(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064757
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】回転弁
(51)【国際特許分類】
F16K 5/04 20060101AFI20240507BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20240507BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20240507BHJP
【FI】
F16K5/04 A
F16J15/16 B
F16J15/3232 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173588
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
3H054
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3H054AA02
3H054BB02
3H054BB12
3H054BB17
3H054BB22
3H054CA03
3H054CA24
3H054CB09
3H054CB22
3H054CB23
3H054CB35
3H054CC05
3H054EE01
3J006AB10
3J006AE16
3J006CA03
3J043CA02
3J043HA01
(57)【要約】
【課題】シール部材のシール性を確保できる回転弁を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、バルブ12と、バルブ12を収容するハウジング11と、を有し、バルブ12が回転して、ハウジング11の流路口ポート21とバルブ12の内部流路31とにより形成される流路を切り替える回転弁1において、ハウジング11に設けられ、バルブ12に当接してハウジング11とバルブ12との間をシールする環状のシール部材41を有し、シール部材41における内径側かつバルブ12側の所定の部位が、バルブ12に当接する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、
前記弁体を収容するハウジングと、を有し、
前記弁体が回転して、前記ハウジングのポートと前記弁体の内部流路とにより形成される流路を切り替える回転弁において、
前記ハウジングに設けられ、前記弁体に当接して前記ハウジングと前記弁体との間をシールする環状のシール部材を有し、
前記シール部材における内径側かつ前記弁体側の所定の部位が、前記弁体に当接すること、
を特徴とする回転弁。
【請求項2】
請求項1の回転弁において、
前記シール部材は、本体部と、前記本体部から内径側かつ前記弁体側へ向かって突出して形成される内径側リップと、を備え、
前記所定の部位は、前記内径側リップであること、
を特徴とする回転弁。
【請求項3】
請求項1または2の回転弁において、
前記ハウジングは、前記シール部材を装着するための溝であって、前記弁体側に開口する凹状の装着溝を備え、
前記装着溝における前記シール部材の内径側の壁である内周壁の高さは、前記弁体の外周面の回転軌道に干渉しない高さであり、
前記装着溝における前記シール部材の外径側の壁である外周壁の前記弁体側の端部は、前記シール部材の外径側と前記外周壁との当接位置よりも前記弁体側の位置に形成されていること、
を特徴とする回転弁。
【請求項4】
請求項1または2の回転弁において、
前記シール部材の断面は、略X形状に形成されていること、
を特徴とする回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハウジング内に収容される弁体が回転して、ハウジングと弁体により形成される流路を切り替える回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートリテーナのボール面側に形成される装着溝に設けた環状のボールシートにより、ボールとシートリテーナとの間をシールするボールバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ボールシートにボールが押し付ける力や、ボール回転時におけるボールに引きずられる力への対策が開示されておらず、ボールシートのシール性が確保できないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、シール部材のシール性を確保できる回転弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、弁体と、前記弁体を収容するハウジングと、を有し、前記弁体が回転して、前記ハウジングのポートと前記弁体の内部流路とにより形成される流路を切り替える回転弁において、前記ハウジングに設けられ、前記弁体に当接して前記ハウジングと前記弁体との間をシールする環状のシール部材を有し、前記シール部材における内径側かつ前記弁体側の所定の部位が、前記弁体に当接すること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、弁体に押し付けられる力(すなわち、シール部材が弁体に押し付けられる力)に対し、シール部材における所定の部位が変形することができる。そのため、シール部材に生じる内部応力を低減できるので、シール部材のへたりが少なくなり、シール部材のシール性が維持される。また、弁体の回転時において、弁体とシール部材との間に生じる摺動抵抗を低減できるので、弁体の回転による消費電力を小さくできるとともに、シール部材の摩耗を防止できる。したがって、シール部材のシール性を確保できる。
【0008】
また、弁体に引きずられる力(すなわち、弁体の回転時においてシール部材が弁体により引きずられる力)に対し、シール部材における所定の部位が変形することができる。そのため、シール部材が弁体に引っ掛かることを防止できるので、シール部材の切れや摩耗が生じることを防止できる。したがって、シール部材のシール性を確保できる。
【0009】
上記の態様においては、前記シール部材は、本体部と、前記本体部から内径側かつ前記弁体側へ向かって突出して形成される内径側リップと、を備え、前記所定の部位は、前記内径側リップであること、が好ましい。
【0010】
この態様によれば、シール部材における内径側リップが弁体に当接する。そのため、弁体に押し付けられる力や弁体に引きずられる力に対し、内径側リップが変形することができる。したがって、より効果的に、シール部材に生じる内部応力を低減でき、弁体の回転時において弁体とシール部材との間に生じる摺動抵抗を低減でき、シール部材が弁体に引っ掛かることを防止できる。ゆえに、より効果的に、シール部材のシール性を確保できる。
【0011】
上記の態様においては、前記ハウジングは、前記シール部材を装着するための溝であって、前記弁体側に開口する凹状の装着溝を備え、前記装着溝における前記シール部材の内径側の壁である内周壁の高さは、前記弁体の外周面の回転軌道に干渉しない高さであり、前記装着溝における前記シール部材の外径側の壁である外周壁の前記弁体側の端部は、前記シール部材の外径側と前記外周壁との当接位置よりも前記弁体側の位置に形成されていること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、装着溝の内周壁の高さは弁体の外周面の回転軌道に干渉しない高さであるので、装着溝におけるシール部材の内径側の壁と弁体の外周面との間に隙間が形成される。そのため、弁体に押し付けられる力や弁体に引きずられる力に対し、シール部材における所定の部位が、前記の隙間の内部に変形して逃げることができる。したがって、より効果的に、シール部材に生じる内部応力を低減でき、弁体の回転時において弁体とシール部材との間に生じる摺動抵抗を低減でき、シール部材が弁体に引っ掛かることを防止できる。ゆえに、より効果的に、シール部材のシール性を確保できる。
【0013】
また、シール部材における所定の部位が、前記の隙間を介して、流体圧により弁体に押圧される。そのため、シール部材のシール性が維持される。
【0014】
さらに、装着溝の外周壁の弁体側の端部はシール部材の外径側と外周壁との当接位置よりも弁体側の位置に形成されているので、弁体に引きずられる力に対し、装着溝の外周壁でシール部材の外径側の部位が突っ張る。これにより、シール部材における所定の部位が反転することを防止できる。
【0015】
上記の態様においては、前記シール部材の断面は、略X形状に形成されていること、が好ましい。
【0016】
この態様によれば、弁体に押し付けられる力や弁体に引きずられる力に対し、シール部材が全体的に変形して逃げることができる。そのため、シール部材に生じる内部抵抗が低減し、かつ、シール部材への弁体の引っ掛かりを防止できる。また、シール部材の表裏の区別が無くなるので、シール部材の組み付け性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の回転弁によれば、シール部材のシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本実施形態の回転弁の外観斜視図(
図1とは異なる角度から見た図)であって、アクチュエータを取り除いて示す図である。
【
図6】第1実施例において、シール部材とシール部材の周辺における断面図であって、(a)と(c)はバルブの回転時を示し、(b)はバルブが停止して流路に流体(例えば、水)が流れる時を示している。
【
図9】第1実施例の変形例のシール部材の断面図である。
【
図10】第2実施例において、シール部材とシール部材の周辺における断面図であって、(a)と(c)はバルブの回転時を示し、(b)はバルブが停止して流路に流体(例えば、水)が流れる時を示している。
【
図12】比較例において、シール部材とシール部材の周辺における断面図であって、(a)と(c)はバルブの回転時を示し、(b)はバルブが停止して流路に流体(例えば、水)が流れる時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施形態の一例である回転弁1について説明する。
【0020】
<回転弁の全体の概要説明>
まず、本実施形態の回転弁1の全体の概要について説明する。
【0021】
図1と
図2に示すように、回転弁1は、ハウジング11と、バルブ12と、アクチュエータ13を有する。なお、バルブ12は、本開示の「弁体」の一例である。また、ハウジング11とバルブ12は、ともに、樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド))により形成されている。
【0022】
ハウジング11は、
図2に示すように、円筒状に形成されており、バルブ12を収容している。このハウジング11は、流路口ポート21を備えている。
【0023】
流路口ポート21は、円筒状に形成されており、ハウジング11の内周面11aと外周面11bを貫通するように形成されている。流路口ポート21は、ハウジング11とバルブ12により形成される流路の一部を形成するものであって、バルブ12の内部流路31と連通可能である。なお、流路口ポート21は、本開示の「ポート」の一例である。
【0024】
ここでは、4つの流路口ポート21が、ハウジング11の周方向に等間隔を空けて(すなわち、90度毎に)配置されている。なお、4つの流路口ポート21のうち、2つが流入口ポートとなり、残りの2つが流出口ポートとなる。ここで、流入口ポートは、バルブ12の内部流路31へ流体を流入する流路口を形成するものである。また、流出口ポートは、バルブ12の内部流路31から流体を流出する流路口を形成するものである。
【0025】
バルブ12は、
図3と
図4に示すように円柱状に形成されており、
図2に示すようにハウジング11の内部に収容されている。
【0026】
ここでは、バルブ12は、内部流路31を2つ備えている。この内部流路31は、バルブ12の内部に形成されており、ハウジング11とバルブ12により形成される流路の一部を形成するものである。
【0027】
アクチュエータ13は、不図示のモータを備えており、バルブ12をその中心軸Lを中心に回転させる駆動部である。
【0028】
このような構成の回転弁1は、バルブ12が当該バルブ12の中心軸Lを中心にして回転して、ハウジング11の4つの流路口ポート21とバルブ12の2つの内部流路31との組み合わせを切り替えることにより、ハウジング11とバルブ12により形成される流路のパターンを切り替えることができる。
【0029】
<シール部材によるシール性の確保に関して>
本実施形態では、回転弁1は、
図6に示すように、ハウジング11の装着溝22に設けられ、バルブ12の外周面12aに当接してハウジング11とバルブ12との間をシールする円環状のシール部材41を有する。なお、このシール部材41は、ゴムなどの弾性体により形成されている。また、装着溝22は、シール部材41を装着するための溝であって、バルブ12側に開口するようにして凹状に形成されている。
【0030】
ここで、比較例として、
図12に示すように、シール部材41の先端にバルブ12が当接する場合を想定する。この場合、バルブ12の回転時において、
図12(a)の下の図に示すように、シール部材41は、バルブ12の内部流路31内に一旦解放された後に、再びバルブ12の外周面12aに当接するときに、内部流路31の出入口の端部31aに引っ掛かるおそれがある。そうすると、シール部材41の切れや摩耗が生じるおそれがある。
【0031】
また、シール部材41は、バルブ12に押し付けられているため、バルブ12の回転時に生じる摺動抵抗が大きい。そのため、シール部材41の摩耗が生じるおそれがある。
【0032】
さらに、シール部材41は、バルブ12に押し付けられることによって変形する(へたりが生じる)ことにより、シール部材41のシール性が低下するおそれがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、シール部材41のシール性を確保する。
【0034】
(第1実施例)
まず、第1実施例について説明する。
【0035】
本実施例では、
図5に示すように、シール部材41の断面は、略X形状に形成され、本体部51と、内径側リップ61と、外径側リップ62と、第1ハウジング側リップ63と、第2ハウジング側リップ64を備えている。
【0036】
内径側リップ61は、
図7や
図8に示すように、シール部材41における内径側かつバルブ12側に形成され、本体部51からシール部材41の内径側かつバルブ12側に向って突出して形成されている。そして、この内径側リップ61が、バルブ12の外周面12aに当接する。なお、内径側リップ61は、本開示の「所定の部位」の一例である。
【0037】
外径側リップ62は、
図7や
図8に示すように、シール部材41における外径側かつバルブ12側に形成され、本体部51から外径側かつバルブ12側に向って突出するように形成されている。なお、外径側リップ62は、シール部材41の軸方向について、内径側リップ61と略同位置に形成されている。
【0038】
第1ハウジング側リップ63は本体部51から内径側かつハウジング11側に向って突出するように形成され、第2ハウジング側リップ64は本体部51から外径側かつハウジング11側に向って突出するように形成されている。
【0039】
また、
図7に示すように、装着溝22の溝高さHAは、シール部材41の内径側リップ高さhA(
図5参照)よりも小さく、装着溝22の内周壁22aがバルブ12の外周面12aの回転軌道に干渉しない高さとなっている。ここで、溝高さHAは、装着溝22の内周壁22aの高さ(幅)である。また、内周壁22aは、装着溝22におけるシール部材41の内径側の壁である。さらに、内径側リップ高さhAは、シール部材41の内径側の高さ(幅)であって、内径側リップ61と第1ハウジング側リップ63の幅である。
【0040】
そして、このように、装着溝22の内周壁22aがバルブ12の外周面12aの回転軌道に干渉しない高さとなっており、装着溝22の内周壁22aとバルブ12の外周面12aとの間に隙間δ1が設けられている。
【0041】
これにより、
図7に示すように、バルブ12に押し付けられる力F1に対して、内径側リップ61が変形して隙間δ1の内部に逃げることができる。そのため、シール部材41に生じる内部応力を低減できるので、シール部材41のへたりが少なくなることから、シール部材41のシール性が維持される。また、バルブ12の回転時にてバルブ12の外周面12aとシール部材41との間で生じる摺動抵抗が小さくなるので、バルブ12の回転時の駆動部13のモータの駆動による消費電力を少なくでき、また、シール部材41の摩耗を防止できる。なお、バルブ12に押し付けられる力F1は、シール部材41がバルブ12により押し付られる力である。
【0042】
また、
図8に示すように、バルブ12に引きずられる力F2に対しても、内径側リップ61が変形して隙間δ1の内部に逃げることができる。そのため、バルブ12の回転時において、シール部材41がバルブ12の内部流路31内に一旦解放された後に再びバルブ12の外周面12aに当接するときに、シール部材41が内部流路31の出入口の端部31aに引っ掛かることを防止できる。したがって、シール部材41の切れや摩耗が生じることを防止できる。なお、バルブ12に引きずられる力F2は、バルブ12の回転時においてシール部材41がバルブ12により引きずられる力である。
【0043】
さらに、ハウジング11の流路口ポート21とバルブ12の内部流路31とにより形成される流路に流体が流れているときには、シール部材41の内径側リップ61が、隙間δ1を介して、流体圧によりバルブ12に押圧される。そのため、シール部材41のシール性が維持される。
【0044】
また、
図7に示すように、装着溝22の外周壁22bのバルブ12側の端部22cは、シール部材41の外径側と装着溝22の外周壁22bとの当接位置41a(
図7に示す例では、詳しくは、2つの当接位置のうちのバルブ12側にある当接位置)よりもバルブ12側の位置に形成されている。そこで、これを実現する具体的な一例として、装着溝22の溝高さHBは、シール部材41の外径側リップ高さhB(
図5参照)よりも高い。
【0045】
これにより、バルブ12に引きずられる力F2に対し、装着溝22の外周壁22bに外径側リップ62が当接して突っ張ることで、内径側リップ61の反転を防止できる。そのため、シール部材41の内径側リップ61からの流体の洩れを防止でき、シール部材41のシール性を維持できる。ここで、溝高さHBは、装着溝22の外周壁22bの高さである。また、外周壁22bは、装着溝22におけるシール部材41の外径側の壁である。さらに、外径側リップ高さhBは、シール部材41の外径側の高さ(幅)であって、外径側リップ62と第2ハウジング側リップ64の高さ(幅)である。
【0046】
また、ハウジング11の溝内径D(
図7参照)は、シール部材41のシール内径d(
図5参照)よりも大きくしている。これにより、シール部材41の脱落を防止でき、また、シール部材41の位置ずれも防止できる。なお、溝内径Dは、環状に形成される装着溝22の内径である。また、シール内径dは、シール部材41の内径である。
【0047】
また、シール部材41はバルブ12に押し付けられているが、バルブ12の回転時においてバルブ12の内部流路31内に一旦解放された後に再びバルブ12の外周面12aに当接するときに、バルブ12の回転方向の後方側に位置する内径側リップ61の向きがバルブ12の回転方向と同じため(
図8参照)、内部流路31の出入口の端部31aに引っ掛かり難い。そのため、シール部材41の切れや摩耗が生じることを防止できる。なお、内部流路31の出入口の端部31aに、テーパ(またはR)を設けることにより、内部流路31の出入口の端部31aと内径側リップ61とが面で当接し易くなるので、シール部材41の切れや摩耗が生じることを抑制できる。
【0048】
また、バルブ12の回転方向の前方側に位置する内径側リップ61の向きはバルブ12の回転方向と逆である(
図7参照)が、この内径側リップ61はバルブ12の外周面12aの曲面に当接するのでバルブ12の外周面12aとの間に生じる摩擦を抑制できる。また、バルブ12に引きずられる力F2に対し、装着溝22の外周壁22bに外径側リップ62が当接して突っ張ることで、バルブ12の回転方向の前方側に位置する内径側リップ61の反転を防止できる。
【0049】
また、シール部材41が略X形状に形成されていることから、第1ハウジング側リップ63と第2ハウジング側リップ64との間において、ハウジング11とシール部材41との間に隙間δ2が設けられている。これにより、バルブ12に押し付けられる力F1に対し、シール部材41が変形して隙間δ2の内部に逃げることが出来る。そのため、シール部材41に生じる内部応力が低減する。
【0050】
以上のように、本実施例では、シール部材41の内径側リップ61が、バルブ12の外周面12aに当接する。
【0051】
これにより、バルブ12に押し付けられる力F1に対し、シール部材41の内径側リップ61が変形することができる。そのため、シール部材41に生じる内部応力を低減できるので、シール部材41のへたりが少なくなり、シール部材41のシール性が維持される。また、バルブ12の回転時において、バルブ12とシール部材41との間に生じる摺動抵抗を低減できるので、バルブ12を回転させる駆動部13のモータの駆動による消費電力を小さくできるとともに、シール部材41の摩耗を防止できる。したがって、シール部材41のシール性を確保できる。
【0052】
また、バルブ12に引きずられる力F2に対し、シール部材41の内径側リップ61が変形することができる。そのため、シール部材41がバルブ12に引っ掛かることを防止できるので、シール部材41の切れや摩耗が生じることを防止できる。したがって、シール部材41のシール性を確保できる。
【0053】
また、溝高さHAは、バルブ12の外周面12aの回転軌道に干渉しない高さに形成されている。
【0054】
これにより、装着溝22の内周壁22aとバルブ12の外周面12aとの間に隙間δ1が形成されている。そのため、バルブ12に押し付けられる力F1やバルブ12に引きずられる力F2に対し、シール部材41の内径側リップ61が、隙間δ1の内部に変形して逃げることができる。したがって、より効果的に、シール部材41に生じる内部応力を低減でき、バルブ12の回転時においてバルブ12とシール部材41との間に生じる摺動抵抗を低減でき、シール部材41がバルブ12に引っ掛かることを防止できる。ゆえに、より効果的に、シール部材41のシール性を確保できる。
【0055】
また、シール部材41の内径側リップ61が、隙間δ1を介して、流体圧によりバルブ12に押圧される。そのため、シール部材41のシール性が維持される。
【0056】
また、装着溝22の外周壁22bのバルブ12側の端部22cは、シール部材41の外径側と装着溝22の外周壁22bとの当接位置41aよりもバルブ12側の位置に形成されている。そこで、これを実現する具体的な一例として、装着溝22の溝高さHBは、シール部材41の外径側リップ高さhBよりも高い。
【0057】
これにより、バルブ12に引きずられる力F2に対し、装着溝22の外周壁22bでシール部材41の外径側リップ62が突っ張るので、シール部材41の内径側リップ61が反転することを防止できる。
【0058】
また、シール部材41の断面は、略X形状に形成されている
【0059】
これにより、バルブ12に押し付けられる力F1やバルブ12に引きずられる力F2に対し、シール部材41が全体的に変形して逃げることができる。そのため、シール部材41に生じる内部抵抗が低減し、かつ、シール部材41への弁体の引っ掛かりを防止できる。また、シール部材41の表裏の区別が無くなるので、シール部材41の組み付け性が向上する。
【0060】
なお、変形例として、
図9に示すように、シール部材41は、本体部51と内径側リップ61のみ有していてもよい。
【0061】
(第2実施例)
次に、第2実施例について、第1実施例と異なる点について説明し、第1実施例と共通する点の説明は省略する。
【0062】
本実施例では、
図10と
図11に示すように、シール部材41の形状が第1実施例のときと異なっている。詳しくは、
図11に示すように、シール部材41は、本体部51からバルブ12側に向って形成されるバルブ側部位65を有する。そして、このバルブ側部位65における内径側にある内径側部位65aがバルブ12の外周面12aに当接する。なお、内径側部位65aは、本開示の「所定の部位」の一例である。
【0063】
そして、本実施例においても、第1実施例と同様に、バルブ12に押し付けられる力F1に対して、内径側部位65aが隙間δ1へ変形して逃げることができるので、シール部材41に生じる内部応力を低減でき、シール部材41のへたりを少なくすることができる。また、バルブ12の回転時の摺動抵抗を少なくすることができる。
【0064】
また、バルブ12に引きずられる力F2に対しても、内径側部位65aが隙間δ1へ変形して逃げることができるので、シール部材41の引っ掛かりを防止してシール部材41の切れや摩耗が生じることを防止できる。したがって、シール部材41のシール性を確保できる。
【0065】
また、バルブ12に引きずられる力F2に対し、装着溝22の外周壁22bに高剛性のバルブ側部位65が当接して突っ張ることで、バルブ12の回転時にバルブ側部位65が反転することを防止できる。
【0066】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0067】
例えば、バルブ12は、球状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 回転弁
11 ハウジング
12 バルブ
21 流路口ポート
22 装着溝
22a 内周壁
22b 外周壁
22c (外周壁のバルブ側の)端部
31 内部流路
41 シール部材
41a (シール部材の外径側と装着溝の外周壁との)当接位置
51 本体部
61 内径側リップ
62 外径側リップ
65 バルブ側部位
65a 内径側部位
HA 溝高さ
HB 溝高さ
hA 内径側リップ高さ
hB 外径側リップ高さ
δ1 隙間
F1 (バルブに押し付けられる)力
F2 (バルブに引きずられる)力