(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064852
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】カバー部材の取付構造及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/60 20060101AFI20240507BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20240507BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60N2/60
A47C31/11 Z
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173770
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 深月
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】サイドフィニッシャに係止されるカバー部材が下方側から上方側へ押された場合でもサイドフィニッシャに対するカバー部材の外れをさらに抑制することが可能なカバー部材の取付構造及び車両用シートを得る。
【解決手段】カバー部材28にはシート前後方向に沿って複数の貫通孔30が形成され、サイドフィニッシャ20にはカバー部材28に形成された複数の貫通孔30がそれぞれ係止可能な複数の被係止部26が設けられている。被係止部26には、支持部34及び張出部36がそれぞれ設けられている。カバー部材28を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき、張出部36が貫通孔30の周辺部31に当接し、サイドフィニッシャ20に設けられた被係止部26とカバー部材28に形成された貫通孔30との係止状態を維持する。これにより、カバー部材28がサイドフィニッシャ20から外れるのを抑制することが可能となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションの側部に設けられ、シート前後方向及びシート上下方向に沿って延在されたサイドフィニッシャと、
前記サイドフィニッシャに対して係止された状態で垂下され、前記シートクッションの下方側を覆うカバー部材と、
を備えた車両用シートに適用され、
前記カバー部材に設けられ、シート前後方向に沿って形成された複数の係止部と、
前記サイドフィニッシャに設けられ、前記複数の係止部に対してそれぞれ係止可能とされ、前記カバー部材の自重を受ける支持部及び当該カバー部材を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき前記係止部との係止状態を維持するストッパが設けられた複数の被係止部と、
を有するカバー部材の取付構造。
【請求項2】
前記係止部は円形状の貫通孔であると共に、前記被係止部は前記貫通孔内へ挿入可能とされ、
前記ストッパは、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で、当該貫通孔の周辺部に対して少なくとも3カ所で引っ掛かり可能とされている請求項1に記載のカバー部材の取付構造。
【請求項3】
前記支持部は、前記サイドフィニッシャの内面から突出し、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で当該貫通孔の内縁が当接して前記カバー部材を支持し、
前記ストッパは、前記支持部における突出方向の先端から前記サイドフィニッシャの内面に対して対向するように張り出し、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で前記貫通孔の周辺部が当接して前記カバー部材の外れを抑制する張出部とされている請求項2に記載のカバー部材の取付構造。
【請求項4】
前記張出部における張り出し方向の先端部には、前記サイドフィニッシャの内面と対向する対向面の反対側の面に面取り部又は角丸め部が形成されている請求項3に記載のカバーの取付構造。
【請求項5】
前記支持部は、同じ起点から互いに異なる3方向へそれぞれ延出された3つの支持片を含んで構成され、
前記張出部は、前記3つの支持片とそれぞれ一体に形成された3つの張出片を含んで構成されている請求項3に記載のカバー部材の取付構造。
【請求項6】
前記被係止部は、シート側面視でT字状又はY字状を成している請求項1に記載のカバー部材の取付構造。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載のカバー部材の取付構造が適用された車両用シートであって、
前記シートクッションをシート上下方向に沿って移動させるリフター機能を備え、
前記被係止部は、少なくとも前記シートクッションのアッパモースト位置で前記係止部を介して前記カバー部材の自重を受け、少なくとも当該シートクッションのロアモースト位置で当該カバー部材を介してシート上下方向の下方側からの反力を受けるように形成されている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材の取付構造及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、シートクッションの側部に隙間隠し用のカバー部材が取り付けられた車両用シートに関する技術が開示されている。この先行技術では、シートクッションの側部に設けられたサイドフィニッシャに対してカバー部材としてカーペットを係止させ当該カーペット(以下、「カバー部材」と称する)が垂下されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該サイドフィニッシャに対してカバー部材を垂下させる場合、例えば、サイドフィニッシャの内面側にシート前後方向から見てL字状に曲げられた係止片が設けられ、この係止片がカバー部材に形成された矩形状の係止孔内に挿入され係止される構成が挙げられる。
【0005】
しかしながら、このような構造では、リフター機構を用いてシートクッションを下降させた場合に、カバー部材の下端部が車体フロア側から反力を受けカバー部材が上方側へ押されると、係止片が係止孔内に挿入された状態が解除され、カバー部材がサイドフィニッシャから外れてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、サイドフィニッシャに係止されるカバー部材が下方側から上方側へ押された場合でもサイドフィニッシャに対するカバー部材の外れをさらに抑制することが可能なカバー部材の取付構造及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るカバー部材の取付構造は、乗員が着座するシートクッションの側部に設けられ、シート前後方向及びシート上下方向に沿って延在されたサイドフィニッシャと、前記サイドフィニッシャに対して係止された状態で垂下され、前記シートクッションの下方側を覆うカバー部材と、を備えた車両用シートに適用され、前記カバー部材に設けられ、シート前後方向に沿って形成された複数の係止部と、前記サイドフィニッシャに設けられ、前記複数の係止部に対してそれぞれ係止可能とされ、前記カバー部材の自重を受ける支持部及び当該カバー部材を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき前記係止部との係止状態を維持するストッパが設けられた複数の被係止部と、を有している。
【0008】
第1の態様に係るカバー部材の取付構造では、サイドフィニッシャ及びカバー部材を備えた車両用シートに適用されている。サイドフィニッシャは、乗員が着座するシートクッションの側部に設けられており、シート前後方向及びシート上下方向に沿って延在されている。カバー部材は、当該サイドフィニッシャに対して係止された状態で垂下されており、当該カバー部材によってシートクッションの下方側は覆われるようになっている。
【0009】
ここで、カバー部材には、シート前後方向に沿って複数の係止部が形成されている。一方、サイドフィニッシャには、カバー部材に形成された複数の係止部がそれぞれ係止可能な複数の被係止部が設けられている。
【0010】
この被係止部には、支持部及びストッパが設けられている。支持部はカバー部材の自重を受けるように形成されており、ストッパは、カバー部材を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき、サイドフィニッシャに設けられた被係止部とカバー部材に形成された係止部との係止状態を維持するように形成されている。
【0011】
例えば、リフター機構が備えられた車両シートでは、シートクッションがシート上下方向に沿って移動可能とされている。シートクッションにおいて移動可能な範囲における下端位置(いわゆるロアモースト位置)側では、カバー部材の下端部が車体フロア側(センターコンソールも含む)に当接し、カバー部材の下端部を介してカバー部材にはシート上下方向の下方側から反力を受ける。
【0012】
本態様では、前述のように、カバー部材を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき、サイドフィニッシャに設けられた被係止部のストッパによって当該被係止部とカバー部材に形成された係止部との係止状態が維持されるため、カバー部材がサイドフィニッシャから外れるのを抑制することが可能となる。
【0013】
第2の態様に係るカバー部材の取付構造は、第1の態様に係るカバー部材の取付構造において、前記係止部は円形状の貫通孔であると共に、前記被係止部は前記貫通孔内へ挿入可能とされ、前記ストッパは、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で、当該貫通孔の周辺部に対して少なくとも3カ所で引っ掛かり可能とされている。
【0014】
第2の態様に係るカバー部材の取付構造では、カバー部材に形成された係止部は円形状の貫通孔であると共に、サイドフィニッシャに設けられた被係止部は当該貫通孔内へ挿入可能とされている。さらに、ストッパは、被係止部が貫通孔内へ挿入された状態で、当該貫通孔の周辺部に対して少なくとも3カ所で引っ掛かるようになっている。つまり、当該ストッパによってカバー部材は抜け止めされることになる。
【0015】
このように、本態様では、カバー部材を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき、被係止部に設けられたストッパが貫通孔の周辺部に引っ掛かることによって、当該被係止部が貫通孔内に挿入された状態が維持される。
【0016】
第3の態様に係るカバー部材の取付構造は、第1の態様又は第2の態様に係るカバー部材の取付構造において、前記支持部は、前記サイドフィニッシャの内面から突出し、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で当該貫通孔の内縁が当接して前記カバー部材を支持し、前記ストッパは、前記支持部における突出方向の先端から前記サイドフィニッシャの内面に対して対向するように張り出し、前記被係止部が前記貫通孔内へ挿入された状態で前記貫通孔の周辺部が当接して前記カバー部材の外れを抑制する張出部とされている。
【0017】
第3の態様に係るカバー部材の取付構造では、被係止部は、支持部及び張出部を含んで構成されている。支持部は、サイドフィニッシャの内面から突出して形成されており、被係止部が貫通孔内へ挿入された状態で当該貫通孔の内縁が当接しカバー部材を支持する。ストッパは、張出部とされており、支持部における突出方向の先端からサイドフィニッシャの内面に対して対向するように張り出して形成されている。被係止部が貫通孔内へ挿入された状態で当該貫通孔の周辺部に張出部が当接する。これにより、カバー部材は抜け止めされ、カバー部材の外れが抑制されることになる。
【0018】
第4の態様に係るカバー部材の取付構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係るカバー部材の取付構造において、前記張出部における張り出し方向の先端部には、前記サイドフィニッシャの内面と対向する対向面の反対側の面に面取り部又は角丸め部が形成されている。
【0019】
第4の態様に係るカバー部材の取付構造では、張出部における張り出し方向の先端部には、面取り部又は角丸め部が形成されている。比較例として、例えば、張出部の先端部に面取り部又は角丸め部が形成されていない場合、サイドフィニッシャの内面と対向する対向面の反対側の面には角部が形成されることになる。
【0020】
この場合、被係止部が貫通孔内へ挿入されるとき、支持部から角部までの寸法を基準として貫通孔は形成されることになる。一方、角部が面取り又は角丸めされると、支持部から面取り部又は角丸め部までの寸法を基準として貫通孔は形成されるため、当該貫通孔の外径寸法を短くすることができる。
【0021】
ここで、張出部におけるサイドフィニッシャの内面と対向する対向面の張出量は、角部の有無に関係はないため、貫通孔の外径寸法が短くなると、その分、張出部が貫通孔の周辺部に当接する当接量(引っ掛かり量)が増えることになる。したがって、本態様では、被係止部が貫通孔内へ挿入されるときは当該角部が存在しない分挿入し易く、また、被係止部が挿入された後は、張出部が貫通孔の周辺部に引っ掛かる引っ掛かり量が増えるため、カバー部材の外れをより抑制することが可能となる。
【0022】
第5の態様に係るカバー部材の取付構造は、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係るカバー部材の取付構造において、前記支持部は、同じ起点から互いに異なる3方向へそれぞれ延出された3つの支持片を含んで構成され、前記張出部は、前記3つの支持片とそれぞれ一体に形成された3つの張出片を含んで構成されている。
【0023】
第5の態様に係るカバー部材の取付構造では、支持部は3つの支持片を含んで構成されており、これら3つの支持片は、同じ起点から互いに異なる3方向へそれぞれ延出されている。また、張出部は3つの張出片を含んで構成されており、これら3つの張出片は、3つの支持片とそれぞれ一体に形成されている。なお、3つの支持片は、必ずしも等間隔(120度間隔)でそれぞれ異なる方向へ延出される必要はない。
【0024】
第6の態様に係るカバー部材の取付構造は、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係るカバー部材の取付構造において、前記被係止部は、シート側面視でT字状又はY字状を成している。
【0025】
第6の態様に係るカバー部材の取付構造では、被係止部は、シート側面視でT字状又はY字状を成しており、被係止部が貫通孔内へ挿入された状態で、貫通孔の上端部側の周辺部に張出部は当接することになる。比較例として、例えば、貫通孔の上下方向の中央部に張出部が当接した場合と比較する。円の弦の寸法は、貫通孔の上下方向の中央部では直径となるが、貫通孔の上端部では直径よりも短くなるため、その分、張出部が貫通孔の周辺部(カバー部材)と当接する長さは長くなる。したがって、本態様では、比較例よりもカバー部材の外れがより抑制されることになる。
【0026】
第7の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第6の態様の何れか1の態様に係るカバー部材の取付構造が適用された車両用シートであって、シートクッションをシート上下方向に沿って移動させるリフター機能を備え、前記被係止部は、少なくとも前記シートクッションのアッパモースト位置で前記係止部を介して前記カバー部材の自重を受け、少なくとも当該シートクッションのロアモースト位置で当該カバー部材を介してシート上下方向の下方側からの反力を受けるように形成されている。
【0027】
第7の態様に係る車両用シートでは、シートクッションをシート上下方向に沿って移動させるリフター機能を備えている。被係止部は、少なくともシートクッションのアッパモースト位置でカバー部材に形成された係止部を介して当該カバー部材の自重を受け、また、少なくともシートクッションのロアモースト位置でカバー部材を介してシート上下方向の下方側からの反力を受ける。
【0028】
つまり、シートクッションのアッパモースト位置では、被係止部の支持部を介してカバー部材は支持され、サイドフィニッシャに対してカバー部材は垂下されシートクッションの下方側が覆われる。一方、シートクッションのロアモースト位置では、被係止部はカバー部材を介してシート上下方向の下方側からの反力を受けるが、被係止部のストッパを介してカバー部材の係止部との係止状態が維持される。つまり、サイドフィニッシャに対するカバー部材の外れを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明のカバー部材の取付構造及び車両用シートによれば、サイドフィニッシャに係止されるカバー部材が下方側から上方側へ押された場合でもサイドフィニッシャに対するカバー部材の外れをさらに抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係るカバー部材の取付構造が適用された車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るカバー部材の取付構造を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るカバー部材の取付構造を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るカバー部材の取付構造の一部を構成する被係止部を示す斜視図である。
【
図5】
図2の要部を拡大した要部拡大分解斜視図である。
【
図6】
図2の要部を拡大した要部拡大分解斜視図である。
【
図9】本実施形態に係るカバー部材の取付構造の一部を構成する被係止部の効果を説明するための説明図である。
【
図10】本実施形態に係るカバー部材の取付構造の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係るカバー部材の取付構造が適用された車両用シートについて図面を用いて説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印INは、車両用シートの前方向、上方向及びシート幅方向内側をそれぞれ示している。以下、前後上下左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両用シートを基準とした方向を示すものとする。
【0032】
(車両用シートの構成)
まず、本実施の形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0033】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座する着座部を構成して着座乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を備えている。また、シートバック14の下端部には、ヒンジ部18が設けられており、当該ヒンジ部18を介してシートバック14が図示しないリクライニング機構によってシートクッション12に対してリクライニング(傾動)可能とされている。
【0034】
なお、車両用シート10のシート前後方向は、ここでは車両用シート10が搭載される車両の前後方向と同じ方向とされる。また、
図1に示されるシートクッション12の左側の側部は、車両用シート10が搭載される車両の室内における車両幅方向中央側を向くように配置されている。
【0035】
また、車両用シート10は、図示しないリフター機構を備えている。リフター機構は、シートクッション12の下側に設けられてシートクッション12の上下位置を調節するための機構であり、シートクッション12において移動可能な範囲における上端位置は、一般に、アッパモースト位置と称され、下端位置はロアモースト位置と称される。
【0036】
当該シートクッション12のシート幅方向の両側部には、サイドフィニッシャ20がそれぞれ設けられている。サイドフィニッシャ20は、例えば樹脂材料によって成形されており、シートクッション12のシート幅方向の両側部にそれぞれ対向するように配置されている。
【0037】
サイドフィニッシャ20は、シート前後方向に沿って長尺状に延在されており、シートクッション12の骨格部材とされるシートクッションフレーム(図示省略)に固定されている。サイドフィニッシャ20の前端部20Aには、下方側へ向かって垂下され上下方向を長手方向として略矩形状を成す垂下部22が形成されている。また、サイドフィニッシャ20の後端部20Bには、上方側へ向かって膨出すると共に先端が円弧状に形成された膨出部24が形成されている。当該膨出部24がシートバック14の下端部に設けられた図示しないヒンジ部のシート幅方向の外側に配置される。
【0038】
また、
図2に示されるように、サイドフィニッシャ20には後述する被係止部26、27が形成されており、例えば、カーペット材で形成されたカバー部材28に形成された貫通孔(係止部)30及び当該被係止部26、27を介して、サイドフィニッシャ20に対してカバー部材28が係止可能とされている(後述する)。なお、
図2には、サイドフィニッシャ20及びカバー部材28をシート幅方向の内側から見た斜視図が示されており、後述する
図3においても
図2と同様である。
【0039】
そして、
図3に示されるように、当該サイドフィニッシャ20に対してカバー部材28が係止された状態で、
図1に示されるように、当該カバー部材28は垂下され、カバー部材28によってシートクッション12の下方側が覆われるようになっている。
【0040】
また、カバー部材28は、サイドフィニッシャ20に対して垂下された状態でシート前後方向に沿って長尺状に延在されており、カバー部材28の前端部28Aからは、サイドフィニッシャ20の垂下部22に対応して、上下方向を長手方向とする略矩形状の垂下部32が垂下されている。なお、カバー部材の素材は、必要とされる剛性を有していればよいため、カーペット材に限るものではなく、レザー等、他の素材が用いられてもよい。
【0041】
(カバー部材の取付構造の構成)
ここで、本実施形態に係るカバー部材の取付構造の構成について説明する。
【0042】
具体的には、サイドフィニッシャ20の被係止部26、27及びカバー部材28の貫通孔30についてそれぞれ説明する。
【0043】
図2に示されるように、カバー部材28の上端部28Bには、円形の貫通孔30がカバー部材28の長手方向(シート前後方向)に沿って複数形成されている。一方、サイドフィニッシャ20の下端部20Cには、当該サイドフィニッシャ20の長手方向(シート前後方向)に沿って複数の被係止部26、27がカバー部材28に形成された貫通孔30に対応して形成されており、当該被係止部26、27は貫通孔30に対して(相対的に)挿入可能とされている。なお、被係止部27は、サイドフィニッシャ20の前部側に設けられ、被係止部26は、サイドフィニッシャ20の後部側に設けられている。
【0044】
図4に示されるように、被係止部26は、支持部34及び張出部(ストッパ)36を含んで構成されており、支持部34及び張出部36は、シート幅方向の内側(サイドフィニッシャ20の内面21側)から見たとき略T字状にそれぞれ形成されている。
【0045】
支持部34は、同じ起点(軸芯P)から互いに異なる方向へそれぞれ同じ長さを有して延出された3つの支持片38、40、42で構成されており、支持部34の外形寸法W1は、貫通孔30の内径寸法D(
図5参照)と略同じとなるように設定されている。張出部36は、支持部34よりも外形が大きくなるように形成されている。
【0046】
張出部36は、3つの張出片44、46、48で構成されており、3つの張出片44、46、48は、3つの支持片38、40、42の先端にそれぞれ連設され、各支持片38、40、42の先端から当該サイドフィニッシャ20の内面21に対して略平行となるように(対向するように)それぞれ張り出して(例えば、ここでは、各支持片38、40、42の長さの約2倍)形成されている。
【0047】
被係止部26が貫通孔30内へ挿入された状態で、貫通孔30の内縁30Aが支持部34に当接すると共に、当該貫通孔30の周辺部31に対して張出片44、46、48が当接(引っ掛かり)可能とされている。
【0048】
また、張出片44、46、48における張り出し方向の先端部には、サイドフィニッシャ20の内面21と対向する対向面44A、46A、48Aの反対側の面44B、46B、48Bにそれぞれ面取り部50が形成されている。
【0049】
なお、被係止部26と被係止部27の違いは、被係止部26の張出片46、48がシート前後方向に沿って形成されているのに対して、被係止部27の張出片46、48はシート上下方向に沿って形成されている点である。このため、被係止部27の要部(支持部及び張出部)については、被係止部26の要部(支持部34及び張出部36)と同じ符号を用いることにしてその説明は割愛する。
【0050】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施形態に係るカバー部材の取付構造が適用された車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0051】
本実施形態では、
図2、
図5、
図6に示されるように、カバー部材28には、シート前後方向に沿って複数の貫通孔30が形成されている。一方、サイドフィニッシャ20には、カバー部材28に形成された複数の貫通孔30がそれぞれ係止可能な複数の被係止部26、27が設けられている。
【0052】
被係止部26、27には、支持部34及び張出部36がそれぞれ設けられている。支持部34はカバー部材28の自重を受けるように形成されており、張出部36は、カバー部材28を介してシート上下方向の下方側から反力を受けたとき、サイドフィニッシャ20に設けられた被係止部26とカバー部材28に形成された貫通孔30との係止状態を維持するように形成されている。
【0053】
図1に示す車両用シート10は、リフター機構(図示省略)が備えられており、シートクッション12がシート上下方向に沿って移動可能とされている。図示はしないが、シートクッション12のロアモースト位置側では、
図3に示すカバー部材28の下端部28Cが車体フロア側(センターコンソールも含む)に当接し、カバー部材28の下端部28Cを介してカバー部材28にはシート上下方向の下方側から反力Nを受ける。
【0054】
本実施形態では、
図7、
図8に示されるように、カバー部材28を介してシート上下方向の下方側から反力Nを受けたとき、サイドフィニッシャ20に設けられた被係止部26、27の張出部36によって当該被係止部26、27とカバー部材28に形成された貫通孔30との係止状態が維持されるため、カバー部材28がサイドフィニッシャ20から外れるのを抑制することが可能となる。
【0055】
簡単に説明すると、
図5、
図6に示されるように、カバー部材28に形成された貫通孔30は円形の貫通孔30であると共に、サイドフィニッシャ20に設けられた被係止部26、27は当該貫通孔30内へ挿入可能とされている。
【0056】
ここで、被係止部26、27は、支持部34及び張出部36を含んでそれぞれ構成されている。支持部34は、サイドフィニッシャ20の内面21(
図4参照)から突出して形成されており、被係止部26、27が貫通孔30内へ挿入された状態で当該貫通孔30の内縁30Aが当接しカバー部材28を支持する。張出部36は、支持部34の先端からサイドフィニッシャ20の内面21(
図4参照)に対して対向するように張り出して形成されている。
【0057】
図7、
図8に示されるように、被係止部26、27が貫通孔30内へ挿入された状態で、貫通孔30の内縁30Aが支持部34に当接すると共に、当該貫通孔30の周辺部31に対して張出部36が当接可能とされている。
【0058】
つまり、張出部36は、被係止部26、27が貫通孔30内へ挿入された状態で、当該貫通孔30の周辺部31に対して張出片44、46、48が当接し引っ掛かるようになっており、当該張出片44、46、48によってカバー部材28は抜け止めされることになる。
【0059】
このように、本実施形態では、カバー部材28を介してシート上下方向の下方側から反力Nを受けたとき、被係止部26、27に設けられた張出部36が貫通孔30の周辺部31に引っ掛かることによって、当該被係止部26、27が貫通孔30内に挿入された状態が維持される。
【0060】
ここで、前述のように、被係止部26は張出片46、48がシート前後方向に沿って形成されているが、被係止部27は張出片46、48がシート上下方向に沿って形成されている。つまり、被係止部26と被係止部27は向きが90度異なる。これにより、被係止部26、27が貫通孔30内へ挿入される際、向きが同じ被係止部26のみが形成された場合と比較して、本実施形態では、貫通孔30内への挿入し難くなる。したがって、本実施形態では、その分、カバー部材28の外れをより抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、例えば、被係止部26は、
図7に示されるように、シート側面視でT字状を成しており、被係止部26が貫通孔30内へ挿入された状態で、貫通孔30の上端部側の周辺部31に張出部36が当接する。
【0062】
比較例として、例えば、図示はしないが、貫通孔30の上下方向の中央部に張出部36が当接した場合と比較する。円の弦の寸法は、貫通孔30の上下方向の中央部では直径となるが、貫通孔30の上端部では直径よりも短くなる。
【0063】
このため、本実施形態では、被係止部26がT字状を成し貫通孔30の上端部側の周辺部31に張出部36を当接させるように設定することで、貫通孔30の弦の寸法が短くなる分、張出部36が貫通孔30の周辺部31(カバー部材28)と当接する引っ掛かり量の長さは長くなる。したがって、本実施形態では、比較例よりもカバー部材28の外れをより抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、
図4、
図9に示されるように、張出部36における張り出し方向の先端部には、面取り部50が形成されている。比較例として二点鎖線で示すように、例えば、張出部36の先端部に面取り部50が形成されていない場合、張出部36の先端部には角部100が形成されている。
【0065】
張出部36の先端部に角部100が形成されている場合、被係止部26が貫通孔30内へ挿入されるとき、支持部34から角部100までの寸法L1を基準として貫通孔30は形成されることになる。一方、面取り部50が形成された場合、支持部34から当該面取り部50までの寸法L2(<L1)を基準として貫通孔30は形成されるため、当該貫通孔30の外径寸法を短くすることができる。
【0066】
ここで、
図4に示されるように、張出部36におけるサイドフィニッシャ20の内面21と対向する対向面44A、46A、48Aの張出量は、角部100(
図9参照)の有無に関係はないため、貫通孔30の内径寸法D(
図5参照)が短くなると、その分、張出部36が貫通孔30の周辺部31に引っ掛かる引っ掛かり量が増えることになる。
【0067】
したがって、本実施形態では、被係止部26が貫通孔30内へ挿入されるときは当該角部100が存在しない分挿入し易く、また、被係止部26が挿入された後は、
図7に示されるように、張出部36が貫通孔30の周辺部31に当接して引っ掛かる引っ掛かり量が増えるため、カバー部材28の外れがより抑制されることになる。なお、張出部36において、角部100が存在しなければよいため、面取り部50に限らず、図示はしないが、角丸めであってもよい。
【0068】
以上の実施形態では、
図4に示されるように、支持部34、張出部36は、サイドフィニッシャ20の内面21側から見たとき略T字状に形成され、同じ起点(軸芯P)から互いに異なる方向へそれぞれ同じ長さを有して延出された3つの支持片38、40、42、3つの張出片44、46、48でそれぞれ構成されているが、これに限るものではない。例えば、支持片38、40、42、張出片44、46、48の長さがそれぞれ異なっていてもよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、支持部34、張出部36において、サイドフィニッシャ20の内面21側から見たときの形状は略T字状を成しているが、張出部36を介して貫通孔30との係止状態を維持することができればよいため、これに限るものではない。
【0070】
例えば、図示はしないが、支持部34、張出部36の形状が略Y字状を成していてもよい。さらには、支持片38、40、42、張出片44、46、48は、それぞれ3つに限るものではなく、4つ以上で構成されてもよい。また、本実施形態では、係止部としての貫通孔30は円形を成しているが、多角形状を成していてもよい。
【0071】
さらに、支持部34と張出部36の形状が異なっていてもよい。例えば、
図10に示されるように、被係止部52として、支持部54が1本の略直線状の支持片56で構成され、張出部58が3つの円形状の張出片60、62、64で構成されてもよい。
【0072】
簡単に説明すると、例えば、支持片56は、シート前後方向に沿って形成された矩形状の本体部66と、本体部66の外側に設けられた上方側へ向かってそれぞれ屈曲する屈曲部68、70と、を含んで構成される。また、張出片62、64は、張出片60よりも小径とされており、張出片60は、側面視でその上端部が本体部66と重なるようにして連設されている。
【0073】
また、張出片62、64は、その下端部がそれぞれ屈曲部68、70と重なるようにして連設されており、当該張出片62、64は張出片60の上部における左右にそれぞれ配置され、張出片60、62、64が略同一平面上に形成されるように設定される。
【0074】
一方、図示しないカバー部材の貫通孔の内径寸法は、張出片60の外径寸法D2と略同じとなるように形成される。これにより、貫通孔は張出片62及び張出片64のうち何れか一方及び張出片60を挿入させた後、他方を挿入させる。このように2段階で挿入させるため、取付作業に対して手間が掛かることになるが、その分、カバー部材はより外れ難くなる。
【0075】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内にいて種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 車両用シート
12 シートクッション
20 サイドフィニッシャ
21 内面(サイドフィニッシャの内面)
26 被係止部
27 被係止部
28 カバー部材
30 貫通孔(係止部)
30A 内縁(貫通孔の内縁)
31 周辺部(貫通孔の周辺部)
34 支持部(被係止部)
36 張出部(ストッパ、被係止部)
38 支持片(支持部)
40 支持片(支持部)
42 支持片(支持部)
44 張出片(張出部)
44A 対向面
44B 面(対向面の反対側の面)
46 張出片(張出部)
48 張出片(張出部)
50 面取り部
52 被係止部
54 支持部(被係止部)
56 支持片(支持部)
58 張出部(ストッパ、被係止部)
60 張出片(張出部)
62 張出片(張出部)
64 張出片(張出部)
66 本体部(支持部)
68 屈曲部(支持部)
70 屈曲部(支持部)