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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064722
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】栽培ハウス及び栽培ハウスの改修方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20240507BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20240507BHJP
【FI】
A01G9/24 N
A01G9/02 D
A01G9/02 103W
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173521
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 豊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 篤
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 実希
(72)【発明者】
【氏名】小西 英治
【テーマコード(参考)】
2B029
2B327
【Fターム(参考)】
2B029SB06
2B029SB08
2B327NE01
2B327QA05
2B327TA02
2B327UB08
2B327UB11
2B327UB21
(57)【要約】
【課題】植物に対して効率的に温調を行い、植物に対する日射量の低減及び受粉昆虫の活動低減を抑制する。
【解決手段】栽培ハウスは、光を透過する建屋と、建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、栽培棚に設けられ、植物の上方を開放するように植物の側方を囲う囲い部材と、囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置とを備え、栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、温調装置は、第1方向に延びるように形成され、囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が第1方向に沿って配置される配管と、配管に温調気体を流通させる供給装置とを有し、配管は、囲い部材で囲まれた部分において、第1方向のうち供給装置側から供給装置とは反対側に向けて開口面積が小さくなるように気体噴出口が形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過する建屋と、
前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、
前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、
前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置と
を備え、
前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、
前記温調装置は、
前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、
前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置と
を有し、
前記配管は、前記囲い部材で囲まれた部分において、前記第1方向のうち前記供給装置側から前記供給装置とは反対側に向けて開口面積が小さくなるように前記気体噴出口が形成される
栽培ハウス。
【請求項2】
前記気体噴出口は、前記供給装置側から前記供給装置とは反対側に向けて、徐々に径が小さくなるように形成される
請求項1に記載の栽培ハウス。
【請求項3】
前記気体噴出口は、前記供給装置側から前記供給装置とは反対側に向けて、徐々にピッチが広くなるように形成される
請求項1に記載の栽培ハウス。
【請求項4】
光を透過する建屋と、
前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、
前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、
前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置と
を備え、
前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、
前記温調装置は、
前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、
前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置と、
前記気体噴出口に着脱可能に設けられ、前記配管の内部の前記温調気体を前記気体噴出口に案内して噴出させる案内部材と
を有する
栽培ハウス。
【請求項5】
前記案内部材は、
前記気体噴出口に装着される筒状の基部と、
前記基部の一部が中心軸の軸線方向に沿って突出し、前記中心軸に対向する案内面により前記温調気体を案内する突出部と
を有する
請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項6】
前記案内部材は、前記気体噴出口に装着された状態で、前記中心軸の軸回り方向の回転位置を調整可能である
請求項5に記載の栽培ハウス。
【請求項7】
前記案内部材は、前記突出部の突出方向の長さを調整可能である
請求項5に記載の栽培ハウス。
【請求項8】
前記囲い部材は、前記栽培棚の少なくとも底部を囲うように設けられ、
前記配管は、前記栽培棚の下方かつ前記囲い部材のうち前記栽培棚の底部を囲う部分の上方に配置される
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項9】
前記栽培棚は、前記第1方向に対して水平面に沿って交差する第2方向に複数配置され、
前記配管は、前記栽培棚ごとに配置され、
1つの前記供給装置が複数の前記配管に接続される
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項10】
前記供給装置は、前記栽培棚に対して前記第1方向上の位置に配置される
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項11】
前記囲い部材は、少なくとも前記植物のうち前記栽培棚の上端から延び出す根元部の高さ範囲を囲う
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項12】
前記囲い部材は、少なくとも前記植物のうち前記栽培棚の上端から最も下方に配置される葉までの高さ範囲を囲う
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項13】
前記囲い部材は、少なくとも前記植物の全体に亘る高さ範囲を囲う
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項14】
前記囲い部材は、前記栽培棚の底部及び側方を囲うように設けられる
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項15】
前記囲い部材は、少なくとも一部が上下方向に移動可能に設けられる
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項16】
前記囲い部材は、
前記栽培棚に対向する壁部と、
前記栽培棚に沿って延び、上下に配置される上部フレーム及び下部フレームと、
前記壁部の上端部に設けられ、前記上部フレームと前記下部フレームとに切り替えて掛けることが可能なフック部材と
を有する
請求項15に記載の栽培ハウス。
【請求項17】
前記植物は、前記第1方向に複数並ぶように配置される
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項18】
前記栽培棚は、複数設けられ、
少なくとも1つの前記栽培棚に配置され、前記囲い部材で囲まれた部分の温度を検出可能な検出部を更に備える
請求項1又は請求項4に記載の栽培ハウス。
【請求項19】
光を透過する建屋と、
前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、
前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、
前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置と
を備え、
前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、
前記温調装置は、
前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、
前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置と
を有する栽培ハウスの改修方法であって、
前記配管の内部の気体を前記気体噴出口に案内して噴出させる案内部材を、前記気体噴出口に装着可能となるように形成する作成工程と、
形成した前記案内部材を前記気体噴出口に装着する装着工程と
を含む栽培ハウスの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、栽培ハウス及び栽培ハウスの改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培する栽培ハウスとして、例えばビニール、ガラス等で形成される建屋の内部にトンネル状の小ハウスを構成して植物を配置し、小ハウスの内部に温調気体を流通させることで、小ハウスの内部で植物に対して温調を行う構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6861883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の栽培ハウスでは、植物の側方及び上方を囲う構成であるため、植物に対する日射量が低減したり、受粉昆虫の活動が低減されたりする可能性がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、植物に対して効率的に温調を行い、植物に対する日射量の低減及び受粉昆虫の活動低減を抑制することが可能な栽培ハウス及び栽培ハウスの改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る栽培ハウスは、光を透過する建屋と、前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置とを備え、前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、前記温調装置は、前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置とを有し、前記配管は、前記囲い部材で囲まれた部分において、前記第1方向のうち前記供給装置側から前記供給装置とは反対側に向けて開口面積が小さくなるように前記気体噴出口が形成される。
【0007】
本開示に係る栽培ハウスは、光を透過する建屋と、前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置とを備え、前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、前記温調装置は、前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置と、前記気体噴出口に着脱可能に設けられ、前記配管の内部の前記温調気体を前記気体噴出口に案内して噴出させる案内部材とを有する。
【0008】
本開示に係る栽培ハウスの改修方法は、光を透過する建屋と、前記建屋の内部に配置され、栽培対象となる植物を載置する栽培棚と、前記栽培棚に設けられ、前記植物の上方を開放するように前記植物の側方を囲う囲い部材と、前記囲い部材で囲まれる空間に温調気体を供給する温調装置とを備え、前記栽培棚は、第1方向に長手となるように形成され、前記温調装置は、前記第1方向に延びるように形成され、前記囲い部材に囲まれた部分に向けた気体噴出口が前記第1方向に沿って配置される配管と、前記配管に前記温調気体を流通させる供給装置とを有する栽培ハウスの改修方法であって、前記配管の内部の気体を前記気体噴出口に案内して噴出させる案内部材を、前記気体噴出口に装着可能となるように形成する作成工程と、形成した前記案内部材を前記気体噴出口に装着する装着工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、植物に対して効率的に温調を行い、植物に対する日射量の低減及び受粉昆虫の活動低減を抑制することが可能な栽培ハウス及び栽培ハウスの改修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る栽培ハウスの一例を示す正面図である。
図2図2は、栽培ハウスの内部構成の一例を示す平面図である。
図3図3は、囲い部材の一例を示す図である。
図4図4は、囲い部材の一例を示す図である。
図5図5は、温調装置の一例を模式的に示す図である。
図6図6は、温調装置の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、温調装置の他の例を模式的に示す図である。
図8図8は、案内部材の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、温調装置の他の例を模式的に示す図である。
図10図10は、案内部材の角度を変更した場合の例を模式的に示す図である。
図11図11は、案内部材の他の例を模式的に示す図である。
図12図12は、栽培ハウスの内部構成の他の例を示す平面図である。
図13図13は、温調装置を用いた温調方法の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、複数の検出部による検出結果の一例を示すグラフである。
図15図15は、検出結果に基づいて算出される温度差の一例を示すグラフである。
図16図16は、栽培ハウスの改修方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る栽培ハウス及び栽培ハウスの改修方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る栽培ハウス100の一例を示す正面図である。図2は、栽培ハウス100の内部構成の一例を示す平面図である。図1及び図2に示す栽培ハウス100は、例えば屋外の地表G上に建てられ、主として太陽光等の自然光を取り入れることで植物Pの栽培を行う。植物Pとしては、例えばイチゴ等が挙げられるが、イチゴに限定されず、他の種類の植物であってもよい。栽培ハウス100は、建屋10と、栽培棚20と、囲い部材30と、温調装置40とを備える。
【0013】
建屋10は、栽培対象となる植物Pを収容する。建屋10は、植物Pが光合成を行うことが可能な波長の光を透過する。建屋10は、例えばビニール、ガラス等の透明な材料を用いて形成される。建屋10を構成する材料としては、上記に限定されず、植物Pが光合成を行うことが可能な波長の光を透過する材料であれば、他の材料が用いられてもよい。建屋10は、骨組みとなるフレーム11に展張された状態で配置される。建屋10は、妻面となる正面部10a及び背面部10bと、側面部10c、10dと、天井部10eとを有する。建屋10の正面部10a、背面部10b又は側面部10c、10dには、不図示の扉が配置される。
【0014】
建屋10には、換気装置12、遮光シート13及び断熱カーテン14が設けられる。換気装置12は、建屋10の外部の空気を内部に取り込み、建屋10の内部の空気を外部に排出する。なお、建屋10は、換気装置12の下方の位置に天井部10eに沿った内張が設けられた構成であってもよい。内張は、植物Pを収容する空間と、天井部10eに沿った天井部分の空間とを仕切るように配置される。また、換気装置12は、天井部分の空間に空気を取り込み、当該空間の空気を排出する。この構成により、換気装置12が天井部分の空間に外気を取り込むことで、内張を介して植物Pを収容する空間の温調を行うことができる。
【0015】
遮光シート13は、例えば建屋10の天井部10eの下方に配置することができる。遮光シート13は、太陽光等の光の少なくとも一部を反射又は吸収する。遮光シート13は、例えば天井部10eの下方の少なくとも一部を覆った被覆状態と、天井部10eの下方を覆っていない開放状態とを切り替え可能であってもよい。
【0016】
断熱カーテン14は、例えば建屋10の側面部10c、10dの外側に配置することができる。断熱カーテン14は、太陽光等の光の少なくとも一部を反射又は吸収する。断熱カーテン14は、例えば側面部10c、10dの少なくとも一部を覆った被覆状態と、側面部10c、10dを覆っていない開放状態とを切り替え可能であってもよい。また、断熱カーテン14は、太陽光が照射されない場合又は太陽光が弱い場合に、遮熱の役割を果たすことで、建屋10の内外の熱の出入りを小さくすることができる。これにより、例えば夏季には建屋10内の温度が高くなることを抑制でき、冬季には建屋10内の温度が低くなることを抑制できる。
【0017】
栽培棚20は、建屋10の内部に配置され、植物Pを載置する。栽培棚20は、棚部21と、支持部22とを有する。棚部21は、植物P及び植物Pを植えるための土壌等が配置される。支持部22は、棚部21を支持する。
【0018】
栽培棚20は、第1方向D1に長手となるように形成される。植物Pは、第1方向D1に複数並ぶように栽培棚20に配置される。栽培棚20は、1つの建屋10内において、第1方向D1に対して水平面に沿って直交する第2方向D2に複数配置される。なお、第1方向D1及び第2方向D2は、それぞれ上下方向D3に直交する。栽培棚20は、それぞれ第2方向D2に移動可能に設けられる。例えば支持部22は、底部に車輪22aが設けられる。建屋10の地面には、当該車輪22aを第2方向D2に案内する不図示のレールが設けられる。車輪22aを当該レールに沿って移動させることで、栽培棚20が第2方向D2に移動可能となる。栽培棚20を第2方向D2に移動させることにより、作業者が栽培棚20の間に入るためのスペースを確保することができる。このため、建屋10内の第2方向D2に栽培棚20を効率的に配置することができる。
【0019】
複数の栽培棚20のうち、少なくとも1つの栽培棚20には、検出部25が設けられる。検出部25は、栽培棚20のうち囲い部材30で囲まれた部分の温度を検出する。検出部25は、検出結果を温調装置40に送信可能である。検出部25は、例えば第2方向D2に並ぶ栽培棚20に1つおきに配置される構成とすることができる。なお、検出部25の配置については、上記に限定されず、他の配置であってもよい。
【0020】
囲い部材30は、栽培棚20ごとに設けられる。図3及び図4は、囲い部材30の一例を示す図である。囲い部材30は、栽培棚20に支持され、栽培棚20が第2方向D2に移動する場合には当該栽培棚20と一体で移動する。囲い部材30は、植物Pの上方を建屋10の内部に開放するように当該植物Pの側方を囲う構成である。囲い部材30は、図3及び図4に示すように、例えば少なくとも植物Pの全体に亘る高さ範囲Hを囲う構成とすることができる。囲い部材30は、少なくとも植物Pのうち栽培棚20の上端から最も下方に配置される葉PLまでの高さ範囲HLを囲う構成であってもよい。また、囲い部材30は、少なくとも植物Pのうち栽培棚20の上端から延び出す根元部PCの高さ範囲HCを囲う構成であってもよい。囲い部材30は、植物Pの上方を開放する開口部30aを有する。本実施形態において、囲い部材30は、栽培棚20の底部及び側方を囲う。囲い部材30は、底部31と、第1壁部32と、第2壁部33とを有する。底部31は、栽培棚20の下方に配置され、栽培棚20の第2方向D2の両側から上方に向けて延び出した状態で設けられる。底部31は、例えば栽培棚20の支持部22に支持される構成としてもよい。
【0021】
囲い部材30は、底部31、第1壁部32及び第2壁部33で囲まれる空間(以下、保持空間と表記する)Kに温調気体を保持可能である。保持空間Kは、底部31、第1壁部32及び第2壁部33と、第1壁部32及び第2壁部33により形成される開口部30aとで区画される空間である。囲い部材30は、保持空間Kに植物Pの全体が収容されるように設けられる。
【0022】
第1壁部32及び第2壁部33は、栽培棚20から上方に突出して設けられる。第1壁部32及び第2壁部33は、例えば植物Pを囲んだ状態において、植物Pの全体に亘る高さ範囲Hよりも上下方向D3に広い範囲に配置されるように上下方向D3の寸法が設定される。これにより、温調気体を植物Pの高さ方向の全体に行き渡らせることができる。第1壁部32は、栽培棚20の第1方向D1の両端面にそれぞれ対向するように配置される。第1壁部32は、底部31に支持される。
【0023】
第2壁部33は、栽培棚20の第2方向D2の両端面にそれぞれ対向するように配置される。第2壁部33は、上端部にフック部材34を有する。フック部材34は、上部フレーム35又は下部フレーム36に掛けることができる。上部フレーム35及び下部フレーム36は、栽培棚20に沿って延びており、上下に配置される。本実施形態において、上部フレーム35及び下部フレーム36は、例えば第1方向D1に沿って延びている。
【0024】
図3に示すように、フック部材34を上部フレーム35に掛けることで、底部31、第1壁部32及び第2壁部33により植物Pの側方及び栽培棚20の底部を囲む保持位置P1に配置される。つまり、フック部材34を上部フレーム35に掛けて第2壁部33を保持位置P1に配置することで、保持空間Kが形成される。
【0025】
また、図4に示すように、フック部材34を下部フレーム36に掛けることで、植物Pの側方を空ける開放位置P2に第2壁部33が配置される。この場合、作業者が植物Pに対してアクセスしやすくなるため、作業等を容易に行うことができる。
【0026】
このように、フック部材34を上部フレーム35と下部フレーム36とで切り替えて掛けることで、第2壁部33を上下方向D3に移動させることが可能となっている。
【0027】
温調装置40は、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を供給する。温調装置40は、配管41と、供給装置42とを有する。
【0028】
配管41は、栽培棚20ごとに設けられる。配管41は、栽培棚20の長手方向である第1方向D1に延びている。配管41は、例えば供給装置42との接続部から囲い部材30との接続部までの部分が栽培棚20の第2方向D2への移動に応じて変形可能に設けられてもよい。
【0029】
配管41は、供給装置42に接続され、囲い部材30の第1壁部32を貫通して設けられる。配管41は、例えば栽培棚20の下方かつ囲い部材30の底部31の上方に配置される。配管41は、気体噴出口41aを有する。気体噴出口41aは、囲い部材30が囲まれた部分に向けて形成される。気体噴出口41aは、第1方向D1に複数並んだ状態で配置される。
【0030】
供給装置42は、建屋10の内部又は外部の気体を温調(例えば、冷却)し、温調した温調気体を配管41に供給する。供給装置42は、栽培棚20に対して第1方向D1上の位置に配置される。本実施形態において、供給装置42は、第1方向D1において、第1方向D1に並んで配置される栽培棚20の間の位置に配置される。
【0031】
供給装置42は、ヘッダー43を介して複数の配管41が接続される。供給装置42は、ヘッダー43を介して複数の配管41に対して温調気体を供給する。供給装置42は、検出部25の検出結果に応じて温調気体の温度を調整してもよい。
【0032】
図5及び図6は、温調装置40の一例を模式的に示す図である。図5及び図6では、配管41に気体噴出口41aが1列に形成された場合の例を示している。図5及び図6に示すように、気体噴出口41aは、第1方向D1において、供給装置42側から当該供給装置42の反対側に向けて配管41の開口面積が小さくなるように形成される。
【0033】
例えば、図5に示すように、気体噴出口41aは、供給装置42側から当該供給装置42の反対側に向けて、徐々に径が小さくなる構成とすることができる。また、図6に示すように、気体噴出口41aは、供給装置42側から当該供給装置42の反対側に向けて、徐々にピッチが広くなる構成とすることができる。
【0034】
図5及び図6に示すように、配管41は、開口面積が供給装置42側から当該供給装置42の反対側に向けて徐々に小さくなる。この構成により、配管41から囲い部材30の内部に噴出される温調気体の噴出量が第1方向D1で均一となる。
【0035】
上記のように構成された栽培ハウス100においては、栽培棚20に土壌及び植物Pを配置し、囲い部材30の第2壁部33を保持位置P1に配置した状態で、温調装置40により温調気体を囲い部材30の内部に供給する。供給装置42から配管41を介して温調気体が流通し、配管41の気体噴出口41aから囲い部材30の内部に温調気体が噴出される。この場合、配管41の開口面積が供給装置42側から当該供給装置42の反対側に向けて徐々に小さくなっているため、囲い部材30の内部に噴出される温調気体の噴出量が第1方向D1で均一となる。
【0036】
温調装置40により温調気体が囲い部材30の内部に供給された場合、当該温調気体は囲い部材30の内部に保持される。温調気体を植物Pの周囲に局所的に保持させることにより、建屋10の全体を温調する場合に比べて植物Pの周囲を効率的に温調することができる。また、囲い部材30は、第1壁部32及び第2壁部33の上端が植物Pの高さ位置よりも高い位置に配置される。このため、囲い部材30の内部に保持される温調気体は、植物Pの高さ方向の全体に供給されることになる。また、植物Pの上方が建屋10の内部に開放されているため、植物Pに対する日射量の低減が抑制され、受粉昆虫が活動しやすい状況が形成される。
【0037】
作業者が栽培棚20、植物P又は土壌等に対して作業を行う場合、作業の対象となる栽培棚20及びその周囲の栽培棚20を第2方向D2に移動させることにより、作業者が入り込むスペースを確保できる。囲い部材30の第2壁部33を開放位置P2に配置することにより、作業者が栽培棚20、植物P又は土壌等に対して容易にアクセス可能となる。
【0038】
図7は、温調装置の他の例を模式的に示す図である。図7に示すように、温調装置40は、案内部材50を備える構成であってもよい。案内部材50は、気体噴出口41aに着脱可能に設けられる。案内部材50は、配管41の内部の温調気体を気体噴出口41aに案内して噴出させる。
【0039】
図8は、案内部材50の一例を模式的に示す図である。図8に示すように、案内部材50は、基部51と、突出部52とを有する。
【0040】
基部51は、例えば中心軸AXを有する筒状である。本実施形態において、基部51は円筒状である。なお、基部51は、円筒状に限定されず、角筒等の他の筒形状であってもよい。また、基部51は、筒状に限定されず、例えば筒部の周方向の一部を切り欠いた形状であってもよいし、平板状であってもよい。基部51は、気体を流通させる流通部51aを有する。基部51が筒状の場合、流通部51aは、基部51の内周面で囲まれた部分である。
【0041】
基部51は、案内部材50が気体噴出口41aに装着された状態において、配管41の外部に配置される。基部51は、案内部材50が配管41の内部に落下しないように気体噴出口41aに支持される。基部51の外径は、気体噴出口41aの径に応じて設定される。例えば気体噴出口41aの径が配管41の長手方向の位置に応じて異なる場合、それぞれ異なる径の気体噴出口41aに対応するように、外径の異なる基部51を有する複数種類の案内部材50を用いることができる。
【0042】
突出部52は、基部51の一部が中心軸AXの軸線方向に突出した形状を有する。突出部52は、中心軸AXに対向する案内面52aを有する。案内面52aは、温調気体を案内する。本実施形態において、案内面52aは、例えば円筒面の一部で形成される。突出部52は、基部51が気体噴出口41aに支持された状態において、配管41の内部に配置される。
【0043】
図8に示すように、一方向に流れる温調気体ARの流通方向に案内面52aが対向するように案内部材50が配置される場合、当該温調気体ARの一部は案内面52aに遮られ、当該案内面52aに沿って中心軸AXの軸線方向に案内される。案内面52aに案内された温調気体ARは、基部51の流通部51aを流通して当該流通部51aから噴出される。
【0044】
したがって、案内面52aが温調気体の流通方向に対向するように案内部材50を気体噴出口41aに取り付けることにより、配管41の内部を流れる温調気体が案内面52aに沿って案内され、基部51の流通部51aを流通して配管41の外部に噴出される。このように、突出部52により配管41の内部を流れる温調気体の一部を案内して噴出させるため、気体をより確実に噴出させることができる。
【0045】
案内部材50は、図7に示すように、例えば配管41の1つ以上の気体噴出口41aに取り付けることができる。案内部材50の取り付け先としては、供給装置42側の気体噴出口41aに限定されず、供給装置42から離れた位置の気体噴出口41aであってもよい。
【0046】
図9は、温調装置の他の例を模式的に示す図である。図9に示すように、案内部材50は、気体噴出口41aに装着された状態で、中心軸AXの軸回り方向に回転させることにより、当該軸回り方向の回転位置を調整可能である。したがって、例えば全ての気体噴出口41aに案内部材50を装着し、案内部材50の回転位置を気体噴出口41aごとに調整することができる。
【0047】
図10は、案内部材50の回転位置を変更した場合の例を模式的に示す図である。案内部材50の回転位置を変更することにより、図10に示すように、温調気体ARの流通方向となる第1方向D1と、案内面52aが向く方向である案内面方向D4との間の角度を調整することができる。
【0048】
例えば、第1方向D1と案内面方向D4との間の角度が0°である場合、温調気体ARの流通方向に対向する案内面52aの面積が最大となる。この場合、案内面52aは、最も広い範囲で温調気体ARを遮って案内することができる。このため、基部51から噴出される温調気体ARの単位時間当たりの流量が最も多くなる。
【0049】
また、第1方向D1と案内面方向D4との間の角度を大きくするにつれて、温調気体ARの流通方向に対向する案内面52aの面積が小さくなる。図10では、例えば第1方向D1と案内面方向D4との間の角度が45°である場合の例が記載されている。第1方向D1と案内面方向D4との間の角度を大きくすることにより、案内面52aで遮ることができる範囲が小さくなる。このため、第1方向D1と案内面方向D4との間の角度を大きくするにつれて、基部51から噴出される温調気体ARの単位時間当たりの流量が少なくなる。
【0050】
第1方向D1と案内面方向D4との間の角度を大きくして、温調気体ARの流通方向に対向する案内面52aの面積が0になると、案内面52aで温調気体ARをほとんど遮ることができなくなる。この場合、基部51から噴出される温調気体ARの単位時間当たりの流量が最も少なくなる。
【0051】
したがって、図9に示すように、例えば全ての気体噴出口41aに案内部材50を装着し、案内部材50の回転位置を気体噴出口41aごとに調整することにより、気体噴出口41aごとに温調気体ARの噴出量を調整することができる。
【0052】
図11は、案内部材の他の例を模式的に示す図である。図11に示すように、突出部52の突出方向の長さを調整する又は異ならせることで温調気体ARの噴出量を調整することができる。
【0053】
図11に示す例では、突出方向の長さがL1の突出部52Aを有する案内部材50Aと、突出方向の長さがL1よりも短いL2の突出部52Bを有する案内部材50Bとを用いている。突出部52の突出方向の長さが長いほど、温調気体ARを遮る案内面52aの面積が大きくなる。逆に、突出部52の突出方向の長さが短いほど、温調気体ARを遮る案内面52aの面積が小さくなる。したがって、突出部52の突出方向の長さが長いほど、基部51から噴出される温調気体ARの単位時間当たりの流量が大きくなる。逆に、突出部52の突出方向の長さが短いほど、基部51から噴出される温調気体ARの単位時間当たりの流量が小さくなる。
【0054】
図11に示す例では、突出部52Aの方が突出部52Bよりも気体を遮る案内面52aの面積が大きい。したがって、案内部材50Aの方が案内部材50Bよりも単位時間当たりの温調気体ARの噴出量が多くなる。このように、突出方向の長さが異なる複数種類の案内部材50A、50Bを用いることで、気体噴出口41aごとに温調気体ARの噴出量を調整することができる。
【0055】
図12は、栽培ハウスの内部構成の他の例を示す平面図である。図12に示すように、栽培棚20には、第1方向D1の複数個所に検出部25を設置することができる。以下、各検出部25を区別する場合、供給装置42に近い側から、検出部25a、25b、25c、25d、25eと表記する。検出部25の設置数は、5つに限定されず、4つ以下又は6つ以上であってもよい。各検出部25は、栽培棚20のうち囲い部材30で囲まれた部分の温度を検出する。各検出部25は、検出結果を制御装置61に送信する。制御装置61としては、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等の端末装置等が挙げられる。制御装置61は、各検出部25の検出結果を取得し、取得した検出結果の最大値と最小値との差である温度差を算出する。制御装置61は、各検出部25の検出結果及び算出した温度差をリアルタイムで表示装置62に表示可能である。制御装置61は、温度差が閾値以下となったか否かを判定し、判定結果を表示装置62に表示させることができる。なお、温度差が閾値以下となったか否かの判定については、表示装置62に表示される温度差をオペレータが確認しながら行ってもよい。
【0056】
ここで、図12に示すように栽培棚20に第1方向D1の複数個所に検出部25を設置し、1つ以上の配管41の気体噴出口41aに案内部材50を装着した場合における温調方法を説明する。図13は、案内部材50を用いた温調方法の一例を示すフローチャートである。
【0057】
供給装置42から配管41を介して温調気体を流通させることで、配管41の気体噴出口41aから装着される案内部材50から、当該案内部材50の調整内容に応じて囲い部材30の内部に温調気体が噴出される。各検出部25において栽培棚20の囲い部材30で囲まれた部分の温度が検出され、検出結果が制御装置61に送信される。
【0058】
この状態から、図13に示すように、まず、気体噴出口41aに装着した案内部材50を調整する(ステップS10)。ステップS10の調整では、例えば案内部材50の回転位置を調整することができる。また、ステップS10の調整では、例えば案内部材50の突出部52の突出方向の長さを調整することができる。突出部52の突出方向の長さの調整については、例えば突出部52を突出方向に伸縮させるようにしてもよいし、突出部52の長さの異なる案内部材50に切り替えるようにしてもよい。案内部材50を調整することにより、当該案内部材50が装着された気体噴出口41aから噴出される温調気体の単位時間当たりの流量が調整される。
【0059】
制御装置61は、各検出部25から送信された検出結果を取得する(ステップS20)。制御装置61は、取得した検出結果を表示装置62に表示してもよい。図14は、複数の検出部25による検出結果の一例を示すグラフである。図14において、横軸は時刻を示し、縦軸は検出部25の検出結果である温度を示す。曲線G1は、図12における検出部25aの検出結果を示す。曲線G2は、図12における検出部25bの検出結果を示す。曲線G3は、図12における検出部25cの検出結果を示す。曲線G4は、図12における検出部25dの検出結果を示す。曲線G5は、図12における検出部25eの検出結果を示す。図14に示す例では、時刻t1において案内部材50の調整を行った場合を示している。図14に示すように、各検出部25の検出結果が取得され、表示装置62に表示されることにより、オペレータが検出結果を把握することができる。
【0060】
制御装置61は、取得した検出結果に基づいて、検出部25の検出結果の最大値と最小値との差である温度差を算出する(ステップS30)。制御装置61は、各検出部25の検出結果及び算出した温度差を表示装置62に表示する。図15は、検出結果に基づいて算出される温度差の一例を示すグラフである。図15において、横軸は時刻を示し、縦軸は算出結果である温度差を示す。図15では、図14に示すグラフと時刻が対応した状態となっている。図15に示すように、算出結果が表示装置62に表示されることにより、オペレータは、温度差の値及び当該温度差が閾値Q以下であるか否かをリアルタイムで把握することができる。
【0061】
制御装置61又はオペレータは、算出された温度差が閾値以下となったか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40において温度差が閾値以下ではない(閾値を超える)と判定された場合(ステップS40のNo)、ステップS10に戻り案内部材50の調整を再度行う。ステップS40において温度差が閾値以下と判定された場合(ステップS40のYes)、案内部材50の調整を終了する。
【0062】
上記のように案内部材50を調整することにより、栽培棚20の囲い部材30で囲まれた部分の第1方向D1の温度差を小さくすることができる。すなわち、囲い部材30で囲まれた部分の第1方向D1についての温度をより均一にすることができる。
【0063】
図16は、栽培ハウスの改修方法の一例を示すフローチャートである。上記した案内部材50は、既存の栽培ハウス100に対して、後から改修等により増設することができる。本実施形態に係る栽培ハウスの改修方法は、作成工程S110と、装着工程S120とを含む。
【0064】
作成工程S110は、配管41の内部の温調気体を気体噴出口41aに案内して噴出させる案内部材50を、気体噴出口41aに装着可能となるように形成する。作成工程S110においては、例えば案内部材50が配管41の内部に落下することなく気体噴出口41aに支持されるように基部51の径を設定する。この場合、既存の気体噴出口41aの寸法に対応して基部51の径を柔軟に設定することができる。
【0065】
装着工程S120は、形成した案内部材50を気体噴出口41aに装着する。装着工程S120では、予め気体噴出口41aに対応するように設計した案内部材50を当該気体噴出口41aに挿入することで、容易に装着できる。装着工程S120により、配管41は、案内部材50が気体噴出口41aに装着された状態となる。
【0066】
以上のように、本開示の第1態様に係る栽培ハウスは、光を透過する建屋10と、建屋10の内部に配置され、栽培対象となる植物Pを載置する栽培棚20と、栽培棚20に設けられ、植物Pの上方を開放するように植物Pの側方を囲う囲い部材30と、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を供給する温調装置40とを備え、栽培棚20は、第1方向D1に長手となるように形成され、温調装置40は、第1方向D1に延びるように形成され、囲い部材30に囲まれた部分に向けた気体噴出口41aが第1方向D1に沿って配置される配管41と、配管41に温調気体を流通させる供給装置42とを有し、配管41は、囲い部材30で囲まれた部分において、第1方向D1のうち供給装置42側から供給装置42とは反対側に向けて開口面積が小さくなるように気体噴出口41aが形成される栽培ハウス100である。
【0067】
この構成によれば、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を保持することができる。このため、植物Pを効率的に温調することができる。また、囲い部材30が植物Pの上方を建屋10の内部に開放するように配置されるため、植物Pに対する日射量の低減及び受粉昆虫の活動低減を抑制することができる。また、栽培棚20の形状及び植物Pの植栽状態に応じた態様で温調気体を供給することができる。更に、囲い部材30で囲まれた部分には、第1方向D1について均一な噴射量で温調気体が供給されることになる。
【0068】
本開示の第2態様に係る栽培ハウスは、第1態様に係る栽培ハウスにおいて、気体噴出口41aは、供給装置42側から当該供給装置42とは反対側に向けて、徐々に径が小さくなるように形成される。したがって、気体噴出口41aは、第1方向D1について均一な噴射量で温調気体を供給することができる。
【0069】
本開示の第3態様に係る栽培ハウスは、第1態様に係る栽培ハウスにおいて、気体噴出口41aは、供給装置42側から当該供給装置42とは反対側に向けて、徐々にピッチが広くなるように形成される。したがって、気体噴出口41aは、第1方向D1について均一な噴射量で温調気体を供給することができる。
【0070】
本開示の第4態様に係る栽培ハウスは、光を透過する建屋10と、建屋10の内部に配置され、栽培対象となる植物Pを載置する栽培棚20と、栽培棚20に設けられ、植物Pの上方を開放するように植物Pの側方を囲う囲い部材30と、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を供給する温調装置40とを備え、栽培棚20は、第1方向D1に長手となるように形成され、温調装置40は、第1方向D1に延びるように形成され、囲い部材30に囲まれた部分に向けた気体噴出口41aが第1方向D1に沿って配置される配管41と、配管41に温調気体を流通させる供給装置42と、気体噴出口41aに着脱可能に設けられ、配管41の内部の気体を気体噴出口41aに案内して噴出させる案内部材50とを有する。
【0071】
この構成によれば、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を保持することができる。このため、植物Pを効率的に温調することができる。また、囲い部材30が植物Pの上方を建屋10の内部に開放するように配置されるため、植物Pに対する日射量の低減及び受粉昆虫の活動低減を抑制することができる。また、栽培棚20の形状及び植物Pの植栽状態に応じた態様で温調気体を供給することができる。更に、案内部材50により配管41の内部の温調気体を気体噴出口41aに案内して噴出させるため、気体噴出口41aにおいてより確実に温調気体を噴出させることができる。複数の気体噴出口41aの中から選択して案内部材50を装着することにより、第1方向D1について気体噴出口41aから噴出される温調気体の流量を柔軟に調整することができる。このため、栽培棚20の囲い部材30で囲まれた部分の第1方向D1の温度差を小さくすることができる。すなわち、囲い部材30で囲まれた部分の第1方向D1についての温度をより均一にすることができる。
【0072】
本開示の第5態様に係る栽培ハウスは、第4態様に係る栽培ハウスにおいて、案内部材50は、気体噴出口41aに装着される筒状の基部51と、基部51の一部が中心軸AXの軸線方向に沿って突出し、中心軸AXに対向する案内面52aにより温調気体を案内する突出部52とを有する。したがって、筒状部材に基づいて案内部材50を容易に作成することができる。
【0073】
本開示の第6態様に係る栽培ハウスは、第5態様に係る栽培ハウスにおいて、案内部材50は、気体噴出口41aに装着された状態で、中心軸の軸回り方向の回転位置を調整可能である。この構成によれば、案内部材50の回転位置を調整することにより、案内面52aの向きを調整することができる。これにより、案内面52aが温調気体を案内する部分の面積を調整することができるため、案内部材50により案内される気体の流量を容易に調整することができる。
【0074】
本開示の第7態様に係る栽培ハウスは、第5態様に係る栽培ハウスにおいて、案内部材50は、突出部52の突出方向の長さを調整可能である。この構成によれば、突出部52の突出方向の長さを調整することにより、案内面52aが温調気体を案内する部分の面積を調整することができるため、案内部材50により案内される気体の流量を容易に調整することができる。
【0075】
本開示の第8態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第7態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、栽培棚20の少なくとも底部を囲うように設けられ、配管41は、栽培棚20の下方かつ囲い部材30の底部31の上方に配置される。したがって、栽培棚20の下方かつ囲い部材30の底部31の上方のスペースを利用することで、配管41を効率的に配置することができる。
【0076】
本開示の第9態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第8態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、栽培棚20は、第1方向D1に対して水平面に沿って交差する第2方向D2に複数配置され、配管41は、栽培棚20ごとに配置され、1つの供給装置42が複数の配管41に接続された構成である。したがって、1つの供給装置42から複数の配管41に対して効率的に温調気体を供給することができる。
【0077】
本開示の第10態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第9態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、供給装置42は、栽培棚20に対して第1方向D1上の位置に配置される。したがって、栽培棚20に対して第2方向D2上の位置にスペースを確保することができるため、作業者が供給装置42に干渉することなく作業を行うことができる。
【0078】
本開示の第11態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第10態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、少なくとも植物Pのうち栽培棚20の上端から延び出す根元部PCの高さ範囲HCを囲う。したがって、植物Pの根元部PCの高さ範囲HCを効率的に温調することができる。
【0079】
本開示の第12態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第11態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、少なくとも植物Pのうち栽培棚20の上端から最も下方に配置される葉PLまでの高さ範囲HLを囲う。したがって、植物Pのうち栽培棚20の上端から最も下方に配置される葉PLまでの高さ範囲HL(例えば根元部PC及びその上部)を効率的に温調することができる。
【0080】
本開示の第13態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第12態様に係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、例えば少なくとも植物Pの全体に亘る高さ範囲Hを囲う構成とすることができる。したがって、植物Pの全体に亘る高さ範囲Hに効率的に温調することができる。
【0081】
本開示の第14態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第13態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、、囲い部材30は、栽培棚20の底部及び側方を囲うように設けられる。したがって、栽培棚20を含めた保持空間Kに温調気体を保持することができる。
【0082】
本開示の第15態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第14態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、少なくとも一部が上下方向D3に移動可能に設けられる。したがって、囲い部材30の少なくとも一部を上下方向D3に移動させることで、作業者が栽培棚20に対して容易にアクセス可能な状況を形成できる。
【0083】
本開示の第16態様に係る栽培ハウスは、第15態様に係る栽培ハウスにおいて、囲い部材30は、栽培棚20に対向する第2壁部33と、栽培棚20に沿って延び、上下に配置される上部フレーム35及び下部フレーム36と、第2壁部33の上端部に設けられ、上部フレーム35と下部フレーム36とに切り替えて掛けることが可能なフック部材34とを有する。したがって、フック部材34を上部フレーム35と下部フレーム36とに切り替えて掛けることにより、第2壁部33を上下方向D3に容易に移動させることができる。
【0084】
本開示の第17態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第16態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、植物Pは、第1方向D1に複数並ぶように配置される。したがって、第1方向D1に複数並ぶ植物Pに対して温調気体を効率的に供給することができる。
【0085】
本開示の第18態様に係る栽培ハウスは、第1態様から第17態様のいずれかに係る栽培ハウスにおいて、栽培棚20は、複数設けられ、少なくとも1つの栽培棚20に配置され、囲い部材30で囲まれた部分の温度を検出可能な検出部25を更に備える。したがって、囲い部材30で囲まれた部分の温度を効率的に検出できる。
【0086】
本開示の第19態様に係る栽培ハウスの改修方法は、光を透過する建屋10と、建屋10の内部に配置され、栽培対象となる植物Pを載置する栽培棚20と、栽培棚20に設けられ、植物Pの上方を開放するように植物Pの側方を囲う囲い部材30と、囲い部材30で囲まれる保持空間Kに温調気体を供給する温調装置40とを備え、栽培棚20は、第1方向D1に長手となるように形成され、温調装置40は、第1方向D1に延びるように形成され、囲い部材30に囲まれた部分に向けた気体噴出口41aが第1方向D1に沿って配置される配管41と、配管41に温調気体を流通させる供給装置42とを有する栽培ハウスの改修方法であって、配管41の内部の気体を気体噴出口41aに案内して噴出させる案内部材50を、気体噴出口41aに装着可能となるように形成する作成工程S110と、形成した案内部材50を気体噴出口41aに装着する装着工程S120とを含む。
【0087】
この構成によれば、既存の気体噴出口41aの寸法に対応して基部51の径を柔軟に設定することができる。また、気体噴出口41aに対応するように設計した案内部材50を当該気体噴出口41aに挿入することで、当該案内部材50を容易に装着できる。このため、栽培ハウスの構成を、気体噴出口41aからの温調気体の流量を調整可能な構成に容易に改修することができる。
【0088】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、温調装置40が温調気体として建屋10の内部又は外部の気体を冷却した冷却気体を供給する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。温調装置40は、温調気体として、建屋10の内部又は外部の気体を加熱した加熱気体を供給可能な構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、フック部材34が上部フレーム35に掛けられた位置を第2壁部33の保持位置P1として説明したが、これに限定されない。上部フレーム35に相当するフレームが上下方向D3に複数段階設けられてもよい。この場合、フック部材34を当該フレームに掛けることで、第2壁部33を上下方向D3に複数段階で移動させることができる。これにより、例えば植物Pの成長に応じて第2壁部33の位置を変化させることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、囲い部材30の第1壁部32が上下方向D3に移動しない構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。囲い部材30は、第1壁部32が上下方向D3に移動する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 建屋
10a 正面部
10b 背面部
10c,10d 側面部
10e 天井部
11 フレーム
12 換気装置
13 遮光シート
14 断熱カーテン
20 栽培棚
21 棚部
22 支持部
22a 車輪
25,25a,25b,25c,25d,25e 検出部
30 囲い部材
30a 開口部
31 底部
32 第1壁部
33 第2壁部
34 フック部材
35 上部フレーム
36 下部フレーム
40 温調装置
41 配管
41a 気体噴出口
42 供給装置
43 ヘッダー
50,50A,50B 案内部材
51 基部
51a 流通部
52,52A,52B 突出部
52a 案内面
61 制御装置
62 表示装置
100 栽培ハウス
AR 温調気体
AX 中心軸
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 上下方向
D4 案内面方向
H,HC,HL 高さ範囲
K 空間
P 植物
P1 保持位置
P2 開放位置
PC 根元部
PL 葉
S110 作成工程
S120 装着工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16