(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064816
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240507BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240507BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240507BHJP
【FI】
E04G21/02 103
G06Q50/08
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173711
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】今泉 克彦
【テーマコード(参考)】
2E172
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DB11
5B146AA04
5B146AA17
5B146BA01
5B146DE06
5B146EA01
5B146EA08
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンクリートの打設計画の立案から打設終了までを一貫して、また、一元的に管理するコンクリート打設管理システムを提供する。
【解決手段】コンクリート打設管理システム100は、母店端末と、工事事務所に配置された第1事務所端末および第2事務所端末と、コンクリート打設現場において作業現場職員が所持する作業端末と、第1事務所端末、第2事務所端末および作業端末と通信可能な保存装置および画像変換装置と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母店端末と、工事事務所に配置された第1事務所端末および第2事務所端末と、コンクリート打設現場において作業現場職員が所持する作業端末と、前記第1事務所端末、前記第2事務所端末および前記作業端末と通信可能な保存装置および画像変換装置と、を含むコンクリート打設管理システムであって、
前記母店端末は、
構造物の3次元設計情報を生成する3次元設計情報生成部と、
1日で打込みを計画するコンクリート量に基づいて、前記3次元設計情報を区分して、大ブロックを生成する大ブロック生成部と、
を有し、
前記第1事務所端末は、
生成された前記大ブロックに関する情報および前記3次元設計情報を前記母店端末から取得する情報取得部と、
前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データおよび生成した前記小ブロックを識別するための小ブロック識別子を生成する分割データ生成部と、
生成された前記分割データ、前記小ブロック識別子および前記3次元設計情報を前記保存装置へ送信する第1送信部と、
を有し、
前記保存装置は、
受信した前記分割データ、前記小ブロック識別子および前記3次元設計情報を格納する格納部と、
格納された前記分割データおよび前記小ブロック識別子を前記第2事務所端末へ送信し、前記3次元設計情報を前記画像変換装置へ送信する第2送信部と、
を有し、
前記画像変換装置は、
受信した前記3次元設計情報を前記第2事務所端末の表示用に変換する変換部と、
変換された第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を前記第2事務所端末へ送信する第3送信部と、
を有し、
前記第2事務所端末は、
変換された前記第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を前記画像変換装置から受信し、前記分割データを前記保存装置から受信する第1受信部と、
受信した前記第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を用いて、コンクリートの打設順を示す打設順データを前記分割データに付与する打設順データ付与部と、
前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを前記保存装置へ送信する第4送信部と、
を有し、
前記保存装置において、
前記格納部は、送信された前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを紐付けて格納し、
前記第2送信部は、格納された前記3次元設計情報を前記画像変換装置へ送信し、前記打設順データを前記作業端末へ送信する、
前記画像変換装置において、
前記変換部は、送信された前記3次元設計情報の出力形式を前記作業端末の表示用に変換して、作業端末表示用変換3次元設計情報を生成し、
前記第3送信部は、生成された前記作業端末表示用変換3次元設計情報を前記作業端末へ送信し、
前記保存装置において、前記第2送信部は、前記格納部に格納された前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを前記作業端末に送信し、
前記作業端末は、
受信した前記作業端末表示用変換3次元設計情報とともに前記打設順データを表示させる表示制御部と、
表示された前記作業端末表示用変換3次元設計情報を用いた前記作業現場職員によるコンクリート打込みの進捗に応じた入力を現場ブロック属性情報として受け付け、受け付けた前記現場ブロック属性情報と前記小ブロック識別子とを紐付けて、前記保存装置へ送信する受付送信部と、
を有し、
前記保存装置は、前記小ブロック識別子に紐付けられた前記現場ブロック属性情報を前記格納部へ格納する、コンクリート打設管理システム。
【請求項2】
前記第2事務所端末は、
前記打設順に従って、前記大ブロックに対するコンクリートの打込みをシミュレーションするシミュレーション部と、
前記シミュレーション部におけるシミュレーション結果に基づいて、前記打設順を調整する打設順調整部と、
をさらに有する請求項1に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項3】
前記シミュレーション部は、前記打設順調整部により前記打設順が調整された場合、再シミュレーションを行い、
前記打設順調整部は、再シミュレーションの結果に基づいて、前記打設順を調整する、請求項2に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項4】
前記分割データは、前記小ブロックの属性情報である分割ブロック属性情報および打設用参照データを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項5】
前記打設用参照データは、同一層における位置関係を示す平面ブロック割、隣接ブロックに関するデータおよび小ブロックの体積を含む請求項4に記載のコンクリート打設管理システム。
【請求項6】
前記現場ブロック属性情報は、打込み開始時刻、打込み終了時刻および打重ね時間を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、各現場における作業端末が、現場で収集した各種情報をデータサーバへ送信し、データサーバが、取得した各種情報を更新し、更新したデータを打設管理システムへ送信することが開示されている(段落[0041]~[0042]、
図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの打設計画の立案から打設終了までを一貫して管理したり、一元的に管理したりすることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート打設管理システムは、
母店端末と、工事事務所に配置された第1事務所端末および第2事務所端末と、コンクリート打設現場において作業現場職員が所持する作業端末と、前記第1事務所端末、前記第2事務所端末および前記作業端末と通信可能な保存装置および画像変換装置と、を含むコンクリート打設管理システムであって、
前記母店端末は、
構造物の3次元設計情報を生成する3次元設計情報生成部と、
1日で打込みを計画するコンクリート量に基づいて、前記3次元設計情報を区分して、大ブロックを生成する大ブロック生成部と、
を有し、
前記第1事務所端末は、
生成された前記大ブロックに関する情報および前記3次元設計情報を前記母店端末から取得する情報取得部と、
前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データおよび生成した前記小ブロックを識別するための小ブロック識別子を生成する分割データ生成部と、
生成された前記分割データ、前記小ブロック識別子および前記3次元設計情報を前記保存装置へ送信する第1送信部と、
を有し、
前記保存装置は、
受信した前記分割データ、前記小ブロック識別子および前記3次元設計情報を格納する格納部と、
格納された前記分割データおよび前記小ブロック識別子を前記第2事務所端末へ送信し、前記3次元設計情報を前記画像変換装置へ送信する第2送信部と、
を有し、
前記画像変換装置は、
受信した前記3次元設計情報を前記第2事務所端末の表示用に変換する変換部と、
変換された第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を前記第2事務所端末へ送信する第3送信部と、
を有し、
前記第2事務所端末は、
変換された前記第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を前記画像変換装置から受信し、前記分割データを前記保存装置から受信する第1受信部と、
受信した前記第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を用いて、コンクリートの打設順を示す打設順データを前記分割データに付与する打設順データ付与部と、
前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを前記保存装置へ送信する第4送信部と、
を有し、
前記保存装置において、
前記格納部は、送信された前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを紐付けて格納し、
前記第2送信部は、格納された前記3次元設計情報を前記画像変換装置へ送信し、前記打設順データを前記作業端末へ送信する、
前記画像変換装置において、
前記変換部は、送信された前記3次元設計情報の出力形式を前記作業端末の表示用に変換して、作業端末表示用変換3次元設計情報を生成し、
前記第3送信部は、生成された前記作業端末表示用変換3次元設計情報を前記作業端末へ送信し、
前記保存装置において、前記第2送信部は、前記格納部に格納された前記小ブロック識別子、前記分割データおよび前記打設順データを前記作業端末に送信し、
前記作業端末は、
受信した前記作業端末表示用変換3次元設計情報とともに前記打設順データを表示させる表示制御部と、
表示された前記作業端末表示用変換3次元設計情報を用いた前記作業現場職員によるコンクリート打込みの進捗に応じた入力を現場ブロック属性情報として受け付け、受け付けた前記現場ブロック属性情報と前記小ブロック識別子とを紐付けて、前記保存装置へ送信する受付送信部と、
を有し、
前記保存装置は、前記小ブロック識別子に紐付けられた前記現場ブロック属性情報を前記格納部へ格納する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コンクリートの打設計画の立案から打設終了までを一貫して管理したり、一元的に管理したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理システムの概要を説明するための図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理システムの動作の概要を説明するためのシーケンス図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理システムの構成を説明するための図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理システムの概要を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理システムの動作の概要を説明するためのシーケンス図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理システムの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0009】
[第1実施形態]
次に本発明の第1実施形態に係るコンクリート打設管理システム100について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るコンクリート打設管理システム100の動作の概要について説明するための図である。本実施形態に係るコンクリート打設管理システム100は、コンクリート打設の対象となる構造物の設計からコンクリート打設計画の立案、コンクリート打設の施工および管理までを一貫して管理するためのシステムである。
【0010】
コンクリート打設管理システム100は、母店端末101、工事事務所に存在する第1事務所端末102および第2事務所端末103、クラウド上に存在する保存装置104(保存サーバ)および画像変換装置105(画像変換サーバ)並びに作業端末106を含んでいる。
【0011】
母店端末101は、コンクリートの打設現場からは離れた場所(例えば、都市部など)にある店舗や事務所等に置かれた端末であり、CAD(Computer Aided Design)がインストールされている端末である。そして、母店端末101において、設計された構造物の設計図に相当する設計情報(2次元データまたは3次元データ)を、母店端末101にインストールされているCADで開いて、編集等の操作ができるような状態とする。設計情報は、例えば、発注者から提供されるものである。すなわち、コンクリート打設管理システム100の利用者は、発注者から提供された設計情報に基づいて、コンクリートの打設計画等を立案する。
【0012】
ここで、構造物は、例えば、ダムや橋脚などの比較的規模の大きいコンクリート建造物である。そして、母店端末101において、設計された構造物の3次元CADデータから、大ブロックを切り出す。ここで、大ブロックは、リフト領域とも呼ばれるものであり、例えば、1日で打設可能なコンクリート量などに応じて指定される作業範囲である。大ブロックの切り出しが終わると、母店端末101は、大ブロックのデータと共に構造物の3次元CADデータを第1事務所端末102へ送信する。
【0013】
第1事務所端末102は、工事事務所に存在する端末である。工事事務所は、現場作業員や現場職員が母店とのやり取り、事務作業および休憩などの目的で利用するための施設である。工事事務所は、例えば、コンクリート打込みを行う現場が、山奥のダムなどである場合、打込み現場の近くに工事事務所を構えるのが理想的ではあるが、山奥などでは、場所を確保するのが困難である。このように、工事事務所のための場所を打込み現場の近くに確保することが困難な場合、打込み現場から数km離れてはいるが、自動車などによるアクセスがよく、自動車などの駐車スペースを十分に確保できる比較的開けた場所に工事事務所を構えることがある。このように、工事事務所と打込み現場とは、必ずしも近接している必要はない。
【0014】
そして、第1事務所端末102は、受信した大ブロックなどのデータを所定サイズの小ブロックに分割して、小ブロックやこれに関連するデータを生成する。小ブロックに関連するデータは、例えば、各小ブロックが直方体の場合、頂点の座標、基準点から各頂点までの距離および方向、並びに体積などのデータである。生成された小ブロックのそれぞれには、小ブロックのそれぞれを識別するための識別子である小ブロック識別子(ID1)が付与される。小ブロック識別子は、例えば、分割された大ブロックにおいて、下層に属する小ブロックから順に昇順にて付与されるが、小ブロック識別子の付与方法はこれには限定されず、例えば、上層に属する小ブロックから順に昇順にて付与してもよい。すなわち、小ブロック識別子は、生成された小ブロックを区別するための名前であるため、必ずしも連番となっている必要はなく、飛び飛びの値であっても、アルファベットや記号などを用いたものであってもよい。
【0015】
生成された各小ブロックに対して小ブロック識別子を付与することにより、小ブロックのそれぞれを識別することが可能となり、また、各小ブロックが、大ブロックの中でどの位置に存在しているかを特定できるようになる。なお、ここまでの作業は、第1事務所端末102にインストールされているCADのソフトウェアおよびこれに追加されたアドイン機能を用いて行われる。
【0016】
小ブロックの生成および生成された小ブロックへの小ブロック識別子の付与が終了すると、第1事務所端末102は、3次元CADデータ(3次元設計情報)および小ブロックについてのブロック情報を保存装置104へ送信する。ここで、ブロック情報には、分割ブロック属性情報と打設用参照データとが含まれる。分割ブロック属性情報は、生成された小ブロックの大ブロックにおける位置を示す座標のデータが含まれる。また、打設用参照データは、平面ブロック割、隣接ブロックおよび体積を示すデータが含まれる。平面ブロック割は、生成された小ブロックの平面上における位置関係などを示すデータである。隣接ブロックおよび体積は、生成された小ブロックに隣接する他の小ブロックについてのデータおよび当該小ブロックの体積についてのデータである。
【0017】
保存装置104は、第1事務所端末102から送信されたブロック情報をブロック情報のデータベースとして保存し、さらに、構造物の3次元CADデータ(座標のデータ)を保存する。保存装置104は、3次元CADデータを画像変換装置105へ送信する。
【0018】
画像変換装置105は、送信された3次元CADデータを変換する。ここで、3次元CADデータは、CADソフトウェアがインストールされた端末でのみ閲覧や編集ができる形式のデータである。しかしながら、CADソフトウェアは、高価なものや、安価であっても機能が制限されているものがあるので、工事事務所に存在する全ての端末にインストールされているケースは稀である。
【0019】
そのため、コンクリート打設管理システム100においては、大ブロックを分割して小ブロックを生成する作業までをCADソフトウェアおよびこれのアドイン機能を用いて行い、その後の作業は、例えば、ウェブブラウザなどの汎用的なソフトウェアを用いて行うようにしている。
【0020】
したがって、画像変換装置105は、保存装置104から送信された3次元CADデータをウェブブラウザで閲覧、編集等ができる形式に変換する。変換された3次元CADデータは、第2事務所端末103へと送信される。第2事務所端末103では、変換された3次元CADデータをウェブブラウザにより開いて、閲覧、編集などを行う。第2事務所端末103では、第1事務所端末102で生成された各小ブロックに対して、コンクリートの打設順を示す打設順データ(ID2)を付与する。
【0021】
また、保存装置104は、画像変換装置105が、変換された3次元CADデータを送信したタイミングで、第2事務所端末103に対して、分割ブロック属性情報を送信する。そして、第2事務所端末103においては、これらのデータを用いて、小ブロックのそれぞれに対して、打設順データの付与が行われる。
【0022】
打設順データの付与は、第2事務所端末103のオペレータが、所定の入力デバイスを用いて付与しても、第2事務所端末103が、所定のルールに従って、自動的に付与してもよい。打設順データの付与が完了すると、第2事務所端末103は、小ブロック識別子と打設順データとを紐付けて、保存装置104へ送信する。
【0023】
保存装置104は、送信された打設順データ(ID2)をブロック情報のデータベースへと保存する。ここで、保存装置104は、再度、3次元CADデータを画像変換装置105へ送信する。ここでは、画像変換装置105は、送信された3次元CADデータを、タブレット端末やスマートフォンなどの作業端末106で閲覧、編集等できる形式へと変換する。そして、画像変換装置105は、作業端末106において表示できるように変換された3次元CADデータを作業端末106へ送信する。保存装置104は、画像変換装置105が、変換された3次元CADデータを作業端末106へ送信したタイミングで、打設順データ(ID2)を作業端末106へ送信する。
【0024】
作業端末106においては、画像変換装置105から送信された変換された3次元CADデータと、保存装置104から送信された打設順データとを表示させる。そして、作業現場職員は、作業端末106を操作して、コンクリート打込みの開始時刻や終了時刻、打重ね時間などのデータを現場ブロック属性情報として随時入力する。
【0025】
作業現場職員は、例えば、作業端末106に表示された構造物、大ブロックおよび小ブロックなどのグラフィック画像等において、現場ブロック属性情報の入力をするための小ブロックを選択(クリックまたはタップ)する。小ブロックを選択すると、当該小ブロックの小ブロック識別子(ID1)に紐付けられている、打設順データ(ID2)が特定される。例えば、同じ打設順データが付与された小ブロックが複数存在する場合には、同じ打設順データが付与された小ブロックが全て特定される。作業端末106のディスプレイにおいては、これらの小ブロックが分かり易いように、他の小ブロックとは異なる着色などを用いて表示される。そして、作業現場職員は、当該小ブロックについて、現場ブロック属性情報の入力を行う。
【0026】
作業端末106は、入力された現場ブロック属性情報を、対応する小ブロックの小ブロック識別子と紐付けて保存装置104へと送信する。保存装置104は、送信された現場ブロック属性情報を保存する。これらの情報は、リアルタイムで更新され、更新された情報が、作業端末106へと随時送信され、反映される。
【0027】
そして、全ての小ブロックについて、コンクリートの打込みが終了するまで、保存装置104、画像変換装置105および作業端末106の間で上述の作業が繰り返される。これにより、小ブロック識別子(ID1)、分割ブロック属性情報、打設順データ(ID2)および現場ブロック属性情報が関連付けられて保存されるので、構造物に対する打設計画の立案、コンクリート打設の施工管理を一貫して確実に行うことができる。
【0028】
次に、
図2のシーケンス図を参照して、コンクリート打設管理システム100における処理手順について説明する。以下の各ステップについて、母店端末101、第1事務所端末102、第2事務所端末103、保存装置104、画像変換装置105および作業端末106のそれぞれが有する、CPU(Central Processing Unit)がRAM(Random Access Memory)を使用して実行し、各端末および各装置の機能構成を実現する。
【0029】
ステップS201において、母店端末101は、CADを用いて構造物の設計情報から構造物の3次元設計情報を生成する。そして、母店端末101は、1日で打設可能なコンクリート量に基づいて、生成した3次元設計情報をいくつかの大ブロック(リフト領域)に区分する。ステップS203において、母店端末101は、区分された大ブロックに関するデータおよび3次元設計情報を第1事務所端末102へ送信する。
【0030】
ステップS205において、第1事務所端末102は、大ブロックを所定サイズの小ブロックに分割した分割データを生成する。分割データには、分割ブロック属性情報および打設用参照データが含まれる。また、分割ブロック属性情報には、各小ブロックの座標、体積、層などに関するデータが含まれ、打設用参照データには、各小ブロック同士の位置関係を示す平面ブロック割に関するデータ、隣接ブロックに関するデータおよび小ブロックの体積に関するデータなどが含まれる。生成された各小ブロックには、これらを識別するための小ブロック識別子が付与される。ステップS207において、第1事務所端末102は、生成した分割データおよび3次元設計情報を保存装置104へ送信する。
【0031】
ステップS209において、保存装置104は、受信した分割ブロック属性情報および3次元設計情報を格納し、格納された3次元設計情報を画像変換装置105へ送信する。ステップS211において、画像変換装置105は、受信した3次元設計情報を工事事務所にある第2事務所端末103の表示用に変換する。すなわち、画像変換装置105は、CADデータである3次元設計情報を、ウェブブラウザなどの汎用性のあるソフトウェアで表示できる形式に変換する。ステップS213において、画像変換装置105は、第2事務所端末103の表示用に変換された3次元設計情報を第2事務所端末103へ送信する。また、ステップS215において、保存装置104は、小ブロック識別子と分割データ(分割ブロック属性情報および打設用参照データ)とを第2事務所端末103へ送信する。
【0032】
ステップS217において、第2事務所端末103は、ウェブブラウザなどで表示可能なように変換された3次元設計情報を用いて、コンクリートの打設順を示す打設順データを各小ブロックに付与する。ステップS219において、第2事務所端末103は、各小ブロックを識別するための小ブロック識別子と打設順データとを紐付けて、保存装置104へ送信する。
【0033】
ステップS221において、保存装置104は、小ブロック識別子、分割ブロック属性情報および打設順データを紐付けて格納する。ステップS223において、保存装置104は、3次元設計情報を画像変換装置105へ送信する。
【0034】
ステップS225において、画像変換装置105は、3次元設計情報を作業端末106の表示用に変換する。すなわち、画像変換装置105は、CADデータである3次元設計情報をタブレット端末やスマートフォンなどの携帯端末のアプリケーションなどの汎用性のあるソフトウェアで表示できる形式に変換する。ステップS227において、画像変換装置105は、作業端末106の表示用に変換された3次元設計情報を作業端末106へ送信する。ステップS229において、保存装置104は、小ブロック識別子、分割ブロック情報および打設順データを作業端末106へ送信する。
【0035】
ステップS231において、作業端末106は、変換された3次元設計情報を表示させ、作業現場職員による打込みの進捗に応じた入力を現場ブロック属性情報として受け付ける。ステップS233において、作業端末106は、受け付けた現場ブロック属性情報と小ブロック識別子とを紐付けて、保存装置104へ送信する。ステップS235において、保存装置104は、小ブロック識別子に紐付けられた現場ブロック属性情報を格納する。
【0036】
次に、
図3を参照して、コンクリート打設管理システム100の構成について説明する。コンクリート打設管理システム100は、母店端末101、第1事務所端末102、第2事務所端末103、保存装置104、画像変換装置105および作業端末106を含む。また、第1事務所端末102と第2事務所端末103は、同じ工事事務所内にある別々の端末である。さらに、第1事務所端末102、第2事務所端末103および作業端末106は、保存装置104および画像変換装置105と通信可能となっている。また、保存装置104および画像変換装置105は、例えば、クラウド上に配置されているストレージやサーバなどである。
【0037】
<母店>
母店端末101は、3次元設計情報生成部311および大ブロック生成部312を有する。3次元設計情報生成部311は、構造物の3次元設計情報を生成する。構造物は、ダムや橋脚、大規模施設などの比較的大きいコンクリート建造物である。そして、母店にいる設計担当者が、CADなどの設計用ソフトウェアを用いて、工事の発注者から提供された設計情報を開いて、母店端末101で扱える形式として、構造物全体の設計図である3次元設計情報を生成する。この3次元設計情報は、工事の発注者から直接提供される場合もある。3次元設計情報には、基準点からの距離、角度など座標に関する情報や、構造物の形状が変化する位置である断面変化面(断面変化点)などの情報も含まれる。
【0038】
大ブロック生成部312は、1日で打込みを計画するコンクリート量に基づいて、3次元設計情報を区分して大ブロックを生成する。大ブロックは、生成された構造物を1日で打設可能なコンクリート量に応じて、いくつかの塊に区分けして得られる構造物の一部であり、リフト領域とも呼ばれているものである。大ブロックへの区分けは、母店の設計担当者または施工担当者が、構造物の形状、1日の打設可能量などに応じて実行する。そして、生成された3次元設計情報(3次元CADデータ)および大ブロックの情報(リフト領域の3次元CADデータ)は、工事事務所に置かれた第1事務所端末102へと送信される。
【0039】
<工事事務所>
第1事務所端末102は、情報取得部321、分割データ生成部322および第1送信部323を有する。情報取得部321は、生成された大ブロックに関する情報および3次元設計情報を取得する。取得する情報は、CADデータの形式となっており、第1事務所端末102のCADソフトウェアで開いて、編集等が行えるようになっている。
【0040】
分割データ生成部322は、大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データおよび生成した小ブロックを識別するための小ブロック識別子を生成する。分割データには、小ブロックの属性情報である分割ブロック属性情報および打設用参照データが含まれる。分割ブロック属性情報は、小ブロックに関する情報であり、各小ブロックの座標、体積などに関する情報が含まれる。小ブロックのサイズは、例えば、1台のアジテータ車が運搬可能なコンクリート量に応じて決定される。なお、小ブロックのサイズは、生成される全ての小ブロックにおいて同じであるとは限らず、例えば、構造物や大ブロックの形状、作業工程など施工に関わる様々な要素に応じて、異なるサイズとすることは可能である。
【0041】
打設用参照データは、各小ブロックの位置関係を示す平面ブロック割に関するデータ、隣接するブロックに関するデータおよび小ブロックの体積に関するデータなどが含まれる。
【0042】
そして、第1送信部323は、生成された分割データ、小ブロック識別子および3次元設計情報を保存装置104へ送信する。保存装置104は、クラウド上に存在するストレージサーバである。第1事務所端末102においては、ローカルストレージにデータを保存するのではなく、クラウドのストレージ(保存装置104)にデータを送信して、保存している。このように、クラウドのストレージを利用することにより、生成された分割データを、工事事務所の第1事務所端末102のみならず、所定の条件を満たす他の端末からも利用することができ、利便性が向上する。なお、第1事務所端末102においても、保存装置104にアップロードしたデータと同じデータの複製を保持してもよい。
【0043】
第2事務所端末103は、第1受信部331、打設順データ付与部332および第4送信部333を有する。ここで、第2事務所端末103は、一般的な端末であり、汎用的なソフトウェアはインストールされているが、CADなどの特殊なソフトウェアは、インストールされていない端末である。
【0044】
第1受信部331は、変換された第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を画像変換装置105から受信する。さらに、第1受信部331は、保存装置104から分割データを受信する。
【0045】
そして、打設順データ付与部332は、受信した第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を用いて、コンクリートの打設順を示す打設順データを分割データに付与する。これは、例えば、工事事務所にいる職員が、第2事務所端末103のウェブブラウザを用いて、変換された3次元設計情報を画面上に表示して、画面に表示された各小ブロックに打設順のデータを付与することにより行われる。なお、打設順データの付与は、打設順データ付与部332が、例えば、所定のルールに従って自動的に付与してもよい。
【0046】
第4送信部333は、小ブロック識別子、分割データおよび打設順データを保存装置104へ送信する。このように、第2事務所端末103のローカルのストレージにデータを保存するのではなく、クラウド上のストレージ(保存装置104)にデータをアップロードすることにより、第2事務所端末103以外の他の端末等からも当該データが参照できる。なお、第2事務所端末103においても、保存装置104にアップロードしたデータと同じデータの複製を保持してもよい。
【0047】
<クラウド>
保存装置104は、格納部341および第2送信部342を有する。格納部341は、第1事務所端末102の第1送信部323から受信した分割データ、小ブロック識別子および3次元設計情報を格納する。第2送信部342は、格納された分割データおよび小ブロック識別子を第2事務所端末103へ送信し、3次元設計情報を画像変換装置105へ送信する。
【0048】
また、格納部341は、第2事務所端末103の第4送信部333から送信された小ブロック識別子、分割データおよび打設順データを紐付けて格納する。これにより、格納部341においては、小ブロック識別子、分割データ、打設順データおよび3次元設計情報が関連付けられて格納される。
【0049】
そして、第2送信部342は、格納された3次元設計情報を画像変換装置105へ送信し、打設順データを作業端末106へ送信する。
【0050】
保存装置104は、小ブロック識別子に紐付けられた現場ブロック属性情報を格納部341へ格納する。これにより、格納部341においては、小ブロック識別子、分割データ、打設順データおよび3次元設計情報に、さらに、現場ブロック属性情報が関連付けられて格納される。
【0051】
画像変換装置105は、変換部351および第3送信部352を有する。変換部351は、受信した3次元設計情報を第2事務所端末103の表示用に変換する。3次元設計情報は、CADを用いて作成されたCADデータの形式となっており、CADソフトウェアがインストールされている端末でなければ、閲覧や編集などを行うことができない。第2事務所端末103は、一般的な端末であり、CADソフトウェアはインストールされていないため、3次元設計情報を閲覧等することができない。そのため、第2事務所端末103にインストールされているウェブブラウザなどの汎用的なソフトウェアで閲覧ができるように、3次元設計情報の形式を変換する必要がある。つまり、変換部351は、CAD形式の3次元設計情報をウェブブラウザ等で閲覧できる形式に変換する。なお、変換部351は、3次元設計情報をウェブブラウザで閲覧できる形式以外の形式にも変換することができる。
【0052】
そして、第3送信部352は、変換された第2事務所端末表示用変換3次元設計情報を第2事務所端末103へ送信する。このように、第2事務所端末103が、3次元設計情報のデータ形式を変換や閲覧等できるソフトウェア(機能)を有していない場合であっても、クラウド上のサービスを利用することで、第2事務所端末103においても、3次元設計情報を閲覧等することができるようになる。
【0053】
また、変換部351は、第2送信部342から送信された3次元設計情報の出力形式を作業端末106の表示用に変換して、作業端末表示用変換3次元設計情報を生成する。タブレット端末などの作業端末106で、CADを使用することなく、作業端末106にインストールされているウェブブラウザで閲覧等できる形式に変換する必要がある。この場合も同様に、クラウド上のサービスを利用することで、作業端末106においても、3次元設計情報を閲覧等することができるようになる。
【0054】
第3送信部352は、生成された作業端末表示用変換3次元設計情報を作業端末106へ送信する。このように、作業端末106が、3次元設計情報を変換や閲覧等できるソフトウェア(機能)を有していない場合であっても、クラウド上のサービスを利用することで、作業端末106においても、3次元設計情報を閲覧等することができるようになる。
【0055】
<作業現場>
作業端末106は、表示制御部361および受付送信部362を有する。表示制御部361は、受信した作業端末表示用変換3次元設計情報とともに打設順データを表示させる。作業端末106のディスプレイには、大ブロック、小ブロックが表示され、表示された小ブロックには、打設順が重畳して表示される。小ブロック識別子は、例えば、作業現場職員が、所定の操作を行った場合に、表示されるようにしてもよい。そして、作業現場職員は、ディスプレイに表示された、打設順に従って、コンクリートの打設が行われているかなどを確認しながら、所定の入力操作を行う。例えば、コンクリートの打込みが開始された小ブロックをディスプレイ上で選択(クリックまたはタップ)して、所定の操作を行うと、当該小ブロックに対して、コンクリートの打込み開始時刻が記録される。コンクリートの打込み終了の場合も、同様の操作を行うと、当該小ブロックに対して、コンクリートの打込み終了時刻が記録される。このような操作が他の小ブロックに対しても行われ、打込み開始時刻等が記録される。
【0056】
受付送信部362は、表示された作業端末表示用変換3次元設計情報を用いた作業現場職員によるコンクリート打込みの進捗に応じた入力を現場ブロック属性情報として受け付け、受け付けた現場ブロック属性情報と小ブロック識別子とを紐付けて、保存装置104へ送信する。小ブロック識別子と現場ブロック属性情報とを関連付けているので、保存装置104においては、小ブロック識別子により、適切な格納先へ現場ブロック属性情報を格納することができるようになる。
【0057】
ここで、現場ブロック属性情報は、小ブロックに対するコンクリートの打込み開始時刻、打込み終了時刻および打重ね時間を含む。これらの情報は、作業現場職員が、作業端末106のディスプレイに表示された大ブロックに含まれる各小ブロックを選択することにより、入力することができる。
【0058】
例えば、未だコンクリートが打込まれていない小ブロックをディスプレイ上で選択して、確定ボタン等をタップすると、選択された小ブロックが反応し、タップした時刻が、当該小ブロックに対する打込み開始時刻として記録される。同様に、既にコンクリートの打込みが開始されている小ブロックをディスプレイ上で選択して、確定ボタン等をタップすると、選択された小ブロックが反応し、タップした時刻が打込み終了時刻として記録される。
【0059】
そして、既にコンクリートの打込みが終了している小ブロックに隣接する小ブロックに対して、コンクリートの打込みが開始され、打込み開始時刻が記録されると、これに連動して、既に打込みが終了している小ブロックの打重ね時間が記録される。打重ね時間は、コンクリートの打込みが終了した小ブロックの打込み終了時刻から、当該小ブロックに隣接する小ブロックに対してコンクリートの打込みが開始された打込み開始時刻までの時間をいう。小ブロックに打込まれたコンクリートが固化する前に、隣接する小ブロックに対して、コンクリートを打込まなければならないため、打重ね時間も管理の対象としている。そして、各小ブロックには、最大で、底面を除く5面に隣接する小ブロックが存在するため、打重ね時間は、最大で5つ記録され、管理されることとなる。
【0060】
なお、複数の小ブロックにおいて、同じ打込み開始時刻および打込み終了時刻が記録されることがある。これは、各小ブロックに付与された打設順データが、同じである小ブロックが存在するためである。すなわち、生成された小ブロックの中には、他の小ブロックと比べて体積が小さいものも存在する。この場合、打設の順番やアジテータ車によるコンクリートの運搬時間の関係から、体積の小さい複数の小ブロックに対して、まとめてコンクリートを打込むことが効率的なことがある。また、1つの標準的な体積を有する小ブロックと、半端な体積を有する小ブロックとに同時にコンクリートを打込むこともある。このように、生成された小ブロックの体積や、配置位置、アジテータ車によるコンクリートの運搬時間などの関係から複数の小ブロックに対して、同じ打込み開始時刻等が記録されることがある。
【0061】
上述したように、コンクリート打設管理システム100においては、コンクリート識別子(ID1)に紐づけて打設の開始時刻、終了時刻および打重ね時間などを管理している。そのため、構造物の点検の際にクラックなどの欠陥等が発見された場合には、欠陥部分の座標からコンクリートの打設時点まで遡って打設状況を容易に確認できるようになっている。
【0062】
本実施形態によれば、コンクリートの打設計画の立案から打設終了までを一貫して管理したり、一元的に管理したりすることができる。このように、一貫管理(一元管理)を行っているので、構築された構造物の品質を向上させることができる。さらに、打設終了後に、構築した構造物に欠陥等が発生した場合、欠陥が発生した位置から小ブロックの小ブロック識別子(ID1)を特定できるので、コンクリート打設の前後における打設状況を知ることができる。
【0063】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るコンクリート打設管理システム400について、
図4~
図6を用いて説明する。本実施形態に係るコンクリート打設管理システム400は、上記第1実施形態と比べると、第2事務所端末がシミュレーション部および打設順調整部を有する点で異なる。その他の構成および動作は第1実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0064】
図4は、本実施形態に係るコンクリート打設管理システム400の動作の概要について説明するための図である。第2事務所端末103において、コンクリートの打設順を示す打設順データが小ブロックに対して付与された後、付与された打設順に従ってコンクリートの打込みのシミュレーションを行う。つまり、付与された打設順に従って大ブロックに対するコンクリートの打込みを行った場合に、コンクリートの打込みが首尾よく進むか否かを確認するためにシミュレーションを行う。シミュレーションを行った結果、例えば、打重ね時間を超えてコンクリートが打込まれる小ブロックなどが存在しない場合には、付与された打設順をそのまま採用する。
【0065】
これとは反対に、例えば、打重ね時間を超えてコンクリートが打込まれる小ブロックが存在する場合には、付与された打設順では、出来上がった構造物に欠陥が含まれる可能性が高くなる。したがって、シミュレーション結果が良くない場合、第2事務所端末103は、再度、打設順を調整する。調整は、例えば、全ての小ブロックに打設順を示す打設順データを付与し直す、あるいは、一部の小ブロックの打設順を付与し直すことにより行われる。
【0066】
そして、第2事務所端末103は、再付与した打設順に基づいて、再度シミュレーションを行って、結果の良否を確認する。結果が良い場合、第2事務所端末103は、再付与した打設順を採用する。結果が良くない場合、第2事務所端末103は、再度シミュレーションを行う。第2事務所端末103は、シミュレーション結果が良くなるまで、打設順の付与とシミュレーションとを繰り返す。
【0067】
次に、
図5のシーケンス図を参照して、コンクリート打設管理システム400における処理手順を説明する。ステップS501において、第2事務所端末103は、付与された打設順データに基づいて、大ブロックに対するコンクリート打込みのシミュレーションを行う。シミュレーションの結果が良い場合には、第2事務所端末103は、ステップS219へ進む。シミュレーションの結果が良くない場合には、第2事務所端末103は、ステップS503へ進む。
【0068】
ステップS503において、第2事務所端末103は、小ブロックに付与した打設順を調整する。第2事務所端末103は、例えば、全ての小ブロックに付与した打設順を付与し直すことにより、打設順を調整する。また、第2事務所端末103は、例えば、一部の小ブロックに付与した打設順を入れ替える、あるいは、付与し直すことで、打設順を調整する。そして、再度ステップS501へ戻り、調整された打設順に基づいて、シミュレーションを実行する。第2事務所端末103は、シミュレーションにおいて、良い結果が得られるまで、上述の手順を繰り返す。シミュレーションで良い結果が得られたら、第2事務所端末103は、ステップS219へ進む。
【0069】
次に、
図6を参照して、コンクリート打設管理システム400の構成について説明する。コンクリート打設管理システム400の第2事務所端末603は、シミュレーション部631および打設順調整部632を有する。シミュレーション部631は、打設順に従って、大ブロックに対するコンクリートの打込みをシミュレーションする。
【0070】
打設順調整部632は、シミュレーション部631におけるシミュレーション結果に基づいて、打設順を調整する。例えば、シミュレーションの結果、最初に付与された打設順に従って、コンクリートの打込みを行うと、打重ね時間を超える小ブロックが存在する場合には、最初に付与した打設順が適切でないことが分かる。不適切な打設順に基づいて、コンクリートの打込みを行うと、完成した構造物が欠陥を抱えたものとなる。そのため、打設順調整部632は、打設順を調整する。打設順の調整は、例えば、大ブロックに含まれる全ての小ブロックまたは大ブロックに含まれる一部の小ブロックに対して、新たな打設順を付与し直すことにより行われる。
【0071】
また、シミュレーション部631は、打設順調整部632により打設順が調整された場合、再シミュレーションを行う。すなわち、新たに付与された打設順についても、再度シミュレーションを行い、打重ね時間を超過する小ブロック等が存在するか否かを再確認する。
【0072】
そして、打設順調整部632は、再シミュレーションの結果に基づいて、打設順を調整する。再シミュレーションの結果、付与した打設順が適切でない場合には、打設順調整部632は、打設順を再度調整する。なお、シミュレーション部631によるシミュレーションおよび打設順調整部632による打設順の調整は、良いシミュレーション結果が得られるまで繰り返される。
【0073】
本実施形態によれば、シミュレーションを行い、付与された打設順の良否を判断するので、コンクリートの打設の計画から、一元的に管理したりすることができる。また、シミュレーション結果に基づいて、打設順を調整するので、高い品質の構造物が得られる。
【0074】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0075】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。