(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064766
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】装飾モールの飛散防止構造及びサイドバイザー
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20240507BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60J3/00 C
B60R13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173600
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴士
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB01
3D023AC03
3D023AD25
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、装飾モールの幅に依存しない装飾モールの飛散防止構造及びサイドバイザーを提供することにある。
【解決手段】装飾モール5の飛散防止構造は、鍔部3を含み、自動車の窓枠2に取り付けられるサイドバイザー1と、サイドバイザー1の外面に取付可能な装飾モール5と、サイドバイザー1からの装飾モール5の飛散を防止する抜止部とを含み、鍔部3は、所定箇所に、孔部8が設けられ、装飾モール5は、上側引掛部6及び下側引掛部7が形成され、上側抜止部12は、サイドバイザーとは別体の抜止部材9に形成され、下側抜止部10は、鍔部3の外面に形成され、下側抜止部10が下側引掛部7に引っ掛けられ、抜止部材9の上側抜止部12が孔部8に挿通された状態で抜止部材9が摺動され、上側抜止部12が上側引掛部6に挿入されて引っ掛けられることで、サイドバイザー1からの装飾モール5の飛散を防止する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の鍔部と、前記鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含み、自動車の窓枠に取り付けられるサイドバイザーと、前記自動車への取付状態における前記サイドバイザーの外面に取付手段を介して取付可能な長尺帯状の装飾モールと、前記サイドバイザーからの前記装飾モールの飛散を防止する抜止部とを含み、
前記鍔部は、所定箇所に、窓枠への取付状態における前記鍔部の内面と外面とを貫通する孔部が設けられ、
前記装飾モールは、長手方向上端部及び下端部が、前記サイドバイザーへの取付状態における内側方向に折り返されて、上側引掛部及び下側引掛部が形成され、
前記抜止部は、前記装飾モールの前記上側引掛部に引掛可能な上側抜止部、及び前記下側引掛部に引掛可能な下側抜止部を含み、前記上側抜止部及び前記下側抜止部の少なくとも一方は、前記サイドバイザーとは別体の抜止部材に形成され、前記サイドバイザーと一体に設けられる場合、前記鍔部の外面に形成され、
前記抜止部材は、前記サイドバイザーへの取付状態において、前記サイドバイザーの内面に配置される胴部が備えられると共に、前記抜止部が、前記孔部を通って前記サイドバイザーの外面側へ貫通するように、前記胴部から延設して形成され、
前記サイドバイザーの外面において、前記取付手段により前記装飾モールが前記サイドバイザーの外面に取り付けられると共に、前記抜止部が前記サイドバイザーと一体に設けられる場合は、前記抜止部が対応する前記上側引掛部、又は前記下側引掛部に引っ掛けられ、前記抜止部のいずれもが前記抜止部材に形成される場合は、一方の前記抜止部が対応する前記上側引掛部、又は前記下側引掛部に引っ掛けられ、
その後、前記サイドバイザーの内面において、前記装飾モールと引掛状態にない前記抜止部材の前記抜止部が前記孔部に挿通された状態で前記抜止部材が摺動され、前記抜止部材に形成された前記抜止部が対応する前記下側引掛部、又は前記上側引掛部に挿入されて引っ掛けられることで、前記サイドバイザーからの前記装飾モールの飛散を防止することを特徴とする装飾モールの飛散防止構造。
【請求項2】
前記抜止部材は、摺動後に前記サイドバイザーと係止するための係止手段が備えられ、
前記サイドバイザーは、前記係止手段が係止可能な被係止部が備えられ、
前記抜止部材の摺動により前記係止部と前記被係止部とが係止することで、前記抜止部材の移動が規制されることを特徴とする請求項1に記載の装飾モールの飛散防止構造。
【請求項3】
長尺帯状の鍔部と、前記鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含み、自動車の窓枠に取り付けられるサイドバイザーであって、
前記自動車への取付状態における前記サイドバイザーの外面に取付手段を介して取付可能な長尺帯状の装飾モールと、前記サイドバイザーからの前記装飾モールの飛散を防止する抜止部とが備えられ、
前記鍔部の所定箇所に、窓枠への取付状態における前記鍔部の内面と外面とを貫通する孔部が設けられ、
前記装飾モールは、長手方向上端部及び下端部が、前記サイドバイザーへの取付状態における内側方向に折り返されて、上側引掛部及び下側引掛部が形成され、
前記抜止部は、前記装飾モールの前記上側引掛部に引掛可能な上側抜止部、及び前記下側引掛部に引掛可能な下側抜止部を含み、前記上側抜止部及び前記下側抜止部の少なくとも一方は、前記サイドバイザーとは別体の抜止部材に形成され、前記サイドバイザーと一体に設けられる場合、前記鍔部の外面に形成され、
前記抜止部材は、前記サイドバイザーへの取付状態において、前記サイドバイザーの内面に配置される胴部が備えられると共に、前記抜止部が、前記孔部を通って前記サイドバイザーの外面側へ貫通するように、前記胴部から延設して形成され、
前記サイドバイザーの外面において、前記取付手段により前記装飾モールが前記サイドバイザーの外面に取り付けられると共に、前記抜止部が前記サイドバイザーと一体に設けられる場合は、前記抜止部が対応する前記上側引掛部、又は前記下側引掛部に引っ掛けられ、前記抜止部のいずれもが前記抜止部材に形成される場合は、一方の前記抜止部が対応する前記上側引掛部、又は前記下側引掛部に引っ掛けられ、
その後、前記サイドバイザーの内面において、前記装飾モールと引掛状態にない前記抜止部材の前記抜止部が前記孔部に挿通された状態で前記抜止部材が摺動され、前記抜止部材に形成された前記抜止部が対応する前記下側引掛部、又は前記上側引掛部に挿入されて引っ掛けられることで、前記サイドバイザーからの前記装飾モールの飛散を防止することを特徴とするサイドバイザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドバイザーに取り付けられる装飾モールの飛散防止構造及び、当該飛散防止構造を有するサイドバイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体を装飾する自動車外装品として装飾モール(以下、モールとも言う)が知られており、サイドバイザーへの取り付けも広く行われている。装飾モールを備えるサイドバイザーには、サイドバイザーを自動車の窓枠へ取り付けるための取付部材の他、装飾モールをサイドバイザーに固定する固定具を備えるものがある。例えば、出願人は、特許文献1において、モール部材の長手方向端縁を、自動車内側へ向かいカール上に折り曲げ形成する一方、固定国は係止爪を備えた脚を設け、長手方向端縁に係止爪を係止させる装飾モールの取付構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の装飾モールの取付構造では、モール部材の長手方向端縁それぞれに係止される係止爪が一定幅で設けられており、装飾モールの幅、すなわち装飾モールの長手方向上下端縁間距離が異なる場合は、装飾モールの幅に応じた係止爪を有する固定部材をそれぞれ用意する必要があった。そのため、装飾モールの取付時に、特定の幅の係止爪を有する固定部材を選択する必要があり、異なる幅の装飾モールを取り付ける場合等では、固定部材の種類が多くなり、固定部材の選択や確認等を含めた取付作業が煩雑になる可能性がある。また、多様な装飾モールの幅それぞれについて、対応する係止爪を有する固定部材を製造しなくてはならず、製造コストが嵩む可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、装飾モールの幅に依存しない装飾モールの飛散防止構造及びサイドバイザーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、長尺帯状の鍔部と、鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含み、自動車の窓枠に取り付けられるサイドバイザーと、自動車への取付状態におけるサイドバイザーの外面に取付手段を介して取付可能な長尺帯状の装飾モールと、サイドバイザーからの装飾モールの飛散を防止する抜止部とを含み、鍔部は、所定箇所に、窓枠への取付状態における鍔部の内面と外面とを貫通する孔部が設けられ、装飾モールは、長手方向上端部及び下端部が、サイドバイザーへの取付状態における内側方向に折り返されて、上側引掛部及び下側引掛部が形成され、抜止部は、装飾モールの上側引掛部に引掛可能な上側抜止部、及び下側引掛部に引掛可能な下側抜止部を含み、上側抜止部及び下側抜止部の少なくとも一方は、サイドバイザーとは別体の抜止部材に形成され、サイドバイザーと一体に設けられる場合、鍔部の外面に形成され、抜止部材は、サイドバイザーへの取付状態において、サイドバイザーの内側に配置される胴部が備えられると共に、抜止部が、孔部を通ってサイドバイザーの外面側へ貫通するように、胴部から延設して形成され、サイドバイザーの外面において、取付手段により装飾モールがサイドバイザーの外面に取り付けられると共に、抜止部がサイドバイザーと一体に設けられる場合は、抜止部が対応する上側引掛部、又は下側引掛部に引っ掛けられ、抜止部のいずれもが抜止部材に形成される場合は、一方の抜止部が対応する上側引掛部、又は下側引掛部に引っ掛けられ、その後、サイドバイザーの内面において、装飾モールと引掛状態にない抜止部材の抜止部が孔部に挿通された状態で抜止部材が摺動され、抜止部材に形成された抜止部が対応する下側引掛部、又は上側引掛部に挿入されて引っ掛けられることで、サイドバイザーからの装飾モールの飛散を防止することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上記構成に加え、抜止部材は、摺動後にサイドバイザーと係止するための係止部が備えられ、サイドバイザーは、係止部が係止可能な被係止部が備えられ、抜止部材の摺動により係止部と被係止部とが係止することで、抜止部材の移動が規制されることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、長尺帯状の鍔部と、鍔部に沿って長尺帯状に形成された庇体とを含み、自動車の窓枠に取り付けられるサイドバイザーであって、自動車への取付状態におけるサイドバイザーの外面に取付手段を介して取付可能な長尺帯状の装飾モールと、サイドバイザーからの装飾モールの飛散を防止する抜止部とが備えられ、鍔部の所定箇所に、窓枠への取付状態における鍔部の内面と外面とを貫通する孔部が設けられ、装飾モールは、長手方向上端部及び下端部が、サイドバイザーへの取付状態における内側方向に折り返されて、上側引掛部及び下側引掛部が形成され、抜止部は、装飾モールの上側引掛部に引掛可能な上側抜止部、及び下側引掛部に引掛可能な下側抜止部を含み、上側抜止部及び下側抜止部の少なくとも一方は、サイドバイザーとは別体の抜止部材に形成され、サイドバイザーと一体に設けられる場合、鍔部の外面に形成され、抜止部材は、サイドバイザーへの取付状態において、サイドバイザーの内面に配置される胴部が備えられると共に、抜止部が、孔部を通ってサイドバイザーの外面側へ貫通するように、胴部から延設して形成され、サイドバイザーの外面において、取付手段により装飾モールがサイドバイザーの外面に取り付けられると共に、抜止部がサイドバイザーと一体に設けられる場合は、抜止部が対応する上側引掛部、又は下側引掛部に引っ掛けられ、抜止部のいずれもが抜止部材に形成される場合は、一方の抜止部が対応する上側引掛部、又は下側引掛部に引っ掛けられ、その後、サイドバイザーの内面において、装飾モールと引掛状態にない抜止部材の抜止部が孔部に挿通された状態で抜止部材が摺動され、抜止部材に形成された抜止部が対応する下側引掛部、又は上側引掛部に挿入されて引っ掛けられることで、サイドバイザーからの装飾モールの飛散を防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び3に記載の発明によれば、経年劣化等により両面テープが外れた場合であっても、装飾モールの飛散を防止できると共に、上側抜止部と下側抜止部との少なくとも一方をサイドバイザーとは別体の抜止部材に設け、抜止部材の摺動により対応する上側引掛部、又は下側引掛部に引っ掛ける構成としたことで、従来のように装飾モールの幅に依存する固定部材を必要とせず、様々な幅の装飾モールに対応可能となる。従って、異なる幅の装飾モールを取り付ける場合等であっても、固定部材の種類を低減でき、固定部材の選択や確認等を含めた取付作業性が向上する。また、多様な装飾モールの幅それぞれについて、対応する固定部材を製造する必要がなくなるため、製造コストを削減できる。
請求項2に記載の発明によれば、抜止部材を摺動させた後、すなわち抜止部材に設けられた抜止部と対応する上側引掛部、又は下側引掛部とが引っ掛けられた状態で、抜止部材とサイドバイザーとが係止して移動が規制され、サイドバイザーと抜止部材とが位置決めされるため、引っ掛け状態を安定して保持でき、継続的に装飾モールの飛散を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】自動車の窓枠に装飾モール付きのサイドバイザーが取り付けられた状態を示す説明図である。
【
図2】上側抜止部を抜止部材に形成し、下側抜止部を鍔部に形成したサイドバイザーの説明図であって、(a)は抜止部材が取り付けられた状態のサイドバイザーの孔部近傍の縦断面を示す断面斜視図、(b)は抜止部材が取り付けられた状態の孔部周辺を示す内側から見た平面図である。
【
図5】
図2(b)のA-A線断面を示す断面斜視図であって、(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、(b)は摺動させた後の状態を示す。
【
図7】変形例の抜止部材を示す斜視図であって、(a)は内側から、(b)は外側から見た図である。
【
図8】上側抜止部を抜止部材に形成し、下側抜止部を鍔部に形成したサイドバイザーの説明図であって、(a)は抜止部材が取り付けられた状態のサイドバイザーの孔部近傍の縦断面を示す断面斜視図、(b)は抜止部材が取り付けられた状態の孔部周辺を示す内側から見た平面図である。
【
図9】
図8(b)のB-B線断面を示す断面斜視図であって、(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、(b)は摺動させた後の状態を示す。
【
図10】
図8(b)のC-C線断面を示す断面斜視図であって、(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、(b)は摺動させた後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、自動車の窓枠に装飾モール付きのサイドバイザーが取り付けられた状態を示す説明図である。
サイドバイザー1は、
図1に示すように、自動車の窓枠2に取り付けられ、日除けや雨除けとして機能する。サイドバイザー1は、長尺帯状の鍔部3と、鍔部3に沿って長尺帯状に形成された庇体4とを含み、鍔部3の外面には、長尺帯状の装飾モール5が取付手段としての両面テープT(
図2)によって取り付けられている。
サイドバイザー1は、図示しない両面テープ等の貼着手段によって窓枠2に固定される。
【0010】
図2は、上側抜止部を抜止部材に形成し、下側抜止部を鍔部に形成したサイドバイザーの説明図であって、
図2(a)は、抜止部材が取り付けられた状態のサイドバイザーの孔部近傍の縦断面を示す断面斜視図、
図2(b)は、抜止部材が取り付けられた状態の孔部周辺を示す内側から見た平面図である。
図3は、孔部周辺を示す斜視図であり、
図4は、抜止部材を示す斜視図である。また、
図5は、
図2(b)のA-A線断面を示す断面斜視図であって、
図5(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、
図5(b)は摺動させた後の状態を示す。
なお、
図2乃至10における方向は、車体への取付状態における方向で示し、車体側を内側、車体から離れる方向を外側とする。
装飾モール5は、SUSやアルミ等の硬質材料で形成され、
図2(a)に示すように、上下両端部が内側方向へ折り返されて、上側引掛部6及び下側引掛部7が形成されている。
【0011】
鍔部3の所定箇所には、
図2(a)に示すように、鍔部3の内面と外面とを貫通する孔部8が設けられ、孔部8に、サイドバイザー1と別体に設けられる抜止部として、抜止部材9が取り付けられる。また、鍔部3の外面の所定箇所で、本実施例に置いては孔部8の下方に、
図5(a),(b)に示すように、サイドバイザー1と一体に設けられる抜止部として、装飾モール5の下側引掛部7に引掛可能な下側抜止部10が形成されている。
本実施の形態において、孔部8は、後述する抜止部材9の上側抜止部12,12を挿通するため、上側抜止部12が挿通可能な大きさの2つの孔で構成される。また、孔部8の周辺は、
図3に示すように、抜止部材9を取り付けた際に、後述する抜止部材9の胴部13が、鍔部3の内面から内側方向へ突出することがない程度の深さの凹部81が形成されている。これにより、鍔部3の内面に図示しない貼着手段を貼着する際、貼着手段が浮き上がることがないため、貼着手段の鍔部3及び窓枠2への貼着強度の低下を防ぐ。さらに、
図5(a),(b)に示すように、孔部8の内部の後壁には、後述する抜止部材9の係止部15が係止可能で、係止後には、抜止部材9の下方への移動を規制する形状の被係止部11が形成されている。なお、図示されていないが、孔部8の内部の前壁にも、同様の被係止部11が形成されている。
下側抜止部10の近傍(本実施形態においては、下側抜止部10の下方)には、サイドバイザー1の成形時に下側抜止部10を形成するための、鍔部3の内面と外面とを貫通する成形穴Hが設けられている。通常、下側抜止部10のようなアンダーカット形状をサイドバイザー1に一体成形する場合、サイドバイザー1の成形型においてスライド構造が必要となる。成形型にスライド構造を設けることは、型の構造複雑化やコスト増の要因となり得るが、成形穴Hを設けることで、スライド構造を持たない成形型を用いて、サイドバイザー1にアンダーカット形状の下側抜止部10を成形可能となる。
【0012】
抜止部材9は、
図4に示すように、2つの上側抜止部12,12が、胴部13の前後両端縁から外側方向へ延設され、さらにそれぞれ前後に折れ曲がる横断面略L字形状に形成されている。上側抜止部12,12の前後に折れ曲がった部分は、胴部13から外側へ延びた部分よりも上方へ向けて突出するよう形成されている。また、胴部13の上端縁からは、内側方向へ向けて延びる窓枠引掛部14が形成されている。このように、窓枠引掛部14を抜止部材9に形成することによって、抜止部材9が、所謂、サイドバイザー1の窓枠2への取付部材としての機能を有するため、サイドバイザー1の窓枠2への取付部材を用意する必要がなくなり、装飾モール5の取り付けを含めたサイドバイザー1の窓枠2への取付作業に係る部品点数を低減できるため、作業性が向上する。
上側抜止部12,12の外端側の下端部には、前後且つ内側方向に斜めに突出する係止手段としての係止部15,15が形成されている。
【0013】
続いて、装飾モール5のサイドバイザー1への取付方法及び飛散防止構造について説明する。
図5は、
図2(b)のA-A線断面を示す断面斜視図であって、
図5(a)は、抜止部材を摺動させる前の状態、
図5(b)は、摺動させた後の状態を示す。
まず、装飾モール5を、両面テープTを用いて鍔部3の外面に貼着する。この際、下側引掛部7を下側抜止部10に引っ掛ける。
続いて、抜止部材9をサイドバイザー1の内側から上側抜止部12,12を孔部8に挿通させる。この状態が、
図5(a)に示される。
【0014】
上側抜止部12,12を孔部8に挿通させた後、抜止部材9の全体を上方へ摺動させる。抜止部材9の移動に伴い、上側抜止部12の前後に折れ曲がった部分の上端部が装飾モール5の上側引掛部6に挿入され引っ掛けられる。この状態が、
図5(b)に示される。このように、下側抜止部10の下側引掛部7への引っ掛けに引き続き、上側抜止部12を上側引掛部6に引っ掛けることで、経年劣化等により両面テープが外れた場合であっても、装飾モール5が飛散することを防止できる。このように、上側抜止部12をサイドバイザー1とは別体の抜止部材9に設け、抜止部材9の摺動により上側引掛部6に引っ掛ける構成としたことで、従来のように装飾モールの幅に依存する固定部材を必要とせず、様々な幅の装飾モールに対応可能となる。従って、異なる幅の装飾モールを取り付ける場合等であっても、固定部材の種類を低減でき、固定部材の選択や確認等を含めた取付作業性が向上する。また、多様な装飾モールの幅それぞれについて、対応する固定部材を製造する必要がなくなるため、製造コストを削減できる。
【0015】
また、抜止部材9を摺動させると、
図5(b)に示すように、抜止部材9に設けられた係止部15,15が、孔部8の内部で被係止部11,11に係止することで、抜止部材9の摺動前の位置に向けた移動、すなわち下方への移動が規制される。つまり、抜止部材9を摺動させた後、すなわち上側抜止部12と上側引掛部6とが引っ掛けられた状態で、抜止部材9とサイドバイザー1とが係止して位置決めされるため、引っ掛け状態を安定して保持でき、継続的に装飾モール5の飛散を防止できる。
【0016】
サイドバイザー1は、上述のように、装飾モール5をサイドバイザー1に取り付けた後、図示しない両面テープ等の貼着手段を用いて窓枠2に取り付けられる。このとき、抜止部材9に設けられた窓枠引掛部14が窓枠2に引っ掛けられる。つまり、抜止部材9が、所謂、サイドバイザー1の窓枠2への取付部材としての機能を有するため、サイドバイザー1の窓枠2への取付部材を用意する必要がなくなり、装飾モール5の取り付けを含めたサイドバイザー1の窓枠2への取付作業に係る部品点数を低減できるため、作業性が向上する。
【0017】
上記形態の装飾モール5の飛散防止構造は、長尺帯状の鍔部3と、鍔部3に沿って長尺帯状に形成された庇体4とを含み、自動車の窓枠2に取り付けられるサイドバイザー1と、自動車への取付状態におけるサイドバイザー1の外面に両面テープTを介して取付可能な長尺帯状の装飾モール5と、サイドバイザー1からの装飾モール5の飛散を防止する抜止部とを含み、鍔部3は、所定箇所に、鍔部3の内面と外面とを貫通する孔部8が設けられ、装飾モール5は、長手方向上端部及び下端部が、内側方向に折り返されて、上側引掛部6及び下側引掛部7が形成され、抜止部は、装飾モール5の上側引掛部6に引掛可能な上側抜止部12、及び下側引掛部7に引掛可能な下側抜止部10を含み、上側抜止部12は、サイドバイザー1とは別体の抜止部材9に形成され、下側抜止部10は、鍔部3の外面に形成され、抜止部材9は、サイドバイザー1への取付状態において、サイドバイザー1の内側に配置される胴部13が備えられると共に、上側抜止部12が、孔部8を通ってサイドバイザー1の外面側へ貫通するように、胴部13から延設して形成され、サイドバイザー1の外面において、両面テープTにより装飾モール5がサイドバイザー1の外面に取り付けられると共に、下側抜止部10が下側引掛部7に引っ掛けられ、サイドバイザー1の内面において、抜止部材9の上側抜止部12が孔部8に挿通された状態で抜止部材9が摺動され、抜止部材9に形成された上側抜止部12が上側引掛部6に挿入されて引っ掛けられることで、サイドバイザー1からの装飾モール5の飛散を防止する。
【0018】
このようにして構成される装飾モール5の飛散防止構造によれば、経年劣化等により両面テープTが外れた場合であっても、装飾モール5の飛散を防止できると共に、上側抜止部12をサイドバイザー1とは別体の抜止部材9に設け、抜止部材9の摺動により上側引掛部6に引っ掛ける構成としたことで、従来のように装飾モールの幅に依存する固定部材を必要とせず、様々な幅の装飾モールに対応可能となる。従って、異なる幅の装飾モールを取り付ける場合等であっても、固定部材の種類を低減でき、固定部材の選択や確認等を含めた取付作業性が向上する。また、多様な装飾モールの幅それぞれについて、対応する固定部材を製造する必要がなくなるため、製造コストを削減できる。
【0019】
また、抜止部材9は、摺動後にサイドバイザー1と係止するための係止部15が備えられ、サイドバイザー1は、係止部15が係止可能な被係止部11が備えられ、抜止部材9の摺動により係止部15と被係止部11とが係止することで、抜止部材9の移動が規制される。
よって、抜止部材9を摺動させた後、すなわち抜止部材9に設けられた上側抜止部12と上側引掛部6とが引っ掛けられた状態で、抜止部材9とサイドバイザー1とが係止して移動が規制され、サイドバイザー1と抜止部材9とが位置決めされるため、引っ掛け状態を安定して保持でき、継続的に装飾モール5の飛散を防止できる。
【0020】
次に、本発明の変形例について説明する。
図6は、変形例の孔部周辺を示す斜視図であり、
図7は、変形例の抜止部材を示す斜視図であって、
図7(a)は内側から、
図7(b)は外側から見た図である。
変形例のサイドバイザー1aの鍔部3aの所定箇所に設けられる孔部8aは、
図6に示すように、サイドバイザー1aの内側から見てU字形状の貫通孔として形成されている。また、孔部8aの上端から下端に向けて延びる舌片31の外側下端部には、前後方向に延び、外側へ突出する凸状の被係止部11aが形成されている。
変形例の抜止部材9aは、
図7(a),(b)に示すように、上側抜止部12a,12aと、係止部15aとが、胴部13の下端縁に沿って外側方向へ向けて延設され、さらに上方に向けて折れ曲がる縦断面略L字形状に形成されている。係止部15aは、上端へ向かうにつれて内側へ傾くように延びると共に、上端部が、内側方向へ突出し、前後方向に延びる突条となるよう成形されている(
図7(b),
図10)。なお、突条部分は、図示されるように、折り曲げにより成形されても良いし、一部のみを隆起させる等の他の手法により設けられても良い。
【0021】
続いて、装飾モール5のサイドバイザー1aへの取付方法及び飛散防止構造について説明する。
図8は、上側抜止部を抜止部材に形成し、下側抜止部を鍔部に形成したサイドバイザーの説明図であって、
図8(a)は、抜止部材が取り付けられた状態の孔部近傍の縦断面を示す断面斜視図、
図8(b)は、抜止部材が取り付けられた状態の孔部周辺を示す内側から見た平面図である。
図9は、
図8(b)のB-B線断面を示す断面斜視図であって、
図9(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、
図9(b)は摺動させた後の状態を示す。
図10は、
図8(b)のC-C線断面を示す断面斜視図であって、
図10(a)は抜止部材を摺動させる前の状態、
図10(b)は摺動させた後の状態を示す。
まず、装飾モール5を、両面テープTを用いて鍔部3aの外面に貼着する。この際、下側引掛部7を下側抜止部10に引っ掛ける。
続いて、抜止部材9aをサイドバイザー1aの内側から上側抜止部12a,12aを孔部8aに挿通させる。この状態が、
図9(a),
図10(a)に示される。
【0022】
上側抜止部12a,12aを孔部8aに挿通させた後、抜止部材9aの全体を上方へ摺動させる。抜止部材9aの移動に伴い、上側抜止部12aの上端部が装飾モール5の上側引掛部6に挿入され引っ掛けられる。この状態が、
図8(a),(b),
図9(b),
図10(b)に示される。このように、下側抜止部10の下側引掛部7への引っ掛けに引き続き、上側抜止部12aを上側引掛部6に引っ掛けることで、経年劣化等により両面テープTが外れた場合であっても、装飾モール5が飛散することを防止できる。
【0023】
また、抜止部材9aを摺動させると、
図10(a)に示す状態から
図10(b)に示す状態に移行する。つまり、抜止部材9aの摺動により、抜止部材9aに設けられた係止部15aが、被係止部11aに係止すると同時に、舌片31が胴部13と係止部16aの先端部とにより挟持される。これにより、抜止部材9aの摺動前の位置に向けた移動、すなわち下方への移動が規制される。従って、抜止部材9aを摺動させた後、すなわち上側抜止部12と上側引掛部6とが引っ掛けられた状態で、抜止部材9aとサイドバイザー1aとが係止して位置決めされるため、引っ掛け状態を安定して保持でき、継続的に装飾モール5の飛散を防止できる。
【0024】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、装飾モールの上側引掛部及び下側引掛部は、装飾モールの長手方向前端から後端にわたって設けられても良いし、突片などにより、装飾モールの長手方向上下両端縁の一部に設けられても良いし、それらの組み合わせであっても良い。なお、装飾モールは上側引掛部及び下側引掛部を形成可能であれば、SUSやアルミ等の金属性の材料以外にも、アクリル、アクリルニトリルブタジエンスチレン、アクリレートスチレンアクリルニトリル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂性の材料であっても良い。
また、孔部は、抜止部材の数に応じて設けられても良いし、1つの孔部に複数の抜止部材を挿通できるように設けられても良い。
【0025】
また、抜止部は、上記説明において、抜止部材に設けられる上側抜止部と鍔部に設けられる下側抜止部とについて説明したが、抜止部材に設けられる下側抜止部と鍔部に設けられる上側抜止部との組み合わせであっても良い。さらに、抜止部材に設けられる上側抜止部と抜止部材に設けられる下側抜止部との組み合わせであっても良い。このように、上下の抜止部がそれぞれ抜止部材に設けられる場合、各抜止部材に設けられる係止手段と鍔部に設けられる被係止手段とは、上下の係止箇所において同じ機構で係止するものでも、異なる機構で係止するものであっても良い。なお、上下の抜止部がそれぞれ抜止部材に設けられる場合、上下どちらか一方を先にサイドバイザーと係止させたあと、上述の手順に従い、装飾モールが取り付けられる。上下の抜止部がそれぞれ抜止部材に設けられる場合、両面テープを用いて装飾モールを鍔部の外面に貼着した後、上側抜止部及び下側抜止部によってそれぞれ対応する引掛部に引掛けても良い。加えて、抜止部材の摺動は、抜止部を対応する引掛部に引っ掛けるためのものであるため、摺動方向は、上下だけでなく、前後又は左右への回転も含まれる。
また、成形穴は、スライド構造を持たないサイドバイザーの成形型で、サイドバイザーと一体に設けられる抜止部が形成可能であれば、設けられる箇所、数、形状は限定されない。
【0026】
また、抜止部材の形状は、取付状態で胴部がサイドバイザーの内側に配置され、抜止部が孔部の外側に配置され、所定方向への摺動により対応する引掛部に引っ掛け可能であれば、任意に設定可能である。孔部は、内側から抜止部が挿通可能であれば良いし、係止手段及び鍔部の被係止部は、抜止部材が摺動した後、抜止部材の移動が規制され、サイドバイザーと抜止部材とが位置決めされれば良く、形状や機構は上記説明に限られず、任意に設定可能である。抜止部材の材質も限定されない。対応する孔部の形状も抜止部材に合わせて変更可能である。例えば、胴部から延設される抜止部は1つでも良く、胴部の前端縁や後端縁、下端縁以外から延設されても良い。他にも、本発明の変形例とは逆の組み合わせとし、胴部の前方及び後方に係止手段を設け、係止手段と係止手段の間に抜止部を設けても良い。
また、鍔部に抜止部が形成される場合、鍔部の前端から後端にわたって形成されても良いし、一部にのみ形成されても良い。一部にのみ形成される場合、形成箇所は孔部近傍に限られず、上側抜止部と下側抜止部は上下方向に並んで設けられていなくても良く、同じ数が設けられていなくても良い。
また、抜止部材が窓枠引掛部を備えない場合、公知のサイドバイザーの窓枠への取付に用いられる取付部材を用いて、装飾モールを取り付けたサイドバイザーを窓枠に取り付けても良い。
【符号の説明】
【0027】
1,1a・・サイドバイザー、2・・窓枠、3,3a・・鍔部、4・・庇体、5・・装飾モール、6・・上側引掛部、7・・下側引掛部、8,8a・・孔部、9,9a・・抜止部材、10・・下側抜止部、11,11a・・被係止部、12・・上側抜止部、13,13a・・胴部、14・・窓枠引掛部、15,15a・・係止部。