(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064762
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】接着方法及び接着構造体
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B29C65/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173595
(22)【出願日】2022-10-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度委託事業「複合材構造における接着信頼性管理技術の向上に関する研究」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】新井 啓司
(72)【発明者】
【氏名】勝俣 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛一
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA39
4F211AD16
4F211AR17
4F211AR20
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TH02
4F211TH17
4F211TN46
(57)【要約】
【課題】接着部分の強度向上を図る。
【解決手段】接着剤を介して被接着物同士を接着する接着方法において、前記被接着物及び前記接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、前記被接着物を成形するステップと、前記被接着物同士の間に接着剤を配置するステップと、前記接着剤を硬化させ、前記被接着物同士を接合して、前記接着構造体を形成するステップと、を含み、前記被接着物を成形するステップでは、前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に、前記被接着物よりも靭性が高い補強部材を配置して一体に成形する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を介して被接着物同士を接着する接着方法において、
前記被接着物及び前記接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、
前記被接着物を成形するステップと、
前記被接着物同士の間に接着剤を配置するステップと、
前記接着剤を硬化させ、前記被接着物同士を接合して、接着構造体を形成するステップと、を含み、
前記被接着物を成形するステップでは、
前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に、前記被接着物よりも靭性が高い補強部材を配置して一体に成形する接着方法。
【請求項2】
前記被接着物を成形するステップでは、
前記補強部材が、前記接着構造体において予め予測されるき裂の起点から、前記き裂の限界き裂長さに亘って配置される請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記被接着物を成形するステップでは、
前記補強部材を配置した面が、前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面と面一となるように成形される請求項1に記載の接着方法。
【請求項4】
前記接着剤を配置するステップでは、
前記補強部材が配置される面の表面粗さが、前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に比して粗くなっている請求項1に記載の接着方法。
【請求項5】
前記被接着物を成形するステップでは、
前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂を半硬化状態とさせており、
前記接着構造体を形成するステップでは、
前記被接着物及び前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂を完全硬化させている請求項1に記載の接着方法。
【請求項6】
前記半硬化状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋度が40%から80%までの範囲となっている請求項5に記載の接着方法。
【請求項7】
前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂は、前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂に比して、分子量が大きいものとなっている請求項5に記載の接着方法。
【請求項8】
前記接着構造体を形成するステップでは、
前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂の架橋度が、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂に比して高くなっている請求項7に記載の接着方法。
【請求項9】
接着剤を介して被接着物同士を接着する接着方法において、
前記被接着物及び前記接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、
前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂が半硬化状態となるように、前記被接着物を成形するステップと、
前記被接着物同士の間に接着剤を配置するステップと、
前記被接着物及び前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂を完全硬化させ、前記被接着物同士を接合して、接着構造体を形成するステップと、を含む接着方法。
【請求項10】
対向して設けられる一対の被接着物と、
前記被接着物同士の間に設けられ、一対の前記被接着物を接着する接着剤と、
前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に設けられ、前記被接着物よりも靭性が高い材料となる補強部材と、を備える接着構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着方法及び接着構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被成形品素材を一次硬化させ、一次硬化させた被成形品素材を、接着剤を介して、他の被成形品素材に組み付けて組付体とし、組付体を加熱して、被成形品素材を二次硬化させて一体化させる複合材の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複合材同士を接着剤により接合された接着構造体の強度は、一体成形された複合材(一体成形構造体)に比して低いものとなっている。このため、接着構造体の適用範囲が、一体成形構造体に対して限られたものとなっており、接着構造体の強度向上を図ることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、接着部分の強度向上を図ることができる接着方法及び接着構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の接着方法は、接着剤を介して被接着物同士を接着する接着方法において、前記被接着物及び前記接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、前記被接着物を成形するステップと、前記被接着物同士の間に接着剤を配置するステップと、前記接着剤を硬化させ、前記被接着物同士を接合して、前記接着構造体を形成するステップと、を含み、前記被接着物を成形するステップでは、前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に、前記被接着物よりも靭性が高い補強部材を配置して一体に成形する。
【0007】
本開示の他の接着方法は、接着剤を介して被接着物同士を接着する接着方法において、前記被接着物及び前記接着剤は、熱硬化性樹脂を含み、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂が半硬化状態となるように、前記被接着物を成形するステップと、前記被接着物同士の間に接着剤を配置するステップと、前記被接着物及び前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂が完全硬化させ、前記被接着物同士を接合して、前記接着構造体を形成するステップと、を含む。
【0008】
本開示の接着構造体は、対向して設けられる一対の被接着物と、前記被接着物同士の間に設けられ、一対の前記被接着物を接着する接着剤と、前記被接着物の前記接着剤が配置される側の面に設けられ、前記被接着物よりも靭性が高い材料となる補強部材と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、接着部分の強度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る接着構造体の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る接着構造体の一例を模式的に示した断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る接着方法を示した説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る接着構造体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0012】
[実施形態1]
図1及び
図2は、実施形態1に係る接着構造体の一例を模式的に示した断面図である。
図3は、実施形態1に係る接着方法を示した説明図である。
【0013】
実施形態1に係る接着方法及び接着構造体1は、被接着物としての複合材5を、接着剤を介して接合している。この接着構造体1には、応力が付与されることで、所定の部位に応力が集中する応力集中部が発生する。接着構造体1は、発生する応力集中部に耐え得る強度となるように、複合材5同士が接着されている。
【0014】
(接着構造体)
接着構造体1は、対向して設けられる一対の複合材5と、一対の複合材5を接着する接着剤7と、応力集中部に設けられる補強部材9と、を備えている。また、接着構造体1としては、例えば、
図1に示す接着構造体1aと、
図2に示す接着構造体1bとがある。
【0015】
一対の複合材5は、熱硬化性樹脂と強化繊維とを含んでいる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂である。なお、熱硬化性樹脂は、架橋反応するものであれば、何れであってもよい。強化繊維は、炭素繊維であるが、特に限定されず、何れであってもよい。つまり、複合材5としては、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics)が用いられているが、架橋反応するものであれば、何れの複合材であってもよい。一対の複合材5としては、例えば、外板及びストリンガーであり、接着構造体1は、外板の内側にストリンガーが接着された構造体となっている。一対の複合材5は、互いに対向する面が被接着面となっており、一対の被接着面は、平行となっている。ここで、一対の複合材5は、
図1に示す接着構造体1aにおいて、一方の(
図1の上側の)複合材5が、外側へ向かって厚さが薄くなるテーパ形状となっている。また、一対の複合材5は、
図2に示す接着構造体1bにおいて、一方の(
図2の上側の)複合材5が、外側へ向かって同じ厚さとなる平板形状となっている。
【0016】
接着剤7は、熱硬化性樹脂を含んでいる。熱硬化性樹脂としては、複合材5と同様に、エポキシ系樹脂であるが、架橋反応するものであれば、何れであってもよい。なお、接着剤7は、フィルム状に形成された接着剤が熱硬化されたものであってもよいし、ゲル状の接着剤が塗布されて熱硬化されたものであってもよい。接着剤7は、被接着面に亘って、均一な厚さとなっている。
【0017】
補強部材9は、複合材5の接着剤7が配置される側の面、つまり被接着面に設けられている。また、補強部材9は、応力集中部が発生する部位に設けられている。応力集中が発生する部位は、解析等によって予測可能であり、応力集中部において発生するき裂の大きさも、解析等によって予測可能となっている。取得されるき裂としては、き裂の起点から終点までの限界き裂長さである。き裂の起点は、接着部分の縁部(露出部)となっていることから、補強部材9は、接着部分の縁部から限界き裂長さに亘って設けられている。補強部材9は、複合材5よりも靭性が高い材料となっている。補強部材9は、例えば、炭素繊維の織物またはベクトラン(登録商標)となっており、ドライ状態の強化繊維基材、または熱硬化性樹脂及び強化繊維を含む複合材を用いている。
【0018】
また、補強部材9は、複合材5と一体に設けられており、補強部材9の接着剤7が配置される側の面、つまり補強部材9の被接着面が、複合材5の被接着面と面一となるように成形されている。このため、接着剤7は、補強部材9及び複合材5の被接着面に亘って、均一な厚さとなっている。
【0019】
なお、補強部材9の被接着面の表面粗さは、接着時において、複合材5の被接着面に比して粗くなっていてもよい。
【0020】
(接着方法)
次に、
図3を参照して、接着剤7を用いて複合材5同士を接着する接着方法について説明する。
図3は、実施形態1に係る接着方法を示した説明図である。ここで、複合材5に含まれる熱硬化性樹脂と、接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂との分子量は異なるものとなっている。具体的に、複合材5に含まれる熱硬化性樹脂は、接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂に比して、分子量が大きいものとなっている。換言すれば、接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂は、複合材5に含まれる熱硬化性樹脂に比して、分子量が小さいものとなっている。これは、複合材5の剛性を高いものとする一方で、接着剤7の粘性を低くして浸潤を高くするためである。
【0021】
図3に示すように、接着方法では、先ず、接着される一対の複合材5をそれぞれ成形する(ステップS1)。ステップS1では、強化繊維に熱硬化性樹脂を含侵させたプリプレグ等の強化繊維シートを積層して硬化前の複合材5を形成する。この後、複合材5の被接着面であって、応力集中部が発生する部位に、補強部材9を配置する。このとき、補強部材9は、接着構造体1において予め予測されるき裂の起点から、き裂の限界き裂長さに亘って配置される。そして、ステップS1では、複合材5の熱硬化性樹脂を半硬化状態となるように、複合材5と補強部材9とを加熱して一体に成形する。ステップS1では、半硬化状態として、熱硬化性樹脂の架橋度(硬化度)を40%から80%までの範囲としている。熱硬化性樹脂の架橋度を40%以上とすることで、半硬化状態となる複合材5を、取り扱いが容易な程度に硬化させることができるため、複合材5のハンドリングや位置決めが容易となり、組立作業がし易いものとなる。また、熱硬化性樹脂の架橋度が80%よりも大きいと、接着界面で生成される共有結合が減少し、界面の強度が低下するため、熱硬化性樹脂の架橋度を80%以下としている。ステップS1では、複合材5の熱硬化性樹脂を半硬化状態とするために、完全硬化状態とする場合に比して加熱温度を低くしたり及び加熱時間を短くしたりする。また、ステップS1では、複合材5と補強部材9とを一体に成形する際に、成形型を用いて、複合材5の被接着面と、補強部材9の被接着面とが面一となるように成形される。
【0022】
続いて、接着方法では、複合材5の被接着面をそれぞれ対向させて、複合材5同士の間に接着剤7を配置する(ステップS2)。ステップS2では、接着剤7が、被接着面に亘って均一な厚さとなるように配置される。なお、ステップS2では、補強部材9の被接着面の表面粗さが、複合材5の被接着面に比して粗くしてもよい。
【0023】
この後、接着方法では、ステップS2において接着した一対の複合材5及び接着剤7を、加熱炉10に入れて接着剤7を加熱して硬化させることにより、一対の複合材5同士を接合して、接着構造体1を形成する(ステップS3)。ステップS3では、複合材5及び接着剤7に含まれる熱硬化性樹脂を完全硬化させている。ここで、完全硬化状態とは、加熱による熱硬化性樹脂の架橋が所定の架橋度以上に進まない状態である。具体的に、ステップS3では、複合材5及び接着剤7の熱硬化性樹脂を完全硬化させた場合、接着剤7の熱硬化性樹脂の架橋度が、複合材5の熱硬化性樹脂に比して高くなる。
【0024】
このように、実施形態1の接着方法では、ステップS1において、複合材5を半硬化状態とし、ステップS3において、複合材5及び接着剤7を完全硬化状態としている。ステップS1において、複合材5の熱硬化性樹脂を半硬化状態とすることにより、架橋反応が未反応となる熱硬化性樹脂を残存させ、ステップS3において、架橋反応が未反応となる複合材5の熱硬化性樹脂と接着剤7の熱硬化性樹脂とを架橋反応させることで、複合材5と接着剤7との接着強度を高めることができる。
【0025】
そして、接着方法では、ステップS3の実行後、加熱炉10から硬化後の接着構造体1を取り出して、一連のステップを終了する。
【0026】
なお、実施形態1では、補強部材9の被接着面を、複合材5の被接着面と面一としたが、特に限定されず、補強部材9の被接着面が、複合材5の被接着面から突出していてもよい。また、補強部材9は、硬化前の複合材5に積層して配置してもよいし、複合材5の補強部材9が配置される部位を切り欠いて配置してもよく、特に限定されない。
【0027】
また、実施形態1では、ステップS1において、複合材5を半硬化状態とし、ステップS3において、複合材5及び接着剤7を完全硬化状態としたが、ステップS1において、複合材5を完全硬化状態としてもよい。
【0028】
[実施形態2]
次に、
図4を参照して、実施形態2について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図4は、実施形態2に係る接着構造体を模式的に示した断面図である。
【0029】
実施形態2の接着構造体21は、実施形態1の補強部材9を省いた構成となっている。そして、実施形態2の接着構造体21において、接着剤7を用いて複合材5同士を接着する接着方法では、ステップS1において、複合材5を半硬化状態とし、ステップS3において、複合材5及び接着剤7を完全硬化状態としている。
【0030】
つまり、実施形態2では、補強部材9を省いた構成において、実施形態1の接着方法を実行することにより、接着剤7による複合材5同士の接着強度を向上させている。
【0031】
以上のように、実施形態1から2に記載の接着方法及び接着構造体は、例えば、以下のように把握される。
【0032】
第1の態様に係る接着方法は、接着剤7を介して被接着物(複合材5)同士を接着する接着方法において、前記被接着物及び前記接着剤7は、熱硬化性樹脂を含み、前記被接着物を成形するステップS1と、前記被接着物同士の間に接着剤7を配置するステップS2と、前記接着剤7を硬化させ、前記被接着物同士を接合して、前記接着構造体1を形成するステップS3と、を含み、前記被接着物を成形するステップS1では、前記被接着物の前記接着剤7が配置される側の面に、前記被接着物よりも靭性が高い補強部材9を配置して一体に成形する。
【0033】
この構成によれば、複合材5よりも靭性が高い補強部材9を配置することで、接着剤7の接着部分にき裂が生じる場合であっても、補強部材9によって複合材5へのき裂の進展を抑制することができる。このため、接着剤7の接着部分における強度向上を図ることができる。
【0034】
第2の態様として、第1の態様に係る接着方法において、前記被接着物を成形するステップS1では、前記補強部材9が、前記接着構造体1において予め予測されるき裂の起点から、前記き裂の限界き裂長さに亘って配置される。
【0035】
この構成によれば、補強部材9によって複合材5へのき裂の進展をより抑制することができる。
【0036】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る接着方法において、前記被接着物を成形するステップS1では、前記補強部材9を配置した面が、前記被接着物の前記接着剤7が配置される側の面と面一となるように成形される。
【0037】
この構成によれば、接着剤7の厚さを均一な厚さとすることができるため、接着剤7の厚さの管理を容易なものとすることができる。
【0038】
第4の態様として、第1から第3のいずれか1つの態様に係る接着方法において、前記接着剤を配置するステップS2では、前記補強部材9が配置される面の表面粗さが、前記被接着物の前記接着剤7が配置される側の面に比して粗くなっている。
【0039】
この構成によれば、補強部材9の接着剤7に対する接着面積を大きくすることができるため、接着強度をより高めることができる。
【0040】
第5の態様として、第1から第4のいずれか1つの態様に係る接着方法において、前記被接着物を成形するステップS1では、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂を半硬化状態とさせており、前記接着構造体1を形成するステップS3では、前記被接着物及び前記接着剤7に含まれる前記熱硬化性樹脂を完全硬化させている。
【0041】
この構成によれば、ステップS1において、複合材5の熱硬化性樹脂を半硬化状態とすることにより、架橋反応が未反応となる熱硬化性樹脂を残存させ、ステップS3において、架橋反応が未反応となる複合材5の熱硬化性樹脂と接着剤7の熱硬化性樹脂とを架橋反応させることで、複合材5と接着剤7との接着強度を高めることができる。
【0042】
第6の態様として、第5の態様に係る接着方法において、前記半硬化状態は、前記熱硬化性樹脂の架橋度が40%から80%までの範囲となっている。
【0043】
この構成によれば、架橋反応が未反応となる熱硬化性樹脂を適切に残存させることができ、また、半硬化状態となる複合材5をハンドリングし易いものとすることができる。
【0044】
第7の態様として、第5または第6の態様に係る接着方法において、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂は、前記接着剤に含まれる前記熱硬化性樹脂に比して、分子量が大きいものとなっている。
【0045】
この構成によれば、硬化した複合材5の剛性を高いものとすることができ、また、硬化時における接着剤7の粘性を低くして浸潤を高くすることができる。このため、被接着物同士の間の接着界面に亘って、接着剤7を隙間なく、行き渡らせることができる。
【0046】
第8の態様として、第7の態様に係る接着方法において、前記接着構造体1を形成するステップS3では、前記接着剤7に含まれる前記熱硬化性樹脂の架橋度が、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂に比して高くなっている。
【0047】
この構成によれば、分子量の異なる熱硬化性樹脂を用いる場合であっても、複合材5及び接着剤7を好適に完全硬化させることができる。
【0048】
第9の態様に係る接着方法は、接着剤7を介して被接着物同士を接着する接着方法において、前記被接着物及び前記接着剤7は、熱硬化性樹脂を含み、前記被接着物に含まれる前記熱硬化性樹脂が半硬化状態となるように、前記被接着物を成形するステップS1と、前記被接着物同士の間に接着剤7を配置するステップS2と、前記被接着物及び前記接着剤7に含まれる前記熱硬化性樹脂を完全硬化させ、前記被接着物同士を接合して、前記接着構造体1を形成するステップS3と、を含む。
【0049】
この構成によれば、ステップS1において、複合材5の熱硬化性樹脂を半硬化状態とすることにより、架橋反応が未反応となる熱硬化性樹脂を残存させ、ステップS3において、架橋反応が未反応となる複合材5の熱硬化性樹脂と接着剤7の熱硬化性樹脂とを架橋反応させることで、複合材5と接着剤7との接着強度を高めることができる。このため、接着剤7の接着部分における強度向上を図ることができる。
【0050】
第10の態様に係る接着構造体1は、対向して設けられる一対の被接着物(複合材5)と、前記被接着物同士の間に設けられ、一対の前記被接着物を接着する接着剤7と、前記被接着物の前記接着剤7が配置される側の面に設けられ、前記被接着物よりも靭性が高い材料となる補強部材9と、を備える。
【0051】
この構成によれば、補強部材9によって複合材5へのき裂の進展を抑制することができ、接着剤7の接着部分における強度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 接着構造体
5 複合材
7 接着剤
9 補強部材
10 加熱炉
21 接着構造体