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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064844
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ギア検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20240507BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20240507BHJP
   G01M 13/021 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01B11/25 H
G01M13/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173754
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】郷司 裕介
(72)【発明者】
【氏名】坂東 賢也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 昭
【テーマコード(参考)】
2F065
2G024
【Fターム(参考)】
2F065AA49
2F065AA53
2F065BB05
2F065CC05
2F065DD06
2F065FF09
2F065GG04
2F065HH05
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM04
2F065MM06
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065RR08
2F065SS02
2F065SS04
2F065SS13
2G024AB06
2G024CA30
2G024FA06
2G024FA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯による死角を減らしつつ撮影を行うことにより、検査時間を短縮できるギア検査装置を提供する。
【解決手段】ギア検査装置1は、光照射部20と、カメラ30と、移動機構50と、三次元データ作成部と、判定部と、を備える。光照射部20は、ギア9に向けてライン状の計測光Lを照射する。カメラ30は、ギア9の表面に照射された計測光Lを撮影する。移動機構50は、カメラ30の視野におけるギア9の歯すじに沿って、光照射部20およびカメラ30を含む光学ユニット70とギア9とを相対的に移動させる。三次元データ作成部は、カメラ30の撮影結果に基づいて、ギア9の三次元データを作成する。判定部は、三次元データに基づいて、ギア9の良否を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を有するギアを検査するギア検査装置であって、
前記ギアに向けてライン状の計測光を照射する光照射部と、
前記ギアの表面に照射された前記計測光を撮影するカメラと、
前記光照射部および前記カメラを含む光学ユニットと前記ギアとを、相対的に移動させる移動機構と、
前記カメラの撮影結果に基づいて、前記ギアの三次元データを作成する三次元データ作成部と、
前記三次元データに基づいて、前記ギアの良否を判定する判定部と、
を備え、
前記移動機構は、前記カメラの視野における前記ギアの歯すじに沿って、前記光学ユニットと前記ギアとを相対的に移動させる、ギア検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のギア検査装置であって、
前記移動機構は、前記光学ユニットと前記ギアとのいずれか一方を、他方に対して移動させる、ギア検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載のギア検査装置であって、
前記ギアを、水平面に対して傾斜した姿勢で保持するギア保持部
を備え、
前記移動機構は、前記光学ユニットを前記傾斜した姿勢に合わせた方向に移動させる、ギア検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載のギア検査装置であって、
前記ギアはヘリカルギアであり、
前記検査装置は、
前記ギアを、水平面に対して傾斜し、前記ギアの歯すじが鉛直方向となる姿勢で保持するギア保持部
を備え、
前記移動機構は、前記光学ユニットを鉛直方向に移動させる、ギア検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載のギア検査装置であって、
前記ギア保持部は、
ベース部と、
前記ベース部に対して傾斜し、前記ギアを保持するステージと、
を有し、
前記ベース部に対する前記ステージの傾斜角度が可変である、ギア検査装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載のギア検査装置であって、
前記ギア保持部に前記ギアが保持された状態において、前記ギアの前記歯が、前記ギア保持部の保持面よりも外側に位置する、ギア検査装置。
【請求項7】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のギア検査装置であって、
前記光照射部および前記カメラが固定された固定部材
をさらに備え、
前記移動機構は、前記固定部材を移動させる、ギア検査装置。
【請求項8】
請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載のギア検査装置であって、
前記ギア保持部は、
前記ギアを、前記ギアの中心軸を中心として回転させる回転機構
を有し、
前記移動機構を動作させつつ、前記カメラによる撮影を行うスキャン動作と、
前記回転機構による前記ギアの回転動作と、
を繰り返す、ギア検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載のギア検査装置であって、
前記移動機構により、前記光学ユニットを前記鉛直方向の一方側へ移動させつつ、前記カメラによる撮影を行う往路スキャンと、
前記回転機構による前記ギアの回転動作と、
前記移動機構により、前記光学ユニットを前記鉛直方向の他方側へ移動させつつ、前記カメラによる撮影を行う復路スキャンと、
前記回転機構による前記ギアの回転動作と、
を繰り返す、ギア検査装置。
【請求項10】
請求項8に記載のギア検査装置であって、
前記回転機構が前記ギアを1周回転させる前に、前記三次元データ作成部による前記三次元データの作成と、前記判定部による判定処理とを、開始する、ギア検査装置。
【請求項11】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のギア検査装置であって、
前記判定部は、予め記憶された基準データに対する前記三次元データの差分に基づいて、前記ギアの良否を判定する、ギア検査装置。
【請求項12】
請求項2に記載のギア検査装置であって、
複数の前記光学ユニットを備える、ギア検査装置。
【請求項13】
請求項12に記載のギア検査装置であって、
前記ギアはヘリカルギアであり、
複数の前記光学ユニットが、周方向の異なる位置に配置され、
前記移動機構は、複数の前記光学ユニットを、それぞれ異なる方向に移動させる、ギア検査装置。
【請求項14】
請求項13に記載のギア検査装置であって、
2つの前記光学ユニットのうち、一方の前記光学ユニットが、前記ギアの中心軸に対して、他方の前記光学ユニットの反対側に配置され、
前記移動機構は、軸方向に視た状態において、2つの前記光学ユニットを、互いに平行かつ反対向きに移動させる、ギア検査装置。
【請求項15】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のギア検査装置であって、
前記移動機構による移動方向に対して交差する方向における前記ギアの位置を調整するギア位置調整機構
をさらに備える、ギア検査装置。
【請求項16】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のギア検査装置であって、
前記光照射部および前記カメラの少なくともいずれか一方の光軸の位置を調整する光軸調整機構
をさらに備える、ギア検査装置。
【請求項17】
請求項4または請求項5に記載のギア検査装置であって、
前記移動機構は、前記カメラの視野が前記ギアの歯すじに沿うように、前記光学ユニットを鉛直方向に移動させると同時に前記鉛直方向と交差する方向にも移動させる、ギア検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギア検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘリカルギアなどのギアを検査するギア検査装置が知られている。従来のギア検査装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特表2018-537693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ギア検査装置は、ギアを回転させながら、カメラによりギアを撮影する。しかしながら、ギアは、複数の凸状の歯を有する。これらの歯により、カメラの視野に死角が生じる。特に、隣り合う歯の間の溝の部分は、撮影の際に死角となりやすい。従来のギア検査装置では、死角となりやすい部分も検査するために、複数台のカメラで多数回の撮影を行っていた。これにより、長い検査時間が必要となっていた。
【0004】
本発明の目的は、歯による死角を減らしつつ撮影を行うことにより、検査時間を短縮できるギア検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の歯を有するギアを検査するギア検査装置であって、前記ギアに向けてライン状の計測光を照射する光照射部と、前記ギアの表面に照射された前記計測光を撮影するカメラと、前記光照射部および前記カメラを含む光学ユニットと前記ギアとを、相対的に移動させる移動機構と、前記カメラの撮影結果に基づいて、前記ギアの三次元データを作成する三次元データ作成部と、前記三次元データに基づいて、前記ギアの良否を判定する判定部と、を備え、前記移動機構は、前記カメラの視野における前記ギアの歯すじに沿って、前記光学ユニットと前記ギアとを相対的に移動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カメラの視野内において、歯による死角を減らしつつ、計測光を撮影できる。これにより、撮影回数を減らすことができるため、検査時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ギア検査装置の正面図である。
図2図2は、ギア検査装置の側面図である。
図3図3は、コンピュータと、ギア検査装置の各部との接続関係を示した図である。
図4図4は、コンピュータにおいて実現される機能を、概念的に示したブロック図である。
図5図5は、ギアの撮影手順を示したフローチャートである。
図6図6は、計測光が投影されたギアの写真である。
図7図7は、第1変形例に係るギア検査装置の側面図である。
図8図8は、第2変形例に係るギア検査装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0009】
<1.ギア検査装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るギア検査装置1の正面図である。図2は、ギア検査装置1の側面図である。このギア検査装置1は、複数の歯91を有するギア9を検査する装置である。具体的には、ギア検査装置1は、ギア9の製造工程において、切削前のギア9の外形寸法を検査する。本実施形態では、ギア9は、ヘリカルギア(はすば歯車)とする。ギア9は、外周面に、中心軸Cに対して螺旋状に延びる複数の歯91を有する。
【0010】
図1および図2に示すように、ギア検査装置1は、ギア保持部10、光照射部20、カメラ30、固定部材40、移動機構50、およびコンピュータ60を備える。
【0011】
ギア保持部10は、検査対象となるギア9を保持する保持台である。ギア保持部10は、水平面に対して傾斜した姿勢でギア9を保持する。図1および図2に示すように、ギア保持部10は、ベース部11、ステージ12、および回転機構13を有する。
【0012】
ベース部11は、作業台上に配置される。ステージ12は、ベース部11に対して傾斜可能となっている。具体的には、ステージ12は、ベース部11の一端に、ヒンジ110を介して接続されている。このため、ステージ12は、ヒンジ110を中心として回動する。また、ステージ12は、ベース部11に対して任意の角度で固定される。ステージ12は、傾斜した上面に、図示を省略したチャックにより、ギア9を保持する。
【0013】
本実施形態では、ギア保持部10は、後述するカメラ30の視野においてギア9の歯すじが鉛直方向となる姿勢で、ギア9を保持する。上述の通り、このギア検査装置1では、ベース部11に対するステージ12の傾斜角度が可変である。このため、検査対象となるギア9の歯すじの角度に応じて、ステージ12の傾斜角度を調整できる。
【0014】
ステージ12にギア9が保持された状態において、ギア9の歯91は、ステージ12の保持面よりも外側に位置することが望ましい。そうすれば、カメラ30の視野において、ステージ12による死角を減らせるため、ギア9の歯91を、下端部まで良好に撮影できる。
【0015】
回転機構13は、ギア9を回転させる機構である。回転機構13は、例えば、ステージ12に組み込まれたモータにより構成される。回転機構13を動作させると、ステージ12に保持されたギア9が、ギア9の中心軸Cを中心として回転する。これにより、後述するカメラ30の視野に入る歯91を変更することができる。
【0016】
なお、ギア検査装置1は、ステージ12に保持されたギア9の位置を調整するギア位置調整機構をさらに備えていてもよい。ギア位置調整機構は、移動機構50によるカメラ30の移動方向(本実施形態では鉛直方向)に対して交差する方向におけるギア9の位置を調整する。ギア位置調整機構を設ければ、ギア9のサイズや形状に応じて、カメラ30に対するギア9の位置を調整できる。
【0017】
光照射部20は、ギア保持部10の斜め上方に配置されている。光照射部20は、ステージ12に保持されたギア9へ向けて、ライン状の計測光Lを照射する。光照射部20は、例えば、レーザ光源から、計測光Lとしてのレーザ光を出射する。計測光Lは、光照射部20から斜め下向きに出射されるとともに、略水平方向に広がる。これにより、ギア9の表面に、ライン状の計測光Lが投影される。具体的には、ギア9の外周部のうち、歯すじが垂直方向に延びる領域(以下「被検査領域A」と称する)に、ライン状の計測光Lが投影される。
【0018】
カメラ30は、ギア保持部10の斜め上方、かつ、光照射部20から離れた位置に配置されている。カメラ30は、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、多階調の撮影画像を取得可能なデジタルカメラである。カメラ30は、ギア9の表面に照射された計測光Lを撮影する。具体的には、カメラ30には、ギア9の上述した被検査領域Aを撮影する。
【0019】
固定部材40は、光照射部20およびカメラ30を支持する部材である。本実施形態の固定部材40は、鉛直方向に延びる平板状の部材である。光照射部20およびカメラ30は、固定部材40の前面に固定される。これにより、光照射部20とカメラ30の位置関係が、一定に維持される。ただし、固定部材40の形状は、平板状以外の形状であってもよい。
【0020】
ギア検査装置1は、固定部材40に支持された光照射部20およびカメラ30の少なくともいずれか一方の光軸の位置を調整する光軸調整機構をさらに備えていてもよい。光軸調整機構を設ければ、ギア9のサイズや形状に応じて、光軸の位置を容易に調整できる。
【0021】
移動機構50は、光照射部20およびカメラ30を含む光学ユニット70を移動させる機構である。移動機構50には、例えば、モータと、モータの回転を直進運動に変換するボールねじとを有する機構が使用される。移動機構50は、固定部材40を鉛直方向に移動させる。これにより、光照射部20およびカメラ30を、一体として鉛直方向に移動させる。
【0022】
移動機構50は、ギア9の傾斜姿勢に合わせた方向に、光学ユニット70を移動させる。具体的には、移動機構50は、被検査領域Aにおけるギア9の歯すじと平行な方向に、光学ユニット70を移動させる。本実施形態では、被検査領域Aにおけるギア9の歯すじの方向を鉛直方向としている。このため、移動機構50は、光学ユニット70を鉛直方向に移動させる。これにより、光学ユニット70を水平方向または斜め方向に移動させる場合よりも、ギア検査装置1の配置スペースを縮小できる。
【0023】
コンピュータ60は、ギア検査装置1の各部を動作制御する制御部としての機能と、カメラ30から取得した撮影画像に基づいてギア9の検査を行う検査処理部としての機能と、を有する。
【0024】
図3は、コンピュータ60と、ギア検査装置1の各部との接続関係を示した図である。図3に示すように、コンピュータ60は、CPU等のプロセッサ61、RAM等のメモリ62、およびハードディスクドライブ等の記憶部63を有する。また、コンピュータ60は、上述した回転機構13、光照射部20、カメラ30、および移動機構50と、電気的に接続されている。
【0025】
コンピュータ60は、記憶部63に記憶されたコンピュータプログラムPに従って、回転機構13、光照射部20、カメラ30、および移動機構50の動作を制御する。これにより、ギア9の撮影が実行される。また、コンピュータ60は、撮影により得られた撮影画像に基づいて、ギア9の状態を検査する。
【0026】
また、図3に示すように、ギア検査装置1は、表示部80を有する。表示部80は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部80は、コンピュータ60と電気的に接続されている。表示部80は、カメラ30により得られた撮影画像D1や、後述する三次元データD2、基準データDo、判定結果D3等の、検査に関わる種々の情報を画面上に表示する。ギア検査装置1のユーザは、表示部80に表示された情報を、随時確認することができる。
【0027】
図4は、コンピュータ60において実現される機能を、概念的に示したブロック図である。図4に示すように、コンピュータ60は、三次元データ作成部64および判定部65を有する。三次元データ作成部64は、カメラ30から得られた撮影画像D1に基づいて、ギア9の三次元データD2を作成する。判定部65は、三次元データD2に基づいて、ギア9の良否を判定する。三次元データ作成部64および判定部65の機能は、上述したコンピュータプログラムPに従って、プロセッサ61が動作することにより、実現される。
【0028】
<2.ギア検査装置の動作>
続いて、ギア検査装置1の動作について、説明する。図5は、ギア検査装置1におけるギア9の撮影手順を示したフローチャートである。
【0029】
図5に示すように、ギア検査装置1においてギア9の撮影を行うときには、まず、ギア保持部10にギア9をセットする(ステップS1)。具体的には、傾斜したステージ12にギア9を載置し、チャックにより、ステージ12の上面にギア9を固定する。これにより、ギア9が、水平面に対して傾斜した姿勢で保持される。このとき、カメラ30の視野に含まれる被検査領域Aにおいて、ギア9の歯すじが、鉛直方向に延びる状態とされる。
【0030】
次に、ギア検査装置1は、往路スキャンを行う(ステップS2)。具体的には、コンピュータ60が、光照射部20、カメラ30、および移動機構50を動作させる。これにより、移動機構50が、光学ユニット70を、鉛直方向の一方側(例えば上側)へ移動させつつ、カメラ30が、ギア9の被検査領域Aを撮影する。
【0031】
図6は、計測光Lが投影されたギア9の写真である。図6のように、ギア9に投影された計測光Lは、ギア9の歯91の表面に沿った形状となる。そして、光学ユニット70の移動に伴い、ギア9の表面における計測光Lの鉛直方向の位置が変わる。ギア検査装置1は、光学ユニット70を移動させつつ、カメラ30による撮影を、微小な間隔で複数回実行する。これにより、ギア9に対する計測光Lの照射位置が異なる複数の画像が得られる。カメラ30は、得られた複数の撮影画像D1を、コンピュータ60へ出力する。
【0032】
往路スキャンが終了すると、コンピュータ60は、ギア9の撮影を終了するか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、コンピュータ60は、ギア9の全ての歯91の撮影が完了したか否かを判断する。そして、ギア9の全ての歯91の撮影が完了した場合(ステップS3:Yes)、コンピュータ60は、ギア9の撮影を終了する。
【0033】
一方、ギア9の全ての歯91の撮影が完了していない場合(ステップS3:No)、ギア検査装置1は、回転機構13によるギア9の回転動作を行う(ステップS4)。具体的には、コンピュータ60が、回転機構13を動作させる。そうすると、ステージ12に保持されたギア9が、ギア9の中心軸Cを中心として、所定の角度だけ回転する。これにより、被検査領域Aに配置される歯91が変更される。
【0034】
続いて、ギア検査装置1は、復路スキャンを行う(ステップS5)。具体的には、コンピュータ60が、光照射部20、カメラ30、および移動機構50を動作させる。これにより、移動機構50が、光学ユニット70を、鉛直方向の他方側(例えば下側)へ移動させつつ、カメラ30が、ギア9の被検査領域Aを撮影する。このとき、ギア検査装置1は、光学ユニット70を移動させつつ、カメラ30による撮影を、微小な間隔で複数回行う。これにより、ギア9に対する計測光Lの照射位置が異なる複数の撮影画像D1が得られる。カメラ30は、得られた複数の撮影画像D1を、コンピュータ60へ出力する。
【0035】
復路スキャンが終了すると、コンピュータ60は、ギア9の撮影を終了するか否かを判断する(ステップS6)。具体的には、コンピュータ60は、ギア9の全ての歯91の撮影が完了したか否かを判断する。そして、ギア9の全ての歯91の撮影が完了した場合(ステップS6:Yes)、コンピュータ60は、ギア9の撮影を終了する。
【0036】
一方、ギア9の全ての歯91の撮影が完了していない場合(ステップS6:No)、ギア検査装置1は、回転機構13によるギア9の回転動作を行う(ステップS7)。具体的には、コンピュータ60が、回転機構13を動作させる。そうすると、ステージ12に保持されたギア9が、ギア9の中心軸Cを中心として、所定の角度だけ回転する。これにより、被検査領域Aに配置される歯91が変更される。
【0037】
その後、ギア検査装置1は、ステップS2に戻り、ステップS2以降の処理を再度実行する。
【0038】
コンピュータ60の三次元データ作成部64は、最初の往路スキャンにより撮影画像D1を取得した後、得られた撮影画像D1に基づいて、三次元データD2の作成を開始する。一方、記憶部63には、ギア9の理想的な形状を表す基準データDoが記憶されている。判定部65は、三次元データ作成部64により作成された三次元データD2と、記憶部63から読み出した基準データDoとを比較する。そして、判定部65は、基準データDoに対する三次元データD2の差分に基づいて、ギア9の良否を判定する。具体的には、判定部65は、基準データDoに対する三次元データD2の差分が、予め設定された閾値未満の場合、当該ギア9を良品と判定する。また、判定部65は、基準データDoに対する三次元データD2の差分が、予め設定された閾値以上の場合、当該ギア9を不良品と判定する。
【0039】
以上のように、本実施形態のギア検査装置1では、ギア9の回転とスキャン動作とを繰り返しながら、ギア9の撮影を行う。これにより、ギア9の複数の歯91を、全周に亘って検査できる。また、スキャン動作においては、移動機構50が、カメラ30の視野におけるギア9の歯すじに沿って、光学ユニット70を移動させる。このようにすれば、カメラ30の視野内において、ギア9を歯すじに沿って移動させることができる。したがって、カメラ30の視野内において、歯91による死角を減らしつつ、計測光Lを撮影できる。これにより、撮影回数を減らすことができるため、ギア9の検査時間を短縮できる。
【0040】
特に、本実施形態のギア検査装置1は、往路スキャンおよび復路スキャンを行う。すなわち、本実施形態のギア検査装置1は、移動機構50による光学ユニット70の上側への移動時と下側への移動時の両方において、カメラ30による撮影を行う。これにより、往路スキャンおよび復路スキャンのいずれか一方のみを行う場合よりも、検査時間をさらに短縮できる。
【0041】
また、本実施形態のギア検査装置1は、ギア9の全周のスキャンが完了した後に、三次元データD2の作成を開始するのではなく、1回のスキャンが完了した後に、三次元データD2の作成を開始する。すなわち、ギア検査装置1は、回転機構13がギア9を1周回転させる前に、三次元データ作成部64による三次元データD2の作成と、判定部65による判定処理とを、開始する。このようにすれば、ギア9のスキャンと、三次元データD2の作成および判定処理とを、並行して進めることができる。したがって、ギア9の検査時間を、さらに短縮できる。
【0042】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。以下では、種々の変形例について、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0043】
<3-1.第1変形例>
図7は、第1変形例に係るギア検査装置1の側面図である。図7の例では、光学ユニット70の位置が固定されている。そして、ギア保持部10が、移動機構50により、鉛直方向に移動可能となっている。このような形態でも、カメラ30の視野内において、ギア9を歯すじに沿って移動させることができる。したがって、カメラ30の視野内において、歯91による死角を減らしつつ、計測光Lを撮影できる。これにより、撮影回数を減らすことができるため、ギア9の検査時間を短縮できる。
【0044】
また、移動機構50は、カメラ30の視野におけるギア9の歯すじに沿って、光学ユニット70とギア9の両方を移動させてもよい。すなわち、移動機構50は、光照射部20およびカメラ30を含む光学ユニット70と、ギア9とを、相対的に移動させればよい。
【0045】
<3-2.第2変形例>
図8は、第2変形例に係るギア検査装置1の側面図である。図8では、光学ユニット70が破線で示されている。図8のギア検査装置1は、2つの光学ユニット70を有する。図8の例では、ヘリカルギアであるギア9が水平に載置されている。そして、2つの光学ユニット70が、それぞれのカメラ30の視野におけるギア9の歯すじに沿う方向に、傾斜した姿勢で配置されている。
【0046】
このように、複数の光学ユニット70を設ければ、カメラ30により同時に撮影できる範囲を拡大できる。したがって、ギア9の検査時間をより短縮できる。図8のように、複数の光学ユニット70を、ギア9の中心軸Cに対して周方向の異なる位置に配置する場合、移動機構50は、各カメラ30の視野においてギア9が歯すじに沿って移動するように、複数の光学ユニット70を、それぞれ異なる方向に移動させればよい。
【0047】
図8の例では、2つの光学ユニット70が、ギア9の中心軸Cに対して180°離れた位置に配置されている。すなわち、図8の例では、2つの光学ユニット70のうち、一方の光学ユニット70が、ギア9の中心軸Cに対して、他方の光学ユニット70の反対側に配置されている。この場合、移動機構50は、軸方向に視た状態において、2つの光学ユニット70を、互いに平行かつ反対向きに移動させる。
【0048】
しかしながら、複数の光学ユニット70は、90°や120°などの他の角度間隔で配置されていてもよい。その場合でも、移動機構50が、各カメラ30の視野においてギア9が歯すじに沿って移動するように、各光学ユニット70を移動させればよい。
【0049】
<3-3.他の変形例>
上記の実施形態では、ギア検査装置1が、ギア9の全周を検査していた。しかしながら、ギア検査装置1は、必ずしもギア9の全周を検査するものでなくてもよい。例えば、ギア検査装置1は、ギア9の一部の歯91のみを検査するものであってもよい。
【0050】
また、ヘリカルギアなどのギア9の歯91は、軸方向の長さが長い場合(歯幅が長い場合)や、ねじれ角が大きい場合には、歯幅の方向における一方の端面から他方の端面にかけて、歯91が裏側に回り込んでしまい、良好に撮影できない場合がある。そこで、移動機構50は、カメラの視野がギアの歯すじに沿うように、光学ユニット70を鉛直方向に移動させると同時に、光学ユニット70を鉛直方向と交差する方向にも移動させてもよい。また、移動機構50は、カメラの視野がギアの歯すじに沿うように、光学ユニット70を鉛直方向に移動させると同時に、検査対象であるギア9を中心軸Cを中心として回転させてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、検査対象となるギア9が、ヘリカルギアであった。しかしながら、検査対象となるギア9は、ヘリカルギア以外のギアであってもよい。例えば、検査対象となるギア9は、各種かさ歯車、ねじ歯車、やまば歯車、ハイポイドギア、ウォームギアなどであってもよい。
【0052】
また、移動機構50は、検査対象となるギア9の種類に応じて、光学ユニット70とギア9との相対移動の方向を、動作途中で変更してもよい。移動機構50が、カメラ30の視野におけるギア9の歯すじに沿って、光学ユニット70とギア9とを相対的に移動させつつ、その移動方向を動作途中で変更することで、やまば歯車などの複雑な歯すじのギアに対しても、適切な撮像および検査を行うことができる。
【0053】
その他、ギア検査装置の細部の形状および構造については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0054】
<4.総括>
本技術は、以下の構成をとることが可能である。
【0055】
(1)複数の歯を有するギアを検査するギア検査装置であって、前記ギアに向けてライン状の計測光を照射する光照射部と、前記ギアの表面に照射された前記計測光を撮影するカメラと、前記光照射部および前記カメラを含む光学ユニットと前記ギアとを、相対的に移動させる移動機構と、前記カメラの撮影結果に基づいて、前記ギアの三次元データを作成する三次元データ作成部と、前記三次元データに基づいて、前記ギアの良否を判定する判定部と、を備え、前記移動機構は、前記カメラの視野における前記ギアの歯すじに沿って、前記光学ユニットと前記ギアとを相対的に移動させる、ギア検査装置。
【0056】
(2)(1)に記載のギア検査装置であって、前記移動機構は、前記光学ユニットと前記ギアとのいずれか一方を、他方に対して移動させる、ギア検査装置。
【0057】
(3)(2)に記載のギア検査装置であって、前記ギアを、水平面に対して傾斜した姿勢で保持するギア保持部を備え、前記移動機構は、前記光学ユニットを前記傾斜した姿勢に合わせた方向に移動させる、ギア検査装置。
【0058】
(4)(2)に記載のギア検査装置であって、前記ギアはヘリカルギアであり、前記検査装置は、前記ギアを、水平面に対して傾斜し、前記ギアの歯すじが鉛直方向となる姿勢で保持するギア保持部を備え、前記移動機構は、前記光学ユニットを鉛直方向に移動させる、ギア検査装置。
【0059】
(5)(3)または(4)に記載のギア検査装置であって、前記ギア保持部は、ベース部と、前記ベース部に対して傾斜し、前記ギアを保持するステージと、を有し、前記ベース部に対する前記ステージの傾斜角度が可変である、ギア検査装置。
【0060】
(6)(3)から(5)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記ギア保持部に前記ギアが保持された状態において、前記ギアの前記歯が、前記ギア保持部の保持面よりも外側に位置する、ギア検査装置。
【0061】
(7)(2)から(6)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記光照射部および前記カメラが固定された固定部材をさらに備え、前記移動機構は、前記固定部材を移動させる、ギア検査装置。
【0062】
(8)(3)から(5)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記ギア保持部は、前記ギアを、前記ギアの中心軸を中心として回転させる回転機構を有し、前記移動機構を動作させつつ、前記カメラによる撮影を行うスキャン動作と、前記回転機構による前記ギアの回転動作と、を繰り返す、ギア検査装置。
【0063】
(9)(8)に記載のギア検査装置であって、前記移動機構により、前記光学ユニットを前記鉛直方向の一方側へ移動させつつ、前記カメラによる撮影を行う往路スキャンと、前記回転機構による前記ギアの回転動作と、前記移動機構により、前記光学ユニットを前記鉛直方向の他方側へ移動させつつ、前記カメラによる撮影を行う復路スキャンと、前記回転機構による前記ギアの回転動作と、を繰り返す、ギア検査装置。
【0064】
(10)(8)または(9)に記載のギア検査装置であって、前記回転機構が前記ギアを1周回転させる前に、前記三次元データ作成部による前記三次元データの作成と、前記判定部による判定処理とを、開始する、ギア検査装置。
【0065】
(11)(1)から(10)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記判定部は、予め記憶された基準データに対する前記三次元データの差分に基づいて、前記ギアの良否を判定する、ギア検査装置。
【0066】
(12)(2)から(11)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、複数の前記光学ユニットを備える、ギア検査装置。
【0067】
(13)(12)に記載のギア検査装置であって、前記ギアはヘリカルギアであり、複数の前記光学ユニットが、周方向の異なる位置に配置され、前記移動機構は、複数の前記光学ユニットを、それぞれ異なる方向に移動させる、ギア検査装置。
【0068】
(14)(13)に記載のギア検査装置であって、2つの前記光学ユニットのうち、一方の前記光学ユニットが、前記ギアの中心軸に対して、他方の前記光学ユニットの反対側に配置され、前記移動機構は、軸方向に視た状態において、2つの前記光学ユニットを、互いに平行かつ反対向きに移動させる、ギア検査装置。
【0069】
(15)(1)から(14)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記移動機構による移動方向に対して交差する方向における前記ギアの位置を調整するギア位置調整機構をさらに備える、ギア検査装置。
【0070】
(16)(1)から(15)までのいずれか1つに記載のギア検査装置であって、前記光照射部および前記カメラの少なくともいずれか一方の光軸の位置を調整する光軸調整機構をさらに備える、ギア検査装置。
【0071】
(17)(4)または(5)に記載のギア検査装置であって、前記移動機構は、前記カメラの視野が前記ギアの歯すじに沿うように、前記光学ユニットを鉛直方向に移動させると同時に前記鉛直方向と交差する方向にも移動させる、ギア検査装置。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ギア検査装置に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ギア検査装置
9 ギア
10 ギア保持部
11 ベース部
12 ステージ
13 回転機構
20 光照射部
30 カメラ
40 固定部材
50 移動機構
60 コンピュータ
64 三次元データ作成部
65 判定部
70 光学ユニット
80 表示部
91 歯
A 被検査領域
D1 撮影画像
D2 三次元データ
D3 判定結果
Do 基準データ
L 計測光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8