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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064753
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173582
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】岸上 利裕
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG31
2C057AG32
2C057AG33
(57)【要約】
【課題】圧力振動を減衰させて分滴の発生を抑制し、さらに不吐出が生じるのを抑制する。
【解決手段】ヘッド1は、ノズル31が形成されたプレート47と、圧力室30が形成されたプレート41と、プレート41,47間において積層された5枚のプレート42~46とを有する。5枚のプレート42~46には、圧力室30とノズル31とを接続する接続流路36を構成する孔36A~36Eがそれぞれ形成されている。接続流路36は、圧力室30からノズル31へと向かうに連れて孔径が拡大する拡径部37を有する。拡径部37は、5つの孔36A~36Eにより構成され、5つの孔の径は圧力室30からノズル31へと向かう順に大きい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが形成されたノズルプレートと、
圧力室が形成された圧力室プレートと、
前記ノズルプレートと前記圧力室プレートとの間において積層方向に積層された3以上の接続プレートであって、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続流路を構成する孔がそれぞれ形成された3以上の接続プレートと、を備え、
前記接続流路は、前記圧力室から前記ノズルへと向かうに連れて孔径が拡大する拡径部を有し、
前記拡径部は、前記3以上の接続プレートに形成された少なくとも3つの前記孔により構成され、
前記少なくとも3つの孔の径は、前記圧力室から前記ノズルへと向かう順に大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズルプレートと前記圧力室プレートとの間には、4以上の前記接続プレートが積層されて配置されており、
前記4以上の接続プレートのうち、前記少なくとも3つの孔が形成された接続プレートよりも、前記圧力室プレート側に積層された接続プレートに形成された前記孔の径は、前記少なくとも3つの孔のうち径が最も小さい孔の径と同じであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記接続流路は、その全長に亘って前記拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズルプレートに隣接する第1の前記接続プレートに形成された前記孔の径から前記第1の接続プレートに隣接し前記ノズルプレートとの間に前記第1の接続プレートを挟む第2の前記接続プレートに形成された前記孔の径を差し引いた値が、前記第2の接続プレートに形成された前記孔の径から前記第2の接続プレートに隣接し前記第1の接続プレートとの間に前記第2の接続プレートを挟む第3の前記接続プレートに形成された前記孔の径を差し引いた値よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記拡径部を構成する前記少なくとも3つの孔は、それぞれの中心が一致しておらず、
前記少なくとも3つの孔において、隣接する2つの孔のうち、径の小さい孔は、径の大きい孔と、前記積層方向において全体的に重なることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧力室プレートに隣接する前記接続プレートに形成された前記孔の径は、前記ノズルプレートに隣接する前記接続プレートに形成された前記孔の径の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力室と、ノズルと、圧力室とノズルとを接続する接続流路とを備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のプレートが積層されて構成された流路部材を含む液体吐出ヘッドについて記載されている。流路部材の各プレートには、孔が形成されている。そして、各プレートは、これら孔が互いに連通して個別流路を構成するように位置合わせされている。個別流路は、圧力室と、液体吐出孔(ノズル)と、これら圧力室と液体吐出孔とを接続するディセンダ(接続流路)とを含む。ディセンダは、3以上の孔が互いに連通して構成されている。またディセンダは、液体吐出孔から液滴を吐出する際のディセンダ内の圧力振動を減衰させるための狭隘部(孔)を有している。これにより、1回の吐出動作で吐出される液滴に分滴が生じるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4977803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の液体吐出ヘッドのディセンダは、圧力室から液体吐出孔へと向かうに連れて孔径が拡大する拡径部が、狭隘部を構成する孔と狭隘部と液体吐出孔側で隣接する孔との2つの孔により構成されている。このようにディセンダの拡径部が2つ孔により構成されることで、2つの孔の径に大きな差が生じる。このため、液体吐出孔から気泡が侵入してきた場合、ディセンダにおいて上記孔径の差により生じる段差部に、気泡が留まりやすくなる。この結果、液体吐出孔から液滴を吐出する際に、段差部に留まった気泡によって液滴の不吐出が生じる問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、圧力振動を減衰させて分滴の発生を抑制すること、及び、不吐出が生じるのを抑制することが可能な液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルが形成されたノズルプレートと、圧力室が形成された圧力室プレートと、前記ノズルプレートと前記圧力室プレートとの間において積層方向に積層された3以上の接続プレートであって、前記圧力室と前記ノズルとを接続する接続流路を構成する孔がそれぞれ形成された3以上の接続プレートと、を備え、前記接続流路は、前記圧力室から前記ノズルへと向かうに連れて孔径が拡大する拡径部を有し、前記拡径部は、前記3以上の接続プレートに形成された少なくとも3つの前記孔により構成され、前記少なくとも3つの孔の径は前記圧力室から前記ノズルへと向かう順に大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体吐出ヘッドによると、接続流路の拡径部により、圧力振動を減衰させて分滴の発生を抑制することができる。また、拡径部が圧力室からノズルへと向かう順に大きい少なくとも3つの孔により構成される。このため、拡径部を構成する少なくとも3つの孔において隣接する2つの孔間の径の差が小さくなる。このため、ノズルから気泡が侵入してきても、接続流路において上記孔径の差により生じる段差部に、気泡が留まりにくく、ノズルから液滴を吐出する際の液滴の不吐出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドを含むプリンタの概略平面図である。
図2図1に示すヘッドの平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】(a)は接続流路及びその周辺の拡大断面図であり、(b)はノズルを下方から見たときのノズル及び接続流路を示す要部平面図である。
図5】(a)は接続流路の径が当該接続流路の全長に亘って一定であるときのノズル近傍のインクメニスカスにおける圧力振動の減衰状況を示す図であり、(b)は図4(a)に示す接続流路のときのノズル近傍のインクメニスカスにおける圧力振動の減衰状況を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るヘッドを示しており、(a)は接続流路及びその周辺の拡大断面図であり、(b)はノズルを下方から見たときのノズル及び接続流路を示す要部平面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係るヘッドを示しており、(a)は接続流路の要部断面図であり、(b)は図7(a)に示す接続流路を下方から見たときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るヘッド1は、図1に示すように、プリンタ100に備えられている。プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1Xと、プラテン3と、搬送機構4と、制御部5とを備えている。
【0010】
ヘッドユニット1Xは、紙幅方向に長尺であり、位置が固定された状態でノズル31(図2及び図3参照)から用紙9に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1は、それぞれ紙幅方向に長尺であり、紙幅方向に千鳥状に配列されている。紙幅方向は、鉛直方向と直交する方向である。
【0011】
プラテン3は、ヘッドユニット1Xの下方に配置され、鉛直方向と直交する方向に延びる平板部材である。プラテン3は、その上面により、用紙9を下方から支持する。
【0012】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4A,4Bを有する。搬送方向は、鉛直方向及び紙幅方向と直交する方向である。ローラ対4A,4Bは、制御部5の制御により搬送モータ(図示略)が駆動されると、用紙9を挟持した状態で回転する。これにより、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0013】
制御部5は、ROM、RAM及びASICを有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む)に基づき、搬送モータ(図示略)及び各ヘッド1のドライバIC(図示略)を制御することで、搬送機構4による用紙9の搬送と、各ヘッド1による用紙9へのインクの吐出とを行わせ、用紙9上に画像を記録する。
【0014】
次いで、ヘッド1の構成について説明する。ヘッド1は、本発明の「液体吐出ヘッド」に該当する。
【0015】
ヘッド1は、図2及び図3に示すように、流路部材21と、流路部材21の上面21Aに配置されたアクチュエータ部材22とを含む。
【0016】
流路部材21は、図3に示すように、7枚のプレート41~47で構成されている。プレート41~47は、鉛直方向(各プレート41~47の厚み方向)に互いに積層されている。
【0017】
プレート41には、複数の圧力室30が形成されている。圧力室30は、プレート41に形成された孔により構成されている。プレート47には、複数のノズル31が形成されている。ノズル31は、プレート47に形成された孔により構成されている。プレート41の上面41Aが流路部材21の上面21Aに該当し、プレート47の下面47Bが流路部材21の下面21Bに該当する。上面21Aに複数の圧力室30が開口し、下面21Bに複数のノズル31が開口している。下面21Bは、ノズル面ともいう。
【0018】
プレート41とプレート47との間には、5枚のプレート42~46が積層されている。5枚のプレート42~46のうち、3枚のプレート44~46には、4本の共通流路29(図2参照)が形成されている。5枚のプレート42~46のうち、2枚のプレート42,43には、圧力室30毎に、圧力室30と共通流路29とを連通させる連通流路35が形成されている。5枚のプレート42~46には、圧力室30毎に、圧力室30とノズル31とを接続する接続流路36(図4参照)が形成されている。
【0019】
接続流路36は、図4(a)に示すように、5つの孔36A~36Eで構成されている。5つの孔36A~36Eは、それぞれ、プレート42~46に形成されている。本実施形態において、各孔36A~36Eは円柱状であり、各孔36A~36Eの流路断面(本実施形態では鉛直方向と直交する方向に沿った断面)は円形である。各孔36A~36Eは、鉛直方向(本発明の「積層方向」)に沿った側壁で画定される。各孔36A~36Eは、側壁に段差がなく、一定の径を有する。
【0020】
5つの孔36A~36Eの径DA~DEは、互いに異なる。つまり、接続流路36は、孔36A~36E毎にその流路断面積(本実施形態では鉛直方向と直交する方向に沿った断面積)が互いに異なる。5つの孔36A~36Eの径DA~DEは、圧力室30からノズル31に向かう順に大きい。
【0021】
5つの孔36A~36Eの径DA~DEは、径DB-径DA<径DC-径DB、径DC-径DB<径DD-径DE、径DD-径DC<径DE-径DDを満たしている。つまり、例えば、プレート46に形成された孔36Eの径DEからプレート45に形成された孔36Dの径DDを差し引いた値が、プレート45に形成された孔36Dの径DDからプレート44に形成された孔36Cの径DCを差し引いた値よりも大きい。また、プレート42に形成された孔36Aの径DAは、プレート46に形成された孔36Eの径DEの1/2以下である。
【0022】
プレート41は、本発明の「圧力室プレート」に該当する。プレート47は、本発明の「ノズルプレート」に該当する。プレート42~46は、本発明の「接続プレート」に該当する。なお、プレート46は、本発明の「第1の接続プレート」に該当する。プレート45は、本発明の「第2の接続プレート」に該当する。プレート44は、本発明の「第3の接続プレート」に該当する。
【0023】
また、接続流路36は、図4(a)に示すように、圧力室30からノズル31に向かうに連れて孔径が拡大する拡径部37を有する。本実施形態における拡径部37は、鉛直方向において、接続流路36の全長に亘って形成されている。つまり、拡径部37は、5つの孔36A~36Eから構成されている。
【0024】
また、接続流路36を構成する5つの孔36A~36Eは、図4(b)に示すように、中心が一致しており、鉛直方向に沿って互いに重なって配置されている。より詳細には、5つの孔36A~36Eのうち、鉛直方向に隣接する2つの孔において、径の小さい孔は径の大きい孔と鉛直方向において全体的に重なっている。つまり、例えば、孔36Dは、孔36Eと鉛直方向において全体的に重なっており、孔36Cは、孔36Dと鉛直方向において全体的に重なっている。
【0025】
4本の共通流路29は、図2に示すように、それぞれ紙幅方向に延び、搬送方向に並んでいる。共通流路29は、紙幅方向に配列された複数の圧力室30で構成される圧力室列毎に設けられている。4つの圧力室列は、搬送方向に並んでいる。各共通流路29から、各圧力室列に属する複数の圧力室30に、連通流路35(図3参照)を介してインクが供給される。そして後述のようにアクチュエータ部材22の各アクチュエータが変形することで、圧力室30内のインクに圧力が付与され、接続流路36を通ってノズル31からインク滴が吐出される。
【0026】
このように、流路部材21には、4本の共通流路29と、各共通流路29に連通する複数の個別流路32とが形成されている。各個別流路32は、ノズル31及び圧力室30を含む流路であり、共通流路29の出口から連通流路35、圧力室30及び接続流路36を介してノズル31に至る流路である。
【0027】
流路部材21の上面21Aには、図2に示すように、2つの供給口27と、2つの帰還口28とが形成されている。2つの供給口27は、4つの共通流路29に対して紙幅方向の一方側に配置されている。2つの帰還口28は、4つの共通流路29に対して紙幅方向の他方側に配置されている。供給口27及び帰還口28は、それぞれ、チューブ等を介して、インクタンク(図示略)に連通している。各供給口27は、搬送方向に互いに隣接する2つの共通流路29に連通し、インクタンクから当該2つの共通流路29にインクを供給する。各帰還口28は、搬送方向に互いに隣接する2つの共通流路29に連通し、当該2つの共通流路29からインクタンクにインクを帰還させる。
【0028】
アクチュエータ部材22は、流路部材21の上面21Aの中央に配置されており、供給口27及び帰還口28を覆わず、上面21Aに開口する全ての圧力室30を覆っている。アクチュエータ部材22は、図3に示すように、圧電体61と、振動板62と、共通電極52と、複数の個別電極51とを含む。圧電体61、振動板62及び共通電極52は、図2に示すアクチュエータ部材22の外形を画定し、鉛直方向から見て流路部材21よりも一回り小さい矩形状である。一方、個別電極51は、圧力室30毎に設けられており、圧力室30のそれぞれと鉛直方向に重なっている。
【0029】
振動板62は、流路部材21の上面21Aに配置されている。共通電極52は、振動板62の上面に配置されている。圧電体61は、共通電極52の上面に配置されている。複数の個別電極51は、圧電体61の上面に配置されている。
【0030】
複数の個別電極51及び共通電極52は、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。ドライバICは、共通電極52の電位をグランド電位に維持する一方、個別電極51の電位を所定の駆動電位とグランド電位との間で変化させる。このとき、振動板62及び圧電体61において個別電極51と圧力室30とで挟まれた部分(アクチュエータ)が、圧力室30に向かって凸となるように変形することにより、圧力室30の容積が変化し、圧力室30内のインクに圧力が付与される。当該インクは、接続流路36を通ってノズル31から吐出される。これと同時に、共通流路29内のインクが連通流路35を通って圧力室30に供給され、また、インクタンクから共通流路29にインクが供給される。
【0031】
以上に述べたように、本実施形態によれば、接続流路36が圧力室30からノズル31に向かうに連れて孔径が拡大する拡径部37を有する。これにより、ノズル31からインク滴を吐出する際の圧力振動を効果的に減衰させることができる。接続流路の径が当該接続流路の全長に亘って一定であるときにアクチュエータを変形させてノズルからインク滴を吐出させると、図5(a)に示すように、ノズル近傍のインクメニスカスに生じた圧力振動が時間経過とともに徐々に減衰していくものの、当該圧力振動が次のインク吐出に影響を与えないほど減衰するまでにはある程度時間を要する。しかしながら、本実施形態における接続流路36においては、同条件でノズル31からインク滴を吐出させると、図5(b)に示すように、インク吐出により発生した圧力を弱めることなく、ノズル31近傍のインクメニスカスに生じた圧力振動を短時間で減衰させることが可能となる。このような接続流路36の拡径部37によって圧力振動を減衰させることで、所望のインク滴とは別の分滴の発生を抑制することができる。
【0032】
また、拡径部37が5つの孔36A~36Eにより構成される。このように拡径部37が少なくとも3以上の孔36A~36Eにより構成されることで、隣接する2つの孔間の径の差が小さくなる。つまり、図4(a)に示すように、孔36Aの径DAと孔36Bの径DBとの差により生じる段差部38A、孔36Bの径DBと孔36Cの径DCとの差により生じる段差部38B、孔36Cの径DCと孔36Dの径DDとの差により生じる段差部38C、及び、孔36Dの径DDと孔36Eの径DEとの差により生じる段差部38Dが小さくなる。このため、ノズル31から気泡が侵入してきても、当該段差部38A~38Dに気泡が溜まりにくくなる。
【0033】
仮に、プレート45の孔36Dがプレート46の孔36Eと同径に形成され、接続流路の拡径部が2つのプレート44,45の孔36C,36Dだけで構成される場合、孔36Cと孔36Dとの間の径の差が大きくなり、段差部38Cが大きくなる。段差部38Cが大きくなると当該部分に気泡が留まりやすくなる。しかしながら、本実施形態における拡径部37は、少なくとも3つの孔36C~36Eを有している。これら3つの孔36C~36Eの径DC~DEは、圧力室30からノズル31に向かう順に拡大し、隣接する2つの孔間の径の差が小さくなる。
【0034】
このような拡径部37を接続流路36が有していることで、ノズル31から気泡が侵入してきても、接続流路36において上記孔径の差により生じる段差部38A~38Dに、気泡が留まりにくくなる。この結果、ノズル31からインク滴を吐出する際に、気泡によってノズル31が塞がれるなどしてインク滴の不吐出が生じるのを抑制することができる。
【0035】
接続流路36は、その全長に亘って拡径部37が形成されている。これにより、接続流路36の全体において、気泡が留まりにくくなる。加えて、拡径部37が接続流路36の一部だけに形成されているよりも、ノズル31からインク滴を吐出する際の圧力振動の減衰効果がより一層高くなる。
【0036】
また、プレート46に形成された孔36Eの径DEからプレート45に形成された孔36Dの径DDを差し引いた値が、プレート45に形成された孔36Dの径DDからプレート44に形成された孔36Cの径DCを差し引いた値よりも大きい。これにより、ノズル31に近づく程、孔径が大きくなる比率が高くなる。このため、ノズル31からインク滴を吐出する際の圧力振動の減衰効果がより一層高くなる。
【0037】
また、プレート42に形成された孔36Aの径DAは、プレート46に形成された孔36Eの径DEの1/2以下である。これにより、ノズル31からインク滴を吐出する際の圧力振動の減衰効果がより一層高くなる。
【0038】
<第2実施形態>
続いて、図6を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。
【0039】
第1実施形態におけるヘッド1の接続流路36は、図4に示すように、その全長に亘って拡径部37が形成されている。これに対し、第2実施形態におけるヘッド201は、図6(a)及び図6(b)に示すように、上記のプレート42,43に代えて、孔36Cと同径の孔236A,236Bが形成されたプレート242,243を有する。そして、ヘッド201の接続流路236が、孔236A,236Bと、上記の孔36C~36Eとにより構成され、拡径部237が3つの孔36C~36Eにより構成される。なお、第1実施形態と同様なものについては同符号で示し詳細の説明を省略する。
【0040】
拡径部237は、圧力室30からノズル31に向かう順に孔径が拡大する3つの孔36C~36Eにより構成されている。このため、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0041】
また、5枚のプレート242,243,44~46のうち、プレート44~46よりもプレート41側に積層された2枚のプレート242,243の孔236A,236Bの径が、3つの孔36C~36Eのうち最も径の小さい孔36Cの径と同じである。この場合、5枚のプレート242,243,44~46において、孔径を圧力室30からノズル31へと向かう順に大きくする場合に比べ、ノズル31に最も近い孔36Eの径が大きくなり過ぎることがない。したがって、ノズル31に最も近い孔径が大き過ぎて紙幅方向に隣接する他の接続流路236の孔36Eと干渉するなどの問題が生じるのを抑制することができる。なお、上記の第1実施形態と同様な構成においては同じ効果を得ることができる。
【0042】
<第3実施形態>
続いて、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。
【0043】
上記の各実施形態における拡径部37,237を構成する3つの孔36C~36Eは、図4(b)及び図6(b)に示すように、その中心が一致している。これに対し、第3実施形態におけるヘッド301の拡径部337を構成する3つの孔336C~336Eは、図7(a)及び図7(b)に示すように、その中心が一致していない。しかしながら、3つの孔336C~336Eは、鉛直方向に隣接する2つの孔において、径の小さい孔は径の大きい孔と鉛直方向において全体的に重なっている。つまり、孔336Dは、孔336Eと鉛直方向において全体的に重なっており、孔336Cは、孔336Dと鉛直方向において全体的に重なっている。なお、上記の各実施形態と同様なものについては同符号で示し詳細の説明を省略する。
【0044】
本実施形態における拡径部337によると、3つの孔336C~336Eの中心が一致していない場合でも、隣接する2つの孔間において、孔の全周における孔径差の片寄りが小さくなる。つまり、孔336Cの径DCと孔336Dの径DDとの差により生じる段差部338Cにおいて、孔336Cの中心と孔336Dの中心とがずれたズレ方向(本実施形態においては搬送方向)の一方の段差部分338C1と他方の段差部分338C2との大きさに差が生じる。同様に、孔336Dの径DDと孔336Eの径DEとの差により生じる段差部338Dにおいて、孔336Dの中心と孔336Eの中心とがずれたズレ方向の一方の段差部分338D1と他方の段差部分338D2との大きさに差が生じる。しかしながら、一方の段差部分338C1,338D1と、他方の段差部分338C2,338D2との大きさに差が生じていても、隣接する2つの孔のうち径の小さい孔が径の大きい孔と全体的に重なっているため、孔径の差により生じる段差部分338C1,338D1がそれ程大きくならない。この結果、ノズル31からインク滴を吐出する際に、気泡によってノズル31が塞がれるなどしてインク滴の不吐出が生じるのを抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、第1実施形態における拡径部37が、3枚のプレート42~44に形成された3つの孔36A~36Cから構成されていてもよい。また、拡径部37が、3枚のプレート43~45に形成された3つの孔36B~36Dから構成されていてもよい。また、拡径部37が、3枚のプレート44~46に形成された3つの孔36C~36Eから構成されていてもよい。要するに拡径部37は、圧力室30からノズル31に向かう順に孔径が大きい少なくとも3つの孔から構成されておればよい。
【0046】
また、プレート41とプレート47との間には少なくとも3以上のプレートが積層されておればよく、プレート41,42が設けられていなくてもよい。また、プレート41とプレート47との間には、6以上のプレートが積層されていてもよい。
【0047】
拡径部37を構成する5つの孔36A~36Eの径DA~DEは、径DB-径DA<径DC-径DB、径DC-径DB<径DD-径DE、径DD-径DC<径DE-径DDを満たしていなくてもよい。要するに、拡径部を構成する3以上の孔が圧力室30からノズル31に向かう順に大きければよい。また、プレート42に形成された孔36Aの径DAが、プレート46に形成された孔36Eの径DEの1/2よりも大きくてもよい。
【0048】
また、拡径部を構成する3以上の孔は、積層方向に隣接する2つの孔において、径の小さい孔が径の大きい孔と鉛直方向において全体的に重ならず部分的に重なっておればよい。
【0049】
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0050】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板、プラスチック部材等であってもよい。
【0051】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0052】
流路部材に帰還路が形成されなくてもよい。即ち、インクタンクと共通流路との間の液体循環が行われない構成であってもよい。
【0053】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1,201,301 ヘッド(液体吐出ヘッド)
30 圧力室
31 ノズル
36,236 接続流路
36A~36E,236A,236B,336C,336D,336E 孔
37,237,337 拡径部
41 プレート(圧力室プレート)
42~46 プレート(接続プレート)
47 プレート(ノズルプレート)
242,243 プレート(接続プレート)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7