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特開2024-64813樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホース
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  • 特開-樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホース 図1
  • 特開-樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホース 図2
  • 特開-樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホース 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064813
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240507BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240507BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20240507BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240507BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/22
C08L21/00
C08K3/22
C08L23/00
C08L23/26
C08L61/10
C08J5/00 CES
F16L11/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173698
(22)【出願日】2022-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】若林 健太
【テーマコード(参考)】
3H111
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111BA15
3H111CB04
3H111CB11
3H111CB14
3H111CC03
3H111DA11
3H111DA26
3H111DB09
3H111EA04
4F071AA20
4F071AA21
4F071AA41A
4F071AA78
4F071AB18A
4F071AC11
4F071AC13A
4F071AC19A
4F071AE02A
4F071AE05
4F071AF08Y
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AG05
4F071AH07
4F071BA01
4F071BB03
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC05
4F071BC12
4J002AC11X
4J002AC12X
4J002BB00W
4J002BB03W
4J002BB05W
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB18X
4J002BB20W
4J002BB22W
4J002BB24X
4J002BP01X
4J002CC03Y
4J002CC04Y
4J002CF00W
4J002CL00W
4J002DE106
4J002EV237
4J002EW047
4J002EZ047
4J002FD146
4J002FD14Y
4J002FD207
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】耐熱性及び水蒸気バリア性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ゴムの水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ゴムがポリイソブチレン骨格を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂がポリオレフィン樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂がシラン変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物がシラノール縮合触媒を含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂組成物の150℃における引張強度が1.5MPa以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂組成物の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂組成物の室温における10%モジュラスが10MPa以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法であって、前記方法は樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、方法。
【請求項13】
内層、補強層および外層を含む冷媒輸送用ホースであって、外層が請求項1に記載の樹脂組成物を含む、冷媒輸送用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、その製造方法および冷媒輸送用ホースに関する。より詳しくは、本発明は、自動車のエアコンディショナーに使用される冷媒輸送用ホースの作製に用いることができる、耐熱性および水蒸気バリア性に優れた樹脂組成物、前記樹脂組成物の製造方法、および前記樹脂組成物を用いて製造された冷媒輸送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車への軽量化要求が高まる中、これまで自動車に使われていたゴム製のホースを、ゴムに代えてバリア性の高い樹脂で作製し、薄肉化することにより、軽量化を実現しようとする取り組みがある。特に、現行の自動車のエアコンディショナーの冷媒輸送ホースは主材料がゴムであり、その主材料をバリア性の高い樹脂で置き換えることができれば、軽量化が実現できる。
【0003】
特開平4-145284号公報(特許文献1)には、フレオンガスのような冷媒を輸送するためのホースの外管を、熱可塑性ポリオレフィン樹脂とEPDMまたはブチル系ゴムとからなる熱可塑性エラストマーで形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-145284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車のエアコンディショナー等は自動車の限られた狭いスペースに搭載されるため、冷媒輸送ホースは、柔軟性に優れ狭いスペースでも取付け易いことが求められる。また、ホース外側からの水蒸気の透過は、エアーコンディショナー内部での水分の凍結を生じる原因となるため、冷媒輸送ホースの外管を形成する材料は水蒸気バリア性に優れることが必要とされる。さらに、エンジンルーム内の高温多湿の環境下で長期使用に耐える耐久性も求められる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の樹脂ホースの外管を構成する熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ポリオレフィン樹脂を用いているため、耐熱性が必ずしも十分ではない。
本発明は、樹脂ホースの外管を作製するのに使用することができる、耐熱性および水蒸気バリア性に優れる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(I)は、樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足することを特徴とする。
【0008】
本発明(II)は、樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法であって、前記方法は樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足することを特徴とする。
【0009】
本発明(III)は、内層、補強層および外層を含む冷媒輸送用ホースであって、外層が本発明(I)に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、樹脂組成物。
[2]樹脂の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]ゴムの水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[4]ゴムがポリイソブチレン骨格を有する、[1]に記載の樹脂組成物。
[5]ゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[6]樹脂がポリオレフィン樹脂である、[1]に記載の樹脂組成物。
[7]樹脂がシラン変性ポリオレフィン樹脂を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[8]樹脂組成物がシラノール縮合触媒を含む、[7]に記載の樹脂組成物。
[9]樹脂組成物の150℃における引張強度が1.5MPa以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[10]樹脂組成物の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[11]樹脂組成物の室温における10%モジュラスが10MPa以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[12]樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法であって、前記方法は樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、方法。
[13]内層、補強層および外層を含む冷媒輸送用ホースであって、外層が[1]に記載の樹脂組成物を含む、冷媒輸送用ホース。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、耐熱性および水蒸気バリア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、冷媒輸送用ホースの断面図である。
図2図2は、トルク-時間曲線であって、リバージョンがない場合の例を示す。
図3図3は、トルク-時間曲線であって、リバージョンがある場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含み、さらにゴム架橋剤を含む。
本発明の樹脂組成物は、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足することを特徴とする。
【0014】
図2は、実施例1のゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃または230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに得られたトルク-時間曲線を示す。200℃のトルク-時間曲線においては、10分経過前にトルクの極大値が観察されない。10分経過前にトルクの極大値が観察されない場合を、「リバージョンがない」すなわち「架橋戻りがない」ともいう。リバージョンがなければ、熱時強度が良好である、具体的には150℃における引張強度が大きい。
【0015】
図3は、比較例1のゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃または230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに得られたトルク-時間曲線を示す。このトルク-時間曲線においては、10分経過前にトルクの極大値S′MAXが観察される。10分経過前にトルクの極大値が観察される場合を、「リバージョンがある」すなわち「架橋戻りがある」ともいう。リバージョンがあり、10分後のトルクS′10minがS′MAXに比べ大幅に小さいときは、熱時強度が不良である、具体的には150℃における引張強度が小さい。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、前記トルク-時間曲線において、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、好ましくは3.1~20.0dN・mであり、より好ましくは3.2~15.0dN・mである。S′10min,200℃がこの数値範囲にあることにより、耐熱性に優れる、すなわち熱時強度、具体的には150℃における引張強度が大きい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、前記トルク-時間曲線において、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、次の式(1)および式(2)
S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9 ・・・ (1)
S′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9 ・・・ (2)
を満足する。式(1)および式(2)を満足すれば、樹脂組成物は耐熱性に優れる、すなわち熱時強度、具体的には150℃における引張強度が大きい。
S′10min,200℃/S′MAX,200℃は、好ましくは0.92~1.0であり、より好ましくは0.95~1.0である。
S′10min,230℃/S′MAX,230℃は、好ましくは0.92~1.0であり、より好ましくは0.95~1.0である。
【0018】
なお、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃または230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定する方法は、JIS K6300-2の「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠して実施することができる。
【0019】
樹脂組成物は、樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む。すなわち、樹脂組成物は、海島構造を有し、海相が樹脂を含み、島相がゴムを含む。樹脂組成物が海島構造を有することにより、樹脂の熱可塑性とゴムの柔軟性を有する材料となる。
【0020】
マトリックスを構成する樹脂としては、限定するものではないが、たとえば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。なかでも、好ましい樹脂はポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα-オレフィンの共重合体、プロピレンと他のα-オレフィンの共重合体等が挙げられる。
【0021】
マトリックスを構成する樹脂は、より好ましくは、シラン変性樹脂を含む。マトリックスがシラン変性樹脂を含むことにより、耐熱性が向上する。
シラン変性樹脂とは、シラン化合物で変性された樹脂をいう。シラン変性樹脂は、好ましくはポリオレフィン系熱可塑性樹脂をシラン化合物によって変性して得られた樹脂であり、より好ましくはポリオレフィン系熱可塑性樹脂をシラン化合物によって変性して得られた加水分解性シリル基(好ましくはアルコキシシリル基)を有する架橋性樹脂または前記架橋性樹脂が架橋してなる架橋樹脂である。換言すれば、シラン変性樹脂は、好ましくは、シラン変性ポリオレフィン樹脂である。
【0022】
シラン化合物は、限定するものではないが、好ましくは式(3)で表される化合物である。
1-SiR2 n3-n ・・・ (3)
ただし、R1はエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2は炭化水素基であり、Yは加水分解可能な有機基であり、nは0~2の整数である。
1は好ましくは炭素数2~10のエチレン性不飽和炭化水素基であり、たとえばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。
2は好ましくは炭素数1~10の炭化水素基であり、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。
Yは好ましくは炭素数1~10の加水分解可能な有機基であり、たとえばアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
シラン化合物の具体例としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0023】
シラン変性樹脂を構成するポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、限定するものではないが、ポリエチレン、エチレンとα-オレフィンの共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンの共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンの共重合体であり、特に好ましくはポリプロピレンである。
【0024】
加水分解性シリル基とは、加水分解によりシラノール基(≡Si-OH)を生成する基をいい、好ましくは式(4)で表される基である。
-SiR2 n3-n ・・・ (4)
ただし、R2およびYは前述のとおりである。
【0025】
架橋性樹脂とは、架橋反応が可能であるが、未だ架橋されていない樹脂をいう。架橋反応の種類は限定されず、過酸化物による架橋であってもよいが、好ましくは水分による架橋(水架橋)である。
【0026】
シラン化合物で変性する方法は、限定するものではないが、グラフト化または共重合が挙げられる。グラフト化は、樹脂にシラン化合物をグラフト反応で付加する方法であり、より具体的には、ポリオレフィンの炭素-水素結合を開裂させて炭素ラジカルを発生させ、これにエチレン性不飽和炭化水素基を有するシラン化合物が付加する反応である。変性は、好ましくは、有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下に、樹脂と式(3)のシラン化合物とを溶融混錬することにより行うことができる。共重合は、好ましくは、樹脂を構成するモノマーと式(3)のシラン化合物とをラジカル共重合することによって行うことができる。
【0027】
シラン変性樹脂は、好ましくはシラン変性ポリプロピレンである。シラン変性樹脂は、市販されており、本発明に使用するシラン変性樹脂として市販品を使用することができる。シラン変性樹脂の市販品としては、三菱ケミカル株式会社製「リンクロン」(登録商標)が挙げられる。
【0028】
マトリックスを構成する樹脂は、シラン変性樹脂以外の樹脂を含むことができる。シラン変性樹脂以外の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。シラン変性樹脂に加え、ポリプロピレンを含むことにより、樹脂成分の粘度が安定するため、熱時強度が発現しやすい相構造となる。また、ポリプロピレンの水蒸気バリア性が良好のため、組成物全体の水蒸気バリア性が良好となる。
【0029】
樹脂の水蒸気透過度は、好ましくは3.0g・mm/(m2・24h)以下であり、より好ましくは2.5g・mm/(m2・24h)以下であり、さらに好ましくは2.0g・mm/(m2・24h)以下である。樹脂の水蒸気透過度が前記数値範囲内にあることにより、ホース体にしたときの外部からの水蒸気透過を防ぐことができる。
【0030】
樹脂の含有量は、ゴム100質量部を基準として、10~150質量部であり、好ましくは10~100質量部であり、より好ましくは10~80質量部である。樹脂の含有量が少なすぎると、押出加工性が悪化し、多すぎると、柔軟性を確保することができない。
【0031】
ドメインを構成するゴムは、S′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ式(1)および式(2)を満足する限り限定されない。
ドメインを構成するゴムは、好ましくは、ポリイソブチレン骨格を有するゴムである。
ポリイソブチレン骨格を有するゴムは、ポリイソブチレン骨格を有する限り限定されないが、好ましくはブチルゴム(IIR)、変性ブチルゴム、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体ゴム、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体であり、より好ましくはブチルゴムまたは変性ブチルゴムである。
ポリイソブチレン骨格とは、複数のイソブチレンが重合して形成された化学構造、すなわち-[-CH2-C(CH32-]n-(ただし、nは2以上の整数である。)で表される化学構造をいう。
ブチルゴムとは、イソブチレンと少量のイソプレンを共重合させて得られたイソブチレン-イソプレン共重合体をいい、IIRと略称される。ブチルゴムの具体例としては、エクソンモービル・ケミカル社製ブチルゴム「エクソンブチル」268が挙げられる。
変性ブチルゴムとは、イソプレン骨格に二重結合とハロゲン等が存在するブチルゴムをいう。変性ブチルゴムは、好ましくはハロゲン化ブチルゴムであり、より好ましくは臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムであり、さらに好ましくは臭素化ブチルゴムである。
スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体はSIBSと略称される。
ポリイソブチレン骨格を有するゴムを用いることにより、樹脂組成物の水蒸気バリア性が向上する。
ポリイソブチレン骨格を有するゴムは、動的架橋していることが好ましい。動的架橋していることにより、耐久性が向上する。
【0032】
ゴムの水蒸気透過度は、好ましくは3.0g・mm/(m2・24h)以下であり、より好ましくは2.5~g・mm/(m2・24h)以下であり、さらに好ましくは2.0~g・mm/(m2・24h)以下である。ゴムの水蒸気透過度が前記数値範囲内にあることにより、樹脂組成物の水蒸気バリア性が向上する。
【0033】
樹脂組成物は、ゴム架橋剤を含む。
ゴム架橋剤は、S′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ式(1)および式(2)を満足する限り限定されないが、たとえば、亜鉛華、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂などが挙げられる。
【0034】
ゴム架橋剤は、好ましくは、亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含む。ゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含むことにより、樹脂組成物に、150℃の環境にも耐えることができる耐熱性を付与することができる。
【0035】
亜鉛華とは、酸化亜鉛であり、化学式ZnOで表される亜鉛の酸化物をいう。亜鉛華は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。市販品の例としては、正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種が挙げられる。
【0036】
アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂とは、式(5)で表される化合物をいう。
【化1】
式(5)中、Xはヒドロキシル基またはハロゲンであり、YおよびY′は水素またはアルキル基であり、Zはアルキル基またはハロゲンであり、nは0~20の整数である。XおよびZを構成するハロゲンは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、より好ましくは臭素である。Y、Y′およびZを構成するアルキル基は、好ましくは炭素数1~8のアルキル基である。
式(5)で表される構造式は直鎖であるが、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂は、常法に従って合成し、分枝部分があってもよい。
なお、Xが臭素のものは臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂と称する。
アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂は、市販されており、本発明に市販品を使用することができる。市販品の例としては、日立化成株式会社製アルキルフェノール-ホルムアルデヒドレジン「ヒタノール」(登録商標)2501Yが挙げられる。
【0037】
ゴム架橋剤の含有量は、ゴム100質量部を基準として、2.5~25質量部であり、好ましくは2.5~20質量部であり、より好ましくは2.5~18質量部である。ゴム架橋剤の含有量が少なすぎると、エラストマーの動的架橋が不足し、熱時強度が低下する。多すぎると、海相である樹脂に影響を及ぼし、熱時強度が低下する。
亜鉛華の含有量は、ゴム100質量部を基準として、1~10質量部であり、好ましくは2~8質量部であり、より好ましくは3~8質量部である。亜鉛華の含有量が少なすぎると、エラストマーの動的架橋が不足し、熱時強度が低下する。多すぎると、海相である樹脂に影響を及ぼし、熱時強度が低下する。
アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂の含有量は、ゴム100質量部を基準として、1.5~15質量部であり、好ましくは1.5~10質量部であり、より好ましくは2~10質量部である。アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂の含有量が少なすぎると、エラストマーの動的架橋が不足し、熱時強度が低下する。多すぎると、海相である樹脂に影響を及ぼし、熱時強度が低下する。
【0038】
樹脂がシラン変性樹脂を含む場合、樹脂組成物は、好ましくは、シラノール縮合触媒を含む。樹脂組成物は、水または水蒸気と接触することにより、シラン変性樹脂が架橋するが、シラノール縮合触媒を含むことにより、シラン変性樹脂の架橋が促進される。
シラノール縮合触媒としては、限定するものではないが、金属有機酸塩、チタネート、ホウ酸塩、有機アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、無機酸、有機酸、無機酸エステル、ビスマス化合物などが挙げられる。
【0039】
金属有機酸塩としては、限定するものではないが、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄などが挙げられる。
チタネートとしては、限定するものではないが、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ-イソプロピルチタネートなどが挙げられる。
有機アミンとしては、限定するものではないが、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルソーヤアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジンなどが挙げられる。
アンモニウム塩としては、限定するものではないが、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
ホスホニウム塩としては、限定するものではないが、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
無機酸としては、限定するものではないが、硫酸、塩酸などが挙げられる。
有機酸としては、限定するものではないが、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。無機酸エステルとしては、限定するものではないが、リン酸エステルなどが挙げられる。
ビスマス化合物としては、限定するものではないが、2-エチルヘキサン酸ビスマスなどの有機ビスマスが挙げられる。
【0040】
シラノール縮合触媒は、好ましくは金属有機酸塩、スルホン酸、リン酸エステルであり、より好ましくは錫の金属カルボン酸塩、たとえばジオクチル錫ジラウレート、アルキルナフチルスルホン酸、エチルヘキシルリン酸エステルである。なお、シラノール縮合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
シラノール縮合触媒の含有量は、シラン変性樹脂100質量部を基準として、好ましくは0.0001~0.5質量部、より好ましくは0.0001~0.3質量部である。
【0042】
なお、シラノール縮合触媒は、樹脂とシラノール縮合触媒とを配合したシラノール縮合触媒含有マスターバッチとして用いることが好ましい。このシラノール縮合触媒含有マスターバッチに用いることのできる樹脂としては、ポリオレフィンなどが挙げられ、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、それらの共重合体などである。
シラノール縮合触媒を、樹脂とシラノール縮合触媒とを配合したシラノール縮合触媒含有マスターバッチとして用いる場合、マスターバッチ中のシラノール縮合触媒の含有量は、限定するものではないが、好ましくは0.1~5.0質量%である。なお、シラノール縮合触媒含有マスターバッチは、市販品を用いることができ、たとえば三菱ケミカル株式会社製「PZ010」を用いることができる。
【0043】
樹脂組成物は、好ましくは、老化防止剤を含む。老化防止剤を含むことにより、押出成形性が安定する。
老化防止剤としては、限定するものではないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系熱安定剤、金属不活性化剤、イオウ系耐熱安定剤などが挙げられ、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤であり、より好ましくはペンタエリトリトールエステル構造を含むヒンダードフェノール系酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、BASFジャパン株式会社製IRGANOX(登録商標)1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])が挙げられる。
老化防止剤の含有量は、ゴム100質量部を基準として、好ましくは1~10質量部であり、より好ましくは2~8質量部であり、より好ましくは3~7質量部である。
【0044】
樹脂組成物は、150℃における引張強度TB150が、好ましくは1.5MPa以上であり、より好ましくは1.8~30MPaである。樹脂組成物の150℃における引張強度TB150を上記数値範囲内にするには、ゴムの架橋度合いが重要である。
【0045】
樹脂組成物は、水蒸気透過度が、好ましくは3.0g・mm/(m2・24h)以下であり、より好ましくは2.5g・mm/(m2・24h)以下であり、さらに好ましくは2.0g・mm/(m2・24h)以下である。樹脂組成物の水蒸気透過度を上記数値範囲内にするには、水蒸気透過度が低いゴムと樹脂を用いる。
【0046】
樹脂組成物は、室温における10%モジュラスM10が、好ましくは10MPa以下であり、より好ましくは0.2~9MPaであり、さらに好ましくは0.4~8MPaである。樹脂組成物の室温における10%モジュラスM10を上記数値範囲内にするには、樹脂組成物中のゴム量の比率を挙げる。
【0047】
本発明(II)は、樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法に関する。本発明(II)の製造方法は、樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足することを特徴とする。
【0048】
溶融混練は、限定するものではないが、混錬機、単軸または二軸混練押出機などを用いて行うことができる。
溶融混練の温度は、溶融混練ができる限りにおいて限定されないが、好ましくは170~240℃である。
溶融混練の時間は、目的の混錬物を調製できる限りにおいて限定されないが、好ましくは2~10分である。
溶融混練は、樹脂と、ゴムと、ゴム架橋剤と、必要に応じて老化防止剤などの各種添加剤とを混錬機などに投入して行う。
ただし、樹脂がシンラン変性樹脂を含み、樹脂組成物がシラノール縮合触媒を含む場合、溶融混錬の工程ではシラノール縮合触媒は添加しないことが好ましい。溶融混錬の工程でシラノール縮合触媒を添加した場合は、溶融混錬の工程で調製したドメインが架橋した樹脂組成物は、大気中の水蒸気と接触すると、樹脂組成物中のシラン変性樹脂が徐々に架橋し、架橋した後の樹脂組成物は成形がしにくくなる。したがって、シラノール縮合触媒は、成形時にドメインが架橋した樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0049】
本発明(III)は、冷媒輸送用ホースに関する。本発明(III)の冷媒輸送用ホースは、内層、補強層および外層を含み、外層が本発明(I)の樹脂組成物を含む。外層が本発明(I)の樹脂組成物を含むことにより、耐熱性および水蒸気バリア性に優れたホースとなる。
冷媒輸送用ホースの一実施形態の断面図を図1に示す。冷媒輸送用ホース1は、内層2、内層2の外側に配置された補強層3および補強層3の外側に配置された外層4を含む。
【0050】
内層は、限定するものではないが、ゴム、熱可塑性エラストマー、海島構造を有する熱可塑性樹脂組成物などで形成することができる。
【0051】
補強層は、限定するものではないが、たとえば編組した繊維の層である。
補強層は、限定するものではないが、好ましくは、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、PBO繊維、ビニロン繊維またはレーヨン繊維を含む。
【0052】
冷媒輸送用ホースの製造方法は、特に限定されないが、次のようにして製造することができる。まず内層を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強層となる繊維を編組し、さらにその繊維上に外層を押出成形により被覆することで製造することができる。
【実施例0053】
[原材料]
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
IIR: エクソンモービル・ケミカル社製ブチルゴム「エクソンブチル」268(水蒸気透過度:1.5g・mm/(m2・24h))
Br-IIR: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化ブチルゴム「Exxon Bromobutyl」2255(水蒸気透過度:1.6g・mm/(m2・24h))
BIMS: エクソンモービル・ケミカル社製臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体ゴム「EXXPRO」(登録商標)3745(水蒸気透過度:1.4g・mm/(m2・24h))
ゴム架橋剤-1: 正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種(亜鉛華)
ゴム架橋剤-2: 日立化成株式会社製アルキルフェノールホルムアルデヒドレジン「ヒタノール」(登録商標)2501Y
ゴム架橋剤-3: 田岡化学工業株式会社製臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂「タッキロール」(登録商標)250-I
ノクセラーTT: 大内新興化学工業株式会社製加硫促進剤「ノクセラー」(登録商標)TT、物質名:テトラメチルチウラムジスルフィド
シラン変性樹脂: 三菱ケミカル株式会社製シラン変性ポリプロピレン「リンクロン」(登録商標)XPM800HM(水蒸気透過度:1.5g・mm/(m2・24h))
PP: 株式会社プライムポリマー製プロピレンホモポリマー「プライムポリプロ」(登録商標)J108M(水蒸気透過度:1.5g・mm/(m2・24h))
PA11: アルケマ社製ナイロン11「RILSAN」(登録商標)BESNO TL(水蒸気透過度:5.4g・mm/(m2・24h))
PA6: 宇部興産株式会社製ナイロン6「UBEナイロン」(登録商標)1011FB(水蒸気透過度:9.2g・mm/(m2・24h))
老化防止剤-1: BASFジャパン株式会社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤「IRGANOX」(登録商標)1010
老化防止剤-2: Solutia社製N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン「SANTOFLEX」(登録商標)6PPD
シラノール縮合触媒: 三菱ケミカル株式会社製シラン架橋剤マスターバッチ「触媒MB」PZ010
【0054】
[実施例1~9および比較例1~3]
各原材料を、表1~表3に示す配合比率で、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に投入し、235℃で3分間混練した。混練物を二軸混練押出機から連続的にストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断することにより、ペレット状の樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例について、S′10min,200℃、S′MAX,200℃、S′10min,230℃およびS′MAX,230℃を測定し、得られた樹脂組成物について、水蒸気透過度、10%モジュラスおよび150℃における引張強度を測定した。測定結果を表1~表3に示す。
【0055】
なお、各測定項目の測定方法は、以下のとおりである。
【0056】
[トルクの測定]
ゴムとゴム架橋剤をニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、60℃条件下で5分間混練した。混練した未加硫ゴムコンパウンドを80℃条件下のプレス機により2~4mmのシートに成形した。得られた未加硫ゴムコンパウンドプレスシートを、JIS K6300-2の「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠して、歪せん断応力測定機(α-テクノロジー社製RPA2000)を用い、200℃および230℃で10分間加熱した時に得られる0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃およびS′MAX,230℃ならびに10分後のトルクS′10min,200℃およびS′10min,230℃を測定した。
【0057】
[水蒸気透過度の測定]
樹脂組成物または樹脂の試料を、550mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を試料組成物中の最も融点の高いポリマー成分の融点+10℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/minの条件で平均厚み0.2mmのシートに成形した。
ゴムの試料はトルクの測定で用いた未加硫ゴムコンパウンドプレスシートをプレスにより、200℃で10分間架橋させ、平均厚み0.5mmのプレスシートに成形した。
得られたシートを温度25℃および相対湿度50%の空気中に72時間静置し架橋させ、GTRテック株式会社製水蒸気透過試験機を用いて、温度60℃、相対湿度95%で測定した。
水蒸気透過度は水蒸気バリア性の指標であり、水蒸気透過度が小さいほど水蒸気バリア性が優れる。
【0058】
[10%モジュラスの測定]
水蒸気透過度の測定において作製した平均厚み0.2mmの架橋させたシートを、JIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されている測定方法に準拠して、温度25℃および速度500mm/minの条件下で引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から10%伸張時における応力(10%モジュラス)を求めた。
10%モジュラスは柔軟性の指標であり、10%モジュラスが小さいほど柔軟性が優れる。
【0059】
[150℃における引張強度の測定]
水蒸気透過度の測定において作製した平均厚み0.2mmのシートを、温度25℃および相対湿度50%の空気中に72時間以上静置して、架橋した樹脂組成物のシートを作製した。架橋した樹脂組成物のシートを、JIS 3号ダンベル形状に打ち抜き、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定されている測定方法に準拠して、温度150℃および速度500mm/minの条件下で引張試験を行い、得られた応力ひずみ曲線から破断したときの応力すなわち引張強度TB150を求めた。
150℃における引張強度は耐熱性の指標であり、150℃における引張強度が高いほど耐熱性が優れる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] 樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、樹脂組成物。
発明[2] 樹脂の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、発明[1]に記載の樹脂組成物。
発明[3] ゴムの水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、発明[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
発明[4] ゴムがポリイソブチレン骨格を有する、発明[1]~[3]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[5] ゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含む、発明[1]~[4]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[6] 樹脂がポリオレフィン樹脂である、発明[1]~[5]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[7] 樹脂がシラン変性ポリオレフィン樹脂を含む、発明[1]~[6]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[8] 樹脂組成物がシラノール縮合触媒を含む、発明[7]に記載の樹脂組成物。
発明[9] 樹脂組成物の150℃における引張強度が1.5MPa以上である、発明[1]~[8]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[10] 樹脂組成物の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m2・24h)以下である、発明[1]~[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[11] 樹脂組成物の室温における10%モジュラスが10MPa以下である、発明[1]~[10]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
発明[12] 樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法であって、前記方法は樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、方法。
発明[13] 内層、補強層および外層を含む冷媒輸送用ホースであって、外層が発明[1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物を含む、冷媒輸送用ホース。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の樹脂組成物は、冷媒輸送用ホースを製造するための材料として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 冷媒輸送用ホース
2 内層
3 補強層
4 外層
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物であって、樹脂組成物はゴム架橋剤を含み、樹脂がポリオレフィン樹脂であり、ゴムがブチルゴム、臭素化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムであり、ゴムがブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムのときはゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含み、ゴムが臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムのときはゴム架橋剤が亜鉛華を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ゴムの水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂がシラン変性ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物がシラノール縮合触媒を含む、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂組成物の150℃における引張強度が1.5MPa以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂組成物の水蒸気透過度が3.0g・mm/(m・24h)以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物の室温における10%モジュラスが10MPa以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂を含むマトリックスとゴムを含むドメインとを含む樹脂組成物の製造方法であって、前記方法は樹脂とゴムとゴム架橋剤とを溶融混練することを含み、樹脂がポリオレフィン樹脂であり、ゴムがブチルゴム、臭素化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムであり、ゴムがブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムのときはゴム架橋剤が亜鉛華およびアルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂を含み、ゴムが臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合ゴムのときはゴム架橋剤が亜鉛華を含み、ゴムとゴム架橋剤を混練したゴム混練物を200℃および230℃で10分間加熱したときのトルクを振動式加硫試験機を用いて経時的に測定したときに、200℃における10分後のトルクS′10min,200℃が3.0dN・m以上であり、かつ、S′10min,200℃、230℃における10分後のトルクS′10min,230℃、200℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,200℃および230℃における0~10分間のトルクの最大値S′MAX,230℃が、S′10min,200℃/S′MAX,200℃≧0.9およびS′10min,230℃/S′MAX,230℃≧0.9を満足する、方法。
【請求項10】
内層、補強層および外層を含む冷媒輸送用ホースであって、外層が請求項1に記載の樹脂組成物を含む、冷媒輸送用ホース。