(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064838
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】振戦検出装置
(51)【国際特許分類】
B60K 28/06 20060101AFI20240507BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20240507BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20240507BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60K28/06 Z
B60W40/08
B60W30/18
A61B5/11 120
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173746
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆修
(72)【発明者】
【氏名】小松 新始
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
4C038
【Fターム(参考)】
3D037FA11
3D037FB01
3D037FB05
3D037FB09
3D241BA70
3D241CC01
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3D241CE02
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA58Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB12Z
3D241DD04Z
4C038VA04
4C038VA05
4C038VB14
4C038VB35
(57)【要約】
【課題】運転者の振戦を精度良く検出可能な振戦検出装置を提供すること。
【解決手段】
車両に設けられ、車両を運転する運転者の振戦に応じた検出信号を出力する振戦検出部SB、SA、SSからの検出信号に基づいて、運転者の振戦を検出する振戦検出装置は、検出信号を解析して検出信号の周波数を算出する信号解析部11と、信号解析部が算出する周波数が、振戦の発生を判定するために予め定められた周波数帯域である規定幅内であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する振戦判定部12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、前記車両を運転する運転者の振戦に応じた検出信号を出力する振戦検出部(SB、SA、SS)からの前記検出信号に基づいて、前記運転者の振戦を検出する振戦検出装置であって、
前記検出信号を解析して前記検出信号の周波数を算出する信号解析部(11)と、
前記信号解析部が算出する周波数が、振戦の発生を判定するために予め定められた周波数帯域である規定幅内であるか否かに基づいて、前記運転者の振戦の発生を判定する振戦判定部(12)と、を備える振戦検出装置。
【請求項2】
前記振戦判定部は、前記規定幅のうち、振戦を発生させる要因となる疾患に対応する周波数帯域である疾患周波数を記憶しており、前記信号解析部が算出する周波数が前記疾患周波数の範囲に含まれるか否かに基づいて、前記疾患を推定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項3】
前記振戦判定部と相互通信可能であって、前記振戦判定部によって振戦と判定された前記運転者の情報と、前記運転者において前記振戦判定部が推定した前記疾患の情報とを紐づけした疾患情報を記憶可能な記憶部(14)を備え、
前記振戦判定部は、前記運転者に振戦が発生していると判定した際に、前記記憶部に過去の疾患情報が記憶されている場合、前記運転者に治療を促す通知を行う請求項2に記載の振戦検出装置。
【請求項4】
前記信号解析部は、前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する振幅が大きいほど前記運転者の振戦の重症度を重症と判定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項5】
前記振戦判定部は、前記車両の外部に設けられた複数の外部装置に判定した振戦の情報を送信可能であって、判定した前記運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更する請求項4に記載の振戦検出装置。
【請求項6】
前記振戦判定部は、前記車両のエンジンの動作および前記車両を制動させる制動力を制御可能であって、判定した前記運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および前記制動力のうち、少なくとも一方を変化させて前記車両の動作を制御する請求項4に記載の振戦検出装置。
【請求項7】
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する周波数が、時間の経過に伴い小さくなると判定する場合、前記運転者の振戦の重症度が進行していると判定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項8】
前記信号解析部は、前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する振幅が、時間の経過に伴い大きくなると判定する場合、前記運転者の振戦の重症度の進行を判定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項9】
前記信号解析部は、前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記検出信号の振幅の大きさが振戦に起因するか否かを判定する閾値を記憶しており、前記信号解析部が算出する振幅が前記閾値以上であるか否かに基づいて、前記運転者の振戦の発生を判定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項10】
前記振戦判定部は、振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれであるかを特定するための情報として、前記運転者の運転状況である判定シーンを記憶しており、前記運転者に振戦が発生していると判定した際の前記判定シーンに基づいて、前記運転者に発生している振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれであるかを特定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項11】
前記振戦検出部は、前記車両に複数設けられており、
前記信号解析部は、複数の前記振戦検出部が出力する前記検出信号それぞれを解析して、複数の前記検出信号の周波数を算出し、
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する複数の前記検出信号の周波数のうち、前記規定幅内である周波数の数量に基づいて、前記運転者に発生している振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれであるかを特定する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項12】
前記車両には、前記運転者が操作する操作部および前記操作部に振動を発生させる振動発生部が設けられており、
前記振戦検出部は、前記操作部に設けられており、
前記信号解析部は、前記振動発生部が前記操作部に発生させる振動を除去して前記検出信号の周波数を算出する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項13】
前記振戦判定部は、前記車両の外部に設けられたサーバおよびクラウドの少なくとも一方に判定した振戦の情報を送信可能であって、前記運転者に振戦が発生していると判定する場合、前記信号解析部が算出する周波数の情報を前記サーバおよびクラウドに送信する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項14】
前記車両には、前記車両が走行する際の外部要因に起因する振動を検出する走行振動検出部(SV)が設けられており、
前記信号解析部は、前記走行振動検出部が検出する振動を除去して前記検出信号の周波数を算出する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項15】
前記車両には、前記運転者が操作する操作部および前記車両が走行する際に前記車両自身が発生させる振動を検出する自身振動検出部(SR、ST)が設けられており、
前記信号解析部は、前記自身振動検出部が検出する振動を除去して前記検出信号の周波数を算出する請求項1に記載の振戦検出装置。
【請求項16】
前記車両には、前記運転者が操作する操作部が設けられており、
前記振戦検出部は、前記操作部に設けられており、
前記振戦判定部は、前記運転者が前記車両のエンジンを開始する操作を行った際、前記運転者に前記操作部への操作を指示するとともに、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記信号解析部が算出する周波数に基づいて前記運転者の振戦の発生を判定し、前記運転者に振戦が発生していると判定した場合、前記車両のエンジンの動作を開始させず、前記運転者に振戦が発生していると判定しない場合、前記車両のエンジンの動作を開始させる請求項1ないし15のいずれか1つに記載の振戦検出装置。
【請求項17】
前記車両には、前記操作部が複数設けられており、
前記振戦判定部は、前記運転者に対して、複数の前記操作部それぞれに異なるタイミングで操作を指示するとともに、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を複数の前記操作部それぞれに異なるタイミングで行った際に前記信号解析部が算出する複数の周波数に基づいて前記運転者の振戦の発生を判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項18】
前記車両には、前記操作部が複数設けられており、
前記振戦判定部は、前記運転者に対して、複数の前記操作部それぞれに同時に操作を指示するとともに、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を複数の前記操作部に同時に行った際に前記信号解析部が算出する複数の周波数に基づいて前記運転者の振戦の発生を判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項19】
前記車両には、前記運転者の操作に応じて前記操作部に反力を発生させる反力発生装置が設けられており、
前記振戦判定部は、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記反力発生装置が発生させる反力を、前記車両が走行している際に前記反力発生装置が発生させる反力から変化させる請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項20】
前記振戦判定部は、前記規定幅のうち、振戦を発生させる要因となる疾患に対応する周波数帯域である疾患周波数を記憶しており、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記信号解析部が算出する周波数が前記疾患周波数の範囲に含まれるか否かに基づいて、前記疾患を推定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項21】
前記振戦判定部と相互通信可能であって、前記振戦判定部によって振戦と判定された前記運転者の情報と、前記運転者において前記振戦判定部が推定した前記疾患の情報とを紐づけした疾患情報を記憶可能な記憶部(14)を備え、
前記振戦判定部は、前記運転者に振戦が発生していると判定した際に、前記記憶部に過去の疾患情報が記憶されている場合、前記運転者に治療を促す通知を行う請求項20に記載の振戦検出装置。
【請求項22】
前記信号解析部は、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記振戦検出部が出力する前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する振幅が大きいほど前記運転者の振戦の重症度を重症と判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項23】
前記振戦判定部は、前記車両の外部に設けられた複数の外部装置に判定した振戦の情報を送信可能であって、判定した前記運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項24】
前記振戦判定部は、前記車両を制動させる制動力を制御可能であって、判定した前記運転者の振戦の重症度に応じて、前記制動力を変化させて前記車両の動作を制御する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項25】
前記振戦判定部は、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記信号解析部が算出する周波数が、時間の経過に伴い小さくなると判定する場合、前記運転者の振戦の重症度が進行していると判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項26】
前記信号解析部は、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記振戦検出部が出力する前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記信号解析部が算出する振幅が、時間の経過に伴い大きくなると判定する場合、前記運転者の振戦の重症度の進行を判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項27】
前記信号解析部は、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記振戦検出部が出力する前記検出信号を解析して前記検出信号の振幅を算出し、
前記振戦判定部は、前記検出信号の振幅の大きさが振戦に起因するか否かを判定する閾値を記憶しており、前記信号解析部が算出する振幅が前記閾値以上であるか否かに基づいて、前記運転者の振戦の発生を判定する請求項16に記載の振戦検出装置。
【請求項28】
前記振戦判定部は、前記車両の外部に設けられたサーバおよびクラウドの少なくとも一方に判定した振戦の情報を送信可能であって、前記運転者が前記振戦判定部から指示された操作を前記操作部に行った際に前記信号解析部が算出する周波数に基づいて前記運転者に振戦が発生していると判定する場合、前記信号解析部が算出する周波数の情報を前記サーバおよびクラウドに送信する請求項16に記載の振戦検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振戦検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の状態を特定する特定部と、運転者の異常パターンを取得する異常パターン取得部と、運転者の状態が異常パターンに対応する状態を示している場合に車両を停止させる走行制御部と、を有する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両制御装置は、運転者の操作状態を、異常パターンテーブルが示す状態と比較することにより、運転者に例えば、てんかん等の特定の発作が発生したことを検出する。
【0003】
特許文献1には、運転者の操作状態の異常パターンの例として、運転者の右半身および左半身が硬直してハンドル等の操作ができない場合や、運転者に痙攣が発生し、ハンドル等が振動する場合などが示されている。そして、特許文献1には、運転者の手足等の動きを撮像するカメラ、ハンドルの操作量を検出する角度センサ、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作量を検出するセンサ等によって運転者の状態が検出されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の走行中においては、車両には走行に伴う振動が発生する。このため、カメラやハンドルの操作量を検出する角度センサ、アクセルペダル及びブレーキペダルの操作量を検出するセンサによって運転者の痙攣を検出すると、走行に伴う振動によって運転者の痙攣を精度良く検出できない虞がある。
【0006】
また、運転者が正常に車両を運転することができなくなる状態として、てんかん以外にも神経難病がある。神経難病は、てんかんに比較して多くの交通事故の発生要因となっている。そして、この神経難病は、運転者に無意識的な振動である振戦を発生させる症状を伴う場合がある。このため、走行に伴う振動が発生している状況下においても、振戦に起因する運転者の振動を精度良く検出することで運転者の振戦の発生を検出可能な振戦検出装置が求められる。
【0007】
本開示は、運転者の振戦を精度良く検出可能な振戦検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
車両に設けられ、車両を運転する運転者の振戦に応じた検出信号を出力する振戦検出部(SB、SA、SS)からの検出信号に基づいて、運転者の振戦を検出する振戦検出装置であって、
検出信号を解析して検出信号の周波数を算出する信号解析部(11)と、
信号解析部が算出する周波数が、振戦の発生を判定するために予め定められた周波数帯域である規定幅内であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する振戦判定部(12)と、を備える。
【0009】
これによれば、振戦検出装置は、走行に伴う振動が発生している状況下においても、規定幅内であるか否かに基づいて運転者の振戦の発生を判定することで、運転者の振戦を精度良く検出することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る振戦検出装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る信号検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】振戦の振幅の大きさと振戦の重症度との関係を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る振戦検出装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図6】第2実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の変形例に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第4実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第5実施形態に係る振戦検出装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図11】第5実施形態に係る信号検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】第6実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】第7実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第7実施形態に係る信号検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第7実施形態に係る振戦判定部が運転者へ指示する指示内容および操作指示に応じた検出値を示す図である。
【
図16】第8実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】第8実施形態の変形例に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】第9実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】第9実施形態に係る信号検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】第9実施形態に係る振戦判定部が運転者へ指示する第1操作指示および第1操作指示に応じた検出値を示す図である。
【
図21】第9実施形態に係る振戦判定部が運転者へ指示する第2操作指示および第2操作指示に応じた検出値を示す図である。
【
図22】第10実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図23】第10実施形態に係る信号検出部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図24】第10実施形態に係る振戦判定部が運転者へ指示する第1操作指示および第1操作指示に応じた検出値を示す図である。
【
図25】第10実施形態に係る振戦判定部が運転者へ指示する第2操作指示および第2操作指示に応じた検出値を示す図である。
【
図26】第11実施形態に係る振戦検出装置を含む車両制御システムの概略構成図である。
【
図27】第11実施形態に係る操作部に加えられる荷重と反力発生装置が出力する反力との関係を示す図である。振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図28】第12実施形態に係る振戦判定部が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態の振戦検出装置は、例えば、自動車の走行を制御する車両制御システム100に用いられる。車両制御システム100は、例えば、車両の動力を出力するエンジンの作動のオン/オフ、車両の走行速度、自車両と自車両の前方を走る前方車両との車間距離等を制御するためのものである。車両制御システム100は、
図1に示すように、振戦に関する情報を検出する振戦検出部S1と、車両の挙動に関する情報を検出する挙動検出部S2と、振戦検出部S1および挙動検出部S2が検出する情報に基づいて各種構成機器を制御する制御装置1とを有する。この制御装置1は、ECUと呼ばれる車両演算部であって、本実施形態では、運転者の振戦を検出する振戦検出装置としても機能する。なお、ECUはElectronic Control Unitの略である。
【0014】
また、本実施形態の車両制御システム100は、制御装置1が検出した振戦結果を表示するディスプレイ20と、制御装置1が検出した振戦に関する情報を車両制御システム100の外部に設けられた装置へ送信する通信部30とを備える。さらに、車両制御システム100は、車両を走行させるための動力を出力するエンジンおよび車両を制動する際の制動力を制御するブレーキ装置等を含む駆動部40を有する。
【0015】
ここで、振戦とは、人の身体部位における、目に見えない程度または僅かに視認可能な程度の大きさ(例えば、1mm)の微少な振幅で、所定の周波数(例えば、4~12Hz)で振動する無意識的な震えのことをいう。人に振戦が発生すると、人は、例えば、手や足などの部位が付随意に振動する。
【0016】
また、振戦には、主に身体が安静した状態であって、筋肉が安静な状態にあるときに起こる安静時振戦と、腕または足をいっぱいに伸ばしてある位置に保持するなど、腕または足を重力に逆らった姿勢としたときに起こる姿勢時振戦とがある。さらに、振戦には、腕などを目標物へ向かって動かすなど、人が何らかの動作をとったときに起こる企図振戦と、原因不明の震えの症状が起こる本態性振戦とがある。本態性振戦は、例えば、人がコップを持ったり字を書いたりする場合に手が震える等の症状を発生させたり、頭や首が震える等の症状を発生させたりする。本実施形態の振戦検出装置、すなわち、制御装置1は、車両を運転する運転手や車両の運転を開始しようとする運転者にこれら各種振戦が発生している場合、その振戦を検出する。
【0017】
振戦検出部S1は、振戦に関する情報であって、運転者が操作する操作部に加えられる操作に関する情報を検出するブレーキペダルセンサSBと、アクセルペダルセンサSAと、ステアリングセンサSSと、を含む。
【0018】
ブレーキペダルセンサSBは、運転者の足によって踏まれる不図示のブレーキペダルに設けられており、運転者に踏まれることによって変位するブレーキペダルのストロークを検出するストロークセンサである。また、ブレーキペダルセンサSBは、運転者がブレーキペダルを意図的に踏むことによって変位するブレーキペダルの変位量に加えて、運転者に振戦が発生して足が付随意に振動することによって変位するブレーキペダルの変位量を検出する。
【0019】
アクセルペダルセンサSAは、運転者の足によって踏まれる不図示のアクセルペダルに設けられており、運転者に踏まれることによって変位するアクセルペダルのストロークを検出するストロークセンサである。また、アクセルペダルセンサSAは、運転者がアクセルペダルを意図的に踏むことによって変位するアクセルペダルの変位量に加えて、運転者に振戦が発生して足が付随意に振動することによって変位するアクセルペダルの変位量を検出する。
【0020】
ステアリングセンサSSは、運転者の手によって回転させられる不図示のステアリングホイールに設けられており、運転者がステアリングホイールを回転させる際にステアリングホイールに加えられる操舵力(すなわち、荷重)を検出する荷重センサである。また、ステアリングセンサSSは、運転者がステアリングホイールを意図的に回転させる際にステアリングホイールに加えられる荷重に加えて、運転者に振戦が発生して手が付随意に振動することによってステアリングホイールに加えられる荷重を検出する。
【0021】
なお、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSは、上記構成に限定されない。例えば、ブレーキペダルセンサSBは、運転者の足によってブレーキペダルが踏まれる際の踏力(すなわち、荷重)を検出可能な圧力センサで構成されていてもよい。また、アクセルペダルセンサSAは、運転者の足によってアクセルペダルが踏まれる際の踏力(すなわち、荷重)を検出可能な圧力センサで構成されていてもよい。ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAが圧力センサで構成される場合、当該圧力センサは、運転者がこれらペダルを意図的に踏む際の踏力に加えて、運転者に振戦が発生して足が付随意に振動することによって与えられる踏力を検出する。
【0022】
また、ステアリングセンサSSは、運転者の操舵力によって回転するステアリングホイールの回転角度を検出可能な回転角度センサで構成されていてもよい。ステアリングセンサSSが回転角度センサで構成される場合、当該回転角度センサは、運転者がステアリングホイールを意図的に回転させる際の角度に加えて、運転者に振戦が発生して手が付随意に振動する際に回転するステアリングホイールの角度を検出する。
【0023】
また、振戦検出部S1は、運転者の姿勢、挙動、身体の動き等を含む運転者の状態を検出可能なカメラや、フットレストに置かれた運転者の脚の振動を検出可能なフットレストセンサを含んでいてもよい。
【0024】
挙動検出部S2は、車両の挙動に関する情報であって、車両が路面を走行する際の車両の状態に関する情報を検出する車両振動センサSVと、駆動回転センサSDと、車両回転センサSRと、トルクセンサSTとを含む。
【0025】
車両振動センサSVは、車体に設けられており、車両が走行する際の走行に伴う振動を検出する加速度センサである。駆動回転センサSDは、車体に設けられており、車両が走行する際の駆動部品(例えばタイヤやドライブシャフト)の回転角度を検出する回転センサである。車両回転センサSRは、車体に設けられており、車両が旋回する際のヨー方向の回転角速度を検出するヨーレートセンサである。トルクセンサSTは、ドライブシャフトに接続されており、車両が走行する際にタイヤを介してドライブシャフトに加えられる荷重の大きさを検出する荷重センサである。
【0026】
これら各種センサSB、SA、SS、SV、SD、SR、STは、制御装置1に接続されている。そして、これら各種センサSB、SA、SS、SV、SD、SR、STは、それぞれが検出する検出値に応じた検出信号を制御装置1に送信する。
【0027】
具体的に、ブレーキペダルセンサSBは、運転者に踏まれることによって変位するブレーキペダルのストローク量の情報が含まれるブレーキ検出信号を制御装置1に送信する。アクセルペダルセンサSAは、運転者に踏まれることによって変位するアクセルペダルのストローク量の情報が含まれるアクセル検出信号を制御装置1に送信する。ステアリングセンサSSは、運転者からステアリングホイールに加えられる操舵力の情報が含まれるステアリング検出信号を制御装置1に送信する。
【0028】
さらに、これらブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSは、運転者に振戦が発生している場合、運転者の振戦に応じた検出信号を出力する。
【0029】
車両振動センサSVは、車両の振動の情報が含まれる車両振動検出信号を制御装置1に送信する。駆動回転センサSDは、車両が走行する際の駆動部品の回転角度の情報が含まれる駆動回転検出信号を制御装置1に送信する。車両回転センサSRは、ヨー方向の回転角速度の情報が含まれる車両回転検出信号を制御装置1に送信する。トルクセンサSTは、ドライブシャフトに加えられる荷重の情報が含まれるトルク検出信号を制御装置1に送信する。なお、ドライブシャフトに加えられる荷重は、車両駆動用モータなどの駆動源のトルクおよび車両が走行する際の駆動部品の回転角度から推定値を求めることができる。このため、車両駆動源に荷重センサが設けられている場合、トルクセンサSTを設けていない構成であっても、当該荷重センサおよび駆動回転センサSDが検出する値から算出される推定値を含む信号をトルク検出信号として用いてもよい。
【0030】
制御装置1は、CPU、ROMおよびRAM等のメモリを含んで構成されるマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。制御装置1は、ROM内に記憶されたプログラムに基づいて各種演算、処理を行う。そして、制御装置1は、各種センサSB、SA、SS、SV、SR、STそれぞれから送信される検出信号に基づいてROM内に記憶されたプログラムを実行し、運転者に振戦が発生している場合、その振戦を検出する。また、制御装置1は、検出結果に関する制御信号をディスプレイ20、通信部30および駆動部40に送信する。制御装置1の詳細は、後述する。
【0031】
ディスプレイ20は、インストルメントパネルなど、運転者が視認可能な位置に設けられたマルチインフォメーション用表示部やナビゲーション装置用表示部等によって構成される。ディスプレイ20は、制御装置1から振戦に関する情報を含む制御信号を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。
【0032】
通信部30は、制御装置1から受信する振戦に関する情報を、無線回線を介して携帯端末や車両の外部に設けられた外部装置等に送信する通信装置である。通信部30は、例えば、LTEあるいは5G等の通信規格に準拠した無線通信により、これら携帯端末や外部装置との間で無線通信可能に設けられている。LTEはLong Term Evolutionの略である。5Gは5th Generationの略である。
【0033】
具体的には、例えば、通信部30は、運転者が携帯する携帯端末および運転者以外であって予め登録された人が携帯する携帯端末に、制御装置1から受信する振戦に関する情報を送信可能に構成されている。本実施形態の通信部30には、例えば、運転者の家族が携帯する携帯端末を登録することができる。そして、通信部30は、運転者が携帯する携帯端末および運転者の家族が携帯する携帯端末に、制御装置1から受信する振戦に関する情報を送信することができる。携帯端末は、例えば、スマーフォン等のモバイル型の通信機器である。
【0034】
また、通信部30は、予め登録されたパソコン端末に、制御装置1から受信する振戦に関する情報を送信可能に構成されている。本実施形態の通信部30には、例えば、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末および警察内に備えられたパソコン端末を登録することができる。そして、通信部30は、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末および警察内に備えられたパソコン端末に、制御装置1から受信する振戦に関する情報を送信することができる。なお、通信部30に登録可能な送信相手は、上記パソコン端末に限定されない。
【0035】
さらに、通信部30は、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに、制御装置1から受信する振戦に関する情報を送信可能に構成されている。
【0036】
駆動部40は、車両のエンジンの回転数を制御するエンジン制御装置、エンジンの動作を開始させるイグニッション装置および走行する車両を制動する際の制動力を制御するブレーキ装置を含んで構成されている。駆動部40を構成する各種構成機器は、制御装置1から送信される制御信号によってその作動が制御される。
【0037】
続いて、制御装置1の詳細について説明する。
図1に示すように、制御装置1は、信号解析部11、振戦判定部12および走行制御部13を有する。制御装置1は、ROM内に記憶されたプログラムを実行することで、信号解析部11、振戦判定部12および走行制御部13として機能する。あるいは、制御装置1は、信号解析部11、振戦判定部12および走行制御部13に一対一に対応する複数の回路モジュールを備えていてもよい。
【0038】
以下、信号解析部11、振戦判定部12および走行制御部13について、個々に説明する。まず、信号解析部11について説明する。信号解析部11は、振戦検出部S1から送信される検出信号の解析を行う演算部である。すなわち、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSA、ステアリングセンサSSそれぞれから送信される検出信号の解析を行う演算部である。
【0039】
具体的に、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSBから送信されるブレーキ検出信号の周波数および振幅と、アクセルペダルセンサSAから送信されるアクセル検出信号の周波数および振幅とを算出する。さらに、信号解析部11は、ステアリングセンサSSから送信されるステアリング検出信号の周波数および振幅を算出する。
【0040】
また、信号解析部11は、挙動検出部S2から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSA、ステアリングセンサSSそれぞれから送信される検出信号を補正する。すなわち、信号解析部11は、車両振動センサSVから送信される車両振動検出信号と、駆動回転センサSDから送信される駆動回転検出信号と、車両回転センサSRから送信される車両回転検出信号と、トルクセンサSTから送信されるトルク検出信号に基づいてブレーキ検出信号を補正する。また、信号解析部11は、車両振動センサSVから送信される車両振動検出信号と、駆動回転センサSDから送信される駆動回転検出信号と、車両回転センサSRから送信される車両回転検出信号と、トルクセンサSTから送信されるトルク検出信号に基づいてアクセル検出信号を補正する。そして、信号解析部11は、車両振動センサSVから送信される車両振動検出信号と、駆動回転センサSDから送信される駆動回転検出信号と、車両回転センサSRから送信される車両回転検出信号と、トルクセンサSTから送信されるトルク検出信号に基づいてステアリング検出信号を補正する。具体的な補正方法は後述する。信号解析部11は、出力側に振戦判定部12が接続されており、算出したブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0041】
振戦判定部12は、信号解析部11から送信される各検出信号の周波数および振幅の情報に基づいて運転者に振戦が発生しているか否かを判定する判定部である。振戦判定部12は、判定結果および振戦に関する情報を走行制御部13と、ディスプレイ20と、通信部30とに送信する。振戦判定部12が実行する振戦の判定処理の詳細については後述する。
【0042】
走行制御部13は、駆動部40を構成する各種構成機器の作動を制御する制御部である。走行制御部13は、振戦判定部12から送信される振戦に関する情報に応じた制御信号を駆動部40に送信することで、駆動部40を構成する各種構成機器の作動を制御する。
【0043】
続いて、制御装置1が実行する制御処理の一例について
図2および
図3に示すフローチャートを参照して説明する。制御装置1は、運転者が運転している際に、
図2および
図3に示す各制御処理を、振戦検出部S1から送信される検出信号をトリガーに繰り返し実行する。
【0044】
まず、制御装置1が実行する制御処理のうち、
図2に示す信号解析部11が実行する制御処理について説明する。信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSA、ステアリングセンサSSのいずれかから送信される検出信号をトリガーにして、これら検出信号毎の周波数および振幅を算出するために
図2に示す制御処理を繰り返し実行する。
【0045】
最初に、ステップS100において、信号解析部11は、振戦検出部S1から検出信号を受信するまで待機する。具体的に、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち少なくとも1つのセンサから送信される検出信号を受信するまで待機する。すなわち、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号のうち少なくとも1つの検出信号を受信するまで待機する。信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち少なくとも1つのセンサから検出信号を受信すると、ステップS110に進む。
【0046】
ここで、運転者に振戦が発生している場合、信号解析部11が受信するブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号には、振戦に起因する付随意の振動が含まれる場合がある。このため、ステップS110において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号のうち受信した検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、受信した検出信号の周波数および振幅を算出する。
【0047】
ところで、運転者が車両を運転中において、ブレーキペダルセンサSBは、運転者が意図的あるいは付随意にブレーキペダルを踏むことに起因するブレーキペダルの変位量を検出する。これに加えて、ブレーキペダルセンサSBが検出するブレーキペダルの変位量には、車両が走行する際に発生する振動に起因する変位量が含まれる場合がある。
【0048】
また、運転者が車両を運転中において、アクセルペダルセンサSAは、運転者が意図的あるいは付随意にアクセルペダルを踏むことに起因するアクセルペダルの変位量を検出する。これに加えて、アクセルペダルセンサSAが検出するアクセルペダルの変位量には、車両が走行する際に発生する振動に起因する変位量が含まれる場合がある。
【0049】
そして、運転者が車両を運転中において、ステアリングセンサSSは、運転者が意図的あるいは付随意にステアリングホイールを回転させることに起因するステアリングホイールへの荷重を検出する。これに加えて、ステアリングセンサSSが検出するステアリングホイールへの荷重には、車両が走行する際に発生する振動に起因する荷重が含まれる場合がある。
【0050】
このため、ブレーキペダルセンサSBまたはアクセルペダルセンサSAからの検出信号を用いて運転者の振戦を検出する場合、これらの検出信号から車両が走行する際に発生する振動に起因する変位量の変化を除去すると振戦の発生を検出し易くなる。また、ステアリングセンサSSからの検出信号を用いて運転者の振戦を検出する場合、この検出信号から車両が走行する際に発生する振動に起因する荷重を除去すると振戦の発生を検出し易くなる。
【0051】
このため、本実施形態の信号解析部11は、ステップS120およびステップS130の処理をすることで、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAが検出する検出信号から車両が走行する際に発生する振動に起因する変位量を除去する。また、信号解析部11は、ステップS120およびステップS130の処理をすることで、ステアリングセンサSSが検出する検出信号から車両が走行する際に発生する振動に起因する荷重を除去する。
【0052】
ここで、ステップS120以降の制御処理を説明するにあたり、以下の説明では、ステップS100でブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号を受信したとする。そして、ステップS100でアクセル検出信号を受信しないとして説明する。ただし、説明しないが、ステップS100でアクセル検出信号を受信した場合、以下のステップS100以降の制御処理の説明では、ブレーキペダルセンサSBをアクセルペダルセンサSAと、ブレーキ検出信号をアクセル検出信号と置き換えることができる。
【0053】
ステップS120において、信号解析部11は、挙動検出部S2からブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号を補正するための補正情報を受信したか否かを判定する。当該補正情報は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号から車両が走行する際に発生する振動に起因する変位量または荷重を除去するための情報であって、挙動検出部S2が検出する検出値に応じた検出信号である。
【0054】
具体的に、補正情報は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号の少なくとも1つの検出信号である。
【0055】
信号解析部11は、ステップS120において、車両振動センサSV、駆動回転センサSD、車両回転センサSR、トルクセンサSTのうち少なくとも1つのセンサから検出信号を受信したか否かを判定する。
【0056】
信号解析部11は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号のうち少なくとも1つの検出信号を受信したと判定した場合、ステップS130に進む。一方、信号解析部11は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号のうち少なくとも1つの検出信号を受信したと判定しない場合、ステップS130の処理をスキップしてステップS160に進む。
【0057】
ステップS130において、信号解析部11は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号のうちの受信した検出信号に含まれる情報に基づいて、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号を補正する。ここで、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号を補正するにあたり、まず、信号解析部11は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号のうち受信した検出信号の周波数および振幅を算出する。例えば、信号解析部11は、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号全てを受信した場合、これら検出信号それぞれの周波数および振幅を算出する。
【0058】
車両振動検出信号の周波数は、例えば、車両振動検出信号に対してフーリエ解析を行うことで求めることができる。また、駆動回転検出信号の周波数は、例えば、駆動部品の回転角度と駆動部品が回転する際に生じる振動の周波数との相関関係が予め示された制御マップに基づいて求めることができる。駆動部品の回転角度と駆動部品が回転する際に生じる振動の周波数との相関関係は、予め行われる実験等によって求められており、制御装置1に記憶されている。
【0059】
また、車両回転検出信号の周波数は、例えば、車両のヨー方向の回転角速度と車両が旋回する際に生じる振動の周波数との相関関係が予め示された制御マップに基づいて求めることができる。車両のヨー方向の回転角速度と車両が旋回する際に生じる振動の周波数との相関関係は、予め行われる実験等によって求められており、制御装置1に記憶されている。
【0060】
そして、トルク検出信号の周波数は、例えば、ドライブシャフトに加えられる荷重の大きさと車両が走行する際に振動するドライブシャフトの周波数との相関関係が予め示された制御マップに基づいて求めることができる。ドライブシャフトに加えられる荷重の大きさと車両が走行する際に振動するドライブシャフトの周波数との相関関係は、予め行われる実験等によって求められており、制御装置1に記憶されている。
【0061】
このため、ステップS130において、信号解析部11は、車両振動検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、車両振動検出信号の周波数を算出する。そして、車両振動検出信号の周波数を算出することで、車両が走行する際に、路面等の外部要因に起因する振動の周波数を得ることができる。したがって、本実施形態の車両振動センサSVは、車両が走行する際ことによって、路面等の外部要因に起因する振動を検出する走行振動検出部として機能する。
【0062】
また、信号解析部11は、受信した駆動回転検出信号に含まれる駆動部品の回転角度の情報と、上記制御マップとに基づいて、駆動回転検出信号の周波数を算出する。さらに、信号解析部11は、受信した車両回転検出信号に含まれる車両のヨー方向の回転角速度の情報と、上記制御マップとに基づいて、車両回転検出信号の周波数を算出する。そして、信号解析部11は、受信したトルク検出信号に含まれるドライブシャフトの荷重の大きさの情報と、上記制御マップとに基づいて、トルク検出信号の周波数を算出する。
【0063】
そして、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの周波数を算出することで、車両が走行する際に車両自身が発生させる振動の周波数を得ることができる。したがって、本実施形態の駆動回転センサSDおよび車両回転センサSRは、車両が旋回する際に、車両自身が発生させる振動を検出する自身振動検出部として機能する。また、本実施形態のトルクセンサSTは、車両が走行する際に、車両の駆動源から発生する振動、すなわち、車両自身が発生させる振動を検出する自身振動検出部として機能する。
【0064】
そして、信号解析部11は、算出した車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの周波数を用いてブレーキ検出信号およびステアリング検出信号を補正する。
【0065】
具体的に、信号解析部11は、ステップS110で解析したブレーキ検出信号のうち、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの周波数と同じ周波数の信号の大きさから、これら車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの振幅だけ減算する。
【0066】
これにより、ステップS110で解析したブレーキ検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれが除去された検出信号を得ることができる。すなわち、ブレーキ検出信号から車両の振動に起因する変位量の変化を除去することができる。
【0067】
さらに、信号解析部11は、ステップS110で解析したステアリング検出信号のうち、車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの周波数と同じ周波数の信号の大きさから、これら車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号それぞれの振幅だけ減算する。
【0068】
これにより、ステップS110で解析したステアリング検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれが除去された検出信号を得ることができる。すなわち、ステアリング検出信号から車両の振動に起因する荷重の変化を除去することができる。
【0069】
なお、ステップS100でアクセル検出信号を受信した場合、信号解析部11は、ブレーキ検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれを除去する方法と同じ方法でこれら検出信号が除去された検出信号を得ることができる。すなわち、アクセル検出信号から車両の振動に起因する変位量の変化を除去することができる。
【0070】
以下、ブレーキ検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれが除去された検出信号をブレーキ抽出信号とも呼ぶ。また、ステアリング検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれが除去された検出信号をステアリング抽出信号とも呼ぶ。そして、アクセル検出信号から車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号、トルク検出信号それぞれが除去された検出信号をアクセル抽出信号とも呼ぶ。
【0071】
ステップS160において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち、ステップS100で受信した検出信号の周波数および振幅を算出する。本実施形態では、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号の周波数および振幅を算出する。具体的に、信号解析部11は、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号から車両の振動に起因する変位量の変化を除去したブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数および振幅を算出する。
【0072】
そして、ステップS170において、信号解析部11は、算出したブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0073】
なお、仮に、ステップS120で車両振動検出信号、駆動回転検出信号、車両回転検出信号およびトルク検出信号のいずれの検出信号も受信しない場合、信号解析部11は、ブレーキ検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0074】
続いて、制御装置1が実行する制御処理のうち、
図3に示す振戦判定部12が実行する制御処理について説明する。振戦判定部12は、信号解析部11から送信される周波数および振幅の情報を受信する毎に、運転者に振戦が発生しているか否かを判定するための
図3に示す制御処理を繰り返し実行する。
【0075】
最初に、ステップS200において、振戦判定部12は、信号解析部11から送信される検出信号の周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。具体的に、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSA、ステアリングセンサSSのうち少なくとも1つのセンサから送信される検出信号の周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。すなわち、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち少なくとも1つの検出信号に対応する周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。振戦判定部12は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち少なくとも1つの検出信号に対応する周波数および振幅の情報を受信すると、ステップS210に進む。
【0076】
ステップS210において、振戦判定部12は、受信した検出信号の周波数それぞれが規定幅内であるか否かを判定する。例えば、本実施形態では、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号の周波数がそれぞれ規定幅内であるか否かを判定する。規定幅は、検出信号の周波数が運転者の振戦に起因するか否かを判定するために予め定められる周波数帯域であって、振戦によって運転者の手や足などが付随意に振動する際に想定される振動の周波数の範囲で設定される。
【0077】
規定幅は、例えば、4~11Hzで定められる。なお、規定幅は、4~11Hzに限定されるものでなく、運転者の振戦の発生を判定可能であれば、下限値が4Hzより小さい値で設定されてもよいし、上限値が11Hzより大きい値で設定されてもよい。
【0078】
ステップS210で、振戦判定部12は、信号解析部11から送信されるブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号の少なくとも一方の周波数が規定幅内であると判定しない場合、その後の全ての処理をスキップする。一方、振戦判定部12は、信号解析部11から送信されるブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号の少なくとも一方の周波数が規定幅内であると判定する場合、ステップS220に進む。本実施形態では、例えば、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号のいずれの周波数とも規定幅内であると判定されたとして以下の説明を行う。
【0079】
ステップS220において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの振幅が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、振幅が運転者の振戦に起因するか否かを判定するために予め定められるものであって、振戦によって運転者の手や足などが付随意に振動する際に想定される振動の大きさの最小値で設定される。閾値は、例えば、1mmで定められる。なお、閾値は、1mmに限定されるものでなく、運転者の振戦を判定可能であれば、1mmより小さい値で設定されてもよいし、1mmより大きい値で設定されてもよい。
【0080】
ステップS220で、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号の少なくとも一方の振幅が閾値以上であると判定しない場合、その後の全ての処理をスキップする。スキップする理由として、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号に規定幅内の周波数の振動が含まれる場合であっても、当該振動の振幅が僅かであるため、振戦に起因するものでないと推定できるためである。
【0081】
一方、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号の少なくとも一方の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS230に進む。
【0082】
ステップS230において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号のうち振幅が閾値以上であると判定された信号に対応する運転者の身体の部位に振戦が発生していると判定する。例えば、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号の振幅が閾値以上であると判定された場合、ブレーキペダルを踏む足に振戦が発生していると判定する。また、振戦判定部12は、ステアリング抽出信号の振幅が閾値以上であると判定された場合、ステアリングホイールを回転させる手に振戦が発生していると判定する。そして、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号のいずれの振幅も閾値以上であると判定された場合、足および手に振戦が発生していると判定する。
【0083】
本実施形態では、例えば、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号のいずれも振幅が閾値以上であって、運転者の足および手に振戦が発生していると判定されたとして以下の説明を行う。
【0084】
ステップS240において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数に基づいて、振戦を発生させる要因である疾患を推定する。ここで、本実施形態の制御装置1には、振戦を発生させる要因となる疾患に対応する周波数帯域の情報である疾患周波数が記憶されている。例えば、制御装置1には、振戦を発生させる要因となるパーキンソン病に対応する振戦の疾患周波数として4~5Hzの周波数帯域が記憶されており、本態性振戦疾患に対応する振戦の疾患周波数として7~11Hzの周波数帯域が記憶されている。
【0085】
そして、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数が制御装置1に予め定められた疾患周波数の範囲に含まれるか否かに基づいて、疾患を推定する。具体的に、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数が4~5Hzの周波数帯域に含まれる場合、運転者の疾患がパーキンソン病であると推定する。また、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数が7~11Hzの周波数帯域に含まれる場合、運転者の疾患が本態性振戦であると推定する。
【0086】
ステップS250において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの振幅の大きさに基づいて、振戦の重症度を判定する。ところで、運転者の手や足などに付随意な振動を発生させる振戦は、
図4に示すように、振戦の重症度が重症化するほど振戦に起因する振動の振幅が大きくなる。このため、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの振幅の大きさに基づいて、振戦の重症度を判定することができる。
【0087】
本実施形態では、例えば、制御装置1に、振戦の重症度を、症状が軽い順に、軽症状、中症状、重症状の3段階で判定するための振幅の判定値が予め設定されている。そして、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの振幅の大きさが大きいほど、振戦の重症度を軽症状、中症状、重症状の順に運転者を重症と判定する。
【0088】
なお、振戦の重症度を判定するための振幅の判定値は、ブレーキ抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれに対して同じ値で設定されてもよいし、互いに異なる値で設定されてもよい。また、振戦の重症度は、症状に応じて、2段階の重症度で判定されてもよいし、4段階以上の重症度で判定されてもよい。
【0089】
ステップS390において、振戦判定部12は、判定した振戦の重症度の情報を走行制御部13に送信する。また、ステップS400において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報、推定した運転者の疾患情報および判定した振戦の重症度の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。換言すれば、振戦判定部12は、運転者が振戦を発生していることと、振戦の周波数および振幅と、推定した運転者の疾患と、判定した振戦の重症度とをディスプレイ20に表示させるための制御信号をディスプレイ20に送信する。
【0090】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12からこれら振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。具体的に、ディスプレイ20は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が推定した運転者の疾患、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を表示する。
【0091】
また、振戦判定部12は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、推定した運転者の疾患、判定した振戦の重症度それぞれの情報を通信部30から車両の外部装置へ送信させるための制御信号を通信部30に送信する。換言すれば、振戦判定部12は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、推定した運転者の疾患、判定した振戦の重症度それぞれの情報を、通信部30を介して車両の外部装置へ送信する。そして、振戦判定部12は、これらの各種情報を通信部30に送信するにあたり、判定した振戦の重症度に応じて、通信部30から車両の外部装置へ送信させる際の送信相手を変更させる。
【0092】
これにより、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を振戦の重症度に応じた外部装置に送信する。
【0093】
例えば、通信部30は、振戦判定部12から振戦の重症度が軽症状である情報を受信したとする。すると、通信部30は、運転者が携帯する携帯端末に、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が推定した運転者の疾患、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を送信する。
【0094】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦の重症度が中症状である情報を受信したとする。すると、通信部30は、運転者が携帯する携帯端末に加えて、運転者の家族が携帯する携帯端末および運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末に、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が推定した運転者の疾患、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を送信する。
【0095】
さらに、通信部30は、振戦判定部12から振戦の重症度が重症状である情報を受信したとする。すると、通信部30は、運転者および運転者の家族が携帯する携帯端末と、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末とに加えて、警察内に備えられたパソコン端末に、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が推定した運転者の疾患、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を送信する。
【0096】
このように、本実施形態の制御装置1は、運転者の振戦の重症度が重症であるほど、振戦に関する情報を送信する送信相手を増加させることができる。そして、制御装置1は、運転者の振戦の重症度が重症であるほど、運転者本人だけでなく、運転者以外にも振戦に関する情報を送信する。
【0097】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、振戦の重症度に関わらず、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が推定した運転者の疾患、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を送信する。
【0098】
走行制御部13は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報に応じた制御信号を駆動部40に送信する。具体的に、走行制御部13は、運転者の振戦の重症度に応じた制御信号を駆動部40に送信する。
【0099】
例えば、走行制御部13は、振戦判定部12から振戦の重症度が軽症状である情報を受信したとする。すると、走行制御部13は、運転者が運転する自車両と、自車両の前を走行する前車両との車間距離を予め設定された安全距離以上とさせるための制御信号を駆動部40に送信する。安全距離は、自車両が前車両との衝突を回避するために予め設定される自車両と前車両との車間距離であって、走行制御部13に予め記憶されている。
【0100】
駆動部40は、車間距離を安全距離以上とさせるための制御信号を受信すると、当該車間距離が安全距離以上となるようにエンジン制御装置およびブレーキ装置を制御する。すなわち、振戦判定部12は、走行制御部13を介して、当該車間距離が安全距離以上となるようにエンジンの動作および車両を制動する制動力を制御する。
【0101】
また、走行制御部13は、振戦判定部12から振戦の重症度が中症状である情報を受信したとする。すると、走行制御部13は、車間距離を安全距離以上とさせるための制御信号に加えて、自車両の速度が予め設定された上限速度以上とならないようにするための制御信号を駆動部40に送信する。上限速度は、自車両の事故を回避するために予め設定される車両速度であって、走行制御部13に予め記憶されている。
【0102】
駆動部40は、車両速度が上限速度以上とならないようにするための制御信号を受信すると、当該車両速度が上限速度以上とならないようにエンジン制御装置およびブレーキ装置を制御する。すなわち、振戦判定部12は、走行制御部13を介して、当該車両速度が上限速度以上となるようにエンジンの動作および車両を制動する制動力を制御する。
【0103】
そして、走行制御部13は、振戦判定部12から振戦の重症度が重症状である情報を受信すると、走行制御部13は、自車両の走行を停止させるとともにエンジンの動作を停止させるための制御信号を駆動部40に送信する。さらに、走行制御部13は、自車両がエンジンの動作を停止後、イグニッションをオンさせないための制御信号を駆動部40に送信する。
【0104】
駆動部40は、走行を停止させるための制御信号を受信すると、自車両が安全な場所に停止できるようにエンジン制御装置およびブレーキ装置を制御する。また、エンジンの動作停止後に運転者によるエンジンの動作をオンさせるための操作があった場合でも、駆動部40は、エンジンが動作開始しないようにイグニッション装置を制御する。すなわち、振戦判定部12は、走行制御部13を介して、車両を停止させるとともに、車両のエンジンの動作がオンとならないようにエンジンの動作および車両を制動する制動力を制御する。
【0105】
このように、本実施形態の制御装置1は、運転者の振戦の重症度に応じて、車両の動作を制御することができる。また、制御装置1は、運転者の振戦の重症度が重症であるほど、車両が走行する際の制限を増加させることができる。
【0106】
以上の如く、本実施形態の制御装置1は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSからの検出信号を解析してこれら検出信号の周波数を算出する信号解析部11を備える。また、制御装置1は、信号解析部11が算出する周波数が規定幅内であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する振戦判定部12を備える。
【0107】
これによれば、制御装置1は、走行に伴う振動が発生している状況下においても、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSが検出する振動の周波数が規定幅内であるか否かに基づいて、運転者の振戦を精度良く検出することができる。
【0108】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0109】
(1)上記実施形態では、振戦判定部12は、規定幅における疾患周波数を記憶しており、信号解析部11が算出する周波数が疾患周波数の範囲に含まれるか否かに基づいて疾患を推定する。
【0110】
これによれば、制御装置1は、運転者に振戦が発生している場合、振戦を発生させる要因となる疾患を推定することができる。例えば、制御装置1は、振戦が、一般的に早期の治療が不要である本態性振戦に起因するものであるか、または、比較的早期の治療が必要であるパーキンソン病に起因するものであるか等を判定させることができる。そして、運転者が振戦の治療を行う際に、推定した疾患の情報を利用することができる。
【0111】
(2)上記実施形態では、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれを解析してこれら検出信号の振幅を算出する。振戦判定部12は、信号解析部11が算出するブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの振幅が大きいほど運転者の振戦の重症度を重症と判定する。
【0112】
これによれば、制御装置1は、運転者に振戦が発生している場合、振戦を検出するに加えて、運転者の振戦の重症度を軽症状、中症状、重症状のいずれかに判定することができる。そして、運転者が振戦の治療を行う際に、判定した振戦の重症度の情報を利用することができる。
【0113】
(3)上記実施形態では、振戦判定部12は、ディスプレイ20、運転者および運転者の家族が携帯する携帯端末、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関、警察内に備えられたパソコン端末に判定した振戦の情報を送信可能に構成されている。そして、振戦判定部12は、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更する。
【0114】
これによれば、制御装置1は、運転者に振戦が発生している場合、振戦の重症度に応じた送信相手へ、運転者の振戦に関する情報を送信することができる。例えば、運転者の振戦が軽症状であると判定した場合、制御装置1は、ディスプレイ20および運転者が携帯する携帯端末に運転者の振戦に関する情報を送信する。これにより、運転者に振戦に関する情報を報知することができる。
【0115】
さらに、運転者の振戦が中症状であると判定した場合、制御装置1は、運転者の家族および運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末へ運転者の振戦に関する情報を送信する。これにより、運転者本人だけでなく、運転者の家族およびかかりつけ医に運転者の振戦に関する情報を報知することができる。
【0116】
さらに、運転者の振戦が重症状であると判定した場合、制御装置1は、警察内に備えられたパソコン端末に運転者の振戦に関する情報を送信する。これにより、運転者本人、運転者の家族およびかかりつけ医だけでなく、警察に運転者の振戦に関する情報を報知することができる。これにより、運転者が運転免許証の更新を行う際の更新可否の判定に、当該振戦に関する情報を利用することができる。
【0117】
(4)上記実施形態では、振戦判定部12は、車両のエンジンの動作および車両を制動させる制動力を制御可能であって、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および制動力を変化させて車両の動作を制御する。
【0118】
これによれば、運転者に振戦が発生している場合、制御装置1は、振戦の重症度に応じて、車両の動作を制御することができる。例えば、運転者の振戦が軽症状であると判定した場合、制御装置1は、車間距離が安全距離以上となるように車両の動作を制御する。これにより、運転者が振戦の発生に起因して微妙なブレーキペダルの踏込操作を行うことが困難であっても、前車両への衝突を回避し易くできる。
【0119】
また、運転者の振戦が中症状であると判定した場合、制御装置1は、走行速度が上限速度以上となるように車両の動作を制御する。これにより、運転者が振戦の発生に起因してブレーキペダルの踏込操作やステアリングホイールの回転操作を行うことが困難であっても、事故の発生を回避し易くできる。
【0120】
また、運転者の振戦が重症状であると判定した場合、制御装置1は、車両を停止させるように車両の動作を制御する。これにより、運転者が振戦の発生に起因してブレーキペダルの踏込操作やステアリングホイールの回転操作を行うことが困難であっても、事故の発生を回避し易くできる。さらに、制御装置1は、エンジンの動作停止後にエンジンの動作を再開させないように制御する。これにより、重症度の振戦が発生していると想定される運転者に車両の運転を禁止させることができる。
【0121】
(5)上記実施形態では、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれを解析してこれら検出信号の振幅を算出する。振戦判定部12は、これら検出信号の振幅の大きさが振戦に起因するか否かを判定する閾値を記憶している。そして、振戦判定部12は、信号解析部11が算出するブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの振幅が閾値以上であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する。
【0122】
これによれば、制御装置1は、振戦検出部S1によって振動を検出した場合であっても、振戦に起因しないと想定される振動を振戦として誤検出することを回避することができる。
【0123】
(6)上記実施形態では、振戦判定部12は、通信部30を介して、車両の外部に設けられたサーバおよびクラウドに判定した振戦の情報を送信可能に構成されている。そして、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合、信号解析部11が算出するブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数の情報をサーバおよびクラウドに送信する。
【0124】
これによれば、制御装置1は、運転者に振戦が発生している場合、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに、振戦に関する情報を送信することができる。そして、当該サーバまたはクラウドに振戦に関する情報を蓄積させることで、振戦に関する情報を利用することができる。例えば、サーバまたはクラウドに蓄積した運転者の振戦に関する情報を、病院での治療の効果を確認するために用いたり、自動車保険の保険会社が保険料を算出するために用いたりすることができる。
【0125】
また、サーバまたはクラウドにブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの波形データを送信する場合に比較して、送信する際の送信データを小さくすることができる。
【0126】
(7)上記実施形態では、信号解析部11は、車両振動センサSVが検出する振動を除去してブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数を算出する。
【0127】
これによれば、制御装置1は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号から、車両が走行する際の路面状態等の外部要因に起因する振動に起因する検出結果の変化を除去することができる。このため、運転者の振戦を検出し易くできる。
【0128】
(8)上記実施形態では、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの検出信号から、駆動回転センサSD、車両回転センサSRおよびトルクセンサSTが検出する振動を除去してブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数を算出する。
【0129】
これによれば、制御装置1は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号から、車両自身が発生させる振動に起因する検出結果の変化を除去することができる。このため、運転者の振戦を検出し易くできる。
【0130】
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が規定幅における疾患周波数を記憶しており、信号解析部11が算出する周波数が疾患周波数の範囲に含まれるか否かに基づいて、疾患を推定する例について説明したが、これに限定されない。
【0131】
例えば、振戦判定部12は、規定幅における疾患周波数を記憶しておらず、疾患を推定しない構成であってもよい。
【0132】
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、信号解析部11が算出する振幅が大きいほど運転者の振戦の重症度を重症と判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度を判定しない構成であってもよい。
【0133】
(第1実施形態の第3の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、車両の外部に設けられた複数の外部装置に判定した振戦の情報を送信可能であって、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更しない構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度に関わらず、車両の外部に設けられた複数の外部装置それぞれに同じ振戦の情報を送信する構成であってもよい。また、振戦判定部12は、車両の外部に設けられた外部装置に振戦の情報を送信しない構成であってもよい。
【0134】
(第1実施形態の第4の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を変化させて車両の動作を制御する例について説明したが、これに限定されない。振戦判定部12は、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を変化させずに車両の動作を制御する構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度に関わらず、運転者の振戦の発生があると判定した場合、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を同様に変化させて車両の動作を制御する構成であってもよい。また、振戦判定部12は、運転者の振戦の発生があると判定した場合であっても、車両の動作を制御しない構成であってもよい。
【0135】
(第1実施形態の第5の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が閾値を記憶しており、信号解析部11が算出する振幅が閾値以上であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、閾値を記憶しておらず、信号解析部11が算出する振幅が閾値以上であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定しない構成であってもよい。
【0136】
(第1実施形態の第6の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合、信号解析部11が算出する周波数の情報をサーバおよびクラウドに送信する例について説明したが、これに限定されない。
【0137】
例えば、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合であっても、信号解析部11が算出する周波数の情報をサーバおよびクラウドに送信しない構成であってもよい。また、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合、信号解析部11が受信する各種検出信号をそのまま変換することなくサーバおよびクラウドに送信する構成であってもよい。
【0138】
(第1実施形態の第7の変形例)
上述の第1実施形態では、信号解析部11が、車両振動センサSVが検出する振動を除去して検出信号の周波数を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、信号解析部11は、車両振動センサSVが検出する振動を除去することなく検出信号の周波数を算出する構成であってもよい。
【0139】
(第1実施形態の第8の変形例)
上述の第1実施形態では、信号解析部11が、駆動回転センサSD、車両回転センサSRおよびトルクセンサSTが検出する振動を除去して検出信号の周波数を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、信号解析部11は、駆動回転センサSD、車両回転センサSRおよびトルクセンサSTが検出する振動を除去することなく検出信号の周波数を算出する構成であってもよい。
【0140】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図5および
図6を参照して説明する。本実施形態では、制御装置1が走行制御部13を有しておらず、また、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0141】
本実施形態の制御装置1は、
図5に示すように、CPU、ROMおよびRAM等のメモリを含む記憶部14が振戦判定部12に接続されている。そして、記憶部14は、振戦判定部12と相互通信可能に構成されている。具体的に、記憶部14は、振戦判定部12から送信される情報を受信可能であって、且つ、振戦判定部12に情報を送信可能に構成されている。
【0142】
続いて、振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図6に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図3に示した第1実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0143】
ステップS230において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号、アクセル抽出信号およびステアリング抽出信号のうち振幅が閾値以上であると判定された信号に対応する運転者の身体の部位に振戦が発生していると判定する。本実施形態では、例えば、ブレーキ抽出信号の振幅が閾値以上であると判定され、ブレーキペダルを踏む足に振戦が発生していると判定された場合について説明する。
【0144】
ステップS260において、振戦判定部12は、振戦に関する情報を記憶部14に送信する。具体的に、振戦判定部12は、ステップS230で振戦が発生していると判定された部位の情報と、振戦の周波数および振幅の情報とを記憶部14に送信する。
【0145】
記憶部14は、振戦判定部12から振戦に関する各種情報を受信する毎に、受信した情報を記憶する。例えば、記憶部14は、振戦判定部12から足に振戦が発生している情報と、振戦の周波数および振幅の情報とを受信する毎に、これら受信する各種情報を紐づけて記憶する。記憶部14は、予め定められた所定数だけ振戦判定部12から受信する情報を記憶可能に構成されていてもよい。この場合、記憶部14は、例えば、振戦が発生している部位と、振戦の周波数および振幅の情報とを紐づけた振戦情報を、当該情報の数が所定数となるまで記憶する。そして、記憶部14は、振戦情報の数が所定数となった場合、振戦判定部12から振戦情報を受信する毎に、最も古い情報を消去し、最後に受信した情報を記憶する。
【0146】
ステップS270において、振戦判定部12は、記憶部14から過去の制御処理で記憶された振戦に関する情報を取得する。そして、ステップS280において、振戦判定部12は、記憶部14から取得した過去の振戦に関する情報に基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。具体的に、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦と判定された際の周波数が、記憶部14から取得した過去の制御処理で記憶された振戦の周波数より低下しているか否かに基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。
【0147】
過去の制御処理で記憶された振戦の周波数は、直前の制御処理で記憶された所定の振戦の周波数であってもよいし、過去の制御処理で記憶された複数の振戦の周波数の平均値であってもよい。
【0148】
また、過去の制御処理で記憶された振戦の周波数と比較する際、記憶された振戦に関する情報のうち、今回の制御処理で振戦が発生していると判定された部位と同じ部位で検出された振戦の周波数と比較してもよい。または、記憶された振戦に関する情報のうち、今回の制御処理で振戦が発生していると判定された部位とは異なる部位で検出された振戦の周波数と比較してもよい。
【0149】
振戦判定部12は、ステップS280で振戦と判定された際の周波数が記憶部14から取得した過去の振戦の周波数より低下していると判定する場合、ステップS290において、振戦が重症化していると判定する。換言すれば、振戦判定部12は、信号解析部11が算出する各種検出信号の周波数が時間の経過に伴い小さくなると判定する場合、ステップS290において、振戦が重症化していると判定する。
【0150】
一方、振戦判定部12は、ステップS280で振戦と判定された際の周波数が記憶部14から取得した過去の振戦の周波数より低下していると判定しない場合、ステップS300において、振戦が重症化していないと判定する。
【0151】
そして、ステップS400において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報、判定した振戦の重症度の進行の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0152】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。具体的に、ディスプレイ20は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が判定した振戦の重症度の進行それぞれの情報を表示する。
【0153】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を車両の外部装置に送信する。例えば、通信部30は、振戦が重症化している情報を受信すると、運転者が携帯する携帯端末に、振戦が重症化している情報を送信してもよい。また、通信部30は、振戦が重症化している情報を受信すると、運転者の家族が携帯する携帯端末、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末および警察内に備えられたパソコン端末のいずれか1つまたは複数に振戦が重症化している情報を送信してもよい。さらに、通信部30は、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに振戦が重症化している情報を送信してもよい。
【0154】
これによれば、制御装置1は、運転者の振戦の重症度の進行を判定することができる。さらに、振戦の重症度が進行している場合、運転者等に運転者の振戦の重症度が進行していることを報知することができる。
【0155】
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、振戦判定部12が今回の制御処理で振戦と判定された際の周波数が過去の制御処理で記憶された振戦の周波数より低下しているか否かに基づいて振戦の重症度の進行を判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦と判定された際の振幅が過去の制御処理で記憶された振戦の振幅の大きさより低下しているか否かに基づいて振戦の重症度の進行を判定してもよい。
【0156】
この場合、
図7に示すように、ステップS270において、振戦判定部12は、記憶部14から過去の制御処理で記憶された振戦に関する情報のうち、振幅の情報を取得する。そして、ステップS285において、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の制御処理で記憶された振戦の振幅の大きさより増大しているか否かに基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。
【0157】
過去の制御処理で記憶された振戦の振幅の大きさは、直前の制御処理で記憶された所定の振動の振幅の大きさであってもよいし、過去の制御処理で記憶された複数の振戦の振幅の平均値であってもよい。
【0158】
振戦判定部12は、ステップS285で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の振戦における振幅の大きさより増大していると判定する場合、ステップS290において、振戦が重症化していると判定する。換言すれば、振戦判定部12は、信号解析部11が算出する各種検出信号の振幅が時間の経過に伴い大きくなると判定する場合、ステップS290において、振戦が重症化していると判定する。
【0159】
一方、振戦判定部12は、ステップS285で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の振戦における振幅の大きさより増大していると判定しない場合、ステップS300において、振戦が重症化していないと判定する。
【0160】
このように、制御装置1は、振戦の振幅の変化に基づいて振戦の重症度の進行を判定してもよい。
【0161】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図8を参照して説明する。本実施形態では、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0162】
振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図8に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図3に示した第1実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0163】
ステップS230において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号、アクセル抽出信号およびステアリング抽出信号のうち少なくとも1つの抽出信号の振幅が閾値以上であると判定された場合、運転者に振戦が発生していると判定する。また、振戦判定部12は、振幅が閾値以上であると判定された信号に対応する運転者の身体の部位に振戦が発生していると判定する。
【0164】
ステップS310において、振戦判定部12は、振戦が発生していると判定された際の判定シーンを特定する。そして、ステップS320において、振戦判定部12は、特定した判定シーンに基づいて、運転者に発生している振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれの振戦であるか特定する。
【0165】
本実施形態の制御装置1には、振戦を特定するための情報が予め記憶されている。そして、振戦判定部12は、振戦が発生していると判定するために用いられたブレーキ抽出信号、アクセル抽出信号およびステアリング抽出信号と、振戦を特定するための情報とに基づいて、運転者に発生している振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれの振戦であるか特定する。
【0166】
ここで、振戦の特定方法の詳細について説明する。第1実施形態で説明したように、振戦には、安静時振戦と、姿勢時振戦と、企図振戦とがある。そして、運転者の安静時振戦は、筋肉が安静な状態にあるときに発生し易い。運転者の姿勢時振戦は、手や足をある位置で保持させた際に発生し易い。運転者の企図振戦は、足をブレーキペダルおよびアクセルペダルに向かって動かす際に発生し易い。
【0167】
このように、振戦の種類および運転者の状態によって、運転者の身体部位のうち振戦が発生し易い部位が異なるとともに、その部位に振戦が発生し易い状況が異なる。すなわち、運転者に振戦が発生する場合、振戦の種類および運転者の姿勢に応じて、操作部であるブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのうち、振戦を検出し易い操作部および運転者の操作状況が異なる。
【0168】
このため、制御装置1が運転者の振戦が発生していると判定した際の運転者の運転状況である判定シーンを特定することで、当該振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれの振戦であるかを特定することができる。そして、制御装置1が振戦の発生を検出した際、振戦が発生していると判定した際の振戦検出部S1が検出する検出値に基づいて判定シーンを推定することができる。換言すれば、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち、振戦が発生していると判定した際の各種センサの検出値に基づいて、振戦を特定することができる。
【0169】
例えば、制御装置1が振戦の発生を検出した際、制御装置1は、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値に基づいて運転者に振戦が発生していると判定したとする。そして、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSが検出する検出値が僅かな値で略一定だったとする。すなわち、アクセルペダルの変位量が僅かであって、且つ、ステアリングホイールへ加えられる荷重が僅かだったとする。
【0170】
このような場合、運転者の手および足の筋肉は、比較的安静した状態である。このような運転者の運転状況は、例えば、運転者が車両を比較的遅い一定の速度で直進させる場合に発生する。そして、このような運転者の手および足の筋肉が比較的安静した状態において、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値に基づいて制御装置1が運転者に振戦が発生していると判定した場合、当該振戦が安静時振戦と推定することができる。
【0171】
また、制御装置1が振戦の発生を検出した際、制御装置1は、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値に基づいて運転者に振戦が発生していると判定したとする。そして、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSが検出する検出値が安静時振戦と判定する際に比較して大きな値で略一定だったとする。すなわち、アクセルペダルの変位量が比較的大きな値であって、且つ、ステアリングホイールへ加えられる荷重が比較的大きな値だったとする。
【0172】
このような場合、運転者の手および足は、ある位置で保持させた状態である。このような運転者の運転状況は、例えば、運転者が比較的大きな曲率のカーブを一定の速度で車両を走行させる場合に発生する。そして、このような運転者の手および足がある位置に保持された状態において、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値に基づいて制御装置1が運転者に振戦が発生していると判定した場合、当該振戦が姿勢時振戦と推定することができる。
【0173】
また、制御装置1が振戦の発生を検出した際、制御装置1は、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAの検出値に基づいて運転者に振戦が発生していると判定したとする。そして、運転者に振戦が発生していると判定した際に、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAがブレーキペダルおよびアクセルペダルへの踏込操作が比較的短い間隔で頻繁に切り替えられること検出したとする。すなわち、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAが繰り返し切り替えられて踏み込まれるブレーキペダルおよびアクセルペダルの変位量を検出したとする。
【0174】
このような場合、運転者の足は、ブレーキペダルおよびアクセルペダルに向かって頻繁に踏込動作を繰り返し行う状態である。このような運転者の運転状況は、例えば、運転者が渋滞を走行する車両を運転する場合に発生する。そして、このような運転者が目標物に向かって所定動作を繰り返す状態において、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAの検出値に基づいて制御装置1が運転者に振戦が発生していると判定した場合、当該振戦が企図振戦と推定することができる。
【0175】
このため、本実施形態の制御装置1には、振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれであるかを特定するための情報として、上記運転者の運転状況である判定シーンの情報が予め記憶されている。具体的に、制御装置1には、振戦が安静時振戦であると推定するための情報として、運転者の手および足の筋肉が比較的安静した状態であることを特定するためのアクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値の情報が記憶されている。また、制御装置1には、振戦が姿勢時振戦であると推定するための情報として、運転者の手および足がある位置で保持させた状態であることを特定するためのアクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの検出値の情報が記憶されている。そして、制御装置1には、振戦が企図振戦であると推定するための情報として、運転者が目標物に向かって動作を繰り返し行う状態であることを特定するためのブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAの検出値の情報が記憶されている。
【0176】
振戦判定部12は、振戦が発生していると判定された際の判定シーンを特定することで、運転者に発生している振戦が安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のいずれの振戦であるか特定する。
【0177】
そして、ステップS400において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報、推定した振戦の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0178】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。具体的に、ディスプレイ20は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅の情報を表示する。さらに、ディスプレイ20は、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のうち、運転者に発生していると推定した振戦の情報を表示する。
【0179】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を車両の外部装置に送信する。例えば、通信部30は、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のうち、運転者に発生した推定の振戦の情報を受信すると、運転者が携帯する携帯端末に、当該発生している振戦の情報を送信してもよい。また、通信部30は、運転者に発生した推定の振戦の情報を受信すると、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末に当該発生している振戦の情報を送信してもよい。
【0180】
これによれば、制御装置1は、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のうち、運転者に発生している振戦を推定することができる。
【0181】
ところで、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦それぞれを発生させる要因である疾患は、振戦の種類によって異なる。例えば、安静時振戦を発生させる要因となる疾患は、パーキンソン病に起因すると想定されている。また、姿勢時振戦を発生させる要因となる疾患は、甲状腺機能亢進症や本態性振戦に起因すると想定されている。そして、企図振戦を発生させる要因となる疾患は、多発性硬化症や小脳の障害に起因すると想定されている。
【0182】
このため、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のうち、運転者に発生している振戦を推定することで、これら振戦を発生させる要因となる疾患を推定することもできる。
【0183】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図9を参照して説明する。本実施形態では、振戦を推定する手段が第3実施形態と相違しており、それに伴い、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第3実施形態と相違している。これ以外は、第3実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明し、第3実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0184】
振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図9に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図9に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図8に示した第3実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0185】
ステップS230において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号、アクセル抽出信号およびステアリング抽出信号のうち少なくとも1つの抽出信号の振幅が閾値以上であると判定された場合、運転者に振戦が発生していると判定する。また、振戦判定部12は、振幅が閾値以上であると判定された信号に対応する運転者の身体の部位に振戦が発生していると判定する。
【0186】
ステップS330において、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち、振戦の振動を検出したセンサの個数が1つであるか否かを判定する。
【0187】
そして、振戦の振動を検出したセンサの個数が1つであると判定した場合、ステップS340において、振戦判定部12は、運転者に発生している振戦が姿勢時振戦および企図振戦のどちらかであると推定する。これに対して、振戦の振動を検出したセンサの個数が1つであると判定しない場合、ステップS350において、振戦判定部12は、運転者に発生している振戦が安静時振戦であると推定する。すなわち、振戦の振動を検出したセンサの個数が2つ以上であると判定する場合、ステップS350において、振戦判定部12は、運転者に発生している振戦が安静時振戦であると推定する。
【0188】
このようにブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち、振戦の振動を検出したセンサの個数によって振戦の種類を推定できる理由について説明する。
【0189】
第3実施形態で説明したように、振戦の種類および運転者の状態によって、運転者の身体部位のうち振戦が発生し易い部位が異なるとともに、その部位に振戦が発生し易い状況が異なる。
【0190】
例えば、第3実施形態で説明したように、姿勢時振戦は、運転者がアクセルペダルを比較的大きな変位量で変位させた状態を保持したり、ステアリングホイールに比較的大きな荷重を加えた状態で保持したりする際に発生し易い。このため、姿勢時振戦における振動は、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのどちらか一方のセンサで検出できる。
【0191】
また、企図振戦は、運転者がブレーキペダルおよびアクセルペダルのどちらか一方の踏込動作を頻繁に繰り返す際に発生し易い。このため、企図振戦における振動は、ブレーキペダルセンサSBおよびアクセルペダルセンサSAのどちらか一方のセンサで検出できる。
【0192】
これに対して、安静時振戦は、運転者がアクセルペダルを比較的小さい変位量で変位させつつ、ステアリングホイールに比較的小さな荷重を加えた際に発生し易い。このため、安静時振戦における振動は、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSの2つのセンサで検出できる。
【0193】
このため、制御装置1が運転者の振戦が発生していると判定した際の振戦の振動を検出したセンサの個数によって振戦の種類を推定することができる。換言すれば、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのうち、振戦が発生していると判定した際のセンサの検出数に基づいて、振戦を特定することができる。
【0194】
そして、ステップS400において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報、推定した振戦の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0195】
これによれば、制御装置1は、安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦のうち、運転者に発生している振戦を推定することができる。
【0196】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図10および
図11を参照して説明する。本実施形態では、車両制御システム100がハプティック制御部50を備える点が第1実施形態と相違している。また、本実施形態では、信号解析部11が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0197】
本実施形態の車両制御システム100では、不図示のブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれがハプティックデバイスで構成されている。そして、本実施形態の車両制御システム100は、
図10に示すように、ハプティックデバイスであるブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれの作動を制御するハプティック制御部50を備える。
【0198】
ハプティックデバイスは、車両周囲の環境に関する情報(例えば、死角にある車両の情報、車両の進路内にある障害物の情報)および車両を走行する際の警告(例えば、車線逸脱警告、低タイヤ空気圧警告、車両半ドア警告)を運転者に報知するための装置である。そして、ハプティックデバイスであるブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールは、振動することで、車両周囲の環境に関する情報および車両を走行する際の警告を運転者に報知可能に構成されている。ハプティックデバイスであるブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールは、操作部に振動を発生させる振動発生部である。
【0199】
ハプティック制御部50は、ハプティックデバイスの作動を制御する制御部である。ハプティック制御部50は、CPU、ROMおよびRAM等のメモリを含んで構成されるマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。ハプティック制御部50は、ROM内に記憶されたプログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0200】
具体的に、ハプティック制御部50は、車両周囲の環境に関する情報および車両を走行する際の警告を運転者に報知する場合、ハプティックデバイスに制御信号を送信することでハプティックデバイスを振動させる。すなわち、ハプティック制御部50は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールに制御信号を送信することでこれらブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールを振動させる。これらブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールを振動させる際の振動の周波数および振幅の大きさは予めハプティック制御部50に設定されている。
【0201】
また、ハプティック制御部50は、制御装置1に接続されている。ハプティック制御部50は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールを振動させる際に制御装置1に当該振動の周波数および振幅の情報であるハプティック情報を制御装置1に送信する。
【0202】
なお、ハプティック制御部50は、制御装置1内に組み込まれて構成されていてもよい。
【0203】
続いて、信号解析部11が実行する制御処理の一例を
図11に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図11に示す信号解析部11が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図2に示した第1実施形態の信号解析部11が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0204】
ステップS130において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号を補正することで、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号を求める。
【0205】
ところで、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれがハプティックデバイスで構成されている場合、必要に応じてこれらハプティックデバイスがハプティック制御部50からの制御信号によって振動する。このため、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSそれぞれは、ハプティックデバイスが振動する際、当該ハプティックデバイス自身の振動も検出する。
【0206】
例えば、ブレーキペダルセンサSBは、運転者の振戦に起因する振動に加えて、ブレーキペダル自身の振動も検出する。アクセルペダルセンサSAは、運転者の振戦に起因する振動に加えて、アクセルペダル自身の振動も検出する。ステアリングセンサSSは、運転者の振戦に起因する振動に加えて、ステアリングホイール自身の振動も検出する。
【0207】
したがって、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号には、ハプティックデバイス自身の振動に起因する変位量または荷重が含まれる場合がある。
【0208】
このため、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号を用いて運転者の振戦を検出する場合、これらの抽出信号からハプティックデバイス自身の振動に起因する変位量または荷重を除去すると振戦の発生を検出し易くなる。したがって、本実施形態では、信号解析部11がステップS140およびステップS150の処理をすることで、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号からハプティックデバイス自身の振動に起因する変位量または荷重を除去する。
【0209】
ステップS140において、信号解析部11は、ハプティック制御部50からハプティック情報を受信したか否かを判定する。当該ハプティック情報は、ハプティック制御部50がハプティックデバイスを振動させる際の振動の周波数および振幅の情報である。
【0210】
信号解析部11は、ハプティック制御部50からハプティック情報を受信したと判定した場合、ステップS150に進む。一方、信号解析部11は、ハプティック制御部50からハプティック情報を受信したと判定しない場合、ステップS150の処理をスキップしてステップS160に進む。
【0211】
ステップS150において、信号解析部11は、受信したハプティック情報に基づいて、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号からハプティックデバイス自身の振動に起因する変位量または荷重を除去する。
【0212】
具体的に、信号解析部11は、ブレーキ抽出信号からブレーキペダル自身の振動の周波数と同じ周波数の信号を、ブレーキペダルの振動の振幅の大きさだけ減算する。また、信号解析部11は、ステアリング抽出信号からステアリングホイール自身の振動の周波数と同じ周波数の信号を、ステアリングホイールの振動の振幅の大きさだけ減算する。そして、アクセル抽出信号からアクセルペダル自身の振動の周波数と同じ周波数の信号を、ステアリングホイールの振動の振幅の大きさだけ減算する。
【0213】
これにより、ブレーキ抽出信号、ステアリング抽出信号およびアクセル抽出信号それぞれからハプティックデバイス自身の振動に起因する変位量または荷重を除去した検出信号を得ることができる。
【0214】
これによれば、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールがハプティックデバイスで構成されており、ハプティックデバイスが振動する場合であっても、ハプティックデバイス自身の振動に起因する検出結果の変化を除去することができる。このため、車両制御システム100がハプティックデバイスを有しており、振戦検出部S1がハプティックデバイスに設けられている構成であっても、運転者の振戦を精度良く検出することができる。
【0215】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、
図12を参照して説明する。本実施形態では、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0216】
本実施形態の制御装置1は、第2実施形態の
図5を用いて説明したように、記憶部14が振戦判定部12に接続されている。そして、記憶部14は、振戦判定部12から送信される情報を受信可能であって、且つ、振戦判定部12に情報を送信可能に構成されている。
【0217】
続いて、振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図12に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図12に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図3に示した第1実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0218】
ステップS240において、振戦判定部12は、ブレーキ抽出信号、アクセル抽出信号およびステアリング抽出信号それぞれの周波数に基づいて、振戦を発生させる要因である疾患を推定する。そして、ステップS360において、振戦判定部12は、振戦と判定された運転者の情報と、当該運転者において推定した疾患情報とを紐づけして記憶部14に送信する。
【0219】
記憶部14は、振戦判定部12から振戦と判定された運転者の情報と、当該運転者において推定した疾患情報とが紐づけされた情報を受信すると、受信した情報を記憶する。例えば、記憶部14は、振戦判定部12から、所定の運転者がパーキンソン病と推定された情報を受信すると、当該所定の運転者がパーキンソン病と推定された情報を記憶する。また、記憶部14は、振戦判定部12から、所定の運転者が本態性振戦と推定された情報を受信すると、当該所定の運転者が本態性振戦と推定された情報を記憶する。
【0220】
ステップS370において、振戦判定部12は、記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があるか否かを判定する。具体的に、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者と同一の運転者において、記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があるか否かを判定する。
【0221】
今回の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者と過去の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者とが同一であるかの判定は、例えば、イグニッションスイッチを押圧する際の運転者の指紋認証を用いてもよい。または、今回の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者と過去の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者とが同一であるかの判定は、ステアリングホイールを握る際の運転者の指紋認証や静脈認証を用いてもよい。
【0222】
そして、ステップS370で記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があると判定された場合、ステップS380において、振戦判定部12は、運転者に治療を促すための情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0223】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12から運転者に治療を促すための情報を受信すると、当該運転者に治療を促すための情報を表示することで、運転者に治療を促す。例えば、ディスプレイ20は、運転者に、振戦の症状を抑制する薬の効果が低下していることを示す情報や振戦の症状を抑制するための投薬の忘れがないかを確認させるための情報を表示する。
【0224】
このように制御装置1がディスプレイ20を用いて運転者に治療を促すための情報を表示する理由について説明する。
【0225】
運転者が神経難病を罹患している場合、当該運転者は、神経難病を罹患していることを自覚している場合がある。このため、神経難病の罹患に伴い、自身に振戦が発生することを自覚しており、振戦の症状を抑制するための薬を日頃から服薬していることが想定される。例えば、運転者がパーキンソン病を罹患している場合、パーキンソン病の症状を抑制する薬を服薬した状態で車両を運転することが想定される。この場合、神経難病を罹患している運転者であっても、車両を運転中において振戦の症状が抑制されていれば、制御装置1は振戦を検出しない。
【0226】
しかし、服薬した薬の効果が低下することによって、運転者に振戦の症状が発生する可能性がある。例えば、運転者がパーキンソン病である場合、運転者には、パーキンソン病治療薬が効いており振戦の症状が抑制されている時間帯と、パーキンソン病治療薬の効果が低下して振戦の症状が発生する時間帯とが存在することがある。また、運転者が服薬することを忘れる可能性がある。
【0227】
このため、運転者が神経難病を罹患していることを自覚している場合であっても、服薬した薬の効果が低下したり、服薬することを忘れたりすることで、運転者に振戦の症状が発生している場合、当該運転者に治療を促すことが望まれる。
【0228】
これに対して、本実施形態によれば、記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があると判定された場合、ディスプレイ20を用いて運転者に治療を促すことができる。このため、運転者が神経難病を罹患していることを自覚している場合であっても、服薬した薬の効果が低下したり、服薬することを忘れたりして、運転者に振戦の症状が発生している場合、当該運転者に治療を促すことができる。
【0229】
また、通信部30は、振戦判定部12から運転者に治療を促すための情報を受信すると、当該運転者に治療を促すための情報を車両の外部装置に送信する。例えば、通信部30は、振戦判定部12から運転者に治療を促すための情報を受信すると、運転者が携帯する携帯端末に、治療を促すための情報を送信してもよい。また、通信部30は、振戦判定部12から運転者に治療を促すための情報を受信すると、運転者の家族が携帯する携帯端末および運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末に、治療を促すための情報を送信してもよい。
【0230】
これによれば、制御装置1は、運転者本人だけでなく、運転者の家族および運転者のかかりつけ医に、運転者に治療の必要性が生じていることを報知することができる。
【0231】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、
図13~
図15を参照して説明する。本実施形態では、制御装置1が、車両を運転中の運転者の振戦を検出するに加えて、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定する点が第1実施形態と相違している。そして、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために、信号解析部11および振戦判定部12が実行する制御処理が追加されている点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0232】
運転者が運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために振戦判定部12および信号解析部11が実行する制御処理の一例を
図13および
図14に示すフローチャートを参照して説明する。
【0233】
最初に、ステップS500において、振戦判定部12は、運転者によってイグニッションスイッチがオンされるまで待機する。すなわち、振戦判定部12は、運転者のイグニッションスイッチの操作によって、イグニッション装置に動作開始信号が送信されるまで待機する。
【0234】
振戦判定部12は、運転者によってイグニッションスイッチがオンされた判定すると、ステップS510において、運転者に対して操作部の操作を指示する。具体的に、振戦判定部12は、イグニッションスイッチがオンされた判定すると、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。
【0235】
ブレーキペダルに対して操作指示がされる場合、操作内容は、例えば、
図15に示すように、経過時間に対するブレーキペダルへの変位量で示される。なお、
図15では、指示するブレーキペダルの変位量、すなわち指示するストローク量を破線で示している。また、アクセルペダルに対して操作指示がされる場合、操作内容は、図示しないが、経過時間に対するアクセルペダルへの変位量で示されてもよい。ステアリングホイールに対して操作指示がされる場合、経過時間に対するステアリングホイールへの荷重量で示されてもよい。
【0236】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12からブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つに対して指示する操作内容の情報を受信すると、当該操作内容の情報を表示して運転者に指示された操作内容の情報を報知する。
【0237】
そして、運転者は、ディスプレイ20に操作内容の情報が表示されると、当該操作内容に従ってブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つを操作する。例えば、ディスプレイ20に
図15に示すようなブレーキペダルの変位量が表示された場合、運転者は、表示された変位量に近づくようにブレーキペダルを踏み込む。そして、運転者は、経過時間に伴い変化する指示値に応じてブレーキペダルの変位量を変化させる。ディスプレイ20は、
図15の実線に示すように、運転者の操作によって変化するブレーキペダルの変位量を表示する。
【0238】
信号解析部11は、
図14に示すように、ステップS400において、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つから送信される検出信号を受信するまで待機する。すなわち、信号解析部11は、振戦判定部12から指示された操作内容に応じたブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号のいずれか1つを受信するまで待機する。
【0239】
信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つから検出信号を受信すると、ステップS420において、受信した検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、受信した検出信号の周波数および振幅を算出する。
【0240】
そして、ステップS440において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号のいずれか1つに対して算出した周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0241】
図13に戻り、振戦判定部12は、ステップS520において、信号解析部11からブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号のいずれか1つの周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。振戦判定部12は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のいずれか1つの周波数および振幅の情報を受信すると、ステップS530に進む。
【0242】
ステップS530において、振戦判定部12は、受信した検出信号の周波数が規定幅内であるか否かを判定する。当該規定幅は、第1実施形態の
図3におけるステップS210の制御処理に用いられる規定幅と同じ幅である。
【0243】
ステップS530で信号解析部11から受信したブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の周波数が規定幅内であると判定しない場合、ステップS540において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していないと判定する。この場合、ステップS550において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせる。具体的に、振戦判定部12は、走行制御部13を介してイグニッションをオンさせるための制御信号を駆動部40におけるイグニッション装置に送信する。すなわち、運転者に振戦が発生していないと判定する場合、振戦判定部12は、エンジンの動作を開始させる。
【0244】
一方、ステップS530で信号解析部11から受信したブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の周波数が規定幅内であると判定する場合、振戦判定部12は、ステップS560に進む。ステップS560において、振戦判定部12は、これら検出信号それぞれの振幅が閾値以上であるか否かを判定する。当該振幅は、第1実施形態の
図3におけるステップS220の制御処理に用いられる振幅と同じ大きさである。
【0245】
ステップS560でブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の振幅が閾値以上であると判定しない場合、ステップS540において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していないと判定する。この場合、ステップS550において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせる。すなわち、運転者に振戦が発生していないと判定する場合、振戦判定部12は、エンジンの動作を開始させる。
【0246】
一方、ステップS560でブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS570において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する。
【0247】
そして、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のうち周波数が規定幅内であると判定された信号に対応する運転者の身体の部位に振戦が発生していると判定する。例えば、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号またはアクセル検出信号の周波数が規定幅内であると判定された場合、ブレーキペダルおよびアクセルペダルを踏む足に振戦が発生していると判定する。また、振戦判定部12は、ステアリング検出信号の周波数が規定幅内であると判定された場合、ステアリングホイールを回転させる手に振戦が発生していると判定する。
【0248】
そして、ステップS700において、振戦判定部12は、振戦の判定に用いられた検出信号の振幅の大きさに基づいて、振戦の重症度を判定する。本実施形態では、振戦判定部12は、第1実施形態の
図3におけるステップS250の制御処理と同じように、振戦の重症度を判定する。具体的に、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号のいずれか1つの振幅の大きさに応じて、振戦の重症度を軽症状、中症状、重症状のうちのいずれか1つの重症度に判定する。
【0249】
ステップS710において、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度が重症状であるか否かを判定する。運転者の振戦の重症度が重症状であると判定しない場合、ステップS720において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせる。具体的に、振戦判定部12は、走行制御部13を介してイグニッションをオンさせるための制御信号を駆動部40におけるイグニッション装置に送信する。すなわち、運転者に振戦が発生していないと判定する場合、振戦判定部12は、エンジンの動作を開始させる。
【0250】
一方、運転者の振戦の重症度であると判定しない場合、ステップS730において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせない。具体的に、振戦判定部12は、走行制御部13を介してイグニッションをオンさせるための制御信号を駆動部40におけるイグニッション装置に送信しない。このため、運転者によってイグニッションスイッチがオンされた場合であっても、エンジンの動作が開始されない。すなわち、運転者に振戦が発生していると判定する場合、振戦判定部12は、エンジンの動作を開始させない。
【0251】
ステップS740において、振戦判定部12は、判定した振戦の重症度の情報を走行制御部13に送信する。また、ステップS750において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報および判定した振戦の重症度の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。換言すれば、振戦判定部12は、運転者が振戦を発生していることと、振戦の周波数および振幅と、判定した振戦の重症度とをディスプレイ20に表示させるための制御信号をディスプレイ20に送信する。
【0252】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12からこれら振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。具体的に、ディスプレイ20は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が判定した振戦の重症度それぞれの情報を表示する。
【0253】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を車両の外部装置に送信する。通信部30は、運転者の振戦の重症度に応じて振戦に関する情報を送信する送信相手を変化させてもよい。
【0254】
例えば、運転者の振戦の重症度が軽症状である場合、通信部30は、運転者が携帯する携帯端末に振戦に関する情報を送信してもよい。また、運転者の振戦の重症度が中症状である場合、通信部30は、運転者の家族が携帯する携帯端末および運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末に振戦に関する情報を送信してもよい。そして、運転者の振戦の重症度が重症状である場合、通信部30は、警察内に備えられたパソコン端末に振戦に関する情報を送信してもよい。
【0255】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、振戦の重症度に関わらず、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに、振戦に関する情報を送信してもよい。
【0256】
走行制御部13は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、運転者の振戦の重症度に応じた制御信号を駆動部40に送信する。
【0257】
例えば、走行制御部13は、振戦判定部12から振戦の重症度が軽症状である情報を受信したとする。すると、走行制御部13は、イグニッション装置によってイグニッションがオンされた場合であっても、運転者が運転する自車両と前車両との車間距離を安全距離以上とさせるための制御信号を駆動部40に送信する。
【0258】
また、走行制御部13は、振戦判定部12から振戦の重症度が中症状である情報を受信したとする。すると、走行制御部13は、イグニッション装置によってイグニッションがオンされた場合であっても、自車両の速度が上限速度以上とならないようにするための制御信号を駆動部40に送信する。
【0259】
これによれば、本実施形態の制御装置1は、運転を開始する前の状態において、運転者の振戦を検出することができる。このため、車両の走行に伴う振動および車両自身が発生させる振動が生じない状態で運転者の振戦を検出できるので、振戦を検出し易い。
【0260】
また、運転を開始する際に検出する運転者の振戦の重症度に応じて、車両の動作を制御することができる。
【0261】
(第7実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、信号解析部11が算出する振幅が大きいほど運転者の振戦の重症度を重症と判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度を判定しない構成であってもよい。
【0262】
(第7実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、車両の外部に設けられた複数の外部装置に判定した振戦の情報を送信可能であって、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、振戦の情報を送信する送信相手を変更しない構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度に関わらず、車両の外部に設けられた複数の外部装置それぞれに同じ振戦の情報を送信する構成であってもよい。また、振戦判定部12は、車両の外部に設けられた外部装置に振戦の情報を送信しない構成であってもよい。
【0263】
(第7実施形態の第3の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を変化させて車両の動作を制御する例について説明したが、これに限定されない。振戦判定部12は、判定した運転者の振戦の重症度に応じて、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を変化させずに車両の動作を制御する構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、運転者の振戦の重症度に関わらず、運転者の振戦の発生があると判定した場合、エンジンの動作および車両を制動させる制動力を同様に変化させて車両の動作を制御する構成であってもよい。また、振戦判定部12は、運転者の振戦の発生があると判定した場合であっても、車両の動作を制御しない構成であってもよい。
【0264】
(第1実施形態の第4の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12が閾値を記憶しており、信号解析部11が算出する振幅が閾値以上であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、閾値を記憶しておらず、信号解析部11が算出する振幅が閾値以上であるか否かに基づいて、運転者の振戦の発生を判定しない構成であってもよい。
【0265】
(第1実施形態の第5の変形例)
上述の第1実施形態では、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合、信号解析部11が算出する周波数の情報をサーバおよびクラウドに送信する例について説明したが、これに限定されない。
【0266】
例えば、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合であっても、信号解析部11が算出する周波数の情報をサーバおよびクラウドに送信しない構成であってもよい。また、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する場合、信号解析部11が受信する各種検出信号をそのまま変換することなくサーバおよびクラウドに送信する構成であってもよい。
【0267】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、
図16を参照して説明する。本実施形態では、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0268】
本実施形態の制御装置1は、第2実施形態の
図5を用いて説明したように、記憶部14が振戦判定部12に接続されている。そして、記憶部14は、振戦判定部12から送信される情報を受信可能であって、且つ、振戦判定部12に情報を送信可能に構成されている。
【0269】
続いて、振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図16に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図16に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図13に示した第7実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0270】
ステップS560でブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS570において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する。そして、ステップS600において、振戦判定部12は、振戦に関する情報を記憶部14に送信する。
【0271】
ステップS610において、振戦判定部12は、記憶部14から過去の制御処理で記憶された振戦に関する情報を取得する。そして、ステップS620において、記憶部14から取得した過去の振戦に関する情報に基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。振戦判定部12は、第2実施形態の
図6におけるステップS280の制御処理と同じように、記憶部14から取得した過去の制御処理で記憶された振戦の周波数が今回の制御処理で振戦と判定された際の周波数より低下しているか否かに基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。
【0272】
振戦判定部12は、ステップS600で振戦と判定された際の周波数が記憶部14から取得した過去の振戦の周波数より低下していると判定する場合、ステップS630において、振戦が重症化していると判定する。
【0273】
そして、運転者の振戦が重症化していると判定する場合、ステップS630において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせない。具体的に、振戦判定部12は、走行制御部13を介してイグニッションをオンさせるための制御信号を駆動部40におけるイグニッション装置に送信しない。このため、運転者によってイグニッションスイッチがオンされた場合であっても、エンジンの動作が開始されない。
【0274】
一方、振戦判定部12は、ステップS600で振戦と判定された際の周波数が記憶部14から取得した過去の振戦の周波数より低下していると判定しない場合、ステップS640において、振戦が重症化していないと判定する。
【0275】
そして、運転者の振戦が重症化していると判定しない場合、ステップS720において、振戦判定部12は、イグニッションをオンさせる。具体的に、振戦判定部12は、走行制御部13を介してイグニッションをオンさせるための制御信号を駆動部40におけるイグニッション装置に送信する。
【0276】
ステップS740において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生している情報、振戦の周波数および振幅の情報、判定した振戦の重症度の進行の情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0277】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を表示することで、運転者に振戦に関する情報を報知する。具体的に、ディスプレイ20は、運転者が振戦を発生していること、振戦の周波数および振幅、制御装置1が判定した振戦の重症度の進行それぞれの情報を表示する。
【0278】
また、通信部30は、振戦判定部12から振戦に関する情報を受信すると、当該振戦に関する情報を車両の外部装置に送信する。例えば、通信部30は、振戦が重症化している情報を受信すると、運転者が携帯する携帯端末に、振戦が重症化している情報を送信してもよい。また、通信部30は、振戦が重症化している情報を受信すると、運転者の家族が携帯する携帯端末、運転者のかかりつけ医が勤務する医療機関に備えられたパソコン端末および警察内に備えられたパソコン端末のいずれか1つまたは複数に振戦が重症化している情報を送信してもよい。さらに、通信部30は、車両の外部に設けられたサーバまたはクラウドに振戦が重症化している情報を送信してもよい。
【0279】
これによれば、本実施形態の制御装置1は、運転を開始する前の状態において、運転者の振戦の重症度の進行を判定することができる。このため、車両の走行に伴う振動および車両自身が発生させる振動が生じない状態で運転者の振戦の重症度の進行を判定できるので、重症度の進行を判定し易い。
【0280】
(第8実施形態の変形例)
上述の第8実施形態では、振戦判定部12が今回の制御処理で振戦と判定された際の周波数が過去の制御処理で記憶された振戦の周波数より低下しているか否かに基づいて振戦の重症度の進行を判定する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦と判定された際の振幅が過去の制御処理で記憶された振戦の振幅の大きさより低下しているか否かに基づいて振戦の重症度の進行を判定してもよい。
【0281】
この場合、
図17に示すように、ステップS610において、振戦判定部12は、記憶部14から過去の制御処理で記憶された振戦に関する情報のうち、振幅の情報を取得する。そして、ステップS625において、振戦判定部12は、第2実施形態の変形例の
図7におけるステップS285の制御処理と同じように、今回の制御処理で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の制御処理で記憶された振戦の振幅の大きさより増大しているか否かに基づいて、振戦の重症度の進行を判定する。
【0282】
振戦判定部12は、ステップS625で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の振戦における振幅の大きさより増大していると判定する場合、ステップS630において、振戦が重症化していると判定する。一方、振戦判定部12は、ステップS625で振戦と判定された際の振幅が記憶部14から取得した過去の振戦における振幅の大きさより増大していると判定しない場合、ステップS640において、振戦が重症化していないと判定する。
【0283】
このように、制御装置1は、振戦の振幅の変化に基づいて振戦の重症度の進行を判定してもよい。
【0284】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、
図18~
図21を参照して説明する。本実施形態では、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するための操作指示が複数回なされる点が第7実施形態と相違している。そして、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために信号解析部11および振戦判定部12が実行する制御処理が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0285】
運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために振戦判定部12および信号解析部11が実行する制御処理の一例を
図18および
図19に示すフローチャートを参照して説明する。
【0286】
ステップS500で運転者によってイグニッションスイッチがオンされた判定すると、ステップS512において、振戦判定部12は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つに対して指示する第1操作指示をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。例えば、振戦判定部12は、ブレーキペダルに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信したとする。
【0287】
これにより、ディスプレイ20は、ブレーキペダルに対して指示する第1操作指示の情報を表示して運転者に指示された第1操作指示の情報を報知する。なお、
図20では、ブレーキペダルに対して指示する第1操作指示の変位量を破線で示している。
【0288】
そして、運転者は、ディスプレイ20に第1操作指示の情報が表示されると、当該操作内容に従ってブレーキペダルを操作する。具体的に、運転者は、
図20に示すようなブレーキペダルの変位量に近づくようにブレーキペダルを踏み込む。そして、運転者は、経過時間に伴い変化する指示値に応じてブレーキペダルの変位量を変化させる。ディスプレイ20は、
図20の実線に示すように、運転者の操作によって変化するブレーキペダルの変位量を表示する。
【0289】
図19に示すように、ステップS402において、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つから第1操作指示に応じた検出信号である第1検出信号を受信するまで待機する。本実施形態では、ステップS402において、信号解析部11は、振戦判定部12から送信される第1操作指示に応じたブレーキ検出信号を受信するまで待機する。
【0290】
第1操作指示に応じた第1検出信号を受信すると、ステップS404において、信号解析部11は、受信した第1検出信号の周波数および振幅を算出する。具体的に、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSBからブレーキ検出信号を受信すると、受信したブレーキ検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、受信したブレーキ検出信号の周波数および振幅を算出する。そして、ステップS406において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0291】
図18に戻り、ステップS514において、振戦判定部12は、第1操作指示に応じた第1検出信号の周波数および振幅の情報受信するまで待機する。すなわち、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つの周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。本実施形態では、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。
【0292】
そして、ブレーキ検出信号の周波数および振幅の情報を受信すると、振戦判定部12は、ステップS516に進む。ステップS516において、振戦判定部12は、操作部のうち第1操作指示の対象とは異なる操作部に対して指示する第2操作指示をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。本実施形態では、振戦判定部12は、アクセルペダルおよびステアリングホイールのどちらかに対して指示する第2操作指示をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。例えば、振戦判定部12は、アクセルペダルに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信したとする。このように、振戦判定部12は、第1操作指示を指示するタイミングとは異なるタイミングで第2操作指示を行う。
【0293】
これにより、ディスプレイ20は、アクセルペダルに対して指示する第2操作指示の情報を表示して運転者に指示された第2操作指示の情報を報知する。なお、
図21では、アクセルペダルに対して指示する第2操作指示の変位量を破線で示している。
【0294】
そして、運転者は、ディスプレイ20に第2操作指示の情報が表示されると、当該操作内容に従ってアクセルペダルを操作する。具体的に、運転者は、
図21に示すようなアクセルペダルの変位量に近づくようにアクセルペダルを踏み込む。ディスプレイ20は、
図21の実線に示すように、運転者の操作によって変化するアクセルペダルの変位量を表示する。
【0295】
信号解析部11は、
図19に示すように、ステップS412において、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つから第2操作指示に応じた検出信号である第2検出信号を受信するまで待機する。本実施形態では、信号解析部11は、振戦判定部12から送信される第2操作指示に応じたアクセル検出信号を受信するまで待機する。
【0296】
第2操作指示に応じた第2検出信号を受信すると、ステップS414において、信号解析部11は、受信した第2検出信号の周波数および振幅を算出する。具体的に、信号解析部11は、アクセルペダルセンサSAからアクセル検出信号を受信すると、受信したアクセル検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、受信したアクセル検出信号の周波数および振幅を算出する。そして、ステップS416において、信号解析部11は、アクセル検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報を振戦判定部12に送信する。
【0297】
図18に戻り、ステップS518において、振戦判定部12は、第2操作指示に応じた第2検出信号の周波数および振幅の情報受信するまで待機する。すなわち、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか1つの周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。本実施形態では、振戦判定部12は、アクセル検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。
【0298】
ステップS532において、振戦判定部12は、受信したブレーキ検出信号およびアクセル検出信号それぞれの周波数が規定幅内であるか否かを判定する。
【0299】
ステップS532で信号解析部11から受信したブレーキ検出信号およびアクセル検出信号それぞれの周波数が規定幅内であると判定しない場合、振戦判定部12は、ステップS540に進む。一方、ステップS532で信号解析部11から受信したブレーキ検出信号およびアクセル検出信号のどちらか一方の周波数が規定幅内であると判定する場合、振戦判定部12は、ステップS560に進む。
【0300】
そして、ステップS560でブレーキ検出信号およびアクセル検出信号のどちらか一方の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS570において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する。
【0301】
ここで、ブレーキ検出信号およびアクセル検出信号の少なくとも一方の振幅が閾値以上であって、運転者に振戦が発生していると判定されたとする。
【0302】
また、上述したように、振戦のうちの企図振戦は、運転者がブレーキペダルおよびアクセルペダルの踏込動作を切り替える際に発生し易い。このため、振戦判定部12によって運転者に複数の異なる動作をさせた際において、ブレーキ検出信号およびアクセル検出信号の少なくとも一方の周波数が規定幅内であると判定される場合、運転者に企図振戦が発生していると想定される。このため、ステップS650において、振戦判定部12は、振戦が企図振戦であると推定する。
【0303】
その後の制御処理は第7実施形態で説明したステップS710~ステップS750の処理と同じであるため、それらの説明を省略する。
【0304】
このように、本実施形態の振戦判定部12は、運転を開始する前の状態において、異なるタイミングで指示された第1操作指示および第2操作指示を行う。そして、運転者が振戦判定部12から指示された操作を複数の操作部それぞれに異なるタイミングで行った際に信号解析部11が算出する複数の周波数に基づいて運転者の振戦を判定する。これによれば、運転者の振戦が企図振戦であることを検出することができる。
【0305】
(第9実施形態の変形例)
上述の第9実施形態では、振戦判定部12がブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか2つに対して第1操作指示および第2操作指示を指示する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールの全てに対して順番に第1操作指示、第2操作指示および第3操作指示を指示する構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSそれぞれが順番に検出する検出信号に基づいて振戦を判定してもよい。
【0306】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について、
図22~
図25を参照して説明する。本実施形態では、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するための操作指示が複数同時になされる点が第7実施形態と相違している。そして、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために信号解析部11および振戦判定部12が実行する制御処理が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0307】
運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定するために振戦判定部12および信号解析部11が実行する制御処理の一例を
図22および
図23に示すフローチャートを参照して説明する。
【0308】
ステップS500で運転者によってイグニッションスイッチがオンされた判定すると、ステップS522において、振戦判定部12は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか2つに対して指示する第1操作指示および第2操作指示をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。例えば、振戦判定部12は、ブレーキペダルおよびステアリングホイールそれぞれに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信したとする。
【0309】
これにより、ディスプレイ20は、ブレーキペダルに対して指示する第1操作指示の情報を表示して運転者に指示された第1操作指示の情報を報知する。また、ディスプレイ20は、第2操作指示の情報とともに、ステアリングホイールに対して指示する第2操作指示の情報を表示して運転者に指示された第2操作指示の情報を報知する。なお、
図24では、ブレーキペダルに対して指示する第1操作指示の変位量を破線で示している。また、
図25では、ステアリングホイールに対して指示する第2操作指示の変位量を破線で示している。
【0310】
そして、運転者は、ディスプレイ20に第1操作指示の情報が表示されると、当該操作内容に従ってブレーキペダルを操作する。具体的に、運転者は、
図24に示すようなブレーキペダルの変位量に近づくようにブレーキペダルを踏み込む。ここで、本実施形態では、ブレーキペダルには、比較的小さい変位量の操作指示がなされたとする。ディスプレイ20は、
図24の実線に示すように、運転者の操作によって変化するブレーキペダルの変位量を表示する。
【0311】
また、運転者は、ディスプレイ20に第2操作指示の情報が表示されると、当該操作内容に従ってステアリングホイールを操作する。具体的に、運転者は、
図25に示すようなステアリングホイールへの荷重に近づくようにステアリングホイールを回転させる。ここで、本実施形態では、ステアリングホイールへは、比較的小さい荷重の操作指示がなされたとする。ディスプレイ20は、
図25の実線に示すように、運転者の操作によって変化するステアリングホイールへの荷重を表示する。
【0312】
運転者は、第1操作指示の操作内容と第2操作指示の操作内容を同時に行う。
【0313】
図23に示すように、ステップS408において、信号解析部11は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか2つから送信される第1検出信号および第2検出信号を受信するまで待機する。第1検出信号は、第1操作指示に応じた検出信号である。第2検出信号は、第2操作指示に応じた検出信号である。本実施形態では、信号解析部11は、振戦判定部12から送信される第1操作指示に応じたブレーキ検出信号および第2操作指示に応じたステアリング検出信号を受信するまで待機する。
【0314】
ブレーキペダルセンサSBからブレーキ検出信号を受信すると、ステップS418において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、ブレーキ検出信号の周波数および振幅を算出する。また、ステアリングセンサSSからステアリング検出信号を受信すると、ステップS418において、信号解析部11は、ステアリング検出信号に対してフーリエ解析を行うことで、ステアリング検出信号の周波数および振幅を算出する。すなわち、信号解析部11は、第1検出信号および第2検出信号それぞれの周波数および振幅を算出する。
【0315】
そして、ステップS428において、信号解析部11は、ブレーキ検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報と、ステアリング検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報とを振戦判定部12に送信する。以下、第1検出信号に対して算出された周波数を第1周波数、第2検出信号に対して算出された周波数を第2周波数とも呼ぶ。
【0316】
図22に戻り、ステップS524において、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSのいずれか2つの周波数および振幅の情報を受信するまで待機する。本実施形態では、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報と、ステアリング検出信号に対して算出した周波数および振幅の情報とを受信するまで待機する。
【0317】
ステップS534において、振戦判定部12は、第1周波数および第2周波数が規定幅内であるか否かを判定する。
【0318】
ステップS534で第1周波数および第2周波数のいずれも規定幅内であると判定しない場合、振戦判定部12は、ステップS540に進む。一方、ステップS534で信号解析部11から受信したブレーキ検出信号およびアクセル検出信号のどちらか一方の周波数が規定幅内であると判定する場合、振戦判定部12は、ステップS560に進む。
【0319】
そして、ステップS560でブレーキ検出信号およびアクセル検出信号のどちらか一方の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS570において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する。
【0320】
ここで、第1周波数および第2周波数のいずれの振幅も閾値以上であると判定されたとする。
【0321】
また、上述したように、振戦のうちの安静時振戦は、運転者がペダルを比較的小さい変位量で変位させつつ、ステアリングホイールに比較的小さな荷重を加えた際に発生し易い。このため、振戦判定部12によって運転者に複数の異なる動作を同時にさせた際において、第1周波数および第2周波数のいずれの周波数も規定幅内であると判定される場合、運転者に安静時振戦が発生していると想定される。このため、第1周波数および第2周波数のいずれの振幅も閾値以上である場合、ステップS655において、振戦判定部12は、振戦が安静時振戦であると推定する。
【0322】
その後の制御処理は第7実施形態で説明したステップS710~ステップS750の処理と同じであるため、それらの説明を省略する。
【0323】
このように、本実施形態の振戦判定部12は、運転を開始する前の状態において、運転者に対して、複数の操作部それぞれに同時に操作を指示する。そして、振戦判定部12は、運転者が振戦判定部12から指示された操作を複数の操作部に同時に行った際に信号解析部11が算出する複数の周波数に基づいて運転者の振戦の発生を判定する。これによれば、運転者の振戦が安静時振戦であることを検出することができる。
【0324】
(第10実施形態の変形例)
上述の第10実施形態では、振戦判定部12がブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか2つに対して同時に第1操作指示および第2操作指示を指示する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦判定部12は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールの全てに対して同時に第1操作指示、第2操作指示および第3操作指示を指示する構成であってもよい。すなわち、振戦判定部12は、ブレーキペダルセンサSB、アクセルペダルセンサSAおよびステアリングセンサSSそれぞれが同時に検出する検出信号に基づいて振戦を判定してもよい。
【0325】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について、
図26および
図27を参照して説明する。本実施形態では、車両制御システム100が不図示の反力制御部60を備える点が第7実施形態と相違している。
【0326】
本実施形態の車両制御システム100では、不図示のブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれに不図示の反力発生装置が設けられている。そして、本実施形態の車両制御システム100は、
図26に示すように、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれに設けられる反力発生装置の作動を制御する反力制御部60を備える。
【0327】
ブレーキペダルに設けられる反力発生装置は、ブレーキペダルが運転者に踏まれる際に、ブレーキペダルに加えられる踏力に応じた反力を発生させる装置である。アクセルペダルに設けられる反力発生装置は、アクセルペダルが運転者に踏まれる際に、アクセルペダルに加えられる踏力に応じた反力を発生させる装置である。ステアリングホイールに設けられる反力発生装置は、ステアリングホイールが運転者の操作によって回転する際に、ステアリングホイールに加えられる荷重に応じた反力を発生させる装置である。
【0328】
反力制御部60は、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールそれぞれに設けられる反力発生装置の作動を制御する制御部である。反力制御部60は、CPU、ROMおよびRAM等のメモリを含んで構成されるマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。反力制御部60は、ROM内に記憶されたプログラムに基づいて各種演算、処理を行う。
【0329】
具体的に、反力制御部60は、ブレーキペダル、アクセルペダル、ステアリングホイールそれぞれに設けられる反力発生装置が発生させるそれぞれの反力を制御する。反力制御部60は、ブレーキペダル、アクセルペダル、ステアリングホイールそれぞれに加えられる荷重が大きいほどアクセルペダル、ステアリングホイールそれぞれに設けられる反力発生装置が発生させる反力を大きくさせる。
【0330】
また、反力制御部60は、制御装置1に接続されている。反力制御部60は、運転者に振戦が発生しているか否かを判定する際、制御装置1から送信される制御信号によって、ブレーキペダル、アクセルペダル、ステアリングホイールそれぞれに設けられる反力発生装置が発生させるそれぞれの反力を制御する。
【0331】
ここで、本実施形態の反力制御部60の作動について説明する。振戦判定部12は、運転者によってイグニッションスイッチがオンされると、運転者に対して操作部の操作を指示する。具体的に、振戦判定部12は、イグニッションスイッチがオンされた判定すると、ブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信する。
【0332】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12からブレーキペダル、アクセルペダルおよびステアリングホイールのいずれか1つに対して指示する操作内容の情報を受信すると、当該操作内容の情報を表示して運転者に指示された操作内容の情報を報知する。ここで、例えば、振戦判定部12は、ブレーキペダルに対して指示する操作内容をディスプレイ20に表示させるための制御信号を通信部30に送信したとする。すると、運転者は、ディスプレイ20に操作内容の情報が表示されると、当該操作内容に従ってブレーキペダルを踏み込む。
【0333】
そして、運転者のブレーキペダルの踏み込む操作に伴って、ブレーキペダルに設けられた反力発生装置は、ブレーキペダルに加えられる踏力に応じた反力を発生させる。
【0334】
この際、制御装置1が
図27に示すように、ブレーキペダルに設けられた反力発生装置が発生させる反力を、車両が走行している際に当該反力発生装置が発生させる反力よりも大きな反力を発生させるための制御信号を反力発生部に送信する。すなわち、制御装置1は、運転を開始する際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定する際の反力発生装置が発生させる反力を、車両が走行している際に運転者に振戦が発生しているか否かを判定する際の反力発生装置が発生させる反力よりも大きくさせる。
【0335】
なお、
図27の実線は、運転を開始する際に振戦判定部12が運転者に振戦が発生しているか否かを判定する場合における反力発生装置が発生させる反力を示す。また、
図27の破線は、車両が走行している際に振戦判定部12が運転者に振戦が発生しているか否かを判定する場合における反力発生装置が発生させる反力を示す。
【0336】
これによれば、運転者が振戦判定部12から指示される操作内容に従って操作部を操作する際に、操作部に必要な荷重が、車両が走行している際に比較して大きくなる。すなわち、運転者は、操作部を操作する際に、車両が走行している際よりも操作部に大きな力を加えることになる。すると、運転者が操作部を操作する際に、振戦の症状が現れやすくなる。このため、制御装置1が運転者の振戦を検出し易くなる。
【0337】
(第11実施形態の変形例)
上述の第11実施形態では、制御装置1がブレーキペダルに設けられた反力発生装置が発生させる反力を、車両が走行している際に当該反力発生装置が発生させる反力よりも大きくする例について説明したが、これに限定されない。例えば、制御装置1は、ブレーキペダルに設けられた反力発生装置が発生させる反力を、車両が走行している際に当該反力発生装置が発生させる反力よりも小さくする構成であってもよい。
【0338】
これによれば、運転者が振戦判定部12から指示される操作内容に従って操作部を操作する際に、操作部に必要な荷重が、車両が走行している際に比較して小さくなる。すなわち、運転者は、操作部を操作する際に、車両が走行している際よりも小さな力で操作部を操作することができるようになる。すると、運転者に振戦が発生している際に、振戦検出部S1によって運転者の振戦に起因する振動を検出し易くなる。このため、制御装置1が運転者の振戦を検出し易くなる。
【0339】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態について、
図28を参照して説明する。本実施形態では、振戦判定部12が実行する制御処理の一部が第7実施形態と相違している。これ以外は、第7実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0340】
本実施形態の制御装置1は、第2実施形態の
図5を用いて説明したように、記憶部14が振戦判定部12に接続されている。そして、記憶部14は、振戦判定部12から送信される情報を受信可能であって、且つ、振戦判定部12に情報を送信可能に構成されている。
【0341】
続いて、振戦判定部12が実行する制御処理の一例を
図28に示すフローチャートを参照して説明する。なお、
図28に示す振戦判定部12が実行する制御フローで付されたステップのうち、
図13に示した第7実施形態の振戦判定部12が実行する制御フローと同じ符号が付されたステップは、制御処理の内容が同じであるため、その説明を省略する。
【0342】
ステップS560でブレーキ検出信号、アクセル検出信号、ステアリング検出信号の振幅が閾値以上であると判定する場合、ステップS570において、振戦判定部12は、運転者に振戦が発生していると判定する。
【0343】
そして、ステップS660において、振戦判定部12は、ブレーキ検出信号、アクセル検出信号およびステアリング検出信号それぞれの周波数に基づいて、振戦を発生させる要因である疾患を推定する。本実施形態では、振戦判定部12は、第1実施形態の
図3におけるステップS240の制御処理と同じように、疾患を判定する。そして、ステップS670において、振戦判定部12は、振戦と判定された運転者の情報と、当該運転者において推定した疾患情報とを紐づけして記憶部14に送信する。
【0344】
記憶部14は、振戦判定部12から振戦と判定された運転者の情報と、当該運転者において推定した疾患情報とが紐づけされた情報を受信すると、受信した情報を記憶する。
【0345】
ステップS680において、振戦判定部12は、記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があるか否かを判定する。具体的に、振戦判定部12は、今回の制御処理で振戦が発生していると判定された運転者と同一の運転者において、記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があるか否かを判定する。
【0346】
そして、ステップS680で記憶部14に過去の制御処理で記憶された疾患情報があると判定された場合、ステップS690において、振戦判定部12は、運転者に治療を促すための情報をディスプレイ20および通信部30に送信する。
【0347】
これにより、ディスプレイ20は、振戦判定部12から運転者に治療を促すための情報を受信すると、当該運転者に治療を促すための情報を表示することで、運転者に治療を促す。
【0348】
その後の制御処理は第7実施形態で説明したステップS710~ステップS750の処理と同じであるため、それらの説明を省略する。
【0349】
これによれば、運転を開始する前の状態において、服薬した薬の効果が低下したり、服薬することを忘れたりすることで、振戦の症状が発生している場合、運転者に治療を促すことができる。
【0350】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0351】
上述の実施形態では、振戦検出装置が車両制御システム100に設けられており、車両制御システム100における制御装置1が振戦検出装置として機能する例について説明したが、これに限定されない。例えば、振戦検出装置は、車両制御システム100とは異なるシステムに設けられていてもよい。また、振戦検出装置は、車両制御システム100に設けられている場合であっても、制御装置1とは別に構成されていてもよい。
【0352】
ステアリングセンサSSが設けられるステアリングホイールの形状は円環形状に限定されない。例えば、二輪車のハンドルのような形状でも良いし、飛行機の操縦桿のような形状でもよい。
【0353】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0354】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0355】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0356】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0357】
11 信号解析部
12 振戦判定部
SB、SA、SS 振戦検出部