(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064771
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 15/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B62J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173618
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 尚史
(57)【要約】
【課題】フェンダ下面とメッシュ材との間に泥が溜まることを防止すること。
【解決手段】車輪をその上方から覆うフェンダと、前記フェンダの下面に配置されたメッシュ材と、を備えた鞍乗型車両であって、前記フェンダの前記下面に配置され、前記メッシュ材を支持する支持部材を備え、前記支持部材は、車幅方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状のアーチ部を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を上方から覆うフェンダ(7)と、
前記フェンダの下面に配置されたメッシュ材(8,8A)と、
を備えた鞍乗型車両(1)であって、
前記フェンダの下面に配置され、前記メッシュ材を支持する支持部材(9,9A,9B)を備え、
前記支持部材は、車幅方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状の少なくとも一つのアーチ部(92,94,95,98)を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記少なくとも一つのアーチ部は、車両前後方向に離間して配置された複数のアーチ部(92a-92e)を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記少なくとも一つのアーチ部は、
前記一端側から前記他端側に車幅方向に延びるにつれて車両前後方向に傾斜して延設されている第一のアーチ部(94A,95A)と、
前記第一のアーチ部と交差するように延設されている第二のアーチ部(94B,95B)と、を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記少なくとも一つのアーチ部は、前記車幅方向よりも車両前後方向に長く延設されたアーチ部(98)を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載の鞍乗型車両であって、
前記メッシュ材(8)はシート状に形成され、かつ、前記フェンダ(7)の下面と前記支持部材(9,9A)との間に配置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記メッシュ材(8A)は、前記支持部材(9B)が挿入される袋である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記フェンダは、車両前後方向の途中の部位において上下方向に屈曲した屈曲部(74,75)を含み、
前記複数のアーチ部の少なくとも一つ(92a,92c)は、前記車両前後方向で前記屈曲部に対応する位置に配置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記支持部材(9,9A,9B)は、前記フェンダに脱着自在に取り付けられる取付部(90,93)を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項8に記載の鞍乗型車両であって、
前記取付部(90)は、固定具(40)が係合する係合孔である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項8に記載の鞍乗型車両であって、
前記取付部(93)は、前記フェンダの周縁(71)を挟持する挟持部である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記支持部材(9,9A)は、前記フェンダの周縁(71)に沿う周縁部(91)を含み、
前記少なくとも一つのアーチ部(92,94,95)は、前記周縁部の前記車幅方向で左側の部分(91L)と右側の部分(91R)とに接続されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記少なくとも一つのアーチ部(92,94,95,98)は、前記フェンダの形状に沿って湾曲又は屈曲している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両のフェンダ下面には車輪で跳ね上げられた泥が付着する場合がある。フェンダ下面に泥が付着すると、車重が増加して車両の走行性能に影響する可能性があり、特に、競技用のオフロード車両においては、競技において不利に働く場合がある。そこで、フェンダ下面にメッシュ材等を取り付けて、泥の付着を低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-135362号公報
【特許文献2】特開2016-60365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、フェンダ下面に取り付けたメッシュ材とフェンダ下面との間に泥が侵入して溜まる場合があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、フェンダ下面とメッシュ材との間に泥が溜まることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
車輪を上方から覆うフェンダ(7)と、
前記フェンダの下面に配置されたメッシュ材(8,8A)と、
を備えた鞍乗型車両(1)であって、
前記フェンダの前記下面に配置され、前記メッシュ材を支持する支持部材(9,9A,9B)を備え、
前記支持部材は、車幅方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状の少なくとも一つのアーチ部(92,94,95,98)を含む、
ことを特徴とする鞍乗型車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フェンダ下面とメッシュ材との間に泥が溜まることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図。
【
図3】フロントフェンダ、メッシュ材及び支持部材の分解図。
【
図4】(A)は支持部材の平面図、(B)は
図2のA-A線断面図。
【
図5】(A)は別の実施形態に係るフロントフェンダの左側面図、(B)は
図5(A)のB-B線断面図。
【
図6】更に別の実施形態に係るフロントフェンダの左側面図。
【
図7】
図6の実施形態におけるフロントフェンダ、メッシュ材及び支持部材の分解図。
【
図8】(A)は
図6の実施形態における支持部材の平面図、(B)は
図6のC-C線断面図。
【
図9】更に別の実施形態に係るフロントフェンダの左側面図。
【
図10】
図9の実施形態におけるフロントフェンダ、メッシュ材及び支持部材の分解図。
【
図11】(A)は
図9の実施形態における支持部材の平面図、(B)は
図9のD-D線断面図。
【
図12】
図9の実施形態におけるメッシュ材及び支持部材の説明図。
【
図13】更に別の実施形態におけるフロントフェンダ、2つのメッシュ材及び2つの支持部材の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
各図において、矢印X、Y、Zは互いに直交する方向を示し、X方向は鞍乗型車両の前後方向、Y方向は鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)、Z方向は上下方向を示す。
【0011】
<第一実施形態>
<鞍乗型車両の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両1の左側面図である。鞍乗型車両1はオフロード系の自動二輪車であるが、本発明は他の形式の自動二輪車を含む各種の鞍乗型車両に適用可能である。以下、鞍乗型車両1のことを車両1と呼ぶ場合がある。
【0012】
車両1は車体フレーム10を備える。車体フレーム10は、車両前部に設けられるヘッドパイプ11、左右一対のメインフレーム12(
図1では左側のメインフレームのみが図示されている)、ダウンフレーム13及び左右一対のロアフレーム14(
図1では左側のロアフレームのみが図示されている)とを含む。ヘッドパイプ11及びダウンフレーム13は車体中心に沿って1本で設けられている。
【0013】
左右一対のメインフレーム12と、ダウンフレーム13と、左右一対のロアフレーム14とはループ状に連結されており、これらによって囲まれる領域の内側にパワーユニット2が配置されている。パワーユニット2はエンジンと変速機とを含む。パワーユニット2の前部には、エンジンの排気を排気マフラー5へ導くエキゾーストパイプ6が設けられている。
【0014】
左右一対のメインフレーム12はヘッドパイプ11の上部に取り付けられ、パワーユニット2の上方で左右に湾曲して斜め下後方へ延びている。ダウンフレーム13はヘッドパイプ11の下部に取り付けられ、パワーユニット2の前方で車体中心を直線状に斜めに下がり下方へ延び、その下端部で左右一対のロアフレーム6の前端部に連結されている。各ロアフレーム6はパワーユニット2の前側下部からパワーユニット2の下方へ湾曲して略直線状に後方へ延び、後端部がメインフレーム12の下端部に連結されている。
【0015】
パワーユニット2の上方には、左右一対のメインフレーム上に支持された燃料タンク3が配置されている。燃料タンク3の直後にはシート4が配置されている。ヘッドパイプ11にはステアリングステム20が回動可能に支持され、ステアリングステム20の上端部にトップブリッジ22が取り付けられている。ステアリングステム20の下端部にはボトムブリッジ26が設けられている。
【0016】
トップブリッジ22には左右一対のフロントフォーク23(
図1では左側のフロントフォークのみが図示されている)が支持されている。一対のフロントフォーク23はまた、ボトムブリッジ26により支持されている。一対のフロントフォーク23の下端部には車輪(前輪)FWが回転自在に支持されており、トップブリッジ22に取り付けられたハンドル21で転陀される。一対のフロントフォーク23にはフロントフェンダ7が支持されている。フロントフェンダ7は車輪FWをその上方から覆うように配置されており、前輪FWの回転によって巻き上げられる泥等の飛散を抑制する。
【0017】
メインフレーム12にはピボット軸17によって、リアスイングアーム18の前端部が揺動自在に支持されている。リアスイングアーム18の後端部には車輪(後輪)RWが支持され、パワーユニット2のドライブスプロケット(不図示)と後輪RWの従動スプロケット(不図示)とに巻きかけられるチェーン(不図示)によって後輪RWが回転駆動される。
【0018】
制動装置34は前輪FWを制動する。制動装置34は、前輪FWと同軸で固定されたブレーキディスク34aと、フロントフォーク23の下端部に支持されたブレーキキャリパー34bとを備える。前輪RWにも制動装置が設けられている(不図示)。
【0019】
<フロントフェンダ周辺の構造>
フロントフェンダ7の周辺の構造について
図2~
図4(B)を参照して説明する。
図2はフロントフェンダ7の側面図であり、その内側に備えられるメッシュ材8及び支持部材9を破線で図示している。
図3は、フロントフェンダ7、メッシュ材8及び支持部材9の分解図である。
図4(A)は支持部材9の平面図である。
図4(B)は
図2のA-A線断面図である。
【0020】
フロントフェンダ7は、周縁部71と、周縁部71から上方へ膨出した膨出部72とを含むシェル形状の部材である。周縁部71は、前縁部71F、左縁部71L、右縁部71R及び後縁部71Bを含む。X方向で膨出部72の中央部よりもやや後方には左右一対のフロントフォーク23に、フロントフェンダ7を固定する金具(不図示)の取付部73が形成されている。フロントフェンダ7は、X方向で前側の屈曲部74と、後側の屈曲部75とを含む。フロントフェンダ7は、これら屈曲部74及び75でZ方向に屈曲することで、側面視で、全体として弧状を有している。また、フロントフェンダ7は、支持部材9を固定する取付具40が取り付けられる取付部70が複数箇所に形成されている。本実施形態の取付部70は、フロントフェンダ7を厚み方向に貫通する孔である。
【0021】
メッシュ材8は、網に代表される多孔質で可撓性を有するシートであり、フロントフェンダ7の下面に配置される。前輪FWの回転によって巻き上げられる泥等がフロントフェンダ7の下面に付着する前にメッシュ材8に付着する。メッシュ材8が多孔質であることにより、フロントフェンダ7の下面に比べて泥等の付着力が低く、走行時の振動によってメッシュ材8に付着した泥等は落下し易くなる。したがって、泥等の固着による車重の増加を防止することができる。
【0022】
支持部材9は、フロントフェンダ7の下面に配置された、平面視で梯子型の枠状の部材であり、例えば、樹脂材料によって一体的に形成されている。支持部材9は、複数の取付部90を含み、取付具40を介してフロントフェンダ7に固定される。本実施形態の場合、各取付部90は支持部材9を厚み方向に貫通する取付孔である。固定具40は取付部70及び取付部90に挿入されるクリップ式の係合具であり、固定具40の取付け、取り外しによって、支持部材9はフロントフェンダ7に脱着自在である。なお、固定具40は、ねじでもよく、この場合、取付部90はねじ穴であってもよい。
【0023】
メッシュ材8は、フロントフェンダ7の下面と支持部材9との間に挟まれて支持されている。支持部材9は、周縁部91と、Y方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状の複数のアーチ部92a~92e(総称するときはアーチ部92と表記する)とを含む。周縁部92は、フロントフェンダ7の周縁部71に沿って形成されており、前縁部91F、左縁部91L及び右縁部91Rを含む。
【0024】
アーチ部92a~92eは、X方向に離間して配置されている。各アーチ部92は、Y方向の一方端部が左縁部91Lに接続され、他方端部が右縁部91Rに接続されている。各アーチ部92のY方向の一方端部及び他方端部の、X方向の各位置は同じ位置である。各アーチ部92は、途中部位が湾曲又は屈曲した線状(又は帯状)の部材であって、左縁部91Lと右縁部91Rとを跨ぎ、フロントフェンダ7に沿って湾曲又は屈曲したブリッジ形状を有している。
【0025】
アーチ部92aは、フロントフェンダ7の屈強部74に対応する位置に配置されている。また、アーチ部92cは、フロントフェンダ7の屈曲部75に対応する位置に配置されている。フロントフェンダ7の屈強部74及び75が、アーチ部92a及び92cによって補強され、屈曲に起因する応力の集中に対して剛性を向上できる。
【0026】
アーチ部92は前後で少なくとも2か所ずつ設けられており、支持部材9の前側には2つのアーチ部92a及び92bが、支持部材9の後側には、3つのアーチ部92c~92eが設けられている。メッシュ材8をX方向の広範囲に渡って支持できる。
【0027】
以上の構成により、本実施形態では、支持部材9がアーチ部92を備えたことで、メッシュ材8をフロントフェンダ7の下面に、より近い位置で沿わせることができる。したがって、メッシュ材8とフロントフェンダ7の下面との隙間を小さくすることができ、フロントフェンダ7の下面とメッシュ材8との間に泥が溜まることを防止することができる。或いは、フロントフェンダ7の下面とメッシュ材8との間に泥が溜まったとしても、少なくすることができ、大幅な車重増を回避できる。更に複数のアーチ部92がX方向に離間して配置されているので、フロントフェンダ7のX方向のより広い範囲に渡って、フロントフェンダ7の下面とメッシュ材8との間に泥が溜まることを防止することができる。
【0028】
支持部材9は、フロントフェンダ7に対して脱着可能であるため、メッシュ材8を交換することも容易である。メッシュ材8として、開口率がことなるシートを走行路の状態(泥の水気の程度等)に応じて選択的に使用することができる。
【0029】
<第二実施形態>
第一実施形態では、固定具40を用いてフロントフェンダ7に支持部材9を取り付けたが、別の取付構造も採用可能である。
図5(A)は本実施形態のフロントフェンダ7の左側面図であり、
図5(B)は
図5(A)のB-B線断面図である。本実施形態の支持部材9は、周縁部71に取付部93が設けられている。取付部93は、断面形状がC字型(又はU字型)を有しており、かつ、フロントフェンダ7の周縁部71を、その厚み方向に挟持可能な弾性を有する挟持部である。
【0030】
フロントフェンダ7に支持部材9を取り付ける場合は、フロントフェンダ7の周縁部71を、取付部93へ差し込めばよく、取り外す場合は取付部93の対向する片を少し開いてフロントフェンダ7の周縁部71を取付部93から抜き出せばよい。本実施形態によれば、部品点数を削減できる。
【0031】
<第三実施形態>
第一実施形態では、アーチ部92の一方端部と他方端部のX方向の位置を同じとしたが、異なっていてもよい。
図6は本実施形態におけるフロントフェンダ7の側面図であり、その内側に備えられるメッシュ材8及び支持部材9Aを破線で図示している。
図7は、フロントフェンダ7、メッシュ材8及び支持部材9Aの分解図である。
図8(A)は支持部材9Aの平面図である。
図8(B)は
図6のC-C線断面図である。以下、支持部材9Aの構成のうち、第一実施形態の支持部材9と異なる構成について説明する。
【0032】
支持部材9Aは、複数のアーチ部94A、94B、95A及び95Bを有する。アーチ部94A、94Bは、それぞれ、左縁部91Lに接続された端部94Lと、右縁部91Rに接続された端部94Rとを有する。アーチ部94Aは、X方向で前側に端部94Lを後側に端部94Rを有しており、Y方向に延びるにつれてX方向に傾斜して延設されている。アーチ部94Bは、X方向で前側に端部94Rを後側に端部94Lを有しており、アーチ部94Aとは逆向きでY方向に延びるにつれてX方向に傾斜して延設されている。アーチ部94Aとアーチ部94Bは、交差部94Cで交差しており、かつ、互いに一体的に形成されており、全体としてX字型を有している。
【0033】
アーチ部95A、95Bの構成もアーチ部94A、94Bと同様であり、交差部95Cで交差しており、かつ、互いに一体的に形成されており、全体としてX字型を有している。
【0034】
本実施形態によれば、複数のアーチ部94A、94B、95A及び95Bにより、支持部材9Aの剛性を高めることができ、これによりフロントフェンダ7の剛性向上にも寄与する。各アーチ部94A、94B、95A及び95Bが、それぞれ、X方向により長い範囲でメッシュ材8を支持することができる。
【0035】
<第四実施形態>
第一~第三実施形態では、支持部材9、9Aを枠状に形成したが、全体的に板状に形成してもよい。
図9は本実施形態におけるフロントフェンダ7の側面図であり、その内側に備えられるメッシュ材8A及び支持部材9Bを破線で図示している。
図10は、フロントフェンダ7、メッシュ材8A及び支持部材9Bの分解図である。
図11(A)は支持部材9Bの平面図である。
図11(B)は
図9のD-D線断面図である。以下、メッシュ材8A及び支持部材9Bの構成のうち、上記実施形態のメッシュ材8、支持部材9及び9Aと異なる構成について説明する。
【0036】
支持部材9Bは、全体的に屈曲又は湾曲した板状の部材であり、フロントフェンダ7の内面のうち、泥の付着が多い天部付近(車幅方向中央部)にのみ設けられている。支持部材9Bは前部96と、後部97と、前部96と後部97との間の中間部として、アーチ部98とを含む樹脂部材又は金属部材である。前部96は平坦な板状に形成され、後部97は湾曲した板状に形成されている。アーチ部98はY方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状を有しており、図示の例の場合、Y-Z平面の断面形状の高さが低く、底辺の無い台形状である。アーチ部98は、Y方向よりもX方向に長く延設されている。
【0037】
図12も参照して、メッシュ材8Aは、X方向の一方端部に開口80を有し、他方端部81が閉鎖された袋であり、支持部材9Bは開口80からメッシュ材8Aの内部に挿入されたのち、フロントフェンダ7に取り付けられる。このため、メッシュ材8Aは、フロントフェンダ7の下面と支持部材9Bの間に位置する上側部分と、支持部材9Bの下方に位置する下側部分とを含み、前輪FWで跳ね上げられた泥等は下側部分に付着し、また、落下する。
【0038】
本実施形態によれば、支持部材9Bもフロントフェンダ7への泥の付着防止に寄与するため、フロントフェンダ7の下面とメッシュ材8との間に泥が溜まることを防止することができる。メッシュ材8Aに支持部材8Bを差し込むことで、支持部材8Bにメッシュ材8Aを支持することができ、組立てが容易である。
【0039】
<第五実施形態>
第四実施形態と、第一~第三実施形態のいずれか一つとを組み合わせることも可能である。一例として、第四実施形態と第一実施形態とを組み合わせた構成について説明する。
図13は本実施形態におけるフロントフェンダ7、2つのメッシュ材8、8A及び2つの支持部材9、9Bの分解図である。本実施形態の場合、上から順番に、フロントフェンダ7、メッシュ材8A、支持部材9B(メッシュ材8Aへ挿入される)、メッシュ材8、支持部材9が積層されて組み立てられる。
【0040】
図14は組み立て後の断面図であり、
図2のA-A線に相当する切断面の断面図である。固定具40と支持部材8Aとが干渉する場合には、支持部材8Aに固定具40が挿通可能な開口が形成される。本実施形態では、メッシュ材8とメッシュ材8Aとが二重構造となり、泥の付着を更に防止できる。
【0041】
<他の実施形態>
上記各実施形態では、前輪FWを上から覆うフロントフェンダ7について説明したが、後輪RWを上から覆うリアフェンダを備えた車両においては、リアフェンダに本発明を適用可能である。
【0042】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は少なくとも以下の鞍乗型車両を開示している。
【0043】
1.上記実施形態の鞍乗型車両(1)は、
車輪(FW)を上方から覆うフェンダ(7)と、
前記フェンダ(7)の下面に配置されたメッシュ材(8,8A)と、
を備えた鞍乗型車両であって、
前記フェンダ(7)の下面に配置され、前記メッシュ材(8,8A)を支持する支持部材(9,9A,9B)を備え、
前記支持部材(9,9A,9B)は、車幅方向の一端側から他端側に延設され、かつ、上側に凸形状の少なくとも一つのアーチ部(92,94,95,98)を含む。
この実施形態によれば、前記フェンダの下面に前記メッシュ材を近づけることができ、前記フェンダ下面と前記メッシュ材との間に泥が溜まることを防止することができる。
【0044】
2.上記実施形態では、
前記少なくとも一つのアーチ部は、車両前後方向に離間して配置された複数のアーチ部(92a-92e)を含む。
この実施形態によれば、前記車両前後方向の広範囲に渡って前記フェンダ下面と前記メッシュ材との間に泥が溜まることを防止することができる。
【0045】
3.上記実施形態では、
前記少なくとも一つのアーチ部は、
前記一端側から前記他端側に前記車幅方向に延びるにつれて車両前後方向に傾斜して延設されている第一のアーチ部(94A,95A)と、
前記一端側から前記他端側に前記車幅方向と交差する方向に延設されている第二のアーチ部(94B,95B)と、を備え、
前記第一のアーチ部と交差するように延設されている第二のアーチ部 (94C,95C)と、を含む。
この実施形態によれば、前記支持部材の剛性を向上することもできる。
【0046】
4.上記実施形態では、
前記少なくとも一つのアーチ部は、前記車幅方向よりも車両前後方向に長く延設されたアーチ部(98)を含む。
この実施形態によれば、前記アーチ部も、前記フェンダの下面に対する泥の付着防止に寄与する。
【0047】
5.上記実施形態では、
前記メッシュ材(8)はシート状に形成され、かつ、前記フェンダ(7)の下面と前記支持部材(9,9A)との間に配置されている。
この実施形態によれば、前記メッシュ材として、網などの汎用品を用いることができる。
【0048】
6.上記実施形態では、
前記メッシュ材(8A)は、前記支持部材(9B)が挿入される袋である。
この実施形態によれば、組立てを容易化することができる。
【0049】
7.上記実施形態では、
前記フェンダは、車両前後方向の途中の部位において上下方向に屈曲した屈曲部(74,75)を含み、
前記複数のアーチ部の少なくとも一つ(92a,92c)は、前記車両前後方向で前記屈曲部に対応する位置に配置されている。
この実施形態によれば、前記屈曲部の剛性を前記アーチ部によって向上できる。
【0050】
8.上記実施形態では、
前記支持部材(9,9A,9B)は、前記フェンダに脱着自在に取り付けられる取付部(90,93)を含む。
この実施形態によれば、前記メッシュ材の交換が容易化する。
【0051】
9.上記実施形態では、
前記取付部(90)は、固定具(40)が係合する係合孔である。
この実施形態によれば、比較的簡単な構造で前記支持部材の脱着ができる。
【0052】
10.上記実施形態では、
前記取付部(93)は、前記フェンダの周縁(71)を挟持する挟持部である。
この実施形態によれば、部品点数を削減しつつ、前記支持部材の脱着ができる。
【0053】
11.上記実施形態では、
前記支持部材(9,9A)は、前記フェンダ(7)の周縁(71)に沿う周縁部(91)を含み、
前記少なくとも一つのアーチ部(92,94,95)は、前記周縁部の前記車幅方向で左側の部分(91L)と右側の部分(91R)とに接続されている。
この実施形態によれば、前記フェンダの周縁付近においても、前記メッシュ材を前記フェンダに近づけて、前記フェンダと前記メッシュ材との間に泥が溜まることを防止することができる。
【0054】
12.上記実施形態では、
前記少なくとも一つのアーチ部(92,94,95,98)は、前記フェンダの形状に沿って湾曲又は屈曲している。
この実施形態によれば、前記フェンダと前記メッシュ材との隙間を小さくして、これらの間に泥が溜まることを防止することができる。
【0055】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 鞍乗型車両、7 フェンダ、8、8A メッシュ材、9、9A、9B 支持部材