(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064776
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】マーク付きタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240507BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20240507BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240507BHJP
C09J 121/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60C13/00 C
G09F3/00 M
C09J7/38
C09J121/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173627
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 文明
(72)【発明者】
【氏名】植嶋 之博
【テーマコード(参考)】
3D131
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3D131BC31
3D131BC47
3D131GA01
3D131LA20
3D131LA24
3D131LA28
4J004AA05
4J004AB01
4J004BA02
4J004CC03
4J004EA06
4J004FA01
4J040CA011
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040MA12
4J040NA15
4J040PA09
(57)【要約】
【課題】
黒色タイヤへの高度情報のマーキングにおいて、凹凸刻印マーキング法に対して、視認性が良好で且つ安価で安定なサーマルヘッドマーキング法の問題点である種々な過酷な条件で使用されるタイヤ用マークの耐消マーク性等の耐久性を解消する少なくともバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤを提供すること。
【解決手段】
耐熱性熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に白色フィラー含有のインクマーク受像層を設け、他方の面にゴム系粘着層を有してなるラベル基材の受像層面に、サーマルヘッドプリンタ出力手段により少なくともバーコード及び/あるいは2次元コードが形成されたマーキング基材が、グリーンタイヤの加硫成型の際、ゴム系粘着層面が、金型により同時形成されるタイヤ凹部内の底面部に接触してあり、マーク形成されたラベル基材がゴム系粘着層を介して一体となって加硫後のタイヤゴムと接着状態で凹部内にあるタイヤとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が200℃以上である熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に白色フィラー含有のインクマーク受像層を設け、他方の面にゴム系粘着層を有してなるラベル基材の該受像層面に、サーマルヘッドプリンタ出力手段により少なくともバーコード及び/あるいは2次元コードが形成されたマーキング基材がグリーンタイヤの加硫成型の際、該ゴム系粘着層面が、金型により同時形成されるタイヤ凹部内の底面部に接触してあり、マーク形成された該ラベル基材が該ゴム系粘着層を介して一体となって加硫後のタイヤゴムと接着状態で該凹部内にあることを特徴とするバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤ。
【請求項2】
前記白色フィラー含有のインクマーク受像層中のバインダー樹脂が、少なくとも前記加硫後の状態において、架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤ。
【請求項3】
前記マーク像を構成するバインダー樹脂が、少なくとも前記加硫後の状態において、架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1、請求項2に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤ。
【請求項4】
前記凹部内に前記マーク形成された基材が接着された後、更に前記凹部が紫外線硬化インクで充填されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤ。
--------------------------------------------------------------------------------
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの管理用として今後増々要求が高まる高度な情報を有するバーコード及び/あるいは2次元コード付きのタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤへの文字等のマーキングに金型を利用した刻印方式が有る。しかしながら、この方式は、バーコードや2次元コード等の高度な情報を有するマーク形成に向くものではない。
上記2次元コード等のマーキング法としてレーザー凹凸刻印マーキングがある。この方式は、耐久性に優れたマークを形成できる点において優れている。しかしながら、レーザー装置は高価であり、又コードリーダーの読み取り時の鮮明さに欠ける欠点を有する。
一方、簡便なマーク形成法として、サーマルヘッドによる熱転写方式印刷ラベルを用いたマーキングがある。しかしながら、該方式は、難接着性の加硫ゴムに対する接着性に乏しいため耐久性が無く,実用性に乏しいものであった。
該熱転写方式印刷ラベルのこの問題を改良する手段として、特許文献1には、片面がマット処理された白色フィラー含有の耐熱性樹脂フィルムの他面にプライマー層を介して加硫促進剤含有かつ加硫剤無含有のゴム系粘着層を有してなるラベル基材のマット処理面に熱転写インク情報を有してなり、その熱転写インク情報が耐熱性の樹脂系インクよりなる下層とポリメチルメタクリレートよりなる表層の少なくとも2層構造を有してラベル表面に露出した状態にあることを特徴とするタイヤ管理用ラベルが記載されている。
しかしながら、特許文献1記載の発明でも、加硫後のタイヤとラベル基材の密着性は十分であるが、種々な過酷な条件で使用されるタイヤにおいては、タイヤ表面に凸状に設けられた接着ラベル基材自体及びマーク像は、種々の異物により基材に傷が付き易いという問題がある。又、マーク像もアルコール等の耐溶剤性に問題が有り、更に基材がマット処理された白色フィラー含有の耐熱性樹脂フィルムに限定されるためコスト面から基材フィルムが限定されるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱転写方式により作製された少なくともバーコード及び/あるいは2次元コード等のマークを有するタイヤにおいて、従来より耐久性が高いマーク付きタイヤを提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、本発明の課題を達成するための手段を具体的に説明する。
【0006】
第1発明は、融点が200℃以上である熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に白色フィラー含有のインクマーク受像層を設け、他方の面にゴム系粘着層を有してなるラベル基材の該受像層面に、サーマルヘッドプリンタ出力手段により少なくともバーコード及び/あるいは2次元コードが形成されたマーキング基材がグリーンタイヤの加硫成型の際、該ゴム系粘着層面が、金型により同時形成されるタイヤ凹部内の底面部に接触してあり、マーク形成された該ラベル基材が該ゴム系粘着層を介して一体となって加硫後のタイヤゴムと接着状態で該凹部内にあることを特徴とするバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤである。
【0007】
第2発明は、前記白色フィラー含有のインクマーク受像層中のバインダー樹脂が、少なくとも前記加硫後の状態において、架橋剤により架橋されていることを特徴とする第1発明に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤである。
【0008】
第3発明は、前記マーク像を構成するバインダー樹脂が、少なくとも前記加硫後の状態において、架橋剤により架橋されていることを特徴とする第1発明、第2発明に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤである。
【0009】
第4発明は、前記凹部内に前記マーク形成された基材が接着された後、更に前記凹部が紫外線硬化インクで充填されていることを特徴とする第1発明、第2発明、第3発明に記載のバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、黒色タイヤへの高度情報のマーキングにおいて、視認性に難があり且つ高価なレーザー凹凸刻印マーキング法に対して、視認性が良好で且つ安価で安定なサーマルヘッドマーキング法の問題点である種々な過酷な条件で使用されるタイヤ用マークの耐消マーク性等の耐久性を解消する少なくともバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤを提供出来たことにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<マーク形成基材フィルム>>
少なくともバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤ製造に使用される、本発明のマーク形成基材フィルムは、耐熱性熱可塑性樹脂フィルム上の一方の面に白色フィラー含有のインクマーク受像層と他方の面にゴム系粘着層を必須の構成要素とする。そして、該インクマーク受像層とゴム系粘着層は、該フィルムに、直接的あるいは間接的に接着された状態で設けられている構成よりなる。
【0012】
(耐熱性熱可塑性樹脂フィルム)
本発明に用いられる耐熱性熱可塑性樹脂フィルムは、前記マーク形成された基材をグリーンタイヤの加硫成型時に、高圧/高温の条件で金型により同時形成されるタイヤ凹部内に貼着される。該加硫処理は通例145~190℃の温度による10~70分間の加熱条件で行われることより、融点が200℃以上の熱可塑性樹脂フィルムからなるものが好ましい。
【0013】
その例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネートの1種又は2種以上からなるフィルムなどが挙げられる。これらの内、ポリブチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムがコスト面で好ましい。ただし、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、グリーンタイヤの高圧での加硫成型時、高温側で行う場合、理由は不明であるが、結晶化のためかポリエチレンテレフタレートフィルムが脆く千切れやすくなる場合がある。従って、このような現象が生じにくいポリブチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。更に、非マーク部の該基材フィルムを底面のみならず、金型により形成された凹部側面にも貼着したい場合には、凹凸追従性の観点から、未延伸のポリブチレンテレフタレートフィルムを使用することが好ましい。
【0014】
タイヤは物理的強度を発現するために通常カーボンを含有し黒色である。マーク像の視認性を良好なものとするため、本発明の受像層は、前記フィルムの一方の面に白色フィラー含有の隠蔽機能がある。従って、白色粒子等を含有させた白色フィルムやその他任意の着色フィルムを用いることも出来るがコスト的に無駄であり、安価な透明フィルムの方が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる前記フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、コスト面、作業性及びフィルム強度の観点から、10μm~120μmであることが好ましく、15μm~100μmであることがより好ましい。
【0016】
(インクマーク受像層)
本発明に用いられる白色フィラー含有インクマーク受像層は、前記耐熱性熱可塑性樹脂フィルムよりなる基材フィルムに設けられたゴム系粘着層の他方の面に、少なくとも白色フィラーと樹脂とよりなる層として設けられ、該インク受像性の機能及び黒色ゴムの隠蔽性の機能のみならず、該基材フィルムとの密着性、耐傷性や耐溶剤性及び白色フィラー分散性等が要求される。
【0017】
本発明のインクマーク受像層に用いられる樹脂としては、ポリエステル、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、クロロプレンラテックス、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体等のアクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、アクリル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリビニルピリジン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性SBR樹脂等、従来溶融型熱転写媒体よりなるインク受容層として用いられている公知の樹脂を少なくとも一種以上を使用することが出来る。
【0018】
又、本発明の目的から、該インクマーク受像層は耐傷性や耐溶剤性の観点から、該インクマーク受像層に用いられる結合樹脂は、架橋剤により架橋されている状態であることがより好ましい。例えば、ポリオール基を有する樹脂とポリイソシアネートの架橋物よりなる樹脂等の例が挙げられる。該樹脂の例としては、ポリオール含有のポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。イソシアネート化合物としては芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式のジイソシアネート化合物、トリメチロールプロパンのアダクト体、及び、ビュレット体、イソシアヌレート環、等、が挙げられる。特に、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料として用いたHDI系ポリイソシアネートが好ましく、HDI系ポリイソシアネートは黄変しないだけでなく、架橋後の塗膜強度の経時変化も少ないなど耐候性の面でも好ましい。
又、該架橋されている状態は、インクマーク形成前の段階で有ってもよいし、グリーンタイヤの加硫成型の際に架橋されてもよい。後者の場合は架橋剤としてブロックポリイソシアネート系架橋剤を用いることができる。
【0019】
前記インクマーク受像層に白色化隠蔽機能を持たせるため、本発明のインクマーク受像層には樹脂バインダーと共に、白色フィラーが含有される。白色フィラーとしては、例えば、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、珪酸アルミニウム、リン酸カルシウム、シリカ、タルク、カオリン(クレー)、合成マイカ、天然マイカ、雲母チタン等が挙げられるが、白色顔料のなかでも、屈折率が高く、少量で高い白色度を実現できることから、二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンは、ルチル型であっても良いし、アナターゼ型であっても良い。特に限定されるものではないが、白色顔料の吸油量は、40g/100g未満が好ましく、より好ましくは35g/100g未満である。また、二酸化チタンの平均粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.0μm以下がより好ましい。また、二酸化チタンに加えて、空隙率をあげ白色度向上を目的として炭酸マグネシウム等の他の顔料を添加してもよい。また、二酸化チタン等の白色フィラーの樹脂中の含有量は40~75重量%が好ましく、可視光の反射率が75%以上、就中80%以上、特に90%以上の受像層としたものが、黒色隠蔽性上好ましい。この観点から、受像層の厚みは5~40μmが好ましい。
【0020】
前記基材フィルムと白色フィラー含有インクマーク受像層との密着性が不十分な場合は、該受像層と接する面の該基材フィルムの面をプラズマ処理等をして密着性を向上することが出来る。また、従来公知のプライマー層を設けることによっても密着性を向上させることも出来る。
【0021】
(ゴム系粘着層)
本発明に用いられる粘着層は、前記マーク形成後の基材フィルムの粘着層面をグリーンタイヤに仮着し高圧/高温下加硫することにより、マーク形成された熱可塑性樹脂フィルムとともに一体となって、タイヤ加硫成型品の外表面に形成された凹部内に接着されており、その後のタイヤ加硫成型品の使用においても、前記マーク形成された基材が剥離されることなく使用される。従って、該粘着層は、加硫工程により生じる加硫ゴム面との接着性と共に、前記熱可塑性樹脂フィルムとの接着性も要求される。
【0022】
それ故、後述するゴム系粘着剤層が、前記熱可塑性樹脂フィルムとの接着性が劣る場合には、該熱可塑性樹脂フィルム面にプラズマ処理等を行ってもよい。又、該熱可塑性樹脂フィルム面に、従来公知のプライマー層を設け、その上に該ゴム系粘着剤層を設けてもよい。従来公知のプライマー層としては、例えば、前記引用文献段落0015~0017記載のプライマー層の素材/厚み/付設方法を援用することが出来る。またその他の素材として、酸変性ポリオレフィン系エラストマー樹脂(例;三菱ケミカル(株)製のサーフレンPシリーズ、三井化学(株)製ユニストールPシリーズ、同アドマーシリーズ、東洋タック(株)製ハードレンシリーズ;いずれも商品名)等が好適に使用される。
【0023】
(ゴム系粘着剤層)
該粘着層は、加硫工程により生じる加硫済みタイヤ面との接着性が要求される。該粘着層としては、従来公知の例えば、前記引用文献段落0018~0022記載のゴム系粘着層の素材/厚み/付設方法を援用することが出来る。また、その他従来公知のゴム系エラストマーよりなる粘着剤層も好適に用いることができ、例えば、マレイン化水添スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(三菱ケミカル(株)製:商品名サーフレンP-1000)等の酸変性ポリオレフィン系エラストマー樹脂、スチレンとブタジエンのブロック共重合体(旭化成(株)製:タフテック(商品名)シリーズ)等の水添スチレン系エラストマー樹脂、シンジオタクチックポリブタジエンエラストマー樹脂(JSR(株)製のRB(商品名)シリーズ)等が挙げられる。また、該ゴム系粘着剤層には、粘着力の制御等の目的で従来公知のタッキファイヤ剤やその他、加硫促進剤やフィラー等を添加することが可能である。
【0024】
ゴム系粘着剤層の表面は、本発明の基材フィルムの取り扱い性の観点から、通常ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、離型処理されたポリエステルフィルム等従来公知の離型性フィルムにより保護される。
【0025】
<<熱転写印字媒体>>
本発明のインクマーク受像層に、熱転写印字媒体により形成されるインクマークは、耐熱性、耐傷性、耐溶剤性等の観点から、従来公知の樹脂型熱転写印字媒体から構成することが可能である。
該熱転写印字媒体の通例として、耐熱滑性層を設けた基材フィルム上に、剥離層、必要に応じて保護層、着色インク層、接着層を順次積層した構成が適している。
【0026】
基材としては、従来熱転写印字媒体用基材として公知の種々の基材が使用できるが、耐熱性、熱伝達性、コストの点から、例えば厚み1~6μmのポリエステルフィルムの裏面にシリコーン系樹脂等を含んだ耐熱滑性層を施したものの使用が可能である。
【0027】
剥離層は、例えばワックスを主成分とする熱溶融性剤からなる層を使用出来る。必要に応じて熱可塑性樹脂を配合しても良い。ワックス類としては、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、酸化ワックス、合成ワックス等が用いることができ、これらは必要に応じて2種以上の混合も可能である。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。また、必要に応じてシリカ、アルミナ等のフィラーを添加しても良い。剥離層の厚みは、0.1~3.0μmが望ましい。
【0028】
一方、着色インク層である耐熱性の樹脂系インクとしては、例えばポリエステル系やエポキシ系、アクリル系やポリカーボネート系、フェノール系、ポリビニルアセタール系、熱可塑性のポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンやポリエーテルイミド、ポリスルホンやポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミドやポリエステルイミド、芳香族ポリアミドやポリパラバン酸、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂の1種又は2種以上と、着色剤の1種又は2種以上をロールミルやポットミル等の適宜な混練機にて溶媒を用いて混合してペースト状等の流動物として調製したものなどがあげられる。更に、必要に応じて、ワックスや有機フィラー、無機フィラー等を添加してもよい。
後述する本発明の実施例においては、顔料着色剤の分散性、アルコール等の耐溶剤性等の観点から、ポリエステル系樹脂と顔料系着色剤よりなる着色インク層を例示しているが、これらに限定されるものではない。更に、耐熱性、耐久性、耐溶剤性を向上するために、該ポリエステル系樹脂を例にすれば、ポリオール基を有する該ポリエステル系樹脂とブロックイソシアネート架橋剤を有する樹脂系よりなる着色インク層を用いて、グリーンゴムの加硫成型時の温度を利用し、着色インク層の樹脂を少なくとも一部架橋することにより更なるインクマークの耐久性及び耐溶剤性を向上させることが出来る。
【0029】
ブロックイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メシチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、又はこれらのビュレット体、アダクト体、イソシアヌレート体等に含有されている遊離のイソシアネート基を、例えばフェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤や、メチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシム等のオキシム系ブロック剤、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系ブロック剤、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸エチル等の活性メチレン系ブロック剤、メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミン系ブロック剤、イミド系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤等のブロック剤でブロックしてなる化合物を使用することができる。
【0030】
前記の着色剤としては、例えば有機系又は無機系の顔料、金属粉末などの適宜なものが用いられる。その具体例としてはアゾ系顔料やフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系顔料や金属錯塩顔料、バット染料系顔料やキナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料などの有機系顔料が挙げられる。また無機系顔料の例としては、カーボン、チタンブラック、酸化クロム・酸化コバルト・酸化鉄・酸化マンガンやクロム酸塩、過マンガン酸塩の如き黒色物、酸化マンガン・アルミナ、酸化クロム・酸化錫、酸化鉄、硫化カドミウム・硫化セレンの如き赤色物、酸化コバルト、ジルコニア・酸化バナジウム、酸化クロム・五酸化二バナジウムの如き青色物、ジルコニウム・珪素・プラセオジム、バナジウム・錫、クロム・チタン・アンチモンの如き黄色物、酸化クロム、コバルト・クロム、アルミナ・クロムの如き緑色物、アルミニウム・マンガン、鉄・珪素・ジルコニウムの如き桃色物などをその代表例として挙げられる。
【0031】
樹脂系インクは、樹脂成分100重量部あたり40~200重量部の着色剤を配合したものが一般的であるが、これに限定されない。インク情報、特にバーコードの形成には、コントラストの点よりカーボンや黒色顔料などの黒色系の樹脂系インクを用いたものが特に好ましい。
好ましく用いうるインクリボンは、白色支持体上に熱転写した際にその反射濃度は1.0以上が好ましい。この観点から、樹脂系インク層の厚さは通常0.2~2.0μmが好ましい。これにより、より高度情報を記録することが可能になる。特に耐アルコール性や耐傷性の観点から、ポリエステル系樹脂等を使用する場合は、印字性能上(例えば切れ性)、着色顔料の比率を上げて薄膜形成をする必要が有り、このような場合の膜厚は特に0.2~1.0μmが好ましい。
【0032】
接着層は、加硫時にマーク像の鮮明さを維持できる耐熱性のある樹脂を用いれば良く、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が使用できる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂やエポキシ系樹脂が好ましい。接着層には、ブロッキングや地汚れの発生防止のため、前記の有機フィラー、無機フィラーや滑剤を少量添加してもよい。
又、接着層塗工時該液により、前記着色インク層が溶解することは好ましくないため、水及び/あるいはアルコール分散系の樹脂系が好ましい。
又、接着層の厚みは0.05~0.5μmが好ましく、0.5μm以上ではマーク像の切れが悪くなる場合がある。
【0033】
又、必要に応じて、前記熱転写印字媒体を用いて、前記受像層上にインクマークを形成させた後、サーマルヘッドプリンタで転写可能な熱転写保護膜形成媒体を用いて、該受像層面の所望の部分をオーバーコートしても良い。
【0034】
<<バーコード及び/あるいは2次元コードを有するタイヤ>>
本発明は、融点が200℃以上である熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に白色フィラー含有のインクマーク受像層を設け、他方の面にゴム系粘着層を有してなるラベル基材の該受像層面に、サーマルヘッドプリンタ出力手段により少なくともバーコード及び/あるいは2次元コードが形成されたマーキング基材がグリーンタイヤの加硫成型の際、該ゴム系粘着層面が、金型により同時形成されるタイヤ凹部内の底面部に接触してあり、マーク形成された該ラベル基材が該ゴム系粘着層を介して一体となって加硫後のタイヤゴムと接着状態で該凹部内にあることを特徴とするバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤである。
グリーンタイヤによるタイヤ成型品製造時、通常金型刻印によりタイヤ名称等が5mm前後程度の段差で形成される。本発明はこの際の金型凹凸刻印を利用するものである。
【0035】
前記枠状凹部は適宜な位置に設けられる。例えばタイヤ成型品のサイドウォール部やビード部等である。前記の少なくともバーコード及び/あるいは2次元コードが形成された所定サイズのマーキング基材のゴム系粘着層面を、前記金型により形成される凹部枠面積内に収まるように、グリーンタイヤあるいは該金型の凸部形状に位置を定めて仮着し、加硫成型時に、高圧/高温の条件で金型により同時形成されるタイヤ凹部内に貼着される。該加硫処理は通例145~190℃の温度による10~70分間の加熱条件で行われる。
【0036】
この際、該凹部の深さは、マーク面の異物との接触の観点からは深い方が好ましいが、特に限定されるものではなく、前述のごとく、金型刻印によりタイヤ名称等が通例の5mm前後程度の段差で形成される場合には、金型作製上同じ深さであっても良い。又、マーク形成されている粘着層付きラベルの総厚みは200μm以下が好ましい。このようであれば、マーク面の異物との接触確率を少なくすることが出来る。
【0037】
本発明によれば、所定サイズの前記印字部及び前記非印字部のマーキング基材は、グリーンタイヤの加圧加硫処理過程を通じて、タイヤ凹部内に強固に接着されているため、タイヤの過酷な使用条件にも充分に耐えて離脱しないものとなる。更に、該マーキング基材のマーク面は、凹部で基材に強固に接着されているため、異物との接触等により、バーコード及び/あるいは2次元コード等のマークが消失したり、マーキング基材自体が脱落したりするのを防止することができる。
【0038】
従って、本発明によるタイヤ毎の個別情報が入力されたバーコード及び/あるいは2次元コードは、その後の生産工程や流通過程でタイヤを車種別やメーカー別等にふるい分けることなどが可能になり、生産から流通に及ぶ過程でのタイヤ毎の管理を他メーカーや取扱店等を含む業界全体で行うことができる。
【0039】
本発明によるバーコード及び/あるいは2次元コード付きタイヤの該マーク部の耐久性は、優れたものであるが、更により高い耐久性を望む場合には、該マーク形成された基材が凹部内にあることを利用して、無溶剤紫外線硬化インク等を更に該凹部内に注入し、紫外線により硬化させ、更なる高度な耐久性を得ることができる。該無溶剤紫外線硬化インクの例としては、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、ポリエステル系アクリレート、ポリオール系アクリレート等の紫外線硬化樹脂を含有するインクの中から適宜使用することが出来る。特に、ウレタン系アクリレート系無溶剤紫外線硬化インクは、基材密着性、柔軟性、硬度、耐溶剤性、耐候性の面で発現し易い点で適している。又、必要に応じて公知の加硫ゴム接着向上剤を添加してもよい。特に、前記マーク付きラベルのサイズが文字等の他の情報を加えることにより大きくなった場合に有効である。
【0040】
(実施例)
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
<マーク形成用基材の準備>
(耐熱性熱可塑性樹脂フィルム)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム 融点225℃ 厚み25μm
表面処理無し;基材フィルム1
片面易接着層処理済み;基材フィルム2
【0042】
(受像層塗工液)
受像層塗工液1
受像層塗工液1は、飽和共重合ポリエステル樹脂(Mn:17,000、Tg:67℃、OH当量:9350)22.5部(重量部、以下同じ)をトルエン:MEKの1:1の混合液に溶解させた後、その溶液中に二酸化チタン70部を投入して充分に撹拌混合した後にさらにビーズミルなどで分散を行って分散体を作成し、最後に分散体に架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(固形分100%、NCO当量:210)7.5部を投入して充分撹拌混合して受像層塗工液1とした。
受像層塗工液2
受像層塗工液2は、ブチラール樹脂(積水化学工業製エスレックBX-L、水酸基量約37mol%)22.5部(重量部、以下同じ)をトルエン:MEKの1:1の混合液に溶解させた後、その溶液中に二酸化チタン70部を投入して充分に撹拌混合した後にさらにビーズミルなどで分散を行って分散体を作成し、最後に分散体に架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(固形分100%、NCO当量:210)7.5部を投入して充分撹拌混合して受像層塗工液2とした。
【0043】
(受像層を有する熱可塑性樹脂フィルム)
受像層を有する熱可塑性樹脂フィルム1
基材フィルム1に受像層塗工液1を乾燥膜厚20μmになるように塗工し、50℃48時間熟成し、本発明に使用される受像層を有する熱可塑性樹脂フィルム1を作製した。
受像層を有する熱可塑性樹脂フィルム2
基材フィルム2の易接着層面に受像層塗工液2を乾燥膜厚20μmになるように塗工し、50℃48時間熟成し、本発明に使用される受像層を有する熱可塑性樹脂フィルム2を作製した。
【0044】
(マーク形成用粘着性ラベル基材の作製)
マーク形成用粘着性ラベル基材1
片面に受像層を設けた前記熱可塑性樹脂フィルム1の他面に、クロルフェノール系プライマー(CASABONDE、ICI社製)100部(重量部、以下同じ)、レゾルシノール4.1部、ホルムアルデヒド3.6部、ビニルピリジンラテックス(固形分41重量%)47.4部、SBRラテックス(固形分40重量%)11.7部、及び5重量%苛性ソーダ溶液6.4部を水26.8部と共に均一に混合したプライマー塗工液をドクターブレード法で塗布し160℃で約2分間乾燥させて厚さ10μmのプライマー層を形成し、その上に、グラフトゴム85部、天然ゴム15部、石油系樹脂35部、チュウラム系加硫促進剤4部、及びフェノール系老化防止剤3部をトルエン200部に均一に溶解させたグラフトゴム系組成物よりなる塗工液をドクターブレード法で塗布し120℃で約5分間乾燥させて厚さ20μmのゴム系粘着層を付設し、それをセパレータでカバーしつつ巻取ってマーク形成用粘着性ラベル基材1を得た。
マーク形成用粘着性ラベル基材2
片面に受像層を設けた前記熱可塑性樹脂フィルム2の他面に、前記と同様にして、マーク形成用粘着性ラベル基材2を得た。
【0045】
<熱転写印字媒体の準備>
厚さ4.5μmの一方の面に耐熱滑性層が設けられたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの他方の面に、下記組成物の剥離層、着色インク層、接着層を設け熱転写印字媒体とした。
【0046】
熱転写印字媒体1
カルナバワックス10部(重量部、以下同じ)、水45部、IPA45部からなる組成の剥離層用塗工液を、塗布、乾燥して剥離層を形成した。なお、形成した剥離層の乾燥後厚さは、0.6μmであった。
【0047】
上記のようにして形成させた剥離層上に、カーボンブラック5部(重量部、以下同じ)、ポリエステル系樹脂1(Mn17000,Tg67℃ 、OH当量9350)5部、トルエン45部、メチルエチルケトン45部からなる組成の着色インク層用塗工液を塗布、乾燥して着色インク層を形成した。なお、形成した着色インク層の乾燥後厚さは、0.4μmであった。
【0048】
上記のようにして形成させた着色インク層上に、ポリエステル系樹脂エマルジョン(固形分30%、分子量8000)20部(重量部、以下同じ)、表面調整剤0.1部、メタノール70部、水10部からなる組成の接着層用塗工液を塗布、乾燥して接着層を形成し熱転写印字媒体1を作製した。なお、形成した接着層の乾燥後厚さは、0.1μmであった。
【0049】
熱転写印字媒体2
前記熱転写印字媒体1の着色インク層用塗工液をカーボンブラック5部(重量部、以下同じ)、ポリエステル系樹脂1(Mn17000,Tg67℃、OH当量9350)4.2部、ブロックイソシアネート0.8部、トルエン45部、メチルエチルケトン45部からなる組成のものに変更した以外は同様である熱転写印字媒体2を作製した。
【実施例0050】
前記マーク形成用粘着性ラベル基材1上に前記熱転写印字媒体1を用いて、Zebra社製110Xi4(300dpi)を用いて、2次元コード(QRコード(登録商標))を印字しマーク像を形成した後、該ラベル基材を12mm×12mmに裁断した後、前記マーク形成用粘着性ラベル基材1のカバーフィルムを剥離した。
その後、該マーキング基材がグリーンタイヤの加硫成型の際、該ゴム系粘着層面が、金型により同時形成されるタイヤ凹部内の底面部に接触してあり、マーク形成された該ラベル基材が該ゴム系粘着層を介して一体となって加硫後のタイヤゴムと接着状態で該凹部内にあるようにするため、タイヤ成型時サイドウォール部を形成するグリーンタイヤの金型により5mmの深さの凹部を形成する所定の場所を定め、該金型の凹部を形成するための凸部表面内に収まるように、該マーク形成されたマーク形成用粘着性ラベル基材1を貼着させ、グリーンタイヤと当接させて圧力を掛け、175℃で30分間加硫することにより、タイヤ凹部の底面にマーク部を有するタイヤを作製した。