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特開2024-64738アゼライン酸誘導体およびこれを含有するアゼライン酸含有皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064738
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アゼライン酸誘導体およびこれを含有するアゼライン酸含有皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20240507BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240507BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 31/23 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61Q19/00
A61K31/23
A61P17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173546
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】522424566
【氏名又は名称】欣蘭国際科技股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】300018150
【氏名又は名称】株式会社ミリオナ化粧品
(71)【出願人】
【識別番号】517008401
【氏名又は名称】Do Me Care株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】陳淑美
(72)【発明者】
【氏名】阪本 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】福間 正
(72)【発明者】
【氏名】塚本 大介
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC331
4C083AC332
4C083AC352
4C083AC371
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083EE10
4C083EE14
4C083EE16
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206DB29
4C206DB45
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA42
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA06
4C206ZA89
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚外用剤を外用した皮膚に対する刺激を抑制できるアゼライン酸誘導体を提供する。
【解決手段】AO-C(=O)-R-C(=O)-OA(式1)または
BO-C(=O)-R-C(=O)-OA(式2)
[(式1)および(式2)中のRは炭素数7の直鎖の炭化水素基であり、Aは炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表され、Bは水素または炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1である。]で表されるアゼライン酸誘導体とする。さらに、活性剤と、油性剤と、水性剤とを含有し、アゼライン酸誘導体が油性剤として含有されている皮膚外用剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(式1)または(式2)で表される
アゼライン酸誘導体。
【化1】
【化2】
(式1および式2中のRは炭素数7の直鎖の炭化水素基であり、Aは炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表され、Bは水素または炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される)
【請求項2】
前記(式1)および前記(式2)のAがOを1つ有する
請求項1記載のアゼライン酸誘導体。
【請求項3】
前記(式1)および前記(式2)のAがn=3である
請求項1記載のアゼライン酸誘導体。
【請求項4】
請求項1、2、または3記載のアゼライン酸誘導体を含有する
アゼライン酸含有皮膚外用剤。
【請求項5】
油性剤と、
水性剤と、
活性剤とを含有し、
前記油性剤の少なくとも一部として前記アゼライン酸誘導体を含有している
請求項4記載のアゼライン酸含有皮膚外用剤。
【請求項6】
前記アゼライン酸誘導体の含有量が、前記油性剤全体の10~100質量%である
請求項5記載のアゼライン酸含有皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、皮膚外用剤に含有されるアゼライン酸誘導体およびこれを含有するアゼライン酸含有皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アゼライン酸を含有した皮膚外用剤が使用されている。アゼライン酸はメラニンの生成を抑える美白作用およびニキビの発生を抑制する抗ニキビ作用を有しており、皮膚外用剤に含有することで好適に使用できるとされている。また、アゼライン酸を効率よく皮膚外用剤に含有させるため、アゼライン酸を誘導体として含有する方法がある。
【0003】
例えば、アゼライン酸誘導体であるアゼロイルジグリシンカリウムをクリーム、ローション、セラム、ジェルおよびモイスチャライザーのうち少なくとも1つの形態に含有することが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、アゼロイルジグリシンカリウムは、皮膚外用剤に含有させた場合、皮膚外用剤に含有されている乳化剤による乳化を壊してしまう性質がある。すなわち、アゼロイルジグリシンカリウムをアゼライン酸誘導体として使用すると、時間の経過で再結晶が起こり、皮膚外用剤内にアゼライン酸が析出してしまい、外用した皮膚に強い刺激が与えられるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2018-501298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、含有した皮膚外用剤を外用した皮膚に対する刺激を抑制できるアゼライン酸誘導体を提供し、ユーザの満足度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、(式1)または(式2)で表されるアゼライン酸誘導体であることを特徴とする。
【化1】
【化2】
(式1および式2中のRは炭素数7の直鎖の炭化水素基であり、Aは炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表され、Bは水素または炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される。)
【発明の効果】
【0008】
この発明により、含有した皮膚外用剤を外用した皮膚に対する刺激を抑制できるアゼライン酸誘導体を提供し、ユーザの満足度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態の一つを示す。
本実施の形態のアゼライン酸含有皮膚外用剤について、まずアゼライン酸誘導体について説明し、次にこのアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤について説明する。
【0010】
<アゼライン酸誘導体>
本発明のアゼライン酸誘導体は、(式1)または(式2)の一般式で表される。
【化1】
【化2】
(式1および式2中のRは炭素数7の直鎖の炭化水素基であり、Aは炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表され、Bは水素または炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される。)
【0011】
(式1)および(式2)中のRは、炭素数7の直鎖の炭化水素基である。したがって、Rは、一般式C14で表される。
【0012】
(式1)および(式2)中のAは、炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される。nは、1以上の整数である。また、nは、3とする(一般式C、CO、またはCで表される)ことが好ましい。さらに、Aは、Oをヒドロキシ基として1つ含む(一般式C2n+1Oで表される)ことが好ましい。また、Aは、2-プロパノール基とすることがより好ましい。
【0013】
(式2)中のBは、水素または炭化水素基を含む一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される。nは、1以上の整数であり、Aのnとは異なる整数であるか、同じ整数であってBの構造がAの構造と異なる。また、Bは、ヒドロキシ基と炭化水素基を含むことが好ましい。
【0014】
本発明のアゼライン酸誘導体として最も好ましい形態は、nが3の一般式A(2-プロパノール基)を2つ有するアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールである。
【0015】
本発明のアゼライン酸誘導体は、アゼライン酸と、nの数に対応する所定の炭化水素基を有するアルコール、ジオール、またはトリオールとを混合し、加熱することで合成して作成される。例えば、アゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールは、アゼライン酸と1,2-プロピレングリコールとを混合し、加熱することで合成(作成)される。
【0016】
<皮膚外用剤>
本発明のアゼライン酸誘導体は、皮膚外用剤の含有成分として好適に使用できる。ここで言う皮膚外用剤とは、医薬品および医薬部外品を含む概念である。皮膚外用剤は、その形態には特に制限はなく、液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状、泡状、ジェリー状、クリーム状等の任意の形態をとることができる。この皮膚外用剤としては、具体的には、化粧水(ナノエマルジョン)、ローション、クリーム、乳液、美容液、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックス、ファンデーション、アイライナー、アイブロウペンシル、マスカラ、アイシャドウ、チーク、リップスティック、口紅、おしろい、パウダー、パック、パックマスク、香水、オーデコロン、洗顔フォーム、洗顔料、クレンジングフォーム、クレンジングオイル、クレンジングジェル、クレンジングミルク、歯磨、石鹸、エアゾル、浴用剤、養毛剤、日焼け防止剤(日焼け止め)等とすることができる。
【0017】
本発明のアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤は、油性剤と、水性剤と、活性剤とを含有する。油性剤の含有量は、全体を100質量%として、0.01質量%以上とすることができ、0.05質量%以上とすることが好ましく、0.1質量%以上とすることがより好ましい。また、油性剤の含有量は、全体を100質量%として、50質量%以下とすることができ、40質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることがより好ましい。
【0018】
また、油性剤の好適な含有量は、皮膚外用剤の種類によって決定される。例えば、化粧水として使用する場合の油性剤の含有量は、全体を100質量%として0.1質量%以上とすることが好ましい。また、例えば、乳液として使用する場合の油性剤の含有量は、全体を100質量%として5質量%以上とすることが好ましい。さらに、例えば、クリームとして使用する場合の油性剤の含有量は、全体を100質量%として20質量%以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明のアゼライン酸誘導体は、従来の水溶性のアゼライン酸誘導体であるアゼロイルジグリシンカリウムと異なり、油性剤中に溶解しており、皮膚外用剤中では油性剤として扱われる。
【0020】
また、アゼライン酸誘導体の含有量は、油性剤の含有量を100質量%として、10質量%以上含有することができ、30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましい。さらに、アゼライン酸誘導体の含有量は、油性剤の含有量を100質量%として、100質量%以下含有することができる。なお、油性剤に対するアゼライン酸誘導体の含有量は、含有される皮膚外用剤の種類や形態によって異なる。例えば、皮膚外用剤の種類が化粧水の場合、油性剤の全体に対する含有量を低くする必要があるため、油性剤としてアゼライン酸誘導体のみ、すなわち、油性剤100質量%の内、アゼライン酸誘導体を100質量%含有することが好ましい。乳液やクリームの場合は、油性剤100質量%の内、アゼライン酸誘導体を90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましい。皮膚外用剤が乳液の場合、アゼライン酸誘導体の含有量は、5質量%以上とすることが好ましい。皮膚外用剤がクリームの場合、アゼライン酸誘導体の含有量は、10質量%以上とすることが好ましい。皮膚外用剤が化粧水の場合、アゼライン酸誘導体の含有量は、1質量%程度とすることができる。
【0021】
含有される油性剤は、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができる。例えば、乳化安定剤、感触改良剤、エモリエント剤、抗酸化剤、防腐剤等として含有される各成分であり、これらの内から1つまたは複数を選択して含有することができる。また、含有される水性剤は、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができる。例えば、基剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、安定剤、キレート剤等として含有される各成分であり、これらの内から1つまたは複数を選択して含有することができる。さらに、含有される活性剤は、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができる。例えば、乳化剤として含有される各成分である。
【0022】
乳化剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、オレイン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-2、レシチン、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、テトラオレイン酸ソルベス-30、ステアリン酸グリセリル(SE)、ステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリコール、セテアリルアルコール・セテアリルグルコシド、PEG-40水添ヒマシ油、べへネス-20から1つ以上を使用することが好ましい。
【0023】
乳化安定剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸から1つ以上を使用することが好ましい。
【0024】
保湿剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、ブチレングリコール(BG)、グリセリン、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、ヘキサンジオール、ペンチレングリコール、ベタインから1つ以上を使用することが好ましい。
【0025】
防腐剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、フェノキシエタノール、パラベン(メチルパラベン、プロピルパラベン)から1つ以上を使用することが好ましい。
【0026】
増粘剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、キサンタンガム、カルボマー、スクレロチウムガムを使用することが好ましい。
【0027】
感触改良剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができる。
【0028】
エモリエント剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、ジメチコン、ラウロイルグルタミン酸ジコレステリル、ラウロイルグルタミン酸ジベヘニル、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル、スクワラン、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、水添ポリブテン、ワセリンから1つ以上を使用することが好ましい。
【0029】
抗酸化剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、トコフェロールを使用することが好ましい。
【0030】
キレート剤としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、EDTA-2Na(エデト酸ナトリウム)を使用することが好ましい。
【0031】
安定剤としては、一般的に化粧料に使用される成分とすることができる。
【0032】
基材としては、一般的に化粧料に使用される成分とすることができる。
【0033】
また、本発明のアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤は、1つ以上の訴求成分をさらに含有することができる。訴求成分としては、例えば、抗シワ成分、保湿成分、刺激緩和成分、血流促進成分、美白成分、抗ニキビ成分、抗炎症成分、殺菌成分、肌あれ防止成分、紫外線遮蔽成分、清涼成分を含有することができる。
【0034】
抗シワ成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、パルミチン酸レチノール、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、ビタミンA油から1つ以上を使用することが好ましい。
【0035】
保湿成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、D-パントテニルアルコール、尿素から1つ以上を使用することが好ましい。
【0036】
刺激緩和成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、D-パントテニルアルコールを使用することが好ましい。
【0037】
血流促進成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、酢酸DL-α-トコフェロール、トコフェロールニコチン酸エステルから1つ以上を使用することが好ましい。
【0038】
美白成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、L-アスコルビン酸2-グルコシドから1つ以上を使用することが好ましい。
【0039】
抗ニキビ成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、感光素201号、サリチル酸から1つ以上を使用することが好ましい。
【0040】
抗炎症成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、アラントイン、グリチルリチン酸2k、グリチルレチン酸ステアリルから1つ以上を使用することが好ましい。
【0041】
殺菌成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸、塩化ベンザルコニウムから1つ以上を使用することが好ましい。
【0042】
肌あれ防止成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、エストラジオール、塩酸ピリドキシンから1つ以上を使用することが好ましい。
【0043】
紫外線遮蔽成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、酸化亜鉛、酸化チタンから1つ以上を使用することが好ましい。
【0044】
清涼成分としては、一般的に皮膚外用剤に使用される成分とすることができるが、メントール、エタノールから1つ以上を使用することが好ましい。
【0045】
また、皮膚外用剤に含有されている本発明のアゼライン酸誘導体は親油性である。したがって、皮膚外用剤に含有されている本発明のアゼライン酸誘導体は、皮膚外用剤に油性剤として含有され、アゼライン酸誘導体以外の油性剤を含有する場合は油性剤中に溶解している状態となる。
【0046】
また、2-プロパノール基を有するアゼライン酸誘導体は、2-プロパノール基を有さないアゼライン酸誘導体と比較して、高い美白効果を発揮する。
【0047】
以上の構成により、含有した皮膚外用剤を外用した皮膚に対する刺激を抑制できるアゼライン酸誘導体を提供できる。
本発明のアゼライン酸誘導体は、末端に一般式C2n+1、C2n+1O、またはC2n+1で表される炭化水素基を含む構造を有している。この構成により、アゼライン酸誘導体を親油性とすることができる。すなわち、末端に一般式C2n+1、C2n+1OまたはC2n+1で表される炭化水素基を含む構造を有していないアゼライン酸およびアゼライン酸誘導体と比較して、油性剤に対する溶解性を良好にすることができる。また、油性剤に対する溶解性が良好であるため、時間経過でもアゼライン酸が結晶化して析出することがなく、特に皮膚外用剤として使用した場合に、析出したアゼライン酸が外用した皮膚に対して強い刺激を与えることがなく、アゼライン酸誘導体の配合量を多くしても皮膚が赤くなることやかゆみが生じるといった皮膚トラブルを防止でき、ユーザの満足度を向上させることができる。すなわち、皮膚外用剤の成分としてより好適に使用することができる。
【0048】
また、本発明のアゼライン酸誘導体は、末端に一般式C2n+1Oで表されるヒドロキシ基と炭化水素を含む構造を有している。この構成により、当該構成を有していないアゼライン酸誘導体と比較して、より油性剤に対する溶解性を良好にすることができる。
【0049】
また、本発明のアゼライン酸誘導体は、末端に一般式C37Oで表されるヒドロキシ基と炭化水素基を含む構造を有している。この構成により、当該構成を有していないアゼライン酸誘導体と比較して、皮膚外用剤として使用した場合に、より高い美白効果を発揮することができる。また、この構成により、アゼライン酸誘導体をより親油性とすることができる。これにより、アゼライン酸をより多く皮膚外用剤に含有させることができ、高いメラニン抑制効果(美白効果)および抗ニキビ作用効果を発揮することができる。
【0050】
また、本発明のアゼライン酸誘導体は、末端に2-プロパノール基を2つ有するアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールである。この構成により、アゼライン酸誘導体をさらに高い親油性とすることができる。さらに、末端に2-プロパノール基を2つ有さないアゼライン酸およびアゼライン酸誘導体と比較して、皮膚外用剤に含有した場合の人体の皮膚への刺激をさらに少なくすることができ、皮膚外用剤の含有成分としてより好適に使用することができる。また、アゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールを含有する皮膚外用剤は、末端に2-プロパノール基を2つ有さないアゼライン酸およびアゼライン酸誘導体と比較して、より高い美白効果を発揮することができ、ユーザの満足度を向上させることができる。また、皮膚外用剤に多量に含有しても、べたつきが生じづらく、清涼感を有する皮膚外用剤とすることができ、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0051】
また、本発明のアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤は、油性剤と、水性剤と、活性剤とを含有し、従来の粉体で皮膚外用剤中に存在するアゼライン酸およびアゼライン酸誘導体と異なり、アゼライン酸誘導体が油性剤として皮膚外用剤中に含有されているか、油性剤中に溶解している。この構成により、アゼライン酸が乳化を壊すことがなく、時間の経過で再結晶して析出しづらくなる。すなわち、析出して偏在したアゼライン酸が皮膚外用剤を塗布した肌を刺激することがなく、かぶれなどの反応を起こしづらくすることができ、ユーザの満足度を向上させることができる。また、皮膚外用剤の製造時のハンドリング性能を良好にすることができる。
【0052】
本発明のアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤は、油性剤を100質量%としてアゼライン酸誘導体を10質量%以上含有でき、20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、40質量%以上含有することがさらに好ましく、50質量%以上含有することが好適である。また、本発明のアゼライン酸誘導体を含有する皮膚外用剤は、油性剤を100質量%としてアゼライン酸誘導体を100質量%以下含有することができる。アゼライン酸誘導体を100質量%とするときは、皮膚外用剤においてアゼライン酸誘導体そのものが油性剤として機能し、他に油性剤が存在しない場合を指す。この構成により、より高いメラニン抑制効果(美白効果)を発揮することができ、ユーザの満足度を向上させることができる。
【0053】
<実施例1>
表1に示す複数の成分を、表1に示す配合割合で配合した化粧水を作成し、実施例1とした。
作成した化粧水は、本発明のアゼライン酸誘導体であるアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールを2質量%含有し、油性剤としてアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールのみを含有している。すなわち、油性剤全体を100質量%としたときに、油性剤中に含有されているアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールは100質量%である。
【0054】
【表1】
【0055】
作成した化粧水は、皮膚へ塗布(外用)した場合であっても痒み等の強刺激由来の症状が現れず、高いメラニン抑制効果(美白効果)と抗ニキビ作用効果を発揮した。
【0056】
<実施例2>
表2に示す複数の成分を、表2に示す配合割合で配合した乳液を作成し、実施例2とした。
作成した乳液は、本発明のアゼライン酸誘導体であるアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールを5質量%含有し、油性剤としてアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオール、ベヘニルアルコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、スクワラン、ジメチコン、トコフェロール、およびプロピルパラペンを合計8.14質量%含有している。すなわち、油性剤全体を100質量%としたときに、油性剤中に含有されているアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールは約61.4質量%である。
【0057】
【表2】
【0058】
作成した乳液は、皮膚へ塗布した場合であっても痒み等の強刺激由来の症状が現れず、高いメラニン抑制効果(美白効果)と抗ニキビ作用効果を発揮した。
【0059】
<実施例3>
表3に示す複数の成分を、表3に示す配合割合で配合した顔用クリームを作成し、実施例3とした。
作成した顔用クリームは、本発明のアゼライン酸誘導体であるアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールを20質量%含有し、油性剤としてアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル、ジメチコン、酢酸トコフェロール、およびプロピルパラペンを合計25.8質量%含有している。すなわち、油性剤全体を100質量%としたときに、油性剤中に含有されているアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールは約77.5質量%である。
【0060】
【表3】
【0061】
作成した顔用クリームは、皮膚へ塗布した場合であっても痒み等の強刺激由来の症状が現れず、高いメラニン抑制効果(美白効果)と抗ニキビ作用効果を発揮した。
【0062】
<実施例4>
表4に示す複数の成分を、表4に示す配合割合で配合した顔用クリームを作成し、実施例4とした。
作成した顔用クリームは、本発明のアゼライン酸誘導体であるアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールを20質量%含有し、油性剤としてアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオール、ステアリルアルコール、ステアリル酸、トリエチルヘキサノイン、水添ポリブテン、ワセリン、ジメチコン、およびプロピルパラペンを合計34.35質量%含有している。すなわち、油性剤全体を100質量%としたときに、油性剤中に含有されているアゼライン酸ジ1,2-プロパンジオールは約58.2質量%である。
【0063】
【表4】
【0064】
また、ニキビを有する148人について、3カ月間、毎日朝晩の2回、実施例4の顔用クリームをニキビのある箇所に塗布したところ、大幅に改善したと回答した人は116人、少し改善したと回答した人は32人であった。また、効果がなかったと回答した人は0人であった。さらに、試験期間は3カ月であったが、ニキビの改善効果が現れたのはおおよそ2週間経過時であった。すなわち、実施例3の顔用クリームは、高い抗ニキビ効果を有することがわかった。
さらに、シミを有する27人について、3ヶ月間、毎日朝晩の2回、実施例3の顔用クリームをシミのある箇所に塗布したところ、所定の外用期間後に大幅に改善したと回答した人は10人、少し改善したと回答した人は17人であった。また、効果がなかったと回答した人は0人であった。すなわち、実施例3の顔用クリームは、高い美白効果を有することがわかった。
【0065】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、アゼライン酸誘導体を含有する化粧品の製造および販売に利用することができる。