(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064763
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20240507BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20240507BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240507BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240507BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/2484
H01M8/2475
H01M8/12 101
H01M8/12 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173596
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晃治
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA22
5H126BB06
5H126CC02
5H126FF10
(57)【要約】
【課題】導電部材の劣化を低減する。
【解決手段】本開示による電気化学セル装置は、複数のセルと、導電部材と、支持部材とを有する。複数のセルは、第1セルと、第1セルと隣接する第2セルとを含む。導電部材は、第1セルおよび第2セルの間に位置する。支持部材は、複数のセルの第1方向における基端部を支持する。複数のセルは、第1方向において基端部の反対側に位置する先端部を有する。第1セルと第2セルとの間隔は、先端部において基端部より広い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セルと、前記第1セルと隣接する第2セルとを含む複数のセルと、
前記第1セルおよび前記第2セルの間に位置する導電部材と、
前記複数のセルの第1方向における基端部を支持する支持部材と
を有し、
前記複数のセルは、前記第1方向において前記基端部の反対側に位置する先端部を有し、
前記第1セルと前記第2セルとの間隔は、前記先端部において前記基端部より大きい
電気化学セル装置。
【請求項2】
前記第1セルと前記第2セルとの間隔は、前記先端部に向かうにつれて広くなる、
請求項1に記載の電気化学セル装置。
【請求項3】
前記第1セルおよび前記第2セルは、前記複数のセルの並び方向である第2方向における中央部に位置する
請求項1に記載の電気化学セル装置。
【請求項4】
前記複数のセルに対し、前記第1方向と直交する第3方向から気体を吐出する気体吐出部
を有し、
前記気体吐出部は、前記複数のセルの前記基端部に供給する前記気体の流量よりも多い流量で、前記複数のセルの前記先端部に前記気体を吐出する
請求項1に記載の電気化学セル装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の電気化学セル装置と、
前記電気化学セル装置を収納する収納容器と
を備えるモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュールと、
前記モジュールの運転を行うための補機と、
前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースと
を備えるモジュール収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数備える燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、導電部材の劣化を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による電気化学セル装置は、複数のセルと、導電部材と、支持部材とを有する。複数のセルは、第1セルと、第1セルと隣接する第2セルとを含む。導電部材は、第1セルおよび第2セルの間に位置する。支持部材は、複数のセルの第1方向における基端部を支持する。複数のセルは、第1方向において基端部の反対側に位置する先端部を有する。第1セルと第2セルとの間隔は、先端部において基端部より広い。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、導電部材の劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図である。
【
図1C】
図1Cは、第1の実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【
図3】
図3は、電気化学セル装置における温度分布の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る電気化学セル装置を拡大した断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るモジュールの一例を示す外観斜視図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の他の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示による電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0009】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0010】
近年、次世代エネルギーとして、燃料電池セルを複数備える燃料電池セルスタック装置が種々提案されている。燃料電池セルは、水素含有ガス等の燃料ガスと空気等の酸素含有ガスとを用いて電力を得ることができるセルの一種である。たとえば、特許文献1には、複数のセルと、隣接するセル間に位置する導電部材とを備えたセルスタック装置が開示されている。この種のセルスタック装置では、セルの基端側から燃料が供給される。そして、セルに供給された燃料は、セルの先端に向かって流れる。
【0011】
しかしながら、従来のセルスタック装置では、発電に使用されなかった燃料がセルスタックの先端側で燃焼するため、この燃焼による熱によってセルの先端側が基端側よりも高温になりやすい。その結果、セルスタックの基端側と比較して、セルスタックの先端側における導電部材の温度が高くなることで、セルスタックの先端側において導電部材が早く劣化するおそれがあった。導電部材の早期劣化は、セルスタック装置の寿命を縮めることに繋がる。
【0012】
そこで、導電部材の劣化を低減する技術が期待されている。
【0013】
(第1の実施形態)
<電気化学セルの構成>
まず、
図1A~
図1Cを参照しながら、第1の実施形態に係る電気化学セル装置を構成する電気化学セルとして、固体酸化物形の燃料電池セルの例を用いて説明する。電気化学セル装置は、複数の電気化学セルを有するセルスタックを備えていてもよい。複数の電気化学セルを有する電気化学セル装置を、単にセルスタック装置と称する。
【0014】
図1Aは、実施形態に係る電気化学セルの一例を示す横断面図であり、
図1Bは、実施形態に係る電気化学セルの一例を空気極側からみた側面図であり、
図1Cは、実施形態に係る電気化学セルの一例をインターコネクタ側からみた側面図である。なお、
図1A~
図1Cは、電気化学セルの各構成の一部を拡大して示している。以下、電気化学セルを単にセルという場合もある。
【0015】
図1A~
図1Cに示す例において、セル1は中空平板型で、細長い板状である。
図1Bに示すように、セル1の全体を側面から見た形状は、たとえば、長さ方向Lの辺の長さが5cm~50cmで、この長さ方向Lに直交する幅方向Wの長さが、たとえば1cm~10cmの長方形である。このセル1の全体の厚み方向Tの厚さは、たとえば1mm~5mmである。なお、長さ方向Lは、第1方向の一例であり、厚み方向Tは、並び方向である第2方向の一例である。
【0016】
図1Aに示すように、セル1は、導電性の支持基板2と、素子部3と、インターコネクタ4とを備えている。支持基板2は、一対の対向する平坦面n1、n2、およびかかる平坦面n1、n2を接続する一対の円弧状の側面mを有する柱状である。
【0017】
素子部3は、支持基板2の平坦面n1上に設けられている。かかる素子部3は、燃料極5と、固体電解質層6と、空気極8とを有している。また、
図1Aに示す例では、セル1の平坦面n2上にインターコネクタ4が位置している。なお、セル1は、固体電解質層6と空気極8との間に中間層7を備えていてもよい。
【0018】
また、
図1Bに示すように、空気極8はセル1の長さ方向Lにおける下端(基端の一例)まで延びていない。セル1の下端部では、固体電解質層6のみが平坦面n1の表面に露出している。同様に、空気極8は、セル1の長さ方向Lにおける上端(先端の一例)まで延びていない。セル1の上端部でも、固体電解質層6のみが平坦面n1の表面に露出している。また、
図1Cに示すように、インターコネクタ4は、セル1の下端まで延びていてもよい。セル1の下端部では、インターコネクタ4および固体電解質層6が表面に露出している。なお、
図1Aに示すように、セル1の一対の円弧状の側面mにおける表面では、固体電解質層6が露出している。インターコネクタ4は、セル1の下端まで延びていなくてもよい。
【0019】
以下、セル1を構成する各構成部材について説明する。
【0020】
支持基板2は、ガスが流れるガス流路2aを内部に有している。
図1Aに示す支持基板2の例は、6つのガス流路2aを有している。支持基板2は、ガス透過性を有し、ガス流路2aを流れる燃料ガスを燃料極5まで透過させる。支持基板2は、導電性を有していてもよい。導電性を有する支持基板2は、素子部3で生じた電気をインターコネクタ4に集電する。
【0021】
支持基板2の材料は、たとえば、鉄族金属成分および無機酸化物を含む。鉄族金属成分は、たとえば、Ni(ニッケル)および/またはNiOであってもよい。無機酸化物は、たとえば、特定の希土類元素酸化物であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでもよい。
【0022】
燃料極5の材料には、一般的に公知のものを使用することができる。燃料極5は、多孔質の導電性セラミックス、たとえば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスなどを用いてもよい。この希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される複数の希土類元素を含んでもよい。酸化カルシウム、酸化マグネシウム、または希土類元素酸化物が固溶しているZrO2を安定化ジルコニアと称する場合もある。安定化ジルコニアは、部分安定化ジルコニアも含む。導電性セラミックスは、たとえば後述する固体電解質層6に用いられる材料と、Niおよび/またはNiOとを含むセラミックスであってもよい。
【0023】
固体電解質層6は、電解質であり、燃料極5と空気極8との間でイオンの受け渡しをする。同時に、固体電解質層6は、ガス遮断性を有し、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを生じにくくする。
【0024】
固体電解質層6の材料は、たとえば、3モル%~15モル%の希土類元素酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウムが固溶したZrO2であってもよい。希土類元素酸化物は、たとえば、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、DyおよびYbから選択される1以上の希土類元素を含んでよい。固体電解質層6は、たとえば、La、Nd、Sm、GdまたはYbが固溶したCeO2を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaZrO3を含んでもよく、ScまたはYbが固溶したBaCeO3を含んでもよい。
【0025】
空気極8は、ガス透過性を有している。空気極8の開気孔率は、たとえば20%~50%、特に30%~50%の範囲であってもよい。
【0026】
空気極8の材料は、一般的に空気極に用いられるものであれば特に制限はない。空気極8の材料は、たとえば、いわゆるABO3型のペロブスカイト型酸化物など導電性セラミックスでもよい。
【0027】
空気極8の材料は、たとえば、AサイトにSr(ストロンチウム)とLa(ランタン)が共存する複合酸化物であってもよい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3などが挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。
【0028】
また、素子部3が中間層7を有する場合、中間層7は、拡散抑制層としての機能を有する。空気極8に含まれるSr(ストロンチウム)などの元素が固体電解質層6に拡散すると、かかる固体電解質層6にたとえばSrZrO3などの抵抗層が形成される。中間層7は、Srを拡散させにくくすることで、SrZrO3その他の電気絶縁性を有する酸化物が形成されにくくする。
【0029】
中間層7の材料は、一般的に空気極8と固体電解質層6との間の元素の拡散抑制層に用いられるものであれば特に制限はない。中間層7の材料は、たとえば、Ce(セリウム)を除く希土類元素が固溶した酸化セリウム(CeO2)を含んでもよい。かかる希土類元素としては、たとえば、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)などを用いてもよい。
【0030】
また、インターコネクタ4は、緻密質であり、支持基板2の内部に位置するガス流路2aを流通する燃料ガス、および支持基板2の外側を流通する酸素含有ガスのリークを生じにくくする。インターコネクタ4は、93%以上、特に95%以上の相対密度を有していてもよい。
【0031】
インターコネクタ4の材料には、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO3系酸化物)、ランタンストロンチウムチタン系のペロブスカイト型酸化物(LaSrTiO3系酸化物)などを用いてもよい。これらの材料は、導電性を有し、かつ水素含有ガスなどの燃料ガスおよび空気などの酸素含有ガスと接触しても還元も酸化もされにくい。また、インターコネクタ4の材料として金属または合金を用いてもよい。
【0032】
<電気化学セル装置の構成>
次に、上述したセル1を用いた本実施形態に係る電気化学セル装置について、
図2A~
図2Cを参照しながら説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す斜視図であり、
図2Bは、
図2Aに示すX-X線の断面図であり、
図2Cは、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す上面図である。
【0033】
図2Aに示すように、セルスタック装置10は、第2方向としてセル1の厚み方向T(
図1A参照)に配列(積層)された複数のセル1を有するセルスタック11と、固定部材12とを備える。
【0034】
固定部材12は、固定材13と、支持部材14とを有する。支持部材14は、セル1を支持する。固定材13は、セル1を支持部材14に固定する。また、支持部材14は、支持体15と、ガスタンク16とを有する。支持部材14である支持体15およびガスタンク16は、たとえば金属製であり導電性を有している。
【0035】
図2Bに示すように、支持体15は、複数のセル1の下端部が挿入される挿入孔15aを有している。複数のセル1の下端部と挿入孔15aの内壁とは、固定材13で接合されている。
【0036】
ガスタンク16は、挿入孔15aを通じて複数のセル1に反応ガスを供給する開口部と、かかる開口部の周囲に位置する凹溝16aとを有する。支持体15の外周の端部は、ガスタンク16の凹溝16aに充填された接合材21によって、ガスタンク16と接合されている。
【0037】
図2Aに示す例では、支持部材14である支持体15とガスタンク16とで形成される内部空間22に燃料ガスが貯留される。ガスタンク16にはガス流通管20が接続されている。燃料ガスは、このガス流通管20を通してガスタンク16に供給され、ガスタンク16からセル1の内部のガス流路2a(
図1A参照)に供給される。ガスタンク16に供給される燃料ガスは、後述する改質器102(
図5参照)で生成される。
【0038】
水素リッチな燃料ガスは、原燃料を水蒸気改質などすることによって生成することができる。水蒸気改質により燃料ガスを生成する場合には、燃料ガスは水蒸気を含む。
【0039】
図2Aに示す例では、セルスタック装置10は、2列のセルスタック11、支持部材14を有している。支持部材14は、2つの支持体15およびガスタンク16を備えている。2列のセルスタック11はそれぞれ、複数のセル1を有する。各セルスタック11は、各支持体15に固定されている。ガスタンク16は上面に2つの貫通孔を有している。各貫通孔には、各支持体15が配置されている。内部空間22は、1つのガスタンク16と、2つの支持体15とで形成される。
図2Aでは、2列のセルスタック11を有するセルスタック装置10を示したが、セルスタック装置は1列のセルスタック11を有してもよいし、3列以上のセルスタック11を有してもよい。なお、セルスタック11の詳細については、後述する。
【0040】
挿入孔15aの形状は、たとえば、上面視で長円形状である。挿入孔15aは、たとえば、セル1の配列方向すなわち厚み方向Tの長さが、セルスタック11の両端に位置する2つの端部集電部材17の間の距離よりも大きい。挿入孔15aの幅は、たとえば、セル1の幅方向W(
図1A参照)の長さよりも大きい。
【0041】
図2Bに示すように、挿入孔15aの内壁とセル1の下端部との接合部は、固定材13が充填され、固化されている。これにより、挿入孔15aの内壁と複数個のセル1の下端部とがそれぞれ接合・固定され、また、セル1の下端部同士が接合・固定されている。各セル1のガス流路2aは、下端部で支持部材14の内部空間22と連通している。
【0042】
固定材13および接合材21は、ガラスなどの導電性が低いものを用いることができる。固定材13および接合材21の具体的な材料としては、非晶質ガラスなどを用いてもよく、特に結晶化ガラスなどを用いてもよい。
【0043】
結晶化ガラスとしては、たとえば、SiO2-CaO系、MgO-B2O3系、La2O3-B2O3-MgO系、La2O3-B2O3-ZnO系、SiO2-CaO-ZnO系などの材料のいずれかを用いてもよく、特にSiO2-MgO系の材料を用いてもよい。
【0044】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1のうち隣接するセル1の間には、導電部材18が介在している。導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極5と他方のセル1の空気極8とを電気的に直列に接続する。より具体的には、導電部材18は、隣接する一方のセル1の燃料極5と電気的に接続されたインターコネクタ4と、他方のセル1の空気極8とを接続している。なお、インターコネクタ4が金属または合金である場合、インターコネクタ4と導電部材18とが一体化していてもよいし、導電部材18がインターコネクタ4を兼ねてもよい。
【0045】
また、
図2Bに示すように、複数のセル1の配列方向における最も外側に位置するセル1には、端部集電部材17が電気的に接続されている。端部集電部材17は、セルスタック11の外側に突出する導電部19に接続されている。導電部19は、セル1の発電により生じた電気を集電して外部に引き出す。なお、
図2Aでは、端部集電部材17の図示を省略している。
【0046】
また、
図2Cに示すように、セルスタック装置10は、2つのセルスタック11A、11Bが直列に接続され、一つの電池として機能する。そのため、セルスタック装置10の導電部19は、正極端子19Aと、負極端子19Bと、接続端子19Cとに区別される。
【0047】
正極端子19Aは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の正極であり、セルスタック11Aにおける正極側の端部集電部材17に電気的に接続される。負極端子19Bは、セルスタック11が発電した電力を外部に出力する場合の負極であり、セルスタック11Bにおける負極側の端部集電部材17に電気的に接続される。
【0048】
接続端子19Cは、セルスタック11Aにおける負極側の端部集電部材17と、セルスタック11Bにおける正極側の端部集電部材17とを電気的に接続する。
【0049】
<発電時の温度分布>
つづいて、電気化学セル装置における発電時の温度分布について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、電気化学セル装置における温度分布の一例を示す断面図である。
図3に示すセルスタック装置10Xは、
図2Bに示すセルスタック装置10が有するセルスタック11の一部を拡大視したものに相当する。なお、
図3では、たとえばセル1、導電部材18などを単純化して図示している。また、後述する他の図面でも、構成要素を単純化して図示する場合がある。説明を容易にするために、
図3、後述する
図4および
図7では、セルスタック装置が有するセル1の数を8として図示している。
【0050】
図3に示すように、セル1の厚み方向Tに隣り合うセル1の間には、長さ方向Lに延びる導電部材18が位置し、隣り合うセル1同士を電気的に接続している。セルスタック装置10Xは、発電時には温度t1~t6が、t1>t2>t3>t4>t5>t6の順にセル1の厚み方向T(第2方向)の中央に位置し、かつ固定材13から離れた長さ方向L(第1方向)の上端側が高温となる。また、かかる部分から離れた厚み方向Tの端部側、長さ方向Lの下端側に向かって発電時の温度が低下する。
【0051】
第1実施形態に係る電気化学セル装置は、後述する改質器102およびセルスタック11を高温状態に維持するために、セル1の上端側で未反応の燃料ガス(発電に使用されなかったオフガス)を燃焼させる。このため、セルスタック11を構成するセル1において、セル1の長さ方向Lの上端側で温度が高く、セル1の長さ方向Lの下端側では温度が低くなる傾向にある。したがって、複数のセル1間の長さ方向Lの上端側の温度は、複数のセル1間の長さ方向Lの下端側の温度よりも高温となる。
【0052】
また、セル1を複数個配列してなるセルスタック11においては、セル1は発電時にセル1自身のジュール熱や反応熱により熱エネルギーを放散するが、特に厚み方向T(第2方向)における中央部に配置された複数個のセル(たとえば、第1セル1aおよび第2セル1b)においては、セル1の両側に多数のセル1が配置されているため、熱エネルギーが放散されにくく高温となる傾向にある。一方、セル1の厚み方向Tにおける端部に配置された複数個のセル1は、隣接して配置されたセル1が少ない、もしくはないこととなり、熱エネルギーを放散しやすくなる。それにより、セル1の厚み方向Tにおける端部側に配置された燃料電池セルは温度が低下する傾向にある。このため、セル1の厚み方向Tの中央部の第1領域R1に配置された第1セル1aおよび第2セル1bの間の温度は、セル1の厚み方向Tの両端部の第2領域R2に配置された隣り合うセル1間の温度よりも高温となる。
【0053】
上述したように、発電時における隣り合うセル1間にセル1の長さ方向L(第1方向)における温度ばらつきがあるため、隣り合うセル1間に位置する導電部材18にも同様にセル1の長さ方向Lにおける温度のばらつきが生じる。具体的には、導電部材18の温度は、下端側と比較して上端側の方が高くなる。この結果、導電部材18は、上端側が早く劣化するおそれがある。そこで、本実施形態では、隣り合うセル1同士の間隔が、セル1の上端部に向かうにつれて広くなるセルスタック11を適用する。
図4は、第1の実施形態に係る電気化学セル装置を拡大した断面図である。
【0054】
図4に示すように、セルスタック11の厚み方向Tにおける中央部には、第1セル1aと、第1セル1aと隣接する第2セル1bとが配置される。第1セル1aと第2セル1bとの上端部における間隔W2は、第1セル1aと第2セル1bとの下端部における間隔W1よりも大きい。かかる構成とすることで、隣接するセル1間の上端側において輻射熱の影響が小さくなることで、輻射熱による温度上昇が低減する。また、セル1間の間隔が広がることで、セル1間に熱がこもりにくくなる。これにより、セル1間の上端側と下端側との温度差が小さくなることで、セル1の上端側における導電部材18の劣化を遅くすることができる。すなわち、導電部材を劣化しにくくすることができる。第1セル1aと第2セル1bとの間隔は、
図4に示すように、セル1の長さ方向Lの上端側に向かうにつれて広くなっていてもよい。
【0055】
第1セル1aと第2セル1bとの間隔は、上端部における間隔W2が下端部における間隔W1より大きければよく、長さ方向Lにおける上端部と下端部の中間における間隔が、上端部における間隔W2と同じ、または間隔W2より大きくてもよい。隣接するセル1間における隙間の温度は、セル1の上端部よりも僅かに下側の位置、具体的には、セル1の発電領域における上端部において最も高くなる場合がある。これは、セル1の発電領域における上端部が、上述した燃料ガスの燃焼による温度上昇の影響と、発電による温度上昇の影響の両方を最も受ける場所だからである。このような場合は、上端部と下端部の中間、すなわち上端部よりも僅かに下側の位置における間隔を上端部における間隔W2より大きくすることで、中間における温度上昇を低減することができる。
【0056】
なお、セル1の発電領域とは、具体的には、燃料極5、固体電解質層6および空気極8が積層された領域(
図1Aおよび
図1B参照)のことである。
【0057】
また、セルスタック11を構成する複数のセル1のうち、中央部に配置された第1セル1aおよび第2セル1bを上述の構成とすることで、端部よりも高温となりやすい中央部に配置されたセル1間の上端側の温度を低下させ、セル1間に配置される導電部材18を劣化しにくくすることができる。なお、第1セル1aおよび第2セル1bは、セルスタック11が有する複数のセル1のうち、セルスタック11の中央に最も近い2つのセル1である。なお、
図3、
図4では、セルスタックの両端に位置する端部集電部材17の間隔は上端部と下端部で同じ間隔の場合を示したが、端部集電部材17の上端部の間隔が下端部の間隔より大きくてもよい。
【0058】
<モジュール>
次に、上述したセルスタック装置10を用いた本実施形態に係るモジュールについて、
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施形態に係るモジュールを示す外観斜視図である。
図5では、収納容器101の一部である前面および後面を取り外し、内部に収納される燃料電池のセルスタック装置10を後方に取り出した状態を示している。
【0059】
図5に示すように、モジュール100は、収納容器101内に、セルスタック装置10を収納して構成される。また、セルスタック装置10の上方には、セル1に供給する燃料ガスを生成するための改質器102が配置されている。
【0060】
かかる改質器102では、原燃料供給管103を通じて供給される天然ガスや灯油などの原燃料を改質して燃料ガスを生成する。なお、改質器102は、効率のよい改質反応である水蒸気改質を行うことができる構造とすることが好ましい。改質器102は、水を気化させるための気化部102aと、原燃料を燃料ガスに改質するための改質触媒(図示せず)が配置された改質部102bとを備えることで水蒸気改質を行うことができる。
【0061】
そして、改質器102で生成された燃料ガスは、ガス流通管20を通じて固定部材12に供給され、固定部材12よりセル1の内部に設けられたガス流路2a(
図1A参照)に供給される。
【0062】
また、上述の構成のモジュール100においては、通常発電時においては、上記燃焼、セル1の発電等に伴い、モジュール100内の温度は500℃~1000℃程度となる。
【0063】
このようなモジュール100においては、上述したように、耐久性が高いセルスタック装置10を収納して構成されることにより、耐久性が高いモジュール100とすることができる。
【0064】
<モジュール収容装置>
図6は、第1の実施形態に係るモジュール収容装置の一例を示す分解斜視図である。モジュール収容装置110は、外装ケース111と、
図5で示したモジュール100と、図示しない補機と、を備えている。補器は、モジュール100の運転を行う。モジュール100および補器は、外装ケース111内に収容されている。なお、
図6においては一部構成を省略して示している。
【0065】
図6に示すモジュール収容装置110の外装ケース111は、支柱112と外装板113とを有する。仕切板114は、外装ケース111内を上下に区画している。外装ケース111内の仕切板114より上側の空間は、モジュール100を収容するモジュール収容室115であり、外装ケース111内の仕切板114より下側の空間は、モジュール100を運転する補機を収容する補機収容室116である。なお、
図8では、補機収容室116に収容する補機を省略して示している。
【0066】
また、仕切板114は、補機収容室116の空気をモジュール収容室115側に流すための空気流通口117を有している。モジュール収容室115を構成する外装板113は、モジュール収容室115内の空気を排気するための排気口118を有している。
【0067】
このようなモジュール収容装置110においては、上述したように、耐久性が高いモジュール100をモジュール収容室115に備えていることにより、耐久性が高いモジュール収容装置110とすることができる。
【0068】
図7は、第1の実施形態に係る電気化学セル装置の他の一例を示す断面図である。
図7に示すセルスタック装置10は、セルスタック11を構成する全てのセル1において、セル1の長さ方向Lの上端側と下端側とで隣り合うセル1同士の間隔が異なる点で、上記した実施形態に係るセルスタック装置10と相違する。
【0069】
具体的には、
図7において、隣り合うセル1a,1bは、上端側の間隔W2が下端側の間隔W1よりも大きく、下端側から上端側に向かうにつれて間隔が漸次広がる。また、隣り合うセル1b,1cおよび隣り合うセル1d,1eについても同様に、下端側から上端側に向かうにつれて間隔が漸次広がる。言い換えると、セルスタック11においてセル1の厚み方向Tの中央部から端部に向かうにつれて、セル1の傾きが大きくなる。このため、本変形例によれば、より隣り合うセル1間の長さ方向Lにおける温度のばらつきを低減し、導電部材18の劣化を減らすことができる。
【0070】
なお、セルスタック11の構成は、上述した実施形態および変形例に限らない。たとえば、セル1の厚み方向Tの中央部に配置されたセル1a、1bを含む一部のセル1において、隣り合うセル1同士の間隔が、下端側から上端側に向かうにつれて漸次広がってもよい。また、上述した実施形態では、隣り合うセル1同士の上端側の間隔が下端側の間隔よりも大きい、または上端側の間隔と下端側の間隔とが等しい例について説明した。これに限らず、セルスタック11を構成する全てのセル1のうち、厚み方向Tの端部に配置された一部のセル1において、隣り合うセル1同士の間隔が、下端側から上端側に向かうにつれて漸次狭くなっていてもよい。
【0071】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る電気化学セル装置の一例を示す断面図である。
図8に示すように、セルスタック装置10は、セルスタック11を構成する複数のセル1に対して、気体(酸素含有ガス)を吐出する気体吐出部30を備えていてもよい。なお、
図8では、セルスタック装置10における気体(酸素含有ガス)の流れを矢印で示している。
【0072】
図8に示すように、気体吐出部30は、複数のセル1に対して、セル1の長さ方向L(第1方向)と直交する第3方向から酸素含有ガスを吐出する。気体吐出部30は、酸素含有ガス供給源30aと、酸素含有ガス供給路30bと、複数の吐出孔31,32とを有する。酸素含有ガス供給路30bは、酸素含有ガス供給源30aと複数の吐出孔31,32とを接続し、複数の吐出孔31,32に酸素含有ガスを供給する。
【0073】
複数の吐出孔31,32は、セル1の長さ方向Lに沿って配列される。複数の吐出孔31,32は、複数のセル1に対して、セル1の長さ方向Lと直交する第3方向から、隣り合うセル1間の隙間に酸素含有ガスを吐出する。
【0074】
上述したように、セル1は、セル1の上端側における燃焼による熱および発電に伴うジュール熱により温度が上昇する。このとき、セル1の外部を流れる酸素含有ガスの流量を多くするほど、隣り合うセル1間の温度を低下させることができる。また、第1セル1a、第2セル1b間の間隔は、下端側よりも上端側の方が広いため、下端側と比較して上端側の方がセル1a、1b間により多くの気体を流通させることが可能である。
【0075】
本実施形態では、気体吐出部30は、複数のセル1の下端側に供給する酸素含有ガスの流量よりも多い流量で、複数のセル1の上端側に酸素含有ガスを吐出する。たとえば、
図8に示すように、セル1の上端側に対する吐出孔31の吐出面積を、セル1の下端側に対する吐出孔32の吐出面積よりも大きくしてもよい。これにより、セル1間の上端側の温度をさらに低下させることができる。したがって、本実施形態によれば、セル1間に配置される導電部材をより劣化しにくくすることができる。
【0076】
なお、セル1の上端側と下端側とに対して吐出する酸素含有ガスの流量を調整する方法は、上述した方法に限られない。たとえば、セル1の上端側に対して酸素含有ガスを吐出する吐出孔31と、セル1の下端側に対して酸素含有ガスを吐出する吐出孔32とは、異なる酸素含有ガス供給源に接続されてもよい。これにより、たとえば、吐出孔31,32の吐出面積を異ならせることなく、吐出孔31から吐出される酸素含有ガスの流量を吐出孔32から吐出される酸素含有ガスの流量よりも多くすることができる。
【0077】
ところで、隣接するセル1間における隙間の温度は、セル1の上端部よりも僅かに下側の位置、具体的には、セル1の発電領域における上端部において最も高くなる場合がある。これは、セル1の発電領域における上端部が、上述した燃料ガスの燃焼による温度上昇の影響と、発電による温度上昇の影響の両方を最も受ける場所だからである。
【0078】
そこで、気体吐出部30は、セル1の上端部に供給する酸素含有ガスの流量よりも多い流量で、セル1の発電領域における上端部に酸素含有ガスを供給してもよい。これにより、セル1の長さ方向Lにおける導電部材18の温度のばらつきをさらに低減することができることから、導電部材18の劣化をさらに低減することができる。
【0079】
なお、セル1の発電領域とは、具体的には、燃料極5、固体電解質層6および空気極8が積層された領域(
図1Aおよび
図1B参照)のことである。
【0080】
一実施形態において、(1)電気化学セル装置(一例として、セルスタック装置10)は、複数のセル(一例として、セル1)と、導電部材(一例として、導電部材18)と、支持部材(一例として、支持部材14)とを有する。複数のセルは、第1セル(一例として、第1セル1a)と、第1セルと隣接する第2セル(一例として、第2セル1b)とを含む。導電部材は、第1セルおよび第2セルの間に位置する。支持部材は、複数のセルの第1方向における基端部を支持する。複数のセルは、第1方向において基端部の反対側に位置する先端部を有する。第1セルと第2セルとの間隔は、先端部において基端部より広い。
【0081】
(2)上記(1)の電気化学セル装置において、前記第1セルおよび前記第2セルの間隔は、前記先端部に向かうにつれて広くなってもよい。
【0082】
(3)上記(1)の電気化学セル装置において、前記第1セルおよび前記第2セルは、前記複数のセルの並び方向である第2方向における中央部に位置していてもよい。
【0083】
(4)上記(1)の電気化学セル装置は、前記複数のセルに対し、前記第1方向と直交する第3方向から気体を吐出する気体吐出部を有し、前記気体吐出部は、前記複数のセルの前記基端部に供給する前記気体の流量よりも多い流量で、前記複数のセルの前記先端部に前記気体を吐出してもよい。
【0084】
(5)モジュールは、上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の電気化学セル装置と、前記電気化学セル装置を収納する収納容器とを備えていてもよい。
【0085】
(6)モジュール収容装置は、上記(5)に記載のモジュールと、前記モジュールの運転を行うための補機と、前記モジュールおよび前記補機を収容する外装ケースとを備えていてもよい。
【0086】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 セル
2 支持基板
3 素子部
5 燃料極
6 固体電解質層
7 中間層
10 セルスタック装置
11 セルスタック
12 固定部材
13 固定材
14 支持部材
15 支持体
16 ガスタンク
21 接合材
20 ガス流通管
22 内部空間
30 気体吐出部
100 モジュール
101 収納容器
110 モジュール収容装置
111 外装ケース
112 支柱
113 外装板
114 仕切板
117 空気流通口