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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064728
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/02 20060101AFI20240507BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01F17/02
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173532
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】三好 弘己
(72)【発明者】
【氏名】同前 友宏
(72)【発明者】
【氏名】椛山 博文
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AB01
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】インダクタ部品の回転を抑制する。
【解決手段】インダクタ部品10は、絶縁体の素体26と、素体26の内部で延びているインダクタ配線30と、インダクタ配線30に接続しており、一部が素体26の外部に露出している引き出し電極と、引き出し電極に接続している外部電極と、を備える。素体26、インダクタ配線30、及び引き出し電極を合わせて部品本体20としたとき、部品本体20は、平面状の底面21Bと、底面21Bとは反対を向く面を天面21Aと、を有する。そのとき、底面21Bの面積は、天面21Aの面積よりも大きい。なお、任意の箇所での底面21Bに平行な断面の断面積を第1断面積とし、当該任意の箇所に対して底面21B側での、底面21Bに平行な断面の断面積を第2断面積としたとき、第2断面積は、常に第1断面積以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体の素体と、前記素体の内部で延びているインダクタ配線と、前記インダクタ配線に接続しており、一部が前記素体の外部に露出している引き出し電極と、前記引き出し電極に接続している外部電極と、を備え、
前記素体、前記インダクタ配線、及び前記引き出し電極を合わせて部品本体としたとき、
前記部品本体は、平面状の底面と、前記底面とは反対を向く面を天面と、を有し、
前記底面の面積は、前記天面の面積よりも大きく、
前記部品本体の任意の箇所での前記底面に平行な断面の断面積を第1断面積とし、前記任意の箇所に対して前記底面側での前記底面に平行な断面の断面積を第2断面積としたとき、第2断面積は、常に第1断面積以上である
インダクタ部品。
【請求項2】
前記底面の面積は、前記天面の面積の1.03倍以上である
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記部品本体の形状は四角錐台状である
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記底面に直交する方向において、前記底面と前記天面との中間点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記中間点から前記天面までの前記素体の平均重量密度より大きい
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記底面に直交する方向において、前記底面から前記部品本体の前記底面に直交する方向での寸法の10分の1の点を特定点としたとき、
前記特定点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記特定点から前記天面までの前記素体の平均重量密度よりも大きい
請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記特定点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記特定点から前記天面までの前記素体の平均重量密度の1.1倍以上である
請求項5に記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記特定点から前記底面までの前記素体の材料は、前記特定点から前記天面までの前記素体の材料と同一である
請求項5または請求項6に記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記インダクタ配線は、前記底面に直交する方向に配列され、前記底面に平行な平面上に延びる複数のインダクタ導体と、前記底面に直交する方向に隣接する複数の前記インダクタ導体を互いに接続するビア導体と、を含む、
請求項1に記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインダクタ部品は、直方体状の素体と、外部電極と、を備える。素体は、複数のコイル層と、2つの補強層と、を有する。コイル層は、絶縁層と、絶縁層上を延びるコイルパターンと、絶縁層を貫通する導電性ビアと、を含む。複数のコイル層は、積層されている。隣り合うコイル層のコイルパターンは、導電性ビアで互いに接続している。補強層は、コイル層の積層体における一方の主面、及びその反対側の主面に積層されている。補強層の材質は、絶縁層の材質よりも剛性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているようなインダクタ部品は、例えば所望の電気的特性を得るために、インダクタ部品の特定の面を基板側に向けた状態で、基板に実装される。しかしながら、インダクタ部品を包装材の中にパッケージしたり、パッケージされたインダクタ部品を基板に実装したりする際に、電子部品が転がることがある。この場合、意図した面とは異なる面を基板側に向けた状態で、インダクタ部品が基板に実装されるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、絶縁体の素体と、前記素体の内部で延びているインダクタ配線と、前記インダクタ配線に接続しており、一部が前記素体の外部に露出している引き出し電極と、前記引き出し電極に接続している外部電極と、を備え、前記素体、前記インダクタ配線、及び前記引き出し電極を合わせて部品本体としたとき、前記部品本体は、平面状の底面と、前記底面とは反対を向く面を天面と、を有し、前記底面の面積は、前記天面の面積よりも大きく、前記部品本体の任意の箇所での前記底面に平行な断面の断面積を第1断面積とし、前記任意の箇所に対して前記底面側での前記底面に平行な断面の断面積を第2断面積としたとき、第2断面積は、常に第1断面積以上であるインダクタ部品である。
【0006】
上記構成によれば、底面の面積は、天面の面積よりも大きい。このように、より面積が大きい面を底面とすることで、底面を下に向けて載置されたインダクタ部品が転がってしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
インダクタ部品が転がってしまうことを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インダクタ部品の斜視図である。
図2図1における2-2線に沿う断面図である。
図3図2における3-3線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<インダクタ部品の一実施形態>
以下、インダクタ部品の一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大又は誇張して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図面中のものと異なる場合がある。
【0010】
(インダクタ部品の全体構成について)
図1に示すように、インダクタ部品10は、部品本体20と、第1外部電極24Aと、第2外部電極24Bと、を備えている。
【0011】
図1に示すように、部品本体20は、略四角錐台状である。そのため、部品本体20は、6つの平面状の外面を有している。6つの外面のうちの特定の1つの平面を底面21Bとする。なお、底面21Bは、インダクタ部品10を基板に実装する時に、基板に向かい合う面である。また、底面21Bとは反対を向く面を天面21Aとする。すなわち、底面21Bと天面21Aは略平行である。そして、底面21Bに接続する特定の1つの面を第1主面22Aとする。そして、部品本体20において、第1主面22Aとは反対側の面を第2主面22Bとする。さらに、図3に示すように、底面21Bに接続する、第1主面22A及び第2主面22Bとは別の面を第1端面23Aとする。そして、部品本体20において、第1端面23Aとは反対側の面を第2端面23Bとする。なお、ここでいう「平面状」とは、表面における微細な凹凸などを許容するものである。つまり、図1に図示するように部品本体20を全体視したときに、平面として認識できれば「平面状」という。
【0012】
図1に示すように、底面21B及び天面21Aは、略長方形状である。また、第1主面22A及び第2主面22Bは、いずれも略台形状である。第1主面22A及び第2主面22Bの上底は、それぞれ天面21Aの長辺に一致している。また、第1主面22A及び第2主面22Bの下底は、それぞれ底面21Bの長辺に一致している。また、第1端面23A及び第2端面23Bは、略台形状である。第1端面23A及び第2端面23Bの上底は、それぞれ天面21Aの短辺に一致している。また、第1端面23A及び第2端面23Bの下底は、それぞれ底面21Bの短辺に一致している。
【0013】
以下の説明では、底面21Bの長辺に平行な方向の軸を、第1軸Xとして説明する。そして、底面21Bの短辺に平行な方向の軸を、第2軸Yとする。さらに、底面21Bに直交する軸を第3軸Zとする。そして、第1軸Xに沿う方向のうちの第1端面23Aが向く方向を第1正方向X1とし、第1正方向X1と反対方向を第1負方向X2とする。また、第2軸Yに沿う方向のうちの第1主面22Aが向く方向を第2正方向Y1とし、第2正方向Y1と反対方向を第2負方向Y2とする。さらに、第3軸Zに沿う方向のうちの天面21Aが向く方向を第3正方向Z1とし、第3正方向Z1と反対方向を第3負方向Z2とする。
【0014】
第1外部電極24Aは、部品本体20の外表面のうち、第1端面23Aの全面、第1主面22A、第2主面22B、天面21A及び底面21Bの第1正方向X1側の一部の面に形成されている。すなわち、第1外部電極24Aは、5面電極である。第1外部電極24Aの材質は、銀、銅などの導電性材料である。
【0015】
第2外部電極24Bは、部品本体20の外表面のうち、第2端面23Bの全面、第1主面22A、第2主面22B、天面21A及び底面21Bの第1負方向X2側の一部の面に形成されている。すなわち、第2外部電極24Bは、5面電極である。第2外部電極24Bの材質は、銀、銅などの導電性材料である。
【0016】
図3に示すように、部品本体20は、素体26と、インダクタ配線30と、第1引き出し電極25Aと、第2引き出し電極25Bと、を備えている。
素体26は、部品本体20のうち、インダクタ配線30、第1引き出し電極25A、及び第2引き出し電極25Bを除く部分である。素体26は、上述した部品本体20の形状を反映しており、略四角錐台状である。素体26の材質は、ガラス、樹脂、非磁性の絶縁粒子などの混合物である。非磁性の絶縁粒子の例は、アルミナである。したがって、素体26は絶縁体である。
【0017】
図2及び図3に示すように、インダクタ配線30は、部品本体20の内部を延びている。インダクタ配線30は、第3軸Z方向に沿う軸を中心とした螺旋状に延びている。インダクタ配線30は、第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fと、第1ビア導体32A~第5ビア導体32Eと、を有している。第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fの材質は、銀、銅などの導電性材料である。同様に、第1ビア導体32A~第5ビア導体32Eの材質は、第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fと同一の銀、銅などの導電性材料である。
【0018】
図2及び図3に示すように、第1インダクタ導体31Aは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第1インダクタ導体31Aは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。
【0019】
第2インダクタ導体31Bは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第2インダクタ導体31Bは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。第2インダクタ導体31Bは、第1インダクタ導体31Aに対して、第3正方向Z1側に間隔をあけて位置している。
【0020】
第3インダクタ導体31Cは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第3インダクタ導体31Cは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。第3インダクタ導体31Cは、第2インダクタ導体31Bに対して、第3正方向Z1側に間隔をあけて位置している。
【0021】
第4インダクタ導体31Dは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第4インダクタ導体31Dは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。第4インダクタ導体31Dは、第3インダクタ導体31Cに対して、第3正方向Z1側に間隔をあけた位置している。
【0022】
第5インダクタ導体31Eは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第5インダクタ導体31Eは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。第5インダクタ導体31Eは、第4インダクタ導体31Dに対して、第3正方向Z1側に間隔をあけた位置している。
【0023】
第6インダクタ導体31Fは、素体26の内部において、底面21Bに対して平行に延びている。また、第6インダクタ導体31Fは、底面21Bのいずれかの辺に対して平行に延びている。第6インダクタ導体31Fは、第5インダクタ導体31Eに対して、第3正方向Z1側に間隔をあけた位置している。
【0024】
第1ビア導体32Aは、第3軸Zに平行に延びている。第1ビア導体32Aは、第1インダクタ導体31Aの一端と第2インダクタ導体31Bの一端とを接続している。
第2ビア導体32Bは、第3軸Zに平行に延びている。第2ビア導体32Bは、第2インダクタ導体31Bにおける第1ビア導体32Aが接続されているのとは反対側の端と、第3インダクタ導体31Cの一端とを接続している。
【0025】
第3ビア導体32Cは、第3軸Zに平行に延びている。第3ビア導体32Cは、第3インダクタ導体31Cにおける第2ビア導体32Bが接続されているのとは反対側の端と、第4インダクタ導体31Dの一端とを接続している。
【0026】
第4ビア導体32Dは、第3軸Zに平行に延びている。第4ビア導体32Dは、第4インダクタ導体31Dにおける第3ビア導体32Cが接続されているのとは反対側の端と、第5インダクタ導体31Eの一端とを接続している。
【0027】
第5ビア導体32Eは、第3軸Zに平行に延びている。第5ビア導体32Eは、第5インダクタ導体31Eにおける第4ビア導体32Dが接続されているのとは反対側の端と、第6インダクタ導体31Fの一端とを接続している。
【0028】
このように、第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31F、及び第1ビア導体32A~第5ビア導体32Eは、1本のインダクタ配線30になっている。そして、第3軸Zに沿う方向を向いて部品本体20を透視したときに、第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fは、四角枠状の配線軌跡上に位置している。なお、これら第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31F、及び第1ビア導体32A~第5ビア導体32Eは、互いに一体化していて、明確な境界を有していないこともある。
【0029】
第1引き出し電極25A及び第2引き出し電極25Bは、素体26の内部の導電体のうち、第3軸Zに沿って透視したとき、インダクタ配線30の四角枠状の配線軌跡と重複しない部分である。
【0030】
第1引き出し電極25Aは、部品本体20の内部を延びている。また、第1引き出し電極25Aは、底面21Bに平行に延びている。第1引き出し電極25Aの第1端は、第1インダクタ導体31Aにおける第1ビア導体32Aが接続しているのとは反対側に接続している。第1引き出し電極25Aにおける第1端とは反対側の第2端は、素体26の外表面に露出している。そして、第1引き出し電極25Aの第2端は、第1外部電極24Aに接続している。第1引き出し電極25Aの材質は、銀、銅などの導電性材料である。また、第1引き出し電極25Aの材質は、インダクタ配線30と同一である。
【0031】
第2引き出し電極25Bは、部品本体20の内部に延びている。また、第2引き出し電極25Bは、底面21Bに平行に延びている。第2引き出し電極25Bの第1端は、第6インダクタ導体31Fにおける第5ビア導体32Eが接続しているのとは反対側に接続している。第2引き出し電極25Bにおける第1端とは反対側の第2端は、素体26の外表面に露出している。そして、第2引き出し電極25Bの第2端は、第2外部電極24Bに接続している。第2引き出し電極25Bの材質は、銀、銅などの導電性材料である。また、第2引き出し電極25Bの材質は、インダクタ配線30と同一である。
【0032】
なお、部品本体20は、いわゆるシート積層工法により製造される。つまり、絶縁体のみの層、第1インダクタ導体31A、第1引き出し電極25A及び絶縁体を含む層、第1ビア導体32A及び絶縁体を含む層、・・・と順番に積層する。その後、積層体を焼成することにより、部品本体20が製造される。また、積層体の焼成時に、素体26に含まれる樹脂が揮発したりガラスが焼結したりする。これにより、素体26は、焼成前に比べて若干縮む。
【0033】
(面積及び密度について)
図1に示すように、部品本体20において、底面21Bの面積は、天面21Aの面積よりも大きい。具体的には、底面21Bの面積は、天面21Aの面積の1.03倍以上である。なお、各図面では、底面21Bの面積と天面21Aの面積との違いを誇張して図示している。ここで、部品本体20の任意の箇所での底面21Bに平行な断面の断面積を第1断面積とする。また、当該箇所よりも底面21B側において、底面21Bに平行な断面の断面積を第2断面積とする。そのとき、第2断面積は、常に第1断面積以上である。つまり、部品本体20を、底面21Bに平行に、天面21A側から底面21B側へと連続的に断面視していったとき、当該断面の面積は、底面21B側に向けて増加することはあっても、減少することはない。
【0034】
図2に示すように、底面21Bに垂直且つ第2軸Yに平行な断面で部品本体20を断面視したとする。この部品本体20の断面において、天面21A側の辺を第1上底とし、底面21B側の辺を第1下底とする。そのとき、本実施形態において、第1下底の寸法LB1は、第1上底の寸法UB1の1.03倍である。また、図3に示すように、底面21Bに垂直且つ第1軸Xに平行な断面で部品本体20を断面視したとする。この部品本体20の断面において、天面21A側の辺を第2上底とし、底面21B側の辺を第2下底とする。そのとき、本実施形態において、第2下底の寸法LB2は、第2上底の寸法UB2の1.03倍である。したがって、本実施形態において、底面21Bの面積は、天面21Aの面積の約1.06倍である。
【0035】
図2に示すように、底面21B上の任意の一点から、底面21Bに直交する方向に天面21Aまでの仮想線分LSを仮想する。仮想線分LSの底面21B側の端点から、仮想線分LSの寸法の10分の1の点を特定点SPとする。そして、素体26のうち、天面21Aから特定点SPまでの範囲を天面側部分26A、特定点SPから底面21Bまでの範囲を底面側部分26Bとする。このとき、底面側部分26Bの絶縁粒子の含有割合は、天面側部分26Aの絶縁粒子の含有割合よりも大きい。その結果として、底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度よりも大きくなっている。具体的には、底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度の1.1倍以上である。また、底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度の1.5倍以下である。なお、天面側部分26A及び底面側部分26Bは、含有する材料そのものは同じである。そのため、底面側部分26Bの絶縁粒子の含有割合は、天面側部分26Aの含有割合に対して、1.1倍以上1.5倍以下である。また、天面側部分26A及び底面側部分26Bの間に明確な境界が存在しないこともある。
【0036】
また、底面側部分26Bの絶縁粒子の含有割合が大きいことから、底面側部分26Bは、天面側部分26Aに比べて、焼成時に縮みにくい。この結果として、上述したように、第1下底の寸法LB1が第1上底の寸法UB1より大きく、且つ第2下底の寸法LB2が第2上底の寸法UB2より大きくなっている。
【0037】
また、仮想線分LSの中点を底面21Bと天面21Aとの中間点MPとする。このとき、底面側部分26Bの平均重量密度が大きいことを反映して、中間点MPから底面21Bまでの素体26の平均重量密度は、中間点MPから天面21Aまでの素体26の平均重量密度よりも大きい。
【0038】
なお、素体26の任意の箇所の重量密度は、インダクタ部品10から素体26の一部分を抜き取り、抜き取った部分の重量の測定値を、当該部分の体積の測定値で除算することにより求める。また、天面側部分26Aの平均重量密度は、天面側部分26Aのうち、例えば任意の3か所について、上記方法により求めた重量密度の平均値である。この点、底面側部分26Bについても同様である。
【0039】
(本実施形態の効果について)
(1)上記実施形態によれば、底面21Bの面積は、天面21Aの面積よりも大きい。このように、より面積が大きい面を底面21Bとすることで、底面21Bを下に向けて載置されたインダクタ部品10が転がってしまうことを抑制できる。
【0040】
(2)上記実施形態において、底面21Bの面積は、天面21Aの面積に対して1.03倍以上である。つまり、底面21Bの面積は、天面21Aの面積に対して十分大きい。したがって、製造上の誤差等によって底面21Bの面積に多少のずれが生じても、インダクタ部品10が転がることを防ぐという効果を確実に発揮できる。
【0041】
(3)上記実施形態において、部品本体20の形状は四角錐台状である。このような四角錐台形状であれば、例えば素体26中の絶縁粒子などの含有割合を箇所毎に変更するといったことで実現できる。したがって、底面21Bの面積を天面21Aの面積に比べて大きくすることを、製造工程及び製造装置の大幅な変更を伴うことなく実現できる。
【0042】
(4)上記実施形態によれば、底面側部分26Bの平均重量密度が、天面側部分26Aの平均重量密度よりも大きい。その結果、部品本体20の重心が、中間点MPに対して底面21B側に位置する。このように部品本体20の重心が底面21B側に位置することで、インダクタ部品10は回転しにくくなる。
【0043】
(5)上記実施形態によれば、底面側部分26Bの平均重量密度が、天面側部分26Aの平均重量密度の1.1倍以上である。このように底面側部分26Bの平均重量密度が、天面側部分26Aに対して十分に大きければ、その分、部品本体20の重心を底面21Bに近づけることができる。
【0044】
(6)上記実施形態によれば、底面側部分26Bの平均重量密度が、天面側部分26Aの平均重量密度の1.5倍以下である。これにより、インダクタ部品10の製造時に、底面側部分26B及び天面側部分26Aのそれぞれの絶縁粒子の含有割合を変えるという工程を行いさえすれば、製造工程及び製造装置の大幅な変更を伴うことなく、(1)の効果を発揮できるインダクタ部品10を製造できる。
【0045】
(7)上記実施形態において、底面側部分26Bの絶縁粒子の含有割合は、天面側部分26Aの含有割合の1.1倍以上1.5倍以下である。当該含有割合が1.5倍よりも大きい場合、それに伴って素体26の焼成時に各部分の収縮率が大きく異なり、クラック等が発生しやすくなる。したがって、上記実施形態によれば、素体26の各部分の収縮率の違いに起因するクラック等を防ぎつつ、インダクタ部品10が転がることを防ぐという効果を得ることができる。
【0046】
(8)上記実施形態によれば、素体26の天面側部分26Aの材料は、底面側部分26Bの材料と同一である。そのため、インダクタ部品10を製造する際に、異なる種類の材料を用意する手間が省ける。また、各部分によって絶縁体が含む絶縁粒子の含有割合を異ならせるだけで済むため、製造が容易である。
【0047】
(9)上記実施形態によれば、インダクタ配線30は、底面21Bに直交する方向に配列され、底面21Bに平行な平面上に延びる複数のインダクタ導体を含む。また、インダクタ配線30は、底面21Bに直交する方向に隣接する第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fを互いに接続する第1ビア導体32A~第5ビア導体32Eを含む。すなわち、部品本体20は、いわゆるシート積層工法を用いて製造される。そのため、インダクタ部品10の製造工程において、天面21A及び底面21Bの面積を異ならせたり、素体26の天面側部分26A及び底面側部分26Bの平均重量密度を異ならせたりする際に、層によって絶縁体が含む絶縁粒子の含有割合を異ならせるだけで済む。
【0048】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・部品本体20の形状は、第2断面積が常に第1断面積以上であることを満たせば、四角錐台状に限らない。例えば、四角錐台の各面が曲面になっていてもよい。すなわち、底面21Bに垂直且つ第2軸Yに沿う方向の面で部品本体20を断面視したとき、又は底面21Bに垂直且つ第1軸Xに沿う方向の面で部品本体20を断面視したときに、断面は台形状でなくてもよい。また四角錐台の各面が曲面である場合、その形状は凸曲面であってもよいし、凹曲面であってもよい。また、部品本体20を、底面21Bに平行に、天面21A側から底面21B側へと連続的に断面視していったとき、当該断面の面積が連続的に増加するのではなく、段階的に増加してもよい。さらに、天面21A及び底面21Bは長方形状に限らない。
【0050】
・第1主面22A、第2主面22B、第1端面23A及び第2端面23Bの形状は、台形状に限られない。例えば、第1主面22A及び第2主面22Bのみが台形状で、第1端面23A及び第2端面23Bが長方形状でもよい。
【0051】
・第1外部電極24A、第2外部電極24B、第1引き出し電極25A、第2引き出し電極25Bの材質は、上記実施形態の例に限られない。なお、これらの電極の材質は、素体26の材質に比べてネッキングの開始温度が早い金属であることが好ましい。
【0052】
・第1外部電極24A及び第2外部電極24Bは、例えば、第1外部電極24Aは、底面21Bから第1端面23Aに跨って積層された電極、いわゆるL字電極であってもよい。
【0053】
・第1外部電極24Aの表面及び第2外部電極24Bの表面に、ニッケル、錫、金などが積層されていてもよい。なお、これら第1外部電極24Aの表面及び第2外部電極24Bの表面に他の層を積層する方法は問わないが、例えばめっき処理が挙げられる。
【0054】
・第1引き出し電極25A及び第2引き出し電極25Bの材質は、第1インダクタ導体31A~第6インダクタ導体31Fと同一のものに限られない。
・素体26の材質は、上記実施形態の例に限らない。また、素体26の一部が、他の部分と異なる材質の絶縁体であってもよい。素体26は、ガラスの焼結体中に絶縁粒子として結晶性のフィラーが含有されたものであってもよい。
【0055】
・インダクタ配線30の構成は、上記実施形態の例に限られない。インダクタ配線30は、部品本体20の内部において延びていればよく、必要な特性に合わせて、形状、長さ及び幅等、適宜変更すればよい。また、上記実施形態では、インダクタ配線30は、第3軸Z方向に沿う軸を中心とした螺旋状に延びているが、例えば、第1軸X又は第2軸Yに沿う軸を中心とした螺旋状に延びていてもよい。
【0056】
・底面21Bの面積は、天面21Aの面積よりも大きければよく、1.03倍未満でもよい。
・底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度の1.1倍未満でもよい。また、底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度と同一であってもよい。つまり、素体26の密度が全体に亘って均一であってもよい。ただし、部品本体20の重心を中間点MPに対して底面21B側に位置させるという観点では、中間点MPから底面21Bまでの素体26の平均重量密度は、中間点MPから天面21Aまでの素体26の平均重量密度よりも大きいことが好ましい。
【0057】
・底面側部分26Bの平均重量密度は、天面側部分26Aの平均重量密度の1.5倍より大きくてもよい。また、底面側部分26Bの絶縁粒子の含有割合は、天面側部分26Aの含有割合に対して、1.5倍より大きくてもよい。
【0058】
・天面側部分26Aの材料は、底面側部分26Bの材料と同一でなくてもよい。各部分の材料が異なっていても、底面21Bの面積が天面21Aの面積よりも大きければ、インダクタ部品10が回転することを抑制しやすい。
【0059】
・上記実施形態では、底面側部分26B及び天面側部分26Aの絶縁粒子の含有率の違いにより、底面21Bの面積が天面21Aの面積よりも大きくなっていたが、これに限らない。例えば、部品本体20をシート積層工法で製造する際、底面21B側の層から天面21A側の層に向かうにつれて、各層の面積を僅かずつ小さくしていってもよい。また、複数の部品本体20を含むブロックを個片化する際に、天面21A又は底面21Bに対して垂直方向から斜めの方向に沿ってカットすることで、底面21Bの面積を天面21Aの面積より大きくなるようにしてもよい。
【0060】
・部品本体20の製造方法は、シート積層工法に限られない。例えば、印刷積層等でもよい。また、シート積層工法として、絶縁体シート上にインダクタ導体や引き出し電極を印刷したものを積み重ね、圧着することにより形成してもよい。
【0061】
・素体26の天面側部分26A及び底面側部分26Bの平均重量密度の算出方法として、インダクタ部品10から素体26の一部分を抜き取ることが困難である場合は、天面側部分26Aと同じ組成を持つ個体及び底面側部分26Bと同じ組成を持つ個体を作製し、それら個体の重量及び体積を測定して平均重量密度を求めてもよい。この点、素体26の任意の箇所の重量密度についても同様である。
【0062】
<付記>
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]
絶縁体の素体と、前記素体の内部で延びているインダクタ配線と、前記インダクタ配線に接続しており、一部が前記素体の外部に露出している引き出し電極と、前記引き出し電極に接続している外部電極と、を備え、
前記素体、前記インダクタ配線、及び前記引き出し電極を合わせて部品本体としたとき、
前記部品本体は、平面状の底面と、前記底面とは反対を向く面を天面と、を有し、
前記底面の面積は、前記天面の面積よりも大きく、
前記部品本体の任意の箇所での前記底面に平行な断面の断面積を第1断面積とし、前記任意の箇所に対して前記底面側での前記底面に平行な断面の断面積を第2断面積としたとき、第2断面積は、常に第1断面積以上であるインダクタ部品。
【0063】
[2]
前記底面の面積は、前記天面の面積の1.03倍以上である[1]に記載のインダクタ部品。
【0064】
[3]
前記部品本体の形状は四角錐台状である[1]又は[2]に記載のインダクタ部品。
[4]
前記底面に直交する方向において、前記底面と前記天面との中間点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記中間点から前記天面までの前記素体の平均重量密度より大きい[1]~[3]のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
【0065】
[5]
前記底面に直交する方向において、前記底面から前記部品本体の前記底面に直交する方向での寸法の10分の1の点を特定点としたとき、
前記特定点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記特定点から前記天面までの前記素体の平均重量密度よりも大きい[1]~[4]のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
【0066】
[6]
前記特定点から前記底面までの前記素体の平均重量密度は、前記特定点から前記天面までの前記素体の平均重量密度の1.1倍以上である[5]に記載のインダクタ部品。
【0067】
[7]
前記特定点から前記底面までの前記素体の材料は、前記特定点から前記天面までの前記素体の材料と同一である[5]または[6]に記載のインダクタ部品。
【0068】
[8]
前記インダクタ配線は、前記底面に直交する方向に配列され、前記底面に平行な平面上に延びる複数のインダクタ導体と、前記底面に直交する方向に隣接する複数の前記インダクタ導体を互いに接続するビア導体と、を含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載のインダクタ部品。
【符号の説明】
【0069】
10…インダクタ部品
20…部品本体
21A…天面
21B…底面
24A…第1外部電極
24B…第2外部電極
26…素体
30…インダクタ配線
MP…中間点
SP…特定点
図1
図2
図3