(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064719
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
F04B 53/00 20060101AFI20240507BHJP
B60T 8/34 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F04B53/00 J
B60T8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173514
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 翔太
【テーマコード(参考)】
3D246
3H071
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246LA79B
3H071AA03
3H071CC32
3H071CC33
3H071DD84
(57)【要約】
【課題】一例として、カバーの接地に用いられるコイルバネが基板の実装領域を減少させてしまうことを抑制可能な液圧制御装置を得る。
【解決手段】実施形態に係る液圧制御装置は、一例として、導電層を有し、前記導電層から離間した第1の貫通孔が設けられた、基板と、前記第1の貫通孔を通り、前記導電層から離間した、コイルバネと、前記基板及び前記コイルバネが収容された内部空間が設けられ、少なくとも部分的に金属で作られるとともに前記内部空間を覆うカバーを有し、当該カバーのうち金属で作られた部分が圧縮された前記コイルバネに接触するとともに当該コイルバネを通じて接地された、筐体と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層を有し、前記導電層から離間した第1の貫通孔が設けられた、基板と、
前記第1の貫通孔を通り、前記導電層から離間した、コイルバネと、
前記基板及び前記コイルバネが収容された内部空間が設けられ、少なくとも部分的に金属で作られるとともに前記内部空間を覆うカバーを有し、当該カバーのうち金属で作られた部分が圧縮された前記コイルバネに接触するとともに当該コイルバネを通じて接地された、筐体と、
を具備する液圧制御装置。
【請求項2】
前記基板から離間し、前記コイルバネを囲み又は前記コイルバネの内側に配置され、当該コイルバネを支持する、ガイド、
をさらに具備する請求項1の液圧制御装置。
【請求項3】
前記コイルバネに接触する金属部材、
をさらに具備し、
前記コイルバネは、前記カバーのうち金属で作られた部分と、前記金属部材と、の間で圧縮され、
前記導電層は、前記金属部材に電気的に接続されるとともに接地されたグランド層を有する、
請求項1又は請求項2の液圧制御装置。
【請求項4】
前記基板に、前記第1の貫通孔よりも小さい第2の貫通孔が設けられ、
前記導電層は、前記第2の貫通孔の内面及び前記第2の貫通孔の縁に接する領域のうち少なくとも一方に設けられるとともに前記グランド層に電気的に接続された接続端子を有し、
前記金属部材は、前記第2の貫通孔を通って延びるとともに前記接続端子に接合されたピンを有する、
請求項3の液圧制御装置。
【請求項5】
前記基板に実装されたコンデンサ、
をさらに具備し、
前記グランド層と前記接続端子とは、前記コンデンサを介して互いに電気的に接続される、
請求項4の液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばブレーキ装置の液路における圧力を調整する液圧制御装置が知られている。液圧制御装置は、例えば、電磁弁のような種々の部品を制御する電子部品が実装された基板と、当該基板を覆うカバーとを有する。
【0003】
金属製のカバーは、例えば静電気により帯電することがある。カバーを接地するために、例えば、コイルバネがカバーに接触する。当該コイルバネは、例えば、基板の電極に接触することで、当該基板のグランド層に電気的に接続され、カバーを接地する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、基板に電極を設けることにより、種々の電子部品が実装され又は信号配線が設けられる基板の実装領域が減少してしまう。電極を設けることによる実装領域の減少を補うためには、基板が大型化又は多層化することとなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、カバーの接地に用いられるコイルバネが基板の実装領域を減少させてしまうことを抑制可能な液圧制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る液圧制御装置は、一例として、導電層を有し、前記導電層から離間した第1の貫通孔が設けられた、基板と、前記第1の貫通孔を通り、前記導電層から離間した、コイルバネと、前記基板及び前記コイルバネが収容された内部空間が設けられ、少なくとも部分的に金属で作られるとともに前記内部空間を覆うカバーを有し、当該カバーのうち金属で作られた部分が圧縮された前記コイルバネに接触するとともに当該コイルバネを通じて接地された、筐体と、を備える。よって、一例としては、コイルバネは、例えば静電気によるカバーの帯電が基板に実装された電子部品の動作に影響することを抑制できる。また、コイルバネは、導電層から離間しているため、第1の貫通孔の周辺において基板の導電層に接続される必要がない。このため、基板は、コイルバネに接続されるランドを有する必要が無く、電子部品が実装され又は信号配線が設けられる当該基板の実装領域が当該ランドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る液圧制御装置を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態の液圧制御装置の一部を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態のECU、ケース、及びカバーを分離して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図3を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、一つの実施形態に係る液圧制御装置10を概略的に示す断面図である。液圧制御装置10は、例えば、電気装置とも称され得る。本実施形態の液圧制御装置10は、例えば、自動車のような車両に搭載される。液圧制御装置10は、車両のブレーキ装置の液路における圧力(液圧)を調整する。なお、液圧制御装置10は、この例に限られない。
【0011】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、液圧制御装置10の幅に沿って設けられる。Y軸は、液圧制御装置10の長さに沿って設けられる。Z軸は、液圧制御装置10の厚さに沿って設けられる。
【0012】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向と、X軸の矢印の反対方向である-X方向とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向とを含む。
【0013】
液圧制御装置10は、筐体11と、ポンプ12と、モータ13と、複数の電磁弁14と、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)15と、コイルバネ16とを有する。コイルバネ16は、導電部材とも称され得る。筐体11は、ハウジング21と、ケース22と、複数の接続部品23と、カバー24とを有する。なお、筐体11は、この例に限られない。
【0014】
ハウジング21は、例えば、導電性の金属で作られ、略立方体状に形成される。なお、ハウジング21の形状は、この例に限られない。ハウジング21に、ポンプ12、モータ13、複数の電磁弁14、及び種々の部品が取り付けられる。
【0015】
ハウジング21は、二つの側面21a,21bを有する。側面21aは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。側面21bは、側面21aの反対側に位置する。側面21bは、略平坦に形成され、略-Z方向に向く。なお、側面21a,21bに凹凸が設けられても良い。
【0016】
ハウジング21に、複数の穴及び流路が設けられる。ポンプ12及び複数の電磁弁14のそれぞれは、複数の穴のうち対応する一つに装着される。複数の流路のそれぞれは、複数の穴のうち少なくとも二つを互いに連通させ、又は複数の穴のうち一つとハウジング21の外面とを互いに連通させる。
【0017】
ケース22は、例えば絶縁性の合成樹脂で作られる。なお、ケース22は、他の材料で作られても良い。ケース22は、例えばネジにより、ハウジング21に取り付けられる。なお、ケース22は、他の方法によりハウジング21に取り付けられても良い。ケース22は、中間壁31と、二つの側壁32,33と、コネクタフレーム34と、ガイド35とを有する。
【0018】
中間壁31は、Z軸と略直交する板状に形成され、ハウジング21から+Z方向に離間している。中間壁31は、二つの表面31a,31bを有する。表面31aは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。表面31bは、表面31aの反対側に位置する。表面31bは、略平坦に形成され、略-Z方向に向く。表面31bは、間隔を介してハウジング21の側面21aに向く。
【0019】
図2は、本実施形態のECU15、ケース22、及びカバー24を分離して示す斜視図である。側壁32は、中間壁31の縁から+Z方向に延び、表面31aを囲む。側壁33は、表面31bから-Z方向に延び、表面31bの一部を囲む。側壁33は、表面31bからハウジング21の側面21aに向かって延び、側面21aに当接する。コネクタフレーム34は、側壁33の外部において表面31bから-Z方向に延び、表面31bの一部を囲む。コネクタフレーム34は、ハウジング21から離間している。
【0020】
図1に示すように、ガイド35は、側壁32の内側に位置し、中間壁31の表面31aから略+Z方向に突出する。ガイド35は、例えば、略円柱状の突起である。なお、ガイド35は、例えば、略円筒状に形成されても良い。
【0021】
複数の接続部品23は、例えばインサート成形により、ケース22に組み込まれる。複数の接続部品23は、複数のピン37と、バスバー38と含む。バスバー38は、金属部材の一例である。複数の接続部品23は、種々の回路のような他の部品を含んでも良い。
【0022】
複数のピン37及びバスバー38は、導電性の金属により作られる。複数のピン37のうち少なくとも一つは、中間壁31の表面31aから略+Z方向に突出している。複数のピン37のうち少なくとも他の一つは、中間壁31の表面31bから-Z方向に突出している。バスバー38は、表面31aの近傍において、中間壁31に組み込まれる。
【0023】
カバー24は、例えば導電性の金属によって作られる。なお、カバー24の一部が合成樹脂のような絶縁性の材料で作られても良い。すなわち、カバー24は、少なくとも部分的に金属で作られる。
【0024】
カバー24は、ケース22の側壁32に取り付けられる。これにより、カバー24は、ケース22を介して間接的にハウジング21に取り付けられる。なお、カバー24は、直接的にハウジング21に取り付けられても良い。
【0025】
カバー24は、内面24aを有する。内面24aは、間隔を介して中間壁31の表面31aに向く。カバー24の一部が絶縁性の材料で作られる場合、内面24aの少なくとも一部が金属で作られる。
【0026】
筐体11に、内部空間Sが設けられる。内部空間Sは、筐体11によって囲まれた空間であり、ハウジング21とカバー24との間に位置する。すなわち、カバー24は、内部空間Sを覆う。ハウジング21の側面21aと、カバー24の内面24aとは、内部空間Sに面する。電磁弁14、ECU15、及びコイルバネ16は、内部空間Sに収容される。
【0027】
内部空間Sは、ハウジング21とケース22との間の部分と、ケース22とカバー24との間の部分とを有する。しかし、内部空間Sの当該二つの部分は、中間壁31に設けられた孔を通じて互いに連通する。
【0028】
ポンプ12は、例えばギヤポンプである。なお、ポンプ12は、他の種類のポンプであっても良い。ポンプ12は、例えばハウジング21の流路を通じて、ブレーキ装置の液路にブレーキ液を送ることができる。
【0029】
モータ13は、例えば、三相ブラシレスモータである。なお、モータ13は、他の種類のモータであっても良い。モータ13は、ハウジング21の側面21bに取り付けられる。モータ13は、ポンプ12の回転子を駆動する。
【0030】
ハウジング21と側壁33との間の隙間、側壁32とカバー24との間の隙間、及びモータ13とハウジング21との間の隙間は、例えば、ガスケットにより封止されても良い。これにより、内部空間Sは、液密に封止される。
【0031】
複数の電磁弁14のそれぞれは、例えば、差圧制御弁、増圧制御弁、又は減圧制御弁である。電磁弁14は、当該電磁弁14のソレノイドに電流を流されることで、ハウジング21の流路を開放し又は閉鎖する。電磁弁14は、当該電磁弁14の上流の流路と下流の流路との間で圧力差を生じさせても良い。
【0032】
ECU15は、基板41と、電子部品42と、コンデンサ43とを有する。基板41は、例えば、プリント回路板(PCB)である。なお、基板41は、他の種類の基板であっても良い。
【0033】
基板41は、Z方向と略直交する板状に形成される。基板41は、ケース22の中間壁31とカバー24との間に位置し、例えばケース22に取り付けられる。基板41は、二つの表面41a,41bと外縁41cとを有する。
【0034】
表面41aは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。表面41aは、間隔を介してカバー24の内面24aに向く。表面41bは、表面41aの反対側に位置する。表面41bは、略平坦に形成され、略-Z方向に向く。表面41bは、間隔を介して中間壁31の表面31aに向く。外縁41cは、表面41aの縁と表面41bの縁との間に設けられ、Z方向と略直交する方向に向く。
【0035】
中間壁31の表面31aから突出する複数のピン37が、例えばプレスフィットにより、基板41に設けられたスルーホールに接合される。基板41は、当該ピン37を介して、モータ13及び電磁弁14のソレノイドに電気的に接続される。なお、基板41は、他の方法によってモータ13及び電磁弁14に電気的に接続されても良い。
【0036】
電子部品42は、例えば、IC、マイコン、及び他の種々の部品を含む。電子部品42及びコンデンサ43は、基板41に実装される。ECU15は、基板41の配線、電子部品42、及びコンデンサ43により形成される電子回路を有する。当該電子回路は、接続部品23を通じてモータ13及び電磁弁14の駆動を制御する。なお、当該電子回路は、他の部品を有しても良い。
【0037】
図3は、本実施形態の液圧制御装置10の一部を示す断面図である。
図3に示すように、基板41に、第1の貫通孔51と、第2の貫通孔52とが設けられる。第1の貫通孔51及び第2の貫通孔52のそれぞれは、略Z方向に基板41を貫通し、表面41a,41bに開口する。
【0038】
第1の貫通孔51は、基板41の外縁41cの近傍に設けられる。第1の貫通孔51の断面は、例えば略円形に形成される。第1の貫通孔51の直径は、例えば、約4mmである。
【0039】
第2の貫通孔52は、第1の貫通孔51から離間している。第2の貫通孔52の断面は、略円形に形成されても良いし、他の形状に形成されても良い。第2の貫通孔52は、第1の貫通孔51よりも小さい。例えば、第2の貫通孔52の直径は、約1mmである。なお、第1の貫通孔51及び第2の貫通孔52の大きさは、この例に限られない。
【0040】
基板41は、例えば、いわゆる両面基板であり、ベース層61と、二つの導電層62,63と、二つのカバー層64,65とを有する。なお、基板41はこの例に限られず、三つ以上の導電層を有する多層板であっても良い。
【0041】
ベース層61は、例えば、FR-4のような絶縁性の板である。ベース層61は、二つの平面61a,61bを有する。平面61aは、略+Z方向に向く。平面61bは、平面61aの反対側に位置し、略-Z方向に向く。
【0042】
導電層62,63は、例えば銅のような導電性の金属で作られる。導電層62は、平面61aに設けられる。導電層63は、平面61bに設けられる。例えば、導電層63は、グランド層71と、接続層72とを有する。
【0043】
グランド層71は、導電層63のうち、基板41において実質的にグランド電位(基準電位)に設定される導体である。グランド電位は、例えば、車両の車体と同一の電位である。グランド層71は、例えば、グランドプレーンと、当該グランドプレーンに接続されるグランド配線と、当該グランド配線に接続されるグランド端子とを有する。
【0044】
図1に示すように、例えば、複数のピン37のうち少なくとも一つは、中間壁31を貫通し、コネクタフレーム34に囲まれる。コネクタフレーム34と、当該コネクタフレーム34に囲まれたピン37とは、コネクタCを形成する。コネクタCに含まれるピン37のうち少なくとも一つは、グランド層71に電気的に接続される。
【0045】
コネクタCに、ワイヤハーネスWが接続される。グランド層71は、ピン37及びワイヤハーネスWを介して、例えば車体に電気的に接続される。これにより、グランド層71は接地される。なお、グランド層71は、他の方法により接地されても良い。
【0046】
図3に示すように、接続層72は、グランド層71から離間している。このため、グランド層71の電位と接続層72の電位とが互いに異なることがあっても良い。接続層72は、例えば、接続端子75と、実装端子76と、接続配線77とを有する。
【0047】
接続端子75は、例えば、平面61bのうち第2の貫通孔52の縁に接する領域と、第2の貫通孔52の内面と、に設けられた、いわゆるスルーホールメッキである。第2の貫通孔52及び接続端子75は、スルーホールHを形成する。実装端子76は、接続端子75から離間している。実装端子76は、例えば表面実装に用いられるパッドであるが、スルーホールであっても良い。接続配線77は、接続端子75と実装端子76とを接続する。
【0048】
カバー層64,65は、例えば、ソルダーレジストである。カバー層64は、ベース層61の平面61aと、導電層62の一部とを覆う。カバー層65は、ベース層61の平面61bと、導電層63の一部とを覆う。例えば、カバー層65は、グランド層71のグランド端子と、接続端子75と、実装端子76とを露出させる。
【0049】
基板41の表面41aは、カバー層64と、カバー層64によって露出されたベース層61の平面61a及び導電層62の一部とによって形成される。基板41の表面41bは、カバー層65と、カバー層65によって露出されたベース層61の平面61b及び導電層63の一部とによって形成される。なお、表面41a,41bはこの例に限られない。
【0050】
導電層62,63を含む基板41の導電体は、第1の貫通孔51から離間している。このため、第1の貫通孔51の内面は、絶縁性の材料で作られる。例えば、導電層62,63のそれぞれと、第1の貫通孔51の縁との間の距離は、コイルバネ16の線の直径(線径)よりも長い。
【0051】
第1の貫通孔51と基板41の外縁41cとの間には、電気信号が流れる信号配線や電子部品は設けられない。ただし、グランド層71は、第1の貫通孔51と基板41の外縁41cとの間に設けられても良い。例えば、グランド層71のグランドプレーンが、第1の貫通孔51と基板41の外縁41cとの間に設けられる。
【0052】
バスバー38は、支持壁81と、ピン82とを有する。支持壁81は、中間壁31の表面31aに沿って配置された板状に形成される。支持壁81は、支持面81aを有する。支持面81aは、略平坦に形成され、略+Z方向に向く。
【0053】
支持壁81は、表面31a上に設けられても良いし、中間壁31に部分的に埋まっても良い。支持壁81が中間壁31に埋まる場合、支持面81aは、中間壁31の外部に露出する。支持面81aの一部は、基板41の第1の貫通孔51に向く。
【0054】
支持壁81に、挿通孔85が設けられる。挿通孔85は、支持壁81を略Z方向に貫通し、支持面81aに開口する。挿通孔85は、略円形の断面を有する。なお、挿通孔85の形状は、この例に限られない。
【0055】
ガイド35は、挿通孔85を通って延びている。ガイド35、第1の貫通孔51、及び挿通孔85は、共通の中心軸を有し、同軸(同心)に配置される。このため、ガイド35は、第1の貫通孔51に向かって延びている。なお、ガイド35、第1の貫通孔51、及び挿通孔85のそれぞれの中心軸が、互いにズレていても良い。
【0056】
ガイド35の直径は、第1の貫通孔51の直径よりも小さい。Z方向におけるガイド35の長さは、中間壁31の表面31aと基板41の表面41bとの間の距離よりも短い。ガイド35は、第1の貫通孔51には挿入されない。このように、ガイド35は、基板41から離間している。なお、ガイド35の一部が第1の貫通孔51の内部に配置されても良い。
【0057】
ピン82は、挿通孔85から離間した位置で、支持壁81から略+Z方向に延びている。ピン82は、第2の貫通孔52を通って延びるとともに、接続端子75に接合される。例えば、ピン82は、プレスフィットにより接続端子75に接合される。すなわち、ピン82は、第2の貫通孔52に圧入され、第2の貫通孔52の内面に設けられた接続端子75に当接する。なお、ピン82は、例えば半田によって接続端子75に接合されても良い。
【0058】
コイルバネ16は、金属のような導電性の材料によって作られる。コイルバネ16の線径、内径、外径、及びピッチは略一定である。コイルバネ16の外径は、第1の貫通孔51の直径よりも小さい。コイルバネ16の内径は、ガイド35の直径よりも大きい。なお、コイルバネ16の寸法は、この例に限られない。
【0059】
コイルバネ16は、第1の貫通孔51を通って略Z方向に延びている。言い換えると、コイルバネ16は、基板41を貫通して延びている。コイルバネ16は、第1の貫通孔51の内面から離間している。このため、コイルバネ16は、基板41から離間している。なお、コイルバネ16は、第1の貫通孔51の内面に接触しても良い。この場合、第1の貫通孔51の内面は、コイルバネ16を支持し、コイルバネ16の座屈を抑制できる。
【0060】
コイルバネ16の一方の端部16aは、カバー24の内面24aに接触する。カバー24が部分的に金属で作られる場合、端部16aは、内面24aのうち金属で作られた部分に接触する。コイルバネ16の他方の端部16bは、支持壁81の支持面81aに接触する。なお、コイルバネ16は、端部16a,16bとは異なる部分でカバー24及びバスバー38に接触しても良い。
【0061】
コイルバネ16は、カバー24の内面24aと支持壁81の支持面81aとの間で圧縮される。このため、コイルバネ16は、内面24aを略+Z方向に押し、支持面81aを略-Z方向に押す。
【0062】
円柱状のガイド35は、端部16bを通ってコイルバネ16の内部に挿入されている。すなわち、ガイド35は、コイルバネ16の内側に配置される。これにより、ガイド35は、コイルバネ16を支持し、コイルバネ16の座屈を抑制する。なお、円筒形のガイド35がコイルバネ16を囲むことで、コイルバネ16の座屈を抑制しても良い。
【0063】
導電層62,63が第1の貫通孔51から離間しているため、コイルバネ16も、導電層62,63から離間している。一方、コイルバネ16は、カバー24に導通するとともに、バスバー38に導通する。このため、コイルバネ16は、カバー24とバスバー38とを互いに導通させる。
【0064】
コンデンサ43は、例えば、グランド層71のグランド端子と、接続層72の実装端子76とに接続される。これにより、グランド層71と接続端子75とは、コンデンサ43を介して互いに電気的に接続される。さらに、グランド層71は、コンデンサ43及び接続端子75を介してバスバー38に電気的に接続される。
【0065】
以上より、カバー24は、コイルバネ16と、バスバー38と、接続端子75を含む接続層72と、コンデンサ43と、グランド層71とを介して接地される。これにより、例えば静電気に起因してカバー24に生じた電荷は、除去される。
【0066】
なお、カバー24は、他の経路を通じて接地されても良い。例えば、バスバー38は、ハウジング21とケース22とを結合するネジが通過する
図2のカラー90に電気的に接続されても良い。
【0067】
カラー90は、内部空間Sの外部において、ケース22に組み込まれる。ネジは、カラー90を通過してハウジング21に捻じ込まれることで、カラー90とハウジング21とを互いに導通させる。これにより、カバー24は、コイルバネ16と、バスバー38と、カラー90と、ネジと、ハウジング21とを介して、車体に電気的に接続される。
【0068】
液圧制御装置10の製造時において、第1の貫通孔51は、ECU15の基準孔として用いられる。例えば、ケース22にECU15が搭載されるとき、治具が第1の貫通孔51に挿入され、又は第1の貫通孔51が画像認識の基準として設定される。これにより、ケース22に対するECU15の位置がより正確に設定され、例えばピン82が第2の貫通孔52に適切に挿入されることができる。
【0069】
ECU15がケース22に搭載されると、例えば治具が第1の貫通孔51から抜かれる。第1の貫通孔51は、電気的接続のために利用されるスルーホールではなく、ネジが通る孔でもない。本実施形態の液圧制御装置10は、基準孔である第1の貫通孔51を、コイルバネ16に貫通される孔として用いる。
【0070】
以上説明された実施形態に係る液圧制御装置10において、第1の貫通孔51は、導電層62,63から離間している。コイルバネ16は、第1の貫通孔51を通り、導電層62,63から離間している。筐体11のカバー24は、圧縮されたコイルバネ16に接触するとともに、当該コイルバネ16を通じて接地される。これにより、コイルバネ16は、例えば静電気によるカバー24の帯電が基板41に実装された電子部品42の動作に影響することを抑制できる。また、コイルバネ16は、導電層62,63から離間しているため、第1の貫通孔51の周辺において基板41の導電層62,63に接続される必要がない。このため、基板41は、コイルバネ16に接続されるランドを有する必要が無く、種々の電子部品が実装され又は信号配線が設けられる当該基板41の実装領域が当該ランドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。さらに、基板41は、ランドを設けることによる実装領域の減少を補うように大型化又は多層化する必要が無く、大型化又は多層化によるコストの増加を抑制できる。
【0071】
ガイド35は、基板41から離間し、コイルバネ16を囲み又はコイルバネ16の内側に配置され、当該コイルバネ16を支持する。これにより、ガイド35は、コイルバネ16の座屈を抑制できる。さらに、ガイド35は、基板41に設けられないため、基板41の実装領域が当該ガイド35を設けることによって減少してしまうことを抑制できる。
【0072】
バスバー38は、コイルバネ16に接触する。コイルバネ16は、カバー24と、バスバー38と、の間で圧縮される。導電層63は、バスバー38に電気的に接続されるとともに接地されたグランド層71を有する。すなわち、カバー24は、コイルバネ16と、バスバー38と、基板41のグランド層71とを通じて接地される。これにより、液圧制御装置10は、カバー24と基板41のグランド層71との間に電位差が生じることを抑制でき、当該電位差が基板41に実装された電子部品42の動作に影響することを抑制できる。さらに、液圧制御装置10は、コイルバネ16とランドとの接触とは異なる方法でカバー24とグランド層71とを電気的に接続することができ、基板41の実装領域がランドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。
【0073】
基板41に、第1の貫通孔51よりも小さい第2の貫通孔52が設けられる。導電層62,63は、接続端子75を有する。接続端子75は、第2の貫通孔52の内面及び第2の貫通孔52の縁に接する領域のうち少なくとも一方に設けられるとともに、グランド層71に電気的に接続される。バスバー38は、第2の貫通孔52を通って延びるとともに接続端子75に接合されたピン37を有する。すなわち、バスバー38が基板41に接続されるものの、バスバー38と基板41との接続に用いられるスルーホールH(第2の貫通孔52及び接続端子75)は、比較的小さい。これにより、液圧制御装置10は、コイルバネ16に接続されるランドが第1の貫通孔51の周り又は基板41の表面41aに設けられる場合に比べ、基板41の実装領域が減少してしまうことを抑制できる。
【0074】
コンデンサ43は、基板41に実装される。グランド層71と接続端子75とは、コンデンサ43を介して互いに電気的に接続される。これにより、液圧制御装置10は、カバー24のうち金属で作られた部分に短絡が生じたとしても、大電流がグランド層71に流入することを抑制できる。
【0075】
以上の実施形態おいて、ガイド35は、絶縁性の剛性樹脂で作られたケース22に設けられる。しかし、ガイド35は、導電性の金属で作られたバスバー38に設けられても良い。言い換えると、バスバー38は、挿通孔85が設けられる代わりに、支持壁81の支持面81aから略+Z方向に突出するガイド35を有しても良い。この場合、ガイド35は、コイルバネ16を支持するとともに、コイルバネ16に導通することができる。
【0076】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る液圧制御装置は、一例として、導電層を有し、前記導電層から離間した第1の貫通孔が設けられた、基板と、前記第1の貫通孔を通り、前記導電層から離間した、コイルバネと、前記基板及び前記コイルバネが収容された内部空間が設けられ、少なくとも部分的に金属で作られるとともに前記内部空間を覆うカバーを有し、当該カバーのうち金属で作られた部分が圧縮された前記コイルバネに接触するとともに当該コイルバネを通じて接地された、筐体と、を備える。よって、一例としては、コイルバネは、例えば静電気によるカバーの帯電が基板に実装された電子部品の動作に影響することを抑制できる。また、コイルバネは、導電層から離間しているため、第1の貫通孔の周辺において基板の導電層に接続される必要がない。このため、基板は、コイルバネに接続されるランドを有する必要が無く、電子部品が実装され又は信号配線が設けられる当該基板の実装領域が当該ランドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。さらに、基板は、ランドを設けることによる実装領域の減少を補うように大型化又は多層化する必要が無く、大型化又は多層化によるコストの増加を抑制できる。
【0077】
上記液圧制御装置は、一例として、前記基板から離間し、前記コイルバネを囲み又は前記コイルバネの内側に配置され、当該コイルバネを支持する、ガイド、をさらに備える。よって、一例としては、ガイドは、コイルバネの座屈を抑制できる。さらに、ガイドは、基板に設けられないため、基板の実装領域が当該ガイドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。
【0078】
上記液圧制御装置は、一例として、前記コイルバネに接触する金属部材、をさらに備え、前記コイルバネは、前記カバーのうち金属で作られた部分と、前記金属部材と、の間で圧縮され、前記導電層は、前記金属部材に電気的に接続されるとともに接地されたグランド層を有する。よって、一例としては、カバーのうち金属で作られた部分は、コイルバネと、金属部材と、基板のグランド層とを通じて接地される。これにより、液圧制御装置は、カバーのうち金属で作られた部分と基板のグランド層との間に電位差が生じることを抑制でき、当該電位差が基板に実装された電子部品の動作に影響することを抑制できる。さらに、液圧制御装置は、コイルバネとランドとの接触とは異なる方法でカバーのうち金属で作られた部分とグランド層とを電気的に接続することができ、基板の実装領域がランドを設けることによって減少してしまうことを抑制できる。
【0079】
上記液圧制御装置では、一例として、前記基板に、前記第1の貫通孔よりも小さい第2の貫通孔が設けられ、前記導電層は、前記第2の貫通孔の内面及び前記第2の貫通孔の縁に接する領域のうち少なくとも一方に設けられるとともに前記グランド層に電気的に接続された接続端子を有し、前記金属部材は、前記第2の貫通孔を通って延びるとともに前記接続端子に接合されたピンを有する。よって、一例としては、液圧制御装置は、コイルバネに接続されるランドが第1の貫通孔の周り又は基板の表面に設けられる場合に比べ、基板の実装領域が減少してしまうことを抑制できる。
【0080】
上記液圧制御装置は、一例として、前記基板に実装されたコンデンサ、をさらに備え、前記グランド層と前記接続端子とは、前記コンデンサを介して互いに電気的に接続される。よって、一例としては、液圧制御装置は、カバーのうち金属で作られた部分に短絡が生じたとしても、大電流がグランド層に流入することを抑制できる。
【0081】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0082】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…液圧制御装置、11…筐体、16…コイルバネ、24…カバー、38…バスバー(金属部材)、41…基板、43…コンデンサ、51…第1の貫通孔、52…第2の貫通孔、62,63…導電層、71…グランド層、75…接続端子、82…ピン、S…内部空間。