金属材料)、41…金属パイプ(金属部材)、43…パイプ本体部、44…フランジ部、70,71…凹凸形状。