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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064786
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20240507BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240507BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20240507BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240507BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240507BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
G02B1/18
B32B7/023
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173649
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】399020212
【氏名又は名称】東山フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA05
2K009AA15
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC24
2K009CC26
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
2K009EE05
4F100AA17C
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK25E
4F100AL05C
4F100AL05E
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100EH46
4F100EJ54
4F100EJ65D
4F100JB12C
4F100JB12D
4F100JB12E
4F100JB14B
4F100JK12B
4F100JL06E
4F100JN01A
4F100JN06
4F100JN18C
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】優れた反射防止性および耐擦傷性を有するとともに、高い防汚性と摩耗耐久性を備えた反射防止フィルムを提供することにある。
【解決手段】基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18とを有し、防汚層18が、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、防汚層18における含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、防汚層18の固形分全量基準で90質量%以上であり、低屈折率層16の厚みdLRが46nm以上であり、プライマー層17の厚みdPRが8nm以上であり、低屈折率層16とプライマー層17の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100以下である反射防止フィルム10とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された低屈折率層と、前記低屈折率層の面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の面上に形成された防汚層と、を有し、
前記防汚層は、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、
前記防汚層における前記含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、前記防汚層の固形分全量基準で90質量%以上であり、
前記低屈折率層の厚みdLRは46nm以上であり、
前記プライマー層の厚みdPRは8nm以上であり、
前記低屈折率層と前記プライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下である、反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層は、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂と、無機酸化物粒子と、中空シリカ粒子と、を含む組成物の硬化物より構成され、
前記プライマー層は、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂を含有し、無機酸化物よりなる粒子を含有しない組成物の硬化物より構成されている、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記プライマー層に含有されるバインダー樹脂は、前記低屈折率層に含有されるバインダー樹脂と同じものである、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記低屈折率層は、含フッ素化合物を含有しない、請求項2または請求項3に記載の反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関し、さらに詳しくは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、スマートホンなどのタッチパネル等のディスプレイ表面に好適に用いられる反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、スマートホンなどのタッチパネル等のディスプレイ表面には、画面への外光の映り込みを防止するなどのために、反射防止フィルムを配置することがある。反射防止フィルムとしては、基材フィルム上にハードコート層および反射防止層(低屈折率層)をこの順に有するものが知られている。例えば、出願人の出願による特許文献1では、ハードコート層の面上に形成される低屈折率層の組成を検討することで、反射防止フィルムの反射防止性、耐擦傷性、防汚性の向上を図っている。特許文献1においては、低屈折率層に含フッ素化合物が含有され、それが防汚性の向上に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/020504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反射防止フィルム、特にタッチパネルの表面に配置されるものをはじめとして、手指の接触を頻繁に受ける反射防止フィルムにおいては、高い防汚性を有することが求められる。特許文献1に開示されているように、反射防止フィルムを構成する低屈折率層に、含フッ素化合物をはじめとする防汚作用のある物質を添加することで、反射防止フィルムの防汚性を向上させることができる。一方で、低屈折率層の表面に、低屈折率層とは独立した層として、それら防汚作用のある物質を含んだ防汚層を設ける形態も用いられる。しかし、防汚層を設けても、十分に高い防汚性が得られない場合や、手指の接触を繰り返すと表面が摩耗して防汚性が低下する場合がある。手指の接触を頻繁に受ける反射防止フィルムにおいては、高い反射防止性および防汚性を有することに加えて、使用時の耐久性の観点から、高い耐擦傷性を有すること、および高い摩耗耐久性を有することが、重要な特性となる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、優れた反射防止性および耐擦傷性を有するとともに、高い防汚性と摩耗耐久性を備えた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る反射防止フィルムは、以下の構成を有している。
[1]本発明に係る反射防止フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された低屈折率層と、前記低屈折率層の面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の面上に形成された防汚層と、を有し、前記防汚層は、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、前記防汚層における前記含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、前記防汚層の固形分全量基準で90質量%以上であり、前記低屈折率層の厚みdLRは46nm以上であり、前記プライマー層の厚みdPRは8nm以上であり、前記低屈折率層と前記プライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下である。
【0007】
[2]上記[1]の態様において、前記低屈折率層は、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂と、無機酸化物粒子と、中空シリカ粒子と、を含む組成物の硬化物より構成され、前記プライマー層は、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂を含有し、無機酸化物よりなる粒子を含有しない組成物の硬化物より構成されているとよい。
【0008】
[3]上記[2]の態様において、前記プライマー層に含有されるバインダー樹脂は、前記低屈折率層に含有されるバインダー樹脂と同じものであるとよい。
【0009】
[4]上記[2]または[3]の態様において、前記低屈折率層は、含フッ素化合物を含有しないとよい。
【発明の効果】
【0010】
上記[1]の構成を有する本発明に係る反射防止フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された低屈折率層と、前記低屈折率層の面上に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の面上に形成された防汚層と、を有し、前記防汚層は、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、前記防汚層における前記含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、前記防汚層の固形分全量基準で90質量%以上であり、前記低屈折率層の厚みdLRは46nm以上であり、前記プライマー層の厚みdPRは8nm以上であり、前記低屈折率層と前記プライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下である。反射防止フィルムが、上記の組成を有する防汚層を備えることにより、防汚性と耐擦傷性、摩耗耐久性に優れたものとなる。そして、その防汚層と低屈折率層の間に、プライマー層が形成されており、さらにそのプライマー層と低屈折率層の厚みが、上記のようになっていることで、反射防止フィルムの反射防止性および耐擦傷性を維持しながら、防汚性および摩耗耐久性がさらに高められる。
【0011】
上記[2]の態様においては、前記低屈折率層が、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂と、無機酸化物粒子と、中空シリカ粒子と、を含む組成物の硬化物より構成され、前記プライマー層が、(メタ)アクリレート化合物を含むバインダー樹脂を含有し、無機酸化物よりなる粒子を含有しない組成物の硬化物より構成されていることから、低屈折率層およびプライマー層の寄与により、反射防止フィルムが、防汚性と耐擦傷性、摩耗耐久性、さらに反射防止性等の光学特性に優れたものとなる。
【0012】
上記[3]の態様においては、前記プライマー層に含有されるバインダー樹脂が、低屈折率層に含有されるバインダー樹脂と同じものであることにより、低屈折率層とプライマー層の密着性が高くなり、それによって、反射防止フィルムの摩耗耐久性向上の効果が高く得られる。
【0013】
上記[4]の態様においては、前記低屈折率層が、含フッ素化合物を含有しない。本発明の反射防止フィルムにおいては、防汚層が高い防汚性を示すので、防汚性の向上を目的として低屈折率層に含フッ素化合物を含有させる必要がない。低屈折率層を含フッ素化合物を含有しないものとすることで、反射防止フィルムの耐擦傷性が損なわれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。
図3】本発明の第三実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。
図4】本発明の第四実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書において、各種物性は、特記しない限り、室温、大気中における値を指すものとする。また、本明細書において、物質および物質層の屈折率は、特記しない限り、測定波長589.3nmにおける屈折率を指すものとする。
【0016】
<第一実施形態の反射防止フィルム>
図1は、本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18とを有する。本実施形態においては、上記各層が、間に他の層を介さずに、順に積層されている。防汚層18は、反射防止フィルム10全体としての最表面に露出された層となる。
【0017】
(基材フィルム)
基材フィルム12は、透明性を有していれば、特に限定されるものではない。基材フィルム12としては、透明高分子フィルム、ガラスフィルムなどが挙げられる。透明性とは、可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいい、全光線透過率は、より好ましくは85%以上である。上記全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定することができる。基材フィルム12の厚みは、特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れるなどの観点から、2μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2μm以上200μm以下の範囲内である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、厚さが0.25mm以上のものであってもロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
【0018】
基材フィルム12の高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,シクロオレフィンコポリマー樹脂などのポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂,ジアセチルセルロース樹脂などのセルロース系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。これらのうちでは、光学特性や耐久性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂、トリアセチルセルロース樹脂がより好ましい。
【0019】
基材フィルム12は、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層からなる単層で構成されていてもよいし、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層と、この層とは異なる高分子材料の1種または2種以上を含む層など、2層以上の層で構成されていてもよい。
【0020】
(ハードコート層)
ハードコート層14は、反射防止フィルム10の耐擦傷性の向上に寄与する。ハードコート層14は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成されている。電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線としては、紫外線(UV)、X線、γ線等の電磁波、電子線(EB)、α線、イオン線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらのうちでは、生産性の観点から、紫外線(UV)が特に好ましい。以下、電離放射線硬化性組成物を、単に、硬化性組成物と称する場合がある。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。以下、(メタ)アクリレート化合物を単に(メタ)アクリレートと称する場合がある。
【0021】
(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートであっても、多官能(メタ)アクリレートであってもよい。あるいは、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。硬化性組成物は、(メタ)アクリレートとして、硬化性の向上等の観点から、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0022】
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちでは、ウレタン(メタ)アクリレート、特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じてポリオール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、およびこれらのヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体などが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのポリオキシアルキレン変性体、ポリラクトン変性体などが挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビフェノール、ビスフェノール等が挙げられる。ハードコート層14を形成するための硬化性組成物が紫外線硬化性樹脂としてウレタン(メタ)アクリレートを含む場合には、ハードコート層14が適度な柔軟性を有することにより、反射防止フィルム10の耐屈曲性が高くなり、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイ等の繰り返し屈曲されるフレキシブルディスプレイに好適に用いることができる。また、例えば基材フィルム12がポリシクロオレフィンやシクロオレフィンコポリマーなどから形成され、比較的割れやすいものでも、基材フィルム12の割れを抑えやすい。
【0023】
硬化性組成物を構成する(メタ)アクリレートとしてさらに、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物が含有されることが好ましい。ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが硬化性組成物に含有されることが好ましい。
【0024】
ハードコート層14を形成する硬化性組成物には、紫外線硬化性樹脂に加え、非紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、ハードコート層14を形成する硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、硬化性組成物に一般に添加可能な添加剤などが含まれていてもよい。添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、帯電防止剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。
【0025】
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0026】
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
【0027】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上10質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上であり、また5質量%以下である。
【0028】
無機粒子および樹脂粒子は、例えばハードコート層14のブロッキングを防止する、ハードコート層14の屈折率を調整する、などの目的でハードコート層14に添加される。添加する無機粒子や樹脂粒子により、ハードコート層14に微細な表面凹凸を形成することで、低屈折率層16を形成する前の、基材フィルム12およびハードコート層14からなるハードコートフィルムを、ロール状に巻き付けた際に、表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすい。
【0029】
ハードコート層14の屈折率を調整可能な無機粒子としては、チタン,ジルコニウム,スズ,亜鉛,ケイ素,ニオブ,アルミニウム,クロム,マグネシウム,ゲルマニウム,ガリウム,アンチモン,白金などの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、光学調整可能な無機粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、高屈折率と透明性の両立に優れるなどの観点から、チタン酸化物粒子,ジルコニウム酸化物粒子が特に好ましい。また、樹脂粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロースなどの樹脂からなる樹脂粒子が挙げられる。これらは、樹脂粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0030】
ハードコート層14の厚みは、特に限定されるものではないが、十分な硬度を有するなどの観点から、0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.75μm以上である。また、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、20μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下である。ハードコート層14の厚みは、厚み方向において無機粒子や樹脂粒子に起因する凹凸のない部分における比較的平滑な部分の厚みである。
【0031】
ハードコート層14の屈折率は、透明基材フィルム12とハードコート層14の屈折率差から生じる干渉ムラを抑制する観点から、1.49以上1.56以下の範囲内が好ましい。
ハードコート層14の表面凹凸が形成されている表面の算術平均粗さRaは、ブロッキング抑制などの観点から、0.3nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5nm以上であり、また10nm以下である。
【0032】
ハードコート層14を形成する硬化性組成物において用いられる溶剤としては、エタノール,イソプロピルアルコール(IPA),n-ブチルアルコール(NBA),エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM),エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(IPG),プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM),ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトン(MIBK),シクロヘキサノン,アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン,キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸エチル(EtAc),酢酸プロピル,酢酸イソプロピル,酢酸ブチル(BuAc)などのエステル系溶剤、N-メチルピロリドン,アセトアミド,ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0033】
硬化性組成物の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)は、塗工性、膜厚などを考慮して適宜定めればよい。例えば、1質量%以上90質量%以下、1.5質量%以上80質量%以下、2質量%以上70質量%以下などとすればよい。
【0034】
(低屈折率層)
本実施形態に係る反射防止フィルム10において、ハードコート層14の面上には、反射防止層として、低屈折率層16が設けられている。低屈折率層16は、ハードコート層14よりも低い屈折率を有するものであって、ハードコート層14との屈折率差により反射防止効果を発現させる。
【0035】
低屈折率層16は、その組成を特に限定されるものではないが、バインダー樹脂、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子を含有する組成物の硬化物より構成されていることが好ましい。特に、それらの成分を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成されていることが好ましい。以下、好適な組成について説明する。
【0036】
バインダー樹脂としては、低屈折率層16の耐擦傷性向上などの観点から、熱硬化性化合物や、紫外線硬化性化合物はじめとする電離放射線硬化性化合物が好ましい。反射防止フィルム10の生産性などの観点から、バインダー樹脂は、紫外線硬化性化合物よりなる形態が好ましい。
【0037】
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線反応性の反応性基を有するモノマー,オリゴマー,プレポリマーなどが挙げられる。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、(メタ)アクリレート化合物を用いることが特に好ましい。
【0038】
(メタ)アクリレート化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、多官能(メタ)アクリレートで構成されていてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。(メタ)アクリレートとして、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0039】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
紫外線硬化性樹脂は、上記する(メタ)アクリレートの1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。紫外線硬化性樹脂は、耐擦傷性の向上の観点から、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、また、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率を大きくすることが好ましい。
【0042】
また、多官能(メタ)アクリレートは、二量体を含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの二量体は硬化速度に優れ、硬化性組成物の硬化率を容易に上げることができるため、より耐擦傷性を向上させることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0043】
上記二量体の含有量は、耐擦傷性や透明性、溶剤への溶解性の観点から、多官能(メタ)アクリレートの固形分全量基準で、25質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30質量%以上であり、また40質量%以下である。
【0044】
無機酸化物粒子は、低屈折率層16に含まれることで、低屈折率層16の表面に凸部を形成するものである。無機酸化物粒子によって低屈折率層16の表面に凸部が形成されることで、低屈折率層16は良好な耐擦傷性を有することができる。
【0045】
無機酸化物粒子は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。無機酸化物粒子は、中実粒子であることが好ましい。中実粒子とは、粒子の内部に実質的に空洞を有していない粒子であり、空洞の割合が中実粒子の体積の5%未満である粒子をいう。中空粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が中空粒子の体積の5%以上である粒子をいう。無機酸化物粒子が中実粒子であると、低屈折率層16の耐擦傷性が向上し、反射防止フィルム10の耐擦傷性が向上する。無機酸化物粒子が中空粒子であると、低屈折率層16の屈折率を低くして、光の反射を低減することができる。中空粒子において、空洞の割合は、中空粒子の体積の10%以上80%以下であることが好ましい。空洞の割合が10%以上であると、屈折率を低くして光の反射を低減することができる。より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。一方、空洞の割合が80%以下であると、無機酸化物粒子の分散性の低下を抑えることができる。より好ましくは60%以下である。
【0046】
無機酸化物粒子としては、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、カルシウムなどの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、無機酸化物粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、屈折率が低く透明性に優れる、硬度が高いなどの観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子が好ましく、アルミナ粒子が特に好ましい。無機酸化物粒子は、シランカップリング剤等の表面処理剤によって表面処理されていてもよい。
【0047】
無機酸化物粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状、針状、鱗片状、棒状、繊維状、不定形などであってもよい。これらのうちでは、球状であることが好ましい。
【0048】
無機酸化物粒子は、低屈折率層16の表面に凸部を形成し、良好な耐擦傷性を得るために、無機酸化物粒子の平均粒子径rと低屈折率層16の厚みdLRの差(r-dLR)が、10nm以上であるとよい。差(r-dLR)は、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは18nm以上である。一方、形成される凸部の高さを抑えて透明性を維持するなどの観点から、差(r-dLR)は、300nm以下である。より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。なお、低屈折率層16の厚みdLRは、単独で、またプライマー層17の厚みdPRとの合計で、後に説明するとおり、所定の範囲に定められる。
【0049】
無機酸化物粒子の平均粒子径rは、低屈折率層16の厚みdLRにもよるが、60nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは90nm以上である。また、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。無機酸化物粒子の平均粒子径rは、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値であって、一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
【0050】
低屈折率層16における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し0.1質量%以上4.0質量%以下であるとよい。低屈折率層16における無機酸化物粒子の含有量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し0.1質量%以上であると、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層16における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。そして、低屈折率層16における無機酸化物粒子の含有量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し4.0質量%以下であると、高い透明性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層16における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは3.2質量%以下である。なお、ここでいう低屈折率層16の固形分とは、低屈折率層16においてバインダー樹脂に固定化されていない、常温において液状の成分を除く成分である。低屈折率層16の固形分としては、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子、バインダー樹脂などが含まれる。添加剤としてのオイル成分やバインダー樹脂に固定化されていない界面活性剤などは含まれない。
【0051】
中空シリカ粒子は、低屈折率層16の平均厚さよりも平均粒子径の小さい粒子である。中空シリカ粒子は、低屈折率層16の表面に凸部を形成する無機酸化物粒子よりも平均粒子径の小さい粒子であるとよい。中空シリカ粒子は、低屈折率層16の表面凹凸の形成に実質的に寄与しない粒子である。中空シリカ粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が体積の5%以上である粒子をいう。中空とは、外殻とその内部の空洞からなるシェル構造のものや、多数の空洞を有する多孔質構造のものなどをいう。中空シリカ粒子は、中空構造であることで、低屈折率層16の屈折率を低くして、光の反射を低減させることができる。中空シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状、紡錘状、卵状、平板状、立方体状、不定形などが好ましい。これらのうちでは、球状、平板状、立方体状などが特に好ましい。
【0052】
中空シリカ粒子において、空洞の割合は、体積の10%以上80%以下であることが好ましい。空洞の割合が体積の10%以上であると、屈折率を低くして光の反射を低減することができる。より好ましくは体積の20%以上、さらに好ましくは体積の30%以上である。一方、空洞の割合が体積の80%以下であると、中空シリカ粒子の分散性の低下を抑えることができる。より好ましくは体積の60%以下である。
【0053】
中空シリカ粒子の平均粒子径は、低屈折率層16の厚みにもよるが、5nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。また、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。中空シリカ粒子の平均粒子径がこれら好ましい範囲内であると、低屈折率層16の優れた反射防止効果と透明性を得ることができる。平均粒子径は、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値である。一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
【0054】
中空シリカ粒子の屈折率は、1.01以上1.45以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.15以上1.38以下の範囲内、さらに好ましくは1.15以上1.35以下の範囲内である。中空シリカ粒子の屈折率がこの範囲内であると、優れた反射防止効果が得られる。
【0055】
低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し6.0質量%以上49.9質量%以下であるとよい。低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し6.0質量%であると、優れた反射防止性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。そして、低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し49.9質量%以下であると、耐擦傷性の低下が抑えられる。また、この観点から、低屈折率層16における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0056】
そして、低屈折率層16における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し10質量%以上50質量%以下であるとよい。低屈折率層16における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し10質量%以上であると、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層16における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。一方、低屈折率層16における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量が低屈折率層16の固形分100質量%に対し50質量%以下であると、低屈折率層16に無機酸化物粒子と中空シリカ粒子を十分に保持することができるため、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層16における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0057】
低屈折率層16の厚みdLRは、46nm以上である。46nm以上であると、低屈折率層16表面の平滑性が高くなり、反射防止フィルム10の摩耗耐久性を良好なものとすることができる。また、この観点から、低屈折率層16の厚みdLRは、より好ましくは47nm以上、さらに好ましくは48nm以上である。低屈折率層16の厚みdLRには、特に上限は設けられないが、高い反射防止効果を得る観点から、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下、さらに好ましくは75nm以下である。なお、低屈折率層16の厚みdLRは、低屈折率層16の平均厚みとして求めればよい。低屈折率層16が無機酸化物粒子を含有する場合には、低屈折率層16の平均厚みは、厚み方向において無機酸化物粒子18が存在しない部分における比較的平滑な部分の厚みの平均値として求めればよい。低屈折率層16の厚みdLRは、後に説明するように、プライマー層17の厚みdPRとの合計厚みdLR+dPRの点からも、規定される。
【0058】
低屈折率層16は、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子、バインダー樹脂を含む組成物を用いて形成することができる。上記のとおり、バインダー樹脂は、(メタ)アクリレート化合物を含むもの等、紫外線反応性の反応性基を有するもの(紫外線硬化性樹脂)であることが好ましい。バインダー樹脂が紫外線反応性の反応性基を有すると、低屈折率層16の耐擦傷性が向上し、反射防止フィルム10の耐擦傷性が向上する。低屈折率層16の形成用組成物は、バインダー樹脂が紫外線反応性の反応性基を有する場合、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。低屈折率層16の形成用組成物には、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。低屈折率層16のバインダー樹脂は、紫外線硬化性樹脂のみで構成されても、紫外線硬化性樹脂と非紫外線硬化性樹脂の組み合わせで構成されていてもよい。非紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤としては、それぞれ、上記でハードコート層14の形成用組成物に含有されうるものの具体例として挙げた化学種を、低屈折率層16の形成用組成物においても、好適に適用することができる。
【0059】
光重合開始剤の含有量は、低屈折率層16の形成用組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上であり、また5質量%以下である。
【0060】
他に、低屈折率層16には、必要に応じて、添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、屈折率調整剤などが挙げられる。
【0061】
低屈折率層16は、含フッ素化合物を含有してもよい。含フッ素化合物としては、パーフルオロアルキル基を含有する(メタ)アクリレートをはじめとして、次に説明する防汚層18に含有される含フッ素(メタ)アクリレートと同様の化合物を挙げることができる。低屈折率層16が含フッ素化合物を含有する場合には、反射防止フィルム10の防汚性が高められる。しかし、本実施形態に係る反射防止フィルム10においては、低屈折率層16の上に防汚層18が設けられ、その防汚層18が高い防汚性を発揮するので、低屈折率層16には、防汚性の向上を目的として、含フッ素化合物を含有させる必要はない。低屈折率層16に多量の含フッ素化合物を含有させると、プライマー層17との密着性が弱まって反射防止フィルム10の耐擦傷性の低下につながるが、低屈折率層16を、含フッ素化合物を含有しないものとしておくことで、反射防止フィルム10の耐擦傷性を高めることができる。低屈折率層16に含フッ素化合物を含有させる場合でも、その含有量を、低屈折率層16の固形分100質量%に対し1質量%以下に抑えておくとよい。
【0062】
低屈折率層16の屈折率は、ハードコート層14より低い限りにおいて特に限定されないが、好ましくは1.35以上1.52以下である。屈折率が1.35以上であると、低屈折率層16の強度を十分なものとすることができ、良好な耐擦傷性を得ることができる。一方、屈折率が1.52以下であると、反射防止フィルム10をより低反射率化することができる。上記観点から低屈折率層16の屈折率は、より好ましくは1.38以上1.50以下であり、さらに好ましくは1.40以上1.49以下である。
【0063】
(プライマー層)
本実施形態に係る反射防止フィルム10においては、低屈折率層16と防汚層18の間に、プライマー層17が設けられている。プライマー層17は、低屈折率層16と防汚層18の間の密着性を高める役割を果たし、それによって、反射防止フィルム10の防汚性および摩耗耐久性を向上させるものとなる。
【0064】
プライマー層17の構成材料は特に限定されるものではないが、バインダー樹脂を含む組成物の硬化物より構成されることが好ましい。特に、バインダー樹脂を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成されることが好ましい。
【0065】
バインダー樹脂としては、熱硬化性化合物や、紫外線硬化性化合物をはじめとする電離放射線硬化性化合物などが好ましい。反射防止フィルム10の生産性などの観点から、バインダー樹脂が、紫外線硬化性化合物よりなる形態が好ましい。特に、プライマー層17を構成するバインダー樹脂として、(メタ)アクリレート化合物を含むものを用いることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、上記で低屈折率層16のバインダー樹脂に含有される(メタ)アクリレート種の具体例として列挙したものを、プライマー層17においても好適に適用することができる。
【0066】
プライマー層17に含有されるバインダー樹脂は、低屈折率層16に含有されるバインダー樹脂と、同じ成分を含んでいても、含んでいなくても、いずれでもかまわない。しかし、同じ成分を含んでいる方が、低屈折率層16とプライマー層17の間の密着性が高くなり、反射防止フィルム10の防汚性および摩耗耐久性の向上に高い効果が得られる。好ましくは、プライマー層17に含有されるバインダー樹脂が、低屈折率層16に含有されるバインダー樹脂と同じバインダー樹脂より構成されているとよい。あるいは、プライマー層17に含有されるバインダー樹脂のうち90質量%以上が、低屈折率層16に含有されるバインダー樹脂と同じになっている形態等、プライマー層17に含有されるバインダー樹脂の組成が、低屈折率層16に含有されるバインダー樹脂の組成が近接している形態であってもよい。なお、プライマー層17に含有されるバインダー樹脂の組成が、低屈折率層16に含有されるバインダー樹脂の組成と同じである場合や近接している場合であっても、電子顕微鏡等を用いた観察により、プライマー層17と低屈折率層16の間には、多くの場合、明確な界面が存在することが確認される。
【0067】
プライマー層17は、低屈折率層16に含有される無機酸化物粒子や中空シリカ粒子のような、無機酸化物よりなる粒子を含んでいないことが好ましい。無機酸化物よりなる粒子以外にも、樹脂粒子等、固体粒子を含有しないものであることが好ましい。プライマー層17が無機酸化物よりなる粒子をはじめとする固体粒子を含有しないことで、低屈折率層16との密着性や表面の平滑性が高くなり、反射防止フィルム10の防汚性および摩耗耐久性の向上に高い効果が得られる。プライマー層17が固体粒子を含有する場合であっても、それらの効果を高く保つ観点から、それら固体粒子の粒径を20nm以下、また固体粒子の含有量を、プライマー層17の固形分100質量%に対し10質量%以下に抑えておくとよい。なお、ここでいうプライマー層17の固形分とは、プライマー層17においてバインダー樹脂に固定化されていない、常温において液状の成分を除く成分である。プライマー層17の固形分としては、バインダー樹脂などが含まれる。
【0068】
プライマー層17は、バインダー樹脂を含む組成物を用いて形成することができる。上記のとおり、バインダー樹脂は、(メタ)アクリレート化合物を含むもの等、紫外線反応性の反応性基を有するもの(紫外線硬化性樹脂)であることが好ましく、その場合に、プライマー層17の形成用組成物は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。プライマー層17の形成用組成物には、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。プライマー層17のバインダー樹脂は、紫外線硬化性樹脂のみで構成されても、紫外線硬化性樹脂と非紫外線硬化性樹脂の組み合わせで構成されていてもよい。
【0069】
非紫外線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤としては、それぞれ、上記でハードコート層14の形成用組成物に含有されうるものの具体例として挙げた化学種を、プライマー層17の形成用組成物においても、好適に適用することができる。光重合開始剤の含有量は、低屈折率層16の形成用組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上20質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは5質量%以上であり、また15質量%以下である。
【0070】
他に、プライマー層17には、必要に応じて、添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、屈折率調整剤などが挙げられる。
【0071】
プライマー層17の厚みdPRは、8nm以上である。8nm以上であると、低プライマー層17の表面の平滑性が高くなり、反射防止フィルム10の摩耗耐久性を良好なものとすることができる。また、この観点から、プライマー層17の厚みdPRは、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは14nm以上である。プライマー層17の厚みdPRには、特に上限は設けられないが、高い耐擦傷性や反射防止効果を得る観点から、好ましくは55nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは45nm以下である。なお、プライマー層17の厚みdPRは、プライマー層17の平均厚みとして求めればよい。
【0072】
上記のとおり、本実施形態に係る反射防止フィルム10においては、低屈折率層16の厚みdLRが46nm以上、かつプライマー層17の厚みdPRが8nm以上となっている。さらに、低屈折率層16とプライマー層17の合計厚み、つまりdLR+dPRが、60nm以上100nm以下となっている。低屈折率層16とプライマー層17の合計厚みdLR+dPRが60nm以上であることで、反射防止フィルム10において、高い反射防止効果を得られるとともに、優れた摩耗耐久性を得ることができる。これらの効果をさらに高める観点から、dLR+dPRは60nm以上であると好ましく、62nm以上、さらに65nm以上であるとより好ましい。一方、低屈折率層16とプライマー層17の合計厚みdLR+dPRが100nm以下であることで、反射防止フィルム10において、高い反射防止効果を得られる。その効果を高める観点から、dLR+dPRは97nm以下、さらに95nm以下であるとより好ましい。下記のとおり、低屈折率層16とプライマー層17は、近い屈折率を有することが好ましく、光学的には単一の層に近似することができる。よって、低屈折率層16とプライマー層17の合計厚みdLR+dPRを適切な範囲に規定することで、優れた反射防止性を得ることができる。具体的には、合計厚みdLR+dPRを上記のとおり60nm以上100nm以下とすることで、低屈折率層16とプライマー層17の総体として、光干渉効果によって得られる反射率が最小となる波長(最小反射波長)と、比視感度ピーク波長との間のずれ(長波長側および短波長側へのずれ)を小さく抑え、低い視感反射率を得ることができる。
【0073】
プライマー層17は、低屈折率層16よりも平滑な表面を有することが好ましい。これにより、低屈折率層16および防汚層18との間の密着性が向上し、プライマー層17を介することで低屈折率層16と防汚層18の間の密着性を高める効果が高くなる。すると、反射防止フィルム10の摩耗耐久性の向上に高い効果が得られる。また、プライマー層17が平滑な表面を有することで、その上に形成される防汚層18の表面の平滑性も高くなる。すると、反射防止フィルム10の防汚性を向上させる効果も高く得られる。低屈折率層16が無機酸化物粒子を含有するものである場合に、プライマー層17を、無機酸化物よりなる粒子をはじめとする固体粒子を含有しないものとしておくことで、簡便に、プライマー層17の表面の平滑性を、低屈折率層16の表面の平滑性よりも高めることができる。
【0074】
プライマー層17を形成する前には、低屈折率層16の表面に、表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0075】
プライマー層17の屈折率は、反射防止フィルム10において高い反射防止性を得る観点から、低屈折率層16の屈折率との差が小さいことが好ましい。具体的には、プライマー層17の屈折率は、好ましくは1.56以下、より好ましくは1.52以下、さらに好ましくは1.50以下である。一方、プライマー層17の屈折率は、プライマー層17の強度を十分なものとし、良好な耐擦傷性を得る観点から、好ましくは1.40以上、より好ましくは1.43以上、さらに好ましくは1.45以上である。
【0076】
(防汚層)
本実施形態に係る反射防止フィルム10において、プライマー層17の面上に、防汚層18が設けられている。防汚層18は、反射防止フィルム10の防汚性を高めるものとなる。
【0077】
防汚層18は、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成されている。特に、そのような含フッ素(メタ)アクリレートを含有する電離放射線硬化性組成物、中でも紫外線硬化性組成物の硬化物より構成されていることが好ましい。
【0078】
防汚層18が、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成されることで、防汚層18を表面に有する反射防止フィルム10が、防汚性と摩耗耐久性に優れたものとなる。含フッ素(メタ)アクリレートの具体例として、パーフルオロポリエーテル基を含有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。パーフルオロポリエーテル基は、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルにおける水素が全てフッ素に置換されたものをいい、例えば、パーフルオロメチレンオキシド、(-CFO-)、パーフルオロエチレンオキシド(-CFCFO-)、パーフルオロプロピレンオキシド(-CFCFCFO-)、パーフルオロイソプロピレンオキシド(-CF(CF)CFO-)のいずれか、またはこれらのうちの複数の組み合せによる繰り返し構造を有するフルオロポリエーテル基等が挙げられる。上記繰り返し構造の繰り返し単位数としては、好ましくは1~100である。具体的な化合物としては、信越化学工業製「KY-1203」「KY-1207」、DIC製「メガファックRS-75」、ダイキン工業製「オプツールDAC-HP」、ネオス製「フタージェント601AD」「フタージェント601ADH2」を挙げることができる。
【0079】
また、含フッ素(メタ)アクリレートは、その構造中にウレタン結合を有さないことが好ましい。含フッ素(メタ)アクリレートが構造中にウレタン結合を有さないことで、防汚層18の硬度が高くなり、防汚層18が特に高い摩耗耐久性を与えるものとなる。
【0080】
防汚層18においては、含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、防汚層18の固形分全量基準で90質量%以上となっている。これにより、含フッ素(メタ)アクリレートによる防汚性向上効果を高く得ることができる。本実施形態に係る反射防止フィルム10においては、防汚層18の下層にプライマー層17が設けられていることにより、下層に対する密着性の向上、および表面の摩耗耐久性の向上の効果が十分に得られるため、それらの効果を得ることを目的として、防汚層18に、フッ素非含有の(メタ)アクリレート化合物等、フッ素を含有しないバインダー樹脂を添加する必要はない。防汚性向上の効果をさらに高める観点から、防汚層18において、含フッ素(メタ)アクリレートの含有量は、防汚層18の固形分全量基準で92質量%以上であると、より好ましい。また、不可避的成分を除いて、防汚層18を構成する樹脂成分の全量が、含フッ素(メタ)アクリレートであると、より好ましい。なお、ここでいう防汚層18の固形分とは、防汚層18において硬化性成分に固定化されていない、常温において液状の成分を除く成分である。防汚層18の固形分としては、含フッ素(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0081】
防汚層18は、含フッ素(メタ)アクリレートを含む組成物を用いて形成することができる。防汚層18の形成用組成物をプライマー層17の表面に層状に配置したうえで、硬化させればよい。防汚層18が紫外線硬化性を有する組成物の硬化物として形成される場合には、防汚層18の形成用組成物は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
【0082】
光重合開始剤、溶剤としては、それぞれ、上記でハードコート層14の形成用組成物に含有されうるものの具体例として挙げた化学種を、防汚層18の形成用組成物においても、好適に適用することができる。光重合開始剤の含有量は、防汚層18の形成用組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上15質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは3質量%以上であり、また10質量%以下である。
【0083】
他に、防汚層18には、必要に応じて、添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、含フッ素(メタ)アクリレート以外の防汚剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、屈折率調整剤などが挙げられる。ただし、防汚層18の表面の平滑性を高める観点から、防汚層18は、金属酸物粒子をはじめとして、固体粒子を含有しないことが好ましい。防汚層18が固体粒子を含有する場合であっても、固体粒子の粒径を10nm以下、また固体粒子の含有量を、防汚層18の固形分100質量%に対し1質量%以下に抑えておくとよい。
【0084】
防汚層18の厚みは、1nm以上であることが好ましい。すると、防汚層18による防汚性向上の効果が高く得られる。より好ましくは、防汚層18の厚みは、3nm以上、さらには5nm以上であるとよい。一方、防汚層18の厚みは、15nm以下であることが好ましい。すると、反射防止フィルム10の反射防止性を高く保つことができる。より好ましくは、防汚層18の厚みは、10nm以下であるとよい。
【0085】
防汚層18の屈折率は、1.6以下であることが好ましい。1.6以下であれば、反射防止フィルム10の反射防止性を高く保つことができる。より好ましくは、防汚層18の屈折率は、1.55以下、さらには1.50以下であるとよい。一方、防汚層18の屈折率の下限は、防汚層18の厚みが上記範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.35以上であればよい。
【0086】
防汚層18表面の算術平均粗さRaは、耐擦傷性と摩耗耐久性の両立などの観点から、0.3nm以上10nm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5nm以上5nm以下、さらに好ましくは1nm以上3nm以下の範囲内である。また同様の観点から、防汚層18表面の平均傾斜角θaは、好ましくは0.03°以上0.4°以下、より好ましくは0.05°以上0.3°以下、さらに好ましくは0.1°以上0.2°以下であればよい。
【0087】
(反射防止フィルムの製造方法)
反射防止フィルム10を製造するには、ハードコート層14、低屈折率層16、プライマー層17、防汚層18をこの順に形成すればよい。各層を形成するには、各層の形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線をはじめとする電離放射線の照射等、組成物が有する硬化性に応じた方法で、硬化を行えばよい。ある層を形成した後、次の層の形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、組成物を硬化させればよい。この工程を順次繰り返すことで、ハードコート層14、低屈折率層16、プライマー層17、防汚層18の積層構造を形成し、反射防止フィルム10を製造することができる。
【0088】
各層を形成する組成物の塗工には、湿式法を好適に用いることができる。具体的には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いることができる。
【0089】
各層に対する乾燥工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去できれば特に限定されるものではないが、50~150℃の温度で10秒~180秒程度行うことが好ましい。
【0090】
各層に対する紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cmが好ましく、100~300mJ/cmがより好ましい。
【0091】
基材フィルム12の面上にハードコート層14を形成する際には、基材フィルム12とハードコート層14の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
【0092】
(反射防止フィルムの特性)
以上の構成の反射防止フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18と、を有し、防汚層18が、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、防汚層18における含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、防汚層18の固形分全量基準で90質量%以上であり、低屈折率層の厚みdLRは46nm以上であり、プライマー層の厚みdPRは8nm以上であり、低屈折率層16とプライマー層17の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下である。反射防止フィルム10において、防汚層18が上記の組成を有し、かつ低屈折率層16と防汚層18の間に、プライマー層17が形成され、さらに低屈折率層16とプライマー層17の厚み、およびそれらの合計が、上記の範囲を満たすことで、反射防止フィルム10が、優れた反射防止性および耐擦傷性を有するとともに、高い防汚性と摩耗耐久性を兼ね備えたものとなる。
【0093】
反射防止フィルム10が高い防汚性を有することで、指紋等の汚れが反射防止フィルム10の表面に付着しにくくなり、また付着したとしても容易に除去することができる。本実施形態に係る反射防止フィルム10は、特に指紋拭き取り性に優れたものとなる。本実施形態に係る反射防止フィルム10において、防汚性の高さには、プライマー層17の形成により、防汚層18の表面の平滑性が高くなることが寄与していると考えられる。また、摩耗耐久性の高さには、プライマー層17を介することによる低屈折率層16と防汚層18の間の密着性の高さが寄与していると考えられる。本実施形態に係る反射防止フィルム10は、高い反射防止性および防汚性に加え、高い耐擦傷性および摩耗耐久性を有することから、タッチパネルの表面に配置されるものをはじめとして、手指の接触を頻繁に受ける用途に特に適している。
【0094】
反射防止フィルム10におけるヘイズは、良好な視認性などの観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。反射防止フィルム10における視感反射率は、低いほど好ましく、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。視感反射率が2.0%以下であれば、反射防止フィルム10が十分に高い反射防止性を有するとみなすことができる。
【0095】
<他の形態の反射防止フィルム>
本発明に係る反射防止フィルムは、上記のとおり、基材フィルム10の面上に、ハードコート層14、低屈折率層16、プライマー層17、防汚層18がこの順に積層されたものであり、防汚層18が所定の組成を有し、かつ低屈折率層16と防汚層18の厚さ、およびそれらの合計が所定の範囲を満たすものであれば、上記第一実施形態に係る反射防止フィルム10の構成に限定されるものではない。以下に、本発明に係る反射防止フィルムの他の実施形態について例示する。
【0096】
(第二実施形態)
図2には、第二実施形態に係る反射防止フィルム20を示している。第二実施形態に係る反射防止フィルム20は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された高屈折率層15と、高屈折率層15の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18を有している。
【0097】
第二実施形態に係る反射防止フィルム20は、第一実施形態に係る反射防止フィルム10と比較して、ハードコート層14と低屈折率層16の間に高屈折率層15を有している点が相違する。これ以外については第一実施形態に係る反射防止フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0098】
高屈折率層15は、ハードコート層14および低屈折率層16よりも高い屈折率を有する層である。高屈折率層15をハードコート層14と低屈折率層16の間に設けることによって、反射防止フィルム10に、より高い反射防止効果を発現させる。高屈折率層15の屈折率は、好ましくは1.55以上1.80以下の範囲内である。より好ましくは1.60以上、また、1.70以下である。
【0099】
高屈折率層15の平均厚みは、屈折率の設定に応じて異なるが、例えば50nm以上200nm以下とすることで、反射防止機能をさらに高めることができる。高屈折率層15としては、相互に屈折率の異なる層を、2層以上積層して設けてもよい。
【0100】
(第三実施形態)
図3には、第三実施形態に係る反射防止フィルム30を示している。第三実施形態に係る反射防止フィルム30は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18とを有する。また、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する。透明粘着層22の面上には、必要に応じて離型フィルム24が配置される。離型フィルム24は、反射防止フィルム30の使用前に透明粘着層22の保護層として機能し、反射防止フィルム30の使用時には、透明粘着層22から剥がされる。
【0101】
第三実施形態に係る反射防止フィルム30は、第一実施形態に係る反射防止フィルム10と比較して、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する点が相違する。これ以外については第一実施形態に係る反射防止フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0102】
透明粘着層22は、反射防止フィルム30をディスプレイ等の表面に密着性良く貼り付けるためのものである。また、反射防止フィルム30は、透明粘着層22を有することで、ディスプレイ等のガラスの飛散を防止する効果を有する。すなわち、反射防止フィルム30は、飛散防止フィルムとしての機能も有する。
【0103】
透明粘着層22を形成する粘着剤組成物は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの公知の粘着性樹脂を含有することができる。中でも、光学的な透明性や耐熱性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤組成物は、透明粘着層22の凝集力を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などが挙げられる。
【0104】
粘着剤組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、可塑剤、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、硬化促進剤、硬化遅延剤などの公知の添加剤が挙げられる。また、生産性などの観点から、有機溶剤を使用して希釈してもよい。
【0105】
透明粘着層22の厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは10μm以上であり、また50μm以下である。
【0106】
透明粘着層22は、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルム24の面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、基材フィルム12の他方の面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の他方の面上に転写する方法などにより形成することができる。
【0107】
透明粘着層22は、ガラスの飛散防止効果の観点から、ガラスに対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは6N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上である。
【0108】
(第四実施形態)
図4には、第四実施形態に係る反射防止フィルム40を示している。第四実施形態に係る反射防止フィルム40は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された低屈折率層16と、低屈折率層16の面上に形成されたプライマー層17と、プライマー層17の面上に形成された防汚層18と、防汚層18の面上に粘着剤層26を介して配置された保護フィルム28と、を有する。
【0109】
第四実施形態に係る反射防止フィルム40は、第三実施形態に係る反射防止フィルム30と比較して、防汚層18の面上に粘着剤層26を介して保護フィルム28を有する点が相違し、これ以外については第三実施形態に係る反射防止フィルム30と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
【0110】
保護フィルム28は、例えばロールプロセスなどで連続加工したりディスプレイ等に貼り合わせられたりするなどの反射防止フィルム40の取扱い時において、防汚層18の表面に傷が付くのを抑えることができるものである。保護フィルム28は、粘着剤層26を介して防汚層18の面に貼り付けられている。保護フィルム28は、反射防止フィルム40の加工後などにおいては、粘着剤層26とともに防汚層18の面から剥がされる。このため、粘着剤層26は、防汚層18と粘着剤層26の間の接着力よりも保護フィルム28と粘着剤層26の間の接着力のほうが強く、防汚層18と粘着剤層26の間で界面剥離可能な接着力に調整される。
【0111】
保護フィルム28を構成する材料は、基材フィルム12を構成する材料として例示したものなどを適宜選択することができる。保護フィルム28の厚みは、特に限定されるものではないが、2μm以上500μm以下の範囲内、2μm以上200μm以下の範囲内とすることができる。
【0112】
粘着剤層26としては、特許文献1に記載されているものを好適に適用することができる。粘着剤層26を形成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを好適に用いることができる。特に、アクリル系粘着剤は、透明性や耐熱性に優れるため、好適である。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
【0113】
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体もしくは共重合体である。(メタ)アクリルモノマーとしては、アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。
【0114】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体、架橋剤以外に、その他添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘着性付与樹脂(タッキファイヤー)、帯電防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、剥離助剤、顔料、染料、湿潤剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属不活性剤、アルキル化剤、難燃剤などが挙げられる。これらは粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して使用される。
【0116】
粘着剤層26の厚みは、特に限定されるものではないが、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2μm以上であり、また7μm以下である。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0118】
例えば上記実施形態では、基材フィルム12の表面に表面処理を施してもよい記載をしているが、表面処理に代えて、基材フィルム12の表面に、易接着層を設ける構成であってもよい。
【0119】
また、基材フィルム12の表面には、各層を形成する前に、ガスバリア性向上層、帯電防止層、オリゴマーブロック層などの各種機能層を予め設けてもよい。帯電防止層としては、特許文献1に記載されているものを好適に適用することができる。
【0120】
そして、上記第三実施形態における透明粘着層22および離型フィルム24は、図3に示すように、図1に示す第一実施形態の反射防止フィルム10に追加する形で示しているが、図2に示す第二実施形態の反射防止フィルム20に追加する形であってもよい。また、上記第四実施形態における粘着剤層26および保護フィルム28は、図4に示すように、図3に示す第三実施形態の反射防止フィルム30に追加する形で示しているが、図1に示す第一実施形態の反射防止フィルム10や、図2に示す第二実施形態の反射防止フィルム20に追加する形であってもよい。
【実施例0121】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。以下、特記しない限り、試料の作製および評価は、室温、大気中において行っている。
【0122】
<ハードコート層形成用組成物の調製>
紫外線硬化性樹脂組成物「ESS-620」(DIC製、ウレタンアクリレート樹脂、溶剤(酢酸エチル)、固形分濃度79質量%)に、光重合開始剤「Omnirad127」(IGM Resins B.V.製)を、ハードコート層形成用組成物全量に対し3質量%となるように加え、固形分濃度31質量%となるように酢酸エチルを加え、ハードコート層形成用組成物を調製した。
【0123】
<高屈折率層形成用組成物の調製>
紫外線硬化性樹脂組成物「TYZ65-01」(トーヨーケム製、アクリル系樹脂、酸化ジルコニウム含有(平均粒子径80nm)、光重合開始剤、溶剤(シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル)、固形分濃度35質量%)に、固形分濃度8質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、高屈折率層形成用組成物を調製した。
【0124】
<低屈折率層形成用組成物の調製>
表1に記載の配合組成(全固形分中の質量%)となるように、バインダー樹脂、中空シリカ粒子、アルミナ粒子、含フッ素化合物(比較例8のみ)、光重合開始剤を配合し、溶剤(MEK/PGM=1/3)を用いて、表1に記載の固形分濃度に調整することにより、低屈折率層形成用組成物を調製した。
低屈折率層形成用組成物の材料として用いた材料は以下の通りである。
・バインダー樹脂:東亞合成製「アロニックスMT-3041」、多官能アクリレート、固形分濃度100質量%
・中空シリカ粒子:日揮触媒化成工業製「スルーリア4320」、平均粒子径60nm、溶剤(MIBK)、固形分濃度:20質量%
・アルミナ粒子:トーヨーケム製 アルミナゾル「リオデュラスKT-110AL」、アルミナ粒子(平均粒子径:110nm)25質量%、感光性モノマーおよび樹脂15質量%、溶剤(MEK、シクロヘキサノン、脂肪族系溶剤)
・含フッ素化合物:信越化学工業製「KY-1216」、パーフルオロポリエーテル基含有(メタ)アクリレート、溶剤(MEK)、固形分濃度20質量%
・光重合開始剤:上記「Omnirad127」
【0125】
<プライマー層形成用組成物の調製>
表1に記載の配合組成(全固形分中の質量%)となるように、バインダー樹脂(上記「アロニックスMT-3041」)と光重合開始剤(上記「Omnirad127」)を配合し、溶剤(MEK/PGM=1/3)を用いて、表1に記載の固形分濃度に調整することにより、プライマー層形成用組成物を調製した。
【0126】
<防汚層形成用組成物の調製>
表1に記載の配合組成(全固形分中の質量%)となるように、含フッ素化合物(上記「KY-1216」)、バインダー樹脂(上記「アロニックスMT-3041」;比較例7のみ)、光重合開始剤(上記「Omnirad127」)を配合し、溶剤(MEK/PGM=1/3)を用いて、表1に記載の固形分濃度に調整することにより、防汚層形成用組成物を調製した。
【0127】
<ハードコート層の作製>
実施例1~8および比較例1~8のそれぞれについて、基材フィルム(東レ製「ルミラー#50-U403」、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)に、#12のワイヤーバーを用いてハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃×60秒で乾燥後、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cmの紫外線を照射してハードコート層(膜厚4μm)を形成した。
【0128】
<高屈折率層の作製>
実施例1~8および比較例1~8のそれぞれについて、ハードコート層の面上に、高屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃×60秒で乾燥後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cmの紫外線を照射して高屈折率層(膜厚110nm)を形成した。
【0129】
<低屈折率層の作製>
実施例1~8および比較例1~8のそれぞれについて、高屈折率層の面上に、低屈折率層形成用組成物を、#3のワイヤーバーを用いて塗布し、100℃×60秒で乾燥後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成した。膜厚は表1に示したとおりとした。
【0130】
<プライマー層の作製>
実施例1~8および比較例1~5のそれぞれについて、低屈折率層の面上に、プライマー層形成用組成物を、#3のワイヤーバーを用いて塗布し、100℃×60秒で乾燥後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cmの紫外線を照射してプライマー層を形成した。膜厚は表1に示したとおりとした。比較例6~8については、プライマー層を形成しなかった。
【0131】
<防汚層の作製>
実施例1~8および比較例1~5についてはプライマー層の面上に、比較例6,7については低屈折率層の面上に、それぞれ、防汚層形成用組成物を、#3のワイヤーバーを用いて塗布し、100℃×60秒で乾燥後、窒素雰囲気下、高圧水銀ランプを用いて光量200mJ/cmの紫外線を照射して防汚層を形成した。膜厚は表1に示したとおりとした。比較例8については防汚層を形成しなかった。
以上により、実施例1~8および比較例1~8に係る反射防止フィルムを作製した。
【0132】
<評価方法>
(各層の厚みおよび屈折率)
各試料について、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、プライマー層、防汚層の各厚みおよび屈折率を評価した。この際、各層を形成するごとに、顕微分光膜厚計(大塚電子製「OPTM-F1」)を用いて得られた波長領域380~780nmの反射分光スペクトルと、フレネルの式に基づいて導出される理論スペクトルとを、最小二乗法によりカーブフィッティングすることにより、各層の厚みおよび波長589.3nmにおける屈折率を算出した。
【0133】
(視感反射率)
作製した反射防止フィルムの裏面(低屈折率層とは反対側の面)を#400のサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶし、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV-3600」)を用いて、波長380nm~780nmにおける低屈折率層の表面の5°正反射率を測定し、この測定値に比視感度値を乗じて視感反射率を算出した。視感反射率が2.0%以下であれば、反射防止性が十分であるとみなすことができる。
【0134】
(摩耗耐久性)
各試料について、水接触角を指標とした消しゴム摩耗試験によって、摩耗耐久性を評価した。
各試料について、消しゴム摩耗試験を行った。この際、平面摩耗試験機(大栄科学精機製作所製「DAS-400」)を使用し、消しゴム摩耗試験用消しゴム(Minoan社製、接触面が直径φ6mmの円柱型)を、各試料の反射防止フィルムの表面に載せて往復させた。試験台のストローク長は50mm、試験台往復速度は30往復/分とし、印加荷重は1.0kgとした。500往復までは100往復ごとに、500往復を超えたときはそれ以降500往復ごとに水接触角を計測し、90°以上の水接触角を保つ最大の往復回数を評価値とした。評価値が2000回以上であれば、十分な摩耗耐久性を有するとみなすことができる。さらに評価値が3000回以上であれば、高い摩耗耐久性を有するとみなすことができる。水接触角の測定は、接触角計(協和界面科学製、DropMaster DMo-502)を使用し、4μLの純水を反射防止フィルムの表面に滴下して行った。
【0135】
(耐擦傷性)
各試料について、耐スチールウール試験を行った。この際、平面摩耗試験機(大栄科学精機製作所製「DAS-400」)を使用し、20mm×20mmの平面摩擦子に固定したスチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)を、各試料の反射防止フィルムの表面に載せて往復させた。試験台のストローク長は50mm、試験台往復速度は60往復/分、印加荷重は1.5kgとし、100回往復動させた。試験後の反射防止フィルムに、長さ10mm以上の傷があるものを、耐擦傷性が低い(×)と評価した。また、長さ10mm未満の傷はあるが長さ10mm以上の傷はないものを、耐擦傷性が高い(〇)と評価した。この程度の傷は、実用上問題とならない。さらに、傷がないものを、耐擦傷性が非常に高い(◎)と評価した。
【0136】
(防汚性)
各試料について、防汚性の評価として、指紋拭き取り性を評価した。
市販の人口指紋液(伊勢久製、人工汗液A法(汗試験機法))を手指にとり、手指になじませた後、反射防止フィルムの低屈折率層表面にその手指を押し当てて、指紋を付着させた。次いで、黒色紙上に反射防止フィルムを載せ、ポリエステル製ワイパー(アズワン製、アズピュアスーパーワイパー(エコノ))を用いて、目視観察しながら反射防止フィルムの表面に付着した指紋を拭き取った。10往復以内に人口指紋液が見えなくなるまで拭き取れたものを、防汚性が高い(○)と評価し、10往復させても拭き取れなかったものを、防汚性が低い(×)とした。
【0137】
<評価結果>
表1に、実施例1~8および比較例1~8について、低屈折率層、プライマー層、防汚層の成分組成(単位:各層の全固形分中の質量%)および反射防止フィルムの層構成とともに、評価結果を示す。
【0138】
【表1】
【0139】
表1に示されるとおり、実施例1~8では、低屈折率層の表面に、プライマー層を挟んで、含フッ素(メタ)アクリレートを固形分全量基準で90質量%以上含有する防汚層が形成されている。さらに、低屈折率層の厚みdLRが46nm以上、プライマー層の厚みdPRが8nm以上、低屈折率層とプライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下となっている。そのことと対応して、実施例1~8ではいずれも、2.0%以下の低い視感反射率と、評価値で2000回以上となる高い摩耗耐久性が得られている。同時に、「◎」または「○」と評価される高い耐擦傷性を有し、また「〇」と評価される高い防汚性が得られている。
【0140】
一方で、比較例1~3では、低屈折率層とプライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下の範囲から外れているため、光干渉効果による反射の軽減効果を十分に得ることができず、視感反射率が2.0%を超えている。さらに、比較例1は低屈折率層の厚みdLRが46nmに満たないため、摩耗耐久性が低くなっている。
【0141】
比較例4では、厚みdPRが8nm以上のプライマー層を低屈折率層とともに備えており、合計厚みdLR+dPRも60nm以上となっているが、低屈折率層の厚みdLRが46nm未満となっている。この比較例4においては、摩耗耐久性が低くなっており、低屈折率層が薄すぎる場合には、反射防止フィルムにおいて、十分な摩耗耐久性が得られないことが示される。
【0142】
プライマー層を形成せず、低屈折率層の表面に防汚層が直接形成されている比較例6においては、摩耗耐久性も、防汚性も、低くなっている。摩耗耐久性については、プライマー層の有無においてのみ異なる実施例3と比較して、顕著に低くなっている。プライマー層が形成されていないことで、低屈折率層と防汚層との間の密着性が低くなり、その結果として摩耗耐久性が低くなっていると考えられる。また、プライマー層が形成されていないことで、防汚層の表面の平滑性が低くなり、十分な防汚性が得られないものと考えられる。
【0143】
比較例5では、プライマー層を形成しているが、その厚みdPRが、8nm未満となっており、摩耗耐久性が低くなっている。このことは、プライマー層が薄すぎると、防汚層の密着性向上による摩耗耐久性向上の効果が十分に発揮されいないことを示している。
【0144】
比較例7では、比較例6と同様に、プライマー層を設けていないが、代わりに、フッ素を含まないバインダー樹脂を防汚層に添加している。しかし、比較例7では、摩耗耐久性が低くなっている。防汚性についても、比較例6と同様に、「×」と評価される低いものとなっている。この結果から、防汚層にフッ素を含まないバインダー樹脂を添加しても、プライマー層の代わりに、低屈折率層との間の密着性を十分に高める機能は果たせないと言える。また、防汚層において、相対的に含フッ素化合物の含有量が少なくなることで、十分な防汚性が得られなくなっていると解釈される。
【0145】
比較例8では、低屈折率層の表面に、プライマー層および防汚層を設けていない。代わりに、低屈折率層に含フッ素化合物を添加している。しかし、比較例8では、摩耗耐久性も防汚性も低くなっている。このことは、防汚層の代わりに低屈折率層に含フッ素化合物を添加しても、低屈折率層の表面に独立した層として設ける防汚層と同等の効果は得られないことを示している。
【0146】
以上に示されるとおり、反射防止フィルムが、基材フィルムと、基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、ハードコート層の面上に形成された低屈折率層と、低屈折率層の面上に形成されたプライマー層と、プライマー層の面上に形成された防汚層と、を有し、防汚層が、含フッ素(メタ)アクリレートを含有する組成物の硬化物より構成され、防汚層における含フッ素(メタ)アクリレートの含有量が、防汚層の固形分全量基準で90質量%以上であり、底屈折率層の厚みdLRが46nm以上であり、プライマー層の厚みdPRが8nm以上であり、低屈折率層とプライマー層の合計厚みdLR+dPRが60nm以上100nm以下であることにより、反射防止フィルムは、優れた反射防止性および耐擦傷性を有するとともに、高い防汚性と摩耗耐久性を備えたものとなる。
【0147】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0148】
10,20,30,40 反射防止フィルム
12 基材フィルム
14 ハードコート層
15 高屈折率層
16 低屈折率層
17 プライマー層
18 防汚層
22 透明粘着層
24 離型フィルム
26 粘着剤層
28 保護フィルム
図1
図2
図3
図4