(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064851
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ケーブル配策構造及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240507BHJP
B60N 2/52 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173769
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
(72)【発明者】
【氏名】矢ノ下 克尚
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DD11
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】長さの異なる複数のケーブルを纏めて配策可能とされ、他部品との干渉を抑制することが可能なケーブル配策構造及び車両用シートを得る。
【解決手段】給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74には予め余長部84がそれぞれ設けられており、余長部84を間においてクリップ78、80及び回動クリップ82で給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74が結束されている。当該回動クリップ82は、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74の変形に伴って軸線Pを中心に回動するため、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74に対して余分な負荷が掛からないようにすることが可能となり、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74と他部品との干渉を抑制することが可能となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能とされ、昇降可能かつシート前後方向に沿った移動が可能なシート本体と、
前記シート本体をシート下方側から支持し当該シート本体の座部を構成するシートクッションの骨格を成すシートクッションフレームに配策され、それぞれ余長部を有する複数のケーブルと、
前記シートクッションフレームに固定され、前記複数のケーブルが1つに結束された第1固定部と、
前記シートクッションフレームに固定されると共に、前記第1固定部との間に前記余長部が設けられた状態で前記複数のケーブルが1つに結束されかつシート上下方向に沿って設けられた軸線を中心に回動可能とされた回動部と、
を備えたケーブル配策構造。
【請求項2】
前記シートクッションフレームは、
前記シートクッションを支持するアッパフレームと、
前記アッパフレームのシート下方側に配置され車体側に固定されるロアフレームと、
を含んで構成され、
前記アッパフレームに前記回動部が設けられ、前記ロアフレームに前記第1固定部が設けられている請求項1に記載のケーブル配策構造。
【請求項3】
前記第1固定部は、前記ロアフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられると共に、前記回動部は、前記アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられ、
かつ前記アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部には、前記複数のケーブルにおける前記第1固定部と前記回動部との間に配置され当該複数のケーブルが1つに結束された第2固定部がさらに設けられ、
前記複数のケーブルは、前記第1固定部と前記第2固定部の間でシート前後方向の後方側へ向かうように結束されている請求項2に記載のケーブル配策構造。
【請求項4】
前記第1固定部と前記第2固定部は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されている請求項3に記載のケーブル配策構造。
【請求項5】
請求項2~請求項4の何れか1項に記載のケーブル配策構造が適用され、
前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に沿って移動可能となるように当該アッパフレームと当該ロアフレームが連結されたリンク機構と、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に空気が供給可能とされ、供給された空気量に応じて、前記リンク機構を介して、当該ロアフレームに対して当該アッパフレームをシート上下方向に沿って移動させるエアスプリングと、
前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、前記シート本体に発生する振動を減衰するダンパーと、
を備える車両用シート。
【請求項6】
前記シート本体における車両幅方向の外側に設けられた操作ユニットと、
前記アッパフレーム側に設けられ、前記エアスプリングを間において前記操作ユニットの反対側に固定され、前記エアスプリングに対して空気を供給又は排出させるコントロールユニットと、
をさらに備え、
前記複数のケーブルは、
前記操作ユニットに設けられた第1操作部と前記コントロールユニットに設けられ前記エアスプリング内に空気を供給する第1バルブに接続され、前記第1操作部に操作により前記第1バルブを開放する第1ケーブルと、
前記操作ユニットに設けられた第2操作部と前記コントロールユニットに設けられ前記エアスプリング内の空気を排出させる第2バルブに接続され、前記第2操作部の操作により前記第2バルブを開放する第2ケーブルと、
を含んで構成されている請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記複数のケーブルは、
前記操作ユニットに設けられた第3操作部と前記ダンパーに接続され、前記第3操作部の操作によって当該ダンパーによる前記シート本体の振動に対する減衰力の強さを調整可能とする第3ケーブルをさらに含んで構成されている請求項6に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 ケーブル配策構造及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数の配線ケーブルが配策された車両用シートに関する技術が開示されている。この先行技術では、複数の荷重センサがシートクッションに対して設けられており、これらの荷重センサは、配線ケーブルを介して、クッションフレーム(シートクッションフレーム)の一部を構成する左右一対のサイドメンバの前後方向の略中央部同士を連結する連結メンバに取り付けられたセンサ用コントローラに対して接続されている。
【0003】
つまり、クッションフレーム内には複数の配線ケーブルが配策されている。これらの配線ケーブルは、1つに束ねられ束線として被覆された状態で、連結メンバの長手方向の両端に位置する接合部上で当該束線の端部が係止クリップを介して連結メンバの上面に係止(固定)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、車両用シートには、いわゆるサスペンションシート等、高機能を有するシートがある。このようなシートの場合、車両用シートには必要とされる機能に応じて複数の装置がそれぞれ配設される。
【0006】
この場合、これらの装置に接続される配線ケーブル(ケーブル)の数が増えることになるが、配設される装置の位置がそれぞれ異なると、これらの配線ケーブルの長さもそれぞれ異なることから、これらのケーブルを束線として1つに束ねることは困難であり、これらのケーブルをバラバラに配策すると他部品との干渉が懸念される。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、長さの異なる複数のケーブルを纏めて配策可能とされ、他部品との干渉を抑制することが可能なケーブル配策構造及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るケーブル配策構造は、乗員が着座可能とされ、昇降可能かつシート前後方向に沿った移動が可能なシート本体と、前記シート本体をシート下方側から支持し当該シート本体の座部を構成するシートクッションの骨格を成すシートクッションフレームに配策され、それぞれ余長部を有する複数のケーブルと、前記シートクッションフレームに固定され、前記複数のケーブルが1つに結束された第1固定部と、前記シートクッションフレームに固定されると共に、前記第1固定部との間に前記余長部が設けられた状態で前記複数のケーブルが1つに結束されかつシート上下方向に沿って設けられた軸線を中心に回動可能とされた回動部と、を備えている。
【0009】
第1の態様に係るケーブル配策構造では、シート本体、複数のケーブル、第1固定部及び回動部を備えている。シート本体は、乗員が着座可能とされており、昇降可能かつシート前後方向に沿った移動が可能となっている。また、複数のケーブルは、シート本体をシート下方側から支持し当該シート本体の座部を構成するシートクッションの骨格を成すシートクッションフレームに配策されている。
【0010】
ここで、第1固定部は、シートクッションフレームに固定されており、複数のケーブルが1つに結束されている。一方、回動部は、シートクッションフレームに固定されると共に、当該回動部と第1固定部との間に余長部が設けられた状態で当該複数のケーブルが1つに結束されかつシート上下方向に沿って設けられた軸線を中心に回動可能とされている。
【0011】
本態様では、シート本体は、シート前後方向、シート上下方向に沿って移動可能となっている。ケーブルには予め余長部が設けられており、シート本体の移動によるケーブルの伸長分を当該余長部によって吸収可能とされ、ケーブルに対して余分な負荷が掛からないように設定されている。また、当該余長部を設けることによって、長さの異なる複数のケーブルを1つに纏めることが可能となる。
【0012】
また、一般に、シートクッションが移動する際、ケーブルの配策形状は変形するが、本態様では、余長部を間において第1固定部及び回動部で複数のケーブルを結束することによって、ケーブルの変形に伴って当該回動部が回動するため、ケーブルに対して余分な負荷が掛からないようにすることが可能となる。
【0013】
このように、ケーブルに対して余分な負荷が掛からないようにすることによって、ケーブルと他部品との干渉を抑制することが可能となり、ケーブルと他部品との干渉に伴う異音の発生を抑制することが可能となる。
【0014】
第2の態様に係るケーブル配策構造は、第1の態様に係るケーブル配策構造において、前記シートクッションフレームは、シートクッションを支持するアッパフレームと、前記アッパフレームのシート下方側に配置され車体側に固定されるロアフレームと、を含んで構成され、前記アッパフレームに前記回動部が設けられ、前記ロアフレームに前記第1固定部が設けられている。
【0015】
第2の態様に係るケーブル配策構造では、シートクッションフレームは、アッパフレーム及びロアフレームを含んで構成されている。アッパフレームには、シートクッションが設けられており、ロアフレームは、アッパフレームのシート下方側に配置され、車体側に固定される。ここで、アッパフレームには回動部が設けられており、ロアフレームには第1固定部が設けられている。
【0016】
シートクッションが上方へ移動するとき、ロアフレームに対してアッパフレームが上方へ移動する。前述のように、シートクッションが移動する際、ケーブルの配策形状が変形する。このため、アッパフレーム側に回動部を設けることによって、アッパフレームの移動に伴うケーブルの変形に追従してシート上下方向に沿って設けられた軸線を中心に回動部が回動するため、ケーブルの変形により当該ケーブルに余分な負荷が掛からないようにすることができる。
【0017】
第3の態様に係るケーブル配策構造は、第1の態様又は第2の態様に係るケーブル配策構造において、前記第1固定部は、前記ロアフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられると共に、前記回動部は、前記アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられ、かつ前記アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部には、前記複数のケーブルにおける前記第1固定部と前記回動部との間に配置され当該複数のケーブルが1つに結束された第2固定部がさらに設けられ、前記複数のケーブルは、前記第1固定部と前記第2固定部の間でシート前後方向の後方側へ向かうように結束されている。
【0018】
第3の態様に係るケーブル配策構造では、第1固定部は、ロアフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられている。また、回動部は、アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部に設けられており、当該アッパフレームにおけるシート前後方向の後端部には、第2固定部が設けられている。この第2固定部は、複数のケーブルにおける第1固定部と回動部との間に配置されており、当該第2固定部によって複数のケーブルが1つに結束されている。
【0019】
ここで、複数のケーブルは、第1固定部と第2固定部の間でシート前後方向の後方側へ向かうように結束されている。
【0020】
このように、第1固定部、第2固定部は、それぞれロアフレームの後端部、アッパフレームの後端部に設けられており、シートクッションフレームの後端部にそれぞれ設けられている。このため、第1固定部と第2固定部の間で複数のケーブルをシート前後方向の後方側へ向かうように結束することによって、複数のケーブルとシートクッションフレーム内の部品との干渉を抑制することが可能となる。
【0021】
このように、本態様では、複数のケーブルによるシートクッションフレーム内の部品との干渉が抑制されるため、当該部品との干渉によるケーブルの摩擦を軽減することが可能となり、ケーブルの断線を抑制することが可能となる。
【0022】
また、複数のケーブルをシート前後方向の後方側へ向かうように結束することによって、複数のケーブルをシートクッションフレーム内に配策する場合と比較して、シートクッションフレーム内のスペースが広がり、シートクッションフレーム内の部品において組付け性が向上する。
【0023】
第4の態様に係るケーブル配策構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係るケーブル配策構造において、前記第1固定部と前記第2固定部は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。
【0024】
第4の態様に係るケーブル配策構造では、ロアフレームに設けられた第1固定部とアッパフレームに設けられた第2固定部は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。比較例として第1固定部と第2固定部がシート幅方向の同じ位置で上下に配置された場合、シートクッションを上下方向に移動させる場合、シートクッションのロアモースト位置において、ケーブルが上下に重なるように配置されることになる。このため、ケーブルの変曲点におけるRが小さくなってしまい、ケーブルには、必要以上に負荷が掛かることになる。
【0025】
これに対して、本態様では、第1固定部と第2固定部がシート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。このため、ケーブルが上下に重なることはなく、シートクッションのロアモースト位置において、ケーブルが上下に重なるように配置された場合と比較して、ケーブルの変曲点におけるRを大きくすることができ、ケーブルに必要以上に負荷が掛かることはない。
【0026】
また、本態様では、ロアフレームに設けられた第1固定部とアッパフレームに設けられた第2固定部がシート幅方向にオフセットされた状態で配置されているため、ケーブルは、シート上下方向に沿った軸線に対して斜めに配策される。このため、ケーブルがシート上下方向に沿って配策された場合と比較して、シートクッションのロアモースト位置においてケーブルがシート後方側へ突出する突出量を低減することが可能となる。その結果、シート後方側におけるケーブルの余長分のスペースを削減することが可能となる。
【0027】
第5の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係るケーブル配策構造が適用され、前記アッパフレームが前記ロアフレームに対してシート上下方向に沿って移動可能となるように当該アッパフレームと当該ロアフレームが連結されたリンク機構と、前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、内部に空気が供給可能とされ、供給された空気量に応じて、前記リンク機構を介して、当該ロアフレームに対して当該アッパフレームをシート上下方向に沿って移動させるエアスプリングと、前記アッパフレームと前記ロアフレームとの間に設けられ、前記シート本体に発生する振動を減衰するダンパーと、を備えている。
【0028】
第5の態様に係る車両用シートでは、リンク機構、エアスプリング及びダンパーを備えている。リンク機構は、アッパフレームがロアフレームに対してシート上下方向に沿って移動可能となるように当該アッパフレームと当該ロアフレームを連結している。つまり、本態様では、リンク機構によって、アッパフレームのロアフレームに対する高さが調節され、シート本体の高さが調節される。
【0029】
また、エアスプリングは、アッパフレームとロアフレームとの間に設けられており、エアスプリングの内部には、空気が供給可能とされている。当該エアスプリングの内部に供給された空気量に応じてエアスプリングが上下に伸縮し、これに伴ってリンク機構を介して、ロアフレームに対してアッパフレームをシート上下方向に沿って移動させる。そして、ダンパーは、アッパフレームとロアフレームとの間に設けられており、当該ダンパーによって、シート本体に発生する振動が減衰される。
【0030】
第6の態様に係る車両用シートは、第5の態様に係る車両用シートにおいて、前記シート本体における車両幅方向の外側に設けられた操作ユニットと、前記アッパフレーム側に設けられ、前記エアスプリングを間において前記操作ユニットの反対側に固定され、前記エアスプリングに対して空気を供給又は排出させるコントロールユニットと、をさらに備え、前記複数のケーブルは、前記操作ユニットに設けられた第1操作部と前記コントロールユニットに設けられ前記エアスプリング内に空気を供給する第1バルブに接続され、前記第1操作部の操作により前記第1バルブを開放する第1ケーブルと、前記操作ユニットに設けられた第2操作部と前記コントロールユニットに設けられ前記エアスプリング内の空気を排出させる第2バルブに接続され、前記第2操作部の操作により前記第2バルブを開放する第2ケーブルと、を含んで構成されている。
【0031】
第6の態様に係る車両用シートでは、操作ユニット及びコントロールユニットをさらに備えている。操作ユニットは、シート本体における車両幅方向の外側に設けられており、コントロールユニットは、アッパフレーム側に設けられ、エアスプリングを間において当該操作ユニットの反対側に固定され、エアスプリングに対して空気を供給又は排出可能とされている。
【0032】
ここで、複数のケーブルは、第1ケーブル及び第2ケーブルを含んで構成されている。第1ケーブルは、操作ユニットに設けられた第1操作部とコントロールユニットに設けられエアスプリング内に空気を供給する第1バルブに接続されており、第1操作部の操作により第1バルブが開放される。
【0033】
つまり、本態様では、第1操作部を操作すると第1ケーブルに張力が作用し、これにより、第1バルブが開放され、エアスプリング内に空気が供給される。その結果、エアスプリング及びリンク機構を介して、ロアフレームに対してアッパフレーム(シート本体)がシート上方側へ移動する。
【0034】
一方、第2ケーブルは、操作ユニットに設けられた第2操作部とコントロールユニットに設けられエアスプリング内の空気を排出させる第2バルブに接続されており、第2操作部の操作により第2バルブが開放される。
【0035】
つまり、本態様では、第2操作部を操作すると第2ケーブルに張力が作用し、これにより、第2バルブが開放され、エアスプリング内の空気が排出される。その結果、エアスプリング及びリンク機構を介して、ロアフレームに対してアッパフレーム(シート本体)がシート下方側へ移動する。
【0036】
なお、第1操作部と第2操作部はスイッチ等、それぞれ別の部材を用いてもよいが、レバー等、1つの部材を用いてもよい。レバー等1つの部材を用いる場合、第1操作部に対する操作方向と第2操作部に対する操作方向を逆にする。
【0037】
第7の態様に係る車両用シートは、第5又は第6の態様に係る車両用シートにおいて、前記複数のケーブルは、前記操作ユニットに設けられた第3操作部と前記ダンパーに接続され、前記第3操作部の操作によって当該ダンパーによる減衰力の強さを調整可能とする第3ケーブルをさらに含んで構成されている。
【0038】
第7の態様に係る車両用シートでは、複数のケーブルは、第3ケーブルをさらに含んで構成されている。第3ケーブルは、操作ユニットに設けられた第3操作部とダンパーに接続されており、第3操作部の操作によって当該ダンパーによる前記シート本体の振動に対する減衰力の強さを調整可能としている。
【0039】
つまり、本態様では、第3操作部を操作すると第3ケーブルに張力が作用し、これにより、例えば、ダンパーの一部を構成するピストンが移動し、当該ダンパーによるシート本体の振動に対する減衰力の強さが調整可能とされる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るケーブル配策構造及び車両用シートは、長さの異なる複数のケーブルを纏めて配策可能とされ、他部品との干渉を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本実施形態の車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートの一部を構成するシートクッションフレームを左斜め後方かつ上方側から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態の車両用シートの一部を構成するシートクッションフレームを右斜め後方かつ上方側から見た斜視図である。
【
図4】シートクッションフレームのロアモースト状態を示す斜視図である。
【
図5】シートクッションフレームのアッパーモースト状態を示す斜視図である。
【
図6】シートクッションフレームの要部を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の車両用シートに設けられた操作ユニットを示す要部拡大斜視図である。
【
図8】(A)は、シートクッションフレームのロアモースト状態を示す模式的な側面図であり、(B)は、シートクッションフレームのアッパーモースト状態を示す模式的な側面図である。
【
図9】(A)は、シートクッションフレームを示す模式的な平面図であり、(B)は、シートクッションフレームを示す模式的な背面図である。
【
図10】(A)は、シート本体がシートクッションフレーム上に配置された状態を示す模式的な平面図であり、(B)は、シート本体がシート前方側へスライドされた状態を示す模式的な平面図である。
【
図11】比較例であり、(A)は、シートクッションフレームのロアモースト状態を示す模式的な側面図であり、(B)は、シートクッションフレームのアッパーモースト状態を示す模式的な側面図である。
【
図12】比較例であり、(A)は、シートクッションフレームを示す模式的な平面図であり、(B)は、シートクッションフレームを示す模式的な背面図である。
【
図13】比較例であり、(A)は、シート本体がシートクッションフレーム上に配置された状態を示す模式的な平面図であり、(B)は、シート本体がシート前方側へスライドされた状態を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1~
図3を用いて、本発明の実施形態に係るケーブル配策構造が適用された車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0043】
(車両用シートの構成)
まず、本実施の形態に係るケーブル配策構造が適用された車両用シートの構成について説明する。
【0044】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、乗員が着座する座部12を構成し着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、乗員の背部を支持するシートバック16と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト18とを備えている。
【0045】
シートクッション14は、その骨格を成すシートクッションフレーム20を備えており、シートクッションフレーム20によって車両用シート10を構成するシート本体11は下方側から支持されている。
【0046】
図2、
図3に示されるように、シートクッションフレーム20は、アッパフレーム22及びロアフレーム24を含んで構成されている。アッパフレーム22とロアフレーム24は上下に配置されており、アッパフレーム22はシート本体11をシート下方側から支持し、ロアフレーム24はアッパフレーム22のシート下方側に配置され車体(図示省略)側に固定されている。
【0047】
アッパフレーム22は、平面視で略矩形状を成しており、シート本体11をスライド可能に支持している。アッパフレーム22は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドメンバ26、28と、左右一対のサイドメンバ26、28の前端部同士を架け渡すフロントメンバ30と、左右一対のサイドメンバ26、28の後端部同士を架け渡すリアメンバ32と、を含んで構成されている。当該フロントメンバ30の後方側には当該フロントメンバ30と平行にフロントパイプ33が設けられており、リアメンバ32の前方側には当該リアメンバ32と平行にリアパイプ34が設けられている。
【0048】
一方、ロアフレーム24は、平面視で略矩形状を成しており、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のサイドメンバ36、38と、左右一対のサイドメンバ36、38の前端部同士を架け渡すフロントメンバ40と、左右一対のサイドメンバ36、38の後端部同士を架け渡すリアパイプ46と、を含んで構成されている。当該フロントメンバ40の後方側には当該フロントメンバ40と平行にフロントパイプ44(
図4参照)が設けられている。なお、サイドメンバ36、38の後端部の下面には、車体(図示省略)側に固定される取付プレート42が設けられている。
【0049】
ここで、シートクッションフレーム20には、リンク機構48と、エアスプリング50と、ダンパー52と、を備えている。
【0050】
図8(A)、(B)に示されるように、リンク機構48は、左右一対のいわゆるXリンク54を備えている。左右一対のXリンク54の上端部は、
図2に示すアッパフレーム22のフロントパイプ33、リアパイプ34にそれぞれ係合されており、左右一対のXリンク54の下端部は、
図2に示すロアフレーム24のリアパイプ46、フロントパイプ44(
図4参照)にそれぞれに係合されている。
【0051】
また、
図8(A)、(B)に示されるように、Xリンク54は、前方側から後方側へ向かうにつれて下方側に傾斜するリンク部56と、前方側から後方側へ向かうにつれて上方側に傾斜するリンク部58と、を備えている。リンク部56とリンク部58とは、シート前後方向の中央部においてシート幅方向を軸方向として回動可能に連結されている。
【0052】
そして、リンク部56がリンク部58に対して相対的に回動し、リンク部58との間で成す角度を変えることによって、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する昇降が可能とされるようになっている。すなわち、リンク機構48の左右一対のXリンク54は、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して昇降可能な状態で、アッパフレーム22とロアフレーム24とを連結している。
【0053】
図2に示されるように、アッパフレーム22のサイドメンバ26、28には、リアパイプ34の前方側に上側支持板60がシート幅方向に沿って架け渡されている。また、ロアフレーム24のサイドメンバ36、38には、リアパイプ46の前方側に下側支持板62がシート幅方向に沿って架け渡されている。当該上側支持板60と下側支持板62(
図6参照)の間にエアスプリング50は配置されており、上側支持板60及び下側支持板62によってエアスプリング50は支持されている。
【0054】
簡単に説明すると、エアスプリング50は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されており、エアスプリング50の下端部がロアフレーム24の下側支持板62における長手方向の略中央部に固定されると共に、エアスプリング50の上端部がアッパフレーム22の上側支持板60における長手方向の略中央部に固定されている。
【0055】
このエアスプリング50は、例えば、車両のエアブレーキ装置の一部を構成するエアコンプレッサ(空気供給源)から圧縮空気が供給可能とされている。エアスプリング50は、空気が供給されることで上下方向に伸長し、空気が排出されることで上下方向に収縮するようになっている。
【0056】
このように、本実施形態では、エアスプリング50が伸長することでアッパフレーム22が上方側に移動し、エアスプリング50が収縮することでアッパフレーム22が下方側に移動することとなる。つまり、エアスプリング50は、供給された空気量に応じて上下方向に伸縮することで、アッパフレーム22に支持されたシート本体11の座面12A(
図1参照)の高さを調整可能とされている。
【0057】
図3に示されるダンパー52は、オイル式のシリンダーダンパとされており、車両用シート10(
図1参照)のシートクッションフレーム20内における左側に配置されている。ダンパー52の一端部はアッパフレーム22に接続されており、ダンパー52の他端部はロアフレーム24に接続され、ダンパー52は、アッパフレーム22及びロアフレーム24に連結されている。このダンパー52によって、シート本体11に発生する振動を減衰することが可能となっている。
【0058】
ここで、本実施形態では、
図6に示されるように、アッパフレーム22側に設けられたハイトコントロールユニット64によってエアスプリング50内の空気の量が調整可能とされ、シート本体11の座面12A(
図1参照)の高さを調整可能としている。
【0059】
ハイトコントロールユニット64は、シートクッションフレーム20内におけるダンパー52の車両幅方向の外側に配置されており、ケーシング64Aを備えている。ケーシング64Aには、図示はしないが、内部には空気が流れる流路部が形成されており、給気用バルブ(第1バルブ)、排気用バルブ(第2バルブ)がそれぞれ設けられている。また、ケーシング64Aには、給気用ケーブル(第1ケーブル)66、排気用ケーブル(第2ケーブル)68の一端部がそれぞれ接続されている。
【0060】
また、ケーシング64Aには、図示しない車体側と接続される給気用チューブ70が接続されている。この給気用チューブ70には前述したエアコンプレッサから圧縮空気が供給されるようになっている。さらに、ケーシング64Aには、エアスプリング50と接続されるチューブ72が接続されている。
【0061】
このため、図示しない給気用バルブが開放されると、給気用チューブ70、ケーシング64A及びチューブ72を介して、エアスプリング50内にはエアコンプレッサから圧縮空気が供給される。一方、図示しない排気用バルブが開放されると、当該チューブ72及びケーシング64Aに設けられたバルブ(図示省略)を介して、エアスプリング50内の圧縮空気が大気へ排出される。
【0062】
ところで、
図7に示されるように、シート本体11の車両幅方向の外側には、操作ユニット71が設けられており、操作ユニット71には、ハイトレバー(第1操作部、第2操作部)73が設けられている。
図6に示す当該給気用ケーブル66及び排気用ケーブル68の他端部は、このハイトレバー73(
図7参照)にそれぞれ接続されている。
【0063】
具体的に説明すると、給気用ケーブル66は、操作ユニット71に設けられたハイトレバー73とハイトコントロールユニット64に設けられエアスプリング50内に空気を供給する第1バルブに接続されており、ハイトレバー73を上方側へ操作することによって第1バルブが開放される。
【0064】
つまり、ハイトレバー73を上方側へ操作すると、給気用ケーブル66には張力が作用し、これにより、第1バルブが開放され、エアスプリング50内に空気が供給される。その結果、エアスプリング50及びリンク機構48を介して、ロアフレーム24に対してアッパフレーム22(シート本体11)がシート上方側へ移動する。
【0065】
一方、排気用ケーブル68は、ハイトレバー73(
図7参照)とハイトコントロールユニット64に設けられエアスプリング50内の空気を排出させる第2バルブに接続されており、ハイトレバー73を下方側へ操作することによって第2バルブが開放される。
【0066】
つまり、ハイトレバー73を下方側へ操作すると、排気用ケーブル68には張力が作用し、これにより、第2バルブが開放され、エアスプリング50内の空気が排出される。その結果、エアスプリング50及びリンク機構48を介して、ロアフレーム24に対してアッパフレーム22(シート本体11)がシート下方側へ移動する。
【0067】
さらに、
図7に示されるように、ハイトレバー73の近傍には、ダンパーレバー(第3操作部)75が設けられている。このダンパーレバー75には、
図6に示すダンパー用ケーブル(第3ケーブル)74の一端部が接続されており、ダンパー用ケーブル74の他端部はダンパー52に接続されている。
【0068】
このため、ダンパーレバー75を操作すると、ダンパー用ケーブル74に張力が作用し、これにより、ダンパー52の一部を構成する図示しないピストンが移動して、当該ダンパー52によるシート本体11(
図1参照)の振動に対する減衰力の強さが調整可能とされる。
【0069】
本実施形態では、
図6に示すハイトコントロールユニット64は、車両用シート10(
図1参照)のシートクッションフレーム20内における左側に配置されており、
図7に示すハイトレバー73及びダンパーレバー75は、車両用シート10の右側下部に設けられている。
【0070】
このため、ハイトコントロールユニット64とハイトレバー73、ダンパーレバー75を接続する給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、それぞれ少なくともシート幅方向に沿って配策されることになる。
【0071】
ここで、
図5、
図6に示されるように、本実施形態では、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、ハイトコントロールユニット64からシート前後方向に沿って後方側へ向かって配策される。ロアフレーム24の後端部に設けられた取付プレート42における長手方向の略中央部には、下方側を開口とする略矩形状のブラケット76が取り付けられている。
【0072】
具体的に説明すると、ブラケット76の下端からはそれぞれフランジ76Aがブラケット76の外側へ向かってシート幅方向に沿って張り出しており、当該フランジ76Aが取付プレート42に締結されている。
【0073】
当該ブラケット76における一対の側壁76B、76Cは、シート上下方向かつシート前後方向に沿って配置されている。左側の側壁76Bには、シート前後方向に沿って長孔部(図示省略)が形成されており、当該長孔部に対して嵌合可能なクリップ(第1固定部)78がシート幅方向を軸線方向として取り付けられている。
【0074】
このクリップ78に対して給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74が挟持され、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、当該クリップ78を介してシート後方側へ向かって案内されている。
【0075】
このように、ブラケット76に長孔部を形成し、当該長孔部に対して嵌合されるクリップ78を用いることによって、ブラケット76に対してクリップ78が回動しないようにしている。ブラケット76に丸孔部が形成された場合と比較して当該クリップ78では回動することがないため、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74をシート後方側へ向かって確実に案内することができる。
【0076】
また、アッパフレーム22のリアメンバ32における長手方向の右側及び長手方向の中央部には、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74を挟持するクリップ80、回動クリップ82がシート上下方向を軸線P方向としてそれぞれ取り付けられている。なお、クリップ(第2固定部)80は、リアメンバ32に取り付けられた状態で回動不能とされている。一方、回動クリップ(回動部)82は、リアメンバ32に取り付けられた状態で軸線P周りに回動可能とされている。
【0077】
また、クリップ78は、ロアフレーム24のシート幅方向の略中央部左側に設けられ、クリップ80は、アッパフレーム22の右側に設けられ、クリップ78とクリップ80は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。なお、クリップ78とクリップ80は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されていれば良いため、クリップ78はロアフレーム24の左側に設けられてもよい。このため、以下では、クリップ78の位置は、ロアフレーム24の左側として説明する。
【0078】
以上のような構成により、本実施形態では、ハイトコントロールユニット64に接続された給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、まず、車両用シート10(
図1参照)のシートクッションフレーム20におけるロアフレーム24の左側に設けられたクリップ78によって、シートクッションフレーム20のシート後方側へ向かって案内される。
【0079】
次に、当該クリップ78を経て、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、アッパフレーム22の右側に設けられたクリップ80に挟持され、シート前方側(アッパフレーム22内側)へ向かって案内される。
【0080】
そして、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、アッパフレーム22内において平面視で反時計回りに約270°回転させた後、アッパフレーム22の長手方向の中央部に設けられた回動クリップ82に挟持される。
【0081】
さらに、当該回動クリップ82を経て、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、シートクッションフレーム20のシート後方側へ向かって案内された後、シート前方側へ向かって操作ユニット71(
図7参照)側に接続される。
【0082】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係るケーブル配策構造が適用された車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0083】
本実施形態では、
図5、
図6に示されるように、車両用シート10(
図1参照)は、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74、クリップ78及び回動クリップ82を備えている。給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、シートクッション14の骨格を成すシートクッションフレーム20に配策されている。
【0084】
ここで、クリップ78は、シートクッションフレーム20のロアフレーム24に固定されており、当該クリップ78によって、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74が1つに結束されている。一方、回動クリップ82は、シートクッションフレーム20のアッパフレーム22に固定されると共に、当該回動クリップ82とクリップ80との間に余長部84の一部が設けられた状態で当該給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74が1つに結束されかつシート上下方向に沿って設けられた軸線Pを中心に回動可能とされている。
【0085】
本実施形態では、シート本体11(
図1参照)は、シート前後方向、シート上下方向に沿って移動可能となっている。このため、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74には予め余長部84がそれぞれ設けられており、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74に対してそれぞれ余分な負荷が掛からないようにされている。
【0086】
本実施形態では、この余長部84を間において、クリップ78及び回動クリップ82で給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74を結束することによって、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74による長さの違いを当該余長部84で吸収することができる。
【0087】
これにより、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74に対して余分な負荷が掛からないようにすることが可能となる。そして、本実施形態では、当該余長部84を設けることによって、長さの異なる複数の給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74を1つに纏めることが可能となる。
【0088】
また、一般に、シートクッション14が移動する際、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74の配策形状は変形するが、本実施形態では、余長部84を間において、クリップ78及び回動クリップ82で給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74を結束している。
【0089】
本実施形態では、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74の変形に伴って、軸線Pを中心に当該回動クリップ82が回動するため、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74に対して余分な負荷が掛からないようにすることが可能となる。
【0090】
これにより、本実施形態では、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74と他部品との干渉を抑制することが可能となり(後述する)、また、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74と他部品との干渉に伴う異音の発生を抑制することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、クリップ78は、ロアフレーム24の後端部に設けられている。また、クリップ80及び回動クリップ82は、アッパフレーム22の後端部に設けられている。クリップ80は、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74におけるクリップ78と回動クリップ82との間に配置されている。そして、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74は、クリップ78とクリップ80の間でシート前後方向の後方側へ向かうように結束されている。
【0092】
このように、本実施形態では、クリップ78とクリップ80の間で給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74をシート前後方向の後方側へ向かうように結束することによって、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74とシートクッションフレーム20内の部品との干渉を抑制することが可能となる。
【0093】
これにより、本実施形態では、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74とシートクッションフレーム20内の部品との干渉による摩擦を軽減することが可能となり、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74の断線を抑制することが可能となる。
【0094】
また、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74をシート前後方向の後方側へ向かうように結束することによって、当該給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74をシートクッションフレーム20内に配策する場合と比較して、本実施形態では、シートクッションフレーム20内のスペースが広がり、組付け性が向上する。
【0095】
さらに、本実施形態では、クリップ78は、ロアフレーム24の左側に設けられ、クリップ80は、アッパフレーム22の右側に設けられ、クリップ78とクリップ80は、シート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。
【0096】
比較例として、
図11(A)には、ロアモースト位置Qのシートクッションフレーム100の模式的な側面図が示され、
図11(B)には、アッパーモースト位置Rのシートクッションフレーム100の模式的な側面図が示されている。また、
図12(A)には、シートクッションフレーム100の模式的な平面図が示され、
図12(B)には、シートクッションフレーム100の模式的な背面図が示されている。なお、
図12(B)において、実線はロアモースト位置Qのシートクッションフレーム100が示され、二点鎖線はアッパーモースト位置Rのシートクッションフレーム100が示されている。
【0097】
図12(A)、(B)に示されるように、車両用シート(図示省略)のシートクッションフレーム100では、クリップ104とクリップ106がシート幅方向の同じ位置で上下に配置されている。
【0098】
この場合、
図11(A)、(B)、
図12(A)、(B)に示されるように、アッパフレーム102を下方向に移動させると、車両用シートのロアモースト位置Qにおいて、ケーブル108が上下に重なるように配置され、ケーブル108の変曲点108AにおけるRが小さくなってしまい、ケーブル108には、必要以上に負荷が掛かることになる。
【0099】
これに対して、本実施形態では、
図9(A)に示されるように、クリップ78とクリップ80がシート幅方向にオフセットされた状態で配置されている。
【0100】
ここで、
図8(A)には、ロアモースト位置Qのシートクッションフレーム20の模式的な側面図が示され、
図8(B)には、アッパーモースト位置Rのシートクッションフレーム20の模式的な側面図が示されている。また、
図9(A)には、シートクッションフレーム20の模式的な平面図が示され、
図9(B)には、シートクッションフレーム20の模式的な背面図が示されている。なお、
図9(B)において、実線はロアモースト位置Qのシートクッションフレーム20が示され、二点鎖線はアッパーモースト位置Rのシートクッションフレーム20が示されている。
【0101】
本実施形態では、
図9(A)、(B)に示されるように、クリップ78とクリップ80がシート幅方向にオフセットされた状態で配置されているため、ケーブル86(給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74(
図6参照))が上下に重なることはない。
【0102】
したがって、
図12(A)、(B)に示されるように、車両用シートのロアモースト位置Qにおいて、ケーブル108が上下に重なるように配置された場合と比較して、本実施形態では、
図9(A)、(B)に示されるように、ケーブル86の変曲点86AにおけるRを大きくすることができ、ケーブル86に必要以上に負荷が掛かることはない。
【0103】
また、本実施形態では、ロアフレーム24に設けられたクリップ78とアッパフレーム22に設けられたクリップ80がシート幅方向にオフセットされた状態で配置されているため、ケーブル86は、シート上下方向に沿った軸線Pに対して斜めに配策される。
【0104】
比較例として、
図12(B)に示されるように、ケーブル108がシート上下方向に沿って配策された場合において、
図11(A)に示されるように、シートクッションフレーム100のロアモースト位置Qにおけるケーブル108のシート後方側への突出量をL2とする。
【0105】
本実施形態では、
図9(B)に示されるように、ケーブル86は、シート上下方向に沿った軸線Pに対して斜めに配策されるため、
図8(A)に示されるように、シートクッションフレーム20のロアモースト位置Qにおいてケーブル86がシート後方側へ突出する突出量L1を低減することが可能となる(L1<L2)。その結果、シート後方側におけるケーブル86の余長分のスペースを削減することが可能となる。
【0106】
前述のように、本実施形態では、
図5、
図6に示されるように、余長部84を固定するクリップにおいて、給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74の変形に伴って、軸線Pを中心に回動する回動クリップ82が設けられている。
【0107】
例えば、比較例として、
図13(A)に示されるように、ケーブル108において、シート本体114を支持するシートクッションフレーム100の後方側に余長部110を設けた状態で、シートクッションフレーム100の後端部に対してクリップ116、118をそれぞれ回動不能に固定させる。
【0108】
なお、
図13(A)、(B)には、シート本体114の模式的な平面図が示され、
図13(A)には、シート本体114がシートクッションフレーム100上に配置された状態が示され、
図13(B)には、シート本体114がシート前方側へスライドされた状態が示されている。
【0109】
図13(B)に示されるように、シート本体114をシート前後方向の前方側へ向かってスライドさせた場合、シート本体114とシートクッションフレーム100の後端部との距離が大きくなり、クリップ118を起点としてケーブル108はシート前方側へ引っ張られ、ケーブル108には大きな負荷が掛かることになる。
【0110】
これに対して、本実施形態では、前述のように、ケーブル86(給気用ケーブル66、排気用ケーブル68及びダンパー用ケーブル74(
図6参照))を固定するクリップにおいて、回動クリップ82が設けられている。このため、
図10(A)、(B)に示されるように、シート本体11をシート前後方向の前方側へ向かってスライドさせた場合、ケーブル86の変形に追従して、当該回動クリップ82が軸線P(
図6参照)を中心に回動する。
【0111】
これにより、本実施形態では、シート本体11の前後方向に沿ったスライドに伴うケーブル86への負荷を考慮した余長分を短くすることが可能となり、また、ケーブル86には、余分な負荷が掛からないようにすることが可能となる。さらに、クリップ80は、シート前後方向に沿って移動可能とされてもよい。これにより、シート本体11の前後方向に沿ったスライドに伴うケーブル86の余長分をさらに短くすることが可能となる。
【0112】
なお、
図10(A)、(B)には、シート本体11の模式的な平面図が示され、
図10(A)には、シート本体11がシートクッションフレーム20上に配置された状態が示され、
図10(B)には、シート本体11がシート前方側へスライドされた状態が示されている。
【0113】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
10 車両用シート
11 シート本体
12 座部
14 シートクッション
20 シートクッションフレーム
22 アッパフレーム
24 ロアフレーム
48 リンク機構
50 エアスプリング
52 ダンパー
54 Xリンク(リンク機構)
64 ハイトコントロールユニット(コントロールユニット)
66 給気用ケーブル(第1ケーブル)
68 排気用ケーブル(第2ケーブル)
71 操作ユニット
73 ハイトレバー(第1操作部、第2操作部)
74 ダンパー用ケーブル(第3ケーブル)
75 ダンパーレバー(第3操作部)
78 クリップ(第1固定部)
80 クリップ(第2固定部)
82 回動クリップ(回動部)
84 余長部
86 ケーブル(複数のケーブル)
P 軸線