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2024-64823シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法
<図1A>
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図1A
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図1B
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図2
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図3
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図4
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図5
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図6
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図7
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図8
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図9A
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図9B
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図9C
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図10
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図11
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図12
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図13
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図14
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図15
  • -シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法 図16
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064823
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 11/80 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G06T11/80 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173724
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】本間 聡
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩永
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050BA06
5B050BA13
5B050CA07
5B050EA09
5B050EA19
5B050FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動体の内装や外装、建物の内装や外装、家具、家電製品等に適用される加飾部材の試作品に代えて用いるシミュレーション画像の、精度を向上させるシミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法及び加飾部材の製造方法を提供する。
【解決手段】加飾システムにおいて、第1層(トップ層)及び第2層(意匠層)を含む加飾部材の画像データを生成するシミュレーション装置40は、第1層に関する第1情報及び第2層に関する第2情報を取得する取得部と、第1情報及び第2情報を用いて加飾部材の画像データを生成する計算部と、を含む画像データ生成部45を有する。第1情報は、第1層の、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報及び高さに関する情報の一以上を含む。第2情報は、第2層の、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報及び高さに関する情報の一以上を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得する取得部と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを生成する計算部と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、シミュレーション装置。
【請求項2】
第3層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記第3層に関する第3情報を更に取得し、
前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第1層及び前記第3層の間に位置する意匠層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第3情報は、前記第1層及び前記第2層と重ねられた樹脂層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記第1情報は、前記トップ層についての、反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記意匠層についての、色に関する情報を含み、
前記第3情報は、前記樹脂層についての、色に関する情報を含む、請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
第4層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記第4層に関する第4情報を更に取得し、
前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、前記第3情報、及び前記第4情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第4情報は、前記第1層、前記第2層、及び前記第3層を含む加飾シートに接合した成形部についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記第4情報は、前記成形部の色に関する情報を含む、請求項4に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、反射特性に関する情報及び高さに関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって部分的に覆われた意匠層についての、色に関する情報を含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって覆われた凹凸面を含む意匠層についての、色に関する情報及び高さに関する情報を含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
背後に配置された光源の点灯及び非点灯の切り替えにより異なる意匠を表示する前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記光源に関する情報を更に取得し、
前記計算部は、前記光源に関する前記情報を更に用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記光源の非点灯時に観察可能な意匠を表示する意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記光源の点灯時に観察可能なパターンに対応した光透過部を含み前記意匠層と前記光源との間に位置する第2意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記第2情報は、レンズ機能を有する意匠層についての、高さに関する情報を含む、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記加飾シートに含まれて意匠を表示する意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記計算部は、前記加飾シートに含まれた樹脂層の成形加工時における伸びを考慮し、前記樹脂層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、請求項10に記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整し、
前記計算部は、前記第2意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記第2意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、請求項8に記載のシミュレーション装置。
【請求項13】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記加飾シートに含まれて前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、成形加工時における伸びを考慮し、前記トップ層についての反射特性に関する情報を調整する、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項14】
前記加飾部材は、移動体の内装部品または外装部品に用いられる、請求項1~13のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項15】
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得部に取得する工程と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを計算部によって生成する工程と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び厚みに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、画像データの生成方法。
【請求項16】
第3層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記第3層に関する第3情報も取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第1層及び前記第3層の間に位置する意匠層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第3情報は、前記第1層及び前記第2層と重ねられた樹脂層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項17】
前記第1情報は、前記トップ層についての、反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記意匠層についての、色に関する情報を含み、
前記第3情報は、前記樹脂層についての、色に関する情報を含む、請求項16に記載の画像データの生成方法。
【請求項18】
第4層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記第4層に関する第4情報を更に取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、前記第3情報、及び前記第4情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第4情報は、前記第1層、前記第2層、及び前記第3層を含む加飾シートに接合した成形部についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、請求項16に記載の画像データの生成方法。
【請求項19】
前記第4情報は、前記成形部の色に関する情報を含む、請求項18に記載の画像データの生成方法。
【請求項20】
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、反射特性に関する情報及び高さに関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって部分的に覆われた意匠層についての、色に関する情報を含む、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項21】
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって覆われた凹凸面を含む意匠層についての、色に関する情報及び高さに関する情報を含む、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項22】
背後に配置された光源の点灯及び非点灯の切り替えにより異なる意匠を表示する前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記光源に関する情報を更に取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記光源に関する前記情報を更に用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記光源の非点灯時に観察可能な意匠を表示する意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記光源の点灯時に観察可能なパターンに対応した光透過部を含み前記意匠層と前記光源との間に位置する第2意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項23】
前記第2層に関する前記情報は、レンズ機能を有する意匠層についての、高さに関する情報を含む、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項24】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記加飾シートに含まれて意匠を表示する意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する工程を更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項25】
前記情報を調整する工程において、前記計算部は、前記加飾シートに含まれた樹脂層の成形加工時における伸びを考慮し、前記樹脂層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、請求項24に記載の画像データの生成方法。
【請求項26】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整し、且つ、前記第2意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記第2意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する工程を、更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、請求項22に記載の画像データの生成方法。
【請求項27】
前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記加飾シートに含まれて前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、成形加工時における伸びを考慮し、前記トップ層についての反射特性を調整する工程を、更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項28】
前記加飾部材は、移動体の内装部品または外装部品に用いられる、請求項15に記載の画像データの生成方法。
【請求項29】
シミュレーション装置によって実行されるプログラムであって、
請求項15~28のいずれか一項に記載された画像データの生成方法を前記シミュレーション装置に実行させる、プログラム。
【請求項30】
シミュレーション装置によって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、請求項15~28のいずれか一項に記載された画像データの生成方法を前記シミュレーション装置に実行させる、記録媒体。
【請求項31】
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを評価する評価方法であって、
請求項15~23のいずれか一項に記載された画像データの生成方法により、成形加工前における加飾部材の第1画像データを生成する工程と、
前記第1画像データの評価結果を受領した後に、前記計算部によって、成形加工時における伸びを考慮して前記第1情報および前記第2情報の一以上を修正し、且つ、修正された情報を用いて第2画像データを生成する工程と、を備える、評価方法。
【請求項32】
請求項31に記載された評価方法によって得られる前記第2画像データの評価結果を受領する工程と、
前記第2画像データの評価結果を受領した後に、加飾部材を製造する工程と、を備える、加飾部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、記録媒体、評価方法、及び加飾部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加飾部材は、移動体の内装や外装、建物の内装や外装、家具、家電製品等の各種装置に適用されている。加飾部材は、意匠を表示することによって、適用対象の美観を向上させる。加飾部材の意匠開発において、現状、試作品により意匠が確認されている。例えば自動車等の移動体の内装に適用される加飾部材の意匠は、試作品の作製及び確認と試作品の修正とを複数回繰り返すことにより、決定される。しかしながら、試作品の作製は、時間と費用の負担をともなう。このような負担を軽減するため、特許文献1では、加飾部材の画像をシミュレーションによって作製することが検討されている。試作品に代えて、シミュレーション画像を用いることにより、意匠開発における時間と費用の負担を大幅に軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-133194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加飾部材は、複数の層を含む。加飾部材は、複数の層の組合せによって形成された意匠を表示する。その一方で、従来の加飾部材の画像は、絵柄の色、表面凹凸、及び表面光沢の情報に基づいてシミュレーションされている。すなわち、従来のシミュレーションでは、加飾部材の厚み方向の構成が十分考慮されていない。したがって、シミュレーション画像が、実際に作製した実物の加飾部材から大きく相違することがある。本開示は、加飾部材のシミュレーション画像の精度向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態によるシミュレーション装置は、
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得する取得部と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを生成する計算部と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む。
【0006】
本開示の一実施の形態による画像データの生成方法は、
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得部に取得する工程と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを計算部によって生成する工程と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び厚みに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む。
【0007】
本開示の一実施の形態によるプログラムは、
シミュレーション装置によって実行されるプログラムであって、
本開示の一実施の形態による画像データの生成方法のいずれかを前記シミュレーション装置に実行させる。
【0008】
本開示の一実施の形態による記憶媒体は、
シミュレーション装置によって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、本開示の一実施の形態による画像データの生成方法のいずれかを前記シミュレーション装置に実行させる。
【0009】
本開示の一実施の形態による評価方法は、
第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを評価する評価方法であって、
本開示の一実施の形態による画像データの生成方法のいずれかにより、成形加工前における加飾部材の第1画像データを生成する工程と、
前記第1画像データの評価結果を受領した後に、前記計算部によって、成形加工時における伸びを考慮して前記第1情報および前記第2情報の一以上を調整し、且つ、修正された情報を用いて第2画像データを生成する工程と、を備える。
【0010】
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法は、
本開示の一実施の形態による評価方法により得られた第2画像データの評価結果を受領する工程と、
前記第2画像データの評価結果を受領した後に、加飾部材を製造する工程と、を備える、加飾部材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加飾部材の画像を高精度にシミュレーションできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本開示の一実施の形態を説明するための図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の一例を示す図である。
図1B図1Bは、加飾部材の一具体例を示す断面図であって、図1Aの点線Aで囲まれた領域を示す。
図2図2は、図1Aに示された加飾部材の製造方法の一例を示す断面図である。
図3図3は、図1Aに示された加飾部材の製造方法の一例を示す断面図である。
図4図4は、図1Aに示された加飾部材の製造方法の一例を示す断面図である。
図5図5は、シミュレーション装置の一例を示すブロック図である。
図6図6は、図5に示されたシミュレーション装置に含まれる取得部の一例を示すブロック図である。
図7図7は、図5に示されたシミュレーション装置に含まれる計算部の一例を示すブロック図である。
図8図8は、画像データの生成方法の一例を示すフローチャートである。
図9A図9Aは、第1中間画像データによって再生される画像の一例を示す平面図であって、図1Aの点線Aで囲まれた領域を示す。
図9B図9Bは、第2中間画像データによって再生される画像の一例を示す平面図であって、図1Aの点線Aで囲まれた領域を示す。
図9C図9Cは、第3中間画像データによって再生される画像の一例を示す平面図であって、図1Aの点線Aで囲まれた領域を示す。
図10図10は、画像データによって再生される画像の一例を示す平面図であって、図1Aの点線Aで囲まれた領域を示す。
図11図11は、図1Aに対応する図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の他の例を示す断面図である。
図12図12は、図1Aに対応する図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の更に他の例を示す断面図である。
図13図13は、図1Aに対応する図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の更に他の例を示す断面図である。
図14図14は、図1Aに対応する図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の更に他の例を示す断面図である。
図15図15は、図1Aに対応する図であって、画像データの生成対象となる加飾部材の更に他の例を示す断面図である。
図16図16は、画像データによって再生される画像の一例であって、図15に示された加飾システム及び加飾部材において、光源の点灯状態において観察される画像を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一実施の形態は、次の[1]~[32]に関する。
【0014】
[1] 第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得する取得部と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを生成する計算部と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、シミュレーション装置。
【0015】
[2] 第3層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記第3層に関する第3情報を更に取得し、
前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第1層及び前記第3層の間に位置する意匠層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第3情報は、前記第1層及び前記第2層と重ねられた樹脂層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、[1]のシミュレーション装置。
【0016】
[3] 前記第1情報は、前記トップ層についての、反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記意匠層についての、色に関する情報を含み、
前記第3情報は、前記樹脂層についての、色に関する情報を含む、[2]のシミュレーション装置。
【0017】
[4] 第4層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記第4層に関する第4情報を更に取得し、
前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、前記第3情報、及び前記第4情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第4情報は、前記第1層、前記第2層、及び前記第3層を含む加飾シートに接合した成形部についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、[2]又は[3]のシミュレーション装置。
【0018】
[5] 前記第4情報は、前記成形部の色に関する情報を含む、[4]のシミュレーション装置。
【0019】
[6] 前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、反射特性に関する情報及び高さに関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって部分的に覆われた意匠層についての、色に関する情報を含む、[1]~[5]のいずれかのシミュレーション装置。
【0020】
[7] 前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって覆われた凹凸面を含む意匠層についての、色に関する情報及び高さに関する情報を含む、[1]~[5]のいずれかのシミュレーション装置。
【0021】
[8] 背後に配置された光源の点灯及び非点灯の切り替えにより異なる意匠を表示する前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記取得部は、前記光源に関する情報を更に取得し、
前記計算部は、前記光源に関する前記情報を更に用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記光源の非点灯時に観察可能な意匠を表示する意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記光源の点灯時に観察可能なパターンに対応した光透過部を含み前記意匠層と前記光源との間に位置する第2意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む、[1]~[5]のいずれかのシミュレーション装置。
【0022】
[9] 前記第2情報は、レンズ機能を有する意匠層についての、高さに関する情報を含む、[1]~[5]のいずれかのシミュレーション装置。
【0023】
[10] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記加飾シートに含まれて意匠を表示する意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、[1]~[9]のいずれかのシミュレーション装置。
【0024】
[11] 前記計算部は、前記加飾シートに含まれた樹脂層の成形加工時における伸びを考慮し、前記樹脂層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、[10]のシミュレーション装置。
【0025】
[12] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整し、
前記計算部は、前記第2意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記第2意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、[8]のシミュレーション装置。
【0026】
[13] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成するシミュレーション装置であって、
前記計算部は、前記加飾シートに含まれて前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、成形加工時における伸びを考慮し、前記トップ層についての反射特性に関する情報を調整する、[1]~[12]のいずれかのシミュレーション装置。
【0027】
[14] 前記加飾部材は、移動体の内装部品または外装部品に用いられる、[1]~[13]のいずれかのシミュレーション装置。
【0028】
[15] 第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記第1層に関する第1情報及び前記第2層に関する第2情報を取得部に取得する工程と、
前記第1情報及び前記第2情報を用いて前記加飾部材の前記画像データを計算部によって生成する工程と、を備え、
前記第1情報は、前記第1層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び厚みに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、画像データの生成方法。
【0029】
[16] 第3層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記第3層に関する第3情報も取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、及び前記第3情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第2情報は、前記第1層及び前記第3層の間に位置する意匠層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含み、
前記第3情報は、前記第1層及び前記第2層と重ねられた樹脂層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、[15]の画像データの生成方法。
【0030】
[17] 前記第1情報は、前記トップ層についての、反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記意匠層についての、色に関する情報を含み、
前記第3情報は、前記樹脂層についての、色に関する情報を含む、[16]の画像データの生成方法。
【0031】
[18] 第4層を更に含む前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記第4層に関する第4情報を更に取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記第1情報、前記第2情報、前記第3情報、及び前記第4情報を用いて前記画像データを生成し、
前記第4情報は、前記第1層、前記第2層、及び前記第3層を含む加飾シートに接合した成形部についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む、[16]又は[17]の画像データの生成方法。
【0032】
[19] 前記第4情報は、前記成形部の色に関する情報を含む、[18]の画像データの生成方法。
【0033】
[20] 前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、反射特性に関する情報及び高さに関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって部分的に覆われた意匠層についての、色に関する情報を含む、[15]~[19]のいずれかの画像データの生成方法。
【0034】
[21] 前記第1情報は、前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記トップ層によって覆われた凹凸面を含む意匠層についての、色に関する情報及び高さに関する情報を含む、[15]~[19]のいずれかの画像データの生成方法。
【0035】
[22] 背後に配置された光源の点灯及び非点灯の切り替えにより異なる意匠を表示する前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記情報を取得する工程において、前記取得部は、前記光源に関する情報を更に取得し、
前記画像データを生成する工程において、前記計算部は、前記光源に関する前記情報を更に用いて前記画像データを生成し、
前記第1情報は、前記光源の非点灯時に観察可能な意匠を表示する意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含み、
前記第2情報は、前記光源の点灯時に観察可能なパターンに対応した光透過部を含み前記意匠層と前記光源との間に位置する第2意匠層についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む、[15]~[19]のいずれかの画像データの生成方法。
【0036】
[23] 前記第2層に関する前記情報は、レンズ機能を有する意匠層についての、高さに関する情報を含む、[15]~[19]のいずれかの画像データの生成方法。
【0037】
[24] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記加飾シートに含まれて意匠を表示する意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する工程を更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、[15]~[23]のいずれかの画像データの生成方法。
【0038】
[25] 前記情報を調整する工程において、前記計算部は、前記加飾シートに含まれた樹脂層の成形加工時における伸びを考慮し、前記樹脂層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する、[24]の画像データの生成方法。
【0039】
[26] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整し、且つ、前記第2意匠層の成形加工時における伸びを考慮し、前記第2意匠層についての色に関する情報及び透過特性に関する情報の一以上を調整する工程を、更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、[22]の画像データの生成方法。
【0040】
[27] 前記第1層及び前記第2層を含む加飾シートを成形加工することによって得られる前記加飾部材の前記画像データを生成する画像データの生成方法であって、
前記計算部によって、前記加飾シートに含まれて前記加飾部材の表面を構成するトップ層についての、成形加工時における伸びを考慮し、前記トップ層についての反射特性を調整する工程を、更に備え、
前記画像データを生成する工程において、調整された情報を用いて前記画像データが生成される、[15]~[26]のいずれかの画像データの生成方法。
【0041】
[28] 前記加飾部材は、移動体の内装部品または外装部品に用いられる、[15]~[27]のいずれかの画像データの生成方法。
【0042】
[29] シミュレーション装置によって実行されるプログラムであって、
[15]~[28]のいずれかの画像データの生成方法を前記シミュレーション装置に実行させる、プログラム。
【0043】
[30] シミュレーション装置によって実行されるプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、[15]~[28]のいずれかの画像データの生成方法を前記シミュレーション装置に実行させる、記録媒体。
【0044】
[31] 第1層及び第2層を含む加飾部材の画像データを評価する評価方法であって、
[15]~[23]のいずれかの画像データの生成方法により、成形加工前における加飾部材の第1画像データを生成する工程と、
前記第1画像データの評価結果を受領した後に、前記計算部によって、成形加工時における伸びを考慮して前記第1情報および前記第2情報の一以上を修正し、且つ、修正された情報を用いて第2画像データを生成する工程と、を備える、評価方法。
【0045】
[32] [31]の評価方法によって得られる前記第2画像データの評価結果を受領する工程と、
前記第2画像データの評価結果を受領した後に、加飾部材を製造する工程と、を備える、加飾部材の製造方法。
【0046】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張している。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0047】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する方向を示している。矢印の先端側が、各方向の第1側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図1Aに示すように、円の中に点を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図9Aに示すように、円の中に×を設けた記号により示した。
【0048】
以下において、本実施の形態によるシミュレーション装置、画像データの生成方法、プログラム、及び記憶媒体について、説明する。シミュレーション装置及び画像データの生成方法は、加飾部材の画像データを生成する。シミュレーション装置及び画像データの生成方法は、加飾部材に含まれる二以上の層に関する情報を用いたシミュレーションにより、加飾部材の画像データを高精度に生成する。従来、加飾部材の開発は、供給者と需要者との間でのサンプル作製された現物を評価することにより進められてきた。本実施の形態によれば、シミュレーションにより加飾部材の画像データを高精度に生成できる。したがって、実際のサンプル作製を観察することに代え、シミュレーション画像を観察することにより、加飾部材を評価できる。これにより、サンプル作製にともなう労力を軽減し、意匠開発に要する期間やコストを低減できる。
【0049】
シミュレーション対象となる加飾部材10について説明する。加飾部材10は意匠を表示する。加飾部材10は、適用対象物に意匠性を付与する。加飾部材10は、移動体の内装部品や外装部品に適用されてもよい。移動体は移動可能な装置である。移動体として、自動車、鉄道車両、台車、船、飛行機、ヘリコプター、ロボット等が例示される。一具体例として、加飾部材10は、自動車の内装部品に適用されてもよい。加飾部材10は、建物の内装材として、壁、扉、天井等に適用されてもよい。加飾部材10は、建物の外装材に適用されてもよい。加飾部材10は、家具、家電製品の筐体に適用されてもよい。
【0050】
図1Aに示すように、加飾部材10は、加飾シート20を含んでもよい。加飾シート20は意匠を表示する。加飾シート20は、第1層21及び第2層22を含む複数の層を含んでもよい。加飾シート20は、複数の層の組合せによって、意匠を表現してもよい。
【0051】
図1Aに示された例のように、加飾部材10は、加飾シート20及び成形部15を含んでもよい。加飾シート20は、成形部15と重ねられてもよい。加飾シート20は、成形部15の表面の少なくとも一部分を覆ってもよい。成形部15は、熱可塑性樹脂を用いた射出成形により形成されてもよい。成形部15は、三次元形状を有してもよい。
【0052】
加飾シート20は成形加工されてもよい。成形加工により、加飾シート20は三次元形状を有してもよい。加飾シート20に実施される成形加工は、所望の形状を加飾シート20に付与する加工を意味する。成形加工として、真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等が例示される。真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等の成形加工によれば、加飾シート20に所望の形状を付与できる。真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等の成形加工を予備成形として実施された加飾シート20が、更に、インサート成形により成形加工されてもよい。インサート成形では、予備成形された加飾シート20が収容されたキャビティ内で射出成形が実施され、加飾シート20に接合した成形部15が作製される。これにより、加飾シート20及び成形部15を含む加飾部材10が得られる。
【0053】
加飾シート20を用いたインモールド成形により、成形部15及び加飾シート20を含む加飾部材10を作製してもよい。インモールド成形では、加飾シート20を含む転写箔を、射出成形用の成形型のキャビティ内に配置する。キャビティ内に加熱された熱可塑性樹脂を供給する。加飾シート20を含む転写箔は、キャビティの内形状に沿うように変形する。熱可塑性樹脂が固化することにより、加飾シート20が転写箔から離れ、加飾シート20と接合した成形部15が作製される。これにより、加飾シート20及び成形部15を含む加飾部材10が得られる。
【0054】
図2図4に示すように、射出成形用の成形型30内において、射出成形前に加飾シート20を成形加工してもよい。図2図4に示された射出成形同時加飾とも呼ばれる加工方法である。成形型30は、雌型31及び雄型32を含む。図2に示すように、雌型31及び雄型32は、互いから離れた開型位置に配置され得る。図3に示すように、雌型31及び雄型32は、接触するまで接近した閉型位置に配置され得る。閉型位置において、雌型31及び雄型32の間にキャビティ30Cが形成される。雌型31は、キャビティ30Cを形成する雌型面31Sを含む。雄型32は、キャビティ30Cを形成する雄型面32Sを含む。雌型31は、雌型面31Sに開口した吸引孔33を有する。
【0055】
図2に示すように、加飾シート20は、クランプ34等を用いて、雌型面31Sに対面して保持される。加飾シート20と雌型31との間に密閉された空間が形成される。ヒータ35で加飾シート20を加熱しながら、吸引孔33からの吸引により、加飾シート20と雌型31との間の密閉空間を減圧する。図3に示すように、加熱により軟化した加飾シート20は、大気圧によって背面から押されて、雌型面31Sに沿う形状に予備成形される。次に、図2に示すように、雌型31及び雄型32を閉型して、キャビティ30Cを形成する。キャビティ30C内には、予備成形された加飾シート20が位置している。キャビティ30C内に加熱された熱可塑性樹脂15Rを射出し、加飾シート20に接合した成形物を形成する。成形型30から取り出した成形物及び加飾シート20の積層物の不要部分をトリミングすることによって、加飾部材10が得られる。
【0056】
図1Bは、加飾部材10の一例を示す縦断面図である。図1Bは、図1Aの点線Aが囲んだ領域を示している。図示された例のように、加飾部材10は、第1層21、第2層22、第3層23、及び第4層24をこの順で含んでもよい。第1層21、第2層22、及び第3層23が、加飾シート20を構成してもよい。第4層24は成形部15でもよい。図1Bに示された加飾部材10は、加飾シート20と、加飾シート20に接合した成形部15と、を含んでもよい。なお、第1層21、第2層22、第3層23及び第4層24が、加飾部材の実際の層構成と完全に一致するように関連付ける必要はない。つまり、第1層21、第2層22、第3層23及び第4層24が、実際の加飾部材の意匠を構成する層のみと関連付けられていてもよい。
【0057】
第1層21は、トップ層D11でもよい。トップ層D11は、加飾部材10の最表面となる面10aを構成している。トップ層D11は樹脂層でもよい。トップ層D11は、無機粒子等の添加剤を含み、艶を調整されてもよい。トップ層D11は、凹凸を設けられて、光拡散性を調整されてもよい。トップ層D11は、光拡散粒子等の添加剤を含み、光拡散性を付与されてもよい。第1層21を構成する樹脂材料は、ポリメタクリル酸メチル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレン等でもよい。
【0058】
第2層22は意匠層D12でもよい。意匠層D12は意匠を形成された層である。図示された例のように、意匠層D12は、絵柄層D12A及び基材D12Bを含んでもよい。基材D12Bは絵柄層D12Aを支持する。基材D12Bは、絵柄層D12Aを作製する際の基材でもよい。絵柄層D12Aは、グラビア印刷等の印刷や熱転写印刷によって基材D12B上に形成され得る。
【0059】
基材D12Bは、無色又は着色された樹脂製のフィルムでもよい。基材D12Bの材料として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等が例示される。基材D12Bの厚みは75μm以上でもよい。基材D12Bの厚みは500μm以下でもよい。
【0060】
絵柄層D12Aは、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として有してもよい。絵柄層D12Aは、木目、布、皮革、金属等の素材を表現する絵柄を有してもよい。絵柄層D12Aは、バインダー樹脂部と、バインダー樹脂部に保持された色材と、を含んでもよい。色材は染料でもよい。色材は顔料でもよい。絵柄層D12Aの厚みは1μm以上でもよい。絵柄層D12Aの厚みは50μm以下でもよい。
【0061】
第3層23は樹脂層D13でもよい。樹脂層D13は、無色または着色された熱可塑性樹脂の層でもよい。樹脂層D13はバッカー層でもよい。バッカー層としての樹脂層D13は、加飾シート20の成形加工時に塑性変形する。バッカー層としての樹脂層D13は、成形加工後の加飾シート20を所望の形状に維持することに寄与する。樹脂層D13の材料として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等が例示される。樹脂層D13の厚みは50μm以上でもよい。樹脂層D13の厚みは250μm以下でもよい。
【0062】
第4層24は成形部15でもよい。成形部15は、無色または着色された熱可塑性樹脂の層でもよい。成形部15の材料として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等が例示される。成形部15の厚みは500μm以上でもよい。成形部15の厚みは5mm以下でもよい。
【0063】
シミュレーション装置40は、加飾部材10の画像データを生成する。図5に示すように、シミュレーション装置40は、取得部50及び計算部60を含んでもよい。シミュレーション装置40は、コンピュータによって構成されてもよい。取得部50は、加飾部材10に含まれる少なくとも二つの層に関する情報を、それぞれ、第1情報及び第2情報として取得する。計算部60は、第1情報及び第2情報を用いたシミュレーションにより、加飾部材10の画像データを生成する。
【0064】
図5は、シミュレーション装置40の構成の一例を示す図である。シミュレーション装置40は、表示部41、入力部42、記憶部43、通信部44、及び画像データ生成部45を含んでもよい。画像データ生成部45は、上述の取得部50及び計算部60を含んでいる。シミュレーション装置40に含まれる複数の構成要素は、互いから離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。シミュレーション装置40を構成する各構成要素、例えば取得部50や計算部60は、物理的に別個の複数の機器の組合せとして構成されてもよい。複数の機器は、離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。
【0065】
表示部41は、生成された画像データに基づき、シミュレーションされた加飾部材10の画像を表示してもよい。表示部41は、シミュレーション装置40の操作画面を表示してもよい。表示部41は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置でもよい。
【0066】
入力部42は、キーボードやマウス等の入力機器でもよい。入力部42は、表示部41を構成する表示装置に組み込まれたタッチパネルでもよい。入力部42を用いて入力された情報が、第1情報や第2情報として取得部50に取得されてもよい。
【0067】
記憶部43は、生成された画像データや、画像データを生成するための情報を記憶してもよい。使用者は、記憶部43に記憶されたデータを利用して、取得部50及び計算部60に画像データを生成させてもよい。使用者は、記憶部43に記憶された画像データにより、加飾部材10の画像を表示部41等に表示してもよい。記憶部43は、画像データの生成方法を実行するためのプログラムが記憶された記憶媒体43Xを含んでもよい。
【0068】
記憶部43及び記憶媒体43Xは、特に限定されず、ROMやRAM等の種々の記憶手段でもよい。記憶部43及び記憶媒体43Xは、HDDなどの磁気ドライブでもよく、SSDなどの半導体ドライブでもよい。記憶部43及び記憶媒体43Xは、クラウドサーバでもよい。記憶部43及び記憶媒体43Xは、スタンドアローン型のサーバや、ファイルサーバ等であってもよい。
【0069】
通信部44は、外部のコンピュータや、USB等の外部の記憶手段との間で、情報やデータの送受信を可能にするインターフェースである。通信部44は、有線または無線で通信してもよい。
【0070】
画像データ生成部45は、上述の取得部50及び計算部60を含んでいる。画像データ生成部45は、所定のプログラムに基づいて動作するCPU(Central Processing Unit)を含んでもよい。画像データ生成部45、取得部50、又は計算部60は、情報を少なくとも一次的に保存する記憶部を含んでもよい。図6に示された例において、取得部50が情報記憶部51を含んでいる。情報記憶部51は、記憶部43と同様に構成され得る。
【0071】
画像データ生成部45、取得部50、又は計算部60に含まれる複数の機能部は、離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。画像データ生成部45、取得部50、又は計算部60に含まれる各機能部は、物理的に別個の複数の機器の組合せとして構成されてもよい。複数の機器は、離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。
【0072】
上述したように、取得部50は、加飾部材10に含まれる第1層21に関する第1情報、及び加飾部材10に含まれる第2層22に関する第2情報を取得する。第1層21及び第2層22は、特に限定されない。すなわち、第1層21は、図1Bに示された例のようにトップ層D11でなくてもよい。第2層22は、図1Bに示された例のように意匠層D12でなくてもよい。第1層21は、加飾部材10に含まれるいずれかの層でもよい。第2層22は、加飾部材10に含まれるいずれかの層であって、第1層21とは異なる層でもよい。取得部50は、加飾部材10に含まれる第3層に関する第3情報を更に取得してもよい。取得部50は、加飾部材10に含まれる第4層に関する第4情報を更に取得してもよい。取得部50は、加飾部材10に含まれる全ての層に関する情報を取得してもよい。
【0073】
取得部50に取得される各層についての情報は、入力部42を用いて操作者によって入力される情報でもよい。取得部50に取得される各層についての情報は、通信部44を通じて外部から受信した情報でもよい。取得部50に取得される各層についての情報は、記憶部43に格納された情報でもよい。また、取得部50に取得される各層についての情報は、通信部44を通じて外部から受信した情報及び/又は記憶部43に格納された情報と、入力部42を用いて操作者によって入力される情報とを合わせた情報であってもよい。
【0074】
取得部50によって取得される加飾部材10に含まれた各層についての情報は、対象となる層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。例えば、第1情報は、第1層21についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。第2情報は、第2層22についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。第3情報は、第3層23についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。第4情報は、第4層24についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。
【0075】
色に関する情報は、対象となる各層についての、色相、彩度、彩度の程度、明度、明度の程度、濃淡、及び濃淡の程度の一以上を含んでもよい。程度の情報とは、「有」及び「無」、「大」、「中」及び「小」、又は、「強」、「中」及び「弱」、又は「高」、「中」及び「低」等の段階的な評価であり、階調により表現されてもよい。段階や階調の数は、特に限定されない。段階や階調の数は、2でもよく、3でもよく、8でもよく、16でもよく、32でもよく、64でもよく、128でもよく、256でもよい。色に関する情報は、対象となる各層を複数の領域に平面分割し、領域毎の情報でもよい。すなわち、色に関する情報は各画素についての情報でもよい。取得部50は、すべての画素についての色に関する情報を、取得してもよい。対象となる層が一様な色を有する場合、すべての画素において同一の色となる。
【0076】
グラビア印刷等の版を用いた印刷によって作製される層については、印刷版の設計データや、印刷版の設計データに基づいて作製されたデータを、色に関する情報としてもよい。複数の色で印刷された層については、各色の層が含まれているとして、各色の層毎に別個に情報が取得されてもよい。あるいは、複数の色を用いて作製されたカラー層として、色の分布も含めた色の情報が取得されてもよい。
【0077】
透過特性に関する情報は、対象となる各層についての、透過率、透過性の程度、拡散透過率、拡散透過性の程度の一以上でもよい。透過性は、波長380nm以上780nm以下の可視光についての透過性でもよい。透過特性に関する程度の情報は、色に関する程度の情報と同様に、段階的な評価であり、階調により表現されてもよい。透過特性に関する情報は、色に関する情報と同様に、対象となる各層の領域毎または画素毎の情報でもよい。透過特性に関する情報によれば、加飾部材10の奥行き感を高精度に再現した画像データを生成できる。また、透過特性に関する情報によれば、対象となる層よりも下層の情報を加飾部材10の意匠に反映させることができる。
【0078】
反射特性に関する情報は、対象となる各層についての、反射率、反射性の程度、拡散反射率、拡散反射性の程度、鏡面反射率又は鏡面光沢度、鏡面反射性の程度の一以上でもよい。反射性は、波長380nm以上780nm以下の可視光についての反射性でもよい。反射特性に関する程度の情報は、色に関する程度の情報と同様に、段階的な評価であり、階調により表現されてもよい。反射特性に関する情報は、色に関する情報と同様に、対象となる各層の領域毎または画素毎の情報でもよい。
【0079】
反射特性に関する情報は、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報と、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報と、の両方を含んでもよい。マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報によれば、表面粗さの大きさに対応した質感を高精度に表示可能な画像データを生成できる。グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報によれば、金属光沢や、パール顔料等の光輝性色材に起因した光沢等を高精度に表示可能な画像データを生成できる。マット感の強弱及びグロス感の強弱に関する情報の両者を含むことによって、加飾部材10による豊かな意匠表現を再現した画像データを生成できる。
【0080】
反射特性に関する情報は、対象となる各層の表面への法線の方向に関する情報を含んでもよい。反射特性に関する情報が、マット感の強弱に関するとして表現される拡散反射性の程度に関する情報に加えて、法線方向に関する情報を含むことによって、対象となる層での拡散反射特性をより高精度に表示できる。反射特性を高精度に表示可能とすることにより、ツルツル及びザラザラといった表面質感も高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0081】
マット感の強弱、グロス感の強弱、及び法線方向に関する情報についても、色に関する程度の情報と同様に、段階的な評価であり、階調により表現されてもよい。マット感の強弱、グロス感の強弱、及び法線方向に関する情報についても、色に関する情報と同様に、対象となる各層の領域毎または画素毎の情報でもよい。
【0082】
高さに関する情報は、対象となる層の表面の高さ分布に関する情報を含んでもよい。取得部50は、各層を平面分割して得られる複数の領域又は複数の画素の各々に関する高さ情報を取得してもよい。高さに関する情報によれば、加飾部材10の奥行き感や表面質感を高精度に表示可能な画像データを生成できる。エンボス版を用いたエンボス加工によって作製される層については、エンボス版の設計データや、エンボス版の設計データを適宜調整して得られたデータを、高さに関する情報として取得してもよい。
【0083】
図6に示された例のように、取得部50は、情報記憶部51を含んでもよい。取得部50は、取得した情報を少なくとも一時的に、情報記憶部51に記憶してもよい。
【0084】
図6に示された例のように、情報記憶部51は、色情報部51A、透過特性情報部51B、反射特性情報部51C、高さ情報51Dを含んでもよい。これらの情報部51A,51B,51C,51Dは、対象となる情報の種類に応じて、情報を分類して保存する。色情報部51Aは、色に関する情報を保存してもよい。加飾部材10に含まれる一以上の層について取得された色に関する情報は、すべて、色情報部51Aに保存されてもよい。透過特性情報部51Bは、透過特性に関する情報を記録してもよい。加飾部材10に含まれる一以上の層について取得された透過特性に関する情報は、すべて、透過特性情報部51Bに保存されてもよい。反射特性情報部51Cは、反射特性に関する情報を記録してもよい。加飾部材10に含まれる一以上の層について取得された反射特性に関する情報は、すべて、反射特性情報部51Cに保存されてもよい。高さ情報51Dは、高さに関する情報を記録してもよい。加飾部材10に含まれる一以上の層について取得された高さに関する情報は、すべて、高さ情報51Dに保存されてもよい。
【0085】
図6に示された例のように、情報記憶部51は、トップ層情報部51E、意匠層情報部51F、樹脂層情報部51G、第2意匠層情報部51H、及び光源情報部51Iを含んでもよい。これらの情報部51E,51F,51G,51H,51Iは、対象となる層の種類に応じて、情報を分類して保存する。トップ層情報部51Eは、図1Bに示すように最表面となる面10aを構成するトップ層D11について取得されたすべての情報を保存してもよい。意匠層情報部51Fは、意匠を形成された意匠層D12について取得されたすべての情報を保存してもよい。樹脂層情報部51Gは、加飾シート20を補強する樹脂層D13について取得されたすべての情報を保存してもよい。第2意匠層情報部51Hは、後述する第2意匠層について取得されたすべての情報を保存してもよい。光源情報部51Iは、後述する光源について取得されたすべての情報を保存してもよい。
【0086】
取得部50は、対象となる層について、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報のすべてを取得しなくてもよい。取得部50は、対象となる層について、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を取得してもよい。例えば、図1Bに示された加飾部材10において、取得部50は、樹脂層D13について、色に関する情報のみを取得してもよい。樹脂層D13は意匠層D12の下地層となる。意匠層D12の透過特性に依存して、樹脂層D13の色は、加飾部材10の面10aを観察した際の意匠に影響を及ぼし得る。取得部50は、樹脂層D13について色に関する情報以外の情報を取得しなくてもよい。
【0087】
取得部50は、加飾部材10に含まれるすべての層について情報を取得しなくてもよい。例えば、加飾部材10がその最表の層よりも下層に無色透明な層を含むことが予め判明している場合、取得部50は、この無色透明な層について情報を取得しなくてもよい。無色透明な層は、加飾部材10の面10aを観察した際の意匠に大きな影響を及ぼさない。したがって、取得部50は、加飾部材10の画像データを生成する際、無色透明な層に関する情報を取得しなくてもよい。
【0088】
一具体例として、図1Bに示された加飾部材10の画像データを生成する場合、取得部50は、次の情報を取得してもよい。
【0089】
取得部50は、第1層21であるトップ層D11の反射特性に関する情報を取得してもよい。トップ層D11ついての反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎の情報としてもよい。トップ層D11の反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報と、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報と、法線の方向に関する情報と、の一以上を含んでもよい。トップ層D11が有色の場合、取得部50は、第1層21であるトップ層D11の色に関する情報を取得してもよい。トップ層D11が高さ分布を有する場合、取得部50は、第1層21であるトップ層D11の高さに関する情報を取得してもよい。トップ層D11ついての色に関する情報や高さに関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎の情報としてもよい。
【0090】
取得部50は、第2層22である意匠層D12の色に関する情報を取得してもよい。第3層23である樹脂層D13が有色である場合、取得部50は、第2層22である意匠層D12の透過特性に関する情報を取得してもよい。意匠層D12が法線方向に分布を有する場合、取得部50は、意匠層D12についての反射特性に関する情報として、法線の方向に関する情報を含んでもよい。意匠層D12が金属光沢を有する場合や意匠層D12がパール顔料等の光輝色材を含む場合、取得部50は、意匠層D12についての反射特性に関する情報として、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報を取得してもよい。意匠層D12が高さ分布を有する場合、取得部50は、第2層22である意匠層D12の高さに関する情報を取得してもよい。意匠層D12についての情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎の情報としてもよい。
【0091】
取得部50は、第3層23である樹脂層D13の色に関する情報を取得してもよい。第4層24である成形部15が有色である場合、取得部50は、第3層23である樹脂層D13の透過特性に関する情報を取得してもよい。取得部50は、第4層24である成形部15の色に関する情報を含んでもよい。樹脂層D13についての情報は、樹脂層D13の領域毎または画素毎の情報としてもよい。成形部15についての情報は、成形部15の領域毎または画素毎の情報としてもよい。
【0092】
計算部60は、第1情報及び第2情報を用いたシミュレーションにより加飾部材10の画像データを生成する。計算部60は、第1情報及び第2情報に限られず、取得部50によって取得された情報を用いたシミュレーションにより、加飾部材10の画像データを生成してもよい。計算部60は、取得部50の情報記憶部51に格納された必要な情報に基づいて加飾部材10の画像をシミュレーションし、画像データを生成してもよい。
【0093】
図示された例において、計算部60は、第1計算部61、第2計算部62、及び第3計算部63を含んでもよい。第1計算部61、第2計算部62、及び第3計算部63は、離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。その一方で、第1計算部61、第2計算部62、及び第3計算部63は、少なくとも一部分が物理的に共通する機器によって構成されてもよい。第1計算部61、第2計算部62、及び第3計算部63の各々は、物理的に別個の複数の機器の組合せとして構成されてもよい。複数の機器は、離れた位置に設置されてもよく、有線または無線の通信手段により電気的に接続されてもよい。
【0094】
第1計算部61は、取得部50によって取得された情報を用いて加飾部材10の画像データを生成する。第1計算部61は、取得部50の情報記憶部51に格納された情報を用いたシミュレーションを実施する。第1計算部61は、一つの層についての情報を用いて第1中間画像データを生成する。次に、第1計算部61は、他の一つの層についての情報に用いて第1中間画像データを修正し、第2中間画像データを生成する。その後、第1計算部61は、更に他の一つの層についての情報に用いて第2中間画像データを修正し、第3中間画像データを生成する。取得部50によって取得された各層についての情報を順に用いて中間画像データを更新していくことにより、画像データを最終的に生成してもよい。
【0095】
第2計算部62は、成形加工時に生じる加飾部材10の伸びをシミュレーションする。加飾シート20の成形加工時に、加飾シート20に伸びが生じる。伸びは、成形加工後の三次元形状に依存して、加飾シート20に局所的に生じ得る。加飾部材10への伸びの発生により、意匠層D12の柄が変化し得る。加飾部材10への伸びの発生により、着色された層や意匠層等の色や透過特性が変化し得る。加飾部材10への伸びの発生により、凹凸を含む面や、マット感を有する面を観察した際の質感が変化し得る。成形加工時に加飾部材10に生じる伸びを考慮することにより、加飾部材10の画像データを高精度に生成できる。
【0096】
第2計算部62は、成形加工後の加飾部材10に関する三次元CAD設計データに基づいて、加飾シート20及び加飾部材10に発生する伸びをシミュレーションしてもよい。シミュレーションによって、加飾部材10における伸びの分布のデータが得られてもよい。シミュレーションには、成形加工に用いられる型の三次元CADデータ、成形加工時の加工条件、加飾シート20の物性データを、考慮してもよい。
【0097】
第2計算部62は、更に、成形加工時における伸びを考慮して成形加工後の加飾部材10をシミュレーションする。第2計算部62は、シミュレーション結果から、各層についての情報を修正する。すなわち、各層の色に関する情報、各層の透過特性に関する情報、各層の反射特性に関する情報、及び各層の高さに関する情報が修正される。色に関する情報については、柄の変化にともなって、色の分布が修正されてもよい。透過特性に関する情報については、伸びの発生にともなって透過特性の程度が修正されてもよく、局所的な伸びの発生にともなって透過特性の程度の分布が修正されてもよい。反射特性に関する情報については、伸びの発生にともなって、グロス感の程度、マット感の程度、及び法線の方向が修正され得る。局所的な伸びの発生にともなって、グロス感の程度の分布、マット感の程度の分布、及び法線の方向の分布が修正され得る。高さに関する情報については、伸びの発生にともなって、高さが修正され得る。局所的な伸びの発生にともなって、高さ分布が修正され得る。
【0098】
加飾シート20及び加飾部材10に発生する伸びのシミュレーション及び伸び分布データの作製は、第2計算部62ではなく、別の計算部によって実施されてもよい。例えば、シミュレーション装置40とは別個の装置が、加飾シート20及び加飾部材10に発生する伸びをシミュレーションしてもよい。シミュレーション装置40とは別個の装置が、加飾シート20及び加飾部材10の伸び分布データを作製してもよい。この例において、第2計算部62は、入力部42や通信部44を通じて伸びのシミュレーション結果や伸び分布データを取得してもよい。この場合にも、第2計算部62は、成形加工時における伸びを考慮して、加飾部材10の各層についての情報を修正できる。
【0099】
第3計算部63は、観察条件に基づいて画像データを修正してもよい。加飾部材10への環境光の入射量や入射方向に依存して、加飾部材10の見え方は変化する。加飾部材10の観察方向に依存して、加飾部材10の見え方は変化する。環境光の光源や観察者に対する加飾部材10の向きに応じて、加飾部材10の見え方は変化する。第3計算部63は、環境光の光源と加飾部材10との相対位置、観察者と加飾部材10との相対位置、加飾部材10の環境光の光源および観察者に対する向きに応じて、画像データを修正してもよい。
【0100】
取得部50は、環境光の光源と加飾部材10との相対位置に関する情報、観察者と加飾部材10との相対位置に関する情報、及び環境光の光源および観察者に対する加飾部材10の向きに関する情報を、取得してもよい。取得部50に取得される環境光や観察者に関連した情報は、入力部42を用いて操作者によって入力される情報でもよい。操作者は、予め記憶部43に記憶された複数の条件から一つの観察条件を選択してもよい。図6に示すように、取得部50の情報記憶部51は、観察条件に関する情報を、少なくとも一時的に記憶する観察条件情報部51Jを含んでもよい。計算部60は、観察条件情報部51Jに保存された情報に基づいて画像データを修正してもよい。
【0101】
画像データの生成方法の一例について、図8を参照しながら説明する。図8は、シミュレーション装置40による画像データの生成方法の一例を示すフローチャートである。以下の説明では、図1Bに示された加飾部材10の画像データを生成する。
【0102】
以下に説明する画像データの生成方法の各ステップは、予めプログラム記憶媒体43Xに格納されたプログラムに従って実行される。
【0103】
ステップS81において、シミュレーション装置40の取得部50によって、加飾部材10に含まれる各層21~24についての第1~第4情報が取得される。図1Bに示された加飾部材10は、最表面を構成する面10aからの順で、第1層21、第2層22、第3層23、及び第4層24が重ねられている。第1層21はトップ層D11である。第2層22は意匠層D12である。第3層23は樹脂層D13である。第4層24は成形部15である。
【0104】
上述したように、第1層21に関する第1情報は、トップ層D11の反射特性に関する情報を含んでもよい。トップ層D11の反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報と、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報と、法線の方向に関する情報と、を含んでもよい。トップ層D11が有色の場合、第1情報は、トップ層D11の色に関する情報を取得してもよい。
【0105】
第2層22に関する第2情報は、意匠層D12の色に関する情報を含んでもよい。第22情報は、意匠層D12の透過特性に関する情報を取得してもよい。意匠層D12が金属光沢を有する場合や意匠層D12がパール顔料等の光輝色材を含む場合、取得部50は、意匠層D12についての反射特性に関する情報として、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報を取得してもよい。
【0106】
第3層23に関する第3情報は、樹脂層D13の色に関する情報を含んでもよい。第3層23に関する第3情報は、樹脂層D13の透過特性に関する情報を取得してもよい。第4層24に関する第4情報は、第4層24である成形部15の色に関する情報を含んでもよい。なお、第1~第4情報を取得する順序には制限はなく、例えば、意匠層D12に関する第2情報を最初に取得し、その後、第1、第3、第4情報を取得してもよい。さらに、意匠層D12に関する第2情報を最初に取得し、次にトップ層D11に関する第1情報を取得し、その後、第3、第4情報の取得の要否を検討してもよい。
【0107】
次に、ステップS82において、加飾シート20の成形加工時における加飾シート20の伸びを考慮すべきか否かが判断される。伸びよって加飾部材10の見え方が変化してしまう場合、「YES」としてステップS83に進む。伸びがわずかであり、成形加工の有無によって加飾部材10の見え方が変化しない場合、「NO」としてステップS85に進む。
【0108】
ステップS83において、第2計算部62は、成形加工時における伸びを考慮して成形加工後の加飾部材10をシミュレーションする。成形加工時における加飾シート20の伸びは、シミュレーションにより予測される。ステップS83でのシミュレーションは、成形加工後の加飾部材10に関する三次元CAD設計データに基づいて、第2計算部62によって、実施されてもよい。シミュレーションには、成形加工に用いられる型の三次元CADデータに加え、成形加工時の加工条件や加飾シート20の物性データも考慮され得る。成形加工時における伸びを考慮して成形加工後の加飾部材10をシミュレーションするにあたって、成形加工時における伸びをシミュレーションする操作と、伸びのシミュレーションの結果を用いて加飾部材10をシミュレーションする操作を行う場合、前者の操作をステップS82以前に行っていてもよい。
【0109】
ステップS84において、第2計算部62は、伸びのシミュレーション結果から、各層についての情報を修正する。第2計算部62は、トップ層D11についての反射特性に関する情報を修正してもよい。修正される反射特性に関する情報は、トップ層D11についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報と、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報と、法線の方向に関する情報と、の一以上を含んでもよい。
【0110】
ステップS84において、第2計算部62は、伸びのシミュレーション結果から、意匠層D12についての、色に関する情報および透過特性に関する情報の一以上を修正してもよい。第2計算部62は、伸びのシミュレーション結果から、樹脂層D13についての、色に関する情報および透過特性に関する情報の一以上を修正してもよい。
【0111】
ステップS83及びステップS84により、成形加工時における加飾シート20の伸びを考慮することによって、加飾部材10の画像データを高精度に生成できる。
【0112】
ステップS85において、第1計算部61は、加飾部材10に含まれる各層の情報を用いて、加飾部材10の画像データを生成する。図1Bに示された加飾部材10を対象とする場合、第1計算部61は、トップ層D11に関する第1情報、意匠層D12に関する第2情報、樹脂層D13に関する第3情報、及び成形部15に関する第4情報を、画像データの生成に用いてもよい。複数の情報を用いた画像データの生成方法の一例を以下に説明する。
【0113】
加飾部材10の主たる意匠構成要素となる意匠層D12に関する第2情報を用いて、第1中間画像データを作成する。第1中間画像データは、意匠層D12の作製に用いられる印刷版の設計データに基づき、作製され得る。意匠層がCMYK等の複数色の加法混色によって表現される場合、第1画像データは、各色用の印刷版の設計データを用いて、作製されてもよい。また、第1画像データは、カラー層の設計データ、質感表現のための印刷版の設計データを用いて作成されていてもよい。このようにして、一具体例として、図9A示された画像を表示する第1中間画像データが生成される。
【0114】
次に、第2情報のうちの意匠層D12についての透過特性に関する情報を考慮しつつ、樹脂層D13についての第3情報を用いて図9Aに示された第1中間画像データを修正する。これにより、図9Bに示された画像を表示する第2中間画像データが生成される。
【0115】
その後、第3情報のうちの樹脂層D13についての透過特性に関する情報を考慮しつつ、成形部15についての第4情報を用いて図9Bに示された第2中間画像データを修正する。これにより、図9Cに示された画像を表示する第3中間画像データが生成される。
【0116】
次に、トップ層D11に関する第1情報を用いて、図9Cに示された第3中間画像データを修正する。これにより、図10に示された画像を表示する画像データが生成される。図10に示された画像を表示する画像データは、第1情報、第2情報、第3情報、及び第4情報を用いて作製されている。すなわち、得られた画像データは、加飾部材10の厚み方向である第3方向D3の構成を考慮して、生成されている。したがって、複数の層の組合せにより豊かな意匠表現を実現する加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0117】
ここで、図9A図9C図10、及び後に参照する図16は、図1Aにおいて点線Aで囲まれた領域を面10aから観察した画像に相当する。
【0118】
なお、図1Bに示された加飾部材10の第2層22は、基材D12B及び絵柄層D12Aを含む意匠層D12である。意匠層D12についての第2情報は、絵柄層D12Aについての情報とし、基材D12Bについての情報を無視してもよい。基材D12Bが有色である場合には、取得部50は、基材D12Bに関する情報を第5情報として取得してもよい。この例において、計算部60は、第1情報、第2情報、第3情報、第4情報、及び第5情報を用いて画像データを生成してもよい。
【0119】
ステップS86において、観察条件を変更すべきか否かが判断される。基準となる観察条件における加飾部材10の画像を生成する場合は「NO」であり、ステップS85で生成されたデータが最終的な画像データとなる。所望する観察条件における加飾部材10の画像を生成したい場合は「YES」であり、ステップS87に進む。
【0120】
ステップS87において、取得部50は、環境光の光源と加飾部材10との相対位置に関する情報、観察者と加飾部材10との相対位置に関する情報、及び環境光の光源および観察者に対する加飾部材10の向きに関する情報を、取得する。取得部50に取得される環境光や観察者に関連した情報は、入力部42を用いて操作者によって入力されてもよい。ステップS88において、第3計算部63は、取得部50の観察条件情報部に格納された観察条件と、さらに、加飾部材10に含まれる各層についての情報、例えば反射特性に関する情報と、に基づき、ステップS85において生成された画像データを修正する。ステップS87及びステップS88を経ることにより、対象となる加飾部材10に想定される使用環境に応じて、加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0121】
以上に説明してきた一実施の形態において、シミュレーション装置40および画像データの生成方法は、第1層21及び第2層22を含む加飾部材10の画像データを生成する。シミュレーション装置40は、第1層21に関する第1情報及び第2層22に関する第2情報を取得する取得部50と、第1情報及び第2情報を用いて加飾部材10の画像データを生成する計算部60と、を含む。画像データの生成方法は、第1層21に関する第1情報及び第2層22に関する第2情報を取得部50に取得する工程と、第1情報及び前記第2情報を用いて加飾部材10の画像データを計算部60によって生成する工程と、を含む。第1情報は、第1層21についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む。第2情報は、第2層についての、色に関する情報、透過特性に関する情報、反射特性に関する情報、及び高さに関する情報の一以上を含む。本実施の形態によれば、加飾部材10の第1層についての第1情報及び第2層についての第2情報を用いて、画像データが生成される。第1層および第2層は、加飾部材10の厚み方向に重ねられている。したがって、得られた画像データは、加飾部材10の厚み方向の構成を考慮して、生成されている。これにより、複数の層の組合せによる豊かな意匠表現を実現する加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0122】
ところで、本実施の形態において、画像データの対象となる加飾部材10は、図1Bに示された例に限定されない。そして、上述したように、第1情報及び第2情報を用いることにより、種々の構成を有する加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。以下、図11図16を参照して、画像データの生成対象となり得る加飾部材10の他の例、及び当該加飾部材10の例について画像データの生成に用いられ得る情報について説明する。図11図15は、図1Bと同様に図1Aにおいて点線Aで囲まれた領域を示す拡大断面図である。図16は、図10と同様に図1Aにおいて点線Aで囲まれた領域を示す平面図である。
【0123】
図11に示された例において、加飾部材10は、第1層21、第2層22、第3層23、及び第4層24を含む。図11に示された加飾部材10は、第1層21であるトップ層D11においてのみ、図1Bに示された加飾部材10と異なる。図11に示された加飾部材10は、第2層22、第3層23及び第4層24において、図1Bに示された加飾部材10と同一に構成され得る。
【0124】
図11に示された例において、第1層21であるトップ層D11は、第2層22である意匠層D12の一部分上のみに配置されている。意匠層D12は、部分的にトップ層D11によって覆われている。図11に示された例における、トップ層D11が存在しない領域において、トップ層D11の高さを「0」とし、トップ層D11の透過率を100%とし、トップ層D11の反射率を0%としてもよい。図11に示された加飾部材10について、トップ層D11についての第1情報は、反射特性に関する情報及び高さに関する情報を含んでもよい。この例によれば、複数の層の組合せにより豊かな意匠表現を実現する加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0125】
トップ層D11の反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報、及び法線の方向に関する情報、の一以上を含んでもよい。トップ層D11の高さに関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎の情報としてもよい。トップ層D11が有色の場合、第1情報は、トップ層D11の色に関する情報を取得してもよい。
【0126】
図11に示された例において、第2層22に関する第2情報は、意匠層D12の色に関する情報を含んでもよい。意匠層D12についての第2情報は、意匠層D12の透過特性に関する情報を含んでもよい。透過特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎の情報としてもよい。意匠層D12についての第2情報は、反射特性に関する情報を含んでもよい。反射特性に関する情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎の情報としてもよい。意匠層D12が金属光沢を有する場合や意匠層D12がパール顔料等の光輝色材を含む場合、意匠層D12についての反射特性に関する情報は、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報を含んでもよい。
【0127】
図11に示された加飾部材10の樹脂層D13についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる樹脂層D13についての情報と同一でもよい。図11に示された加飾部材10の成形部15についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる成形部15についての情報と同一でもよい。
【0128】
ところで、図11に示された加飾部材10において、第1層21であるトップ層D11は、第1トップ層D11A及び第2トップ層D11Bを含んでいる。第1トップ層D11A及び第2トップ層D11Bは、最表面である面10aに向けてこの順にて、意匠層D12に重ねられている。第1トップ層D11A及び第2トップ層D11Bは、含有する粒子の相違等に起因して、異なる反射特性を有してもよいし、異なる透過特性を有してもよい。この例によれば、トップ層D11の反射特性は、第1トップ層D11Aが面10aを構成している領域又は画素と、第2トップ層D11Bが面10aを構成している領域又は画素と、の間で異なる。トップ層D11の各領域又は各画素における反射特性に関する情報は、第1トップ層D11A及び第2トップ層D11Bの配置に基づいて作製されてもよい。トップ層D11の各領域又は各画素における反射特性に関する情報は、第1トップ層D11Aの作製に用いられる印刷版の、及び第2トップ層D11Bの作製に用いられる印刷版に基づいて作製されてもよい。
【0129】
図12に示された例において、加飾部材10は、第1層21、第2層22、第3層23、及び第4層24を含む。図12に示された加飾部材10において、第2層22である意匠層D12は凹凸面D12Sを含む。第1層21であるトップ層D11は、意匠層D12を覆っている。トップ層D11は、凹凸面D12Sの凹凸を埋めて、平坦化した面10aを形成している。すなわち、トップ層D11の表面である面10aの高さの高低差は、凹凸面D12Sの高さの高低差よりも小さくてもよい。高低差は、対象となる面の高さを任意に20箇所測定し、20箇所での測定値のうちの高い方から5番目に高さと低い方から5番目に低い高さとの差(μm)を、対象となる面での高低差とする。
【0130】
図12に示された例において、第1層21であるトップ層D11についての第1情報は、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含んでもよい。第1情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎の情報としてもよい。第2層22である意匠層D12についての第2情報は、色に関する情報及び高さに関する情報を含んでもよい。第2情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎の情報としてもよい。これらの第1情報および第2情報を用いることによって、加飾部材10の奥行き感を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0131】
トップ層D11についての反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報、及び法線の方向に関する情報、の一以上を含んでもよい。意匠層D12についての第2情報は、反射特性に関する情報を更に含んでもよい。意匠層D12についての反射特性に関する情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎の情報としてもよい。意匠層D12が金属光沢を有する場合や意匠層D12がパール顔料等の光輝色材を含む場合、意匠層D12の反射特性に関する情報は、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報を取得してもよい。これらの例によれば、トップ層D11での反射と、意匠層D12での反射と、の区別をより明確にできるので、加飾部材10の奥行き感を強調できる。
【0132】
図12に示された加飾部材10の樹脂層D13についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる樹脂層D13についての情報と同一でもよい。図12に示された加飾部材10の成形部15についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる成形部15についての情報と同一でもよい。
【0133】
図13に示された加飾部材10は、図12に示された加飾部材10と同様に、第2層22である意匠層D12が凹凸面D12Sを有する。第1層21であるトップ層D11は、凹凸面D12Sの凹凸を埋めて平坦化している。図13に示された加飾部材10は、図12に示された加飾部材10と、意匠層D12の凹凸面D12Sがレンズ機能を有する点において異なり、その他において図12に示された加飾部材10と同一に構成され得る。図13に示された例のように、意匠層D12はフレネルレンズを構成してもよい。フレネルレンズはサーキュラーフレネルレンズでもよい。フレネルレンズはリニアフレネルレンズでもよい。意匠層D12は凹レンズを構成してもよい。意匠層D12は凸レンズを構成してもよい。意匠層D12は、複数のレンズを含んでもよい。図13及び後述の図14に示された例において、意匠層D12は複数のレンズを含み、領域Bの範囲に一つのレンズが構成されている。図13に示された加飾部材10は、トップ層D11及び意匠層D12に加えて、第3層23である樹脂層D13及び第4層24である成形部15を含んでもよい。
【0134】
第2層22である意匠層D12についての第2情報は、高さに関する情報のみとしてもよい。高さに関する情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。高さに関する情報を用いることによって、レンズ機能を十分に表現した画像を表示可能な画像データを生成できる。
【0135】
第2層22である意匠層D12についての第2情報は、高さに関する情報に加え、色に関する情報を含んでもよい。色に関する情報を用いることによって、樹脂層D13が色を用いて表現された意匠を有する例において、加飾部材10を高精度に表示可能な画像データを生成できる。意匠層D12についての色に関する情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。
【0136】
図13に示された加飾部材10のトップ層D11についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれるトップ層D11についての情報と同一でもよい。図12に示された例と同様に、トップ層D11についての情報は、色に関する情報、透過特性に関する情報、及び反射特性に関する情報を含んでもよい。トップ層D11についての情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。トップ層D11についての反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報、及び法線の方向に関する情報、の一以上を含んでもよい。この例によれば、トップ層D11での反射と、意匠層D12での反射と、の区別をより明確にできるので、加飾部材10の奥行き感を強調できる。
【0137】
図13に示された加飾部材10の樹脂層D13についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる樹脂層D13についての情報と同一でもよい。図13に示された加飾部材10の成形部15についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる成形部15についての情報と同一でもよい。
【0138】
図14に示された加飾部材10は、図13に示された加飾部材10と同様に、第2層22である意匠層D12が凹凸面D12Sを有する。図14に示された加飾部材10の意匠層D12は、図13に示された加飾部材10の意匠層D12と同様に構成され得る。第1層21であるトップ層D11は、意匠層D12を覆っている。図13に示された加飾部材10と異なり、図14に示された加飾部材10のトップ層D11の厚みは、凹凸面D12Sの高低差より小さい。図14に示された加飾部材10のトップ層D11は、凹凸面D12Sの凹凸に沿うように薄く広がっている。トップ層D11によって構成される加飾部材10の最表面となる面10aは、凹凸面D12Sの凹凸に対応した凹凸を有している。
【0139】
図14に示された加飾部材10の意匠層D12についての情報は、上述した図13に示された加飾部材10に含まれる意匠層D12についての情報と同一でもよい。第2層22である意匠層D12についての第2情報は、高さに関する情報のみとしてもよい。高さに関する情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。高さに関する情報を用いることによって、レンズ機能を十分に表現した画像を表示可能な画像データを生成できる。
【0140】
図14に示された加飾部材10のトップ層D11についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれるトップ層D11についての情報と同一でもよい。トップ層D11についての情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。トップ層D11についての情報は、色に関する情報及び反射特性に関する情報を含んでもよい。トップ層D11についての反射特性に関する情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての、マット感の強弱として表現される拡散反射性の程度に関する情報、グロス感の強弱として表現される鏡面反射性または鏡面光沢度の程度に関する情報、及び法線の方向に関する情報、の一以上を含んでもよい。トップ層D11についての情報は、透過特性に関する情報及び高さに関する情報の一以上を含んでもよい。
【0141】
図14に示された加飾部材10の樹脂層D13についての情報は、上述した図13に示された加飾部材10に含まれる樹脂層D13についての情報と同一でもよい。図14に示された加飾部材10の成形部15についての情報は、上述した図13に示された加飾部材10に含まれる成形部15についての情報と同一でもよい。
【0142】
図15に示された加飾部材10は、最表面である面10aからの順で、トップ層D11、意匠層D12、樹脂層D13、第2意匠層D14、成形部15を含んでいる。図15に示された加飾部材10におけるトップ層D11、意匠層D12、樹脂層D13、及び成形部15は、それぞれ、図1Bに示された加飾部材10におけるトップ層D11、意匠層D12、樹脂層D13、及び成形部15と同一に構成され得る。
【0143】
図15に示された例において、加飾部材10の背後に光源D15が配置されている。加飾部材10の背後とは、加飾部材10の最表面である面10aとは反対側となる面10bに対面する位置を意味する。この例において、加飾部材10は、光源D15との組合せにおいて、加飾システム5を構成する。光源D15は光を放出する。光源D15は、可視光を放出する発光素子でもよい。光源D15は、発光ダイオードでもよい。第2意匠層D14は、透過部D14A及び遮光部D14Bを含む。透過部D14Aは、光源D15からの光を透過可能である。遮光部D14Bは、光源D15からの光を遮光可能である。
【0144】
この加飾システム5において、光源D15が消灯している場合、第2意匠層D14は、意匠層D12によって隠蔽される。すなわち、第2意匠層D14における透過部D14Aのパターンは、意匠層D12によって観察され得ない。光源D15の非点灯状態、すなわち消灯状態では、図10に示すように、加飾部材10の意匠が観察される。一方、光源D15の点灯状態において、第2意匠層D14は、透過部D14Aにおいて光を透過し、遮光部D14Bbにおいて遮光する。したがって、図16に示すように、透過部D14Aのパターンが加飾部材10の面10a上に観察される。図16は、図10に対応する図であって、加飾部材10を示す平面図である。図16に示された例では、「○」、「□」、及び「×」のパターンが、加飾部材10上に表示されている。このように、加飾部材10は、背後に配置された光源D15の点灯及び非点灯の切り替えにより異なる意匠を表示できる。
【0145】
遮光部D14Bは、可視光遮光性を有している。遮光部D14Bは、黒色顔料を含有した樹脂によって形成されてもよい。透過部D14Aは、透過部D14Aを構成し得る可視光遮光性パネルに形成された開口部でもよい。透過部D14Aは透明な部分でもよい。透過部D14Aのパターンは、表示したい画像のパターンと同一となる。「透明」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。「可視光遮光性」とは、可視光透過率が、3%未満であることを意味し、好ましくは1%以下である。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に入射角0°で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
【0146】
図15及び図16に示された加飾部材10について、意匠層D12を第1層21とすると、第1情報は、光源D15の非点灯時に観察可能な意匠を表示する意匠層D14についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む。意匠層D12についての情報は、意匠層D12の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。第2意匠層D14を第2層とすると、第2情報は、光源D15の点灯時に観察可能なパターンに対応した透過部D14Aを含み意匠層D12と光源D15との間に位置する第2意匠層D14についての、色に関する情報及び透過特性に関する情報を含む。第2意匠層D14についての情報は、第2意匠層D14の領域毎または画素毎についての情報としてもよい。これらの第1情報及び第2情報を用いることによって、光源D15に動作切り替えによって観察される加飾部材10上の各意匠を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0147】
取得部50は、加飾部材10に含まれる各層についての情報に加え、光源D15に関する情報も取得してもよい。光源D15に関する情報は、光源D15から放出される光の強度、光源D15から放出される光の強度の角度分布、光源D15から放出される光の波長等を含んでもよい。取得部50に取得される光源D15に関する情報は、入力部42を用いて操作者によって入力されてもよい。取得部50の情報記憶部51は光源情報部51Iを含んでもよい。取得部50が取得した光源D15に関する情報は、光源情報部51Iに少なくとも一時的に記憶されてもよい。計算部60は、加飾部材10に含まれる各層についての情報と、取得部50に取得された光源D15に関する情報と、を用いて、画像データを生成してもよい。
【0148】
図15及び図16に示された加飾部材10の画像データを生成する際、この加飾部材10のトップ層D11についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれるトップ層D11についての情報と同一でもよい。トップ層D11についての情報は、トップ層D11の領域毎または画素毎についての透過特性に関する情報を含んでもよい。図15及び図16に示された加飾部材10の樹脂層D13についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる樹脂層D13についての情報と同一でもよい。樹脂層D13についての情報は、樹脂層D13の領域毎または画素毎についての透過特性に関する情報を含んでもよい。図15及び図16に示された加飾部材10の成形部15についての情報は、上述した他の加飾部材10に含まれる成形部15についての情報と同一でもよい。成形部15についての情報は、成形部15の領域毎または画素毎についての透過特性に関する情報を含んでもよい。樹脂層D13及び成形部15の透過特性に関する情報を用いることによって、光源を点灯した際に観察される加飾部材10上の意匠を高精度に表示可能な画像データを生成できる。
【0149】
上述してきたシミュレーション装置40及び画像データの生成方法を、加飾部材10の製造者と加飾部材10の評価者との間での意匠の評価に利用可能である。一例として、評価方法は、成形加工前における加飾部材の第1画像データを生成する工程と、第1画像データの評価結果を受領した後に、計算部60によって、成形加工時における伸びを考慮して第1情報および第2情報の一以上を修正し、且つ、修正された情報を用いて第2画像データを生成する工程と、を含んでもよい。評価方法は、第1画像データの評価結果を受領する工程を含んでもよい。評価方法は、第2画像データの評価結果を受領する工程を含んでもよい。評価者は、シミュレーション装置40とは別個の端末を用いて、第1画像データの評価結果を、加飾部材10の製造者が所有するシミュレーション装置40に送信してもよい。評価者は、シミュレーション装置40とは別個の端末を用いて、第2画像データの評価結果を、加飾部材10の製造者が所有するシミュレーション装置40に送信してもよい。
【0150】
第1画像データを生成する工程は、第1層21に関する第1情報及び第2層22に関する第2情報を取得部50によって取得する工程と、第1情報及び第2情報を用いて成形加工前の加飾部材10の第1画像データを計算部60によって生成する工程と、を含んでもよい。第1情報及び第2情報等の加飾部材10に含まれる各層に関する情報は、上述した取得部50によって取得されるいずれかの情報としてもよい。第1画像データは、上述したいずれかのようにして、第1情報及び第2情報等の加飾部材10に含まれる各層に関する情報を用いて生成される。第1画像データを生成する工程は、図8におけるステップS81及びステップS85を含んでもよい。
【0151】
計算部60は、成形加工時における伸びを考慮した第1情報および第2情報の一以上を修正する。成形加工時における伸びは、上述したように、計算部60がシミュレーションしてもよいし、外部の装置がシミュレーションした伸びを参照してもよい。計算部60による伸びのシミュレーションは、図8におけるステップS83でもよい。情報の修正は、計算部60によって、上述のように実施される。修正される情報は、上記にて例示したように、加飾部材10に含まれるいずれの層についての情報でもよい。修正される情報は、加飾部材10に含まれる伸びの影響を受ける層としてもよい。計算部60による情報の修正は、図8におけるステップS84でもよい。
【0152】
このような意匠評価方法を、加飾部材10の製造方法に組み入れてもよい。加飾部材の製造方法は、評価方法によって得られる第2画像データの評価結果を受領する工程と、
第2画像データの評価結果を受領した後に、加飾部材を製造する工程と、を含んでもよい。第2画像データで対象とした成形加工済みの加飾部材が製造される。
【符号の説明】
【0153】
5:加飾システム、10:加飾部材、10a:面、10b:面、15:成形部、20:加飾シート、21:第1層、22:第2層、23:第3層、24:第4層、D11:トップ層、D11A:第1トップ層、D11B:第2トップ層、D12:意匠層、D12A:絵柄層、D12B:基材、D12S:凹凸面、D13:樹脂層、D14:第2意匠層、D14A:透過部、D14B:遮光部、D15:光源、30:成形型、30C:キャビティ、31:雌型、31S:雌型面、32:雄型、32S:雄型面、33:吸引孔、34:クランプ、35:ヒータ、40:シミュレーション装置、41:表示部、42:入力部、43:記憶部、43X:記憶媒体、44:通信部、45:画像データ生成部、50:取得部、51:情報記憶部、51A:色情報部、51B:透過特性情報部、51C:反射特性情報部、51D:高さ情報、51E:トップ層情報部、51F:意匠層情報部、51G:樹脂層情報部、51H:第2意匠層情報部、51I:光源情報部、51J:観察条件情報部、60:計算部、61:第1計算部、62:第2計算部、63:第3計算部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16