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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064717
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】骨把持鉗子
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61B17/56
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173511
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】510139276
【氏名又は名称】圓尾 明弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】圓尾 明弘
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL28
4C160LL37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨折の整復手術に用いる骨把持鉗子を、手術中に骨を挟んだ状態にして手を離しても傾倒しないように構成する。
【解決手段】交叉部3をスタッドで枢支されることにより開閉自在に連結された一対の鉗子アーム2A,2Bを有し、一対の鉗子アームにおける前腕部5の先端に骨を把持するための骨把持爪7を有すると共に、一対の鉗子アームの後腕部6に、骨把持爪を開閉操作するためのハンドル部を有する骨把持鉗子1Bにおいて、骨把持鉗子は、骨把持爪間に骨を把持した状態にある骨把持鉗子の傾倒を防止するための傾倒防止用ワイヤを挿通して骨に刺入可能なワイヤ挿通孔を有し、ワイヤ挿通孔は、傾倒防止用ワイヤを骨把持鉗子の中心軸に対して任意の角度に傾けた状態で直接挿通可能であると共に、挿通した傾倒防止用ワイヤにワイヤ挿通孔の孔壁の一部を当接、係止させることにより骨把持鉗子1Bの傾倒を防止可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交叉部をスタッドで枢支されることにより開閉自在に連結された一対の鉗子アームを有し、該一対の鉗子アームは、前記交叉部より前方の前腕部と、前記交叉部より後方の後腕部とを有していて、前記前腕部の先端に骨を把持するための骨把持爪が互いに相対するように形成されると共に、前記後腕部に前記骨把持爪を開閉操作するためのハンドル部が形成されてなる骨把持鉗子において、
前記骨把持鉗子は、前記骨把持爪間に骨を把持した状態にある該骨把持鉗子の傾倒を防止するための傾倒防止用ワイヤを骨に刺入可能なるように挿通するためのワイヤ挿通孔を有し、
前記ワイヤ挿通孔は、前記傾倒防止用ワイヤを前記骨把持鉗子の中心軸に対して任意の角度に傾けた状態で直接挿通可能であると共に、挿通した前記傾倒防止用ワイヤを該ワイヤ挿通孔の孔壁の一部に当接、係止させることによって前記骨把持鉗子の傾倒を防止するように形成されている、
ことを特徴とする骨把持鉗子。
【請求項2】
前記一対の鉗子アームは、互いに対向する内面及び互いに背向する外面を有し、前記前腕部は内面側に向けて凸形をなすように湾曲し、該前腕部の先端に二股状をした前記骨把持爪が互いに相対するように形成されており、
前記ワイヤ挿通孔は、前記一対の鉗子アームにおける前記前腕部の先端近傍に、前記内面と外面とを結ぶ方向に該前腕部を貫通するようにそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨把持鉗子。
【請求項3】
前記ワイヤ挿通孔の断面形状及び内径は、該ワイヤ挿通孔の深さ全体にわたって一定であることを特徴とする請求項2に記載の骨把持鉗子。
【請求項4】
前記ワイヤ挿通孔は、前記鉗子アームの長さ方向に細長いスリット状をした長孔であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の骨把持鉗子。
【請求項5】
前記ワイヤ挿通孔は、前記骨把持鉗子を閉じた状態で該ワイヤ挿通孔内に前記傾倒防止用ワイヤを骨把持鉗子の中心軸との角度が最小となる向きに挿通したとき、該傾倒防止用ワイヤが前記骨把持爪より前方の位置で前記中心軸と交叉するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の骨把持鉗子。
【請求項6】
前記ワイヤ挿通孔は、前記スタッドに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨把持鉗子。
【請求項7】
前記スタッドは、前記一対の鉗子アームの交叉部に回転自在に取り付けられていて、該スタッドの一端にリング部を有し、該リング部に前記ワイヤ挿通孔が、複数の傾倒防止用ワイヤを互いに異なる任意の角度で斜め縦向きに挿通して骨に刺入可能なるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の骨把持鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折の整復手術に用いる骨把持鉗子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折を整復手術する場合、通常、骨把持鉗子が使用される。この骨把持鉗子は、開閉自在に連結された一対の鉗子アームを有していて、該一対の鉗子アームの先端に骨把持爪を相対するように設けたもので、この相対する骨把持爪間に骨折部位の骨を挟むことによって元の正常な状態に整復し、その状態で手術が行われる。
ところが、従来の骨把持鉗子は、前記骨把持爪間に骨を挟んだ状態で該骨把持鉗子から手を離すと、自重により前記骨把持爪を支点として横向きに傾倒するため、手術を行っている間、医師や看護師等が傾倒しないように手で支えておく必要があり、その作業が円滑な手術を行う上での大きな障害になっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的課題は、骨折の整復手術に用いる骨把持鉗子を、手術中に骨を挟んだ状態にして手を離しても傾倒しないように構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明は、交叉部をスタッドで枢支されることにより開閉自在に連結された一対の鉗子アームを有し、該一対の鉗子アームは、前記交叉部より前方の前腕部と、前記交叉部より後方の後腕部とを有していて、前記前腕部の先端に骨を把持するための骨把持爪が互いに相対するように形成されると共に、前記後腕部に前記骨把持爪を開閉操作するためのハンドル部が形成されてなる骨把持鉗子において、前記骨把持鉗子は、前記骨把持爪間に骨を把持した状態にある該骨把持鉗子の傾倒を防止するための傾倒防止用ワイヤを、骨に刺入可能なるように挿通するためのワイヤ挿通孔を有し、前記ワイヤ挿通孔は、前記傾倒防止用ワイヤを前記骨把持鉗子の中心軸に対して任意の角度に傾けた状態で直接挿通可能であると共に、挿通した前記傾倒防止用ワイヤを該ワイヤ挿通孔の孔壁の一部に当接、係止させることによって前記骨把持鉗子の傾倒を防止するように形成されていることを特徴とする骨把持鉗子が提供される。
【0005】
本発明において、前記一対の鉗子アームは、互いに対向する内面及び互いに背向する外面を有し、前記前腕部は内面側に向けて凸形をなすように湾曲し、該前腕部の先端に二股状をした前記骨把持爪が互いに相対するように形成されており、前記ワイヤ挿通孔は、前記一対の鉗子アームにおける前記前腕部の先端近傍に、前記内面と外面とを結ぶ方向に該前腕部を貫通するようにそれぞれ形成されていても良い。
【0006】
本発明において、前記ワイヤ挿通孔は、前記前腕部の内面に開口する内側開口と、外面に開口する外側開口とを有し、該ワイヤ挿通孔の断面形状及び内径は、前記内側開口から前記外側開口に至るまで一定であることが望ましい。
【0007】
本発明において、前記ワイヤ挿通孔は、前記鉗子アームの長さ方向に細長いスリット状をした長孔であっても良い。
この場合、前記ワイヤ挿通孔は、前記骨把持鉗子を閉じた状態で該ワイヤ挿通孔内に前記傾倒防止用ワイヤを骨把持鉗子の中心軸との角度が最小となる向きに挿通したとき、該傾倒防止用ワイヤが前記骨把持爪より前方の位置で前記中心軸と交叉するように形成されていることが望ましい。
【0008】
本発明において、前記ワイヤ挿通孔は、前記スタッドに形成されていても良い。
この場合、前記スタッドは、前記一対の鉗子アームの交叉部に回転自在に取り付けられていて、該スタッドの一端にリング部を有し、該リング部に前記ワイヤ挿通孔が、複数の傾倒防止用ワイヤを互いに異なる任意の角度で斜め縦向きに挿通して骨に刺入可能なるように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の骨把持鉗子は、一対の鉗子アームの先端の骨把持爪間に骨を把持した状態で、ワイヤ挿通孔内に傾倒防止用ワイヤを挿通して骨に刺入、固定し、この傾倒防止用ワイヤに前記ワイヤ挿通孔の一部を係止させることにより、このワイヤで骨把持鉗子が傾倒するのを防止することができる。このため、手術中に前記骨把持鉗子を誰かが手で支えておく必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る骨把持鉗子の斜視図である。
図2図1の骨把持鉗子を異なる方向から見た斜視図である。
図3図1の骨把持鉗子を中心軸線に沿って切断した縦断面図である。
図4】第1実施形態の骨把持鉗子の使用状態を示す正面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る骨把持鉗子の斜視図である。
図6図5の骨把持鉗子を異なる方向から見た斜視図である。
図7図5の骨把持鉗子をスタッドの位置で切断した断面図である。
図8】第2実施形態の骨把持鉗子の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る骨把持鉗子の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。図1図4は該骨把持鉗子の第1実施形態を示すもので、この第1実施形態の骨把持鉗子1Aは、第1鉗子アーム2A及び第2鉗子アーム2Bからなる一対の鉗子アーム2A,2Bを有し、該一対の鉗子アーム2A,2Bは、中間の交叉部3をスタッド4で枢支されることにより開閉自在に連結されている。
【0012】
前記スタッド4は、一方の第1鉗子アーム2Aに係止する頭部4aと、一対の鉗子アーム2A,2Bの前記交叉部3を貫通する軸部4b(図3参照)と、他方の第2鉗子アーム2Bに係止する軸端係止部4cとを有するもので、該スタッド4と前記一対の鉗子アーム2A,2Bとは、相対的に回転自在である。
【0013】
前記鉗子アーム2A,2Bは、前記交叉部3より前方の前腕部5と、前記交叉部3より後方の後腕部6とを有し、前記前腕部5及び後腕部6において、互いに対向する面が内面2aであり、互いに背向する面が外面2bであり、前記前腕部5は、内面2a側に向けて緩やかな凸形に湾曲し、前記後腕部6は、外面2b側に向けて緩やかな凸形に湾曲している。
【0014】
前記一対の鉗子アーム2A,2Bにおける前腕部5の先端には、図4に示すように、骨折した骨20を骨折部位21の両側から把持するための二股状をした骨把持爪7が互いに相対するように形成され、前記後腕部6には、前記一対の鉗子アーム2A,2B(従って前記骨把持爪7,7)を開閉操作するためのハンドル部8が形成されると共に、該一対の鉗子アーム2A,2Bを前記骨把持爪7,7間に骨を把持した状態にロックするためのロック機構10が設けられている。
なお、以下の説明においては、必要に応じて、前記第1鉗子アーム2Aの先端の骨把持爪に符号「7a」を付して「骨把持爪7a」と呼び、前記第2鉗子アーム2Bの先端の骨把持爪に「7b」を付して「骨把持爪7b」と呼ぶ場合がある。
【0015】
前記ロック機構10は、前記第2鉗子アーム2Bの内面2aに固定された軸受部材11と、該軸受部材11に先端部を揺動自在に支持されて後端部が第1鉗子アーム2Aの螺子杆挿通孔12から外部に延出する螺子杆13と、該螺子杆13に回転操作で前後進自在なるように螺着されたロックナット14とからなるもので、図4に示すように前記骨把持爪7a,7b間に骨20を把持した状態で該ロックナット14を前記第1鉗子アーム2Aの外面2bに当接、係止させることにより、前記一対の鉗子アーム2A,2Bを骨把持状態にロックするものである。この場合、前記ロックナット14を前記螺子杆13の先端側に移動させると、前記骨把持爪7a,7b間に骨を把持する時の前記一対の鉗子アーム2A,2Bの開度は小さくなり、前記ロックナット14を前記螺子杆13の後端側に移動させると、前記骨把持爪7a,7b間に骨を把持する時の前記一対の鉗子アーム2A,2Bの開度は大きくなる。
【0016】
前記螺子杆挿通孔12は、前記第1鉗子アーム2Aの長さ方向に細長い長孔であり、前記螺子杆13は、前記骨把持爪7a,7bの開度に応じてこの螺子杆挿通孔12内を前記第1鉗子アーム2Aの長さ方向に傾動自在である。
【0017】
前記一対の鉗子アーム2A,2Bにおける前記前腕部5の先端部近傍には、前記骨把持爪7,7間に骨20を把持した状態にある前記骨把持鉗子1Aの傾倒を防止するため、傾倒防止用ワイヤ15(図4参照)を骨20に刺入可能なるように挿通するためのワイヤ挿通孔16が、前記前腕部5を内面2aと外面2bとを結ぶ方向に貫通するようにそれぞれ形成されている。
【0018】
前記傾倒防止用ワイヤ15は、ピアノ線のような高強度を有する円形断面の鋼線からなるもので、該傾倒防止用ワイヤ15を前記ワイヤ挿通孔16内に挿通してその先端を骨20に刺入することにより固定し、固定した該傾倒防止用ワイヤ15に前記ワイヤ挿通孔16の孔壁の一部(したがって骨把持鉗子1Aの一部)を当接、係止させることにより、該骨把持鉗子1Aを自立した状態に保持してその傾倒を防止するものである。
【0019】
なお、以下の説明においては、必要に応じて、前記第1鉗子アーム2Aのワイヤ挿通孔16に挿通する傾倒防止用ワイヤに符号「15a」を付して「傾倒防止用ワイヤ15a」と呼び、前記第2鉗子アーム2Bのワイヤ挿通孔16に挿通する傾倒防止用ワイヤに符号「15b」を付して「傾倒防止用ワイヤ15b」と呼ぶ場合がある。
【0020】
前記ワイヤ挿通孔16は、前記傾倒防止用ワイヤ15を、骨20の大きさや刺入位置等に応じた任意の姿勢、即ち、前記骨把持鉗子1Aの前記スタッド4の中央を通る中心軸Lに対して任意の角度θに傾けた姿勢で該ワイヤ挿通孔16内に前記前腕部5の外面2b側から直接挿通可能なるように開設されたもので、該ワイヤ挿通孔16の形状は、円形や楕円形、陸上競技用トラック形、あるいは孔幅の狭いスリット形など、様々な形状にすることができる。前記陸上競技用トラック形というのは、半円と半円とを互いに平行する2本の直線部分で結ぶことによって形成される長孔形のことである。
【0021】
前記第1実施形態における前記ワイヤ挿通孔16は、鉗子アーム2A,2Bの長さ方向に細長いスリット形をしており、このようなスリット形のワイヤ挿通孔16が、前記前腕部5の内面2aに対して直交する向きに形成されている。前記ワイヤ挿通孔16の長手方向の内径(孔長)m(図1参照)及び短手方向の内径(孔幅)n(図1参照)は、該ワイヤ挿通孔16の深さd(図3参照)の全体にわたって一定であり、また、前記ワイヤ挿通孔16の口縁に面取り加工は施されていない。これらの点は、前記ワイヤ挿通孔16が円形や楕円形、陸上競技用トラック形等である場合も同様である。
【0022】
前記ワイヤ挿通孔16の孔幅nは、前記傾倒防止用ワイヤ15の線径より僅かに大きい程度とすることが好ましく、そうすることにより、該傾倒防止用ワイヤ15とワイヤ挿通孔16の孔壁との間の隙間が小さくなるため、図4に示すように前記傾倒防止用ワイヤ15を該ワイヤ挿通孔16の孔壁の一部に当接、係止させて前記骨把持鉗子1Aの傾倒を防止したとき、該骨把持鉗子1Aの傾きを小さくすることができる。
【0023】
前記構成を有する骨把持鉗子1Aを使用して例えば骨折した膝蓋骨等の整復手術を行うときは、図4に示すように、一対の鉗子アーム2A,2Bの先端の骨把持爪7a,7b間に骨20を把持して整復した状態にしたあと、該一対の鉗子アーム2A,2Bを前記ロック機構10によりその状態にロックし、ロックした状態で一対の鉗子アーム2A,2Bの前記ワイヤ挿通孔16内に、前腕部5の外面2b側から1本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bをそれぞれ挿通し、各傾倒防止用ワイヤ15a,15bの先端を膝蓋骨20に刺入して固定する。その場合、一方の第1鉗子アーム2Aの先端部のワイヤ挿通孔16内に挿通した傾倒防止用ワイヤ15aは、骨20の屈折部位21よりも前記第1鉗子アーム2A先端の骨把持爪7aが係止する側にある骨部分20aに刺入し、他方の第2鉗子アーム2Bの先端部のワイヤ挿通孔16内に挿通した傾倒防止用ワイヤ15bは、該第2鉗子アーム先端の骨把持爪7bが係止する側にある骨部分20bに刺入する。そして、これら2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bに前記ワイヤ挿通孔16の孔壁の一部(したがって骨把持鉗子1Aの一部)をそれぞれ当接、係止させることにより、該骨把持鉗子1Aを自立させた状態にし、その状態で手術を行う。このとき、前記骨把持鉗子1Aは、前記2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bに支えられることによって自立し、傾倒しないため、この骨把持鉗子1Aを医師や看護師等が手で支える必要はない。
【0024】
なお、前記2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bは、各々の先端部を一対の鉗子アーム2A,2Bの前記ワイヤ挿通孔16内に予め挿通しておき、前記骨把持爪7a,7b間に骨を把持したあと、該傾倒防止用ワイヤ15a,15bの先端部を各骨部分20a,20bに刺入するようにしても良い。
【0025】
また、前記ワイヤ挿通孔16は、図3に示すように、前記一対の骨把持鉗子1A,1Aを閉じた状態で該ワイヤ挿通孔16内に前記傾倒防止用ワイヤ15を骨把持鉗子1Aの中心軸Lとの角度θが最小となる向きに挿通したとき、該傾倒防止用ワイヤ15が前記中心軸Lに対して前記骨把持爪7,7より前方の位置で交叉するように形成されていることが好ましい。そうすることにより、骨折した骨20の幅が小さいために該骨20を把持したときの一対の骨把持鉗子1A,1Aの開度が小さい場合であっても、該一対の骨把持鉗子1A,1Aのワイヤ挿通孔16内に挿通した2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bを、各傾倒防止用ワイヤ15側の骨把持爪7a,7bが係止する側の骨部分20a,20bにそれぞれ確実に刺入することができる。
【0026】
図5図8は骨把持鉗子の第2実施形態を示すもので、この第2実施形態の骨把持鉗子1Bが前記第1実施形態の骨把持鉗子1Aと相違する点は、1つのワイヤ挿通孔26が前記スタッド24に設けられていて、このワイヤ挿通孔26内に2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bを挿通可能なるように構成されている点である。
【0027】
このため、一対の鉗子アーム2A,2Bの交叉部3においては、図7に示すように、両鉗子アーム2A,2Bを貫通する取付孔22の内部に、円筒状のスペーサ23が、回転自在であるが前記取付孔22から抜け落ちないように取り付けられ,該スペーサ23の内部に前記スタッド24が回転自在に挿入されている。該スタッド24は、第2鉗子アーム2Bの外部で前記スペーサ23の一端に止め輪25を介して係止する頭部24aと、前記スペーサ23の内部に嵌合する軸部24bと、第1鉗子アーム2Aの外部で前記スペーサ23の他端に係止する軸端係止部24cとを有していて、該軸端係止部24cにリング部24dが形成され、該リング部24dに円形をした1つの前記ワイヤ挿通孔26が形成されている。
【0028】
前記ワイヤ挿通孔26は、図8に示すように、2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bを互いに異なる任意の角度で斜め縦向きに挿通可能であると共に、該2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bの先端を、骨20の骨折部位21を介して相対する別々の骨部分20a,20bに刺入可能であるように形成され、骨部分20a,20bに刺入した2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bに前記リング部24d(したがって骨把持鉗子1B)を係止させることにより、該骨把持鉗子1Bの傾倒を防止するものである。
【0029】
前記第2実施形態の骨把持鉗子1Bにおける前述した構成以外の構成は、前記第1実施形態の骨把持鉗子1Aの構成と実質的に同じであるから、両者の主要な同一構成部分に骨把持鉗子1Aに付した符号と同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0030】
1A,1B 骨把持鉗子
2A 第1鉗子アーム
2B 第2鉗子アーム
3 交叉部
4,24 スタッド
4a,24a 頭部
4b,24b 軸部
4c,24c 軸端係止部
24d リング部
5 前腕部
6 後腕部
7 7a,7b 骨把持爪
8 ハンドル部
15,15a,15b 傾倒防止用ワイヤ
16,26 ワイヤ挿通孔
m ワイヤ挿通孔の孔長
n ワイヤ挿通孔の孔幅
d ワイヤ挿通孔の深さ
L 中心軸
θ 角度
20 骨
20a,20b 骨部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
前記構成を有する骨把持鉗子1Aを使用して例えば骨折した膝蓋骨等の整復手術を行うときは、図4に示すように、一対の鉗子アーム2A,2Bの先端の骨把持爪7a,7b間に骨20を把持して整復した状態にしたあと、該一対の鉗子アーム2A,2Bを前記ロック機構10によりその状態にロックし、ロックした状態で一対の鉗子アーム2A,2Bの前記ワイヤ挿通孔16内に、前腕部5の外面2b側から1本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bをそれぞれ挿通し、各傾倒防止用ワイヤ15a,15bの先端を膝蓋骨20に刺入して固定する。その場合、一方の第1鉗子アーム2Aの先端部のワイヤ挿通孔16内に挿通した傾倒防止用ワイヤ15aは、骨20の折部位21よりも前記第1鉗子アーム2A先端の骨把持爪7aが係止する側にある骨部分20aに刺入し、他方の第2鉗子アーム2Bの先端部のワイヤ挿通孔16内に挿通した傾倒防止用ワイヤ15bは、該第2鉗子アーム先端の骨把持爪7bが係止する側にある骨部分20bに刺入する。そして、これら2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bに前記ワイヤ挿通孔16の孔壁の一部(したがって骨把持鉗子1Aの一部)をそれぞれ当接、係止させることにより、該骨把持鉗子1Aを自立させた状態にし、その状態で手術を行う。このとき、前記骨把持鉗子1Aは、前記2本の傾倒防止用ワイヤ15a,15bに支えられることによって自立し、傾倒しないため、この骨把持鉗子1Aを医師や看護師等が手で支える必要はない。