(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064812
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】チラーシステム及びチラーシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 39/04 20060101AFI20240507BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240507BHJP
F28D 5/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F25B39/04 N
F25B1/00 381G
F28D5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173697
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】馬越 清輝
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA35
3L103BB42
3L103CC30
(57)【要約】
【課題】給水圧の低下に伴う散水装置の散水量不足を防止し、チラーユニットの性能低下を抑制するチラーシステム及びチラーシステムの制御方法を提供する。
【解決手段】チラーシステム1は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニット10を備えるチラーユニット群と、各チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置30と、各散水装置に接続される給水管31と、給水管の水圧を計測する水圧検知部32と、水圧検知部により計測された水圧に基づいて、散水装置の運転台数を制御する制御部100とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、
各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、
各前記散水装置に接続される給水管と、
前記給水管の水圧を計測する水圧検知部と、
前記水圧検知部により計測された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する制御部と
を備えるチラーシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された水圧が低いほど、前記散水装置を同時に運転する台数が少なくなるように決められたマップを備えている請求項1に記載のチラーシステム。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記散水装置のうち運転する前記散水装置を所定の時間毎に順次切替える請求項1に記載のチラーシステム。
【請求項4】
複数の前記散水装置は、運転する前記散水装置間の間隔が等間隔である請求項1に記載のチラーシステム。
【請求項5】
一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、
各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、
各前記散水装置に接続される給水管と、
前記給水管の水圧を計測する水圧検知部と、
前記水圧検知部によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御部と
を備えるチラーシステム。
【請求項6】
前記制御部は、チラーシステムに異常が発生したことを検知及び通知する異常検知部をさらに備え、
前記異常検知部は、前記水圧検知部によって計測される水圧が、予め設定された所定の値を所定の期間に亘って下回る場合に、チラーシステムの異常を検知するとともに、ユーザへチラーシステムの異常を通知する請求項1又は5に記載のチラーシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記散水装置を運転する場合の前記給水管に流れる水の水圧を前記散水装置毎に記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された現在の水圧と前記記憶部に記憶されている過去の水圧との差に基づいて、前記チラーユニット又は前記散水装置の故障の有無を判断する請求項1又は5に記載のチラーシステム。
【請求項8】
一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、
各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、
各前記散水装置に接続される給水管と、
を備えるチラーシステムにおいて、
前記給水管の水圧を計測する工程と、
前記水圧を計測する工程により計測された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する工程と
を有するチラーシステムの制御方法。
【請求項9】
一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、
各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、
各前記散水装置に接続される給水管と、
を備えるチラーシステムにおいて、
前記給水管の水圧を計測する工程と、
前記水圧を計測する工程によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する工程と
を有するチラーシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チラーシステム及びチラーシステムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のチラーユニットが並列されたチラー群において、各チラーユニットに対する散水量の制御は、チラーユニット毎にチラーユニット単体の運転状況に基づいて制御されていた。
【0003】
特許文献1には、複数のチラーユニットが並設されたチラー群において、チラーユニットは、ノズルを介して各側面に水を供給可能な複数の散水管を有する散水装置を備えていることが開示されている。さらに、特許文献1には、散水装置の散水管は、チラー群の端部に配置されるチラーユニットの端側側面に水を散布するため第一散水管と、互いに隣り合うチラーユニットの側面同士の間に水を散布する第二散水管とを含む構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、外気の温度と冷媒が流れる供給合流管の出口液温に基づいて、チラー冷却系の台数制御が行われることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-75268号公報
【特許文献2】特開2021-92370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献2に記載されているような温度に基づいてチラー冷却系の台数を制御したとしても、散水装置の運転台数に応じて水圧が変化した場合に、散水装置の運転台数に対して水圧が低いと各散水装置へ散水を行うための給水圧が低下してしまい、散水が必要なチラーユニットを十分に冷却することができず、チラーユニットの性能低下を招いてしまう虞があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、給水圧の低下に伴う散水装置の散水量不足を防止し、チラーユニットの性能低下を抑制するチラーシステム及びチラーシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るチラーシステムは、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、各前記散水装置に接続される給水管と、前記給水管の水圧を計測する水圧検知部と、前記水圧検知部により計測された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する制御部とを備える。
【0009】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るチラーシステムは、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、各前記散水装置に接続される給水管と、前記給水管の水圧を計測する水圧検知部と、前記水圧検知部によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御部とを備える。
【0010】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るチラーシステムの制御方法は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、各前記散水装置に接続される給水管と、を備えるチラーシステムにおいて、前記給水管の水圧を計測する工程と、前記水圧を計測する工程により計測された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する工程とを有する。
【0011】
本開示の幾つかの実施形態における一態様に係るチラーシステムの制御方法は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、各前記散水装置に接続される給水管と、を備えるチラーシステムにおいて、前記給水管の水圧を計測する工程と、前記水圧を計測する工程によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、給水圧の低下に伴う散水装置の散水量不足を防止し、チラーユニットの性能低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に係る互いに隣り合う複数のチラーユニットを示す断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るチラーシステムを示す平面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るチラーユニットの概略構成を示す冷媒回路の例図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るチラーシステムの上位制御部及びチラーユニット制御装置の関係を示した概念図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る上位制御部及びチラーユニット制御装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る上位制御部が備える各種制御機能のうち、チラーユニットへの散水制御に関係する機能の一例を示した機能ブロック図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る水圧検知部の計測量と散水装置の運転台数の関係を示した例図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る2台の散水装置を運転した場合に、運転する散水装置を順次切替える制御のタイミングチャートである。
【
図9】本開示の一実施形態に係る水圧検知部の計測量と散水装置運転台数の関係を示した例図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る水圧検知部の計測量に基づいて散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本開示の一実施形態に係るチラーシステム及びチラーシステムの制御方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態に係る互いに隣り合う複数のチラーユニット10(10-1~10-8)を示す断面図である。なお、チラーユニット10の各構成要素の符号については、チラーユニット10-1にのみ記載しているが、チラーユニット10-2~10-8についても同様の構成を備える。
チラーシステム1は、複数のチラーユニット10と、各チラーユニット10の側面11aに沿って設けられた散水装置30(30-1~30-8)と、を備えている。チラーユニット10は、大規模建築物や倉庫等の建物に設置される空気調和機の室外ユニットとして用いられる。チラーユニット10は、建物内に設置された室内ユニット(不図示)との間で、水等の冷媒を循環させる。チラーユニット10は、冷媒を冷却し、冷却された冷媒は、室内ユニットの熱交換器へ供給され、室内の空気と熱交換を行う。
【0016】
複数のチラーユニット10は、水平方向に間隔を空けて一列に並設されている。以下では、チラーユニット10が並設されている方向(
図1の紙面左右方向)を並設方向H1と称する。各チラーユニット10は、並設方向H1に直交する水平方向(
図1の紙面奥行方向及び
図2の紙面上下方向)を奥行方向H2として延びている。これら複数のチラーユニット10が並設されることによって、チラー群が構成されている。
【0017】
(チラーユニット)
チラーユニット10は、ケーシング11と、側部開口(不図示)と、上部開口(不図示)と、熱交換器52と、ファン53と、基部25と、を備えている。
【0018】
(基部)
基部25は、チラーユニット10が設置される建物の屋上や、建物の外部の地面等の設置面上に設けられている。基部25は、設置面から水平方向に対して垂直である上下方向の上方に向かって延びている。
基部25は、内部に圧縮機(不図示)やチラーユニット制御装置200(200-1~200-8)等を有している。チラーユニット制御装置200は、圧縮機の動作や、ファン53の回転、熱交換器52内部での冷媒の流通等を含めたチラーユニット10を制御する機能を有している。
【0019】
(ケーシング)
ケーシング11は、熱交換器52と、ファン53と、を内部に収容している。本実施形態では、ケーシング11が、基部25上に設けられている。さらに、ケーシング11は、上下方向に延びる筒状をなしている。複数台のチラーユニット10が隣り合う水平方向におけるケーシング11の幅寸法は、下端から上端に向かって漸次拡大している。
【0020】
すなわち、本実施形態で例示するケーシング11は、奥行方向H2及び並設方向H1から見た時に、下端から上端に向かって漸次拡大する台形状をなしている。
【0021】
これにより、並設方向H1に互いに隣り合うチラーユニット10において、一方のチラーユニット10のケーシング11と、他方のチラーユニット10のケーシング11との空間Sは、上下方向の下方から上方に向かって漸次狭くなっている。
【0022】
ケーシング11は、並設方向H1の両側側面11aに、側部開口(不図示)を有している。側部開口は、ケーシング11において並設方向H1を向く側面11aに該側面11aを貫通するように形成されている。即ち、側部開口を介して、ケーシング11の内外は、連通している。そして、並設方向H1に互いに隣り合うチラーユニット10のケーシング11に設けられた側部開口同士は互いに対向している。ケーシング11の下端は、基部25によって閉塞されている。ケーシング11は、上下方向の上方側の上端に、上部開口を有している。上部開口は、上下方向の上方に向かって開口している。
【0023】
(熱交換器)
熱交換器52は、ケーシング11内に設けられている。本実施形態の熱交換器52は、一つのケーシング11に対して二つずつ設けられている。さらに、本実施形態における熱交換器52は、一つのケーシング11内において、並設方向H1における両側側面11a付近に一つずつ設けられている。また、熱交換器52は、それぞれケーシング11の側面11aに沿って側部開口に対向するように設けられている。
【0024】
(ファン)
ファン53は、ケーシング11内に設けられている。本実施形態におけるファン53は、ケーシング11内で、上部開口付近に配置されている。ファン53は、
図1の奥行方向H2に、複数個が並べて設けられている。本実施形態においては、ケーシング11内にファン53は複数個設けられている。
【0025】
ファン53は、上下方向に延びる各チラーユニット10の中心軸周りに回転するいわゆる軸流ファンであり、中心軸を中心とした周方向に並んで配置された複数枚の羽根を備えている。ファン53は、モータ(不図示)により、中心軸周りに回転駆動される。ファン53は、中心軸周りに回転することによって、
図1に示すように、空気の流れFを生じさせる。より具体的には、ファン53は、中心軸周りに回転駆動することにより下方から上方へ向かう空気の流れFを生じさせる。言い換えれば、ファン53は、側部開口からケーシング11内に空気を導入し、熱交換器52を介して上部開口から導入した空気を排出する。
【0026】
(散水装置)
図2は、本開示の一実施形態に係るチラーシステム1を示す平面図である。
散水装置30は、散水管33と、複数のノズル34と、開閉弁35(35-1~35-8)とを有している。また、各散水装置30には給水管31の一端が接続され、給水管31を介して給水タンク(給水源)37から冷却水を供給する。また、散水管33は、第一分岐管33aと第二分岐管33bに分岐する形状を有している。また、第一分岐管33aと第二分岐管33bには複数のノズル34が設けられている。散水装置30は、各チラーユニット10を冷却するために、隣り合うチラーユニット10同士の間の空間S及びチラーユニット10の側面11aに冷却水を供給する。
【0027】
(給水管)
給水管31は、金属製の管であり、複数の散水管33に接続されている。また、給水管31は、第一分岐管33a内及び第二分岐管33b内へ冷却水を供給するために散水管33へ冷却水を供給する管である。給水管31は、チラー群とは別途存在しているポンプ等を有する給水タンク37に一端が接続されており、給水管31の内部には接続された一端を介して、所定の圧力で給水タンク37から冷却水が供給される。
【0028】
(散水管)
散水管33は、第一分岐管33aと、第二分岐管33bと、複数のノズル34と、を有している。
【0029】
本実施形態では、1台のチラーユニット10に対して、第一分岐管33a及び第二分岐管33bが設けられている。
第一分岐管33aは、金属製の管であり、チラーユニット10のケーシング11の一方側の側面11aに沿って、
図2における奥行方向H2左側の端部から奥行方向H2右側の端部まで延びるように設けられている。
第二分岐管33bは、金属製の管であり、チラーユニット10のケーシング11の他方側の側面11aに沿って、
図2における奥行方向H2左側の端部から奥行方向H2右側の端部まで延びるように設けられている。
【0030】
なお、第一分岐管33aの奥行方向H2の奥側を向く端部は、内部を流通する冷却水が漏出しないように閉塞されている。第二分岐管33bも同様である。
【0031】
散水管33は、第一分岐管33a及び第二分岐管33b内に冷却水を供給するために給水管31に接続されている。また、散水管33には、冷却水の供給を切替える後述の開閉弁35が設けられている。
また、第一分岐管33a及び第二分岐管33bには、所定の間隔を空けて複数のノズル34が上下方向の下方側に向かって散水可能に設けられている。
【0032】
これにより、第一分岐管33aの内部を冷却水が流通可能となり、第一分岐管33aは、ノズル34を用いて並設方向H1の一方側の端部に配置されたチラーユニット10の一方側の側面11a及び該側面11a付近の空間に冷却水を散布できる。
【0033】
また、第一分岐管33aと同様に第二分岐管33bは、ノズル34を用いて並設方向H1の他方側の端部に配置されたチラーユニット10の他方側の側面11a及び該側面付近の空間に冷却水を散布できる。
【0034】
(ノズル)
ノズル34は、ノズル34の散水位置からある程度の厚みをもたせて扇形状に広がって冷却水を散布する金属製のいわゆる扇形ノズルである。ノズル34の噴出口(不図示)は、並設方向H1から見た際に奥行方向H2の散水範囲である扇形の中心角が80°~100°、好ましくは90°となるよう噴出口近辺の部材が切り欠き溝状に形成されている。
【0035】
ノズル34は、第一分岐管33a及び第二分岐管33bの所定の位置に間隔を空けて複数(本実施形態では、第一分岐管33a及び第二分岐管33bのそれぞれに8個)設けられている。なお、各ノズル34の配置については、散水装置30の利用環境に対応して適宜変更されてもよい。
並設方向H1の一方側の端部のチラーユニット10の第一分岐管33aに設けられたノズル34は、各チラーユニット10の一方側の側面11a及び該側面11a付近の空間に対して冷却水を散布する。また、並設方向H1の他方側の端部のチラーユニット10の第二分岐管33bに設けられたノズル34は、チラーユニット10の他方側の側面11a及び該側面11a付近の空間に対して冷却水を散布する。
【0036】
第一分岐管33a又は第二分岐管33bに設けられたノズル34は、並設方向H1で互いに対向するチラーユニット10の側面同士の間に区画される空間S、及び互いに対向するチラーユニット10の両側面11aに対して冷却水を散布する。
【0037】
第一分岐管33a又は第二分岐管33bに設けられたノズル34により、散水が行われるチラーユニット10に隣接する他のチラーユニット10周辺における散水されていない領域に対しても散水することができる。
【0038】
(開閉弁)
開閉弁35は、各散水装置30に設けられ、給水タンク37から散水装置30への給水有無を切替えるための弁である。開閉弁35は、例えば、散水管33に設けられる。また、開閉弁35は、後述の上位制御部(制御部)100によって各散水装置30の運転又は停止が切り替えられることに対応して、開閉状態が切り替わるように制御される。
【0039】
(水圧検知部)
水圧検知部32は、給水管31に設けられ、給水タンク37から各散水装置30に搬送される水の給水圧力を計測する。また、水圧検知部32は、後述の上位制御部100と通信媒体を介して接続されており、双方向の通信が可能な構成とされている。なお、水圧検知部32は、給水タンク37から散水装置30まで冷却水を搬送する搬送経路の上流側に設けられることが好ましい。
【0040】
(温度計測部)
温度計測部36は、チラーユニット群が設置されている環境下の外気温を計測する。温度計測部36としては、例えば熱電対などが用いられる。温度計測部36は、後述の上位制御部100と通信媒体を介して接続されており、双方向の通信が可能な構成とされている。
【0041】
(チラーユニットの冷媒回路)
図3は、本開示の実施形態に係るチラーユニット10の概略構成を示す冷媒回路の例図である。
このチラーユニット10は、2つの冷凍サイクル系統、すなわち、第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2と、水系統部43とがチラーユニット10の筐体内部に収容された構成となっている。また、第1冷凍サイクル系統R1と第2冷凍サイクル系統R2は、水配管58において直列に配置される。
【0042】
チラーユニット10が備える冷凍サイクル系統の数や、冷凍サイクル系統の水配管58に対する配置関係は、本実施形態で説明した例に限定されない。例えば、冷凍サイクル系統は単数でも複数でもよく、本実施形態では4つの冷凍サイクル系統を備える。また、複数の冷凍サイクル系統は、水配管58において並列に配置されてもよく、直列配置と並列配置が組み合わされてもよい。
【0043】
第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2は、それぞれ、圧縮機45と、オイルセパレータ46と、逆止弁47と、四方弁48と、水熱交換器59(第1水熱交換器59A,第2水熱交換器59B)と、レシーバ50と、電子膨張弁51と、熱交換器52と、気液分離器54とを備えている。熱交換器52にはファン53が設けられている。
【0044】
圧縮機45は、ガス冷媒を吸入し、吸入したガス冷媒を圧縮して吐出する。オイルセパレータ46は、圧縮機45から吐出された圧縮冷媒中のオイルを分離して圧縮機45に還流させる。逆止弁47は、圧縮冷媒の逆流を防止する。
【0045】
四方弁48は、圧縮機45から吐出された圧縮冷媒を水熱交換器59に送る暖房運転モードと、熱交換器52に送る冷房運転モードとの2つのポジションが選択される弁である。
【0046】
水熱交換器59は、暖房運転モードにおいて圧縮冷媒を凝縮させて凝縮器として機能し、冷房運転モードにおいて凝縮冷媒を気化させる蒸発器として機能する熱交換器である。そして、その凝縮熱又は気化熱により、水系統部43を流れる水を加熱又は冷却して暖房用の温水、給湯用の温水若しくは熱水、又は冷房用の冷水を生成する。
【0047】
第1冷凍サイクル系統R1は、第1水熱交換器59Aを有し、第2冷凍サイクル系統R2は、第2水熱交換器59Bを有する。
【0048】
レシーバ50は、凝縮した液冷媒を所定量貯留するタンクである。電子膨張弁51は、凝縮冷媒の圧力を低下させて気化を促進させる。熱交換器52は、ファン53によって外気が供給される。熱交換器52は、暖房運転モードにおいて凝縮冷媒を気化させる蒸発器として機能し、冷房運転モードにおいて圧縮冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する熱交換器である。気液分離器54は、圧縮機45に吸入される前の冷媒を気液分離してガス冷媒のみを圧縮機45に吸入させる。
【0049】
水系統部43は、水入口部55と、水ポンプ56と、水出口部57と、水配管58とを具備して構成されている。水入口部55から延びる水配管58には、水ポンプ56が設置される。
【0050】
さらに、チラーユニット10は、冷媒温度検知部61と、冷媒圧力検知部62とを備えている。
【0051】
冷媒温度検知部61は、第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2において、第1水熱交換器59A,第2水熱交換器59Bの接続口よりも上流側及び/又は下流側に設置され、第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2を流れる冷媒の温度を検知する。
【0052】
冷媒圧力検知部62は、第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2において、圧縮機45の吸い込み側及び吐き出し側にそれぞれ設置され、第1冷凍サイクル系統R1,第2冷凍サイクル系統R2を流れる冷媒の圧力を検知する。
【0053】
(上位制御部及びチラーユニット制御装置)
図4は、本開示の一実施形態に係るチラーシステム1の上位制御部100及びチラーユニット制御装置200(200-1~200-8)の関係を示した概念図である。
図4に示すように、上位制御部(制御部)100は、各チラーユニット10の制御装置であるチラーユニット制御装置200と通信媒体を介して接続されており、双方向の通信が可能な構成とされている。上位制御部100は、例えば、チラーシステム1全体を制御する制御部であり、後述するように各チラーユニット10の運転状況に基づいて運転する散水装置30を決定する機能を有する他、散水が行われるチラーユニット10の台数制御等を行う。チラーユニット制御装置200は、各チラーユニット10に備えられており、上位制御部100から与えられる制御指令に基づいて、各チラーユニット10の制御を行う。
【0054】
図5は、本開示の一実施形態に係る上位制御部100及びチラーユニット制御装置200のハードウェア構成の一例を示した図である。
上位制御部100、各チラーユニット10が備えるチラーユニット制御装置200は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU81と、CPU81が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)82と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)83と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)84と、ネットワーク等に接続するための通信部85とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)等の他の記憶装置を用いることとしてもよい。これら各部は、バス88を介して接続されている。
【0055】
また、上位制御部100、各チラーユニット10が備えるチラーユニット制御装置200は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0056】
図6は、上位制御部100が備える各種制御機能のうち、チラーユニット10への散水制御に関係する機能の一例を示した機能ブロック図である。
図6に示されるように、上位制御部100は、情報取得部101、記憶部102、判断部103、開閉弁切替部104、計時部105、異常検知部106を備えている。
【0057】
(情報取得部)
情報取得部101は、チラーユニット制御装置200から各チラーユニット10の負荷を運転情報として取得する。また、情報取得部101は、給水管31に設けられた水圧検知部32の計測量Pdetと、温度計測部36の計測値とを運転情報として取得する。
チラーユニット10の負荷とは、例として、チラーユニット10内を循環する冷媒の圧力、チラーユニット10が設置される環境下の外気温度、チラーユニット10に対応する散水装置30の運転時間等である。
【0058】
(記憶部)
記憶部102は、各チラーユニット10への散水を適切に行うためにチラーユニット10の負荷の基準値を記憶している。負荷の基準値は、チラーユニット10の現在の負荷に対する散水装置30の運転台数又は運転条件が適切か否かを判断するために用いられる基準値である。基準値は、ユーザによって予め設定された所定値であってもよい。また、記憶部102は、各チラーユニット10及び散水装置30の過去の運転履歴を記憶しており、過去の運転履歴に基づいて基準値が設定されてもよい。
【0059】
(判断部)
判断部103は、情報取得部101によって取得された各チラーユニット10の負荷に基づいて、いずれの散水装置30を運転するべきかを判断する。具体例として、判断部103は、情報取得部101によって取得された各チラーユニット10の冷媒圧力のうち、最も高い冷媒圧力が検知されたチラーユニット10に対して散水を行う必要があると判断する。
【0060】
(開閉弁切替部)
開閉弁切替部104は、判断部103の判断結果に基づいて、各散水装置30の運転又は停止に対応して各開閉弁35の開閉状態を切替える。散水を行う散水装置30に対応する開閉弁35のみを開とすることにより、散水を行う散水装置30にのみ水が供給される。
【0061】
(計時部)
計時部105は、各チラーユニット10に対応する散水装置30の運転時間を計時する。散水装置30の運転時間は、例として、継続運転時間や累積運転時間等である。また、判断部103は、計時部105によって計時された各散水装置30の運転時間に基づいて、各散水装置30の運転又は停止を判断してもよい。
【0062】
異常検知部106は、チラーシステム1の運転に異常が発生したことを検知し、異常が発生したことをユーザへ通知する。例として、水圧検知部32による水圧の計測量Pdetが、予め設定された所定の値を所定の期間に亘って下回る場合に、チラーシステムの異常を検知し、チラーシステム1の異常をユーザへ通知する。
【0063】
(水圧検知量に応じた散水装置の台数制御)
図7は、水圧検知部32の計測量Pdetと散水装置30の運転台数の関係を示した例図である。
上位制御部100は、水圧検知部32によって計測された水圧の計測量Pdetが低いほど、散水装置30を同時に運転する台数が少なくなるように決められたマップを有している。そして、該マップに基づいて、水圧検知部32の計測量Pdetに応じて散水装置30の運転台数を制御する。例として、0.8MPa≦Pdetである場合には、判断部103は8台の散水装置30-1~30-8に水を供給できると判断する。そして、上位制御部100は、判断部103の判断結果に基づいて、散水装置30-1~30-8を運転する。
【0064】
また、0.4MPa≦Pdet<0.8MPaの場合には、判断部103は4台の散水装置30に水を供給できると判断する。そして、上位制御部100は、判断部103の判断結果に基づいて、4台の散水装置30を運転する。ここで、運転する4台の散水装置30は、30-1と、30-3と、30-5と、30-7との組み合わせ、又は30-2と、30-4と、30-6と、30-8との組み合わせのいずれかである。このように、
図2の並設方向H1において1台おきに散水装置30を運転することにより、対応する散水装置30が停止しているチラーユニット10に対しても散水による冷却を行う。
【0065】
また、Pdet<0.4MPaの場合には、判断部103は2台の散水装置30に水を供給できると判断する。そして、上位制御部100は、判断部103の判断結果に基づいて、2台の散水装置30を運転する。ここで、運転する2台の散水装置30は、30-1と30-5、30-2と30-6、30-3と30-7、30-4と30-8の組み合わせのいずれかである。
【0066】
上位制御部100は、2台又は4台の散水装置30の運転する場合に、運転する各散水装置30間の間隔が等間隔となるように各散水装置30の運転又は停止を制御する。このように、運転する散水装置30同士の間隔が等間隔となるように制御することにより、運転する散水装置30から離れた地点に配置されるチラーユニット10に対しても散水による冷却を行う。
【0067】
また、散水装置30の運転台数が2台又は4台の場合には、上位制御部100は、計時部105によって各散水装置30の運転時間を計時し、所定の時間毎に運転する散水装置30を順次切替える制御を行う。運転する散水装置30を所定時間毎に順次切替えることにより、特定のチラーユニット10に対して長期に亘って散水による冷却がされない事態を防止するとともに、特定の散水装置30の運転時間が長期化することによる性能劣化や故障が発生することを抑制する。
【0068】
図8は、2台の散水装置30を運転した場合に、運転する散水装置30を順次切替える制御のタイミングチャートである。経過時刻t1~t5において破線で区切られた各区間はいずれも等間隔である。
まず、散水開始時刻である経過時刻t1の時点では、運転する散水装置30が等間隔となるように散水装置30-1及び30-5のみを運転し、その他の散水装置30-2,30-3,30-4,30-6,30-7,30-8を停止する。この時、チラーユニット10-1,10-2,10-4,10-5,10-6は散水装置30-1,30-5が散水を行うことにより冷却される。
【0069】
経過時刻t1の時点から所定時刻経過した経過時刻t2の時点では、散水装置30-1及び30-5を停止し、散水装置30-2及び30-6を運転するよう制御を切替える。この時は、チラーユニット10-1,10-2,10-3,10-5,10-6,10-7は散水装置30-2,30-6が散水を行うことにより冷却される。
【0070】
経過時刻t2の時点よりもさらに所定時刻経過した経過時刻t3の時点では、散水装置30-2及び30-6を停止し、散水装置30-3及び30-7を運転するよう制御を切替える。この時は、チラーユニット10-2,10-3,10-4,10-6,10-7,10-8は散水装置30-3,30-7が散水を行うことにより冷却される。
【0071】
経過時刻t3の時点よりもさらに所定時刻経過した経過時刻t4の時点では、散水装置30-3及び30-7を停止し、散水装置30-4及び30-8を運転するよう制御を切替える。この時は、チラーユニット10-3,10-4,10-5,10-7,10-8は散水装置30-4,30-8が散水を行うことにより冷却される。
【0072】
経過時刻t4の時点よりもさらに所定時刻経過した経過時刻t5の時点では、散水装置30の運転を開始した経過時刻t1と同様に散水装置30-1及び30-5のみを運転し、その他の散水装置30-2,30-3,30-4,30-6,30-7,30-8を停止する。以降は経過時刻t1~t5のサイクルを繰り返し行う。
【0073】
以上より、上位制御部100は、散水装置30に供給される水の水圧の計測量Pdetが低い場合は、同時に運転する散水装置30の台数を制限するとともに、等間隔に離れている散水装置30を同時に運転するよう制御する。さらに、上位制御部100は、運転する散水装置30を所定の時間毎に切替える。これにより、各チラーユニット10は順次冷却されるため、運転する散水装置30から離れた位置に設置されたチラーユニット10の性能低下を抑制することができる。
【0074】
上述の例では、2台の散水装置30を同時に運転する制御の例を示したが、同時に運転する散水装置30の台数は、水圧の計測量Pdet、ユーザによる設定又はチラーシステム1の運転状態等に基づいて適宜変更されてもよい。
また、上述の例では、水圧検知部32は、給水管31に設けられているが、散水管33,第一分岐管33a,第二分岐管33bに設けられてもよく、ユーザの利用条件に基づいて適宜変更されてもよい。
【0075】
(チラーシステムの異常検知)
例えば、上位制御部100は、各散水装置30を運転した際の水圧検知部32の計測量Pdetに基づいて、各チラーユニット10又は各散水装置30を備えるチラーシステム1の異常検知を行うこととしてもよい。
上位制御部100が備える記憶部102には、水圧検知部32によって計測される水圧の計測量Pdetが所定の値を下回る時間に関して、許容可能な時間長さが記憶されている。該時間長さは、ユーザによって予め設定される時間である。また、計時部105は、水圧の計測量Pdetが所定の値を下回る時間長さを計時する。
【0076】
異常検知部106は、計時部105によって計時された水圧の計測量Pdetが所定の値を下回る時間長さが、記憶部102に記憶されている許容可能な時間長さ以上であるか否かを判断する。そして、水圧の計測量Pdetが所定の値を下回る時間長さが許容可能な時間長さ以上である場合、異常検知部106は、チラーシステム1における給水元の水の供給経路に異常が発生しており、各散水装置30への水の供給及び各チラーユニット10の冷却が充分に行えないことをユーザに通知し、ユーザへチラーシステム1のメンテナンスを促す。
【0077】
このように、各散水装置30へ供給される水の水圧を水圧検知部32によって計測し、水圧の計測量Pdetが所定の値を下回る時間長さを計時部105によって計時する。そして、異常検知部106は、計時部105の計時結果に基づいてチラーシステム1の運転状態に関する異常の有無を計測することができる。さらに、異常検知部106がユーザへメンテナンスを促すことにより、チラーシステム1の異常を早期に解消することができる。
【0078】
(チラーユニット又は散水装置の故障検知)
また、上位制御部100は、各チラーユニット制御装置200と双方向通信可能であり、運転情報である水圧検知部32の計測量Pdetに基づいてチラーユニット10又は散水装置30の故障を判断してもよい。
例えば、記憶部102は、情報取得部101により取得される水圧検知部32の計測量Pdetと、運転している各散水装置30の組み合わせに対応した各チラーユニット10の負荷の変化を運転情報として記憶する。これにより、各散水装置30を運転した際の各チラーユニット10の負荷の変化量を、水圧検知部32の計測量Pdetと関連付けて記憶することができる。
【0079】
判断部103は、情報取得部101が取得した現在のチラーユニット10の運転情報と、現在運転している散水装置30が過去に運転された際のチラーユニット10の過去の運転情報とを比較する。そして、比較の結果、特定の散水装置30を運転した際に対応するチラーユニット10の負荷の変化量が過去の運転情報と大きく異なる場合、チラーユニット10の運転が正常に行われていないと判断する。すなわち、チラーユニット10又は散水装置30の故障を判断する。
【0080】
判断部103によって、チラーユニット10又は散水装置30が故障していると判断された場合、異常検知部106は、チラーユニット10又は散水装置30が故障している可能性があることをユーザへ通知する。これにより、ユーザは、チラーシステム1が正常に機能していないことを把握でき、故障しているチラーユニット10又は散水装置30のメンテナンスを速やかに行うことができる。
【0081】
なお、上述の例では、判断部103は、水圧の計測量Pdetに基づいてチラーユニット10又は散水装置30の故障の判断を行ったが、その他、各チラーユニット10の負荷、温度計測部36の計測値、開閉弁35の開閉状態に基づいて故障の判断を行うことにより、チラーユニット10又は散水装置30のいずれが故障しているかをより詳細に特定してもよい。
【0082】
[第2実施形態]
(散水装置の運転/停止時間の周期の調整)
第1実施形態においては、水圧検知部32の計測量Pdetに基づいて、運転する散水装置30の台数制御を行うことにより、各散水装置30への水の供給及び各チラーユニット10の冷却を行うことができる。本実施形態においては、給水管31に設けられた水圧検知部32の計測量Pdetに基づいて、散水装置30の運転時間と停止時間の周期を調整することを特徴としている。
【0083】
図9は、水圧検知部32の計測量Pdetの運転台数の関係を示した例図である。また、
図10は、水圧検知部32の計測量Pdetに基づいて、散水装置30の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御のタイミングチャートである。経過時刻t1~t6において破線で区切られた各区間はいずれも等間隔である。
【0084】
まず、
図9において、水圧検知部32によって計測された水圧の計測量Pdetが予め設定された所定値である0.4MPa以上である場合(0.4MPa≦Pdet)、運転時間10秒と停止時間20秒を1周期として、該周期を繰り返すよう各散水装置30の運転周期を調整する。これにより、水圧の計測量Pdetが所定値0.4MPa以上の場合は、各チラーユニット10を冷却するための充分な水が各散水装置30へ供給されるため、運転時間が停止時間よりも短くとも各チラーユニット10の冷却が行える。また、各散水装置30の運転時間を短縮することにより、チラーシステム1が効率化される。
【0085】
また、水圧検知部32によって計測された水圧の計測量Pdetが予め設定された所定値である0.4MPa未満である場合(Pdet<0.4MPa)、運転時間20秒と停止時間10秒を1周期として、該周期を繰り返すよう各散水装置30の運転周期を調整する。これにより、水圧の計測量Pdetが0.4MPa未満の場合は、各チラーユニット10を冷却するための充分な水が各散水装置30へ供給されないため、運転時間を停止時間よりも長くすることにより各チラーユニット10の冷却を確実に行う。このように、各散水装置30へ供給される水の供給が減少する場合においても、各チラーユニット10の冷却が行われるので、各チラーユニット10の性能低下することができる。
【0086】
次に、
図10は、水圧検知部32の計測量Pdetに基づいて、散水装置30の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御のタイミングチャートである。上方のタイミングチャートは、計測量Pdetが予め設定された所定値である0.4MPa以上である場合のタイミングチャートである。また、下方のタイミングチャートは、計測量Pdetが予め設定された所定値である0.4MPa未満である場合のタイミングチャートである。経過時刻t1~t6において破線で区切られた各区間はいずれも等間隔である。また、例として、1つの区間の時間間隔は10秒とする。
【0087】
水圧検知部32によって計測される水圧が0.4MPa≦Pdetの場合は、各散水装置30へ充分な水が供給されるため、上位制御部100は、各散水装置30の運転周期を運転時間が停止時間よりも短い周期に調整する。また、水圧検知部32によって計測される水圧がPdet<0.4MPaの場合は、各散水装置30へ水が供給されるため、上位制御部100は、各散水装置30の運転周期を運転時間が停止時間よりも長い周期に調整する。
【0088】
このように、散水装置30に供給される水の水圧が所定の値以上である場合、散水装置30の運転周期は運転時間が停止時間よりも短い周期に調整される。また、散水装置30に供給される水の水圧が所定の値未満である場合、散水装置30の運転周期は運転時間が停止時間よりも長い周期に調整される。これにより、給水管31の水圧が低い場合においても、各散水装置30によって各チラーユニット10を冷却することができ、各チラーユニット10の性能低下を抑制することができる。
なお、運転時間及び停止時間は、ユーザの設定やチラーシステム1の運転状態等に基づいて適宜変更されてもよい。
【0089】
以上、本開示について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0090】
本開示の第1態様に係るチラーシステムは(1)、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニット(10)を備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置(30)と、各前記散水装置に接続される給水管(31)と、前記給水管の水圧を計測する水圧検知部(32)と、前記水圧検知部により計測された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する制御部(100)とを備える。
【0091】
本開示に係るチラーシステムによれば、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニットを備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置と、各前記散水装置に接続される給水管と、前記給水管の水圧を計測する水圧検知部と、前記水圧検知部により検知された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する制御部とを備える。すなわち、制御部は、水圧検知部によって計測される給水管を流れる水の水圧に基づいて、散水が行われる散水装置の運転台数を切替える。これにより、給水源からの水圧が低下して給水量が低下した場合においても、制御部は、計測した水圧に基づいて、散水装置の台数を低減することができる。これにより、チラーユニットの冷却を行うための給水の水圧が低下した場合においても、チラーユニットへの散水量不足を防止し、チラーユニットの性能低下を抑制することができる。
【0092】
本開示の第2態様に係るチラーシステムは、前記第1態様において、前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された水圧が低いほど、前記散水装置を同時に運転する台数が少なくなるように決められたマップを備えている。
【0093】
本開示に係るチラーシステムによれば、前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された水圧が低いほど、前記散水装置を同時に運転する台数が少なくなるように決められたマップを備えている。すなわち、水の供給源から各散水装置へ供給できる給水量が少ない程、供給先となる散水装置の運転台数を少なくする。これにより、散水装置へ供給可能な給水量が少ない場合においても、散水装置が運転されるチラーユニットへの散水による冷却を適切に行うことができ、チラーユニットの性能低下を抑制することができる。
【0094】
本開示の第3態様に係るチラーシステムは、前記第1態様又は前記第2態様において、複数の前記散水装置のうち運転する前記散水装置を所定の時間毎に順次切替える。
【0095】
本開示に係るチラーシステムによれば、前記制御部は、複数の前記散水装置のうち運転する前記散水装置を所定の時間毎に順次切替える。これにより、散水による冷却効果を得られるチラーユニットを順次切替えることができるため、全てのチラーユニットの冷却を効率的に行うことができる。
【0096】
本開示の第4態様に係るチラーシステムは、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、運転する前記散水装置間の間隔が等間隔である。
【0097】
本開示に係るチラーシステムによれば、複数の前記散水装置は、運転する前記散水装置間の間隔が等間隔である。すなわち、散水による冷却が行われるチラーユニットは、運転する散水装置間の間隔が等間隔であることを維持しながら、所定時間毎に切替えられる。これにより、全てのチラーユニットは、所定時間毎に順に散水による冷却効果を得ることができるため、全てのチラーユニットを均等に冷却することができる。
【0098】
本開示の第5態様に係るチラーシステム(1)は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニット(10)を備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置(30)と、各前記散水装置に接続される給水管(31)と、前記給水管の水圧を計測する水圧検知部(32)と、前記水圧検知部によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する制御部(100)とを備える。
【0099】
本開示に係るチラーシステムによれば、前記制御部は、前記水圧検知部によって計測される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する。例えば、給水管を流れる水の水圧が各チラーユニットへの散水を行える場合には、散水装置の運転時間を長くし、停止時間を短くする。そして、給水管を流れる水の水圧が低く、各前記チラーユニットへの散水を適切に行うことができない場合には、散水装置の運転時間を短くし、停止時間を長くする。このように、水圧検知部の計測結果に基づいて、チラーユニットへの散水が適切に行われるように、制御部によって各散水装置の運転時間及び停止時間が調整される。これにより、給水管の水圧が低い場合においても、各前記散水装置によって各前記チラーユニットを冷却することができ、各前記チラーユニットの性能低下を抑制することができる。
【0100】
本開示の第6態様に係るチラーシステムは、前記第1態様から前記第5態様のいずれかにおいて、前記制御部は、チラーシステムに異常が発生したことを計測及び通知する異常検知部(106)をさらに備え、前記異常検知部は、前記水圧検知部によって計測される水圧が、予め設定された所定の値を所定の期間に亘って下回る場合に、チラーシステムの異常を検知するとともに、ユーザへチラーシステムの異常を通知する。
【0101】
本開示に係るチラーシステムによれば、前記制御部は、チラーシステムに異常が発生したことを検知及び通知する異常検知部をさらに備え、前記異常検知部は、前記水圧検知部によって検知される水圧が、予め設定された所定の値を所定の期間に亘って下回る場合に、チラーシステムの異常を検知するとともに、ユーザへチラーシステムの異常を通知する。これにより、ユーザがチラーシステムの異常、具体的には、設備不良や給水源及び給水経路の損傷等を把握でき、チラーシステムの改修を速やかに行うことができる。これにより、各チラーユニットの長寿命化や、チラーユニットを利用する空調システムの動作不良を抑制することができる。
【0102】
本開示の第7態様に係るチラーシステムは、前記第1態様から前記第6態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記散水装置を運転する場合の前記給水管に流れる水の水圧を前記散水装置毎に記憶する記憶部(102)を備え、前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された現在の水圧と前記記憶部に記憶されている過去の水圧との差に基づいて、前記チラーユニット又は前記散水装置の故障の有無を判断する。
【0103】
本開示に係るチラーシステムによれば、前記制御部は、前記散水装置を運転する場合の前記給水管に流れる水の水圧を前記散水装置毎に記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記水圧検知部によって計測された現在の水圧と前記記憶部に記憶されている過去の水圧との差に基づいて、前記チラーユニットの故障の有無を判断する。これにより、故障しているチラーユニット又は前記散水装置のメンテナンスを速やかに行うことができる。
【0104】
本開示の第8態様に係るチラーシステム(1)の制御方法は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニット(10)を備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置(30)と、各前記散水装置に接続される給水管(31)と、を備えるチラーシステムにおいて、前記給水管の水圧を計測する工程と、前記水圧を計測する工程により検知された水圧に基づいて、前記散水装置の運転台数を制御する工程とを有する。
【0105】
本開示の第9態様に係るチラーシステム(1)の制御方法は、一方向に間隔を空けて並設される複数のチラーユニット(10)を備えるチラーユニット群と、各前記チラーユニットに対応して設けられ、該チラーユニットに対して散水する散水装置(30)と、各前記散水装置に接続される給水管(31)と、を備えるチラーシステムにおいて、前記給水管の水圧を検知する工程と、前記水圧を計測する工程によって検知される水圧に基づいて、各前記散水装置の運転時間及び停止時間の周期を調整する工程とを有する。
【符号の説明】
【0106】
1 チラーシステム
10(10-1~10-8) チラーユニット
11 ケーシング
11a 側面
25 基部
30(30-1~30-8) 散水装置
31 給水管
32 水圧検知部
33 散水管
33a 第一分岐管
33b 第二分岐管
34 ノズル
35(35-1~35-8) 開閉弁
36 温度計測部
37 給水タンク
43 水系統部
45 圧縮機
46 オイルセパレータ
47 逆止弁
48 四方弁
50 レシーバ
51 電子膨張弁
52 熱交換器
53 ファン
54 気液分離器
55 水入口部
56 水ポンプ
57 水出口部
58 水配管
59 水熱交換器
59A 第1水熱交換器
59B 第2水熱交換器
61 冷媒温度検知部
62 冷媒圧力検知部
81 CPU
82 ROM
83 RAM
84 HDD
85 通信部
88 バス
100 上位制御部
101 情報取得部
102 記憶部
103 判断部
104 開閉弁切替部
105 計時部
106 異常検知部
200 チラーユニット制御装置
F 空気の流れ
H1 並設方向
H2 奥行方向
Pdet 計測量
R1 第1冷凍サイクル系統
R2 第2冷凍サイクル系統
S 空間
t1,t2,t3,t4,t5,t6 経過時刻