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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064743
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】受動部品およびパッケージ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/06 20060101AFI20240507BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240507BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240507BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20240507BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240507BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240507BHJP
   H01F 27/02 20060101ALI20240507BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240507BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01F27/06 103
H01F17/00 B
H01F27/29 120
H01G2/06 500
H01G4/40 321A
H01F27/00 S
H01F27/02 120
H01F27/32 103
H01G4/33 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173555
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】豊島 健司
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】中磯 俊幸
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AA05
5E070AB10
5E070CB02
5E070CB12
5E070DA11
5E070DB02
5E070DB08
5E082DD07
(57)【要約】
【課題】モールド時の応力を緩和しつつ性能の低下を抑制できる受動部品を提供する。
【解決手段】受動部品は、互いに対向する第1主面および第2主面を有し、半導体材料を含む無機基板と、前記無機基板の前記第1主面に接触するように前記第1主面上に設けられた受動素子部とを備え、
前記第1主面全体における重心を通過し、前記第1主面に直交する平面における断面を第1断面としたとき、
前記第1断面において、
前記無機基板は、前記第1主面に接続し互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、前記第1主面の線粗さよりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、半導体材料を含む無機基板と、
前記無機基板の前記第1主面に接触するように前記第1主面上に設けられた受動素子部と
を備え、
前記第1主面全体における重心を通過し、前記第1主面に直交する平面における断面を第1断面としたとき、
前記第1断面において、
前記無機基板は、前記第1主面に接続し互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、前記第1主面の線粗さよりも大きい、受動部品。
【請求項2】
前記第1断面において、前記第2主面の線粗さは、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、請求項1に記載の受動部品。
【請求項3】
前記受動素子部は、コンデンサ素子とインダクタ素子を含み、
前記コンデンサ素子は、前記無機基板の前記第1主面上に設けられ、前記インダクタ素子は、前記コンデンサ素子上に設けられる、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項4】
前記第1断面において、
前記受動素子部は、前記第1主面に接触する第3主面と、前記第3主面に接続し互いに対向する第3側面および第4側面とを有し、
前記第3側面の線粗さおよび前記第4側面の線粗さは、それぞれ、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項5】
前記受動素子部は、インダクタ素子を含むと共に、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部は、前記第3側面および前記第4側面を有する、請求項4に記載の受動部品。
【請求項6】
前記第1側面の線粗さと前記第2側面の線粗さは、異なる、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項7】
前記第2側面は、一部に、前記第1主面に直交する方向に対して傾斜し前記第2主面に接続する傾斜面を有する、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項8】
前記第2側面は、さらに、前記第1主面に直交する方向に延在し前記第1主面に接続する垂直面を有し、前記傾斜面は、前記垂直面と前記第2主面の間に接続される、請求項7に記載の受動部品。
【請求項9】
前記傾斜面は、前記第1主面から前記第2主面に向かうにつれて前記第1側面に近づく方向に傾斜するように形成されている、請求項7に記載の受動部品。
【請求項10】
前記受動素子部は、コンデンサ素子の少なくとも一部を含み、
前記コンデンサ素子の少なくとも一部は、前記第1主面に平行な方向に延在するコンデンサ電極と、前記コンデンサ電極と前記無機基板の間に配置され前記無機基板の元素を少なくとも1つ以上含む誘電膜とを有する、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項11】
前記無機基板は、前記半導体材料からなる半導体よりも電気抵抗が低い低抵抗部を有し、前記低抵抗部は、前記受動素子部と電気的に接続されている、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項12】
前記受動素子部は、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部は、前記第1主面に接触する第3主面と、前記第3主面に対向する第4主面とを有し、
前記第4主面の線粗さは、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項13】
前記第1主面の線粗さは、0.5μm以下であり、
前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、0.2μm以上10μm以下である、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項14】
前記第1主面の線粗さは、前記第2主面の線粗さよりも大きい、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項15】
前記第1主面の線粗さは、前記第2主面の線粗さよりも小さい、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項16】
前記受動素子部は、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部の厚みは、前記無機基板の厚みよりも薄い、請求項1または2に記載の受動部品。
【請求項17】
実装基板と、
前記実装基板上に配置された請求項1または2に記載の受動部品と、
前記実装基板上に設けられ、前記受動部品を覆う封止部材と
を備え、
前記封止部材は、前記受動部品の前記無機基板の前記第1側面および前記第2側面に接触する、パッケージ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受動部品およびパッケージ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやパソコンなどの電子部品の小型、高性能化に伴いより電子部品の高集積が進んでいる。SiP(System in Package)などでは半導体部品と同時に受動部品も一緒に封止部材によりモールドすることなどで小型化を図っている。このように、半導体部品や受動部品などの電子部品を封止部材によりモールドする際、電子部品に角部があるとその部分に応力が集中し、封止部材と電子部品の間の剥離が生じ、または、電子部品が変形することなどが懸念される。
【0003】
例えば、従来、電子部品として、特開2003-158097号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品では、基板の主面に形成された金属層と基板の側面から主面にかけて形成された側面金属層とが接続されている。側面金属層が形成されている基板の側面の主面側のエッジ部は、斜めに形成されている。基板の主面には、素子となるFET構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-158097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のような電子部品では、基板の側面の主面側にエッジ部を設けることでモールド時の応力を緩和しているが、一方、エッジ部を設けることで基板の主面の面積が小さくなり、素子を設ける領域が小さくなって、特性面への影響が懸念される。
【0006】
そこで、本開示の目的は、モールド時の応力を緩和しつつ性能の低下を抑制できる受動部品およびパッケージ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である受動部品は、
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、半導体材料を含む無機基板と、
前記無機基板の前記第1主面に接触するように前記第1主面上に設けられた受動素子部と
を備え、
前記第1主面全体における重心を通過し、前記第1主面に直交する平面における断面を第1断面としたとき、
前記第1断面において、
前記無機基板は、前記第1主面に接続し互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、前記第1主面の線粗さよりも大きい。
【0008】
ここで、線粗さとは、LER(Line Edge Roughness)である。
【0009】
前記態様によれば、第1側面の線粗さおよび第2側面の線粗さは、第1主面の線粗さよりも大きいので、受動部品を封止部材によりモールドする際、封止部材の応力を第1側面および第2側面の線粗さにより緩和でき、かつ、封止部材と第1側面および第2側面の密着力を向上できる。
【0010】
また、第1側面の線粗さおよび第2側面の線粗さは、第1主面の線粗さよりも大きいので、受動素子部を設けない第1側面および第2側面を粗くすることで、受動素子部を設ける第1主面の大きさを確保でき、受動素子部の性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様である受動部品およびパッケージ部品によれば、モールド時の応力を緩和しつつ性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】受動部品の第1実施形態を示す天面側から見た模式天面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3A】線粗さの測定方法を説明する説明図である。
図3B図3Aの拡大図である。
図4A】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4B】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4C】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4D】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4E】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4F】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4G】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4H】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4I】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図4J】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図5】受動部品の第2実施形態を示す天面側から見た分解平面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7A】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7B】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7C】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7D】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7E】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7F】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7G】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7H】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7I】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7J】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7K】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図7L】受動部品の製造方法を説明する模式断面図である。
図8】受動部品の第2実施形態の第1変形例を示す模式断面図である。
図9】受動部品の第2実施形態の第2変形例を示す模式断面図である。
図10】受動部品の第3実施形態を示す模式断面図である。
図11】パッケージ部品を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一態様である受動部品およびパッケージ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0014】
<第1実施形態>
[概要構成]
図1は、受動部品1を天面側から見た模式天面図である。図2は、図1のII-II断面図である。なお、便宜上、図1では、本体部10は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。また、図1では、第1外部端子41および第2外部端子42を二点鎖線で描き、被覆膜60を省略して描いている。
【0015】
受動部品1の概要構成について説明する。受動部品1は、例えば、高周波信号伝送回路に用いられる表面実装型の受動部品である。受動部品1は、抵抗、コンデンサ、インダクタなどの電子部品であり、トランジスタのような能動素子を含まない。
【0016】
図1図2に示すように、受動部品1は、無機基板21と、無機基板21上に設けられた受動素子部5とを有する。受動素子部5は、受動素子を有し、受動素子は、インダクタ素子Lである。この実施形態では、受動素子をインダクタ素子Lとしたが、受動素子は、インダクタ素子およびコンデンサ素子からなる群より選択された何れか1つ以上を含んでいてもよく、回路設計の自由度が向上する。なお、受動素子は、抵抗であってもよい。
【0017】
受動素子部5は、受動素子を有するが、受動素子の少なくとも一部を有していてもよい。例えば、受動素子が、第1コンデンサ電極と第2コンデンサ電極と第1コンデンサ電極と第2コンデンサ電極の間の誘電膜とを有するコンデンサ素子である場合、受動素子部5は、第1コンデンサ電極を含まず、第2コンデンサ電極と誘電膜とのコンデンサ素子の一部を含んでいてもよい。
【0018】
無機基板21は、互いに対向する天面21aおよび底面21bを有する。天面21aは、特許請求の範囲に記載の「第1主面」の一例に相当し、底面21bは、特許請求の範囲に記載の「第2主面」に相当する。無機基板21は、半導体材料を含む。半導体材料とは、例えば、SiなどのIV族元素からなる単体半導体、GaAs、SiC、GaN、InPなどのIII族またはV族化合物からなる半導体、SiO、ITOなどの酸化物半導体などである。
【0019】
無機基板21は、長さ、幅および高さを有する。無機基板21は、長さ方向の両端側にある第1端面21e1および第2端面21e2と、幅方向の両端側にある第1側面21s1および第2側面21s2と、高さ方向の両端側にある天面21aおよび底面21bとを有する。つまり、無機基板21の外面は、第1端面21e1および第2端面21e2と、第1側面21s1および第2側面21s2と、天面21aおよび底面21bとを含む。
【0020】
なお、図面に示すように、以下では、説明の便宜上、無機基板21の長さ方向(長手方向)をX方向とし、第1端面21e1から第2端面21e2に向かう方向を順X方向と呼び、順X方向の反対方向を逆X方向と呼ぶ。また、無機基板21の幅方向をY方向とし、第1側面21s1から第2側面21s2に向かう方向を順Y方向と呼び、順Y方向の反対方向を逆Y方向と呼ぶ。また、無機基板21の高さ方向をZ方向とし、底面21bから天面21aに向かう方向を順Z方向と呼び、順Z方向の反対方向を逆Z方向と呼ぶ。この明細書では、順Z方向を上側とし、逆Z方向を下側する。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向であって、X,Y,Zの順に並べたとき、右手系を構成する。
【0021】
この明細書では、「要素の上方」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、当該要素を基準に、当該要素を境界とする外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「要素の上方」とは、当該要素の向きによって定まる相対的な方向である。また、要素に対して「上方(above)」には、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置だけではなく、当該要素と接する直上の位置(on)も含む。
【0022】
受動素子部5は、本体部10と、本体部10内に設けられたインダクタ素子Lとを有する。受動素子部5は、無機基板21の天面21aに接触するように天面21a上に設けられている。
【0023】
図2に示すように、天面21aに直交する第1断面において、無機基板21は、天面21aに接続し互いに対向する第1端面21e1および第2端面21e2を有する。第1端面21e1は、特許請求の範囲に記載の「第1側面」に相当し、第2端面21e2は、特許請求の範囲に記載の「第2側面」に相当する。なお、第1端面21e1は、特許請求の範囲に記載の「第2側面」に相当し、第2端面21e2は、特許請求の範囲に記載の「第1側面」に相当するようにしてもよい。
第1断面とは、天面21a全体における重心を通過し天面21aに直交する平面における断面である。この実施形態では、第1断面は、受動部品1の幅方向であるY方向の中心を通過する断面である。なお、第1断面は、受動部品1の長さ方向であるX方向の中心を通過する断面であってもよく、このとき、第1側面21s1は、特許請求の範囲に記載の「第1側面」に相当し、第2側面21s2は、特許請求の範囲に記載の「第2側面」に相当し、または、第1側面21s1は、特許請求の範囲に記載の「第2側面」に相当し、第2側面21s2は、特許請求の範囲に記載の「第1側面」に相当するようにしてもよい。
【0024】
第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。線粗さとは、LER(Line Edge Roughness)である。言い換えると、第1端面21e1の表面の凹凸および第2端面21e2の表面の凹凸は、それぞれ、天面21aの表面の凹凸よりも大きい。図2では、理解し易くするために、第1端面21e1の表面の凹凸および第2端面21e2の表面の凹凸を大きく描いている。
【0025】
ここで、線粗さの測定方法について説明する。図3Aに示すように、測定面Sの測定箇所の画像を取得し、測定データのエッジ点を検出する。検出したエッジ点より最小二乗法を用いて近似直線Kを算出する。図3Bに示すように、近似直線Kとエッジ点のずれ量dを測定し、所定範囲のずれ量dの平均値を測定面Sの線粗さとする。
【0026】
上記構成によれば、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、天面21aの線粗さよりも大きいので、受動部品1を封止部材によりモールドする際、封止部材の応力を第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さにより緩和でき、かつ、封止部材と第1端面21e1および第2端面21e2の密着力を向上できる。
【0027】
また、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、天面21aの線粗さよりも大きいので、受動素子部5を設けない第1端面21e1および第2端面21e2を粗くすることで、受動素子部5を設ける天面21aの大きさを確保でき、受動素子部5の性能の低下を抑制できる。
【0028】
また、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは大きいので、第1端面21e1および第2端面21e2を把持しやすくなり、受動部品1をピックアップしやすい。
【0029】
また、天面21aの線粗さは小さいので、天面21aに受動素子部5を形成する際、天面21aの凹凸の影響を受けず、天面21aの凹凸を吸収するための平坦化層など追加の層が不要となる。これにより、受動部品1の低背化を図ることができる。
【0030】
[各部材の好ましい構成]
受動部品1は、無機基板21と、無機基板21上に設けられた受動素子部5と、受動素子部5上に設けられた第1外部端子41および第2外部端子42と、受動素子部5上に設けられた被覆膜60とを有する。
【0031】
受動部品1の厚みは、好ましくは、200μm以下である。これによれば、受動部品1を薄くできる。受動部品1のサイズ(長さ(X方向)×幅(Y方向)×高さ(Z方向))は、例えば、0.6mm×0.3mm×0.3mm、0.4mm×0.2mm×0.2mm、0.25mm×0.125mm×0.120mmなどである。また、幅と高さはほぼ等しくなくてもよく、例えば、0.4mm×0.2mm×0.3mmなどであってもよい。
【0032】
受動素子部5は、本体部10と、本体部10内に設けられたインダクタ素子Lとを有する。インダクタ素子Lは、インダクタ配線110と、インダクタ配線110に接続された第1引出配線51および第2引出配線52とを有する。
【0033】
受動素子部5は、互いに対向する天面5aおよび底面5bを有する。底面5bは、無機基板21の天面21aに接触する。底面5bは、特許請求の範囲に記載の「第3主面」に相当し、天面5aは、特許請求の範囲に記載の「第4主面」の一例に相当する。
【0034】
受動素子部5は、長さ、幅および高さを有する。受動素子部5は、長さ方向の両端側にある第1端面5e1および第2端面5e2と、幅方向の両端側にある第1側面5s1および第2側面5s2と、高さ方向の両端側にある天面5aおよび底面5bとを有する。つまり、受動素子部5の外面は、第1端面5e1および第2端面5e2と、第1側面5s1および第2側面5s2と、天面5aおよび底面5bとを含む。第1端面5e1から第2端面5e2に向かう方向は順X方向であり、第1側面5s1から第2側面5s2に向かう方向は、順Y方向であり、底面5bから天面5aに向かう方向は、順Z方向である。
【0035】
本体部10は、長さ、幅および高さを有する。本体部10は、長さ方向の両端側にある第1端面10e1および第2端面10e2と、幅方向の両端側にある第1側面10s1および第2側面10s2と、高さ方向の両端側にある天面10aおよび底面10bとを有する。受動素子部5の天面5aは、本体部10の天面10aを含み、受動素子部5の底面5bは、本体部10の底面10bを含み、受動素子部5の第1端面5e1は、本体部10の第1端面10e1を含み、受動素子部5の第2端面5e2は、本体部10の第2端面10e2を含み、受動素子部5の第1側面5s1は、本体部10の第1側面10s1を含み、受動素子部5の第2側面5s2は、本体部10の第2側面10s2を含む。
【0036】
本体部10は、有機樹脂からなる。例えば、本体部10は、形成が容易なエポキシ系、ポリイミド系樹脂などの樹脂であってもよい。これにより、受動素子部5の形成自由度が向上する。例えば、本体部10により厚いインダクタ配線110などを容易に封止できる。本体部10は、1層の部材から構成されているが、2層以上の部材から構成されていてもよく、または、2種類以上の材料から構成されていてもよい。
【0037】
インダクタ配線110は、無機基板21の天面21a上に設けられ、平面スパイラル状に形成されている。インダクタ配線110は、Z方向からみて、外周端110e1から内周端110e2に向かって時計回り方向に渦巻状に巻き回されている。言い換えると、インダクタ配線110は、無機基板21の天面21aに平行な方向に延在し、天面21aに沿って巻き回されている。インダクタ配線110は、無機基板21の天面21aに直交する中心軸AXを有する。この構成によれば、インダクタ配線110が無機基板21の天面21aに平行な中心軸を有する場合よりも、受動素子部5を薄型化できる。その結果、受動部品1を薄型化できる。
【0038】
インダクタ配線110のターン数は、1周を超えることが好ましい。これにより、インダクタンスを向上させることができる。外周端110e1は、略矩形状にされている。内周端110e2は、略円形状にされている。外周端110e1のX方向の幅および内周端110e2の直径の各々は、インダクタ配線110のうちの外周端110e1および内周端110e2を除いた部分である巻回部の配線幅よりも大きい。これにより、外周端110e1および内周端110e2がパッド部として機能し、第1接続配線51および第2接続配線52との接続信頼性が向上する。
【0039】
インダクタ配線110は、銅、銀,金又はこれらの合金などの良導体材料からなる。インダクタ配線110は、めっき、蒸着、スパッタリングなどによって形成された金属膜であってもよいし、導体ペーストを塗布、焼結させた金属焼結体であってもよい。また、インダクタ配線110は、複数の金属層が積層された多層構造であってもよい。インダクタ配線110の厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0040】
第1引出配線51および第2引出配線52は、インダクタ配線110の両端から無機基板21の天面21aに直交する方向に延在して本体部10を貫通している。第1引出配線51は、インダクタ配線110の外周端110e1の上面から上側に延在する第1ビア配線121vと、第1ビア配線121vから上側に延在する第1柱状配線151とを有する。第2引出配線52は、インダクタ配線110の内周端110e2の上面から上側に延在する第2ビア配線122vと、第2ビア配線122vから上側に延在する第2柱状配線152とを含む。
【0041】
第1引出配線51および第2引出配線52は、第1側面5s1および第2側面5s2と第1端面5e1および第2端面5e2とから露出しない。これによれば、各受動部品1に個片化する製造工程において第1側面5s1および第2側面5s2と第1端面5e1および第2端面5e2を露出させる場合、第1引出配線51および第2引出配線52を切断することなく各受動部品1に容易に切断できる。
【0042】
第1外部端子41は、受動素子部5の天面5a(本体部10の天面10a)に設けられ、該天面5aから露出する第1柱状配線151の端面を覆っている。これにより、第1外部端子41は、インダクタ配線110の外周端110e1に電気的に接続される。第2外部端子42は、受動素子部5の天面5aに設けられ、該天面5aから露出する第2柱状配線152の端面を覆っている。これにより、第2外部端子42は、インダクタ配線110の内周端110e2に電気的に接続される。
【0043】
第1外部端子41および第2外部端子42は、導電性材料からなる。第1外部端子41および第2外部端子42は、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuからなる金属層が内側から外側に向かってこの順に積層された3層構造である。
【0044】
被覆膜60は、絶縁性材料からなり、受動素子部5の天面5a(本体部10の天面10a)を覆い、第1外部端子41および第2外部端子42を露出させている。被覆膜60によって、受動部品1の表面の絶縁性を確保することができる。被覆膜60は、例えば、ソルダーレジストにより形成される。被覆膜60は、本体部10と同一の材料であってもよく、または、本体部10と異なる材料であってもよい。
【0045】
図2に示すように、無機基板21の天面21aに直交する第1断面において、受動素子部5は、天面5aに接続し互いに対向する第1端面5e1および第2端面5e2を有する。第1端面5e1は、特許請求の範囲に記載の「第3側面」に相当し、第2端面5e2は、特許請求の範囲に記載の「第4側面」に相当する。第1断面とは、無機基板21の天面21aの中心を通過し天面21aに直交する平面における断面である。この実施形態では、第1断面は、受動部品1の幅方向であるY方向の中心を通過する断面である。なお、第1断面は、受動部品1の長さ方向であるX方向の中心を通過する断面であってもよく、このとき、第3側面5s1は、特許請求の範囲に記載の「第3側面」に相当し、第4側面5s2は、特許請求の範囲に記載の「第4側面」に相当する。
【0046】
好ましくは、第1断面において、無機基板21の底面21bの線粗さは、無機基板21の第1端面21e1の線粗さおよび無機基板21の第2端面21e2の線粗さよりも小さい。これによれば、底面21bは不要な凸部がないので、受動部品1の厚みを薄くできる。
【0047】
好ましくは、第1断面において、受動素子部5の第1端面5e1(本体部10の第1端面10e1)の線粗さおよび受動素子部5の第2端面5e2(本体部10の第2端面10e2)の線粗さは、それぞれ、無機基板21の第1端面21e1の線粗さおよび無機基板21の第2端面21e2の線粗さよりも小さい。例えば、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2のうちの小さい方の線粗さは、0.48μmであり、本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2のうちの大きい方の線粗さは、0.256μmである。これによれば、本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2の凹凸を小さくできるため、インダクタ配線110の幅方向の大きさを確保でき、受動素子部5の性能を確保できる。
【0048】
好ましくは、受動素子部5の天面5a(本体部10の天面10a)の線粗さは、無機基板21の第1端面21e1の線粗さおよび無機基板21の第2端面21e2の線粗さよりも小さい。これによれば、本体部10の天面10aの線粗さは小さいので、本体部10の天面10aに形成される外部端子や配線などの高周波特性の劣化を抑制できる。
【0049】
好ましくは、無機基板21の天面21aの線粗さは、0.5μm以下である。無機基板21の第1端面21e1の線粗さおよび無機基板21の第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、0.2μm以上10μm以下である。本体部10の第1端面10e1の線粗さおよび本体部10の第2端面10e2の線粗さは、それぞれ、0.5μm以下である。この場合、前提として、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。
【0050】
好ましくは、無機基板21の天面21aの線粗さは、無機基板21の底面21bの線粗さよりも大きい。これによれば、天面21aの線粗さは大きいので、無機基板21と受動素子部5の密着を強固にできる。
【0051】
好ましくは、無機基板21の天面21aの線粗さは、無機基板21の底面21bの線粗さよりも小さい。これによれば、天面21aの線粗さは小さいので、受動素子部5の高周波特性の劣化を抑制できる。
【0052】
好ましくは、有機樹脂からなる本体部10の厚みは、無機基板21の厚みよりも薄い。これによれば、本体部10は、有機樹脂からなり、無機基板21に比べて柔らかいが、本体部10の厚みは薄いので、受動部品1の反りを抑制できる。また、本体部10を実装基板に実装する際、実装面が有機樹脂からなるので、実装の衝撃を吸収することができる。
【0053】
[製造方法]
次に、図4Aから図4Jを用いて受動部品1の製造方法について説明する。図4Aから図4Jは、図1のII-II断面に対応した図である。
【0054】
図4Aに示すように、無機基板21を準備する。無機基板21は、例えば、Si基板またはSiO基板である。
【0055】
図4Bに示すように、無機基板21の上面(天面)にスパッタ法を用いてシード層600を形成する。その後、レジスト1023を貼付け、フォトリソグラフィ工法を用いてレジスト1023に所定パターンを形成する。所定パターンは、インダクタ配線110の形状に対応したパターンである。
【0056】
図4Cに示すように、シード層600に給電しつつ、電解めっき法を用いてシード層600上に導体層1110を形成する。シード層600と導体層1110からインダクタ配線110を形成する。その後、レジスト1023を剥離し、露出したシード層600をエッチングする。以下、シード層600の図示を省略する。
【0057】
図4Dに示すように、無機基板21の上面にインダクタ配線110を覆うように第1絶縁層1011を形成する。第1絶縁層1011の上面でインダクタ配線110の端部に対応する位置に、フォトリソグラフィ工法を用いてビア孔1011aを形成する。インダクタ配線110の形成と同様の方法により、図示しないシード層を形成し、ビア孔1011a内に第1ビア配線121vおよび第2ビア配線122vを形成し、さらに、第1ビア配線121v上に第1柱状配線151を形成し、第2ビア配線122v上に第2柱状配線152を形成する。第1ビア配線121vと第1柱状配線151から第1引出配線51を形成し、第2ビア配線122vと第2柱状配線152から第2引出配線52を形成する。なお、シード層を用いないで、インダクタ配線110から給電してもよく、任意の方法で引出配線を形成すればよい。
【0058】
図4Eに示すように、第1絶縁層1011上に第1引出配線51および第2引出配線52を覆うように第2絶縁層1012を形成し、第1引出配線51および第2引出配線52の端面が露出するように第2絶縁層1012を研削する。第1絶縁層1011と第2絶縁層1012から本体部10を形成する。
【0059】
図4Fに示すように、本体部10の上面(天面)に被覆膜60を形成する。被覆膜60は、例えば、ソルダーレジストである。被覆膜60には、外部端子を形成する領域に孔部60aを形成する。
【0060】
図4Gに示すように、第1引出配線51上の孔部60aに第1外部端子41を形成し、第2引出配線52上の孔部60aに第2外部端子42を形成する。第1外部端子41および第2外部端子42は、例えば、無電解めっきにより形成され、または、触媒を用いて形成される。
【0061】
図4Hに示すように、無機基板21の下面(底面)に接着部材1000を貼り付け、この接着部材1000を図示しない固定台に貼り付け、無機基板21を固定台に固定する。その後、個片化工程において、まず、本体部10をカット線Cにてブレードで切断し、無機基板21をブレードで切断しない。これにより、本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2を形成する。続いて、図4Iに示すように、本体部10に対してエッチングを行わず、無機基板21に対してエッチングを行う。このように、選択性エッチングにより無機基板21に対してエッチングを行う。これにより、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2を形成する。
【0062】
このようにして、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2(受動素子部5の第1端面5e1および第2端面5e2)の線粗さよりも大きくすることができる。同様に、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを無機基板21の天面21aよりも大きくすることができる。さらに、ブレードの側面の砥粒を最適化し、または、ブレードを振動させながら無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2を研削することで、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを所望の粗さにすることができる。
【0063】
図4Jに示すように、接着部材1000を剥離して、受動部品1を製造する。
【0064】
<第2実施形態>
[構成]
図5は、受動部品の第2実施形態を示す分解平面図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、受動素子部の構成と無機基板の形状とが、主に相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
なお、便宜上、図5では、本体部10は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。また、図5では、第1外部端子41および第2外部端子42を二点鎖線で描き、被覆膜60および誘電膜73を省略して描いている。
【0066】
図5図6に示すように、第2実施形態の受動部品1Aでは、受動素子部5Aは、本体部10内に設けられたコンデンサ素子Cおよびインダクタ素子Lを含む。インダクタ素子Lとコンデンサ素子Cとは、電気的に並列に接続されている。コンデンサ素子Cは、無機基板21Aの天面21a上に設けられ、インダクタ素子Lは、コンデンサ素子C上に設けられる。
【0067】
上記構成によれば、コンデンサ素子Cとインダクタ素子Lは、順に、無機基板21A上に設けられるため、受動部品1Aの製造工程において、無機基板21Aにコンデンサ素子Cを形成した後に、コンデンサ素子C上にインダクタ素子Lを形成することができる。したがって、インダクタ素子Lを最後に形成するため、インダクタ素子Lに熱に弱い材料を用いることができる。また、無機基板21A内にコンデンサ素子Cが存在しないため、無機基板21Aを任意の厚みに研削できる。
【0068】
コンデンサ素子Cは、無機基板21Aの天面21aに直交する方向に対向する第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72と、第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72の間に配置された誘電膜73とを有する。
【0069】
第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72は、それぞれ、無機基板21Aの天面21aに平行な方向に延在する。第1コンデンサ電極71は、無機基板21の天面21aに接触している。第2コンデンサ電極72は、第1コンデンサ電極71よりも上方に配置されている。
【0070】
第1コンデンサ電極71は、Z方向から見て、インダクタ配線110の外周端110e1、内周端110e2および巻回部の一部に重なるように形成されている。つまり、Z方向から見て、第1コンデンサ電極71の第1端部は、外周端110e1に重なり、第1コンデンサ電極71の第2端部は、内周端110e2に重なり、第1コンデンサ電極71の第1端部と第2端部の間の部分は、巻回部の一部に重なる。
【0071】
第2コンデンサ電極72は、Z方向から見て、インダクタ配線110の外周端110e1に重なるように形成されている。つまり、Z方向から見て、第2コンデンサ電極72は、第1コンデンサ電極71の第1端部に重なる。
【0072】
誘電膜73は、第2コンデンサ電極72と無機基板21Aの間に配置される。誘電膜73は、第1コンデンサ電極71を覆うように、無機基板21Aの天面21aに接触している。受動素子部5Aの底面5bは、誘電膜73および第1コンデンサ電極71を含む。
【0073】
第1コンデンサ電極71の第2端部は、誘電膜73を貫通する第3ビア配線123vに接続され、第3ビア配線123vは、第4ビア配線124vを介して、インダクタ配線110の内周端110e2に接続される。第2コンデンサ電極72は、第5ビア配線125vを介して、インダクタ配線110の外周端110e1に接続される。これにより、インダクタ素子Lとコンデンサ素子Cは、図5の一点鎖線に示すように、電気的に並列に接続される。なお、インダクタ素子Lとコンデンサ素子Cは、電気的に直列に接続してもよい。
【0074】
第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72の導電材料は、特に限定されず、例えばAlである。好ましくは、第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72の導電材料は、インダクタ配線110の導電材料と異なる。これにより、直流電流が流れない第1コンデンサ電極71および第2コンデンサ電極72と、直流電流が流れるインダクタ配線110と、に異なる導電材料を用いることにより、受動部品1Aの特性を劣化させずに製造コストを低減できる。具体的に述べると、Alは導電率が低いが安価なため、電圧素子であるコンデンサ素子Cの第1,第2コンデンサ電極71,72に用いることが好ましい。また、導電率が高いCuは、電流素子であるインダクタ素子Lのインダクタ配線110に用いることが好ましい。これにより、受動部品1Aの特性を劣化させずに製造コストを低減できる。
【0075】
誘電膜73は、無機基板21Aの元素を少なくとも1つ以上含む。無機基板21Aの材料は、第1実施形態の無機基板21の材料と同じである。誘電膜73の材料は、例えばSiOである。これによれば、誘電膜73の物理パラメータ(線膨張係数やヤング率)を無機基板21Aの物理パラメータに近づけやすく、誘電膜73の反りを抑制することができる。なお、誘電膜73の材料は、例えばHfO、Yなどのhigh-k材料などであってもよい。これにより、コンデンサ素子Cの容量を高めることができる。
【0076】
図6に示すように、無機基板21Aの天面21aに直交する第1断面において、無機基板21Aの第1端面21e1の線粗さと無機基板21Aの第2端面21e2の線粗さは、異なる。例えば、第1端面21e1の線粗さと第2端面21e2の線粗さの差異は、3倍以上である。これによれば、無機基板21Aに方向性を付与することができる。第2実施形態では、第1端面21e1の線粗さは、第2端面21e2の線粗さよりも小さい。
【0077】
具体的に述べると、第2端面21e2は、一部に、天面21aに直交する方向に対して傾斜し底面21bに接続する傾斜面21e21を有する。つまり、第2端面21e2は、さらに、天面21aに直交する方向に延在し天面21aに接続する垂直面21e22を有し、傾斜面21e21は、垂直面21e22と底面21bの間に接続される。一方、第1端面21e1は、天面21aに直交する方向に延在する垂直面である。上記構成によれば、無機基板21Aにより明確に方向性を付与することができる。
【0078】
第1実施形態と同様に、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。第2端面21e2の線粗さは、垂直面21e22の表面の凹凸と、傾斜面21e21の表面の凹凸に加え傾斜面21e21の傾斜角度をも含めて測定される。第1端面21e1の表面の凹凸および第2端面21e2の垂直面21e22の表面の凹凸は、それぞれ、第2端面21e2の傾斜面21e21の表面の凹凸よりも大きい。図6では、理解し易くするために、第1端面21e1の表面の凹凸および第2端面21e2の垂直面21e22の表面の凹凸を大きく描いている。
【0079】
傾斜面21e21は、天面21aから底面21bに向かうにつれて第1端面21e1に近づく方向に傾斜するように形成されている。上記構成によれば、無機基板21Aの底面21b側の角部が面取りされ、無機基板21Aの欠けを防止できる。
【0080】
なお、第2端面21e2が傾斜面を有しているが、第1端面21e1が傾斜面を有していてもよく、または、第1端面21e1および第2端面21e2が傾斜面を有していてもよい。つまり、第1端面21e1および第2端面21e2の少なくとも一方が、傾斜面を有していればよい。
【0081】
[製造方法]
次に、図7Aから図7Lを用いて受動部品1Aの製造方法について説明する。図7Aから図7Lは、図5のVI-VI断面に対応した図である。
【0082】
図7Aに示すように、無機基板21Aを準備する。無機基板21Aは、例えば、Si基板またはSiO基板である。
【0083】
図7Bに示すように、第1コンデンサ電極71に相当する第1コンデンサ電極導体層1071を無機基板21A上に形成する。具体的に述べると、スパッタ法を用いて、無機基板21Aの上面に例えばAl膜を形成する。
【0084】
図7Cに示すように、図示しないレジスト層を塗布して、フォトリソグラフィ工程によりレジスト層に所定パターンの開口部を形成する。その後、Al膜をエッチングして、パターニングされた第1コンデンサ電極導体層1071を形成する。その後、レジスト層を剥離する。これにより、第1コンデンサ電極71を形成する。
【0085】
図7Dに示すように、第1コンデンサ電極71を覆うように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより誘電膜73を無機基板21A上に形成する。誘電膜73は、例えば、SiOを用いるが、SiNなどを使用してもよい。このように、誘電率が高いとコンデンサの容量密度を向上できる。また、誘電膜73と無機基板21Aが同じ材料、例えばSiが含まれていることで、材料物性が近くなり、反りや剥離などを抑制することができる。
【0086】
図7Eに示すように、誘電膜73上に第2コンデンサ電極72を形成する。第2コンデンサ電極72は、Z方向からみて、第1コンデンサ電極71に重なるように形成する。具体的に述べると、第2コンデンサ電極72を第1コンデンサ電極71の形成と同様に形成する。
【0087】
図7Fに示すように、図示しないレジスト層を塗布して、フォトリソグラフィ工程によりレジスト層に所定パターンの開口部を形成する。その後、誘電膜73をエッチングして、パターニングされた誘電膜73を形成する。この際、第3ビア配線123vを設ける位置に対応した位置に開口71aを形成する。
【0088】
図7Gに示すように、第2コンデンサ電極72および誘電膜73を覆うように、本体部10の一部に相当する第3絶縁層1013を形成する。第3絶縁層1013として、ポリイミド系の有機絶縁膜を用いるが、無機絶縁層、例えばSiOやSiNを用いてもよく、または、有機絶縁膜としてエポキシやフェノール、BCBなどを用いてもよい。そして、図示しないレジスト層を塗布して、フォトリソグラフィ工程によりレジスト層に所定パターンの開口部を形成する。その後、第3絶縁層1013をエッチングして、パターニングされた第3絶縁層1013を形成する。この際、第4ビア配線124vを設ける位置に対応した位置に開口1013aを形成し、第5ビア配線125vを設ける位置に対応した位置に開口1013bを形成する。
【0089】
図7Hに示すように、第3ビア配線123v、第4ビア配線124vおよび第5ビア配線125vを形成してから、第1実施形態の製造方法と同様にして、インダクタ配線110、第1引出配線51、第2引出配線52、本体部10、第1外部端子41、第2外部端子42、被覆膜60を形成する。
【0090】
図7Iに示すように、被覆膜60上に図示しない接着部材を貼り付け、この接着部材を図示しない固定台に貼り付け、本体部10を固定台に固定する。その後、無機基板21Aの下面(底面)にパターンニングされた保護膜1001を形成する。保護膜1001のパターンニングには、上述したようなレジスト層を用いてパターンニングを行う。そして、保護膜1001から露出した無機基板21Aに対してエッチングまたはサンドブラストを行って、無機基板21Aの下面側に切り欠き部210を形成する。切り欠き部210が、第2端面21e2の傾斜面21e22を構成する。その後、保護膜1001を剥離する。
【0091】
図7Jに示すように、個片化工程において、まず、本体部10をカット線Cにてブレードで切断し、無機基板21Aをブレードで切断しない。これにより、本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2を形成する。続いて、図7Kに示すように、ブレードを振動させながら無機基板21Aを切断する。これにより、無機基板21Aの第1端面21e1および第2端面21e2の垂直面21e22を形成する。
【0092】
このようにして、無機基板21Aの第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを本体部10の第1端面10e1および第2端面10e2(受動素子部5Aの第1端面5e1および第2端面5e2)の線粗さよりも大きくすることができる。同様に、無機基板21Aの第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを無機基板21Aの天面21aよりも大きくすることができる。
【0093】
図7Lに示すように、図示しない接着部材を剥離して、受動部品1Aを製造する。
【0094】
[第1変形例]
図8は、受動部品の第2実施形態の第1変形例を示す断面図である。第1変形例は、第2実施形態(図6)とは、無機基板の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0095】
図8に示すように、第1変形例の受動部品1Bでは、無機基板21Bの第1端面21e1は、傾斜面21e11と垂直面21e12とを有する。傾斜面21e11は、天面21aに直交する方向に対して傾斜し底面21bに接続する。垂直面21e12は、天面21aに直交する方向に延在し天面21aに接続する。傾斜面21e11は、垂直面21e12と底面21bの間に接続される。傾斜面21e11は、天面21aから底面21bに向かうにつれて第2端面21e2に近づく方向に傾斜するように形成されている。これにより、無機基板21Bの底面21b側の角部が面取りされ、無機基板21Bの欠けを防止できる。
【0096】
第1端面21e1の傾斜面21e11は、第2端面21e2の傾斜面21e21よりも、傾斜面に沿った長さ、X方向に沿った長さ、Z方向に沿った長さのそれぞれにおいて小さい。これにより、無機基板21Bにより明確に方向性を付与することができる。
【0097】
第1端面21e1の傾斜面21e11の表面の凹凸、第1端面21e1の垂直面21e12の表面の凹凸、および、第2端面21e2の垂直面21e22の表面の凹凸は、それぞれ、第2実施形態と異なり小さく、第2端面21e2の傾斜面21e21の表面の凹凸と同じ大きさである。
【0098】
第2実施形態と同様に、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。また、第1端面21e1の線粗さと第2端面21e2の線粗さは、異なる。第1変形例では、第1端面21e1の線粗さは、第2端面21e2の線粗さよりも小さい。
【0099】
[第2変形例]
図9は、受動部品の第2実施形態の第2変形例を示す断面図である。第2変形例は、第2実施形態(図6)とは、無機基板の形状が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0100】
図9に示すように、第2変形例の受動部品1Cでは、無機基板21Cの第1端面21e1は、傾斜面21e11と垂直面21e12とを有する。傾斜面21e11は、天面21aに直交する方向に対して傾斜し底面21bに接続する。垂直面21e12は、天面21aに直交する方向に延在し天面21aに接続する。傾斜面21e11は、垂直面21e12と底面21bの間に接続される。傾斜面21e11は、天面21aから底面21bに向かうにつれて第2端面21e2から離れる方向に傾斜するように形成されている。これにより、無機基板21Cの底面21b側の角部が突出し、無機基板21Cを容易に把持することができる。
【0101】
一方、第2端面21e2は、天面21aに直交する方向に延在する垂直面である。これによれば、無機基板21Cにより明確に方向性を付与することができる。
【0102】
第1端面21e1の傾斜面21e11の表面の凹凸、第1端面21e1の垂直面21e12の表面の凹凸は、それぞれ、第2実施形態の第1端面21e1と異なり小さく、第2端面21e2の表面の凹凸よりも小さい。
【0103】
第2実施形態と同様に、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。また、第1端面21e1の線粗さと第2端面21e2の線粗さは、異なる。第2変形例では、第1端面21e1の線粗さは、第2端面21e2の線粗さよりも大きい。
【0104】
<第3実施形態>
図10は、受動部品の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態は、第2実施形態とは、受動素子部の構成と無機基板の形状とが、主に相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第2実施形態と同じ構成であり、第2実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0105】
図10に示すように、第3実施形態の受動部品1Dでは、受動素子部5Dは、インダクタ素子Lと、コンデンサ素子Cの一部とを含む。コンデンサ素子Cの一部は、第1コンデンサ電極71を含まず、第2コンデンサ電極72と誘電膜73とを含む。つまり、無機基板21Dの天面21a上に第1コンデンサ電極71は存在せず、無機基板21Dの天面21aは、誘電膜73と接触している。
【0106】
無機基板21Dは、半導体材料からなる半導体よりも電気抵抗が低い低抵抗部211を有する。低抵抗部211は、受動素子部5Dと電気的に接続されている。これによれば、低抵抗部211を導体として用いることができ、設計自由度が向上する。
【0107】
第3実施形態では、低抵抗部211は、コンデンサ素子Cの第1コンデンサ電極71に相当する。第1コンデンサ電極71としての低抵抗部211は、第2実施形態と異なり、インダクタ素子Lのインダクタ配線110の内周端110e2に接続されない。
【0108】
低抵抗部211は、半導体材料からなる半導体、例えば、Si、GaAs、SiC、GaN、InP、ITOよりも電気抵抗が低い。第3実施形態では、無機基板21Dの全体が、低抵抗部211である。これにより、受動部品1Dの電気抵抗を低くできる。
【0109】
無機基板21Dが半導体材料として例えばSiを含む場合、低抵抗部211は、PやBをドープされたSiであり、無機基板21Dが半導体材料として例えばGaAsを含む場合、低抵抗部211は、SiやSn、S、Se、Te、Be、Zn、GeをドープされたGaAsである。
【0110】
「低抵抗」とは、電気抵抗率が10-1Ω・cm以下であることを意味する。これにより、低抵抗部211の電気抵抗が十分に低くなり、電流の大部分を低抵抗部211に流すことができる。例えば、無機基板21DがSi基板の場合、Si基板の電気抵抗率は10Ω・cm程度である。低抵抗部211の電気抵抗率が、無機基板21Dのうちの低抵抗部211以外の部分の電気抵抗率の1/1000倍以下であれば、電流の大部分を低抵抗部211に流すことができる。そのため、低抵抗部211の電気抵抗率を10-1Ω・cm以下としている。低抵抗部211の電気抵抗率は、例えば、次のように算出できる。まず、低抵抗部211の両端に測定用プローブを接触させて4端子法で直流電気抵抗を測定する。次に、測定した電気抵抗を低抵抗部211の断面積、例えばリンやボロンをドープしたSiの断面積と掛け、低抵抗部211の両端までの長さで割ることで電気抵抗率を測定することができる。なお、ドープした断面積は、低抵抗部211を横断する断面を露出させ、エネルギー分散型X線分析(EDX)にて元素マッピングすることで算出できる。具体的に述べると、元素マッピングにおいて、ドープ量のピーク値に対し、その3割となる領域までの範囲の面積をドープした断面積とすればよい。
【0111】
低抵抗部211は、無機基板21Dに不純物をドーピングし、高濃度不純物領域(言い換えると、ドープ層)を形成することで得ることができる。すなわち、低抵抗部211は、無機基板21Dが含む半導体材料を含有し、半導体材料からなる半導体より電気抵抗が低く、かつ、無機基板21Dと一体化している。無機基板21DがSi基板の場合、1×1020/cm程度のIII族もしくはV族の不純物ドープを行うことが好ましい。これにより、低抵抗部211の電気抵抗率は、V族不純物のリンのドープであれば10-3Ω・cm程度、III族不純物のボロンのドープであれば5×10-3Ω・cm程度となる。
【0112】
無機基板21Dでは、第1端面21e1および第2端面21e2は、天面21aに直交する方向に延在する垂直面である。第2実施形態と同様に、第1端面21e1の線粗さおよび第2端面21e2の線粗さは、それぞれ、天面21aの線粗さよりも大きい。また、底面21bの線粗さは、天面21aの線粗さよりも大きい。底面21bを研削することにより無機基板21Dの厚みを調整することができる。図10では、理解し易くするために、第1端面21e1の表面の凹凸、第2端面21e2の表面の凹凸、および、底面21bの表面の凹凸を大きく描いている。
【0113】
なお、第3実施形態では、低抵抗部は、コンデンサ素子の第1コンデンサ電極としたが、無機基板上に並列に配置されたインダクタ素子とコンデンサ素子を接続する引回配線としてもよい。また、インダクタ素子が複数のインダクタ配線を含む場合、低抵抗部は、1つのインダクタ配線としてもよい。また、第3実施形態では、低抵抗部は、無機基板の全体に設けたが、無機基板の一部に設けてもよい。
【0114】
<第4実施形態>
図11は、パッケージ部品の実施形態を示す断面図である。図11に示すように、パッケージ部品6は、実装基板8と、実装基板8上に配置された受動部品1と、実装基板8上に配置された電子部品7と、実装基板8上に設けられ、受動部品1および電子部品7を覆う封止部材9とを有する。
【0115】
受動部品1は、第1実施形態に記載の受動部品であるが、第2実施形態、第1変形例、第2変形例、第3実施形態に記載の受動部品であってもよい。封止部材9は、受動部品1の無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2に接触する。
【0116】
実装基板8は、例えば、SiやSiOからなる無機基板(いわゆる、シリコンインターポーザ基板やガラスインターポーザ基板)であり、または、FR4(Flame Retardant Type 4)、エポキシ、ポリイミドなどからなる有機基板(いわゆる、有機パッケージ基板)などである。実装基板8の内部や主面には配線が設けられ、受動部品1および電子部品7と電気的に接続される。実装基板8の主面には、外部端子、導電体バンプ、導電体ピラー、半田などの導電部材が設けられていてもよい。
【0117】
受動部品1および電子部品7は、半田15を介して、実装基板8の主面に接続される。つまり、受動部品1の第1外部端子41および第2外部端子42が、半田15を介して、実装基板8に接続される。電子部品7は、例えば、他の受動部品、集積回路部品、センサ部品などである。電子部品7は、省略してもよい。封止部材9は、例えば、モールド樹脂である。モールド樹脂は、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂から構成される。
【0118】
上記構成によれば、受動部品1は封止部材9により覆われるので、信頼性が向上する。また、封止部材9は、線粗さの大きい第1端面21e1および第2端面21e2に接触するので、封止部材9と受動部品1との密着性が向上する。
【0119】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。前記実施形態では、インダクタ素子は、1層の平面スパイラル状のインダクタ配線を有していたが、複数層の平面スパイラル状のインダクタ配線を有していてもよい。前記実施形態では、受動素子部は、インダクタ素子およびコンデンサ素子の少なくとも一方を含んでいたが、インダクタ素子、コンデンサ素子および抵抗からなる群より選択された何れか1つ以上を含んでいてもよい。
【0120】
<第1実施例>
次に、第1実施形態の受動部品1について線粗さを測定した実施例を説明する。
【0121】
受動部品1を研磨して、図2に示すように、受動部品1の幅方向であるY方向の中心を通過し天面21aに直交する平面における断面を露出させ、測定箇所の画像を取得した。本実施例では、顕微鏡やSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)などで倍率350倍および1000倍の画像を取得した。測定倍率は、測定箇所の大部分が収まる倍率であればよい。
【0122】
取得した画像を測定ソフト(WinROOF2018)に読み込ませた。具体的には、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2を測定する場合、取得画像の被測定箇所の大部分(各端面の全長の8割以上)を測定エリアに指定した。
【0123】
そして、SEMI規格に準拠した線粗さ(LER)を測定した。WinRoof2018では線のエッジを検出し、近似直線を算出し、近似直線と実際のエッジとのずれ量を粗さとした。無機基板21の天面21aおよび底面21b、本体部10の第1端面5e1および第2端面5e2についても、同様に測定した。本実施例では、線粗さは平均値のことを指す。
【0124】
表1に、無機基板21の第1端面21e1、第2端面21e2、天面21aおよび底面21bと、本体部10の第1端面5e1および第2端面5e2とについて線粗さの測定値を示す。「レンジ」とは、線粗さの最大値と最小値の幅をいう。「σ」とは、線粗さのばらつきをいう。
【0125】
[表1]
【0126】
表1に示すように、無機基板の第1端面および第2端面の線粗さは、それぞれ、無機基板の天面の線粗さよりも大きい。また、本体部の第1端面および第2端面の線粗さは、それぞれ、無機基板の第1端面および第2端面の線粗さよりも小さい。また、無機基板の天面の線粗さは、0.5μm以下であり、無機基板の第1端面および第2端面の線粗さは、それぞれ、0.2μm以上10μm以下である。また、無機基板の天面の線粗さは、無機基板の底面の線粗さよりも小さい。
【0127】
<第2実施例>
次に、第2実施形態の受動部品1Aについて線粗さを測定した実施例を説明する。
【0128】
受動部品1を研磨して、図6に示すように、受動部品1の幅方向であるY方向の中心を通過し天面21aに直交する平面における断面を露出させ、測定箇所の画像を取得した。第1実施例と同様の方法で、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さを測定した。
【0129】
表2に、無機基板21の第1端面21e1および第2端面21e2の線粗さの測定値を示す。「レンジ」とは、線粗さの最大値と最小値の幅をいう。「σ」とは、線粗さのばらつきをいう。
【0130】
[表2]
【0131】
表2に示すように、無機基板の第1端面の線粗さと無機基板の第2端面の線粗さは、異なる。第2端面の線粗さは、第1端面の線粗さよりも大きい。第1端面21e1の線粗さと第2端面21e2の線粗さの差異は、約5倍である。
【0132】
本開示は以下の態様を含む。
<1>
互いに対向する第1主面および第2主面を有し、半導体材料を含む無機基板と、
前記無機基板の前記第1主面に接触するように前記第1主面上に設けられた受動素子部と
を備え、
前記第1主面全体における重心を通過し、前記第1主面に直交する平面における断面を第1断面としたとき、
前記第1断面において、
前記無機基板は、前記第1主面に接続し互いに対向する第1側面および第2側面を有し、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、前記第1主面の線粗さよりも大きい、受動部品。
<2>
前記第1断面において、前記第2主面の線粗さは、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、<1>に記載の受動部品。
<3>
前記受動素子部は、コンデンサ素子とインダクタ素子を含み、
前記コンデンサ素子は、前記無機基板の前記第1主面上に設けられ、前記インダクタ素子は、前記コンデンサ素子上に設けられる、<1>または<2>の何れか一つに記載の受動部品。
<4>
前記第1断面において、
前記受動素子部は、前記第1主面に接触する第3主面と、前記第3主面に接続し互いに対向する第3側面および第4側面とを有し、
前記第3側面の線粗さおよび前記第4側面の線粗さは、それぞれ、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、<1>から<3>の何れか一つに記載の受動部品。
<5>
前記受動素子部は、インダクタ素子を含むと共に、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部は、前記第3側面および前記第4側面を有する、<4>に記載の受動部品。
<6>
前記第1側面の線粗さと前記第2側面の線粗さは、異なる、<1>から<5>の何れか一つに記載の受動部品。
<7>
前記第2側面は、一部に、前記第1主面に直交する方向に対して傾斜し前記第2主面に接続する傾斜面を有する、<1>から<6>の何れか一つに記載の受動部品。
<8>
前記第2側面は、さらに、前記第1主面に直交する方向に延在し前記第1主面に接続する垂直面を有し、前記傾斜面は、前記垂直面と前記第2主面の間に接続される、<7>に記載の受動部品。
<9>
前記傾斜面は、前記第1主面から前記第2主面に向かうにつれて前記第1側面に近づく方向に傾斜するように形成されている、<7>または<8>に記載の受動部品。
<10>
前記受動素子部は、コンデンサ素子の少なくとも一部を含み、
前記コンデンサ素子の少なくとも一部は、前記第1主面に平行な方向に延在するコンデンサ電極と、前記コンデンサ電極と前記無機基板の間に配置され前記無機基板の元素を少なくとも1つ以上含む誘電膜とを有する、<1>から<9>の何れか一つに記載の受動部品。
<11>
前記無機基板は、前記半導体材料からなる半導体よりも電気抵抗が低い低抵抗部を有し、前記低抵抗部は、前記受動素子部と電気的に接続されている、<1>から<10>の何れか一つに記載の受動部品。
<12>
前記受動素子部は、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部は、前記第1主面に接触する第3主面と、前記第3主面に対向する第4主面とを有し、
前記第4主面の線粗さは、前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さよりも小さい、<1>から<11>の何れか一つに記載の受動部品。
<13>
前記第1主面の線粗さは、0.5μm以下であり、
前記第1側面の線粗さおよび前記第2側面の線粗さは、それぞれ、0.2μm以上10μm以下である、<1>から<12>の何れか一つに記載の受動部品。
<14>
前記第1主面の線粗さは、前記第2主面の線粗さよりも大きい、<1>から<13>の何れか一つに記載の受動部品。
<15>
前記第1主面の線粗さは、前記第2主面の線粗さよりも小さい、<1>から<13>の何れか一つに記載の受動部品。
<16>
前記受動素子部は、有機樹脂からなる本体部を有し、
前記本体部の厚みは、前記無機基板の厚みよりも薄い、<1>から<15>の何れか一つに記載の受動部品。
<17>
実装基板と、
前記実装基板上に配置された<1>から<16>の何れか一つに記載の受動部品と、
前記実装基板上に設けられ、前記受動部品を覆う封止部材と
を備え、
前記封止部材は、前記受動部品の前記無機基板の前記第1側面および前記第2側面に接触する、パッケージ部品。
【符号の説明】
【0133】
1、1A、1B、1C、1D 受動部品
5、5A、5D 受動素子部
5a 天面(第4主面)
5b 底面(第3主面)
5e1 第1端面(第3側面)
5e2 第2端面(第4側面)
5s1 第1側面
5s2 第2側面
6 パッケージ部品
7 電子部品
8 実装基板
9 封止部材
10 本体部
10a 天面
10b 底面
10e1 第1端面
10e2 第2端面
10s1 第1側面
10s2 第2側面
21、21A、21B、21C、21D 無機基板
21a 天面(第1主面)
21b 底面(第2主面)
21e1 第1端面(第1側面)
21e11 傾斜面
21e12 垂直面
21e2 第2端面(第2側面)
21e21 傾斜面
21e22 垂直面
21s1 第1側面
21s2 第2側面
211 低抵抗部
41、42 第1、第2外部端子
51、52 第1、第2引出配線
60 被覆膜
71、72 第1、第2コンデンサ電極
73 誘電膜
110 インダクタ配線
110e1、110e2 外周端、内周端
121v~125v 第1~第5ビア配線
151、152 第1、第2柱状配線
C コンデンサ素子
L インダクタ素子
AX 軸
S 測定面
K 近似直線
d ずれ量
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L
図8
図9
図10
図11