(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064755
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】配分装置、配分方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240507BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240507BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173586
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】広江 隆治
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】効用を配分する設備の選択と、選択した設備の組み合わせ内での効用の配分を高速に解くことができる配分装置を提供する。
【解決手段】配分装置は、複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備それぞれに配分する配分装置であって、所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する記憶部と、前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定する決定部と、決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用に応じて発生する限界費用を指示する配分部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備それぞれに配分する配分装置であって、
所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する記憶部と、
前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定する決定部と、
決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示する配分部と、
を備える配分装置。
【請求項2】
前記組み合わせ情報は、前記組み合わせ毎に産出可能な効用の大きさと最小の費用とを関連付けたグラフ群である、
請求項1に記載の配分装置。
【請求項3】
前記組み合わせ情報は、前記グラフ群に基づいて前記全体効用の大きさの範囲毎に費用が最小となる組み合わせを定めた対応表をさらに含む、
請求項2に記載の配分装置。
【請求項4】
前記組み合わせ情報は、前記グラフ群に基づいて前記設備群が産出可能な効用の広がりを複数の区間に分割したバンドと、候補となる組み合わせとを対応付けた組み合わせ候補表をさらに含む、
請求項2に記載の配分装置。
【請求項5】
少なくとも前記設備の費用に対する係数、および産出可能な効用の範囲を含む設備特性値を更新する更新部をさらに備え、
前記決定部は、前記全体効用と、前記組み合わせ情報と、更新した前記設備特性値とに基づいて、最適な設備の組み合わせを決定し、
前記配分部は、更新した前記設備特性値に基づいて、前記全体効用を配分、または前記限界費用を指示する、
請求項4に記載の配分装置。
【請求項6】
前記決定部は、最適な設備の複数の組み合わせを決定し、
前記配分部は、設備のうち一台が動作しない場合であっても前記全体効用を産出可能となるように、決定した複数の組み合わせのうち何れか一の組み合わせに対し、前記全体効用を配分、または前記限界費用を指示する、
請求項1に記載の配分装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記設備それぞれの最適な効用と限界費用との関係を表す最適限界費用表をさらに記憶し、
前記配分部は、前記最適限界費用表に基づいて前記設備に前記限界費用を指示する、
請求項1に記載の配分装置。
【請求項8】
前記配分部は、前記設備群の前回の出力に基づいて、前記設備に指示する次回の前記限界費用を調節する、
請求項1に記載の配分装置。
【請求項9】
複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備それぞれに配分する配分方法であって、
所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、
前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定するステップと、
決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示するステップと、
を有する配分方法。
【請求項10】
複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備それぞれに配分する配分装置に、
所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、
前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定するステップと、
決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配分装置、配分方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所群の最適負荷配分は、一般に等増分燃料費法により行われている。発電所ごとに燃料費の特性に違いがあるので、全体の発電量は同じであっても、かかる燃料費の総額は発電所への負荷配分の良否に依存する。発電所にも経済学で限界費用逓増の法則として広く知られる性質(発電量すなわち効用を一単位追加するために追加的に要する費用は効用と共に増加する性質)があてはまり、等増分燃料費法はこれを利用して運転中の発電所間の最適な負荷配分を定めている。従って、どの発電所を運転するか決めてしまえば、後は等増分燃料費法のような従来の技術に任せれば充分と言える。このように、使用する発電所が所与の下での負荷配分の最適化は等増分燃料費法より解決されている。
【0003】
一方、需要を満たすためにどの発電所を利用するかは、例えばナップザック問題などの整数計画問題に属し、決まった解法が無い。特許文献1は、発電機の出力バンドを考慮して、一群の発電所の全体の燃料費が最小になるように発電所に負荷配分を決定する方法を開示している。これは、運転する発電機を選択することにより定まる出力バンドの決定(離散変数の問題)と、決定された出力バンド内で一群の発電機の全体の出力配分を決定する2つの問題が組み合わさった問題(連続変数の問題)と捉え、混合整数計画法で両問題を同時に解いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、混合整数計画法は整数計画問題の一つであり、これらはNP困難と呼ばれる計算困難な問題に属することが理論的に知られている。このため、発電所の選択まで含めた最適負荷配分はリアルタイムには計算困難である。
【0006】
本開示の目的は、効用を配分する設備の選択と、選択した設備の組み合わせ内での効用または費用の配分を高速に解くことができる配分装置、配分方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、配分装置は、複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備それぞれに配分する配分装置であって、所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する記憶部と、前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定する決定部と、決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示する配分部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、配分方法は、複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備9それぞれに配分する配分方法であって、所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定するステップと、決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用を配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示するステップを有する。
【0009】
本開示の一態様によれば、プログラムは、複数の設備からなる設備群について、産出する効用を前記設備9それぞれに配分する配分装置に、所与の前記設備の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、前記設備群の全体に所望する全体効用と、前記組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で前記全体効用を産出する最適な設備の組み合わせを決定するステップと、決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用配分、または前記全体効用について決まる限界費用を指示するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、効用を配分する設備の選択と、選択した設備の組み合わせ内での効用または費用の配分を高速に解くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】最適な効用と費用との関係を表すグラフの一例である。
【
図3】組み合わせ毎の費用と負荷との関係を表すグラフ群の一例である。
【
図4】効用と最小の費用との関係を表すグラフの一例である。
【
図5】一の組み合わせについて最適な効用と限界費用との関係を表すグラフの一例である。
【
図6】第2の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】効用の広がる範囲を複数のバンドに分割した例である。
【
図9】第3の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図10】第4の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】第5の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】第5の実施形態の変形例に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】本開示の少なくとも一の実施形態に係る装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
以下、
図1~
図5を参照しながら第1の実施形態について詳しく説明する。
【0013】
(配分システムの全体構成について)
図1は、第1の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る配分システム1は、配分装置10と、複数の設備50(50A,50B,50C,…)からなる設備群5とを備える。
【0014】
配分装置10は、設備群5が全体として所望する効用を産出可能としつつ、産出にかかる費用が最小となるように、稼働する(すなわち、効用を産出する)設備50の組み合わせを決定し、稼働する設備50それぞれに対し産出すべき効用を配分する。配分装置10の機能構成については後述する。
【0015】
設備50は、例えば電力系統に接続され、負荷に発電電力を供給する発電所である。発電所群(設備群5)は、各発電所の電力系統への出力の和が需要と一致するよう調整して、電力系統の周波数を一定にする必要がある。したがって、本実施形態の技術を発電所群に適用する場合、配分装置10は、需要に応じた電力を出力し、かつ費用が最小となるように、動作する発電所の組み合わせ、および各発電所に配分される出力(負荷)を決定する。発電所の出力(負荷)は効用の一態様、発電にかかる燃料費は費用の一態様である。
【0016】
なお、設備50は発電所に限定されない。他の実施形態では、例えば、設備50は地域冷暖房に利用されるヒートポンプであってもよい。地域冷暖房では、ヒートポンプ群(設備群5)は地域に送出する冷水(温水)の温度が一定になるよう、一つ一つのヒートポンプの出力を調節する。送出する冷水の温度はヒートポンプ群全体の出力の合計値に依存し、少数のヒートポンプを高出力で運転するか多数を低出力で運転するか、のような配分は自由である。ヒートポンプ群全体の電力消費が最小とする出力配分の仕方が最適とされる。したがって、本実施形態の技術をヒートポンプ群に適用する場合、配分装置10は、ヒートポンプ群全体の出力が地域(負荷側)の要求する熱量と一致し、かつ費用が最小となるように、動作するヒートポンプの組み合わせ、および各ヒートポンプに配分される出力(負荷)を決定する。ヒートポンプの出力は効用の一態様、冷却や加熱に要する電気代は費用の一態様である。
【0017】
(配分装置の機能構成について)
次に、
図1を参照しながら、配分装置10の機能構成について説明する。配分装置10は、記憶部100と、決定部101と、配分部102とを備える。
【0018】
記憶部100は、所与の設備50の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する。
【0019】
決定部101は、設備群5の全体に所望する効用(以下、「全体効用」とも記載する。)と、組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で全体効用を産出する最適な設備50の組み合わせを決定する。
【0020】
配分部102は、決定した組み合わせに含まれる設備50に対し、所望する全体効用を配分する。
【0021】
(配分装置の処理について)
以下、配分装置10の具体的な処理の内容について説明する。
【0022】
各設備50の負荷をuと記す。負荷には下限値u_(uにアンダーラインを付したもの。以下同様。)と、上限値u ̄(uにオーバーラインを付したもの。以下同様。)がある。一般に、各設備50の費用は次式(1)で近似的に表される。係数{β2,β1,β0}の値は設備50毎に決まる。
【0023】
【0024】
負荷を1単位増やすときに、追加的に発生する費用を限界費用mcと記す。限界費用は、費用を負荷で微分したものであり、次式(2)で表される。
【0025】
【0026】
一般に、費用と負荷uの関係には、経済学で知られる限界費用逓増の法則が成り立つ。限界費用逓増の法則とは、負荷を1単位増やすために要する追加的な費用はだんだん増えるというものである。これは、負荷の側からは、費用1単位あたりの効用はだんだん減るともいえる。費用を式(1)のような2次式で表すと、限界費用逓増の法則は式(3)と等価である。式(3)はβ2>0,2β2u_+β1>0とも表される。
【0027】
【0028】
設備群5としての効用を最大化するには、どの設備50を運転するかが重要である。設備群5としての効用の最小値は最も小さい設備50を選んでその負荷の最小値で運転するときであり、効用の最大値は全部の設備50が同時に全出力運転するときである。本実施形態が目的とする最適化ができれば、設備群5として効用の最小値から最大値までの広がりを、費用が最小となるよう設備50の組み合わせを選択し、かつ、その組み合わせを費用最小となる負荷配分で運転することが可能となる。
【0029】
費用は、負荷の大小に依存しない固定費と、負荷の大小に依存する変動費とを含む。固定費をfと記し、以下の式(4)で表す。
【0030】
【0031】
また、変動費をvと記し、以下の式(5)で表す。
【0032】
【0033】
どの設備50を運転するかを選ぶ際に、選ぶ設備50の組み合わせをQと記す。例えば、設備1と設備2を運転するならQ={1,2}である。固定費はその組み合わせが発揮する負荷と無関係なので、式(6)で表すように組み合わせQからただちに値が決まる。
【0034】
【0035】
一方、変動費は、式(7)で表すように、組み合わせQに加えて、組み合わせQを成す設備50の一つ一つがどのくらいの負荷(効用)を受け持つか、すなわち{ui}i∈Qに依存する。i∈Qとは、Qの要素であるところのiを表している。
【0036】
【0037】
従って、{ui}i∈Qの配分を調節すれば変動費を最小化することができる。変動費が最小となるよう定めた{ui}i∈Qを最適負荷配分{ui
*}i∈Qと記す。費用が式(1)で表されるならば、最適負荷配分{ui
*}i∈Qは限界費用mcから式(8)により直接的に決めることができる。これは、例えば発電所群の最適運転において等増分燃料費法として知られている。
【0038】
【0039】
それぞれの設備50が産出する負荷には下限と上限があるから、式(8)が下限に満たなければ下限に制限し、上限を超えれば上限に制限するものとする。組み合わせQの最適な効用は式(9)で表される。
【0040】
【0041】
組み合わせQについて、最適負荷配分{ui
*}i∈Qは式(8)から限界費用mcにより表すことができる。同様に、最適な変動費v*も式(5)と式(7)から限界費用mcにより表される。
【0042】
【0043】
同様に、最適な費用cQ
*=fQ+VQ
*も限界費用mcで表される。
【0044】
【0045】
図2は、最適な効用と費用との関係を表すグラフの一例である。
以上の結果から、組み合わせQについて、最適な効用u
Q
*と最適な費用c
Q
*は、m
cを媒介変数として関係付けられる。そして、
図2のように最適な効用u
Q
*と最適な費用c
Q
*のグラフG
Q
*を得ることができる。グラフG
Q
*は次式(12)で定義される。
【0046】
【0047】
グラフGQ
*の始点は座標(u_Q,c_Q)、終点は(u ̄Q,c ̄Q)である。グラフGQ
*は連続であるが滑らかであるとは限らない。組み合わせQを構成する設備50の何れかがその設備50の負荷の下限または上限に達したときグラフの勾配の不連続が発生する。
【0048】
本実施形態に係る記憶部100は、例えば、設備50の組み合わせ毎に、グラフG
Q
*を点(u
sum,c
Q
*(u
sum))の数値を要素とする二次元テーブルとして記憶している。組み合わせ毎のグラフからなるグラフ群D1(
図3)は、決定部101が最適な設備50の組み合わせを決定する際に参照する組み合わせ情報の一態様である。
【0049】
設備群5がN個の設備50から構成されるなら、2N-1通りの組み合わせがある。本実施形態は、一つの組み合わせQに対して効用と最適な費用のグラフGQ
*を先に決める点が特徴である。グラフGQ
*を先に決めておけば、2N-1個のグラフ群の中から費用が最も小さいグラフを選ぶだけで最適解が得られる。
【0050】
例えば、N=3であれば組み合わせは7通りであり、それをQ1,Q2,…,Q7と記すことにする。Q1,Q2,…,Q7を以下の式(13)で例示する。組み合わせQ1は設備1、Q6は設備2および設備3、Q7は設備1、設備2、および設備3を運転する。
【0051】
【0052】
図3は、組み合わせ毎の費用と負荷との関係を表すグラフ群の一例である。
組み合わせQ
1,Q
2,…,Q
7のそれぞれについて等増分燃料費法で最適化した費用と負荷のグラフからなるグラフ群D1は、例えば、
図3のように表される。それぞれのグラフは、組み合わせQ
1,Q
2,…,Q
7を所与とした最適な費用と最適な効用を表している。簡単のために、
図3ではグラフの勾配の不連続点は省略している。
【0053】
続いて、
図3の例を用いて最適な組み合わせを探索する方法について説明する。設備群全体に所望する全体効用はu
sumであるとする。全体効用は、例えば発電所であれば発電所群全体の電気出力の総和の指令値である。電気出力の総和の指令値は、図示しない制御器が電力系統の周波数を維持するよう定めたものである。
【0054】
図3において、全体効用u
sumを産出可能な設備50の組み合わせは{Q
5,Q
6,Q
7}の3通りある。全体効用u
sumを産出するための費用は組み合わせにより異なる。これらの組み合わせのなかで、全体効用u
sumを産出するための費用が最小であるQ
6が最適な組み合わせである。
【0055】
決定部101は、式(14)の探索計算を実行して最適な組み合わせQ*(usum)を決定する。式(14)の右辺は、すべての組み合わせについて、まず全体効用usumを実現可能な組み合わせの集合{Q|u_Q≦usum≦u ̄Q}を抽出し、抽出した組み合わせの集合から全体効用usumに対応する費用cQ(usum)が最小となる組み合わせQを選択する。全体効用usumに対応する費用cQ(usum)の値は、グラフGQ
*をデータとするルックアップテーブルの演算処理により求める。
【0056】
【0057】
図4は、効用と最小の費用との関係を表すグラフの一例である。
式(14)を全体効用u
sumが広がる全範囲(
図4の例では、効用が広がる範囲はu_
Q1からu ̄
Q7まで)にわたって評価すると、全体効用u
sumと最適な組み合わせQ
*(u
sum)の対応表D2がわかる。あとは、最適な組み合わせQ
*(u
sum)の要素となる設備50を使用すればよい。
図4の例では、最適な組み合わせはQ
6={2,3}だから、決定部101は、設備2と設備3を使用すると決定する。
【0058】
最適な組み合わせQ*(usum)の決定に要する演算量は、設備群5を成す設備50の数が増えるにつれ増大する。このため、所望の全体効用usumが時間的に変化するなら、それに合わせて、オンラインで例えば1秒毎に最適な組み合わせQ*(usum)を求めることは現実的でないかもしれない。その場合、オフライン計算により全体効用usumと最適な組み合わせQ*(usum)の関係を対応表D2として予め用意したものを記憶部100に記憶してもよい。この場合、オンラインで1秒毎に行う制御演算では、この対応表D2に基づいて最適化組み合わせを得ても良い。この対応表D2は、決定部101が最適な設備50の組み合わせを決定する際に参照する組み合わせ情報の一態様である。
【0059】
配分部102は所望の全体効用u
sumを最適な組み合わせQ
*(u
sum)に従って一つ一つの設備50に最適に配分する。
図4の例では、最適な組み合わせはQ
6={2,3}設備2と設備3に所望の全体効用u
sumを配分する。設備1には配分しないので、設備1は運転しない。配分部102は、設備2と設備3に以下の手順で全体効用u
sumを配分する。
【0060】
図5は、一の組み合わせについて最適な効用と限界費用との関係を表すグラフの一例である。
まず、式(8)と式(9)から、組み合わせQ
6について、最適な効用u
Q6
*と限界費用m
cのグラフD3を
図5に示す。グラフD3は
図5のように、最適な効用u
Q6
*と限界費用m
cが一対一に対応するので、所望する全体効用u
sumに対応する限界費用m
c,sumの値が定まる。
【0061】
または、配分部102は、
図5のグラフD3を使わないで、次式(15)を解くm
c,sumを探索しても良い。
【0062】
【0063】
配分部102は、上述の何れかの方法でmc,sumの値を定め、式(8)に代入して、設備2と設備3に配分する負荷を決定する。具体的には、次式(16)となる。
【0064】
【0065】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る配分装置10は、所与の設備50の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する記憶部100と、設備群5の全体に所望する全体効用と、組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で全体効用を産出する最適な設備50の組み合わせを決定する決定部101と、決定した組み合わせに含まれる設備50に対し、所望する全体効用を配分する配分部102と、を備える。
【0066】
このようにすることで、配分装置10は、効用(負荷)を配分する設備50の選択と、選択した設備50の組み合わせ内での効用の配分を高速に解くことができる。
【0067】
また、組み合わせ情報は、組み合わせ毎に産出可能な効用の大きさと最小の費用とを関連付けたグラフ群D1である。
【0068】
このようにすることで、配分装置10は、予め用意した組み合わせ毎のグラフ群D1から費用が最小となる組み合わせを容易且つ高速に選択することができる。
【0069】
また、組み合わせ情報は、全体効用の大きさの範囲毎に費用が最小となる組み合わせを定めた対応表D2である。
【0070】
このようにすることで、配分装置10は、予め用意した対応表D2から費用が最小となる組み合わせをより容易且つ高速に選択することができる。これにより、配分装置10は、リアルタイムに更新される全体効用に対し、最適な組み合わせを求めることも可能となる。
【0071】
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について
図6~
図8を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0072】
図6は、第2の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る記憶部100は、組み合わせ情報として、組み合わせ候補表D4を更に有している。
【0073】
N箇所の設備からなる設備群5では、式(14)の右辺を2N-1通りの組み合わせから探索する。Nが20程度になると演算が膨大になり、計算困難となる。第2の実施形態では、演算量を節約する技術について述べる。
【0074】
所望の全体効用usumをu_Q1からu ̄Q7まで変えて式(14)を評価すると、2N-1通りの組み合わせの中から所望の全体効用usumに応じて最適な組み合わせQ*(usum)が分る。ここでは、Nは3として説明する。第1の実施形態では、式(14)の探索対象を全て(2N-1通り)の組み合わせとしていた。これに対し、本実施形態では、式(14)の探索対象を以下の手順で少数化する。
【0075】
図7は、効用の広がる範囲を複数のバンドに分割した例である。
図7の例では、各組み合わせのグラフ群D1において効用が広がる範囲はu_
Q1からu ̄
Q7までである。この範囲を複数のバンドに分割する。
図7の例では、バンドB1,B2,B3に分割している。
【0076】
図8は、組み合わせ候補表の一例である。
図8に示す表は、各バンドにおいて最適な組み合わせの候補を表すものであり、組み合わせ候補表D4と呼ぶことにする。組み合わせ候補表D4について説明する。バンドB
1について、バンドB
1の範囲内の大きさの効用を産出できないQ
7は最適な組み合わせの候補として相応しくない。同様に、バンドB
1について、組み合わせQ
4,Q
5,…,Q
6も相応しくない。従って、バンドB
1についてQ
4~Q
7は最適な組み合わせの候補から外すことができる。このように、バンドに区分すると、バンドについて最適な組み合わせの候補に相応しくないものが明らかになり、残ったものが最適な組み合わせの候補となる。バンドの一つひとつについて、最適な組み合わせの候補を
図8のように組み合わせ候補表D4として予め決めておくと、所望の全体効用u
sumが与えられたとき、式(14)の組み合わせ探索をする対象を、所望の全体効用u
sumが属するバンドに基づいて絞り込むことができる。つまり、計算の効率化に資する。
【0077】
バンドBについての最適な組み合わせ候補の集合をCBと記すことにする。例えば、バンドB1についての候補の集合はCB1であり、Q1,Q2,Q3が要素である。所望の全体効用usumがバンドBに属すとすると、所望の全体効用usumを費用最小で実現する組み合わせQ*(usum,CB)は次式(17)で表される。
【0078】
【0079】
組み合わせ候補表D4は、一度計算するだけで充分である。例えば、組み合わせ候補表D4は事前に一つ定めておき、リアルタイムに設備群5に効用を配分するときには、所望の効用usumが属するバンドに基づき組み合わせ候補を定めれば良い。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る配分装置10において、組み合わせ情報は、グラフ群D1に基づいて設備群5が産出可能な効用の広がりを複数の区間に分割したバンドと、候補となる組み合わせとを対応付けた組み合わせ候補表D4をさらに含む。
【0081】
このようにすることで、配分装置10は、所望する全体効用usumに応じて探索する組み合わせを絞り込むことができるので、最適な組み合わせを探索する処理時間を短縮することができる。
【0082】
<第3の実施形態>
次に、本開示の第3の実施形態について
図9を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0083】
図9は、第3の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
図9に示すように、本実施形態に係る配分装置10は、更新部103をさらに備える。
更新部103は、少なくとも設備50の費用に対する係数、および産出可能な効用の範囲を含む設備特性値を更新する。また、決定部101および配分部102は、更新した設備特性に基づいて、設備群5の運用中に最適な組み合わせを決定する処理、および全体効用u
sumを配分する処理を行うことを特徴とする。
【0084】
各設備50の費用の近似式は一定ではなく、例えば外気温や海水温のような外的要因や経年劣化などの内的要因によって変化する。具体的には、費用を表す式(1)の係数{β2,β1,β0}や調整可能な効用の範囲u_,u ̄の値が変動することは避けられない。
【0085】
このような変動への対応として、例えば、外気温に応じて式(1)の係数を変えることが考えられる。式(2)の係数が変更すれば、式(14)の組み合わせ最適化を再探索しなければならない。しかし、式(3)の演算量は全組み合わせ数に依存するので、例えば設備群5に含まれる設備50が20台を超えると演算困難になる。
【0086】
第2の実施形態では、最適な組み合わせの候補を組み合わせ候補表D4として予め備えることにより、式(14)の演算を行う際に探索範囲を組み合わせ候補表D4の範囲に削減して計算負荷を軽減する技術を説明した。組み合わせ候補として式(1)の係数が変化したときの最適組み合わせ候補も加えることにより、第2の実施形態の技術は設備の費用の変化にも対応することができる。
【0087】
更新部103は、例えば外気温や海水温、積算運転時間に基づき、設備50の費用を表す式(1)の係数βや、設備の負荷の下限値u_および上限値u ̄を更新する。これらを設備特性値と表す。
【0088】
決定部101における最適組み合わせ決定処理は、更新した設備特性値を用いる他は、第2の実施形態と同一である。配分部102における最適配分処理は、更新した設備特性値を用いる他は、第2の実施形態と同一である。なお、
図9には、第2の実施形態の構成に更新部103を追加する例が示されているが、これに限られることはない。他の実施形態では、第1の実施形態の構成に更新部103を追加してもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る配分装置10は、設備50の費用または産出可能な効用に関連する設備特性を更新する更新部103をさらに備える。また、決定部101は、全体効用usumと、組み合わせ情報と、更新した設備特性値とに基づいて、最適な設備の組み合わせを決定し、配分部102は、更新した設備特性に基づいて、全体効用usumを配分する。
【0090】
このようにすることで、配分装置10は、外気温などの外的要因や、経年劣化などの内的要因等の変化に応じてグラフ群D1(各設備50のグラフ)を調整することができる。これにより、配分装置10は、最適な設備の組み合わせの決定、および効用の配分をより精確に行うことができる。
【0091】
<第4の実施形態>
次に、本開示の第4の実施形態について
図10を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0092】
図10は、第4の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る配分装置10において、決定部101は、最適な設備50の複数の組み合わせからなる配列を出力する。また、配分部102は、設備50のうち一台が動作しない場合であっても全体効用u
sumを産出可能となるように、決定した複数の組み合わせのうち何れか一の組み合わせに対して全体効用u
sumを配分するN+1冗長制約付き最適配分手段として機能する。
【0093】
ここでは、第4の実施形態の技術を第3の実施形態の構成に適用する事例を説明する。他の実施形態では、第4の実施形態の技術を第1または第2の実施形態の構成に適用してもよい。第3の実施形態では、決定部101は、組み合わせ候補CBの中から最適な組み合わせQ*を選出した。これに対し、第4の実施形態では、組み合わせ候補CBの要素を順序付けした配列を出力する。例えば、組み合わせ候補CBに要素としてp個の組み合わせがあるならば、決定部101は、所望の全体効用usumに要する費用が小さい順に組み合わせをソートした{Qk1,Qk2,…,Qkp}を出力する。
【0094】
配分部102は、{Qk1,Qk2,…,Qkp}の要素である組み合わせについて、その組み合わせの中で負荷が最大の設備j+を決定する。例えば、組み合わせQk1については、負荷最大の設備は次式(18)で表される。
【0095】
【0096】
そして,組み合わせQk1がN+1冗長制約を満たすか判定する。具体的には、次式(19)で判定する。
【0097】
【0098】
式(19)の不等式の左辺は、負荷最大の設備jk1
+を欠いた状態で組み合わせQk1が産出できる効用の最大値を表している。左辺が所望される効用usum以上ならば、組み合わせQk1はN+1冗長制約を満たす。
【0099】
配分部102は、組み合わせQk1がN+1冗長制約を満たす場合は、{uj
*}j∈Qk1に基づき効用の配分uj(j=1,2,…,N)を定める。
【0100】
一方、配分部102は、組み合わせQk1がN+1冗長制約を満たさないならば、上述の処理をQk2に対して実施する。これを繰り返す。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る配分装置10において、決定部101は、最適な設備50の複数の組み合わせを決定し、配分部102は、設備50のうち一台が動作しない場合であっても全体効用usumを産出可能となるように、決定した複数の組み合わせのうち何れか一の組み合わせに対し、全体効用usumを配分する。
【0102】
このようにすることで、配分装置10は、何れか一の設備50が故障などにより動作しなくなった場合であっても、他の設備50で継続して全体効用usumを産出可能とする。
【0103】
<第5の実施形態>
次に、本開示の第5の実施形態について
図11を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0104】
図11は、第5の実施形態に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
第1~第4の実施形態では、配分部102は、所望の全体効用u
sumを、決定部101が決定した組み合わせに含まれるN個の設備50それぞれに対して負荷u
j(j=1,2,…,N)を配分した。また、設備50の一つ一つは負荷u
j(j=1,2,…,N)に従って運転する。
【0105】
これに対し、本実施形態に係る配分部102は、決定部101が決定した組み合わせに含まれる各設備50に対し、全体効用usumに応じた限界費用mcを指示する。また、設備50の一つ一つは、ONまたOFFの二値信号である運転指令信号bj(j=1,2,…,N)と、限界費用mcとに従って運転する。運転指令信号bjは、決定部101が決定した組み合わせに含まれる設備50に対する指令値をON、他の設備50に対する指令値をOFFとしたものである。
【0106】
決定部101は、上述の各実施形態において説明した、所望の全体効用usumから最適な組み合わせQ*usumを得る処理の何れかを実行する。例えば、第1の実施形態で説明したように、対応表D2から所望の全体効用usumに対する最適な組み合わせQ*(usum)を決定してもよい。そして、式(20)に従い運転指令信号bjを決定する。
【0107】
【0108】
また、本実施形態では、記憶部100は最適限界費用表D5をさらに記憶する。最適限界費用表D5は、式(8)および式(9)から決まる最適な負荷u
*と限界費用m
cとのグラフD3(
図5)を表にしたものである。配分部102は、この最適限界費用表D5に基づいて、所望の全体効用u
sumの値に対応する限界効用m
cの値を得ることができる。
【0109】
また、設備群5側の動作について説明する。運転指令信号がONの設備iは、限界費用とその設備の効用のグラフD3(
図5)に従ってm
cに対応する負荷uiを決定する。設備iの制御装置501は、負荷がu
iとなるよう設備iを運転する。運転指令信号がOFFの設備は運転しない。運転しない設備の負荷は0である。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る配分装置10において、配分部102は、決定部101が決定した組み合わせに含まれる設備iに対し、所望する全体効用usumに応じて発生する限界費用mcを指示する。
【0111】
このようにすることで、配分装置10は、配分部102における演算処理を軽減することができる。これにより、配分装置10、安価な演算装置で最適制御を実現することができる。
【0112】
<第5の実施形態の変形例>
図12は、第5の実施形態の変形例に係る配分装置の機能構成を示すブロック図である。
第5の実施形態は、
図12に示す変形例のように構成を変更してもよい。本変形例の特徴は、最適限界費用表D5に代えて、配分部102が限界費用調整手段として機能するところである。
【0113】
配分部102は、設備群5から負荷uj(j=1,2,…,N)を入力し、例えば式(21)の演算により、設備群5の負荷の総和が所望の全体効用usumに一致するよう限界費用mcを調節する。式(21)において、Tは調整の時定数であり、時定数を小さく設定すると、設備群5の負荷の総和は全体効用usumに早く一致する。
【0114】
【0115】
このようにすることで、最適限界費用表D5が不要となるので、配分装置10をさらに簡単に製造することができる。
【0116】
<ハードウェア構成>
図13は、本開示の少なくとも一の実施形態に係る配分装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、
図13を参照しながら、配分装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
【0117】
図13に示すように、コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0118】
上述の各実施形態に記載の配分装置10は、それぞれコンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、各種処理に用いる記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0119】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0120】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903及び外部記憶装置910は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0121】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0122】
<付記>
上述の実施形態に記載の配分装置、配分方法、およびプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0123】
(1)本開示の第1の態様によれば、配分装置10は、複数の設備50からなる設備群5について、産出する効用を設備50それぞれに配分する配分装置10であって、所与の設備50の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶する記憶部100と、設備群5の全体に所望する全体効用usumと、組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で全体効用usumを産出する最適な設備50の組み合わせを決定する決定部101と、決定した組み合わせに含まれる設備に対し、前記全体効用usumを配分、または前記全体効用について決まる限界費用mcを指示する配分部102と、を備える。
【0124】
このようにすることで、配分装置10は、配分する設備50の選択と、選択した設備50の組み合わせ内での効用配分を高速に解くことができる。
【0125】
(2)本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る配分装置10において、組み合わせ情報は、組み合わせ毎に産出可能な効用の大きさと最小の費用とを関連付けたグラフ群D1である。
【0126】
このようにすることで、配分装置10は、予め用意した組み合わせ毎のグラフ群D1から費用が最小となる組み合わせを容易且つ高速に選択することができる。
【0127】
(3)本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る配分装置10において、組み合わせ情報は、グラフ群D1に基づいて全体効用usumの大きさの範囲毎に費用が最小となる組み合わせを定めた対応表D2をさらに含む。
【0128】
このようにすることで、配分装置10は、予め用意した対応表D2から費用が最小となる組み合わせをより容易且つ高速に選択することができる。これにより、配分装置10は、リアルタイムに更新される全体効用に対し、最適な組み合わせを求めることも可能となる。
【0129】
(4)本開示の第4の態様によれば、第2の態様に係る配分装置10において、組み合わせ情報は、グラフ群D1に基づいて設備群5が産出可能な効用の広がりを複数の区間に分割したバンドと、候補となる組み合わせとを対応付けた組み合わせ候補表D4をさらに含む。
【0130】
このようにすることで、配分装置10は、所望する全体効用usumに応じて探索する組み合わせを絞り込むことができるので、最適な組み合わせを探索する処理時間を短縮することができる。
【0131】
(5)本開示の第5の態様によれば、第1から第3の何れか一の態様に係る配分装置10は、少なくとも設備50の費用に対する係数、および産出可能な効用の範囲を含む設備特性値を更新する更新部103をさらに備える。決定部101は、全体効用usumと、組み合わせ情報と、更新した設備特性値とに基づいて、最適な設備50の組み合わせを決定し、配分部102は、更新した設備特性値に基づいて、全体効用usumを配分、または限界費用mcを指示する。
【0132】
このようにすることで、配分装置10は、外気温などの外的要因や、経年劣化などの内的要因等の変化に応じてグラフ群D1(各設備50のグラフ)を調整することができる。これにより、配分装置10は、最適な設備の組み合わせの決定、および効用の配分をより精確に行うことができる。
【0133】
(6)本開示の第6の態様によれば、第1から第5の何れか一の態様に係る配分装置10において、決定部101は、最適な設備50の複数の組み合わせを決定し、配分部102は、設備50のうち一台が動作しない場合であっても全体効用usumを産出可能となるように、決定した複数の組み合わせのうち何れか一の組み合わせに対し、全体効用usumを配分、または限界費用mcを指示する。
【0134】
このようにすることで、配分装置10は、何れか一の設備50が故障などにより動作しなくなった場合であっても、他の設備50で継続して全体効用usumを産出可能とする。
【0135】
(7)本開示の第7の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る配分装置10において、記憶部100は、設備50それぞれの最適な効用と限界費用との関係を表す最適限界費用表D5をさらに記憶し、配分部102は、最適限界費用表D5に基づいて設備50に限界費用mcを配分する。
【0136】
このようにすることで、配分装置10は、配分部102における演算処理を軽減することができる。これにより、配分装置10、安価な演算装置で最適制御を実現することができる。
【0137】
(8)本開示の第8の態様によれば、第1から第6の何れか一の態様に係る配分装置10において、配分部102は、設備群5の前回の出力に基づいて、設備50に指示する次回の限界費用mcを調節する。
【0138】
このようにすることで、最適限界費用表D5が不要となるので、配分装置10をさらに簡単に製造することができる。
【0139】
(9)本開示の第9の態様によれば、配分方法は、複数の設備50からなる設備群5について、産出する効用を設備50それぞれに配分する配分方法であって、所与の設備50の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、設備群5の全体に所望する全体効用usumと、組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で全体効用usumを産出する最適な設備50の組み合わせを決定するステップと、決定した組み合わせに含まれる設備50に対し、全体効用usumを配分、または、全体効用usumについて決まる限界費用mcを指示するステップと、を有する。
【0140】
(10)本開示の第10の態様によれば、プログラムは、複数の設備50からなる設備群5について、産出する効用を設備50それぞれに配分する配分装置10に、所与の設備50の組み合わせについて、産出可能な効用の大きさと最小の費用との関係を表す組み合わせ情報を記憶するステップと、設備群5の全体に所望する全体効用usumと、組み合わせ情報とに基づいて、最小の費用で全体効用usumを産出する最適な設備50の組み合わせを決定するステップと、決定した組み合わせに含まれる設備50に対し、全体効用usumを配分、または、全体効用usumについて決まる限界費用mcを指示するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0141】
1 配分システム
5 設備群
10 配分装置
100 記憶部
101 決定部
102 配分部
103 更新部
501 制御装置