(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064741
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ラミネータ
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173551
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】奥村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】福永 旭
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 竜之介
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA17
4F211AA40
4F211AC03
4F211AD08
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH53
4F211AR06
4F211AR09
4F211AR12
4F211SA08
4F211SC07
4F211SD01
4F211SJ11
4F211SJ16
4F211SP05
(57)【要約】
【課題】本発明は、案内手段に対象シートが進入する際に詰まるのを抑制できるラミネータを提供する。
【解決手段】ラミネータXは、対象シートを加熱状態で加圧するための一対の加圧ローラ11と、加圧ローラ11の下流側に配されると共に加圧ローラ11を通過した対象シートを下流側に案内するための案内手段3とを備え、案内手段3は、対象シートの移動方向と直交する方向に間隔をおいて配され且つ加圧ローラ11から下流側に離れるにしたがって間隔が小さくなる一対の対向面31を有し、対向面31は、対向面31における加圧ローラ11側の端部の接線が、一対の加圧ローラ11の中心軸の間の領域を通過する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象シートを加熱状態で加圧するための一対の加圧ローラと、
前記加圧ローラの下流側に配されると共に前記加圧ローラを通過した前記対象シートを下流側に案内するための案内手段と
を備え、
前記案内手段は、前記対象シートの移動方向と直交する方向に間隔をおいて配され且つ前記加圧ローラから下流側に離れるにしたがって間隔が小さくなる一対の対向面を有し、
前記対向面は、当該対向面における前記加圧ローラ側の端部の接線が、前記一対の加圧ローラの中心軸の間の領域を通過する、
ラミネータ。
【請求項2】
前記対向面は、前記対象シートとの摩擦を低減する摩擦低減部を有する、
請求項1に記載のラミネータ。
【請求項3】
前記一対の対向面の前記接線の間の角度が40°以下である、
請求項2に記載のラミネータ。
【請求項4】
使用者が操作することで前記加熱状態の設定を受け付ける操作手段と、
前記受け付けた設定に基づいて加熱温度を制御する制御手段と
をさらに備える、
請求項1~3の何れか1項に記載のラミネータ。
【請求項5】
前記対象シートは、対象物を一対のラミネートフィルムにより挟んで構成され、
前記加熱状態の設定は、前記ラミネートフィルムの厚みと前記対象物の厚みとで設定され、
前記ラミネートフィルムの厚みの設定数及び前記対象物の厚みの設定数は複数あり、
前記操作手段は、前記ラミネートフィルムの厚み及び前記対象物の厚みの設定を受け付け、
前記操作手段は、前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みの設定数と同じ数の設定スイッチを備え、
前記設定スイッチは、複数操作可能であり、
前記制御手段は、前記一方の厚みの設定に操作された前記設定スイッチの操作によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みを設定し、前記操作された設定スイッチの操作回数によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の他方の厚みを設定する、
請求項4に記載のラミネータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を厚み方向からラミネートフィルムで挟んだ対象シートを加熱圧着してラミネートシートにするラミネータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から家庭で気軽に利用できるラミネータが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のラミネータは、ラミネートフィルムと被ラミネート体(対象物)とが重ねられた被圧着シート(対象シート)を加熱するためのヒータと、被圧着シートを加圧する圧着ローラと、圧着ローラの下流側の加圧ローラと、圧着ローラにより圧着された被圧着シートを加圧ローラへ案内するガイドとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のラミネータでは、圧着ローラにより圧着された被圧着シートがガイドに進入する際に詰まる場合がある。
本発明(発明1)は、案内手段(ガイド)に対象シート(被圧着シート)が進入する際に詰まるのを抑制できるラミネータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るラミネータは、対象シートを加熱状態で加圧するための一対の加圧ローラと、前記加圧ローラの下流側に配されると共に前記加圧ローラを通過した前記対象シートを下流側に案内するための案内手段とを備え、前記案内手段は、前記対象シートの移動方向と直交する方向に間隔をおいて配され且つ前記加圧ローラから下流側に離れるにしたがって間隔が小さくなる一対の対向面を有し、前記対向面は、当該対向面における前記加圧ローラ側の端部の接線が、前記一対の加圧ローラの中心軸の間の領域を通過する。
【発明の効果】
【0006】
上述の構成によれば、案内手段に進入する際に対象シートが詰まるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ラミネータの斜視図であり、(a)は挿入口側から見た図であり、(b)は排出口側から見た図である。
【
図2】(a)はラミネータにおける加熱ローラと直交する断面の図であり、(b)及び(c)は加熱ローラ周辺部の拡大図である。
【
図3】(a)は上筐体を外した状態を上方から見た図であり、(b)は操作表示部を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施形態の一態様に係る第1のラミネータは、対象シートを加熱状態で加圧するための一対の加圧ローラと、前記加圧ローラの下流側に配されると共に前記加圧ローラを通過した前記対象シートを下流側に案内するための案内手段とを備え、前記案内手段は、前記対象シートの移動方向と直交する方向に間隔をおいて配され且つ前記加圧ローラから下流側に離れるにしたがって間隔が小さくなる一対の対向面を有し、前記対向面は、当該対向面における前記加圧ローラ側の端部の接線が、前記一対の加圧ローラの中心軸の間の領域を通過する。
これにより、対象シートが案内手段の対向面に当たった際に、対象シートの下流側先端が対向面の下流側に向かう方向に付勢されることとなる。
加圧ローラは、加熱状態の対象シートに対し加圧できればよく、加圧ローラが加熱手段を備えてもよいし、加圧ローラとは別体の加熱手段により対象シートを加熱してもよい。対象シートの移動方向は特に限定するものではない。一対の加圧ローラは、同じ構成のローラでもよいし、異なる構成のローラでもよい。
【0009】
実施形態の別態様に係る第2のラミネータは、第1のラミネータにおいて、前記対向面は、前記対象シートとの摩擦を低減する摩擦低減部を有する。
これにより、対象シートの下流側先端が対向面に当接した際、対象シートの先端が下流側に移動するのに要する力を低減し、対象シートが座屈変形し難くできる。
摩擦低減部は、対向面において、一対の加圧ローラから送り出される対象シートが当たる傾向にある領域に少なくとも設けられていればよく、対向面の全てに設けてもよいし、設けられなくてもよい。
【0010】
実施形態の別態様に係る第3のラミネータは、第1又は第2のラミネータにおいて、前記一対の対向面の前記接線の間の角度が40°以下である。
これにより、対象シートの詰まりを抑制できる。
【0011】
実施形態の別態様に係る第4のラミネータは、第1~第3のラミネータにおいて、使用者が操作することで前記加熱状態の設定を受け付ける操作手段と、前記受け付けた設定に基づいて加熱温度を制御する制御手段とをさらに備える。
対象シートは、一般的に熱可塑性の樹脂シート(ラミネートフィルム)であり、温度が高いほど軟化する。このため、対象シートの厚みが薄い場合、シートの剛性がもともと低く、座屈に対する耐力が低いうえに、シートの温度が上がるとさらに剛性が下がり、座屈しやすくなる。
第4のラミネータでは、制御手段を設け、対象シートの加熱状態の設定を使用者が調整することで、必要以上に温度が上昇し、座屈変形する可能性を減らすことができる。
操作手段は、ラミネータに組み込まれたものでもよいし、ラミネータに組み込まれていない、無線通信を利用した端末(例えば、携帯電話、リモコン等である)等でもよい。
【0012】
実施形態の別態様に係る第5のラミネータは、第4のラミネータにおいて、前記対象シートは、対象物を一対のラミネートフィルムにより挟んで構成され、前記加熱状態の設定は、前記ラミネートフィルムの厚みと前記対象物の厚みとで設定され、前記ラミネートフィルムの厚みの設定数及び前記対象物の厚みの設定数は複数あり、前記操作手段は、前記ラミネートフィルムの厚み及び前記対象物の厚みの設定を受け付け、前記操作手段は、前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みの設定数と同じ数の設定スイッチを備え、前記設定スイッチは、複数操作可能であり、前記制御手段は、前記一方の厚みの設定に操作された前記設定スイッチの操作によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みを設定し、前記操作された設定スイッチの操作回数によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の他方の厚みを設定する。
これにより、加熱状態の設定が容易となると共に、スイッチ等の部品点数を少なくできる。
【0013】
<実施形態>
1.全体構成
図1及び
図2を用いて概略を説明する
ラミネータXは、対象物を厚み方向からラミネートフィルムで挟んだ対象シートを加熱圧着して、ラミネートシートとする。対象シートは挿入口8aから使用者によって挿入され、排出口8bから排出される。排出されたシートがラミネートシートである。
ラミネータXは、挿入された対象シートに対して加熱及び加圧する加熱加圧手段1と、加熱圧着された対象シートを排出口8bから排出するための排出手段2と、加熱圧着された対象シートを排出手段2に案内する案内手段3と、装置の操作を受ける操作手段4と、受け付けた操作を表示する表示手段5と、装置の駆動部に電力を供給する電源手段と、装置を制御する制御手段とを筐体8に備える。なお、ここでは、電源手段と制御手段とを1枚の基板に設けた回路手段6(
図3の(a)参照)として構成されている。
ここで、対象シートが移動する方向を移動方向又は前後方向とし、挿入口8aがある側を上流側又は前側とし、対象シートの厚み方向を単に厚み方向又は上下方向とし、対象シートの幅方向を単に幅方向又は左右方向とする。
以下、各手段及び筐体8について説明する。
【0014】
2.加熱加圧手段
加熱加圧手段1は加熱加圧処理を行う。加熱加圧手段1は、対象シートを加熱状態で加圧する一対の加圧ローラ11と、加圧ローラ11を加熱するヒータ12と、加圧ローラ11を駆動する駆動モータ13とを少なくとも備える。なお、加圧ローラ11、ヒータ12及び駆動モータ13は、筐体8内の一対の支持プレート71により支持されている。
一対の加圧ローラ11は上下方向に配されている。2個のローラを区別する必要ある場合には、上側のローラを「上ローラ」とし、その符号を「11A」とする。同様に、下側のローラを「下ローラ」とし、その符号を「11B」とする。
一対の加圧ローラ11は、所謂、ニップローラであり、ゴム等の弾性体により表面が構成されている。これにより、一対の加圧ローラ11を対象シートが通過することで加圧される。なお、一対の加圧ローラ11の軸は左右方向に延伸する。
【0015】
ヒータ12は加圧ローラ11を加熱する。ヒータ12は、ここでは4個あり、上ローラ11Aの上部側を2本のヒータ12により、下ローラ11Bの下部側を2本のヒータ12によりそれぞれ加熱する。ヒータ12は、加圧ローラ11に沿って配され、例えば、シーズヒータを利用している。つまり、ヒータ12と加圧ローラ11は同じ方向に延伸する。
駆動モータ13は、
図3の(a)に示すように、加圧ローラ11に対して左右方向の一方側(右側)に配されている。
【0016】
3.排出手段
排出手段2は、
図2の(a)に示すように、加圧ローラ11の下流側、つまり、後側に配されている。排出手段2は、上下に配された一対のローラ21を備える。一対のローラ21は、所謂、ニップローラであり、ゴム等の弾性体により表面が構成されている。これにより、対象シートに対して排出方向への駆動力が作用する。
【0017】
4.案内手段
案内手段3は、加熱加圧手段1の下流側に配され、加圧ローラ11を通過した対象シートを下流側に案内する。つまり、加熱加圧手段1と排出手段2との間に配されている。
案内手段3は、
図2に示すように、対象シートが通過する空間30を有する。空間30は、対象シートと直交する方向、つまり、上下方向に間隔をおいて配された一対の対向面31により形成される。
なお、一対の対向面31を区別する必要ある場合には、上側の対向面を「上対向面」とし、その符号を「31A」とする。同様に、下側の対向面を「下対向面」とし、その符号を「31B」とする。
一対の対向面31は、加圧ローラ11から下流側に離れるにしたがって間隔が小さくなる誘導案内部32を少なくとも有する。ここでは、対向面31は、誘導案内部32の下流側に搬送案内部33を有する。なお、上対向面31Aの誘導案内部及び搬送案内部の符号には「A」を付して、下対向面31Bの誘導案内部及び搬送案内部の符号には「B」を付して、
図2の(b)に示している。
【0018】
一対の対向面31の誘導案内部32は、加圧ローラ11に近づくにしたがって、他方の対向面31から離れるように傾斜する。
上下の誘導案内部32は、
図2の(b)に示すように、加圧ローラ11側の端部における接線LA,LBが、一対の加圧ローラ11の中心軸110A,110Bの間の領域を通過するように構成されている。領域は、
図2の(b)において、中心軸110A,110Bを結ぶ仮想線で示され、換言すると、上下の誘導案内部32は、加圧ローラ11側の端部における接線LA,LBが、一対の加圧ローラ11の中心軸110A,110Bを結ぶ仮想線分L2と交差するように構成されている。これにより、誘導案内部32に突き当った対象シートを搬送案内部33側に案内できる。
上下の誘導案内部32は、加圧ローラ11側の端部における接線LA,LBの間の角度Aは10~60°、好ましくは、10~50°、より好ましくは、10~40°の範囲内に構成されている(ここでは40°である)。これにより、対象シートの詰まりを低減できる。
ここでは、上下の対向面31の上下方向の中央を通る仮想線L3に対して、上対向面31Aの接線LAの角度Bと、下対向面31Bの接線LBの角度Cとは同じ角度で構成されている。なお、仮想線L3が延伸する方向は、対象シートが案内手段3で詰まることなく、排出手段2に案内される場合の対象シートの搬送方向又は移動方向と平行となる。
上下の搬送案内部33は、仮想線L3と略平行に構成されている。なお、略平行とは、搬送案内部33と仮想線L3との間の角度が5°以内であることをいう。
【0019】
仮想線L3は、一対の加圧ローラ11の中心軸110A,110Bを結ぶ仮想線分L2の中点に対して、仮想線L3と直交する方向にズレている(オフセット)。オフセット量は、0.1~1.0mmの範囲内である。オフセットの方向は、対象シートは加圧ローラ11の一方側に貼り着いた状態で加圧ローラ11から排出される傾向にある場合に、貼り着く傾向のある加圧ローラ11側(ここでは上側である)である。これにより、対象シートの詰まりを低減できる。
一対の加圧ローラ11と誘導案内部32の上流側端との最小の隙間(使用時)は、4mm以下、好ましくは、3mm以下がよい。これにより、加圧ローラと誘導案内部32との間に対象シートが入るのを防止できる。なお、隙間の下限は小さいほどよく、0mmより大きければよい。
【0020】
一対の対向面31は、上下に配された一対の案内板35であって空間30に接する面(この面を「内面」ともいう)により構成される。なお、一対の案内板35を区別する必要ある場合には、上側の案内板を「上案内板」とし、その符号を「35A」とする。同様に、下側の案内板を「下案内板」とし、その符号を「35B」とする。
案内板35は、加圧ローラ11側に傾斜部36を少なくとも有する。ここでの案内板35は、さらに、傾斜部36の下流側に平行部37を、平行部37の下流側端に屈曲部38を有する。傾斜部36の内面は誘導案内部32を構成し、平行部37の内面は搬送案内部33を構成する。
案内板35は、左右方向に長い長尺状をしている。傾斜部36及び平行部37は、左右方向と直交する断面において、略直線状をしている。少なくとも上対向面31Aは、対象シートの先端が誘導案内部32に当接した際の摩擦を低減する摩擦低減部を、少なくとも誘導案内部32に有している。これは、加圧ローラ11から排出される対象シートは、上ローラ11Aに張り付いた状態で上側に向かう傾向が多いためである。なお、ここでは、上下の対向面31、つまり、一対の案内板35の内面の全領域に摩擦低減部を有している。摩擦低減部は、フッ素、シリコーン系の潤滑剤を塗布したり、コーティングしたり、これらの材料のシート材を貼付又は固定したり、案内板35をこれらの底摩擦係数を有する材料で構成したりすることで実施できる。
【0021】
5.操作手段及び表示手段
(1)操作手段
操作手段4は、
図3に示すように、装置の電源をON/OFFするための電源スイッチ41、対象シートの厚みを複数設定する設定スイッチ42,43,44、加圧ローラ11及びローラ21の回転方向を逆転させる逆転スイッチ45を備える。
なお、電源スイッチ41、設定スイッチ42~44、逆転スイッチ45の位置は、特に限定するものではないが、電源スイッチ41と逆転スイッチ45が筐体8の左右の側面に、設定スイッチ42~44が筐体8(上カバー体85)の上面に、それぞれ設けられている。
設定スイッチ42,43,44は、対象シートのラミネートフィルムの厚みに対応して複数個あり、例えば、75μm(設定スイッチは「42」である)、100μm(設定スイッチは「43」である)、150μm(設定スイッチは「44」である)の3種類ある。
【0022】
設定スイッチ42,42,43は、押ボタンタイプであり、操作すると点灯するLEDをスイッチ内に備えている。設定スイッチ42,43,44は、操作することでラミネートフィルムの厚みを選択する第1機能を有する他、押し回数により被ラミネータである対象物の厚みを選択する第2機能を有する。対象物の厚みは、「厚紙」と「薄紙」の2種類があり、対象物の厚みによりヒータ12の加熱温度が変わる。
このように、対象シートの種類によって温度を最適に調整できる。これにより、対象ヒートの厚みが薄い場合、元々剛性が低く、座屈に対する耐力が低いうえに、温度が上がるとさらに剛性が下がり、座屈しやすくなる。
温度調整手段を設け、加熱対象物の厚みに応じて温度を調整することで、必要以上に温度が上昇し、座屈変形する可能性を減らすことができる。
逆転スイッチ45は、操作(押す)すると、加圧ローラ11とローラ21とを逆回転させ、逆転スイッチ45を離すと正回転となる。
【0023】
(2)表示手段
表示手段は、対象物の厚みを表示する表示ランプ51,52を備える。対象物の厚みは、例えば、「薄紙」(表示ランプは「51」である)と「厚紙」(表示ランプは「52」である)との2種類である。
表示ランプ51,52は、設定スイッチ42,43,44により「薄紙」又は「厚紙」が設定されると第1形態で点灯し、装置を使用できる状態になると第2形態で点灯する。なお、ここでの第1及び第2形態は点滅点灯である。
表示ランプ51,52は、対象物の厚みを表示する第1機能と、装置が状態を表示する第2機能とを有する。
【0024】
(3)設定内容と表示内容
操作手段4の設定と表示手段5の表示について、一例として、対象シートの対象物が「厚紙」で、使用するラミネートフィルムが100μmの場合を説明する。
ラミネートフィルムの厚みが100μmであるため、設定スイッチ43を押す。これにより、設定スイッチ43のLEDが点灯する。なお、他の設定スイッチ42,44のLEDは消灯している。この状態では、対象物の厚みが「薄紙」を示す表示ランプ51が点滅点灯(第1形態である)している。
次に、ラミネートフィルムの厚みが100μmの設定スイッチ43を押す(押し回数が合計で2回である)。これにより、対象物の厚みが「厚紙」を設定したこととなり、「厚紙」を示す表示ランプ52が点滅点灯(第1形態である)する。
このように、使用するラミネートフィルムの厚みに対応した設定スイッチ42,43,44の押す回数により、ラミネートフィルムの厚み以外の対象物の厚みを設定できる。
なお、ヒータ12の温度が設定されたラミネートフィルムと対象物の厚みに対応する温度になると、表示ランプ51,52の点滅点灯が全点灯(点滅しない点灯形態であり、第2形態である)する。
【0025】
6.回路手段
回路手段6は、電源回路と制御回路とを有し、これらは、
図3の(a)に示すように、複数の電子部品61が基板62に実装されて構成される。
制御回路は、電源スイッチ41がONされると、加圧ローラ11とローラ21とを回転駆動させたり、ヒータ12を駆動したりする。また、制御回路は、使用者の操作により設定スイッチ42,43,44が受け付けた設定に基づいて加圧ローラ11の加熱温度を制御する。
制御回路は、設定スイッチ42,43,44の何れかが操作されると、操作された設定スイッチ42,43,44のLEDを点灯させると共に「薄紙」を表示する表示ランプ51を点滅点灯させる。
さらに、設定スイッチ42,43,44の操作がない場合は、ヒータ12の温度が設定温度になると、表示ランプ51の点滅点灯を全点灯に変える。これにより、装置がラミネート可能な状態となったことを表示する。
【0026】
設定スイッチ42,43,44が1度操作された後に再度操作されると、対象物の厚みが「厚紙」を表示する表示ランプ52を点滅点灯させ、ヒータ12の温度が設定温度になると、表示ランプ52の点滅点灯を全点灯に変える。これにより、装置がラミネート可能な状態となったことを表示する。なお、この際、表示ランプ51は消灯している。
制御回路は、逆転スイッチ45が操作されると、操作されている間、加圧ローラ11とローラ21を逆回転させる。
【0027】
7.その他
加圧ローラ11及びローラ21は、
図3に示すように、プレート89で覆われているが、その両端で一対の支持プレート71により回転可能に支持され、一方の支持プレート71に取り付けられた駆動モータ13により回転駆動される。
支持プレート71は、ヒータ12の両端を支持し、一対の加圧ローラ11と4本のヒータ12とが、
図2の(a)に示すように、上下方向の外方から上下一対のカバー72により覆われている。これにより、ヒータ12の加圧ローラ11の加熱効率を高めることができる。また、筐体8の上下面が加熱されるのを防止できる。
カバー72には、挿入口8aから挿入された対象シートを加圧ローラ11に案内する前案内部73が設けられている。
【0028】
筐体8は、挿入口8a用の前欠け部81aと排出口8b用の後欠け部81bとを有する本体81と、前欠け部81aに配され且つ対象シートを支持する支持体82と、前欠け部81aに配され支持体82の上面との間で挿入口8aを構成する前カバー体83と、後欠け部81bに配され本体81との間に排出口8bを構成する後カバー体84と、前カバー体83と後カバー体84とを上方から覆う上カバー体85とを有する。なお、カバー72の上方には、遮熱用のプレート86が配されている。また、
図2の(a)では、前欠け部81aと後欠け部81bの引き出し線は、前カバー体83のリブ83aと後カバー体84のリブ84aと区別するために、矢印としている。
筐体8には、排出口8bの下側に、排出されたラミネートシートを受けるトレイ(ここではワイヤトレイ)89が着脱可能に設けられている。
【0029】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例、変形例同士を組み合わせたものであってもよい。
また、実施形態や変形例に記載していない例や、要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0030】
<変形例>
1.ラミネータ
(1)対象シートは、水平状に移動しているが、上下方向に移動してもよいし、第1方向から第2方向に向きを変えて移動してもよい。つまり、加圧ローラ11の回転軸が、左右方向以外に、上下方向又はこれと交差する方向に延伸してもよい。
(2)加熱加圧手段1は、上下一対の加圧ローラ(加圧手段)11と、上下に配されたヒータ(加熱手段)12とをセットで備えていたが、加圧ローラ11と案内手段3との関係(対象シートのつまり防止)に着目しない場合、加圧ローラとヒータとのセットを複数組備えてもよい。
(3)排出手段2として、上下一対のローラ21を備えていたが、案内手段3と排出手段2との間に、一対のローラと第2案内手段とを案内手段3側からこの順で備えてもよい。この場合、第2案内手段は、案内手段3と同じ構成であってもよいし、別の構成であってもよい。
(4)排出手段2は、一対のローラ21を備えていたが、加圧ローラ11だけでラミネートフィルムの圧着が十分な場合、下側のみローラや支持プレートにより構成してもよい。
【0031】
2.加熱加圧手段
加圧ローラ11は、加熱状態の対象シートを加圧できればよく、すでに加熱された対象シートを加圧してもよいし、加圧ローラで加熱しながら加圧してもよい。加圧ローラで加熱する場合、加圧ローラは加熱加圧ローラとしてもよい。
加熱加圧手段1のヒータ12は、加圧ローラ11を主に加熱(正確には対象シートも加熱している)しているが、対象シートを加熱するヒータに変更してもよいし、対象シートを加熱するヒータをさらに追加してもよい。但し、主に対象シートのみを加熱すると、加圧ローラで対象シートが冷却される可能性があるため、加圧ローラも加熱する方が好ましい。
なお、ヒータ12として、ランプ、薄板状のヒータを加圧ローラに沿うよう湾曲させたもの等のシーズヒータ以外のヒータを利用してもよい。
【0032】
3.案内手段
(1)一対の対向面31は、上下の案内板35により形成されていたが、板状をしてない案内部材の上下面により形成されてもよいし、一方の対向面が案内板により構成され、他方の対向面が案内部材により構成されてもよい。
(2)対向面31は、1枚の案内板35により構成されていたが、1つの対向面を複数の部材により構成されてもよいし、一対の対向面31を構成する部材数は同じあってもよいし、異なってもよい。
(3)誘導案内部32の傾斜は、幅方向と直交する断面において、直線状をしているが、曲線状をしてもよい。曲線状の場合、対向面(相手)側に凸の曲線が好ましい。
(4)摩擦低減部は、上下の案内板35の内面に設けられているが、上案内板35Aの誘導案内部32にのみ設けられてもよいし、上案内板35Aの内面の全領域に設けられてもよいし、上下の案内板35の誘導案内部32に設けられてもよい。
(5)仮想線L3に対して、上対向面31Aの角度Bと下対向面31Bの角度Cとは同じ角度で構成されているが、異なってもよい。
(6)仮想線L3は仮想線分L2の中点に対して上側にオフセットしているが、一方の加圧ローラ11に対象シートが貼り着かない場合は、オフセットしなくてもよい。なお、この場合、対象シートに作用する重力を考慮すると、下方にオフセットする方が好ましい場合がある。
(7)加圧ローラ10と案内板35の上流側端との距離は、上下で同じであったが、異なってもよい。例えば、対象シートが詰まりやすい側の距離を小さくし、他方側を大きくしてもよい。これにより、他方側のアライメントを安価にできる。
【0033】
4.操作手段
設定スイッチ42,43,44は、3個あり、ラミネートフィルムの厚みを3種類設定し、押し回数により対象物の厚みを2種類設定できるように構成されている。
しかしながら、設定スイッチが2個あり、対象物の厚みを2種類設置し、押し回数によりラミネートフィルムの厚みを複数個(例えば3個)設定できるようにしてもよい。
ラミネートフィルムや対象物の厚みは、ヒータ12の温度と関連付けることで、ヒータ12の温度として設定するようにしてもよい。例えば、75μmのヒータ12の温度が115℃、100μmが125℃、150μmが155℃のように温度としてもよい。
【0034】
5.表示手段
表示手段5は、2個の表示ランプを有し、第1の表示ランプは、対象物が「薄紙」の場合は第1形態で点灯すると共に対象物が「厚紙」の場合は第2形態で点灯し、第2の表示ランプは、電源がONされると第1形態で点灯し、装置が使用可能な状態になると第2形態で点灯するようにしてもよい。この場合も、1つの表示ランプに2つの機能を持たせることで、表示ランプの個数を少なくできる。
第1形態及び第2形態は、「点灯」及び「点滅」であってもよいし、「赤色」、「青色」等の色の相違であってもよい。
【0035】
<<他の発明>>
<発明2>
1.背景技術
特許文献2(特開2015-221536号公報)には、ラミネートフィルムの厚みと対象物の厚みの組み合わせによって加熱圧着用ローラの適切な表面温度設定するために、段階的に切替え設定可能な電源スイッチをスライド操作して温度設定を選択するラミネータが記載されている。
このスライド操作る電源スイッチでは、ラミネートフィルムと対象物との厚みの設定が多い場合に、操作し難いという課題がある。
発明2は、ラミネートフィルムと対象物との厚みの設定を容易に行うことができるラミネータを提供する。
【0036】
2.発明2
(1)第1のラミネータ
第1のラミネータは、ラミネートフィルムと対象物との厚みの設定を複数受け付ける操作手段と、受け付けた設定に基づいて加熱温度を設定する制御手段とを備え、
前記操作手段は、前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みの設定数と同じ数のスイッチを備え、
前記スイッチは、複数操作可能であり、
前記制御手段は、前記一方の厚みの設定に操作されたスイッチの操作によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の一方の厚みを設定し、前記操作されたスイッチの操作回数によって前記ラミネートフィルム及び前記対象物の他方の厚みを設定する。
これにより、複数のスイッチの操作を含め、少ない操作で、ラミネートフィルムと対象物との厚みを設定できる。
なお、発明2は、ラミネートフィルムと対象物との厚みの設定に着目するものであり、実施形態に係る案内手段を備えてもよいし、備えなくてもよい。
また、スイッチの一例が、実施形態の設定スイッチ42,43,44である。
【0037】
(2)第2のラミネータ
第2のラミネータは、第1のラミネータにおいて、
前記一方の厚みは前記ラミネートフィルムの厚みであり、
前記他方の厚みは対象物の厚みである。
【0038】
<発明3>
1.背景技術
特許文献1(特開2018-183921号公報)において、対象シートの加熱圧着処理の際、ラミネートフィルムの軟化により変形してしまうという課題がある。
なお、特許文献1の第36段落等に記載の補助シートは、ラミネートフィルムに対象物を挟み込む際の補助として用いるものであり、ラミネートフィルムの変形を抑制するものではない。
発明3は、ラミネートフィルムの変形を抑制できるキャリアシート用フィルム及びラミネータを提供する。
【0039】
2.発明3
(1)概要
ラミネート時の詰まりをさらに低減するために、対象シートをラミネートフィルムで挟んだもの全体を、2枚のキャリアシートの間に挟み込んだ状態で加熱圧着処理を行ない、処理後にキャリアシートを取り除くことで、ラミネートシートを得るようにすることができる。
【0040】
(2)キャリアシート用フィルム
対象シートを一対のキャリアシート間に挟まれた状態で加熱圧着処理された後に、前記一対のキャリアシートが取り除かれるように使用される前記キャリアシート用のフィルムは、ポリイミド樹脂、PTFEの何れかである。
これにより、加熱により対象シートが軟化した状態でも対象シートの剛性を確保できる。なお、剛性を確保することで、対象シートの先端部分が案内手段に接触した際の変形を抑制し、詰まり難くできる。
【0041】
(3)ラミネータ
対象シートを加熱圧着処理するラミネータと、
前記対象シートを挟んだ状態で前記加熱圧着処理されるキャリアシートと
を備えるラミネータセットにおいて、
前記キャリアシートを構成するフィルムは、ポリイミド樹脂、PTFEの何れかである。
これにより、加熱により対象シートが軟化した状態でも剛性を確保できる。なお、剛性を確保することで、対象シートの先端部分が案内手段に接触した際の変形を抑制し、詰まり難くできる。
【0042】
キャリアシートは、2枚に分かれている様態でもよいし、1枚のシートを二つ折りにした様態でもよい。その場合、折り目が最初に加圧ローラを通過するよう、シート移動方向の先頭側に位置するようセットすることが好ましい。
キャリアシートは、対象シートの一対のラミネートフィルムの一方が耐熱性を有する場合、1枚のシート(フィルム)により構成してもよい。
キャリアシート用フィルムは、耐熱性を有し、高温での剛性低下が小さく、内容物を確認できる程度の透明度を有するものであればよく、例えばポリイミド、またはPTFE等が好適である。なお、耐熱性は、加熱加圧処理の設定温度(加熱温度)に対して、ガラス転移温度が50℃以上高いことが好ましく、100℃以上高いことがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、高い方が良いが、コストを考慮すると、300℃以下が好ましい。
【符号の説明】
【0043】
X ラミネータ
1 加熱加圧手段
2 排出手段
3 案内手段
11 加圧ローラ
12 ヒータ
31 対向面