(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006484
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】挟持装置
(51)【国際特許分類】
F16B 2/20 20060101AFI20240110BHJP
F16B 39/30 20060101ALI20240110BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16B2/20 A
F16B39/30 Z
F16B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107385
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA13
3J022EA02
3J022EB01
3J022EC02
3J022ED02
3J022ED06
3J022ED07
3J022ED08
3J022ED10
3J022ED13
3J022ED20
3J022FA01
3J022FB13
3J022FB17
3J022GA06
3J022GA12
3J022GB25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ねじ体の逆回転防止、例えば、ねじ体を緩ませる方向の回転を防止することで緩み止めを確実に行うことができる挟持装置を提供する。
【解決手段】押圧部150と受圧部160の間に位置された、被挟持体Pを挟持する挟持装置1であって、第一支持部122における第一雌ねじ部及び雌ねじ体140における第二雌ねじ部が、それぞれ雄ねじ体130における雄ねじ部に螺合される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧部と受圧部の間に位置された、被挟持体を挟持する挟持装置であって、
対向した第一支持部と第二支持部とを有する本体と、
適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝と、前記第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、
前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体と、を備え、
前記第一支持部は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一雌ねじ部を有し、
前記第二支持部は、前記押圧部からの圧力を、被挟持体を介して受ける前記受圧部を有し、
前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二雌ねじ部を有し、
前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする挟持装置。
【請求項2】
前記雌ねじ体は、環状突出部を有し、
前記第一支持部は、前記第一雌ねじ部の一端側に環状凹部を有し、
前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されると共に、互いに接合される際、前記環状突出部が前記環状凹部に収容可能に構成されることを特徴とする請求項1記載の挟持装置。
【請求項3】
前記環状突出部の外周面に凸状の挿入側係合部を有し、
前記環状凹部の内周面に凸状の収容側係合部を有し、
前記環状突出部が前記環状凹部に収容された状態において、前記挿入側係合部と前記収容側係合部とが、少なくとも一箇所以上の変位部を有し、当該変位部において前記挿入側係合部と前記収容側係合部とが干渉し、弾性変形及び/又は塑性変形することを特徴とする請求項2記載の挟持装置。
【請求項4】
前記収容側係合部は収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて成り、前記挿入側係合部は前記収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて成ること、及び/又は、前記収容側係合部は前記収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて成り、前記挿入側係合部は前記収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて成ること、を特徴とする請求項3記載の挟持装置。
【請求項5】
前記押圧部は、キャップ体であり、
前記キャップ体は、前記雄ねじ体の先端部に対して相対回転可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の挟持装置。
【請求項6】
前記第二支持部は、前記第一支持部に向け開口する、内面が略半球面状の第一凹座面を有し、
前記受圧部は、一端面側に設けられた受圧面と、他端面側に設けられた前記第一凹座面に対応する第一球面状部とで構成され、
前記第一球面状部が、前記第一凹座面に摺動かつ傾斜可能に配されるとともに、前記受圧面が、前記第一凹座面の開口端より外方に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の挟持装置。
【請求項7】
前記受圧部は、前記受圧面と前記第一凹座面との間に、径方向外側に向けて制限部を有し、
前記制限部は、前記第一凹座面の前記開口端の付近に当接することで、前記第一球面状部の前記摺動かつ傾斜を所定範囲内に制限することを特徴とする請求項6記載の挟持装置
【請求項8】
前記第一凹座面は、その中央に第一挿通孔を有し、
前記受圧部は、前記受圧面に内面が略半球面上の第二凹座面を有するとともに前記第二凹座面の中央に第二挿通孔が設けられ、
前記第二凹座面に対応する第二球面状部を有する頭部と、前記第一挿通孔に挿入される軸部とで構成される固定部材を有することを特徴とする、請求項6又は請求項7のいずれかに記載の挟持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築、建設、土木現場等で仮設構造物を組み立てるにあたり、構造用の各鋼材を溶接、ボルト締結、あるいは溶接とボルト締結との併用により固定するのが一般的であった。ところが、上記の各鋼材を溶接により固定するには、専門の作業者でなければ作業をすることができず、作業自体時間もかかる。解体も面倒で、溶断した鋼材は再使用できない場合が多い等の不都合がある。ボルトにより締結する場合には、ボルトの孔位置を合わせるのに時間がかかり、この孔位置がズレているときは孔を開けなおさなければならない等の不都合がある。
【0003】
これらの不都合を改善するために、仮設構造物用の挟締金具が知られている。この挟締金具を用いて、鋼材などの部材同士を挟持することで、仮設構造物を組み立てる。例えば、特許文献1には、仮設構造物の鋼材を挟み込む飲込部と、飲込部の上部に装着され鋼材を固定する締付ボルトと、飲込部の下部に設けられ鋼材の底部を支える受座とを備えた挟締金具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ねじ体を締め付けることで、部材を挟持する挟持装置においては、ねじ体の確実な緩み対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、押圧部と受圧部の間に位置された、被挟持体を挟持する挟持装置であって、対向した第一支持部と第二支持部とを有する本体と、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝と、前記第一螺旋溝とは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝とが、軸部の外周面における同一領域内に重複して、形成されて成る雄ねじ部を有する雄ねじ体と、前記雄ねじ体と螺合し得る雌ねじ体と、を備え、前記第一支持部は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の一方に螺合し得る第一雌ねじ部を有し、前記第二支持部は、前記押圧部からの圧力を、被挟持体を介して受ける前記受圧部を有し、前記雌ねじ体は、前記雄ねじ体の第一螺旋溝又は第二螺旋溝の他方に螺合し得る第二雌ねじ部を有し、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されることを特徴とする挟持装置である。
【0007】
また、本発明の前記挟持装置は、前記雌ねじ体は、環状突出部を有し、前記第一支持部は、前記第一雌ねじ部の一端側に環状凹部を有し、前記第一雌ねじ部及び前記第二雌ねじ部が、それぞれ前記雄ねじ体の雄ねじ部に螺合されると共に、互いに接合される際、前記環状突出部が前記環状凹部に収容可能に構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の前記挟持装置は、前記環状突出部の外周面に凸状の挿入側係合部を有し、前記環状凹部の内周面に凸状の収容側係合部を有し、前記環状突出部が前記環状凹部に収容された状態において、前記挿入側係合部と前記収容側係合部とが、少なくとも一箇所以上の変位部を有し、当該変位部において前記挿入側係合部と前記収容側係合部とが干渉し、弾性変形及び/又は塑性変形することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の前記挟持装置は、前記収容側係合部は収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて成り、前記挿入側係合部は前記収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて成ること、及び/又は、前記収容側係合部は前記収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて成り、前記挿入側係合部は前記収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて成ること、を特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記挟持装置は、前記押圧部は、キャップ体であり、前記キャップ体は、前記雄ねじ体の先端部に対して相対回転可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の前記挟持装置は、前記第二支持部は、前記第一支持部に向け開口する、内面が略半球面状の第一凹座面を有し、前記受圧部は、一端面側に設けられた受圧面と、他端面側に設けられた前記第一凹座面に対応する第一球面状部とで構成され、前記第一球面状部が、前記第一凹座面に摺動かつ傾斜可能に配されるとともに、前記受圧面が、前記第一凹座面の開口端より外方に位置することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の前記挟持装置は、前記受圧部は、前記受圧面と前記第一凹座面との間に、径方向外側に向けて制限部を有し、前記制限部は、前記第一凹座面の前記開口端の付近に当接することで、前記第一球面状部の前記摺動かつ傾斜を所定範囲内に制限することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の前記挟持装置は、前記第一凹座面は、その中央に第一挿通孔を有し、前記受圧部は、前記受圧面に内面が略半球面上の第二凹座面を有するとともに前記第二凹座面の中央に第二挿通孔が設けられ、前記第二凹座面に対応する第二球面状部を有する頭部と、前記第一挿通孔に挿入される軸部とで構成される固定部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の挟持装置によれば、ねじ体の逆回転防止、例えば、ねじ体を緩ませる方向の回転を防止することで緩み止めを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る挟持装置を示す(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図3】本体の第一支持部に設けられた環状凹部における収容側係合部を示す(A)は正面断面図、(B)は下面図である。
【
図4】受圧部を示す(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は(A)のBを拡大した図面であり、(D)は(B)のCを拡大した図面である。
【
図5】雄ねじ体を示す(A)は正面図、(B)は(A)の両螺旋領域の部分拡大図、(C)は、押圧部の下面図である。
【
図6】両螺旋溝領域における雄ねじ部を示す平面図である。
【
図7】雄ねじ体を示す(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は(B)のA-A矢視断面図である。
【
図8】(A)は第一雌ねじ部の正面断面図であり、(B)は第一雌ねじ部と螺旋方向が逆となる第二雌ねじ部の正面断面図である。
【
図9】(A)乃至(C)は、挟持装置における第一雌ねじ部と第二雌ねじ部の相対回転動作を示す正面図である。
【
図10】(A)乃至(C)は、挟持装置の使用方法を示す正面図である。
【
図11】(A)乃至(C)は、挟持装置から被挟持体を外す方法を示す正面図である。
【
図12】挿入側係合部と収容側係合部との係合状態における、相対回転抑制構造を説明する図である。
【
図13】挿入側係合部と収容側係合部との係合状態における、相対回転抑制構造を示す部分拡大斜視図である。
【
図14】第二実施形態に係る雄ねじ体とキャップ体の正面図である。
【
図17】第3実施形態に係る挟持装置を示す正面図である。
【
図20】(A)及び(B)は、制限部の動作を模式的に示す正面図である。
【
図21】第3実施形態に係る可動受圧体の変形例に係る本体の正面断面図である。
【
図22】本変形例に係る可動受圧体を示す(A)は上面図であり、(B)は正面図であり、(C)は正面断面図である。
【
図23】固定部材を示す(A)は正面図であり、(B)は上面図である。
【
図24】(A)及び(B)は、可動受圧体の動作を示す正面断面図である。
【
図25】本実施形態の雄ねじ部及び雌ねじ部の締結構造の変形例に係る正面断面図である。
【
図26】挟持装置の受圧部の変形例に係る正面図である。
【
図27】挟持装置の基部の変形例に係る斜視図である。
【
図28】挟持装置の支持部の変形例に係る斜視図である。
【
図29】挟持方向が異なる複数の支持部の組を備える挟持装置を示す(A)は側面図であり、(B)は正面図であり。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る挟持装置1について、
図1~
図13を参照して説明する。なお、実施形態として記載され又は図面に示された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲を前述した内容に限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「ある方向に向かって」「平行」、「直交」、「垂直」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは一義的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度及び距離をもって相対的に変位した状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」、「均等」及び「等密度」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差、又は、比率が存在した状態も表すものとする。例えば、三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での三角錐、円錐、三角柱及び円柱等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部及び面取り部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「形成される」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0017】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、ここで便宜的にZ軸方向は、
図1に示す雄ねじ体130の中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって
図1の左右方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。また、X軸及びY軸によって規定されるXY平面が延びる任意の方向を指して「水平方向」と呼ぶ。
【0018】
また、以下の説明においては、Z軸方向を上下方向とし、Z軸方向の正の側(+Z側)を「上側(Z軸方向上側)」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「下側(Z軸方向下側)」と記す。また、Z軸を中心とする径方向を単に「径方向」と記し、Z軸を中心とする周方向(θ方向)を単に「周方向」と記す。X軸方向を前後方向(長さ方向)とし、X軸方向の正の側(+X側)を「前方」と記し、X軸方向の負の側(-X側)を「後方」と記す。Y軸方向を幅方向とする。なお、径方向、周方向、上下方向、上側および下側、前後方向(長さ方向)、前方および後方、幅方向とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。
【0019】
なお、本明細書において、延びる、とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、Z軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°以下の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0020】
本実施形態の挟持装置1は、雄ねじ体130を締め付けることで、押圧部150と受圧部160の間に位置する被挟持体Pを挟持する。さらに被挟持体Pが挟持された状態において、雌ねじ体140を用いて、雄ねじ体130が緩むことを規制する。以下、詳細を説明する。
【0021】
図1に示すように、挟持装置1は、本体120と雄ねじ体130と雌ねじ体140を備える。
【0022】
本体120は、基部121と、第一支持部122と、第二支持部127とを有する。第一支持部122は、基部121の上側(+Z側)から前方(+X側)に延びて形成され、第二支持部127は、基部121の下側(-Z側)から前方(+X側)に延びて形成される。第一支持部122と第二支持部127は、互いに略平行な関係にある。全体として、本体120は、前方(+X側)へ向かって開口した略U字状に形成されている。
【0023】
図2に示すように、第一支持部122は、その先端側に、Z軸方向に貫通する貫通孔122aを有する。貫通孔122aは、Z軸方向上側から順に第一雌ねじ部123と環状凹部125を有する。
【0024】
図8(A)に示すように、第一雌ねじ部123は、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋条123aが形成される。
【0025】
図2に示すように、環状凹部125は、第二支持部127に向けて、貫通孔122aの一端側に形成されている。
図3に示すように、環状凹部125の内周面125aは、傾斜状であり、Z軸方向に沿って径方向に拡径又は縮径して形成される。この環状凹部125は、
図7で示す雌ねじ体140と互いに接合された状態でおいて、雌ねじ体140の環状突出部141bを収容できるように傾斜が形成されている。本実施形態では、内周面125aは、Z軸方向下側(-Z側)に向かって拡径する。
図3(A)に示すように、この内周面125aには、Z軸方向に沿って、均等間隔で複数の収容側係合部125bが形成される。この収容側係合部125bは、環状の帯状に形成され、凸状となっている。収容側係合部125bの凸状の延びる方向は、Z軸を中心とする周方向と略一致する。
【0026】
この収容側係合部125bは、雌ねじ体140の挿入側係合部142bと周方向に係合可能となっており、後述の相対回転抑制構造30として機能する。
【0027】
図2に示すように、第二支持部127は、その先端側に、第一支持部122に向かって突出する円柱状台座の受圧部160を有する。受圧部160は、押圧部150からの圧力を、被挟持装置Pを介して、円柱状台座上面の受圧面161において受ける。なお、ここで受圧面161は、円形状に設けられているが、勿論円形状に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0028】
図4(A)(C)に示すように、受圧面161には、互いに同じ形状の正四角錐(ピラミッド状)の突起部161aが等密度で複数配列されている。このように受圧面161には、複数の突起部161aにより、凹凸が形成されている。正四角錘の頂角は、正四角錐の頂点を通り底辺の一辺に平行であり、受圧面161に垂直な断面において90°である(拡大
図D参照)。なお、受圧面161に形成された突起部161aの形状は、正四角錐に限定されない。勿論、頂角の角度も90°に限らない。突起部161aの他の形状として、角錐状の突起、円錐状の突起、角柱状、半球状の突起などであっても良い。
【0029】
なお、受圧面161に形成された凹凸は、複数の独立した凹設部が配列されることにより形成されてもよい。さらに、凹凸である複数の突起部161aが等密度に配列されていたが、凹凸の配列はこれに限定されない。複数の突起部161aは、環状に配列されてもよいし、一方向に連ねられ互いに平行になるように配列されてもよい。或いは最密充填状に配設されたものであってもよく、また、これらの突起部161aの形状や、配列などを相互に組み合わせて実施することができる。
【0030】
なお、受圧部160の形状は、円柱状台座に限定されず、その他に例えば、四角状台座、星台座状等でもよい。また、受圧部160は、本体120の第一支持部122と一体構造である必要はなく、受圧部160を別体として、第一支持部122に取り付け可能な構造にしてもよい。
【0031】
図5に示すように、雄ねじ体130は、頭部131と軸部132を有する。頭部131は、軸部132の一端に設けられ、軸部132と比較して大径の外径形状を有する。勿論、頭部131の外径形状は、これに限らず、所謂キャップボルト状に頭部上面から凹設された異形凹部を有するものであってもよい。雄ねじ体130の軸部132には、雄ねじ部133が設けられる。雄ねじ部133は、軸部132の外周面に、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝133aと、前記第一螺旋溝133aとは相異なるリード角及び/リード方向に設定された第二螺旋溝133bとが、同一領域内に重複して形成された両螺旋溝領域W1で構成される(
図5の拡大図参照)。
【0032】
図5(A)(B)に示すように、本実施形態では、雄ねじ部133は、右ねじである第一螺旋溝133a、及び左ねじである第二螺旋溝133bの二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成される。したがって、雄ねじ部133は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体と螺合することが可能となる。勿論、雄ねじ部133は、必ずしも右ねじと左ねじとを形成することに限定するものではなく、適宜のリード角及び/又はリード方向に設定された第一螺旋溝133aと、前記第一螺旋溝133aとは相異なるリード角及び/又はリード方向に設定された第二螺旋溝133bであればよい。
【0033】
図6に示すように、両螺旋溝領域W1においては、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状の条状を成すねじ山Gが、雄ねじ部133の直径方向における一方側(図の右側)及び他方側(図の左側)に交互に設けられる。即ち、このねじ山Gは、その稜線が軸に対して垂直に延びており、ねじ山Gの高さは、周方向中央が高くなり、周方向両端が次第に低くなるように変化する。従って、ねじ山Gの山高さが最も高い地点から、周方向に90°位相差を有する部分は、山高さが低くなる。なお、周方向に180°位相差部分では、山高さはゼロとなっている。ねじ山Gをこのように構成することで、右回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造及び左回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造の二種類の螺旋溝を、ねじ山Gの間に形成することが出来る。
【0034】
なお、二種類の雄ねじ螺旋構造が形成された雄ねじ部133の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0035】
なお、雄ねじ部133は、両螺旋溝領域W1のみで構成してもよいが、これに限らない。たとえば、両螺旋溝領域W1と、第一螺旋溝133a又は第二螺旋溝133bのいずれか一方が形成された片螺旋溝領域W2とで構成されてもよい。
【0036】
図5(A)に戻り、押圧部150は、円柱形状であり、軸部132の他端に設けられる。押圧部150は、被挟持体Pを押圧する押圧面151を有する。
図5(C)に示すように、押圧面151には、互いに同じ形状の正四角錐(ピラミッド状)の突起部151aが等密度で複数配列されている。このように押圧面151には、複数の突起部151aにより、凹凸が形成されている。正四角錘の頂角は、正四角錐の頂点を通り底辺の一辺に平行であり、押圧面151に垂直な断面において90°である。なお、押圧面151に形成された突起部151aの形状は、正四角錐に限定されない。勿論、頂角の角度も90°に限らない。角錐状の突起、円錐状の突起、角柱状、半球状の突起などであっても良い。
【0037】
なお、押圧面151に形成された凹凸は、複数の独立した凹設部が配列されることにより形成されてもよい。さらに、凹凸である複数の突起部151aが等密度に配列されていたが、凹凸の配列はこれに限定されない。複数の突起部151aは、環状に配列されてもよいし、一方向に連ねられ互いに平行になるように配列されてもよい。或いは最密充填状に配設されたものであってもよく、また、これらの突起部151aの形状や、配列などを相互に組み合わせて実施することができる。
【0038】
なお、押圧部150の形状は、円柱状に限定されず、四角柱状、星台座状等でもよい。また、雄ねじ体130の先端部134の端面を押圧部150としてもよい。押圧部150は、雄ねじ体130と一体構造である必要はなく、押圧部150を別体として、雄ねじ体130の先端部134に取り付け可能な構造にしてもよい。
【0039】
図7(A)(B)に示すように、雌ねじ体140は、ナット形状であり、円筒部143を有する。
図7(C)に示すように、円筒部143に形成された貫通孔143aの内周面には、第二雌ねじ部141が形成される。第二雌ねじ部141は、雄ねじ体130の第一螺旋溝133a又は第二螺旋溝133bのいずれか一方に螺合する第二雌ねじ螺旋条141aを有する。本実施形態では、左ねじとしての第二雌ねじ螺旋条141aが形成される。また、
図7(A)に示すように、雌ねじ体140の一端面には、Z軸方向上側(+Z側)に向かって略円錐台形状に突出する環状突出部141bが形成されている。環状突出部141bの外周面142aは、傾斜状であり、Z軸方向に沿って径方向に拡径又は縮径して形成される。この雌ねじ体140の環状突出部141bは、本体120の第一支持部122と互いに接合された状態において、第一支持部122の環状凹部125に収容されるように傾斜が形成されている。
【0040】
本実施形態では、雌ねじ体140の環状突出部141bの外周面142aが、Z軸方向上側(+Z側)に向かって縮径する。この外周面142aには、挿入側係合部142bが複数形成されている。挿入側係合部142bは、帯状に形成され、凸状となっている。挿入側係合部142bの凸状の延びる方向は、雌ねじ体140の半径方向に沿うように設定される。結果、環状突出部141bの外周面142aの凸状の挿入側係合部142bは、軸心から放射状に延びる(
図7(B)参照)。本実施形態では、24個の挿入側係合部142bが周方向に15°の相対位相差をもって等間隔に配置される。ただし、挿入側係合部142bの配設位相差や数量、挿入側係合部142bを配設する間隔はこれに限定されない。
【0041】
この挿入側係合部142bは、収容側係合部125bと周方向に係合可能となっており、後述の相対回転抑制構造30として機能する。
【0042】
図8、
図9は、説明の便宜上、相対回転抑制構造の図示を省略し、簡略化して示している。
【0043】
図8(A)に示すように、本体120の第一支持部122に設けられた、第一雌ねじ部123の貫通孔122aには、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋条123aが形成される。即ち、第一雌ねじ部123の第一雌ねじ螺旋条123aは、雄ねじ体130の雄ねじ部133における第一螺旋溝133aと螺合する。
図8(B)に示すように、雌ねじ体140に設けられた、第二雌ねじ部141の貫通孔143aには、左ねじとしての第二雌ねじ螺旋条141aが形成される。第二雌ねじ螺旋条141aは、雄ねじ体130の雄ねじ部133における第二螺旋溝133bと螺合する。
【0044】
このように、リード角及び/又はリード方向が相異なる二種類の第一雌ねじ部123、第二雌ねじ部141を、たとえば、ダブルナットの如く、雄ねじ体130の雄ねじ部133に螺合させて被挟持体Pを挟持すると、互いの第一雌ねじ部123、第二雌ねじ部141が相対回転しない限り回転緩みし得ないが、その原理について説明する。
【0045】
図9(A)に示すように、右ねじとなる第一雌ねじ部123を緩み向きSa(頭部131側から見て右回り)に回転させようとすると、第一雌ねじ部123は、雄ねじ体130の先端部134の向きJaに螺進しようとする。この第一雌ねじ部123とSa向きに共回りする左ねじとなる第二雌ねじ部141は、雄ねじ体130の頭部131の向きJbに螺進しようとする。従って、第一雌ねじ部123と第二雌ねじ部141が軸方向に干渉するので、緩むことができない。
【0046】
一方、
図9(B)に示すように、左ねじとなる第二雌ねじ部141を緩み向きSb(頭部131側から見て左回り)に回転させようとすると、第二雌ねじ部141は、雄ねじ体130の先端部134の向きJaに螺進しようとする。この第二雌ねじ部141とSb向きに共回りする右ねじとなる第一雌ねじ部123は、雄ねじ体130の頭部131の向きJbに螺進しようとする。この向きJbは、雄ねじ体130を締め付け方向に回転させて、被挟持体Pをさらに挟持する向きとなる。従って、既に雄ねじ体130により挟持済みの被挟持体Pと干渉して、それ以上回転することができない。結果、第二雌ねじ部141が緩むことができない。
【0047】
結局、
図9(C)に示すように、第一雌ねじ部123を回転させずに、左ねじとなる第二雌ねじ部141を緩み向きSbで単独に回転させるか、または、第二雌ねじ部141を緩み向きSb回転させると同時に、右ねじとなる第一雌ねじ体123を、反対の緩み向きSaに回転させない限り、このダブルナット構造は回転緩みできない。即ち、第一雌ねじ部123と第二雌ねじ部141を緩めるためには、相対回転することが必須要件となる。
<挟持装置の使用方法の説明>
次に、挟持装置100の使用方法について説明する。先ず、
図10(A)に示すように、被挟持体Pは、押圧部150と受圧部160の間に位置される。そして、雄ねじ体130を、所定のトルクにより、矢印Aで示す向きに回転させて、押圧部150を受圧部160に近づける向きである挟持向きに移動させる。
【0048】
図10(B)に示すように、雄ねじ体130による締め付けにより、被挟持体Pは、押圧部150と受圧部160により挟持される。
【0049】
そして、雌ねじ体140を、矢印Aで示す向きに回転させて、雌ねじ体140を第一支持部122に接合させる。より詳細には、雌ねじ体140の第二雌ねじ部141と第一支持部122の第一雌ねじ部123が、雄ねじ体130の雄ねじ部133に螺合され、互いに接合される(
図10(C)参照)。これにより、第一雌ねじ部123、第二雌ねじ部141を緩ませる向きの回転を防止する。この緩ませる向きの回転を防止する原理については前述のとおりである。
【0050】
次に被挟持体Pを挟持装置120から外す方法の一例を説明する。
【0051】
図11(A)は、雄ねじ体130の締め付けにより、被挟持体Pは、押圧部150と受圧部160により挟持されている状態を示す。まず雄ねじ体130を、第一雌ねじ部123を有する第一支持部122に対して、締め付け向きである矢印Aで示す向きに少しばかり回転させる。これにより、雄ねじ体130と共回りする雌ねじ体140は、第一支持部122から遠ざかることとなる。そうすると、雌ねじ体140と第一支持部122との接合状態が解除されることとなる。
【0052】
図11(B)に示すように、雌ねじ体140と第一支持部122との接合状態が解除されると、雌ねじ体140を、矢印Bで示す向きに回転させて、雄ねじ体130の先端に向けて所定の位置まで移動させる。
【0053】
図11(C)は、雌ねじ体140を、雄ねじ体130の雄ねじ部133における所定の位置まで移動させた状態を示す。そして、雄ねじ体130を、矢印Bで示す向きに回転させる。これにより、雄ねじ体130は、被挟持物Pから離れる向きに移動させることができ、被挟持物Pを挟持装置120から外すことが可能となる。この他、雌ねじ体140に対して十分に大きな緩め向きの強制トルクを印加したときに雌ねじ体140が第一支持部122から離間し、緩めることができるようにしてもよい。
【0054】
なお、
図11(A)で示す状態において、雄ねじ体130を、第一雌ねじ部123を有する第一支持部122に対して、緩める向きに回転させた場合は、第一雌ねじ部123は、雄ねじ体130の先端部134の向きJaに螺進しようとする。即ち、第一雌ねじ部123の観点でいうと、第一雌ねじ部123は右回りに回転しているともいえる。この第一雌ねじ部123と共回りする第二雌ねじ部141は、雄ねじ体130の頭部131の向きJbに螺進しようとする。したがって、第一雌ねじ部123と第二雌ねじ部141が軸方向に干渉するので、緩むことができない。これは、
図9(A)で説明した原理に対応する。
<相対回転抑制構造>
ここで、相対回転抑制構造30について、説明する。挿入側係合部142bと収容側係合部125bは、雌ねじ体140の挿入向きidに対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形する。収容側係合部125bと挿入側係合142bと周方向に係合可能となっている。挿入側係合部142bは、雌ねじ体140の締め付けにより、本体120の第一支持部122における収容側係合部125bに押圧される。結果、自らの一部が径方向内側に凹むように変形し、この変形によって挿入側変位部45を作出する(
図12参照)。なお、
図7では、締結前の状態を図示しているので、挿入側変位部45は作出されていない。
【0055】
雌ねじ体140の挿入側係合部142bは、本体120の第一支持部122における、収容側係合部125bと比較して、柔らかい材料で構成することもできる。このようにすると、挿入側係合部142bと干渉する収容側係合部125bが、挿入側係合部142bを積極的に変形させることができる。また、挿入側係合部142bは、収容側係合部125bと比較して低剛性に構成することもできる。このようにすると、収容側係合部125bと当接する挿入側係合部142b側が、積極的に弾性変形及び/又は塑性変形できる。
【0056】
本実施形態では、雌ねじ体140と比較して、本体120の全体を高強度材料としている。この際、本体120では、鉄に対して添加物を付加したり熱処理を施したりして強度を高めた材料を採用することも可能である。また、本実施形態では、本体120の第一支持部122の基部121側における、環状凹部125の径方向の肉厚を、雌ねじ体140の環状突起142bの径方向の肉厚よりも大きくしている。結果、環状凹部125の剛性が、環状突出部141bよりも高い。
【0057】
なお、本実施形態においては、挿入側係合部142bは、収容側係合部125bと比較して、柔らかい材料で構成したが、収容側係合部の方を柔らかい材料としてもよい。即ち収容側変位部40を設けてもよい。また同一の強度や同一の剛性、同一の材料を用いることも好ましく、互いに押圧される部位が、同一の変形をきたすことによって、相互に相互の変位を拘束し、緩みを防止することができる。
【0058】
なお、
図13では、模式的に、帯状に形成された挿入側係合部142bが、単一の収容側係合部125bと交差することで凹み(挿入側変位部45)を形成する場合を示しているが、実際には、複数の収容側係合部125bと交差する場合もある。従って、各挿入側係合部142bには、複数の挿入側変位部45が形成される場合もある。なお、交差とは、例えば、挿入側係合部142bと収容側係合部125bとが平行以外の角度(0度を除く角度)をもって、当接又は押圧されるような状態で重なっている状態をいう。
【0059】
図12に戻り、挿入側係合部142bの表面において、複数の挿入側変位部45が、雌ねじ体140の1ピッチ以上の軸方向範囲(領域)Wに広がって作出される。相対回転の抑制効果を発揮する挿入側変位部45が、軸方向に1ピッチ以上の広がりを有する範囲に形成されることで、雌ねじ体140が、緩み方向に1回転する際に、あらゆる位相において常に、相対回転抑制効果を発揮できる。なお、具体的には3ピッチ以上の軸方向範囲に広がって作出されることが好ましい。この軸方向範囲(領域)Wは、収容側係合部125bと挿入側係合部142bの軸方向の干渉距離Wと定義することもできる。
【0060】
また、環状突出部141bを軸視すると、挿入側変位部45が周方向に複数、ここでは少なくとも30個以上作出されることになる。特に、挿入側変位部45が均等間隔(又は所定周期毎)に形成されるようにすると、複数の挿入側変位部45の変形時の直径方向の反力が、互いに相殺されるので、本体120の第一支持部122と雌ねじ体140の間に、相対的な偏心力が作用することを抑制できる。結果、本体120の第一支持部122と雌ねじ体140が、雄ねじ体130に対して、所謂片当たりすることを抑制できる。なお、複数の挿入側変位部45の周方向の配置間隔がランダムであっても、その数が多ければ、結果として、直径方向の反力が互いに相殺される。
【0061】
また、収容側係合部125bと挿入側係合部142bの延びる方向は、それぞれが逆になってもよい。即ち、収容側係合部125bは収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて形成され、挿入側係合部142bは収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて形成される場合と、収容側係合部125bは収容方向に垂直な方向成分をもって線状に延びて形成され、挿入側係合部142bは収容方向に平行な方向成分をもって線状に延びて形成される場合とがある。
【0062】
本実施形態においては、雌ねじ体140に環状突出部141bを設け、本体120の第一支持部122に環状凹部125を設けたが、必ずしも環状突出部141bと環状凹部125を設ける必要はない。この場合、雌ねじ体140における第二雌ねじ部141と第一支持部122における第一雌ねじ部123とが、雄ねじ体130における雄ねじ部133に螺合され互いに接合された状態において、雄ねじ体140と第一支持部122の接合面に対して、両者の相対移動を抑制するための係合機構を設けてもよい。この場合、係合機構は、雄ねじ体140と第一支持部122のそれぞれの接合面に備えられることとなる。なお、相対移動抑制構造が適用される係合機構の詳細については、本願の発明者に係る特許7014395号公報を参照されたい。
[第2実施形態]
図14は、雄ねじ体230とキャップ体250の正面図である。
【0063】
本発明の第2実施形態である挟持装置1について説明する。第1実施形態と異なるのは、キャップ体250に押圧部150の機能を持たせ、キャップ体250を雄ねじ体230の先端部234において回動可能に構成にした点である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
図14に示すように、雄ねじ体230は、軸部132の先端部234の外周に環状に形成された溝(以下、第一環状溝と呼ぶ)234aを有する。キャップ体250は、雄ねじ体230の先端部340において、回動可能に装着される。キャップ体250は、被挟持体Pを押圧する押圧面151を有する。
【0065】
図15に示すように、キャップ体250は、凹部形状であり、内周面253と内底面258とで構成される。キャップ体250の内周面253には、環状に形成された溝(以下、第二環状溝と呼ぶ)255が形成される。押圧面151には、第1実施形態と同様に、突起部151aが設けられる。キャップ体250を雄ねじ体230の先端部234に装着した状態において、雄ねじ体230の第一環状溝234aと、キャップ体250の第二環状溝255とが対向する位置関係となる。雄ねじ体230の第一環状溝234aとキャップ体250の第二環状溝255との間には、リング部材270などを介在させることができる。このリング部材270を介在させることにより、雄ねじ体230の第一環状溝234aとキャップ体250の第二環状溝255との間が相対回転自在に連結される。
【0066】
リング部材270として、Eリングなどの止め輪を用いることができる。例えば、Eリングは、
図16に示すように、その内周側の中央と両端部の3か所に径方向内向きに突出する係止凸部271を備える。この3つの係止凸部271の内周側における凸部先端271aは、雄ねじ体230の先端に形成された第一環状溝234aと略同径の内径を形成する。また、Eリングの外周部273は、キャップ体250に形成された第二環状溝255と略同径の外径を形成する。
【0067】
このように第一環状溝234a、第二環状溝255、リング部材270の構成により、キャップ体250を雄ねじ体230の先端において回動可能にしつつ、キャップ体250が雄ねじ体230から抜け落ちることを防止することが可能となる。
【0068】
さらに、キャップ体250(押圧部150)の突起部151aと受圧部160により、被挟持体Pを挟持している状態において、雄ねじ体230を回動させても、雄ねじ体230の第一環状溝234aとリング部材270の凸部先端271aとの間や、キャップ体250の第二環状溝255とリング部材270の外周部273との間で滑りが生じ、キャップ体250と雄ねじ体230は共回りしない。そのため、雄ねじ体230を回動させても、キャップ体250の突起部151aによる被挟持体Pへの損傷及び、突起部151aの摩耗や欠損等を防ぐことが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態においては、キャップ体250が雄ねじ体230から抜け落ちることを防ぐために、リング部材270、第一環状溝234a、第二環状溝255の構成を用いて説明したが、これらの構成は必ずしも必要ではない。キャップ体250の内周面253及び又は内底面258が、雄ねじ体230の先端部234と摺接可能であれば、キャップ体250と雄ねじ体230の共回りを防ぐことができる。これにより、雄ねじ体230を回動させても、キャップ体250の突起部151aによる被挟持体Pへの損傷や突起部151aの摩耗や欠損等を防ぐことが可能となる。
[第3実施形態]
図17は、挟持装置300の側面図である。
図18は、本体320の正面断面図である。
図19は、可動受圧体360の正面図である。
【0070】
本発明の第3実施形態である挟持装置300について説明する。第1実施形態と異なるのは、受圧部160を可動受圧体360として、可動受圧体360が本体320の第二支持部327において摺接かつ傾斜可能に構成される点である。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
図17、
図18に示すように、第二支持部327は、その先端側に、第一支持部122に向け開口し、可動受圧体360を摺接かつ傾斜可能に支持する略半球面状の第一凹座面328が形成されている。
【0072】
図19に示すように、可動受圧体360は、略半球面状の第一球面状部362と、第一球面状部362の大径側に連接された円柱状のフランジ部363とで構成される。フランジ部363は、その一端面において、第1実施形態と同様に、突起部161aが形成された受圧面161を有する。フランジ部363は、第一球面状部362の外径端部から、径方向外方に突出して形成される。ここで、フランジ部363の最大外径(OD1)は、第一球面状部362の最大外径(OD2)より大きく設定されている。これにより、フランジ部363は、後述する制限部365として機能する。
<制限部の説明>
制限部365は、本体300の第二支持部327における可動受圧体360の傾斜角度を所定範囲に制限する。
図20(A)は、押圧部150と可動受圧体360により、被挟持体Pを挟持した状態を示す。
図20(B)は、可動受圧体360が、被挟持体Pの水平方向の変位により、傾斜した状態を示す。
【0073】
被挟持体Pが水平方向に変位すると、被挟持体Pから可動受圧体360に対して水平方向の力がかかり、可動受圧体360の第一球面状部362は、第一凹座面328において摺動しながら傾斜する。このとき変位する方向側のフランジ部363の下端部外縁(制限部365)は、第二支持部327と当接する。具体的には、フランジ部363の下端部外縁は、第二支持部327の開口端328aの周方向外側付近に当接する。この当接により、可動受圧体360の第二支持部327における傾斜角度を、所定範囲に制限する。
【0074】
この場合、被挟持体Pが変位する方向側のフランジ部363の上端部外縁において、可動受圧体360からの被挟持体Pを挟持する上側(+Z側)の力が減少する。一方、被挟持体Pが変位する方向とは逆側のフランジ部363の上端部外縁において、可動受圧体360による、被挟持体Pを挟持する上側(+Z側)への力が増すこととなる。すなわち、被挟持体Pが水平方向に変位しても、被挟持体Pが挟持装置300から外れ難くなる。
【0075】
なお、
図19が示す、可動受圧体360の底面から、制限部365に対応するフランジ部363の下端部までの高さ(H1)は、
図18で示す、第一凹座面328の底面から開口端328aの深さ(D1)よりも高く設定されている。すなわち、制限部365は、開口端328aより外方に位置する。
【0076】
なお、可動受圧体360の制限部365は、必須の構成ではない。たとえば、可動受圧体360は、フランジ部363を用いることなく、突起部161aが形成された受圧面161を、第一球面状部362の大径側の端面に形成してもよい。この場合、受圧面161が、第一凹座面328の開口端328aより内方に位置すると、受圧面161は、被挟持体Pを挟持することができない。そのため、受圧面161は、第一凹座面280の開口端328aより外方に位置することが必要である。
【0077】
なお本実施形態では、制限部365に関し、可動受圧体360のフランジ部363の下端外縁に設けた場合について説明した。しかしながら、制限部365は、フランジ部360の下端外縁に限らない。たとえば、フランジ部360の外周面におけるZ軸方向上端又は中央あたりに制限部365を設けて、第二支持部327と当接してもよい。また、フランジ363の形状も、円筒状である必要はなく、たとえば角筒状でもよい。また、制限部365の形状も、フランジ形状に限らない。たとえば、複数の突起形状を制限部365としてもよい。
[第3実施形態の変形例]
図21は、第3実施形態の変形例を示す図である。本発明の第3実施形態の変形例について説明する。第3実施形態と異なるのは、可動受圧体660が本体620から落下することを防止する機構を設けた点である。なお、本変形例では第3実施形態と同様の構成要素には第3実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
図21に示すように、第二支持部627は、その先端側に、第一支持部122に向け開口し、可動受圧体660を摺接かつ傾斜可能に支持する略半球面状の第一凹座面680が形成されている。この第一凹座面680の中央には、第二支持部627をZ軸方向に貫通する第一挿通孔670が設けられている。この第一挿通孔670には、雌ねじ部670aが形成されている。この雌ねじ部670aは、
図23で示す固定部材690のねじ部692bと螺合する。
【0079】
図22(B)に示すように、可動受圧体660は、略半球面状の第一球面状部662と、第一球面状部662の大径側に連接された円筒状のフランジ部360とで構成される。
図22(C)に示すように、可動受圧体660の外周面662aは、第二支持部627の第一凹座面680と同一曲率状に形成されている。可動受圧体660は、受圧面161の中央に略半球面状の座面である第二凹座面667と、第二凹座面667の底部からZ軸方向外側(マイナスZ軸方向)に向かって拡径しながら挿通する第二挿通孔668とで形成される、内周面662bを有する。第二凹座面667は、
図23で示す固定部材690の第二球面状部691cと同一曲率状に形成されている。
【0080】
第二挿通孔668の孔径は、第二凹座面667の底部側で小径(r1)であり、可動受圧体660の外表側は大径(r2)である。
【0081】
図23で示すように、固定部材690は、頭部691および軸部692からなる。頭部691は、軸部692よりの座面において、略半球面状に形成した第二球面状部691cを有する。
【0082】
頭部691の外径は、可動受圧体660の第二凹座面667における底部側の孔径(r1)より大きく設定されている。したがって、可動受圧体660は、固定部材690の頭部691側から、抜け落ちない。
【0083】
軸部692は、円柱状の挿通部692aと雄ねじ部692bとで構成される。挿通部692aの軸径(r3)は、可動受圧体660の第二挿通孔668の小径(r1)より小さく設定されている。雄ねじ部692bは、第二支持部627の第一挿通孔690における雌ねじ部670aと螺合される。
【0084】
図24で示すように、可動受圧体660は、第一凹座面680上で摺動かつ傾斜可能な状態で、固定部材690のねじ部692bと第一挿通孔670の雌ねじ部670aと螺合することにより固定される。上述のように、
図22で示す可動受圧体660の第二挿通孔668は、第二凹座面667の底部からZ軸方向外側(-Z側)に向かって拡径している。そのため、固定部材690の挿通部692aが、第二挿通孔668の内周面に接触するか、又は、前述の制限部365により傾斜が制限されるまで、可動受圧体660のZ軸方向に対する傾斜は許容されることとなる。
【0085】
以上の実施形態群における、雄ねじ体130(230)、第一雌ねじ部123及び第二雌ねじ部141では、第一螺旋溝133a及び第一雌ねじ螺旋条123aの対と、第二螺旋溝133b及び第二雌ねじ螺旋条141aの対とが、互いに逆ねじ(右ねじと左ねじ)の関係(リード角が同じでリード方向が反対)となっている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図25に示すように、リード方向(L1、L2)が同じで、リード角が異なる第一螺旋溝133a及び第一雌ねじ螺旋条123aと、第二螺旋溝133b及び第二雌ねじ螺旋条141aを採用することもできる。この場合、第一螺旋溝133aに対して、更にリード角の異なる螺旋溝を重畳形成することにより、リードがL1(リード角α1)の第一螺旋溝133a及びリードがL2(リード角がα2)の第二螺旋溝133bが、ねじ方向を揃えて形成される。この場合は、第一螺旋溝133aの第一ねじ山G1と、第二螺旋溝133bの第二ねじ山G2は、共有されずに別々となる。
【0086】
以上の実施形態群においては、雄ねじ体130(230)の中心であるJ軸上に、押圧部150(250)と受圧部160(360)とが存在する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、
図26に示すように、受圧部760をJ軸より基部121側(-X方向)に設けてもよい。
【0087】
以上の実施形態群においては、押圧部150を支持する第一支持部122と、受圧部160が設けられた第二支持部127とを、一つの基部121に形成した本体120を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らない。
【0088】
たとえば、複数の基部を用いて挟持装置を構成してもよい。
図27に示すように、本体820は、それぞれが略U字状に形成された、押圧部を支持する第一支持部822と、受圧部160が設けられた第二支持部827と、第一基部821aと第二基部821bとで構成される。第一基部821aと第二基部821bのそれぞれ上側(+Z軸)には、第一支持部822のU字状の両端が接続され、第一基部821aと第二基部821bのそれぞれ下側(-Z側)には、第二支持部827のU字状の両端が接続される。このように本体820は、複数の基部を用いて構成されてもよい。
【0089】
以上の実施形態群においては、一組の押圧部150と受圧部160を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、複数の組の押圧部150と受圧部160を用いることもできる。
図28に示すように、本体920は、それぞれが略T字状に形成された、複数の押圧部を支持する第一支持部922と、複数の受圧部160が設けられた第二支持部927と、基部121とで構成される。基部121の上側(+Z軸)には、第一支持部922のT字状の一端が接続され、基部121の下側(-Z側)には、第二支持部927のT字状の一端が接続される。このように、本体920は、複数の組の押圧部150と受圧部160とを設けてもよい。なお、それぞれ押圧部150と受圧部160が対向するように、第一支持部922には押圧部150と受圧部160と構成し、第二支持部927にも押圧部150と受圧部160とを構成してもよい。
【0090】
また、複数の組の押圧部150と受圧部160を設ける場合において、それぞれの組が被挟持体Pを挟持する方向を異ならせてもよい。たとえば、
図29に示すように、第一支持部1022aと第二支持部1027aとでZ軸方向に挟持し、第一支持部1022bと第二支持部1027bとでY軸方向に挟持する。なお、ここで示した例においては、第二支持部1027aは、第一支持部1022aとの関係では、第二基部1021bと共通した構成となっている。このように、支持部と基部を兼ねた構成であってもよい。
【0091】
上記に説明した第1実施形態乃至第3実施形態の構成要素は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。また、被挟持体Pは、鋼材などの材質、部材の形状、仮設構造物向けといった用途に限定はない。材質としては、例えば、コンクリート、金属、合成樹脂、木材、ガラス、ゴム、紙等に適用することができる。部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材にも適用することができる。また、用途についても、一般、家具一般、土木用及び/又は建設や建築用の建材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
300、620、700、800、900、1000・・・挟持装置、30・・・相対回転抑制制御構造、40・・・収容側変位部、45・・・挿入側変位部、120、320、820、920、1020・・・本体、121・・・基部、122、822、922、1022a、1022b・・・第一支持部、122a・・・貫通孔、123・・・第一雌ねじ部、123・・・第一雌ねじ螺旋条、125・・・環状凹部、125a・・・内周面、125b・・・収容側係合部、127、327、627、827、927、1027a、1027b・・・第二支持部、130、230・・・雄ねじ体、131・・・頭部、132・・・軸部、133・・・雄ねじ部、133a・・・第一螺旋溝、133b第二螺旋溝、134、234・・・先端部、140・・・雌ねじ体、141・・・第二雌ねじ部、141a・・・第二雌ねじ部、141b・・・環状突出部、142a・・・外周面、142b・・・挿入側係合部、143・・・円筒部、143a・・・貫通孔、150・・・押圧部、151・・・押圧面、151a・・・突起部、160、760・・・受圧部、161・・・受圧面、161a・・・突起部、234a・・・第一環状溝、250・・・キャップ体、253・・・内周面、255・・・第二環状溝、258・・・内底面、270・・・リング部材、271・・・係止凸部、271a・・・凸部先端、273・・・外周部、328・・・第一凹座面、328a・・・開口端、360、660・・・可動受圧体、362、662・・・第一球面状部、363・・・フランジ部、365・・・制限部、662a・・・外周面、662b・・・内周面、667・・・第二凹座面、668・・・第二挿通孔、670・・・第一挿通孔、670a・・・雌ねじ部、680・・・第一凹座面、690・・・固定部材、691・・・頭部、691a・・・端面、691b・・・レンチ穴、691c・・・第二球面状部、692・・・軸部、692a・・・挿通部、692b・・・ねじ部、821a、1021a・・・第一基部、821b、1021a・・・第二基部