(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064758
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/02 20060101AFI20240507BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240507BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B41J2/02
B41J2/01 401
B41J2/175 119
B41J2/01 501
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173589
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 肇
(72)【発明者】
【氏名】山川 英樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC16
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC19
2C056EC26
2C056FC01
2C056KB08
2C056KB15
2C056KB19
2C056KC02
2C056KC04
2C056KC05
2C056KC15
2C057AH11
2C057DB02
2C057DB03
(57)【要約】
【課題】中空針及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置の故障を防ぐ。
【解決手段】コンティニュアス式のインクジェット記録装置Iは、インク及び溶剤を印字用インクとして蓄えるインクタンク106と、印字用インクによって印字する印字ヘッド1と、インクリザーバ42がインクカートリッジ41を受け入れたとき、該インクカートリッジ41内のインクにアクセスするインク用中空針43と、インク用中空針43からインクタンク106までインクを流通させる第1インク管44aと、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からインクを取り出す際には、インク用中空針43から第1インク管44aに向けて流れを生じさせるように吸引制御を実行するとともに、逆流洗浄する際には、第1インク管44aからインク用中空針43に向けて流れを生じさせる吹出制御を実行する供給制御部101aとを備える。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンティニュアス式のインクジェット記録装置であって、
インクが収容されるインクカートリッジを着脱可能に受け入れるインクリザーバと、
溶剤が収容される溶剤カートリッジを着脱可能に受け入れる溶剤リザーバと、
前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジからの前記インクと、前記溶剤リザーバに受け入れられた溶剤カートリッジからの前記溶剤と、を印字用インクとして蓄えるインクタンクと、
前記インクタンクからの前記印字用インクによって印字する印字ヘッドと、
前記インクリザーバがインクカートリッジを受け入れたときに、該インクカートリッジ内の前記インクにアクセスする中空針と、
前記中空針と前記インクタンクとの間を接続し、前記中空針から前記インクタンクまで前記インクを流通させるインク流通管と、
前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記中空針から前記インク流通管に向けて流れを生じさせるように吸引制御を実行するとともに、流れの経路を逆流洗浄する際には、前記インク流通管から前記中空針に向けて流れを生じさせる吹出制御を実行する供給制御部と、を備える
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記インクは、顔料インクからなる
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記インク流通管の途中に配置され、前記中空針から前記インク流通管に向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプと、
前記中空針と前記吸引ポンプとの間の前記インク流通管に配置され、溶剤又はインクを前記インク流通管において合流させる合流部と、
前記合流部と前記吸引ポンプとの間の前記インク流通管に配置され、該インク流通管の流路を開閉する開閉弁と、をさらに備え、
前記供給制御部は、
前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、
前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記合流部を介して前記溶剤又はインクを供給することで前記吹出制御を実行する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたインクジェット記録装置において、
前記溶剤リザーバが溶剤カートリッジを受け入れたときに、該溶剤カートリッジ内の前記溶剤を前記合流部まで流通させる溶剤流通管と、
前記溶剤流通管の途中に配置され、該溶剤流通管から前記合流部及び前記インク流通管を介して前記中空針に向けて流れを生じさせるように作動する溶剤ポンプと、
前記合流部と前記溶剤ポンプとの間の前記溶剤流通管に配置され、該溶剤流通管の流路を開閉する第2の開閉弁と、をさらに備え、
前記供給制御部は、
前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記第2の開閉弁を閉状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、
前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記第2の開閉弁を開状態とし、かつ前記溶剤ポンプを作動させることで前記吹出制御を実行する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項3に記載されたインクジェット記録装置において、
前記インクタンクと前記合流部との間を接続し、前記インクタンクから前記合流部まで前記印字用インクを流通させる第2のインク流通管と、
前記第2のインク流通管の途中に配置され、該第2のインク流通管から前記合流部及び前記インク流通管を介して前記中空針に向けて流れを生じさせるように作動するインクポンプと、
前記合流部と前記インクポンプとの間の前記第2のインク流通管に配置され、該第2のインク流通管の流路を開閉する第3の開閉弁と、をさらに備え、
前記供給制御部は、
前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記第3の開閉弁を閉状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、
前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記第3の開閉弁を開状態とし、かつ前記インクポンプを作動させることで前記吹出制御を実行する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記供給制御部と電気的に接続されたスイッチを備え、
前記供給制御部は、前記スイッチが操作されたことを契機として、前記吹出制御を開始する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたインクジェット記録装置において、
前記供給制御部は、前記インクリザーバに受け入れられているインクカートリッジにインクが収容されているか否かにかかわらず、前記スイッチが操作されたことを契機として前記吹出制御を開始する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項3から5のいずれか1項に記載されたインクジェット記録装置において、
前記中空針と、該中空針及び前記合流部の間の前記インク流通管とにおける閉塞状態を検知する検知部を備え、
前記供給制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて、前記吹出制御を開始する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
ユーザに情報を報知する報知部を備え、
前記供給制御部は、
所定期間にわたって前記吹出制御を実行し、
前記所定期間の経過後、前記吹出制御が終了したことを前記報知部により報知する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
ユーザに情報を表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記供給制御部による前記吹出制御が終了した場合、前記インクリザーバに受け入れられるインクカートリッジを撹拌するように誘導するための誘導情報を表示する
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンティニュアス式のインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク等に印字を行うためのインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワークに印字を行っていないときであっても、装置内部にインクを循環させる、いわゆるコンティニュアス式のインクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置は、インクカートリッジの装着を受け入れるリザーバと、インクカートリッジ内のインクを取り出すための中空針と、を備えている。
【0004】
前記特許文献1によると、リザーバにインクカートリッジが受け入れられたとき、そのインクカートリッジのボトルに中空針が突き刺さり、ボトル内部に中空針が侵入する。これにより、インクカートリッジ内のインクを、中空針を通じて取り出すことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に記載されているような中空針の内部空間、及び、その中空針近傍のインク流通管の内部空間は、インクジェット記録装置における他の流路と比べて狭くなるのが一般的である。
【0007】
そのため、いわゆる顔料インク等、その着色成分が溶剤に溶けきっていないインクをインクジェット記録装置に用いる場合、その着色成分の沈降に起因した塊が中空針及びその近傍の内部空間で詰まらないよう、インクカートリッジを事前に振ることで着色成分の塊を崩しておく必要がある。
【0008】
しかしながら、実際の現場では、インクカートリッジを振ること自体が失念されたり、インクカートリッジが十分に振られなかった結果、着色成分の塊が崩し切れていなかったりするような事態が生じ得る。そのような状態でリザーバにインクカートリッジが装着されてしまうと、着色成分の塊が前述の内部空間で詰まってしまい、インクジェット記録装置の故障を招く可能性がある。その場合、中空針の交換すら求められる可能性があるため、労力及び費用面でも不都合である。
【0009】
なお、顔料インク以外のインク、つまり染料インクにおいても、その着色成分が完全に溶けきっていないようなケースが想定される。したがって、前述の課題は、顔料インク及び染料インクの双方において生じ得るものである。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中空針及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置の故障を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様は、コンティニュアス式のインクジェット記録装置に係る。このインクジェット記録装置は、インクが収容されるインクカートリッジを着脱可能に受け入れるインクリザーバと、溶剤が収容される溶剤カートリッジを着脱可能に受け入れる溶剤リザーバと、前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジからの前記インクと、前記溶剤リザーバに受け入れられた溶剤カートリッジからの前記溶剤と、を印字用インクとして蓄えるインクタンクと、前記インクタンクからの前記印字用インクによって印字する印字ヘッドと、前記インクリザーバがインクカートリッジを受け入れたときに、該インクカートリッジ内の前記インクにアクセスする中空針と、前記中空針と前記インクタンクとの間を接続し、前記中空針から前記インクタンクまで前記インクを流通させるインク流通管と、前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記中空針から前記インク流通管に向けて流れを生じさせるように吸引制御を実行するとともに、流れの経路を逆流洗浄する際には、前記インク流通管から前記中空針に向けて流れを生じさせる吹出制御を実行する供給制御部と、を備える。
【0012】
前記第1の態様によると、吹出制御を実行することで、インク流通管から中空針に向けて流れを生じさせることができる。この流れによって、中空針及びその近傍の内部空間に詰まった閉塞物を、該内部空間から排出させることができる。
【0013】
その際、吸引制御のように中空針からインク流通管に向かう流れではなく、その逆方向に向かう流れを用いることで、閉塞物をインク流通管の深部に追いやることなく、より確実に排出させることが可能になる。そのことで、中空針及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置の故障を防ぐことができる。
【0014】
また、前記第1の態様のように閉塞物を排出させることで、中空針及びインク流通管の交換が不要になる。製造メーカに装置を送ったり、製造メーカから修理者を招いたりせずとも、中空針及びその近傍でのインク詰まりを解消することができる。これにより、労力及び費用面でも有利になる。
【0015】
また、本開示の第2の態様によれば、前記インクは、顔料インクからなる、としてもよい。
【0016】
顔料インクは、色が鮮明で着色力が強いという長所がある一方、定期的に攪拌しなければ、その着色成分(顔料成分)の一部が沈降して塊となるという短所がある。そのため、顔料インクは、染料インクと比べて、中空針及びその近傍のインク流通管を詰まらせる可能性が高い。したがって、本開示は、顔料インクからなるインクを用いる場合に取り分け有効となる。
【0017】
また、本開示の第3の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、前記インク流通管の途中に配置され、前記中空針から前記インク流通管に向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプと、前記中空針と前記吸引ポンプとの間の前記インク流通管に配置され、溶剤又はインクを前記インク流通管において合流させる合流部と、前記合流部と前記吸引ポンプとの間の前記インク流通管に配置され、該インク流通管の流路を開閉する開閉弁と、をさらに備え、前記供給制御部は、前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記合流部を介して前記溶剤又はインクを供給することで前記吹出制御を実行する、としてもよい。
【0018】
前記第3の態様によると、吹出制御が実行されるとき、吸引制御時には開状態とされる開閉弁が閉状態とされる。これにより、合流部を介して供給される溶剤又はインクが吸引ポンプ側に引き込まれるのを抑制し、逆流洗浄をより適切に行うことができるようになる。
【0019】
また、本開示の第4の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、前記溶剤リザーバが溶剤カートリッジを受け入れたときに、該溶剤カートリッジ内の前記溶剤を前記合流部まで流通させる溶剤流通管と、前記溶剤流通管の途中に配置され、該溶剤流通管から前記合流部及び前記インク流通管を介して前記中空針に向けて流れを生じさせるように作動する溶剤ポンプと、前記合流部と前記溶剤ポンプとの間の前記溶剤流通管に配置され、該溶剤流通管の流路を開閉する第2の開閉弁と、をさらに備え、前記供給制御部は、前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記第2の開閉弁を閉状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記第2の開閉弁を開状態とし、かつ前記溶剤ポンプを作動させることで前記吹出制御を実行する、としてもよい。
【0020】
前記第4の態様によると、前記供給制御部は、溶剤カートリッジから合流部に溶剤を供給することで、吹出制御を実行する。これにより、逆流洗浄の際に流通させる流体を新規に用意せずとも、吹出制御を実現することが可能になる。これにより、装置の製造コストを抑制し、費用面でより有利にすることができる。また、溶剤によって吹出制御を実行することで、インク詰まりを溶剤で溶かすことが可能になる。これにより、中空針及びその近傍でのインク詰まりを、より確実に解消することができる。
【0021】
また、本開示の第5の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、前記インクタンクと前記合流部との間を接続し、前記インクタンクから前記合流部まで前記印字用インクを流通させる第2のインク流通管と、前記第2のインク流通管の途中に配置され、該第2のインク流通管から前記合流部及び前記インク流通管を介して前記中空針に向けて流れを生じさせるように作動するインクポンプと、前記合流部と前記インクポンプとの間の前記第2のインク流通管に配置され、該第2のインク流通管の流路を開閉する第3の開閉弁と、をさらに備え、前記供給制御部は、前記インクリザーバに受け入れられたインクカートリッジから前記インクを取り出す際には、前記開閉弁を開状態とし、かつ前記第3の開閉弁を閉状態とし、かつ前記吸引ポンプを作動させることで前記吸引制御を実行し、前記流れの経路を逆流洗浄する際には、前記開閉弁を閉状態とし、かつ前記第3の開閉弁を開状態とし、かつ前記インクポンプを作動させることで前記吹出制御を実行する、としてもよい。
【0022】
前記第5の態様によると、前記供給制御部は、インクタンクから合流部に印字用インクを供給することで、吹出制御を実行する。これにより、逆流洗浄の際に流通させる流体を新規に用意せずとも、吹出制御を実現することが可能になる。これにより、装置の製造コストを抑制し、費用面でより有利にすることができる。
【0023】
また、本開示の第6の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、前記供給制御部と電気的に接続されたスイッチを備え、前記供給制御部は、前記スイッチが操作されたことを契機として、前記吹出制御を開始する、としてもよい。
【0024】
前記第6の態様によると、吹出制御を手動で開始させることができる。これにより、中空針及びその近傍でのインク詰まりを、ユーザ所望のタイミングで解消することができる。
【0025】
また、本開示の第7の態様によれば、前記供給制御部は、前記インクリザーバに受け入れられているインクカートリッジにインクが収容されているか否かにかかわらず、前記スイッチが操作されたことを契機として前記吹出制御を開始する、としてもよい。
【0026】
仮にインクカートリッジにインクが収容されていた場合、吹出制御によってそのインクカートリッジ内に排出されたインク又は溶剤は、事前に収容されていたインクと混ざることになる。これにより、カートリッジ内のインク濃度が増減する可能性がある。しかしながら、コンティニュアス式のインクジェット記録装置の場合、インクタンクにおいてインクが濃度調整されることになるため、仮にカートリッジ内でインク濃度が増減したとしても、印字ヘッドによる印字への影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0027】
また、本開示の第8の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、前記中空針と、該中空針及び前記合流部の間の前記インク流通管とにおける閉塞状態を検知する検知部を備え、前記供給制御部は、前記検知部の検知結果に基づいて、前記吹出制御を開始する、としてもよい。
【0028】
前記第8の態様によると、吹出制御を自動的に開始させることができる。これにより、中空針及びその近傍でのインク詰まりを、より確実に解消することができる。
【0029】
また、本開示の第9の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、ユーザに情報を報知する報知部を備え、前記供給制御部は、所定期間にわたって前記吹出制御を実行し、前記所定期間の経過後、前記吹出制御が終了したことを前記報知部により報知する、としてもよい。
【0030】
また、本開示の第10の態様によれば、前記インクジェット記録装置は、ユーザに情報を表示する表示部を備え、前記表示部は、前記供給制御部による前記吹出制御が終了した場合、前記インクリザーバに受け入れられるインクカートリッジを撹拌するように誘導するための誘導情報を表示する、としてもよい。
【0031】
前記第10の態様によると、表示部を通じてユーザに前記誘導情報を表示することで、インク詰まりの再発を抑制することができる。これにより、中空針及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置の故障をより確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本開示によれば、中空針及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置の故障を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、インクジェット記録システムの全体構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、インクジェット記録装置の概略構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図3は、印字ヘッドの概略構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、インクカートリッジとインクリザーバとの接続構造を例示する図である。
【
図5】
図5は、インクジェット記録装置におけるインク及び溶剤の経路を例示する図である。
【
図6A】
図6Aは、吸引制御の実行条件を例示するフローチャートである。
【
図6B】
図6Bは、吸引制御の具体例を示すフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、インク流通管が閉塞していないときに、吸引制御によって生じる流れを説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、インク流通管が閉塞しているときに、吸引制御によって生じる流れを説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、吹出制御の実行条件を例示するフローチャートである。
【
図8B】
図8Bは、吹出制御の具体例を示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、閉塞解消前に、吹出制御によって生じる流れを説明するための図である。
【
図9B】
図9Bは、閉塞解消後に、吹出制御によって生じる流れを説明するための図である。
【
図10】
図10は、吹出制御前の第1メンテナンス画面を例示する図である。
【
図11】
図11は、吹出制御後の第2メンテナンス画面を例示する図である。
【
図12】
図12は、吹出制御の変形例を実現するためのコントローラを示す
図5対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0035】
すなわち、本明細書では、インクジェット記録装置の一例として、産業用インクジェットプリンタについて説明するが、ここに開示する技術は、インクジェット記録装置及び産業用インクジェットプリンタという名称に関わらず、粒子状のインクを飛翔させてワーク等の被印字物に着弾させるように構成された一般の機器に適用することができる。
【0036】
また、本明細書においては、インクジェット記録装置による印字について説明するが、ここでいう「印字」には、文字の印刷、図形のマーキング等、インクジェットを応用したあらゆる加工処理が含まれる。
【0037】
<全体構成>
図1はインクジェット記録システムSの全体構成を例示する図である。また、
図2はインクジェット記録装置Iの概略構成を例示する図であり、
図3はインクジェット記録装置Iにおける印字ヘッド1の概略構成を例示する図である。そして、
図4はインクカートリッジ41とインクリザーバ42との接続構造を例示する図であり、
図5はインクジェット記録装置Iにおけるインク及び溶剤の経路を例示する図である。
図1に例示するインクジェット記録システムSは、例えば工場等の搬送ラインLに設置されており、その搬送ラインLを流れる各被印字物Wに対し、順番に印字を施すように構成されている。なお、本開示の適用対象は、インクジェット記録システムSには限定されない。自動以外の方法を用いた印字システムに適用することができる。搬送ラインLは、例えばベルトコンベア等で構成することができる。
【0038】
具体的に、インクジェット記録システムSは、粒子状のインク(インク粒)を被印字物Wに着弾させることで印字を行うインクジェット記録装置Iと、インクジェット記録装置Iに接続される操作用端末800及び外部機器900と、を備えている。なお、操作用端末800及び外部機器900は、必須ではない。
【0039】
図1~
図3に例示するインクジェット記録装置Iは、インク粒をノズル12から吐出するとともに、そのインク粒を被印字物Wに着弾させる印字ヘッド1と、この印字ヘッド1に対し制御信号、インク及び溶剤を供給するコントローラ100と、を備えている。コントローラ100が印字ヘッド1に制御信号を供給することで、インク粒の軌跡を制御する。これにより、被印字物W上でのインク粒の着弾位置が調整されて、所望の印字が実現されるようになっている。印字ヘッド1は、支持部材2等により所定の位置に固定される。
【0040】
インクジェット記録装置Iは、コンティニュアス式のインクジェット記録装置(Continuous Ink Jet printer:CIJ)である。すなわち、インクジェット記録装置Iは、インクの揮発に起因した詰まり(特に、ノズル12の詰まり)等を防止するために、印字を実行していないときであっても、インクジェット記録装置Iが稼働状態であれば、インクジェット記録装置Iの内部を常にインクが循環している。コンティニュアス式を採用することで、インクによる詰まりを招くことなく、速乾性のインクを用いることができるようになる。
【0041】
また、本実施形態に係るインクは、その着色成分が溶剤に溶けきっていない顔料インクからなる。顔料インクに代えて、染料インクからなるインクを用いてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、溶剤を印字ヘッド1へ送り出すことで、ノズル12等、印字ヘッド1の各部を洗浄することができるようになっている。洗浄に用いられた溶剤は、必要に応じて回収されて、インクの濃度(粘度)を調整するために再利用することができる。
【0043】
インクの循環を実現するために、印字ヘッド1は、インク又は溶剤を吐出するノズル12に加えて、そのノズル12から吐出されたインク又は溶剤を回収するガター16を備えている(
図3参照)。コントローラ100から印字ヘッド1へ送り込まれたインク又は溶剤は、ノズル12から吐出されてガター16によって回収される。そうして回収されたインク又は溶剤は、コントローラ100へ送り戻されて再利用される。こうした工程を繰り返し行うことで、インクを循環させることができる。
【0044】
一方、操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)及び記憶装置を有しており、コントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字設定を定めるとともに、印字に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。
【0045】
操作用端末800により設定される印字設定は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。コントローラ100の記憶部102に加えて、又は、この記憶部102に代えて、操作用端末800が印字設定を記憶してもよい。
【0046】
なお、本実施形態に係る印字設定には、印字されるべき文字列等の内容に加えて、後述の吸引制御及び吹出制御に関連した条件及びパラメータが含まれていてもよい。
【0047】
なお、操作用端末800は、例えばコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」という呼称ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになる。
【0048】
外部機器900は、必要に応じてコントローラ100に接続される。
図1及び
図2に示す例では、外部機器900として、ワーク検出センサ901、搬送速度センサ902及びプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)903が設けられている。
【0049】
具体的に、ワーク検出センサ901は、搬送ラインLにおける被印字物Wの有無を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。ワーク検出センサ901から出力される検出信号は、印字を開始するためのトリガー(印字トリガ)として機能する。
【0050】
搬送速度センサ902は、例えばロータリエンコーダから構成されており、被印字物Wの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ902は、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、搬送速度センサ902から入力された検出信号に基づいて、印字ヘッド1からインク粒を吐出するタイミング等を制御する。
【0051】
またPLC903は、
図2に例示するように、コントローラ100と電気的に接続されている。PLC903は、予め定めたシーケンスに従ってインクジェット記録システムSを制御するために用いられる。
【0052】
インクジェット記録装置Iには、上述した機器や装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を接続することもできる。その場合の接続方式は、有線接続及び無線接続のどちらであってもよい。
【0053】
<コントローラ100>
コントローラ100は、印字ヘッド1を電気的に制御するとともに、印字用のインク、および、インクを希釈するための溶剤を印字ヘッド1へ供給することができるように構成されている。
【0054】
具体的に、本実施形態に係るコントローラ100は、電気的な制御に関連した構成要素として、前述の印字設定を記憶する記憶部102と、コントローラ100及び印字ヘッド1の各部を制御する制御部101と、ユーザによる操作を受け付けるとともに、ユーザへ情報を表示する操作表示部103と、外部から供給される電力を制御部101へ導く電源供給部121と、を備えている。
【0055】
コントローラ100はまた、インク等の供給に関連した構成要素として、インク供給部104と、溶剤供給部105と、インクタンク106と、を備えている。これらの構成要素は、印字ヘッド1と直接的に又は間接的に流体接続されている。
【0056】
後述のように、インク供給部104は、インクが収容されるインクカートリッジ41を着脱可能に受け入れるインクリザーバ42を有している。一方、溶剤供給部105は、溶剤が収容される溶剤カートリッジ51を着脱可能に受け入れる溶剤リザーバ52を有している。後述の吹出制御と関係するが、インクリザーバ42は、空の溶剤カートリッジ51を受け入れることもできる。
【0057】
また、インクタンク106は、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からのインクと、溶剤リザーバ52に受け入れられた溶剤カートリッジ51からの溶剤と、を印字用インクとして蓄える。ここでいう「印字用インク」は、溶剤とインクとの混合物(例えば、溶剤によって濃度調整されたインク)を意味する。
【0058】
そして、印字ヘッド1は、インクタンク106からの印字用インクによって印字する。印字ヘッド1はまた、溶剤供給部105からインクタンク106を迂回して供給された溶剤によってノズル12等を洗浄する。
【0059】
制御部101と、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。記憶部102も、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。操作表示部103も、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。これらの場合も、構成要素を合わせてコントローラ100とすることができる。
【0060】
また、インク供給部104とインクタンク106とを独立した構成要素とみなしたことは、便宜上の分類に過ぎない。インクの供給に関連しているという観点から、インクタンク106をインク供給部104の一要素とみなしてもよい。
【0061】
(記憶部102)
記憶部102は、後述の操作表示部103、又は、操作用端末800を介して設定された印字設定を記憶するとともに、外部からの制御信号に基づいて、記憶した印字設定を制御部101へと出力するように構成されている。
【0062】
具体的に、記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)等を用いて構成されており、印字設定を示す情報を一時的又は継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が記憶部102を兼用してもよい。
【0063】
(制御部101)
制御部101は、記憶部102に記憶された印字設定に基づいて、少なくとも、コントローラ100におけるインク供給部104及び溶剤供給部105と、印字ヘッド1におけるノズル12、帯電電極13及び偏向電極15と、を制御する。制御部101が各部を制御することにより、被印字物Wへの印字が所定のタイミングで実施される。
【0064】
具体的に、制御部101は、例えばCPU、メモリ、入出力バス等を有しており、操作表示部103又は操作用端末800を介して入力された情報を示す信号と、記憶部102から読み込んだ印字設定を示す信号と、に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をコントローラ100及びインクジェット記録装置Iの各部へと出力することにより、被印字物Wに対する印字を制御する。
【0065】
例えば制御部101は、被印字物Wに印字するときには、記憶部102に記憶された被印字物Wへの印字内容を読み込んで、その印字内容に基づいた制御信号を生成する。そして、制御部101は、その制御信号を帯電電極13へと出力することで、印字内容に対応した着弾位置を実現するようにインク粒の飛翔方向を設定する。
【0066】
-制御部101における他の機能的要素-
その他、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、インクカートリッジ41からのインクの供給、及び溶剤カートリッジ51からの溶剤の供給を制御する供給制御部101aを備えている。
【0067】
ここで、供給制御部101aは、インク供給部104及び溶剤供給部105それぞれを作動させる(特に、各開閉弁の開度を制御する)ことで、インク及び溶剤それぞれの供給を制御する。供給制御部101aがインク及び溶剤それぞれの供給を制御することで、本実施形態における吸引制御及び吹出制御が実現される。吸引制御及び吹出制御の詳細は後述する。
【0068】
(操作表示部103)
図1に示すように、操作表示部103は、ユーザに情報を表示する表示部103aと、ユーザによる操作を受け付ける操作部103b及び開始ボタン103cと、を備えている。操作表示部103は、例えばコントローラ100を構成する筐体等に設けることができるが、筐体とは別に構成し、筐体とは異なる箇所に設定するようにしてもよい。また、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が操作表示部103を兼用してもよい。
【0069】
表示部103aは、インクジェット記録装置Iに関連した種々の情報を表示する。表示部103aは、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネル等で構成されており、制御部101からの制御信号を受けて表示態様を変化させる。表示部103aは、インクジェット記録システムSの各部を動作させるためのユーザインターフェースを表示したり、印字設定を定めるためのユーザインターフェースを表示したり、前述の吸引制御及び吹出制御に関連した情報を表示したりすることができる。表示部103aは、ユーザに視覚的な情報を報知することができ、本実施形態における「報知部」を構成している。なお、表示部103aによって報知部を構成することは必須ではない。例えば、ユーザに音声情報を報知するスピーカによって報知部を構成してもよいし、LEDランプ等、他の視覚的な手段によって報知部を構成してもよい。
【0070】
操作部103bは、例えば、タッチ式操作パネルやボタン、スイッチ等によって構成されている。ユーザが操作部103bを操作すると、その操作入力に対応した情報(操作情報)が制御部101に入力され、制御部101はどのような操作が行われたかを検知することができる。例えば、操作部103bを操作することで、インクジェット記録装置Iの電源ON/OFF等を切替えることや、各種設定、情報の入力等を行うことができる。操作部103bは、各種情報を入力可能な「入力部」を構成している。
【0071】
この操作表示部103は、前述の操作用端末800と同様に、印字設定を設定することもできる。操作表示部103により設定される印字設定は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。以下の記載では、ユーザが操作表示部103を操作するケースを前提に説明するが、操作表示部103の代わりに操作用端末800を用いることもできる。
【0072】
開始ボタン103cは、供給制御部101aと電気的に接続されたスイッチであり、供給制御部101aに吹出制御を開始させることができる。具体的に、本実施形態に係る開始ボタン103cは、前記操作部103bとは別体に構成された物理スイッチ(例えば押しボタン)として構成されている。この開始ボタン103cを押下するためには、コントローラ100の前面に設けられた扉部108を開く必要がある(
図1参照)。
【0073】
(インク供給部104)
インク供給部104は、そのインクカートリッジ41からのインクを、印字用インクとして印字ヘッド1のノズル12に供給する。その際、インク供給部104からのインクは、インクタンク106を介して印字ヘッド1に供給される。
【0074】
具体的に、本実施形態に係るインク供給部104は、主たる構成要素として、前述のインクカートリッジ41及びインクリザーバ42と、中空針としてのインク用中空針43と、インク供給管44と、を有している。インク用中空針43は、インクカートリッジ41及びインク供給管44を流体的に接続している。インク供給管44は、インク用中空針43を介してインクカートリッジ41及び印字ヘッド1を流体的に接続している。インク用中空針43から印字ヘッド1に至るインク供給管44の途中には、インクタンク106が配置されている。
【0075】
このうち、インクカートリッジ41には、インクが収容される。インクリザーバ42は、このインクカートリッジ41を着脱可能に受け入れる。インクリザーバ42に対してインクカートリッジ41を付け替えることで、インクタンク106にインクを補充することができる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆる「カートリッジ式」のインクジェットプリンタとして構成されている。なお、ここでいうインクカートリッジ41には、実際にはインクが収容されていない空のカートリッジも含まれる。
【0076】
なお、
図5にのみ示すように、インクリザーバ42には、該インクリザーバ42にインクカートリッジ41又は溶剤カートリッジ51が取り付けられたことを検出する第1取付センサSW1が設けられている。
【0077】
インク用中空針43は、インクリザーバ42がインクカートリッジ41を受け入れたとき(インクリザーバ42にインクカートリッジ41が装着されたとき)に、該インクカートリッジ41内のインクにアクセスする。
【0078】
具体的に、本実施形態に係るインクカートリッジ41は、ボトル部41aと、口部41bと、口栓部41cと、鍔部41dと、を有している(
図4を参照)。ボトル部41aは、中心軸方向の一側を開口させた略有底筒状に形成されており、インクを収容するための内部空間を区画する。口部41bは、ボトル部41aの開口端部を縮径させることで構成されている。口栓部41cは、例えばゴム栓によって構成されており、口部41bを封止する。また、鍔部41dは、口部41b周辺の外壁に設けられており、インクリザーバ42の抜止部42aに係止する。
【0079】
インクリザーバ42は、インクカートリッジ41を受け入れるとともに、その受け入れたインクカートリッジ41を位置決めする。その際、鍔部41dを抜止部42aに係止させることで、インクリザーバ42から脱落させる方向(
図4の紙面上方)への力がインクカートリッジ41に加わったとしても、インクリザーバ42からのインクカートリッジ41の脱落を抑制することができる。
【0080】
また、インク用中空針43は、針本体43aと、接続部43bと、を有している。針本体43aは、インクリザーバ42にインクカートリッジ41が受け入れられたとき、そのインクカートリッジ41のボトル部41aに突き刺さり、ボトル部41aの内部に侵入する。針本体43aは中空の針形状を有している。そのため、ボトル部41aの内部に針本体43aを侵入させることで、インクカートリッジ41内のインクを、針本体43aの内部空間を通じて取り出すことができるようになる。
【0081】
一方、インク用中空針43の接続部43bは、針本体43aの基端側(針先の反対側)に配置されており、インクリザーバ42に接続されている。この接続によって、インクリザーバ42に対してインク用中空針43が固定されるようになっている。
【0082】
また、
図4に示すように、接続部43bの内部には、インク用中空針43の内部空間と繋がった流路が形成されている。また、この接続部43bには、第1インク管44aの一端部が接続されている(第1インク管44aについては、
図5も参照されたい)。この接続によって、インク用中空針43の内部空間と、第1インク管44aによって構成される流路と、が接続部43bを介して一体的な流路を形成することになる。そのことで、インクカートリッジ41からのインクをインク供給管44へと導くことが可能になる。
【0083】
なお、インク用中空針43の内部空間は、
図4に示すように第1インク管44aの内部空間よりも狭くなっている。そのため、インクの撹拌不足、又は、溶剤成分の揮発等に起因したインクの着色成分の塊(例えば固形物ゲル)は、他の流路と比較して、インク用中空針43及びその近傍の内部空間において詰まり易くなっている。
【0084】
例えば
図4には、インク用中空針43の内部空間に詰まった第1の閉塞物m1と、そのインク用中空針43近傍の第1インク管44aの内部空間に詰まった第2の閉塞物m2と、が例示されている。以下、これらを総称して単に「閉塞物」と呼称し、これに符号「m」を付す。この閉塞物mには、顔料インク中の着色成分(顔料成分)の沈降に起因した、固形物、ゲル等の塊と、溶剤の揮発に起因した固形物の塊と、が含まれる。また、この閉塞物mには、インクの成分が変性して生成された固形物やゲルが含まれる場合もある。インクの成分の変性に関し、例えば、雰囲気からの吸湿によってインクが含水し、溶剤に不溶な析出物が発生する場合もある。
【0085】
インク供給管44は、印字ヘッド1に印字用インクを供給するための経路を構成している。インク供給管44によって構成される経路によって、印字ヘッド1とコントローラ100との間でインクを循環させることができる。
【0086】
また、後述の如く、インク供給管44には、第1バルブV1をはじめとする複数の開閉弁と、第1ポンプP1をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各開閉弁は、それぞれ電磁弁によって構成されている。各開閉弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、インクの流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けてインクを圧送し、開閉弁と同様に、インクの流れを制御することができる。なお、開閉のうちの少なくとも一部(例えば、
図5の第1バルブV1、第8バルブV8、第11バルブV11及び第18バルブV18)は、電磁弁の代わりに手動コックとしてもよい。
【0087】
(溶剤供給部105)
溶剤供給部105は、その溶剤カートリッジ51からの溶剤を、インクと同様にインクタンク106に供給したり、溶剤単体でノズル12に供給したりする。前者の溶剤は、インクを濃度調整することで、そのインクと共に印字用インクを構成して印字ヘッド1に供給される。
【0088】
ここで、インクと共に印字用インクを構成する場合(つまり、印字ヘッド1に印字させる場合)、溶剤供給部105からの溶剤は、インクタンク106を介してノズル12に導かれることになる。一方、溶剤単体で供給される場合(つまり、ノズル12を洗浄する場合)、溶剤供給部105からの溶剤は、インクタンク106を介さずにノズル12に導かれる。
【0089】
具体的に、本実施形態に係る溶剤供給部105は、主たる構成要素として、前述の溶剤カートリッジ51及び溶剤リザーバ52と、溶剤用中空針53と、溶剤供給管54と、を有している。溶剤用中空針53は、溶剤カートリッジ51及び溶剤供給管54を流体的に接続している。溶剤供給管54は、溶剤用中空針53を介して、溶剤カートリッジ51及び印字ヘッド1と、溶剤カートリッジ51及びインクタンク106と、をそれぞれ流体的に接続している。
【0090】
このうち、溶剤カートリッジ51には、溶剤が収容される。溶剤リザーバ52は、この溶剤カートリッジ51を着脱可能に受け入れる。溶剤リザーバ52に対して溶剤カートリッジ51を付け替えることで、濃度調整用の溶剤と、洗浄用の溶剤とを補充することができる。すなわち、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、溶剤についても「カートリッジ式」のインクジェットプリンタとして構成されている。
【0091】
なお、
図5にのみ示すように、溶剤リザーバ52には、該溶剤リザーバ52に溶剤カートリッジ51又はインクカートリッジ41が取り付けられたことを検出する第2取付センサSW2が設けられている。
【0092】
溶剤用中空針53は、溶剤リザーバ52が溶剤カートリッジ51を受け入れたとき(溶剤リザーバ52に溶剤カートリッジ51が装着されたとき)に、該溶剤カートリッジ51内の溶剤にアクセスする。
【0093】
溶剤供給管54は、インクタンク106に溶剤を供給したり、インクタンク106の非介在下で印字ヘッド1に溶剤を供給したりするための経路を構成している。それらの経路によって、インク及び溶剤から印字用インクを生成したり、印字ヘッド1を溶剤によって洗浄したりすることができる。
【0094】
なお、インク供給管44及び溶剤供給管54という分類は、説明を簡潔にするためになされた便宜上の分類に過ぎない。インク供給管44及び溶剤供給管54は、相互に接続されていたり、一方が他方を兼ねていたりするため、実質的に不可分となっている。
【0095】
後述の如く、溶剤供給管54には、第12バルブV12をはじめとする複数の開閉弁と、第2ポンプP2をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各開閉弁は、それぞれ電磁弁によって構成されている。各開閉弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、溶剤の流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けて溶剤を圧送し、電磁弁と同様に、溶剤の流れを制御することができる。なお、上述したように、電磁弁の代わりに手動コックを用いても構わない。
【0096】
(インクタンク106)
インクタンク106は、インクカートリッジ41からのインクと、溶剤カートリッジ51からの溶剤と、を蓄えるように構成されている。詳細には、このインクタンク106は、溶剤によって濃度(粘度)調整されたインク、すなわちインクと溶剤の混合物を収容する容器によって構成されている。
【0097】
インクタンク106からノズル12へと供給された印字用インクは、印字時には被印字物Wの表面に着弾する一方、非印字時にはガター16によって収集されてインクタンク106に送り戻される。これにより、印字用インクの循環が実現される。
【0098】
また、洗浄のためにノズル12へと供給された溶剤についても、ガター16によって収集し、その後、例えば溶剤専用のコンディショニングタンク(不図示)を経てインクタンク106に送り込み、インクの濃度調整に再利用することができる。
【0099】
また、インクタンク106には、タンク内の液位(いわゆる液面レベル)を検出するための貯留センサ106aが設けられている。貯留センサ106aは、制御部101と電気的に接続されており、その検出信号をコントローラ100に入力する。貯留センサ106aは、電極式のレベルセンサによって構成してもよいし、フロート式のレベルセンサによって構成してもよいし、静電容量式のレベルセンサによって構成してもよい。
【0100】
(電源供給部121)
電源供給部121は、商用電源700と制御部101の間に介在しており、商用電源700から供給される電力を中継し、これを制御部101へと供給することができる。
【0101】
(他の構成要素)
コントローラ100には,制御信号を送受するための電源配線と、インクを送受するためのチューブ(具体的には、インク供給管44を構成するチューブ)と、溶剤を送受するためのチューブ(具体的には、溶剤供給管54を構成するチューブ)と、が束になって被覆された接続ケーブル107が設けられている。この接続ケーブル107は可撓性を有しており、印字ヘッド1の上端部に接続されている(
図1を参照)。コントローラ100と印字ヘッド1は、この接続ケーブル107を介して電気的にかつ流体的に接続されている。
【0102】
<印字ヘッド1>
印字ヘッド1は、コントローラ100から供給される制御信号、インク及び溶剤に基づいて濃度調整されたインク(印字用インク)を、粒子状のインク粒として吐出する。印字ヘッド1は、そうして吐出されたインク粒の飛翔方向を偏向せしめるとともに、偏向されたインク粒を被印字物Wの表面に着弾させることで、その被印字物Wに対し印字を実行することができる。その際の印字の詳細は、前述の印字設定に従う。印字ヘッド1は、印字設定に従って、被印字物Wの各々に対して順次印字することができる。
【0103】
具体的に、本実施形態に係る印字ヘッド1は、
図3に示すように、印字用インクを加振する加振器11と、加振器11により加振された印字用インクを吐出するノズル12と、ノズル12から吐出された粒子状の印字用インクを帯電させる帯電電極13と、印字用インクの帯電状態を監視する帯電検出センサ14と、帯電電極13により帯電された印字用インクの飛翔方向を偏向させる偏向電極15と、偏向電極15により非偏向とされた印字用インク、又は、ノズル12から吐出された溶剤を回収するガター16と、を備えている。
【0104】
印字ヘッド1は、加振器11、ノズル12、帯電電極13、帯電検出センサ14、偏向電極15およびガター16を内部に収容し、かつ、インク粒の飛翔空間S1を区画する筐体10を備えている。この印字ヘッド1は、偏向電極15によって偏向されたインク粒を、飛翔空間S1を介して筐体10の外部に吐出することができる。
【0105】
印字ヘッド1の外形状をなす筐体10の下面には、偏向電極15により偏向されたインク粒を外部に吐出するための吐出口Aが開口している(
図3参照)。インク粒は、この吐出口Aから筐体10の下方へ向けて吐出されるようになっている。
【0106】
図1に示すように、印字時における印字ヘッド1は、例えば支持部材2によって支持されている。支持部材2によって支持された状態の印字ヘッド1は、その吐出口Aが被印字物Wの印字面に対して上方向から対向するように配置される。この場所が、インクジェット記録装置Iにより印字を行う際の印字ヘッド1の設置場所の一例である。
【0107】
以下、印字ヘッド1をなす各部について、順番に説明をする。なお、以下の記載において「上下方向」とは、鉛直方向に沿った方向を指す。例えば、
図3の紙面上方が「上方向」に相当し、同図の地面下方が「下方向」に相当する。
【0108】
(加振器11)
図3に例示するように、加振器11は、筐体10の飛翔空間S1における上端付近に配置されている。本実施形態に係る加振器11には、印字用インクに上下振動を付与(加振)するためのデバイス(例えばピエゾ素子)が内蔵されている。この加振器11は、接続ケーブル107を介して印字用インクが供給されるように構成されており、そうして供給された印字用インクを加振することができる。加振器11によって加振された印字用インクは、ノズル12へと供給される。
【0109】
なお、図示は省略したが、本実施形態に係る加振器11は接地されている。
【0110】
(ノズル12)
図3に例示するように、ノズル12は、加振器11の下端部に接続されており、その開口端(印字用インクの噴射口)を下方に向けた姿勢で配置されている。ノズル12の開口端から、加振器11によって加振された印字用インクを吐出することができる。このノズル12には、例えばインクジェット記録装置Iの立下時に印字ヘッド1内部の圧力を抜くためのリターン経路として、
図5に示す吸引経路47が接続されている(
図5参照)。この吸引経路47を通じて、ノズル12から溶剤を吸引させることもできる。
【0111】
ここで、加振器11によって加振されずにノズル12から吐出された印字用インクは、軸状のいわゆる“インク軸”となって流れる。一方、加振された印字用インクは、ノズル12から吐出された直後に粒子化されて、いわゆる“インク粒”となる。ノズル12から吐出された印字用インクは、ノズル12から吐出された直後は軸状であるが、ノズル12から離れるに従って粒子状になる。この粒子状になる位置をブレークポイントと呼ぶ。ノズル12から吐出された印字用インク(インク粒)は、後述する帯電電極13を通過する。
【0112】
なお、印字ヘッド1を洗浄すべく供給された溶剤は、加振器11とノズル12を順番に通過して、ノズル12の先端部から吐出される。そうして吐出される溶剤は、軸状に流れて、帯電電極13を通過する。
【0113】
(帯電電極13)
図3に例示するように、帯電電極13は、伝導性を有する一対の金属板によって構成されており、ノズル12の下方に配置されている。ここで、帯電電極13を構成する一対の金属板は、それぞれの長手方向を上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向かい合うような姿勢で筐体10に固定されている。一対の金属板の間隔は、ノズル12から吐出されたインクの粒径よりも大きく設定されており、ノズル12から吐出された印字用インクが一対の金属板の間を通過することになる。なお、帯電電極13を構成する金属板は、一対である必要はない。
【0114】
本実施形態に係る帯電電極13には、少なくとも印字動作を実行するときに電位(正電位)が印加される。これにより、加振器11と帯電電極13との間に電位差を生じさせ、帯電電極13を通過するインク粒を帯電させることが可能となる。各インク粒を帯電させるために、本実施形態に係る帯電電極13は、ノズル12から吐出された印字用インクが粒子化するブレークポイント付近に配置される。
【0115】
帯電電極13には、コントローラ100によって制御可能なパルス電位が印加される。ここで、帯電電極13に対して相対的に高い電圧を印加した場合は、それよりも低い電圧を印加した場合に比して、各インク粒の帯電量(負の電荷の大きさ)が大きくなる。各インク粒は、その帯電量が大きい場合には、それが小さい場合に比して、偏向電極15によって大きく偏向される。コントローラ100がパルス電位の大きさを調整することで、インク粒の偏向量を制御することができる。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14の側方を通過した偏向電極15へ至る。
【0116】
また、ノズル12から吐出される溶剤は、帯電されることなく、帯電検出センサ14の側方を通過して偏向電極15へ至る。
【0117】
(帯電検出センサ14)
図3に例示するように、帯電検出センサ14は、帯電電極13の下方に配置されている。詳しくは、帯電検出センサ14は、帯電電極13を構成する金属板(
図3に示す例では、紙面右側の金属板)の下方において、インク粒が飛翔する際の軌跡と交わらないように配置されている。帯電検出センサ14をこのように配置することで、インク粒と帯電検出センサ14との衝突を避けることが可能となる。
【0118】
また、本実施形態に係る帯電検出センサ14は、筐体10の内部に設けた回路基板に接続されている。帯電検出センサ14は、その側方を通過するインク粒の帯電状態を検出することができる。帯電検出センサ14による検出結果は、検出信号として制御部101に出力される。この検出信号に基づいて、制御部101は、各インク粒が適切に帯電しているか否かを判定することができる。
【0119】
(偏向電極15)
図3に例示するように、偏向電極15は、伝導性を有する一対の金属板(いわゆる「対向電極」)によって構成されており、帯電電極13および帯電検出センサ14の下方に配置されている。ここで、一対の金属板は、それぞれの長手方向を略上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向い合うような姿勢で筐体10に固定されている。帯電電極13を構成する一対の金属板の間を通過したインク粒は、偏向電極15を構成する一対の金属板の間を通過することになる。
【0120】
偏向電極15には、コントローラ100によって制御可能な電圧が印加される。これにより、偏向電極15を構成する一対の金属板の間には電位差が生じることになる。この電位差によって、インク粒の帯電量に応じて、そのインク粒の飛翔方向を偏向させることができる。インク粒の飛翔方向は、偏向電極15を構成する一対の金属板の並び方向に沿って偏向され得る。
【0121】
すなわち、帯電電極13および偏向電極15のそれぞれに印加される電圧を介して、インク粒の飛翔方向を制御することができる。そうして飛翔方向が制御されるインク粒には、偏向電極15により偏向されたものと、偏向電極15により偏向されないもの(非偏向とされたもの)と、が含まれる。このうち、偏向電極15により偏向されたインク粒が被印字物Wの印字に関与する。偏向電極15により偏向されたインク粒は、筐体10の下面に設けた吐出口Aから吐出されて、被印字物Wに着弾する。
【0122】
一方、偏向電極15により非偏向とされたインク粒は、被印字物Wの印字に関与しない。こうしたインク粒、または、そもそも粒子化されていない軸状の印字用インクは、
図3において鎖線で例示したように、ガター16の中に到達する。同様に、印字ヘッド1におけるノズル12等の洗浄に用いられて偏向電極15を通過した溶剤もまた、ガター16の中に至る。
【0123】
(ガター16)
図3に例示するように,ガター16は、その開口16aを上方に向けた曲管によって構成されており、偏向電極15の下方に配置されている。本実施形態に係るガター16は、被印字物Wの印字に関与しない印字用インクと、ノズル12を通過した溶剤(具体的には、ノズル12から吐出された溶剤)と、を回収することができる。
【0124】
詳しくは、本実施形態においては、ガター16の開口16aと、ノズル12の開口端とが互いに向かい合うように配置されており、ガター16の開口16aの真上にノズル12の開口端が位置している。このように配置することで、ノズル12の開口端から鉛直方向に沿って流れた流体、飛翔した流体を、ガター16の開口16aから受け入れることが可能になる。
【0125】
ガター16には、電荷式やサーミスタ式のガターセンサ16bが設けられている(
図3参照)。ガターセンサ16bは、印字用インクがガター16に入っているか否かを検知し、印字用インクがガター16に入っていればインク軸の調整が完了していると判定し、印字用インクがガター16に入っていなければインク軸の調整が完了していないと判定することができるようになっている。ガターセンサ16bは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に信号を出力するように構成されている。
【0126】
ガター16によって回収された印字用インクまたは溶剤は、インク供給管44、溶剤供給管54等を通じてコントローラ100に送り戻されて、インクタンク106に蓄えられるようになっている。
【0127】
以下、インク、溶剤及び印字用インクの流れについて詳細に説明するために、インク供給管44および溶剤供給管55に係る構成について、
図4を用いて説明をする。
【0128】
<インク及び溶剤の流通経路について>
前述のように、インク供給管44は、インクカートリッジ41からのインクをインクタンク106に供給するとともに、そのインクタンク106からの印字用インクを印字ヘッド1に供給する。一方、溶剤供給管54は、溶剤カートリッジ51からの溶剤を、印字ヘッド1およびインクタンク106のそれぞれに供給する。
【0129】
-第1経路R1-
インク供給管44は、例えば、インクカートリッジ41からインクタンク106にインク(濃度調整前のインク)を送り込むための経路(第1経路R1)を構成する。
【0130】
図5に示すように、本実施形態に係る第1経路R1は、インク流通管としての第1インク管44aと、第2インク管44b及び第3インク管44cと、によって構成されている。第1インク管44a、第2インク管44b及び第3インク管44cは、本実施形態ではいずれもコントローラ100内に配置されている。
【0131】
第1インク管44aは、中空針43に接続された一端部と、第2インク管44b及び第3インク管44cに分岐する他端部(
図5の分岐部B1を参照)と、を有している。インク流通管としての第1インク管44aは、第2インク管44b及び第3インク管44cを介してインク用中空針43及びインクタンク106を接続しており、インク用中空針43からインクタンク106までインクを流通させる。なお、本実施形態では第3インク管44cを介してインクをインクタンク106に導入しているが、例えば第2インク管44bを介して導入してもよい。この場合、インクは粘度計46を経由せずにインクタンク106に導入される。
【0132】
なお、第1インク管44a、第2インク管44b及び第3インク管44cという分類は、便宜上のものに過ぎない。例えば、第1インク管44aと第2インク管44bを一本のインク流通管とみなしてもよい。その場合、第1インク管44a及び第2インク管44bによって構成されるインク流通管は、インク用中空針43及びインクタンク106を直に接続することになる。
【0133】
また、第1インク管44aの途中には、第1ポンプP1が配置されている。この第1ポンプP1は、インク用中空針43から第1インク管44aに向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプである。
【0134】
また、インク用中空針43と第1ポンプP1との間の第1インク管44aには、合流部45が配置されている。この合流部45は、溶剤又はインクを第1インク管44aにおいて合流させるように構成されている。特に、
図5に例示する合流部45は、溶剤供給管54の第3溶剤管54cと接続されており、第1インク管44aを流れるインクに対し、溶剤及びインクのうち溶剤を合流させるように構成されている。また、第1インク管44aにおいて合流させるインクは、印字用インクであってもよい。
【0135】
また、合流部45と第1ポンプP1との間の第1インク管44aには、第8バルブV8が配置されている。この第8バルブV8は、第1インク管44aの流路を開閉する開閉弁である。
【0136】
第2インク管44bは、第1インク管44aの前記他端部(分岐部B1)と、インクタンク106と、を接続している。第2インク管44bの途中には、第1バルブV1が配置されている。この第1バルブV1は、第2インク管44bの流路を開閉する開閉弁である。
【0137】
第3インク管44cは、第1インク管44aの前記他端部(分岐部B1)と、インクタンク106と、を接続している。第3インク管44cの途中には、第11バルブV11が配置されている。この第11バルブV11は、第3インク管44cの流路を開閉する開閉弁である。
【0138】
また、第11バルブV11とインクタンク106との間の第3インク管44cには、粘度計46が配置されている。この粘度計46は、第3インク管44cを流れるインク又は印字用インクの流量を検出し、その流量に基づいて粘度を計測する。粘度計46は、その計測結果に対応した検出信号を制御部101に入力する。なお、本実施形態では、インク流量を検出する原理からなる粘度計46を用いているが、本発明はこれに限られず、例えば、インクの充填と排出とを繰り返し、インク排出時の時間に基づき粘度を計測する粘度計46を用いても構わない。
【0139】
インクカートリッジ41からのインクは、第1ポンプP1の作動状況と、第1バルブV1、第5バルブV5及び第8バルブV8の開閉状況とに基づいて、インク用中空針43、インクリザーバ42、第1インク管44a、第2インク管44b及び第3インク管44cを順番に通過して、インクタンク106に供給される。
【0140】
インクタンク106への供給に係る制御(吸引制御)については、後述する。
【0141】
-第2経路R2-
一方、溶剤供給管54は、インク供給管44の一部要素とともに、溶剤カートリッジ51からインクタンク106に溶剤を送り込むための経路(第2経路R2)を構成する。
【0142】
図5に示すように、本実施形態に係る第2経路R2は、溶剤供給管54の第1溶剤管54aと、第1インク管44aの一部(
図5の接続部B2から分岐部B1にかけての部分)と、第2インク管44b及び第3インク管44cの全部とによって構成されている。第1溶剤管54aは、本実施形態ではコントローラ100内に配置されている。
【0143】
前述のように、インク供給管44及び溶剤供給管54という名称は、各流通管の一部の側面に着目して付されたものであり、便宜上のものに過ぎない。第1インク管44a、第2インク管44b及び第3インク管44cのように、インクの流通と、溶剤の流通を兼ね備えていてもよい。各流通管は、一以上の経路の構成に寄与していてもよい。
【0144】
第1溶剤管54aは、インク用中空針43に接続された一端部と、第1インク管44aに接続された他端部(接続部B2)と、を有している。溶剤供給管54における第1溶剤管54aの途中には、第13バルブV13が配置されている。この第13バルブV13は、第1溶剤管54aの流路を開閉する開閉弁である。
【0145】
溶剤カートリッジ51からの溶剤は、第1ポンプP1の作動状況と第13バルブV13の開閉状況とに応じて、溶剤用中空針53、溶剤リザーバ52及び第1溶剤管54aを順番に通過して第1インク管44aの中途の部位(
図5の接続部B2を参照)に供給される。この部位に供給された溶剤は、第1バルブV1及び第11バルブV11の開閉状況に応じて、第1インク管44a、第2インク管44b及び第3インク管44cを順番に通過して、インクタンク106に供給される。
【0146】
第1経路R1を通じて供給されたインクは、第2経路R2を通じて供給された溶剤によって濃度調整される。これにより、インクタンク106内には、印字用インクが蓄えられることになる。
【0147】
-第3経路R3-
インク供給管44に関する説明に戻ると、このインク供給管44は、インクタンク106の貯留物(印字用インク)をコントローラ100内で循環及び撹拌するための経路(第3経路R3)も構成する。
【0148】
図5に示すように、本実施形態に係る第3経路R3は、インク供給管44の第4インク管44d及び第5インク管44eと、第1インク管44aの一部(
図5の接続部B2から分岐部B1にかけての部分)と、第2インク管44b及び第3インク管44cの全部とによって構成されている。第4インク管44d及び第5インク管44eは、本実施形態ではいずれもコントローラ100内に配置されている。
【0149】
第4インク管44dは、インクタンク106に接続された一端部と、第1インク管44aに接続された他端部(接続部B2)と、を有している。第4インク管44dの途中には、第9バルブV9が配置されている。この第9バルブV9は、第4インク管44dの流路を開閉する開閉弁である。
【0150】
第5インク管44eは、インクタンク106に接続された一端部と、第1インク管44aに接続された他端部(接続部B2)と、を有している。第5インク管44eの途中には、第5バルブV5が配置されている。この第5バルブV5は、第5インク管44eの流路を開閉する開閉弁である。
【0151】
なお、第4インク管44dとインクタンク106との接続位置(第4インク管44dによる印字用インクの吸引位置)は、インクタンク106の高さ方向において、第5インク管44eとインクタンク106との接続位置(第5インク管44eによる印字用インクの吸引位置)よりも高くなるように配置されている。
【0152】
インクタンク106内の印字用インクは、第1ポンプP1の作動状況と、第1バルブV1、第5バルブV5、第9バルブV9及び第11バルブV11の開閉状況とに基づいて、第4インク管44d又は第5インク管44eによって吸い出された後、第1インク管44aの一部(
図5の接続部B2から分岐部B1にかけての部分)と、第2インク管44b及び第3インク管44cと、を順番に通過してインクタンク106に送り戻される。これにより、コントローラ100内で印字用インクが循環する。
【0153】
また、単にコントローラ100内で循環させるばかりでなく、高さの異なる2箇所から印字用インクを吸い出すように構成することで、インクタンク106内で印字用インクを撹拌することができる。これにより、印字用インクを液状に保つことができる。この構成は、インクに顔料インクを用いる場合に、取り分け有効となる。
【0154】
-第4経路R4-
インク供給管44はさらに、インクタンク106からノズル12に印字用インクを送り込むとともに、ガター16からインクタンク106に印字用インクを送り戻すための経路(第4経路R4)を構成する。
【0155】
図5に示すように、本実施形態に係る第4経路R4は、インク供給管44の第6インク管44f及び第7インク管44gによって構成されている。第6インク管44f及び第7インク管44gは、双方ともコントローラ100及び印字ヘッド1を接続している。
【0156】
第6インク管44fは、インクタンク106に接続された一端部と、ノズル12に接続された他端部と、を有している。第6インク管44fの途中には、第3ポンプP3が配置されている。この第3ポンプP3は、インクタンク106から第6インク管44fに向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプである。
【0157】
また、第3ポンプP3とノズル12との間の第6インク管44fには、第14バルブV14が配置されている。この第14バルブV14は、第6インク管44fの流路を開閉する開閉弁である。
【0158】
第7インク管44gは、ガター16に接続された一端部と、インクタンク106に接続された他端部と、を有している。第7インク管44gの途中には、第4ポンプP4が配置されている。この第4ポンプP4は、ガター16から第7インク管44gに向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプである。
【0159】
また、ガター16と第4ポンプP4との間の第7インク管44gには、第10バルブV10が配置されている。この第10バルブV10は、第7インク管44gの流路を開閉する開閉弁である。
【0160】
インクタンク106内の印字用インクは、第3ポンプP3の作動状況と第14バルブV14の開閉状況とに応じて第6インク管44fによって吸い出され、ノズル12から吐出される。ノズル12から吐出された印字用インクは、印字時には被印字物Wの表面に着弾し、非印字時にはガター16によって回収される。後者の印字用インクは、第4ポンプP4の作動状況及び第10バルブV10の開閉状況に応じて第7インク管44gによって吸い出され、インクタンク106に送り戻される。これにより、コントローラ100と印字ヘッド1との間で印字用インクが循環することになる。
【0161】
-第5経路R5-
一方、溶剤供給管54は、インク供給管44の一部要素とともに、溶剤カートリッジ51からノズル12に洗浄用の溶剤を送り込むための経路(第5経路R5)を構成する。
【0162】
図5に示すように、本実施形態に係る第5経路R5は、溶剤供給管54における、第1溶剤管54aの一部(溶剤用中空針53との接続部を含んだ上流端部)及び第2溶剤管54bと、第6インク管44fの一部(ノズル12との接続部を含んだ下流端部)と、によって構成されている。第2溶剤管54bは、コントローラ100及び印字ヘッド1を接続している。
【0163】
第2溶剤管54bは、溶剤用中空針53及び第13バルブV13の間の第1溶剤管54aに接続された一端部と、第14バルブV14及びノズル12の間の第6インク管44fに接続された他端部と、を有している。溶剤供給管54における第2溶剤管54bの途中には、第2ポンプP2が配置されている。この第2ポンプP2は、溶剤用中空針53から溶剤供給管54(特に第2溶剤管54b)に向けて流れを生じさせるよう吸引するための吸引ポンプである。
【0164】
また、第2ポンプP2とノズル12との間の第2溶剤管54bには、第12バルブV12が配置されている。この第12バルブV12は、溶剤供給管54における第2溶剤管54bの流路を開閉する開閉弁である。
【0165】
溶剤カートリッジ51からの溶剤は、第2ポンプP2の作動状況と第12バルブV12の開閉状況とに応じて、溶剤用中空針53、溶剤リザーバ52、第1溶剤管54a及び第2溶剤管54bを順番に通過して、第6インク管44fの中途の部位(第14バルブV14とノズル12との間の部位)に供給される。この部位に供給された溶剤は、ノズル12から吐出される。この溶剤が、印字ヘッド1を洗浄する。
【0166】
-第6経路R6-
溶剤供給管54はさらに、溶剤カートリッジ51から、合流部45を介してインク供給管44及びインク用中空針43に溶剤を送り込むための経路(第6経路R6)を構成する。
【0167】
図5に示すように、本実施形態に係る第6経路R6は、溶剤供給管54における、第1溶剤管54aの一部と、第2溶剤管54bの一部と、第3溶剤管54cと、によって構成されている。なお、ここでいう「第1溶剤管54aの一部」とは、溶剤用中空針53から第1溶剤管54a及び第2溶剤管54bの接続部B3までの部分をいう。ここでいう「第2溶剤管54bの一部」とは、第1溶剤管54a及び第2溶剤管54bの接続部B3から、第2ポンプP2及び第12バルブV12の間の位置までの部分(
図5の接続部B4を参照)をいう。第6経路R6は、第2ポンプP2下流側の第5経路R5から分岐している。第3溶剤管54cは、本実施形態ではコントローラ100内に配置されている。
【0168】
第3溶剤管54cは、第2ポンプP2及び第12バルブV12間の第2溶剤管54bに接続された一端部と、合流部45に接続された他端部と、を有している。
【0169】
この第3溶剤管54cは、第1溶剤管54aの前記一部と、第2溶剤管54bの前記一部とともに、本実施形態における「溶剤流通管」を構成している。第3溶剤管54cは、溶剤リザーバ52が溶剤カートリッジ51を受け入れたとき、第1溶剤管54a及び第2溶剤管54bを介して、溶剤カートリッジ51内の溶剤を合流部45まで流通させる。
【0170】
ここで、前述の第2ポンプP2は、前記溶剤流通管を構成する第2溶剤管54bの途中に配置されている。この第2ポンプP2は、第2溶剤管54bから、合流部45及び第1インク管44aを介してインク用中空針43に向けて流れを生じさせるように作動する溶剤ポンプとみなすこともできる。
【0171】
また、合流部45と第2ポンプP2との間の第2溶剤管54bには、第18バルブV18が配置されている。この第18バルブV18は、第2溶剤管54bの流路を開閉する第2の開閉弁である。
【0172】
第6経路R6に関連したインク又は溶剤の流れについては、後述する。
【0173】
-インクの吸引に関連した経路-
コントローラ100は、インクの吸引に関連した経路も有している。例えば、コントローラ100は、ノズル12に接続された吸引経路47を有している。吸引経路47には第6バルブV6が設けられている。例えば非印字時に、この第6バルブV6を開いた状態で第1ポンプP1を作動させることで、吸引経路47を介してインクを吸引し、吸引したインクをコントローラ100に送り戻すことができる。
【0174】
<インクの吸引制御>
-吸引制御の基本概念-
前述した第1経路R1~第6経路R6のうち、第1経路R1は、インクタンク106へのインクの供給に関連している。インクの供給は、前述の供給制御部101aによって制御される。この供給制御部101aは、所定の吸引制御を実行することで、インクタンク106にインクを供給する。
【0175】
具体的に、本実施形態に係る供給制御部101aは、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からインクを取り出す際に、中空針としてのインク用中空針43からインク流通管としての第1インク管44aに向けて流れを生じさせるように吸引制御を実行する。
【0176】
ここで、「インク用中空針43から第1インク管44aに向けて流れを生じさせること」とは、第1インク管44aの少なくとも一部(例えば上流端部)が、インク用中空針43の外部、又は、インクカートリッジ41の内部空間と比して、負圧となるように制御することに等しい。
【0177】
詳細には、供給制御部101aは、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からインクを取り出す際には、開閉弁としての第8バルブV8を開状態とし、かつ吸引ポンプとしての第1ポンプP1を作動させることで吸引制御を実行する。第8バルブV8を開状態とした上で第1ポンプP1を作動させることで、前述の如き負圧を発生させる上で有利になる。なお、吸引制御の際に、第1バルブV1及び第11バルブV11等の開閉弁も開状態としてもよい。
【0178】
さらに詳細には、供給制御部101aは、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からインクを取り出す際には、第8バルブV8を開状態とし、第2の開閉弁としての第18バルブV18を閉状態とし、かつ第1ポンプP1を作動させることで吸引制御を実行する。第18バルブV18を閉状態としておくことで、溶剤カートリッジ51からの溶剤の吸引を防ぐことができる。
【0179】
-吸引制御の具体例-
以下、吸引制御の具体例について、
図6A及び
図6B、並びに、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。ここで、
図6Aは、吸引制御の実行条件を例示するフローチャートである。
図6Bは、吸引制御の具体例を示すフローチャートである。
図7Aは、インク流通管が閉塞していないときに、吸引制御によって生じる流れを説明するための図である。
図7Bは、インク流通管が閉塞しているときに、吸引制御によって生じる流れを説明するための図である。
【0180】
まず、
図6AのステップSA1において、供給制御部101aは、インクタンク106へのインクの供給が必要か否かを判定する。この判定は、例えば貯留センサ106aの検出信号に基づいて行うことができる。この判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSA2に進める。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、
図6Aに係るフローを終了する。
【0181】
なお、例えば、貯留センサ106aの検出信号に基づいてインクタンク106の液位を表示部103aに表示し、その表示内容に基づいて、ユーザが吸引制御の要否を判断するように構成してもよい。その場合、前記ステップSA1は不要となる。
【0182】
続くステップSA2において、供給制御部101aは、インクリザーバ42にインクカートリッジ41が取り付けられているか否かを判定する。この判定は、例えば第1取付センサSW1の検出信号に基づいて行うことができる。この判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSA3に進める。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、
図6Aに係るフローを終了する。
【0183】
続くステップSA3において、供給制御部101aは、吸引制御を実行する。吸引制御の詳細は、
図6BのステップSB1~ステップSB9に示す通りである。なお、ステップSB1が開始される前、第1バルブV1等、全ての開閉弁は閉状態にあるものとする。
【0184】
まず、
図6BのステップSB1において、供給制御部101aは第1ポンプP1を作動させる(吸引ポンプの運転開始)。
【0185】
続くステップSB2において、供給制御部101aは、吸引用の開閉弁を開く。ステップSB2で開かれる開閉弁には、第8バルブV8と、第1バルブV1と、必要に応じて第11バルブV11が含まれる。
【0186】
第8バルブV8、第1バルブV1及び第11バルブV11を開状態にしたことで、
図7Aに太線で示したように、インクカートリッジ41とインクタンク106を接続する第1経路R1が構築される。その状態で第1ポンプP1を作動させることで、インクの吸引が開始される。インクカートリッジ41から吸引されたインクは、第1経路R1を介してインクタンク106に供給される。なお、第11バルブV11を開状態とすることは、必須ではない。
【0187】
そこで、続くステップSB3において、供給制御部101aは、インクの吸引開始に伴って、その吸引時間のカウントを開始する。このカウントは、制御部101に内蔵されたタイマ(不図示)によって行うことができる。
【0188】
続くステップSB4において、供給制御部101aは、インクタンク106におけるインクの収容量(タンク貯留量)が、事前に設定された規定量を上回ったか否かを判定する。この判定は、例えば貯留センサ106aの検出信号に基づいて行うことができる。この判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSB7に進める。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSB5に進める。
【0189】
ステップSB5において、供給制御部101aは、吸引時間が、事前に設定された規定時間を上回ったか否かを判定する。この判定は、前述のタイマによって行うことができる。この判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSB6に進める。この場合、制御プロセスはステップSB6からステップSB7に進む。一方、ステップSB5の判定がNOの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSB4に戻す。ステップSB5からステップSB4に戻ったときに、供給制御部101aは前記吸引時間をカウントアップする。
【0190】
つまり、供給制御部101aは、タンク貯留量が規定量を超えたとき、又は、タンク貯留量が規定量を超えていないにも関わらず吸引時間が規定時間を超えたときに、制御プロセスをステップSB7に進める。
【0191】
ここで、制御プロセスがステップSB6に進んだ場合とは、吸引時間が規定時間を超えたにも関わらず、タンク貯留量が規定量に達していないケースに相当する。この場合、
図6Bに示すように、第1経路R1の途中でインク詰まり、ひいてはインク詰まりによる閉塞が発生したと判断することができる。貯留センサ106aは、インク用中空針43と、該インク用中空針43及び合流部45の間の第1インク管44aと、における閉塞状態を検知する検知部として機能する。なお、インク供給管44に圧力計を設けるとともに、その圧力計によって検知部を構成してもよいし、前記粘度計46によって検知部を構成してもよい。例えば第1経路R1の途中で閉塞が発生した場合、インクの供給が滞ることから、想定以上の粘度を有する印字用インクが生成されることになる。この粘度の変化に基づいて、前記閉塞が発生したか否かを判定することができる。また、インクの充填と排出を繰り返すように構成された粘度計46を用いた場合、第1経路R1の途中で閉塞が発生すると、粘度計46へのインクの充填時間が増大することになる。この場合、その充填時間の変化に基づいて、前記閉塞が発生したか否かを判定することができる。
【0192】
こうした閉塞は、
図4を用いて説明したように、インク用中空針43の内部空間、及び、その近傍で生じ得る。なお、ここでいう「インク用中空針43の近傍」には、インク用中空針43と直に接続された第1インク管44aにおける、その上流側部分(例えば、合流部45に対して上流側の流路)が含まれる。
【0193】
ステップSB6において、供給制御部101aは、前述のような閉塞が検知されたこと(閉塞検知)をユーザに表示する。なお、ステップSB6は必須ではない。前述したように、表示部103aに表示されたインクタンク106の液位に基づいて、ユーザが閉塞の有無を判断してもよい。その場合、このステップSB6は不要となる。
【0194】
その後、ステップSB7において、供給制御部101aは、インクの吸引を終了すべく、吸引時間のカウントを終了する。
【0195】
続くステップSB8において、供給制御部101aは、ステップSB1で作動させた第1ポンプP1の作動を停止する(吸引ポンプの運転停止)。その後、ステップSB9において、供給制御部101aは、第8バルブV8及び第1バルブV1等、ステップSB2で開いた吸引用の開閉弁を閉じる。ステップSB9が完了すると、供給制御部101aは、
図6A及び
図6Bに示すフローを終了する。
【0196】
<インクの吹出制御>
-吹出制御の基本概念-
図7Bに例示したように、インク用中空針43の内部空間、及び、該インク用中空針43近傍の第1インク管44aの内部空間は、吸引制御時に閉塞物mによって閉塞され得る。供給制御部101aは、所定の吹出制御を実行することで、そうした閉塞を解消するように構成されている。
【0197】
具体的に、本実施形態に係る供給制御部101aは、流れの経路を逆流洗浄する際には、インク流通管としての第1インク管44aから、中空針としてのインク用中空針43に向けて流れを生じさせる吹出制御を実行する。
【0198】
なお、ここでいう「逆流」とは、吸引制御における流れ方向に対して逆向きの流れ、つまり、インク用中空針43から第1インク管44aに向かう流れに対して逆向きの流れを言う。
【0199】
また、「第1インク管44aからインク用中空針43に向けて流れを生じさせること」とは、第1インク管44aの少なくとも一部(例えば上流端部)が、インク用中空針43の外部、又は、インクリザーバ42に装着されているインクカートリッジ41若しくは溶剤カートリッジ51の内部空間と比して、正圧となるように制御することに等しい。
【0200】
こうした逆向きの流れによって、インク用中空針43に圧力(特に、前述の正圧)が加わる。この圧力が、インク用中空針43の内部空間、及び、該インク用中空針43近傍の第1インク管44aの内部空間に詰まっている閉塞物mを逆向きに押し出す。これにより、それらの閉塞物mを、インク用中空針43が現在アクセスしているインクカートリッジ41内に排出することができる。なお、閉塞物mの排出先については、空のインクカートリッジ41を用いてもよいし、インクが収容されているインクカートリッジ41を用いてもよいし、溶剤が収容されていない空の溶剤カートリッジ51を用いてもよい。
【0201】
空のインクカートリッジ41を用いた場合、インクが収容されたインクカートリッジ41を用いた場合よりも内容量に余裕があるため、より長時間にわたって吹出制御を行うことができる。
【0202】
一方、インクが収容されたインクカートリッジ41を用いた場合、インクカートリッジ41を付け替える手間を省くことができる。後述のように溶剤を逆流させた場合、インクカートリッジ41内の濃度が変化するものの、印字前にインクタンク106で濃度調整されることになるため、印字への影響を最小限に抑えることができる。
【0203】
別の観点から言い換えると、この供給制御部101aは、開閉弁としての第8バルブV8によって第1インク管44aの流路が閉止された状態で、合流部45を介してインク用中空針43に溶剤又はインクを供給する。すなわち、この供給制御部101aは、流れの経路を逆流洗浄する際には、開閉弁としての第8バルブV8を閉状態とし、かつ合流部45を介して溶剤又はインクを供給することで吹出制御を実行する。第8バルブV8を開状態とし、かつ、合流部45を介して第1インク管44aに溶剤又はインクを供給することで、その溶剤又はインクによって、吸引制御時に生じた閉塞を解消する上で有利になる。
【0204】
なお、
図5、
図7A及び
図7B等に例示した構成では、合流部45を介して溶剤が供給されるようになっているが、本開示は、そうした構成には限定されない。後述の変形例のように、合流部45を介してインク又は印字用インクを供給してもよい。
【0205】
さらに詳細には、供給制御部101aは、溶剤によって流れの経路を逆流洗浄する際には、開閉弁としての第8バルブV8を閉状態とし、かつ第2の開閉弁としての第18バルブV18を開状態とし、かつ溶剤ポンプとしての第2ポンプP2を作動させることで吹出制御を実行する。第8バルブV8を閉状態としかつ第18バルブV18を開状態とした上で第2ポンプP2を作動させることで、合流部45からインクタンク106に向かう流れを生じさせることなく、前述の如き正圧を発生させることができる。
【0206】
-吹出制御の具体例-
以下、吹出制御の具体例について、
図8A及び
図8B、
図9A及び
図9B、
図10並びに
図11を参照して説明する。ここで、
図8Aは、吹出制御の実行条件を例示するフローチャートであり、
図8Bは、吹出制御の具体例を示すフローチャートである。また、
図9Aは、閉塞解消前に、吹出制御によって生じる流れを説明するための図であり、
図9Bは、閉塞解消後に、吹出制御によって生じる流れを説明するための図である。また、
図10は、吹出制御前の第1メンテナンス画面200を例示する図であり、
図11は、吹出制御後の第2メンテナンス画面300を例示する図である。
【0207】
まず、
図8AのステップSC1において、供給制御部101aは、
図10に示すような第1メンテナンス画面200が表示部103aに表示されているか否かを判定する。この判定は、例えば制御部101から表示部103aに入力される制御信号に基づいて行うことができる。この判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSA2に進める。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、
図8Aに係るフローを終了する。
【0208】
ここで、第1メンテナンス画面200とは、
図10に示すように吹出制御の実行手順200aを文章化して表示した画面である。第1メンテナンス画面200は、例えば操作部103bを操作することで、表示部103aに表示させることができる。
【0209】
この第1メンテナンス画面200には、第1の手順として、「インクリザーバに空のカートリッジを装着する。」ことが表示されている。ユーザは、第1の手順にしたがって、閉塞が生じたインク用中空針43に、空のインクカートリッジ41又は空の溶剤カートリッジ51を付け替える。なお、吹出制御に空のインクカートリッジ41又は空の溶剤カートリッジ51を使用しない場合、この第1の手順の遂行を省略したり、表示自体を省略したりしてもよい。
【0210】
また、第1メンテナンス画面200には、第2の手順として、「開始ボタンをXX秒以上長押しする。」ことが表示されている。ユーザは、第2の手順にしたがって、前述の開始ボタン103cを所定時間以上にわたって押下する。
【0211】
そして、
図8AのステップSC1から続くステップSC2において、供給制御部101aは、前記第2の手順にしたがって、開始ボタン103cが押下されたか否かを検知する。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、
図8Aに係るフローを終了する。
【0212】
一方、ステップSC2の判定がYESの場合(つまり、開始ボタン103cの押下が検知された場合)、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSC3に進め、そのステップSC3で吹出制御を実行する。
【0213】
このように、本実施形態に係る供給制御部101aは、開始ボタン103cが操作されたことを契機として、吹出制御を開始するように構成されている。この供給制御部101aは、インクリザーバ42に受け入れられているインクカートリッジ41にインクが収容されているか否かにかかわらず、開始ボタン103cが操作されたことを契機として吹出制御を開始する。すなわち、吹出制御の開始時点でインクリザーバ42に受け入れられているインクカートリッジ41は、前述のように空であってもよいし、インクを収容していてもよい。
【0214】
なお、ステップSC1からステップSC2に進む前に、供給制御部101aは、前述のステップSA2と同様に、インクリザーバ42に、インクが収容されているインクカートリッジ41、空のインクカートリッジ41、又は空の溶剤カートリッジ51が取り付けられているか否かを判定してもよい。インクリザーバ42に空のインクカートリッジ41又は空の溶剤カートリッジ51が取り付けられていない場合、ステップSC3をスキップしてフローを終了するように構成してもよい。
【0215】
さらに、インクリザーバ42に、インクが収容されているインクカートリッジ41、空のインクカートリッジ41、又は空の溶剤カートリッジ51が取り付けられていない場合であっても、ユーザの手動入力に基づいて、吹出制御を強制的に実行させるように構成してもよい。
【0216】
なお、図示は省略するが、供給制御部101aは、検知部としての貯留センサ106aによる検知結果に基づいて吹出制御を開始してもよい。この場合、供給制御部101aは、吸引制御が終わり次第、吹出制御を自動的に開始することになる。貯留センサ106a以外のセンサ類を検知部に用いた場合も、同様に吹出制御を自動的に開始させることができる。吹出制御を自動的に開始させることで、インク用中空針43及びその近傍の第1インク管44aでのインク詰まりを、より確実に解消することができる。
【0217】
続くステップSC3において、供給制御部101aは、吹出制御を実行する。吹出制御の詳細は、
図8BのステップSD1~ステップSD9に示す通りである。ステップSD1が開始される前、第1ポンプP1~第4ポンプP4は、全て停止しているものとする。
【0218】
まず、
図8BのステップSD1において、供給制御部101aは、コントローラ100及び印字ヘッド1における全ての開閉弁を閉状態にする(全開閉弁を閉じる)。閉状態とする開閉弁は、第1バルブV1等、
図5を用いて説明した全ての開閉弁である。
【0219】
続くステップSD2において、供給制御部101aは、溶剤ポンプとしての第2ポンプP2を作動させる(溶剤ポンプの運転開始)。
【0220】
続くステップSD3において、供給制御部101aは、溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51が空ではないか否かを判定する。この判定は、吹出制御を行うための溶剤が確保されているか否かを判定するための処理である。この判定がNOの場合(溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51が空の場合)、供給制御部101aは、
図8Bに係るフローを終了する。この判定がYESの場合(溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51が空ではない場合)、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSD4に進める。
【0221】
なお、ステップSD3の判定は、溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51をユーザ自身が確認することで行うこともできる。その場合、供給制御部101aによって行われるステップSD3は、不要となる。
【0222】
続くステップSD4において、供給制御部101aは、逆流洗浄用の開閉弁を開く(開状態にする)。ステップSD4で開かれる開閉弁とは、第2の開閉弁としての第18バルブV18である。
【0223】
第18バルブV18を開状態にしたことで、
図9A及び
図9Bに太線で示したように、溶剤カートリッジ51とインク用中空針43を接続する第6経路R6が構築される。第2ポンプP2は既に作動していることから、第6経路R6の構築に伴って吹出制御が開始される。溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51から吸引された溶剤は、第6経路R6、より詳細には第6経路R6の合流部45を介して、合流部45とインク用中空針43との間の第1インク管44aに供給される。
【0224】
そこで、続くステップSD5において、供給制御部101aは、逆流洗浄の開始に伴って、その洗浄時間(吹き出し制御の実行時間)のカウントを開始する。このカウントは、前記タイマによって行うことができる。
【0225】
吹出制御が実行されることで、インク用中空針43及びその近傍では、
図9Bに示すように、吸引制御時とは逆向きの流れが生じる。
図9Bの例では、この流れは溶剤によるものである。これにより、前述のように、インク用中空針43に対し、該インク用中空針43から見て下流側から圧力(特に正圧)が加わる。この正圧は、吹出制御を継続するにしたがって徐々に上昇する。その圧力が所定以上に高まることで、インク用中空針43の内部空間、及び、該インク用中空針43近傍の第1インク管44aの内部空間に詰まっている閉塞物mが、インクリザーバ42に受け入れられているカートリッジ(インクが収容されているインクカートリッジ41、空のインクカートリッジ41、又は空の溶剤カートリッジ51)の内部に押し出される。これにより、閉塞物mによる閉塞が解除される。
【0226】
続くステップSD6において、供給制御部101aは、洗浄時間が、事前に設定された所定時間を上回ったか否かを判定する。この判定は、前述のタイマによって行うことができる。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、吹出制御を実行しつつ、ステップSD6の判定を繰り返す。ステップSD6でNOと判定されて該ステップSD6に戻ったときに、供給制御部101aは前記洗浄時間をカウントアップする。一方、ステップD6の判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSD7に進める。
【0227】
つまり、本実施形態に係る供給制御部101aは、所定期間にわたって吹出制御を実行するように構成されている。さらに、この供給制御部101aは、所定期間の経過後、その吹出制御が終了したことを報知部としての表示部103aにより報知する。この報知は、後述のステップSD10のように、第2ポンプP2の作動を停止したり、洗浄用の開閉弁(第18バルブV18)を閉じたりした後に実行してもよい。後述の変形例のように、報知すること自体を省略してもよい。
【0228】
その後、ステップSD7において、供給制御部101aは、逆流洗浄を終了すべく、洗浄時間のカウントを終了する。
【0229】
続くステップSD8において、供給制御部101aは、ステップSD2で作動させた第2ポンプP2の作動を停止する(洗浄ポンプの運転停止)。その後、ステップSD9において、供給制御部101aは、ステップSD1で開いた洗浄用の開閉弁(第18バルブV18)を閉じる。
【0230】
ステップSD10において、表示部103aは、供給制御部101aからの制御信号に基づいて表示態様を変更することで、吹出制御が終了したことをユーザに報知する。その際、供給制御部101aは、例えば溶剤リザーバ52に受け入れられている溶剤カートリッジ51の内容量の変化に基づいて、吹出制御による逆流洗浄が成功したことを報知したり、その逆流洗浄が失敗したことを報知したりしてもよい。
【0231】
ステップSD10が完了すると、供給制御部101aは、
図8Bに示すフローを終了し、制御プロセスを
図8AのステップSC4に進める。ステップSC4において、表示部103aは、供給制御部101aからの制御信号に基づいて表示態様を変更することで、
図11に例示する第2メンテナンス画面300を表示する。
【0232】
ここで、第2メンテナンス画面300とは、
図11に示すように吹出制御の完了後、インクリザーバ42にインクカートリッジ41を付け直す前に、ユーザに行わせるべき手順を文章化した第1の誘導情報300aと、その手順を動画化した第2の誘導情報300bと、を表示した画面である。この第2メンテナンス画面300は、吹出制御の完了後、表示部103aに自動的に表示させるように構成してもよい。
【0233】
第1の誘導情報300a及び第2の誘導情報300bは、双方とも、インクリザーバ42にインクカートリッジ41を付け直す前に、付け直されるインクカートリッジ41を振って、その内容物を撹拌するように誘導する情報である。第1の誘導情報300a及び第2の誘導情報300bには、例えば、インクカートリッジ41の撹拌時間を示す情報と、撹拌の程度(インクカートリッジ41を、どの方向に、どれだけのストロークで振るか)と、が含まれる。
【0234】
なお、
図11のように第1の誘導情報300a及び第2の誘導情報300bを同時に表示することは、必須ではない。第1の誘導情報300aが表示された後に、それに続いて第2の誘導情報300bが表示されるように構成してもよい。
【0235】
また、動画化された第2の誘導情報300bが再生されない限り、吸引制御の再開を制限してもよい。ここでいう「吸引制御の再開を制限する」とは、例えば、吸引制御を実行不可にすることである。
【0236】
このように、本実施形態に係る表示部103aは、供給制御部101aによる吹出制御が終了した場合、インクリザーバ42に受け入れられるインクカートリッジ41を撹拌するように誘導するための誘導情報(第1の誘導情報300a及び第2の誘導情報300b)を表示する。
【0237】
<吹出制御の変形例>
前記実施形態では、吹出制御に際して溶剤を流通させることでインク詰まりを解消するように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。以下に示す変形例のように、吹出制御に際してインクを流通させることでインク詰まりを解消してもよい。
【0238】
図12は、吹出制御の変形例を実現するためのコントローラ100’を示す
図5対応図である。
図13は、吹出制御の変形例における
図8B対応図である。また、
図14Aは、吹出制御の変形例における
図9A対応図であり、
図14Bは、吹出制御の変形例における
図9B対応図である。
【0239】
インクによる吹出制御を実現するために、変形例に係るコントローラ100’は、
図5のコントローラ100に対して一部の構成が相違している。
図12に示すように、変形例に係るコントローラ100’は、
図5等に例示した第3溶剤管54c及び第18バルブV18の代わりに、第2のインク流通管としての第8インク管44hと、第3の開閉弁としての第19バルブV19と、を有している。
【0240】
この変形例において、第8インク管44hは、インクタンク106に接続された一端部と、合流部45に接続された他端部と、を有している。第2のインク流通管としての第8インク管44hは、インクタンク106と合流部45との間を接続し、インクタンク106から合流部45まで印字用インクを流通させる。
【0241】
また、第8インク管44hの途中には、変形例に係る第3ポンプP3’が配置されている。変形例における第3ポンプP3’は、第8インク管44hから合流部45及び第1インク管44aを介してインク用中空針43に向けて流れを生じさせるように作動するインクポンプである。
【0242】
また、合流部45と第3ポンプP3’との間の第8インク管44hには、第19バルブV19が配置されている。この第19バルブV19は、第8インク管44hの流路を開閉する第3の開閉弁である。
【0243】
なお、変形例に係る第6インク管44f’は、第3ポンプP3’の配置変更に伴って、インクタンク106ではなく、第3ポンプP3’と第19バルブV19の間の第8インク管44hに接続されるようになっている。印字ヘッド1への印字用インクの供給時に第3ポンプP3’及び第6インク管44f’が果たす機能は、前記実施形態と同様である。
【0244】
この変形例において、供給制御部101aは、インクリザーバ42に受け入れられたインクカートリッジ41からインクを取り出す際、第8バルブV8を開状態としかつ第1ポンプP1を作動させるのに加えて、第3の開閉弁としての第19バルブV19を閉状態とすることで吸引制御を実行する。第19バルブV19を閉状態とすることが、前記実施形態における吸引制御と相違する。
【0245】
そして、供給制御部101aは、流れの経路を逆流洗浄する際には、第8バルブV8を閉状態としかつインクポンプを作動させるのに加えて、第19バルブV19を開状態とすることで吹出制御を実行する。第19バルブV19を閉状態とすることと、合流部45にインク又は印字用インクが供給されることが、前記実施形態における吹出制御と相違する。
【0246】
以下、吹出制御の変形例について、
図13、
図14A及び
図14Bを参照して具体的に説明する。まず、
図8Aに係る処理(吹出制御の実行条件に係る処理)については、前記実施形態と同様のため、説明を省略する。また、
図13のステップSE1が開始される前、第1ポンプP1、第2ポンプP2、第3ポンプP3’及び第4ポンプP4は、全て停止しているものとする。
【0247】
まず、
図13のステップSE1において、供給制御部101aは、コントローラ100及び印字ヘッド1における全ての開閉弁を閉状態にする(全開閉弁を閉じる)。閉状態とする開閉弁は、第1バルブV1等、
図12に示す全ての開閉弁である。
【0248】
続くステップSE2において、供給制御部101aは、インクポンプとしての第3ポンプP3’を作動させる(インクポンプの運転開始)。
【0249】
続くステップSE3において、供給制御部101aは、インクタンク106における印字用インクの貯留量(タンク貯留量)が、所定の第2規定量を上回っているか否かを判定する。この判定は、例えば貯留センサ106aの検出信号に基づいて行うことができる。また、ステップSE3において比較対象とされる第2規定量は、事前に設定されている。この判定は、吹出制御を行うためのインク又は印字用インクが確保されているか否かを判定するための処理である。この判定がNOの場合(インク又は印字用インクが不足している場合)、供給制御部101aは、
図13に係るフローを終了する。この判定がYESの場合(インク又は印字用インクが十分確保されている場合)、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSE4に進める。
【0250】
なお、ステップSE3の判定は、必須ではない。表示部103a等を通じて、ユーザ自身がタンク貯留量を確認してもよい。
【0251】
続くステップSE4において、供給制御部101aは、逆流洗浄用の開閉弁を開く(開状態にする)。ステップSE4で開かれる開閉弁とは、第3の開閉弁としての第19バルブV19である。
【0252】
第19バルブV19を開状態にしたことで、
図14A及び
図14Bに太線で示したように、インクタンク106とインク用中空針43を接続するインク又は印字用インクのための経路が構築される。第3ポンプP3’は既に作動していることから、この経路の構築に伴って吹出制御が開始される。インクタンク106から吸引されたインク又は印字用インクは、前記経路、より詳細には、当該経路中の途中に配置された合流部45を介して、該合流部45とインク用中空針43との間の第1インク管44aに供給される。
【0253】
そこで、続くステップSE5において、供給制御部101aは、逆流洗浄の開始に伴って、その洗浄時間(吹き出し制御の実行時間)のカウントを開始する。このカウントは、前記タイマによって行うことができる。
【0254】
吹出制御が実行されることで、インク用中空針43及びその近傍では、
図14Bに示すように、吸引制御時とは逆向きの流れが生じる。
図14Bの例では、この流れはインク又は印字用インクによるものである。これにより、インク用中空針43に対し、該インク用中空針43から見て下流側から圧力(特に正圧)が加わる。この正圧は、吹出制御を継続するにしたがって徐々に上昇する。その圧力が所定以上に高まることで、インク用中空針43の内部空間、及び、該インク用中空針43近傍の第1インク管44aの内部空間に詰まっている閉塞物mが、インクリザーバ42に受け入れられているカートリッジ(インクが収容されているインクカートリッジ41、空のインクカートリッジ41、又は空の溶剤カートリッジ51)の内部に押し出される。これにより、閉塞物mによる閉塞が解除される。
【0255】
続くステップSE6において、供給制御部101aは、洗浄時間が、事前に設定された所定時間を上回ったか否かを判定する。この判定は、前述のタイマによって行うことができる。この判定がNOの場合、供給制御部101aは、吹出制御を実行しつつ、ステップSE6の判定を繰り返す。ステップSE6でNOと判定されて該ステップSE6に戻ったときに、供給制御部101aは前記洗浄時間をカウントアップする。一方、ステップD6の判定がYESの場合、供給制御部101aは、制御プロセスをステップSE7に進める。
【0256】
つまり、本実施形態に係る供給制御部101aは、所定期間にわたって吹出制御を実行するように構成されている。その後、ステップSE7において、供給制御部101aは、逆流洗浄を終了すべく、洗浄時間のカウントを終了する。
【0257】
続くステップSE8において、供給制御部101aは、ステップSE2で作動させた第3ポンプP3’の作動を停止する(インクポンプの運転停止)。その後、ステップSE9において、供給制御部101aは、ステップSE1で開いた洗浄用の開閉弁(第19バルブV19)を閉じる。
【0258】
<詰まりに伴う故障の防止について>
以上説明したように、前記実施形態によると、
図8B、
図9A及び
図9B、
図13、並びに、
図14A及び
図14B等に例示した吹出制御を実行することで、第1インク管44aからインク用中空針43に向けて流れを生じさせることができる。この流れによって、インク用中空針43及びその近傍の内部空間に詰まった閉塞物mを、該内部空間から排出させることができる。
【0259】
その際、吸引制御のようにインク用中空針43から第1インク管44aに向かう流れではなく、その逆方向に向かう流れを用いることで、閉塞物mを第1インク管44aの深部に追いやることなく、より確実に排出させることが可能になる。そのことで、インク用中空針43及びその近傍でのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置Iの故障を防ぐことができる。
【0260】
また、前記吹出制御を用いて閉塞物mを排出させることで、インク用中空針43及び第1インク管44aの交換が不要になる。製造メーカに装置を送ったり、製造メーカから修理者を招いたりせずとも、インク用中空針43及びその近傍でのインク詰まりを解消することができる。これにより、労力及び費用面でも有利になる。
【0261】
また、一般に、顔料インクは、色が鮮明で着色力が強いという長所がある一方、定期的に攪拌しなければ、その着色成分(顔料成分)の一部が沈降して塊となるという短所がある。そのため、顔料インクは、染料インクと比べて、インク用中空針43及びその近傍の第1インク管44aを詰まらせる可能性が高い。したがって、前記実施形態は、顔料インクからなるインクを用いる場合に取り分け有効となる。
【0262】
また、
図8BのステップSD1、
図9A及び
図9B、
図13のステップSE1、並びに、
図14A及び
図14Bに例示したように、吹出制御が実行されるとき、吸引制御時には開状態とされる開閉弁(第8バルブV8)が閉状態とされる。これにより、合流部45を介して供給される溶剤又はインクが第1ポンプP1側に引き込まれるのを抑制し、逆流洗浄をより適切に行うことができるようになる。
【0263】
また、
図8BのステップSD4、並びに、
図9A及び
図9Bに例示したように、供給制御部101aは、溶剤カートリッジ51から合流部45に溶剤を供給することで、吹出制御を実行する。これにより、逆流洗浄の際に流通させる流体を新規に用意せずとも、吹出制御を実現することが可能になる。これにより、装置の製造コストを抑制し、費用面でより有利にすることができる。また、溶剤によって吹出制御を実行することで、インク詰まりを溶剤で溶かすことが可能になる。これにより、インク用中空針43及びその近傍の第1インク管44aで生じたインク詰まりを、より確実に解消することができる。
【0264】
また、
図13のステップSE4、並びに、
図14A及び
図14Bに例示したように、供給制御部101aは、インクタンク106から合流部45に印字用インクを供給することで、吹出制御を実行する。これにより、逆流洗浄の際に流通させる流体を新規に用意せずとも、吹出制御を実現することが可能になる。これにより、装置の製造コストを抑制し、費用面でより有利にすることができる。
【0265】
また、
図8AのステップSC2を用いて説明したように、前記実施形態では吹出制御を手動で開始させることができる。これにより、インク用中空針43及びその近傍の第1インク管44aで生じたインク詰まりを、ユーザ所望のタイミングで解消することができる。
【0266】
また、仮にインクカートリッジ41にインクが収容されていた場合、吹出制御によってそのインクカートリッジ41内に排出されたインク又は溶剤は、事前に収容されていたインクと混ざることになる。これにより、カートリッジ内のインク濃度が増減する可能性がある。しかしながら、コンティニュアス式のインクジェット記録装置Iの場合、インクタンク106においてインクが濃度調整されることになるため、仮にカートリッジ内でインク濃度が増減したとしても、印字ヘッド1による印字への影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0267】
また、
図11を用いて説明したように、表示部103aを通じてユーザに第1及び第2の誘導情報300a,300bを表示することで、インク詰まりの再発を抑制することができる。これにより、インク用中空針43及びその近傍の第1インク管44aでのインク詰まりに起因した、インクジェット記録装置Iの故障をより確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0268】
S インクジェット記録システム
I インクジェット記録装置
1 印字ヘッド
100 コントローラ
100’ コントローラ
101 制御部
101a 供給制御部
103 操作表示部
103a 表示部(報知部)
103c 開始ボタン(スイッチ)
104 インク供給部
41 インクカートリッジ
42 インクリザーバ
43 インク用中空針(中空針)
44 インク供給管
44a 第1インク管(インク流通管)
44h 第8インク管(第2のインク流通管)
45 合流部
105 溶剤供給部
54 溶剤供給管
54a 第1溶剤管(溶剤流通管)
54b 第2溶剤管(溶剤流通管)
54c 第3溶剤管(溶剤流通管)
51 溶剤カートリッジ
52 溶剤リザーバ
106 インクタンク
106a 貯留センサ(検知部)
P1 第1ポンプ(吸引ポンプ)
P2 第2ポンプ(溶剤ポンプ)
P3’ 第3ポンプ(インクポンプ)
V8 第8バルブ(開閉弁)
V18 第18バルブ(第2の開閉弁)
V19 第19バルブ(第3の開閉弁)