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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064862
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】血液浄化システム及び中間システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240507BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61M1/16 117
A61M1/18 523
A61M1/18 525
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173786
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】角南 数磨
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB06
4C077DD07
4C077DD08
4C077EE01
4C077EE03
4C077HH03
4C077HH15
4C077JJ03
4C077JJ12
4C077LL05
(57)【要約】
【課題】ECMOシステムに血液浄化システムを接続する場合に、ECMOシステムに問題が発生後、ECMOシステムの復旧中に血液浄化システムの循環を維持すること。
【解決手段】ECMO血液ポンプ120及び人工肺130を有するECMOシステム100に接続される血液浄化システム200は、ECMOシステム100の血液の流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、血液浄化システム200を流通する血液の濃度を所定の濃度に維持させる除水制御部281、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECMO血液ポンプ及び該ECMO血液ポンプよりも下流側に配置された人工肺を有する体外式膜型人工肺システムと接続される血液浄化システムであって、
上流端が前記体外式膜型人工肺システムに接続される脱血ラインと、
前記脱血ラインに設けられ前記脱血ラインの流量を調整する流量調整部と、
前記脱血ラインの下流端に接続される血液浄化器と、
上流端が前記血液浄化器に接続され下流端が前記体外式膜型人工肺システムに接続される返血ラインと、
前記体外式膜型人工肺システムの流量を測定する流量計と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、該血液浄化システムを流通する液体の濃度を所定の濃度に維持させる除水制御部、を備える血液浄化システム。
【請求項2】
前記体外式膜型人工肺システムと、前記脱血ライン又は前記返血ラインとの接続部の圧力を測定する圧力計と、を更に備え、
前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲内にある場合に、前記流量調整部の流量を所定の流量に低下させる循環制御部を更に備える請求項1に記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記脱血ラインにおける前記血液浄化ポンプの上流側と前記返血ラインとを接続するバイパスラインと、
前記脱血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第1流路切替部と、
前記返血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第2流路切替部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合に、前記第2流路切替部を切り替えて前記返血ラインを流通する液体の流路を前記バイパスラインに切り替え、前記第1流路切替部を切り替えて前記体外式膜型人工肺システムから前記脱血ラインへの液体の流入を停止させ前記バイパスラインを流通する液体を前記脱血ラインに流入させる切替制御部を備える請求項2に記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記返血ラインに設けられる返血ポンプを更に備え、
前記脱血ラインの上流端は、前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続され、
前記返血ラインの下流端は、前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続される請求項1又は3に記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記返血ラインにおける前記返血ポンプよりも上流側に設けられ、所定の量の液体を貯留可能な圧力緩衝部と、
前記圧力緩衝部の圧力を測定する緩衝部圧力計と、を更に備え、
前記制御部は、前記流量調整部及び前記返血ポンプの流量を調整して前記緩衝部圧力計の測定値が所定の範囲内となるように制御する流量制御部を更に備える請求項4に記載の血液浄化システム。
【請求項6】
ECMO血液ポンプ及び該ECMO血液ポンプよりも下流側に配置された人工肺を有する体外式膜型人工肺システムと、
血液浄化ポンプ、該血液浄化ポンプよりも下流側に配置された血液浄化器、該血液浄化器から濾過液を排液する排液ライン及び該排液ラインに設けられる排液ポンプを有する血液浄化システムと、の接続箇所に設けられる中間システムであって、
上流端が前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続され、下流端が前記血液浄化システムの上流端に接続される中間脱血ラインと、
前記中間脱血ラインに設けられ、該中間脱血ラインの流量を調整する流量調整部と、
上流端が前記血液浄化システムの下流端に接続され、下流端が前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続される中間返血ラインと、
前記中間返血ラインに設けられる返血ポンプと、
前記体外式膜型人工肺システムの流量を測定する流量計と、
報知部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、前記体外式膜型人工肺システムに問題が発生したと判定し、該問題の発生を報知部に報知させる中間システム。
【請求項7】
前記中間脱血ラインにおける前記流量調整部の下流側と前記中間返血ラインとを接続するバイパスラインと、
前記中間脱血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第1流路切替部と、
前記中間返血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第2流路切替部と、
前記体外式膜型人工肺システムと、前記中間脱血ライン又は前記中間返血ラインとの接続部の圧力を測定する圧力計と、
を更に備え、
前記制御部は、
前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合に、前記第2流路切替部を切り替えて前記中間返血ラインを流通する液体の流路を前記バイパスラインに切り替え、前記第1流路切替部を切り替えて前記体外式膜型人工肺システムから前記中間脱血ラインへの液体の流入を停止させ前記バイパスラインを流通する液体を前記中間脱血ラインに流入させる切替制御部を備える請求項6に記載の中間システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外式膜型人工肺システムと接続される血液浄化システム、及び、体外式膜型人工肺システムと血液浄化システムとの接続箇所に設けられる中間システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集中治療領域において、心臓や肺の機能が弱った患者に対して体外式膜型人工肺(以下、ECMOとも称する)を用いた治療が行われる。このような患者の中には、腎障害の併発により血液浄化のための持続的腎代替療法(以下、CRRTとも称する)が必要となる場合がある。ECMOの施行中の患者は、ECMO回路内で抗凝固剤を投与されており、出血傾向にある。ここでCRRTのために別の血管から送脱血を行うと、更にCRRT回路内でも抗凝固剤を投与する必要がある場合もあり、出血傾向が高まるため好ましくない。また、中心静脈にはECMOの送脱血の他、全身管理のために複数のカテーテルが挿入されている場合が多く、新たにCRRTのバスキュラーアクセスを挿入することは困難である。そこで、CRRT回路を直接ECMO回路に接続する試みが臨床現場で行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010-528781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CRRTシステムをECMOシステムに接続した状態で、ECMOシステムに問題が発生して循環が不安定になると、CRRTシステムはECMOシステムの影響を受けて循環が停止してしまう。そのためCRRT回路内で血栓が生じやすくなる。ECMOシステムの復旧後にCRRTシステムの運転を再開すると、CRRT回路内に発生した血栓がECMO回路に送られるおそれがあり、また、血栓によりCRRT回路が循環できなくなってしまうおそれがある。
【0005】
従って、本発明は、ECMOシステムに血液浄化システムを接続する場合に、ECMOシステムに問題が発生後、ECMOシステムの復旧中に血液浄化システムの循環を維持可能な血液浄化システム及び中間システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ECMO血液ポンプ及び該ECMO血液ポンプよりも下流側に配置された人工肺を有する体外式膜型人工肺システムと接続される血液浄化システムであって、上流端が前記体外式膜型人工肺システムに接続される脱血ラインと、前記脱血ラインの下流端に接続される血液浄化器と、上流端が前記血液浄化器に接続され下流端が前記体外式膜型人工肺システムに接続される返血ラインと、前記体外式膜型人工肺システムの流量を測定する流量計と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、該血液浄化システムを流通する液体の濃度を所定の濃度に維持させる除水制御部、を備える血液浄化システムに関する。
【0007】
また、血液浄化システムは、前記脱血ラインに設けられ前記脱血ラインの流量を調整する流量調整部と、前記体外式膜型人工肺システムと、前記脱血ライン又は前記返血ラインとの接続部の圧力を測定する圧力計と、を更に備え、前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲内にある場合に、前記流量調整部の流量を所定の流量に低下させる循環制御部を更に備えることが好ましい。
【0008】
また、血液浄化システムは、前記脱血ラインにおける前記血液浄化ポンプの上流側と前記返血ラインとを接続するバイパスラインと、前記脱血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第1流路切替部と、前記返血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第2流路切替部と、を更に備え、前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合に、前記第2流路切替部を切り替えて前記返血ラインを流通する液体の流路を前記バイパスラインに切り替え、前記第1流路切替部を切り替えて前記体外式膜型人工肺システムから前記脱血ラインへの液体の流入を停止させ前記バイパスラインを流通する液体を前記脱血ラインに流入させる切替制御部を備えることが好ましい。
【0009】
また、血液浄化システムは、前記返血ラインに設けられる返血ポンプを更に備え、前記脱血ラインの上流端は、前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続され、前記返血ラインの下流端は、前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続されることが好ましい。
【0010】
また、血液浄化システムは、前記返血ラインにおける前記返血ポンプよりも上流側に設けられ、所定の量の液体を貯留可能な圧力緩衝部と、前記圧力緩衝部の圧力を測定する緩衝部圧力計と、を更に備え、前記制御部は、前記流量調整部及び前記返血ポンプの流量を調整して前記緩衝部圧力計の測定値が所定の範囲内となるように制御する流量制御部を更に備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、ECMO血液ポンプ及び該ECMO血液ポンプよりも下流側に配置された人工肺を有する体外式膜型人工肺システムと、血液浄化ポンプ、該血液浄化ポンプよりも下流側に配置された血液浄化器、該血液浄化器から濾過液を排液する排液ライン及び該排液ラインに設けられる排液ポンプを有する血液浄化システムと、の接続箇所に設けられる中間システムであって、上流端が前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続され、下流端が前記血液浄化システムの上流端に接続される中間脱血ラインと、前記中間脱血ラインに設けられ、該中間脱血ラインの流量を調整する流量調整部と、上流端が前記血液浄化システムの下流端に接続され、下流端が前記体外式膜型人工肺システムにおける前記ECMO血液ポンプよりも下流側に接続される中間返血ラインと、前記中間返血ラインに設けられる返血ポンプと、前記体外式膜型人工肺システムの流量を測定する流量計と、報知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、前記体外式膜型人工肺システムに問題が発生したと判定し、該問題の発生を報知部に報知させる中間システムに関する。
【0012】
また、中間システムは、前記中間脱血ラインにおける前記流量調整部の下流側と前記返血ラインとを接続するバイパスラインと、前記中間脱血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第1流路切替部と、前記中間返血ラインと前記バイパスラインとの接続部近傍に配置される第2流路切替部と、前記体外式膜型人工肺システムと、前記中間脱血ライン又は前記中間返血ラインとの接続部の圧力を測定する圧力計と、を更に備え、前記制御部は、前記流量計で測定される流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、前記圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合に、前記第2流路切替部を切り替えて前記中間返血ラインを流通する液体の流路を前記バイパスラインに切り替え、前記第1流路切替部を切り替えて前記体外式膜型人工肺システムから前記中間脱血ラインへの液体の流入を停止させ前記バイパスラインを流通する液体を前記脱血ラインに流入させる切替制御部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、血液浄化システムが接続されたECMOシステムに問題が発生した場合に、循環制御部及び除水流量制御部により血液浄化システムの循環を維持可能な血液浄化システム及び中間システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るECMOシステム及びCRRTシステムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るCRRTシステムのブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るECMOシステムにおいて軽度な問題が発生した場合のCRRTシステムの運転状態を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るECMOシステムにおいて高度な問題が発生した場合のCRRTシステムの運転状態を説明する図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るECMOシステム及びCRRTシステムの概略構成を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るCRRTシステムのブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るECMOシステムにおいて軽度な問題が発生した場合のCRRTシステムの運転状態を説明する図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るECMOシステムにおいて高度な問題が発生した場合のCRRTシステムの運転状態を説明する図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るECMOシステム、CRRTシステム及び中間システムの概略構成を示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るCRRTシステム及び中間システムのブロック図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るECMOシステムにおいて軽度な問題が発生した場合のCRRTシステム及び中間システムの運転状態を説明する図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るECMOシステムにおいて高度な問題が発生した場合のCRRTシステム及び中間システムの運転状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の血液浄化システムとしての持続的腎代替療法システム及び中間システムの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の中間システムは、体外式膜型人工肺(ECMO)システムと持続的腎代替療法(CRRT)システムとの接続箇所に設けられる。本明細書で説明するECMOシステムは、心臓や肺の機能が弱った患者に適応され、ポンプを用いて患者から取り出した血液を人工肺に送り、人工肺で酸素添加された血液を患者に戻して、患者の心機能や肺機能の補助を行うものである。CRRTシステムは、急性の腎機能障害を有する患者や敗血症や体液過剰の患者等に適応され、急激に血液の濃度や循環量、血圧を変化させないように、時間をかけて少しずつ血液中の老廃物・水分の除去を行うものである。CRRTには、持続的血液透析(CHD)、持続的血液濾過(CHF)及び持続的血液透析濾過(CHDF)の種類があるが、以下に説明する各実施形態では、一例として持続的血液透析濾過(CHDF)を用いた場合について説明する。
尚、本実施形態では、本発明の血液浄化システムを、CRRTシステムに適用しているが、これに限らない。例えば、血液浄化システムを、血液吸着療法(DHP:Direct Hemo Perfusion)システムに適用してもよい。血液吸着療法は、血液浄化器としての吸着式血液浄化用浄化器により炎症性物質を吸着して除去する治療法である。また、血液浄化システムを、血漿吸着療法システムに適用してもよい。
【0016】

<第1実施形態>
図1図4を参照して第1実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るECMOシステム100及びCRRTシステム200の概略構成を示す図である。図2にCRRTシステム200のブロック図を示す。
【0017】
(ECMOシステム)
図1に示すようにECMOシステム100は、ECMO血液回路110と、ECMO血液ポンプ120と、人工肺130と、制御部140と、を備える。
ECMO血液回路110は、患者の血液を体外循環させるための回路であり、脱血ライン110aと、接続ライン110bと、返血ライン110cと、を含んで構成される。脱血ライン110aは、一端が脱血カニューレ111に接続され、他端がECMO血液ポンプ120に接続される。脱血ライン110aは、第1分岐部110a1及び第2分岐部110a2を有する。これら第1分岐部110a1及び第2分岐部110a2には、それぞれ、三方活栓等のコネクタが取り付けられる。
接続ライン110bは、一端がECMO血液ポンプ120に接続され、他端が人工肺130に接続される。
また、本実施形態では、脱血ライン110aには、第1分岐部110a1及び第2分岐部110a2をバイパスするバイパスライン113が設けられる。バイパスライン113と脱血ライン110aとの接続部は、例えば、Y字コネクタ(不図示)により接続される。バイパスライン113を設けることにより、CRRTシステム200に何らかの不具合が生じて運転を停止する場合に、脱血カニューレ111からECMO血液ポンプ120までの流路をバイパスライン113に切り替えることで、より安全にECMOシステムを運転することができる。
返血ライン110cは、一端が人工肺130に接続され、他端が送血カニューレ112に接続される。返血ライン110cには、ECMOシステム100の稼働状況を監視するために流量計114が取り付けられる。本実施形態では、流量計114として超音波流量計が用いられる。流量計114としては、光学式流量計等を用いてもよい。
【0018】
ECMO血液ポンプ120は、脱血カニューレ111及び脱血ライン110aを介して患者の静脈から血液を取り出す。取り出された血液は、接続ライン110bを通って人工肺130に送られた後、返血ライン110cを通って、送血カニューレ112を介して患者に戻される。ECMO血液ポンプ120としては公知の遠心ポンプ又はローラーポンプが用いられる。
【0019】
人工肺130は、多数の微細孔を有する中空糸を束ねた中空糸膜(不図示)を備えており、中空糸の内側に酸素を流して外側に血液を流すことで、ECMO血液ポンプ120から送血される血液に酸素を添加し、二酸化炭素を除去する。また、人工肺130は送血される血液に存在する気泡を捕捉してECMO回路下流へ流れることを防ぐ。人工肺130としては、公知の膜型人工肺が用いられる。また、人工肺130は熱交換機能を有していてもよい。
【0020】
制御部140は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、ECMOシステム100が備える各ポンプを駆動して、ECMOシステム100の動作を制御する。
【0021】
(CRRTシステム)
図1及び図2に示すようにCRRTシステム200は、CRRT血液回路210と、血液浄化ポンプ220と、血液浄化器230と、透析液供給ライン240と、透析液排液ライン250と、補充液ライン260と、バイパスライン270と、制御部280と、を備える。
【0022】
CRRT血液回路210は、取り出した血液を循環させるための回路であり、脱血ライン210aと、返血ライン210bと、を含んで構成される。
脱血ライン210aは、一端(上流端)がECMOシステム100の脱血ライン110aに設けられた第1分岐部110a1に接続され、他端(下流端)が血液浄化器230に接続される。脱血ライン210aの上流端は、ECMO血液回路110のいずれに接続してもよいが、本実施形態では一例としてECMO血液ポンプ120の上流側に接続するものとした。
脱血ライン210aには、流量調整部としての血液浄化ポンプ220が設けられ、血液浄化ポンプ220の上流側には圧力計P1が取り付けられ、下流側には圧力計P2が取り付けられる。圧力計P1は、脱血ライン210aとECMO血液回路110との接続部の圧力を反映するので、ECMO血液回路110の回路内圧の監視に用いることができる。また、脱血ライン210aには、血液浄化器230に送られる流量が正常かどうかを監視するために流量計211が取り付けられる。本実施形態では、流量計211として超音波流量計が用いられる。流量計211としては、他に光学式流量計等を用いてもよい。また、脱血ライン210aには、血液浄化ポンプ220と圧力計P1との間に、ECMO血液回路からの血液の流入を遮断するためのクランプ212が取り付けられる。
【0023】
返血ライン210bは、一端(上流端)が血液浄化器230と接続され、他端(下流端)がECMOシステム100の脱血ライン110aに設けられた第2分岐部110a2に接続される。ここで、CRRTシステム200を高陽圧の影響を受けないように運転するためには、返血ライン210bは、ECMO血液回路110のうち陰圧部であるECMO血液ポンプ120の上流側に接続する必要がある。
返血ライン210bには、上流側から順に点滴筒213、液切れセンサ214及びクランプ215が取り付けられ、この点滴筒213には圧力計P3が取り付けられる。点滴筒213は、血液に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、一定量の血液を貯留する。圧力計P3は、返血ライン210bの回路内圧を測定する。圧力計P3は、返血ライン210bとECMO血液回路110との接続部の圧力を反映するので、ECMO血液回路110の回路内圧の監視に用いることができる。
尚、本実施形態では一例として点滴筒213に圧力計P3を取り付ける場合を示したが、これに限らない。例えば、返血ライン210bにおいて点滴筒213よりも下流側に圧力計P3を取り付けて回路内圧を測定してもよい。
【0024】
血液浄化ポンプ220は、ECMOシステム100から血液を取り出し、脱血ライン210aを流通する血液の流量を調整する。取り出された血液は、脱血ライン210aを通って血液浄化器230に送られた後、返血ライン210bを通ってECMOシステム100に戻される。
【0025】
血液浄化器230は、筒状に形成された容器本体の内部に収容された透析膜(不図示)を備える。容器本体の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画されており(いずれも不図示)、透析膜を介して血液側流路から透析液側流路へ水分や老廃物が移動することにより血液が浄化される。
【0026】
透析液供給ライン240は、透析液ポンプ241を備えており、血液浄化器230に透析液を供給するためのラインであり、透析液供給源Dと血液浄化器230の透析液側流路とを接続する。透析液ポンプ241としては公知のローラーポンプ又はフィンガーポンプが用いられる。
【0027】
透析液排液ライン250は、排液ポンプ251を備えており、血液浄化器230から透析液を排液する。透析液排液ライン250は、血液浄化器230の透析液側流路と排液貯留部Fとを接続する。排液ポンプ251としては公知のローラーポンプ又はフィンガーポンプが用いられる。また、透析液排液ライン250には、圧力計P4が取り付けられる。
【0028】
補充液ライン260は、補充液ポンプ261を備えており、補充液供給源Rから供給される補充液を返血ライン210bに設けられた点滴筒213を介して返血ライン210bに供給する。補充液としては、透析液や生理食塩水が用いられる。尚、補充液は、脱血ライン210aにおける血液浄化ポンプ220と血液浄化器230との間において供給してもよい。
【0029】
バイパスライン270は、脱血ライン210aと返血ライン210bとを接続するラインであり、CRRTシステム200をECMOシステム100から切り離すために用いられる。バイパスライン270は、脱血ライン210aにおける血液浄化ポンプ220の上流側と接続され、返血ライン210bの下流側と接続される。バイパスライン270は、脱血ライン210aとの接続部近傍にバイパスクランプ270aを有し、返血ライン210bとの接続部近傍にバイパスクランプ270bを有する。バイパスクランプ270aは、脱血ライン210aに設けられたクランプ212と合わせて第1流路切替部271を構成する。また、バイパスクランプ270bは、返血ライン210bに設けられたクランプ215と合わせて第2流路切替部272を構成する。
尚、本実施形態では、第1流路切替部271及び第2流路切替部272をそれぞれ2つのクランプで構成したが、三方活栓等で構成してもよい。
【0030】
制御部280は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、CRRTシステム200が備える各ポンプを駆動して、血液浄化器230に対する血流量、透析液量、排液量を制御して持続的血液透析濾過(CHDF)を実行する。尚、制御部280は、透析液供給ライン240に配置された透析液ポンプ241、透析液排液ライン250に配置された排液ポンプ251、及び補充液ライン260に配置された補充液ポンプ261のそれぞれの流量を監視してCRRTシステム200を流通する液体(透析液及び補充液)を計量する計量ユニット(図示せず)により計量される流量に基づいて各ポンプの駆動を制御してもよい。
また、制御部280は、液切れセンサ214で液切れが検出された場合に、クランプ215を作動させて返血ライン210bを閉塞し、ECMOシステム100に気泡が混入するのを防ぐ。
【0031】
更に、制御部280は、ECMOシステム100の運転状況を監視するため、流量計114の測定値を取得し、圧力計P1又は圧力計P3の測定値に基づいてECMOシステム100の回路内圧を監視する。制御部280は、流量計114の測定値及び圧力計P1又は圧力計P3の測定値に基づいて、ECMOシステム100の循環が不安定になる等の問題の発生を把握する。制御部280は、除水制御部281、循環制御部282及び切替制御部283を含んで構成され、ECMOシステム100で発生する問題の程度に応じて、CRRT血液回路210内で血液の循環を維持するように制御する。
【0032】
制御部280は、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、ECMOシステム100になんらかの問題が発生したと判定する。そして、制御部280によりなんらかの問題が発生したと判定された場合、除水制御部281は、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度が所定の濃度に維持されるように制御する。具体的には、除水制御部281は、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度を一定に保つように排液ポンプ251の流量を制御する。
例えば、除水制御部281は、排液ポンプ251の流量を補充液ポンプ261の流量と同等にして循環血液の濃度を一定に保つ。また、除水制御部281は、補充液ポンプ261及び排液ポンプ251を停止させて血液浄化器230による血液浄化を停止し、循環血液の濃度を一定に保つ。これにより、CRRT血液回路210における血液の濃縮を防ぎ、血栓の発生を抑制できる。
【0033】
制御部280は、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量の変化率が所定の閾値を超える一方、圧力計で測定される圧力が所定の範囲内にある場合、発生した問題が軽度であると判定する。例えば、脱血カニューレ111の血液導入口が一部閉塞する等により脱血量が若干減少するといった問題が生じた一方、ECMO血液ポンプ120や人工肺130に不具合がない場合には、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量は低下するが、圧力計で測定される圧力には大きな変化は生じない(所定の範囲内を維持する)。このような場合、制御部280は、発生した問題が軽度であると判定する。
【0034】
制御部280により問題が軽度であると判定された場合、循環制御部282は、血液浄化ポンプ220の流量を所定の流量に低下させる。この場合、返血ライン210bを流通する液体の少なくとも一部は、ECMOシステム100の一部(脱血ライン110aの一部)を介して脱血ライン210aに再流入される。つまり、CRRT血液回路210において血液(液体)の少なくとも一部が再循環される。
ここで、所定の流量とは、CRRT血液回路210内において血栓の発生を抑制できる程度の流量である。これにより、ECMOシステム100とCRRTシステム200との接続部においても血液の流通が停止されないため、ECMOシステム100の問題が解消された場合に、CRRTシステム200との連携を速やかに再開させられる。
【0035】
制御部280は、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合、ECMOシステム100に高度な問題が発生したと判定する。例えば、ECMO血液ポンプ120の能力が大きく低下した場合には、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量は大きく低下し(流量の変化率が所定の閾値を超えて低下し)、また圧力計で測定される圧力も大きく低下する(所定の範囲内を超えて低下する)。また、人工肺130に詰まりが生じた場合には、人工肺130の下流側に配置された流量計114により測定されるECMOシステム100の流量は大きく低下し(流量の変化率が所定の閾値を超えて低下し)、また圧力計で測定される圧力は大きく上昇する(所定の範囲内を超えて上昇する)。このような場合、制御部280は、発生した問題が高度であると判定する。
【0036】
制御部280により問題が高度であると判定された場合、切替制御部283は、ECMOシステム100への流路を閉塞してバイパスライン270に切り替えてCRRT血液回路210内で血液(液体)の全部を再循環させる制御を行う。具体的には、切替制御部283は、返血ライン210bのクランプ215を閉塞してバイパスライン270のバイパスクランプ270bを開放することにより、第2流路切替部272を切り替えて返血ライン210bを流通する血液(液体)の流路をバイパスライン270に切り替える。また、切替制御部283は、脱血ライン210aのクランプ212を閉塞してバイパスライン270のバイパスクランプ270aを開放することにより、第1流路切替部271を切り替えてECMOシステム100から脱血ライン210aへの血液(液体)の流入を停止させ、バイパスライン270を流通する血液(液体)を脱血ライン210aに流入させる。
【0037】
上述のECMOシステム100及びCRRTシステム200における各種ラインは、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0038】
以上のECMOシステム100及びCRRTシステム200によれば、対象者(患者)の静脈から取り出された血液は、ECMOシステム100の脱血ライン110aに流れた血液の一部がCRRTシステム200の脱血ライン210aに所定の流量(血液浄化ポンプ220の流量)で流入し、他はECMO血液ポンプ120へ送られる。
CRRTシステム200の脱血ライン210aに送られた血液は、所定の流量で血液浄化器230に導入される。血液浄化器230で浄化された血液は、除水量に応じて補充液ライン260から補充液を補充された後、返血ライン210bに送られる。
【0039】
返血ライン210bからECMOシステム100の脱血ライン110aに返血された血液は、脱血ライン110aを流れる血液と共にECMO血液ポンプ120に送られたのち、人工肺130に送られ、酸素添加及び二酸化炭素の除去が行われる。人工肺130から送り出された血液は返血ライン110c及び送血カニューレ112を介して患者の動脈又は静脈に戻される。
【0040】
ECMOシステム100になんらかの問題が発生した場合、除水制御部281により、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度が一定に保たれるように排液ポンプ251の流量が制御される。これにより、CRRT血液回路210における血液の濃縮が防がれ、血栓の発生が抑制される。
【0041】
ECMOシステム100に発生した問題が軽度であった場合、図3に示すように、脱血ライン210a、返血ライン210b及びECMOシステム100の一部を介して血液の少なくとも一部が再循環される。このとき、排液ポンプ251の流量が制御されて循環する血液の濃度は一定に保たれる。よって、ECMOシステム100の復旧を待機している間、CRRTシステム200で再循環が行われていても、CRRT血液回路210内での血液の濃縮を防げるので、血栓の発生を抑制できる。また、ECMOシステム100とCRRTシステム200との接続部においても血液の流通が停止されないため、ECMOシステム100の問題が解消された場合に、CRRTシステム200との連携を速やかに再開させられる。
【0042】
また、ECMOシステム100に高度な問題が発生した場合には、図4に示すように、脱血ライン210a、返血ライン210b及びバイパスライン270を介して血液は全部が再循環する。このとき、排液ポンプ251の流量が制御されて循環する血液の濃度は一定に保たれる。よって、CRRT血液回路210内での血栓の発生は抑制される。また、ECMOシステム100の復旧を待機している間、CRRTシステム200はECMOシステム100から切り離されて再循環が行われるので、ECMOシステム100の復旧作業が容易となる。
【0043】
<第2実施形態>
図5図8を参照して第2実施形態について詳細に説明する。
第2実施形態にかかるECMOシステム100Aは、第1分岐部、第2分岐部及びバイパスラインを脱血ライン110aにではなく接続ライン110bに有する点において第1実施形態と異なり、血液浄化システム200Aは、流量調整部として、血液浄化ポンプの代わりに流量調整クランプを備え、返血ラインに返血ポンプを備える点において第1実施形態と異なる。よって、第1実施形態で説明した構成と同様のものには同じ符号を付して説明を省略し、異なる点について説明する。
【0044】
図5は、本発明の第2実施形態に係るECMOシステム100A及びCRRTシステム200Aの概略構成を示す図である。図6にCRRTシステム200Aのブロック図を示す。
【0045】
(ECMOシステム)
図5に示すようにECMOシステム100Aは、ECMO血液回路110Aと、ECMO血液ポンプ120と、人工肺130と、制御部140と、を備える。
ECMO血液回路110Aは、患者の血液を体外循環させるための回路であり、脱血ライン110aと、接続ライン110bと、返血ライン110cと、を含んで構成される。脱血ライン110aは、一端が脱血カニューレ111に接続され、他端がECMO血液ポンプ120に接続される。
接続ライン110bは、一端がECMO血液ポンプ120に接続され、他端が人工肺130に接続される。接続ライン110bは、第1分岐部110b1及び第2分岐部110b2を有する。これら第1分岐部110b1及び第2分岐部110b2には、それぞれ、三方活栓等のコネクタが取り付けられる。
また、本実施形態では、接続ライン110bには、第1分岐部110b1及び第2分岐部110b2をバイパスするバイパスライン113が設けられる。
【0046】
(CRRTシステム)
図5及び図6に示すようにCRRTシステム200Aは、CRRT血液回路210と、流量調整部としての流量調整クランプ220Aと、返血ポンプ216と、血液浄化器230と、透析液供給ライン240と、透析液排液ライン250と、補充液ライン260と、バイパスライン270と、制御部280Aと、を備える。
【0047】
CRRT血液回路210は、取り出した血液を循環させるための回路であり、脱血ライン210aと、返血ライン210bと、を含んで構成される。脱血ライン210aは、一端(上流端)がECMOシステム100Aの接続ライン110bに設けられた第1分岐部110b1に接続され、他端(下流端)が血液浄化器230に接続される。脱血ライン210aには、流量調整クランプ220Aが設けられ、流量調整クランプ220Aの上流側には圧力計P1が取り付けられ、下流側には圧力計P2が取り付けられる。また、脱血ライン210aには、血液浄化器230に送られる流量が正常かどうかを監視するために流量計211が取り付けられる。
【0048】
返血ライン210bは、一端(上流端)が血液浄化器230と接続され、他端(下流端)がECMOシステム100の接続ライン110bに設けられた第2分岐部110b2に接続される。
返血ライン210bには、上流側から順に点滴筒213、液切れセンサ214、返血ポンプ216、クランプ215及び圧力計P5が取り付けられ、点滴筒213には圧力計P3が取り付けられる。返血ポンプ216としては公知のローラーポンプが用いられる。点滴筒213は、血液に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、一定量の血液を貯留する。また、点滴筒213は、流量調整クランプ220Aと返血ポンプ216との流量差を緩衝する圧力緩衝部として用いられる。これにより、返血ライン210bをECMOシステム100Aの陽圧部(ECMO血液ポンプ120よりも下流側)に接続しても、CRRTシステム200Aを低陽圧で運転することができる。また、圧力計P3は、圧力緩衝部の圧力を測定するための緩衝部圧力計として用いられる。圧力計P5は、返血ライン210bとECMO血液回路110Aとの接続部の圧力を反映するので、ECMO血液回路110Aの回路内圧の監視に用いることができる。
【0049】
流量調整クランプ220Aは、開度が調整可能な調整クランプであり、脱血ライン210aをECMOシステム100Aの陽圧部(ECMO血液ポンプ120よりも下流側)に接続することにより、所定の流量で血液を取り出すことができる。取り出された血液は、脱血ライン210aを通って血液浄化器230に送られた後、返血ライン210bを通ってECMOシステム100Aに戻される。本実施形態では、流量調整部220Aとして流量調整クランプを用いる例を示したが、公知のローラーポンプを用いてもよい。流量調整部220Aとしてローラーポンプを用いる場合には、脱血ライン210aをECMOシステム100Aの陽圧部又は陰圧部(ECMO血液ポンプ120よりも上流側)のいずれに接続しても所定の流量で血液を取り出すことができる。
【0050】
バイパスライン270は、脱血ライン210aと返血ライン210bとを接続するラインであり、CRRTシステム200AをECMOシステム100Aから切り離すために用いられる。バイパスライン270は、脱血ライン210aにおける流量調整クランプ220Aの下流側と接続され、返血ライン210bにおける返血ポンプ216の下流側と接続される。バイパスライン270は、脱血ライン210aとの接続部近傍にバイパスクランプ270aを有し、返血ライン210bとの接続部近傍にバイパスクランプ270bを有する。バイパスクランプ270aは、脱血ライン210aに設けられた流量調整クランプ220Aと合わせて第1流路切替部271Aを構成する。また、バイパスクランプ270bは、返血ライン210bに設けられたクランプ215と合わせて第2流路切替部272を構成する。
尚、本実施形態では、第1流路切替部271Aを流量調整部220A及びバイパスクランプ270aで構成し、第2流路切替部272を2つのクランプで構成したが、それぞれを三方活栓等で構成してもよい。
【0051】
制御部280Aは、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、CRRTシステム200Aが備える各ポンプを駆動して、血液浄化器230に対する血流量、透析液量、排液量を制御して持続的血液透析濾過(CHDF)を実行する。尚、制御部280Aは、透析液供給ライン240に配置された透析液ポンプ241、透析液排液ライン250に配置された排液ポンプ251、及び補充液ライン260に配置された補充液ポンプ261のそれぞれの流量を監視してCRRTシステム200Aを流通する液体(透析液及び補充液)を計量する計量ユニット(図示せず)により計量されたる流量に基づいて各ポンプの駆動を制御してもよい。
また、制御部280Aは、液切れセンサ214で液切れが検出された場合に、クランプ215を作動させて返血ライン210bを閉塞し、ECMOシステム100Aに気泡が混入するのを防ぐ。
【0052】
更に、制御部280Aは、ECMOシステム100Aの運転状況を監視するため、流量計114の測定値を取得し、圧力計P1又は圧力計P5の測定値に基づいてECMOシステム100Aの回路内圧を監視する。制御部280Aは、流量計114の測定値及び圧力計P1又は圧力計P5の測定値に基づいて、ECMOシステム100Aの循環が不安定になる等の問題の発生を把握する。制御部280Aは、除水制御部281、循環制御部282A及び切替制御部283Aを含んで構成され、ECMOシステム100Aで発生する問題の程度に応じて、CRRT血液回路210内で血液の循環を維持するように制御する。また、制御部280Aは、流量調整クランプ220A及び返血ポンプ216の流量を調整して、緩衝部圧力計P3で測定される測定値が所定の範囲内となるように制御する流量制御部284を更に含んで構成される。
【0053】
制御部280Aは、流量計114により測定されるECMOシステム100Aの流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、ECMOシステム100Aになんらかの問題が発生したと判定する。そして、制御部280Aによりなんらかの問題が発生したと判定された場合、除水制御部281は、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度が所定の濃度に維持されるようにCRRTシステム200Aを制御する。具体的には、除水制御部281は、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度を一定に保つように排液ポンプ251の流量を制御する。
【0054】
制御部280Aは、流量計114により測定されるECMOシステム100Aの流量の変化率が所定の閾値を超える一方、圧力計で測定される圧力が所定の範囲内にある場合、発生した問題が軽度であると判定する。
【0055】
制御部280Aにより問題が軽度であると判定された場合、循環制御部282Aは、流量調整クランプ220Aの開度及び返血ポンプ216の出力を調整してCRRT血液回路210を流通する血液の流量を所定の流量に低下させる。この場合、返血ライン210bを流通する液体の少なくとも一部は、ECMOシステム100Aの一部(脱血ライン110aの一部)を介して脱血ライン210aに再流入される。つまり、CRRT血液回路210において血液(液体)の少なくとも一部が再循環される。
【0056】
制御部280Aは、流量計114により測定されるECMOシステム100Aの流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合、ECMOシステム100Aに高度な問題が発生したと判定する。
【0057】
制御部280Aにより問題が高度であると判定された場合、切替制御部283Aは、ECMOシステム100への流路を閉塞してバイパスライン270に切り替えてCRRT血液回路210内で血液(液体)の全部を再循環させる制御を行う。具体的には、切替制御部283は、返血ライン210bのクランプ215を閉塞してバイパスライン270のバイパスクランプ270bを開放することにより、第2流路切替部272を切り替えて返血ライン210bを流通する血液(液体)の流路をバイパスライン270に切り替える。また、切替制御部283Aは、脱血ライン210aの流量調整クランプ220Aの開度を0とし、バイパスライン270のバイパスクランプ270aを開放することにより、第1流路切替部271Aを切り替えてECMOシステム100Aから脱血ライン210aへの血液(液体)の流入を停止させ、バイパスライン270を流通する血液(液体)を脱血ライン210aに流入させる。
【0058】
以上のECMOシステム100A及びCRRTシステム200Aによれば、対象者(患者)の静脈から取り出された血液は、ECMOシステム100Aの脱血ライン110aに流れ、接続ライン110bで血液の一部がCRRTシステム200Aの脱血ライン210aに所定の流量(流量調整部220Aの流量)で流入し、他は人工肺130へ送られる。
CRRTシステム200Aの脱血ライン210aに送られた血液は、所定の流量で血液浄化器230に導入される。ここで、流量調整クランプ220Aは、血液浄化器230に血液を送る送液手段として機能すると共に、ECMO血液回路110Aから伝わる高い陽圧が血液浄化器230に伝わらないようにする圧力隔壁として機能する。血液浄化器230で浄化された血液は、除水量に応じて補充液ライン260から補充液を補充された後、返血ライン210bに送られる。
【0059】
返血ライン210bでは、圧力緩衝部としての点滴筒213において所定の範囲内で血液が貯留される。その貯留量は、返血ポンプ216の設定流量を加減することで制御することができる。具体的には、血液浄化器230の下流端から送られてくる血流量は、流量調整クランプ220Aの設定流量から除水分だけわずかに小さい血流量となる。よって、圧力緩衝部としての点滴筒213の内圧(圧力計P3の測定値)が所定の範囲を超える場合は、返血ポンプ216の設定流量を流量調整クランプ220Aの設定流量よりも大きくすればよい。また、圧力緩衝部としての点滴筒213の内圧(圧力計P3の測定値)が所定の範囲を下回る場合は、返血ポンプ216の設定流量を流量調整クランプ220Aの設定流量よりも小さくすればよい。このようにして点滴筒213内に貯留される液体の量を調整することで、圧力計P3の測定値を所定の範囲内とすることができる。よって、返血ライン210bにおいて返血ポンプ216の上流側を低陽圧とすることができるので、CRRTシステム200Aを低陽圧で運転することができる。
返血ライン210bは返血ポンプ216を備えるため、返血ポンプ216の下流側の回路内圧を上げてECMOシステム100Aの陽圧部(ECMO血液ポンプ120の下流側)に血液を送り出すことが可能となる。ここで、返血ポンプ216は、ECMOシステム100Aの陽圧部に血液を送る送液手段として機能すると共に、上流側を低い陽圧に、下流側を高い陽圧にする圧力隔壁として機能する。
【0060】
返血ライン210bからECMOシステム100Aの接続ライン110bに返血された血液は、接続ライン110bを流れる血液と共に人工肺130に送られ、酸素添加及び二酸化炭素の除去が行われる。人工肺130から送り出された血液は返血ライン110c及び送血カニューレ112を介して患者の動脈又は静脈に戻される。
【0061】
ECMOシステム100Aになんらかの問題が発生した場合、除水制御部281により、CRRT血液回路210を循環する血液の濃度が一定に保たれるように排液ポンプ251の流量が制御される。これにより、CRRT血液回路210における血液の濃縮が防がれ、血栓の発生が抑制される。
【0062】
ECMOシステム100Aに発生した問題が軽度であった場合、図7に示すように、脱血ライン210a、返血ライン210b及びECMOシステム100の一部を介して血液の少なくとも一部が再循環される。このとき、排液ポンプ251の流量が制御されて循環する血液の濃度は一定に保たれる。よって、ECMOシステム100の復旧を待機している間、CRRTシステム200Aで再循環が行われていても、CRRT血液回路210内での血液の濃縮を防げるので、血栓の発生を抑制できる。また、ECMOシステム100AとCRRTシステム200Aとの接続部においても血液の流通が停止されないため、ECMOシステム100Aの問題が解消された場合に、CRRTシステム200Aとの連携を速やかに再開させられる。
【0063】
また、ECMOシステム100Aに高度な問題が発生した場合には、図8に示すように、脱血ライン210a、返血ライン210b及びバイパスライン270を介して血液は全部が再循環する。このとき、排液ポンプ251の流量が制御されて循環する血液の濃度は一定に保たれる。よって、CRRT血液回路210内での血栓の発生は抑制される。また、ECMOシステム100Aの復旧を待機している間、CRRTシステム200AはECMOシステム100Aから切り離されて再循環が行われるので、ECMOシステム100Aの復旧作業が容易となる。
【0064】
また、第2実施形態によれば、血液浄化システム200Aを、返血ライン210bにおける返血ポンプ216よりも上流側に設けられ、所定の量の液体を貯留可能な圧力緩衝部(点滴筒213)と、圧力緩衝部(点滴筒213)の圧力を測定する緩衝部圧力計P3と、を含んで構成し、制御部280Aを、流量調整クランプ220Aの開度及び返血ポンプ216の出力を調整して緩衝部圧力計P3の測定値が所定の範囲内となるように制御する流量制御部284を含んで構成した。これにより、血液浄化システム200Aの返血ライン210bをECMOシステム100Aの陽圧部に接続しても、血液浄化システム200Aを低陽圧で運転することができる。
【0065】
<第3実施形態>
図9図12を参照して第3実施形態について詳細に説明する。
図9は、本発明の第3実施形態にかかるECMOシステム100A、CRRTシステム200B及び中間システム300の概略構成を示す図である。ECMOシステム100Aは第2実施形態で説明したものと同様であるので説明を省略する。
図10にCRRTシステム200B及び中間システム300のブロック図を示す。
【0066】
(CRRTシステム)
図9及び図10に示すようにCRRTシステム200Bは、CRRT血液回路210Bと、血液浄化ポンプ220と、血液浄化器230と、透析液供給ライン240と、透析液排液ライン250と、補充液ライン260と、制御部280Bと、を備える。
【0067】
CRRT血液回路210Bは、取り出した血液を循環させるための回路であり、脱血ライン210aと、返血ライン210bと、を含んで構成される。脱血ライン210aは、一端(上流端)が後述する中間システム300の中間脱血ライン310の下流端に接続され、他端(下流端)が血液浄化器230に接続される。脱血ライン210aには、血液浄化ポンプ220が設けられる。血液浄化ポンプ220の上流側には圧力計P1が取り付けられ、下流側には圧力計P2が取り付けられる。返血ライン210bは、一端(上流端)が血液浄化器230と接続され、他端(下流端)が後述する中間システム300の中間返血ライン320の上流端と接続される。
【0068】
血液浄化ポンプ220は、中間脱血ライン310を介してECMOシステム100Aから血液を取り出す。取り出された血液は、脱血ライン210aを通って血液浄化器230に送られた後、返血ライン210bを通って中間返血ライン320を介してECMOシステム100Aに戻される。
【0069】
制御部280Bは、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、CRRTシステム200Bが備える各ポンプを駆動して、血液浄化器230に対する血流量、透析液量、排液量を制御して持続的血液透析濾過(CHDF)を実行する。尚、制御部280Bは、透析液供給ライン240に配置された透析液ポンプ241、透析液排液ライン250に配置された排液ポンプ251、及び補充液ライン260に配置された補充液ポンプ261のそれぞれの流量を監視してCRRTシステム200Bを流通する液体(透析液及び補充液)を計量する計量ユニット(図示せず)により計量されたる流量に基づいて各ポンプの駆動を制御してもよい。
【0070】
(中間システム)
図9及び図10に示すように中間システム300は、中間脱血ライン310と、流量調整部311と、中間返血ライン320と、返血ポンプ321と、脱血側圧力緩衝部312と、脱血側検出部3121と、返血側圧力緩衝部322と、返血側検出部3221と、制御部330と、バイパスライン340と、報知部350(図10参照)と、を備える。
【0071】
中間脱血ライン310は、ECMOシステム100Aの接続ライン110bを流れる血液の一部を取り出してCRRTシステム200Bに送るためのラインである。中間脱血ライン310の一端(上流端)はECMOシステム100Aの接続ライン110bに設けられた第1分岐部110b1に接続され、他端(下流端)は、CRRTシステム200Bの上流端に接続される。中間脱血ライン310には、流量調整部311が設けられる。流量調整部311の上流側には圧力計P5が取り付けられる。また、中間脱血ライン310には、CRRTシステム200との接続部(脱血ライン210aの上流端)までの流量が正常かどうかを監視するために流量計314が取り付けられる。本実施形態では、流量計314として超音波流量計が用いられる。流量計314としては、他に光学式流量計等を用いてもよい。
【0072】
流量調整部311は、中間脱血ライン310を流れる血液の流量を調整する。流量調整部311は、中間脱血ライン310のうち上流端に近い箇所に取り付けられる。これにより、流量調整部311を閉じて血流を止める必要が生じた場合に、凝固のため廃棄する血液量を低減することができる。流量調整部311は、開度を調整可能な流量調整クランプで構成される。流量調整部311としては、流量調整クランプの代わりにローラーポンプを用いてもよい。流量調整部311により中間脱血ライン310を流れる血液の流量を調整することで、下流側の回路内圧の調整が可能となる。
【0073】
脱血側圧力緩衝部312は、中間脱血ライン310のうち流量調整部311よりも下流側に設けられ、所定の量の液体を貯留可能である。本実施形態では脱血側圧力緩衝部312として、軟質のバッグで構成されるリザーバーが用いられる。
脱血側圧力緩衝部312(リザーバー)への血液(液体)の流入口及び流出口は、血液(液体)で満たされるように下部に設けられることが望ましい。例えば、リザーバーの下部に流入口及び流出口として2つの開口部を形成すればよい。このような構成とすることで、何らかの理由でリザーバーの貯留量が急激に減少した場合に、リザーバーの下流側の中間脱血ライン310に空気を送り込むリスクを低減することができる。また、リザーバーの上部に脱気用ライン3122(図9参照)を設けてもよい。脱気用ライン3122は、運転中は原則として閉じられており、プライミング時に液面確認のために用いられる他、運転中にリザーバーに滞留した空気を脱気するために用いられる。また、脱血側圧力緩衝部312に加温機構(図示せず)を設けてもよい。これにより、ECMO血液回路110に戻される血液を加温することができる。また、脱血側圧力緩衝部312として、リザーバーの代わりに軟質の素材で構成される小型容器(例えばピロー)を用いてもよい。
【0074】
また、中間脱血ライン310に脱血側圧力緩衝部312を迂回するためのバイパスライン313を設けてもよい。バイパスライン313と中間脱血ライン310との接続部は、例えば、Y字コネクタ(不図示)により接続される。
バイパスライン313を設けることにより、中間システム300を運転する際に、脱血側圧力緩衝部312を使用して圧力緩衝を行うか、脱血側圧力緩衝部312を使用せずにバイパスライン313を使用して圧力緩衝を行わないか、を使用者が選ぶことができる。脱血側圧力緩衝部312を使用しない場合は、その分のプライミングボリュームを減らすことができる。
【0075】
脱血側検出部3121は、脱血側圧力緩衝部312に取り付けられ、脱血側圧力緩衝部312の貯留状態を検出する。本実施形態では、脱血側検出部3121の一例として重量計を用いて、脱血側圧力緩衝部312(リザーバー)に貯留した液体の重量(貯留状態)を測定する。また、リザーバーに空気層を設ける場合には、脱血側検出部3121として圧力計を用いて、リザーバーの貯留状態に応じて変化する内圧を測定してもよい。また、脱血側圧力緩衝部312としてピロー等の小型容器を用いる場合は、脱血側検出部3121として圧力計を用いて、小型容器の内部圧力に応じた膨縮を検出するものとすればよい。
【0076】
中間返血ライン320は、一端(下流端)がECMOシステム100Aの接続ライン110bに設けられた第2分岐部110b2に接続され、他端(上流端)がCRRT血液回路210(返血ライン210b)の下流端に接続される。中間返血ライン320には、上流側から順に、返血側圧力緩衝部322と返血ポンプ321とが配置される。また、中間返血ライン320には、返血ポンプ321の下流側に、点滴筒323、液切れセンサ324、及びクランプ325が順に取り付けられる。この点滴筒323には、圧力計P6が取り付けられる。点滴筒323は、中間返血ライン320に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、一定量の血液を貯留する。クランプ325は、中間返血ライン320のうち下流端に近い箇所に取り付けられる。圧力計P6は、中間返血ライン320のうち返血ポンプ321の下流側の回路内圧を測定する。
【0077】
返血ポンプ321は、中間返血ライン320を流れる血液をECMOシステム100Aの陽圧部に送り出すためのポンプである。返血ポンプ321としては、公知のローラーポンプを用いることができる。
【0078】
返血側圧力緩衝部322は、中間返血ライン320のうち返血ポンプ321よりも上流側に設けられ、所定の量の液体を貯留可能である。本実施形態では返血側圧力緩衝部322として、脱血側圧力緩衝部312と同様に軟質のバッグで構成されるリザーバーが用いられる。
【0079】
返血側検出部3221は、返血側圧力緩衝部322に取り付けられ、返血側圧力緩衝部322の貯留状態を検出する。返血側検出部3221の構成は、脱血側検出部3121と同様のものを用いることができる。
【0080】
バイパスライン340は、中間脱血ライン310と中間返血ライン320とを接続するラインであり、CRRTシステム200B及び中間システム300をECMOシステム100Aから切り離すために用いられる。バイパスライン340は、中間脱血ライン310における流量調整部311の下流側と接続され、中間返血ライン320における液切れセンサ324とクランプ325との間に接続される。バイパスライン340は、中間脱血ライン310との接続部近傍にバイパスクランプ340aを有し、中間返血ライン320との接続部近傍にバイパスクランプ340bを有する。バイパスクランプ340aは、中間脱血ライン310に設けられた流量調整部311と合わせて第1流路切替部341を構成する。また、バイパスクランプ340bは、中間返血ライン320に設けられたクランプ325と合わせて第2流路切替部342を構成する。
尚、本実施形態では、第1流路切替部341を流量調整部311及びバイパスクランプ340aで構成し、第2流路切替部342を2つのクランプで構成したが、それぞれを三方活栓等で構成してもよい。
【0081】
制御部330は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、中間システム300が備える各ポンプ及び各クランプを駆動して制御する。また、制御部330は、脱血側検出部3121(重量計)で検出された貯留状態(重量)に応じて、流量調整部311としての流量調整クランプの開度を制御して、中間脱血ライン310の流量を調整し、脱血側圧力緩衝部312(リザーバー)に貯留される血液の貯留量が所定の範囲内となるように制御する。接続ライン110bから取り出す血液の流量は、血液浄化ポンプ220の流量を基準に加減して設定すればよい。
更に、制御部330は、液切れセンサ324で液切れが検出された場合に、クランプ325を作動させて中間返血ライン320を閉塞し、ECMOシステム100Aに気泡が混入するのを防ぐ。
【0082】
更に、制御部330は、ECMOシステム100Aの運転状況を監視するため、流量計114の測定値を取得し、圧力計P5又は圧力計P6の測定値に基づいてECMOシステム100Aの回路内圧を監視する。制御部330は、流量計114の測定値及び圧力計P5又は圧力計P6の測定値に基づいて、ECMOシステム100Aの循環が不安定になる等の問題の発生を把握する。
制御部330は、循環制御部331及び切替制御部332を含んで構成される。本実施形態においては、制御部330は、流量計114により測定されるECMOシステム100の流量の変化率が所定の閾値を超えた場合に、ECMOシステム100になんらかの問題が発生したと判定する。そして、当該問題の発生を報知部350に報知させる。
具体的には、制御部330は、ECMOシステム100になんらかの問題が発生したこと、及び血液浄化器230による血液浄化を停止させてCRRT血液回路210を流通する血液の濃度を一定に保つよう報知部350に報知させる。
【0083】
また、制御部330は、流量計114により測定されるECMOシステム100Aの流量の変化率が所定の閾値を超える一方、圧力計で測定される圧力が所定の範囲内にある場合、発生した問題が軽度であると判定する。この場合、循環制御部331は、血液浄化ポンプ220の流量を所定の流量に低下させる。このとき、中間返血ライン320を流通する液体の少なくとも一部は、ECMOシステム100Aの一部(接続ライン110bの一部)を介して中間脱血ライン310に再流入される。つまり、中間システム300及びCRRT血液回路210において血液(液体)の少なくとも一部が再循環される。
【0084】
制御部330は、流量計114により測定されるECMOシステム100Aの流量の変化率が所定の閾値を超え、かつ、圧力計で測定される圧力が所定の範囲を超えた場合、ECMOシステム100Aに高度な問題が発生したと判定する。この場合、切替制御部332は、ECMOシステム100Aへの流路を閉塞してバイパスライン340に切り替えて中間脱血ライン310、CRRT血液回路210、中間返血ライン320及びバイパスライン340で血液(液体)の全部を再循環させる制御を行う。具体的には、切替制御部332は、中間返血ライン320のクランプ325を閉塞してバイパスライン340のバイパスクランプ340bを開放することにより、第2流路切替部342を切り替えて中間返血ライン320を流通する血液(液体)の流路をバイパスライン340に切り替える。それと同時に、切替制御部332は、中間脱血ライン310の流量調整部311の流量を0とし、バイパスライン340のバイパスクランプ340aを開放することにより、第1流路切替部341を切り替えてECMOシステム100Aから中間脱血ライン310への血液(液体)の流入を停止させ、バイパスライン340を流通する血液(液体)を中間脱血ライン310に流入させる。
【0085】
また、本実施形態において、制御部330は、流量調整部311及び返血ポンプ321の流量を調整して、返血側圧力緩衝部で貯留される液体の重量が所定の範囲内となるように制御する流量制御部333を更に含んで構成される。
【0086】
上述のECMOシステム100A、CRRTシステム200B及び中間システム300における各種ラインは、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0087】
以上のECMOシステム100A、CRRTシステム200B及び中間システム300によれば、対象者(患者)の静脈から取り出された血液は、ECMOシステム100Aの脱血ライン110aに流れ、接続ライン110bで血液の一部が中間システム300の中間脱血ライン310に所定の流量で流入し、他は人工肺130へ送られる。
【0088】
中間システム300に送られた血液は、脱血側圧力緩衝部312において所定の範囲内で血液が貯留される。その貯留量は、流量調整部311の設定流量を加減することで制御することができる。具体的には、脱血側圧力緩衝部312の下流側から流出する血流量は、血液浄化ポンプ220の設定流量となるので、脱血側圧力緩衝部312の貯留量が所定の範囲を超える場合は、流量調整部311の設定流量を血液浄化ポンプ220の設定流量よりも小さくすればよい。また、脱血側圧力緩衝部312の貯留量が所定の範囲を下回る場合は、流量調整部311の設定流量を血液浄化ポンプ220の設定流量よりも大きくすればよい。これにより、所定の量の血液が脱血側圧力緩衝部312に貯留されるので、中間脱血ライン310に設けられた脱血側圧力緩衝部312で回路内圧を下げることができる。
【0089】
脱血側圧力緩衝部312に貯留された血液は、血液浄化ポンプ220により血液浄化器230に導入される。ここで、脱血側圧力緩衝部312により回路内圧は低陽圧となっているので、血液浄化ポンプ220の上流側は低陽圧となる。
血液浄化器230では、透析膜を介して水分や老廃物が除去され、浄化された血液は血液浄化器230から導出される。血液浄化器230で浄化された血液は、除水量に応じて補充液ライン260から補充液を補充された後、中間システム300の中間返血ライン320に送られる。
【0090】
中間返血ライン320では、返血側圧力緩衝部322において所定の範囲内で血液が貯留される。その貯留量は、返血ポンプ321の設定流量を加減することで制御することができる。具体的には、CRRTシステム200Bの下流端から送られてくる血流量は、血液浄化ポンプ220の設定流量から除水分だけわずかに小さい血流量となる。よって、返血側圧力緩衝部322の貯留量が所定の範囲を超える場合は、返血ポンプ321の設定流量を血液浄化ポンプ220の設定流量よりも大きくすればよい。また、返血側圧力緩衝部322の貯留量が所定の範囲を下回る場合は、返血ポンプ321の設定流量を血液浄化ポンプ220の設定流量よりも小さくすればよい。これにより、所定の量の血液が返血側圧力緩衝部322に貯留されるので、中間返血ライン320に設けられた返血側圧力緩衝部322で回路内圧を下げることができる。よって、CRRTシステム200Bの下流端を低陽圧とすることができるので、CRRTシステム200Bを低陽圧で運転することができる。
中間返血ライン320は返血ポンプ321を備えるため、返血側圧力緩衝部322により下がった回路内圧を上げてECMOシステム100Aの陽圧部(ECMO血液ポンプ120の下流側)に血液を送り出すことが可能となる。ここで、返血ポンプ321は、ECMOシステムの陽圧部に血液を送る送液手段として機能すると共に、上流側を低い陽圧に、下流側を高い陽圧にする圧力隔壁として機能する。
【0091】
中間システム300の中間返血ライン320からECMOシステム100Aの接続ライン110bに返血された血液は、接続ライン110bを流れる血液と共に人工肺130に送られ、酸素添加及び二酸化炭素の除去が行われる。人工肺130から送り出された血液は返血ライン110c及び送血カニューレ112を介して患者の動脈又は静脈に戻される。
【0092】
ECMOシステム100Aに何らかの問題が発生した場合には、報知部350による報知が行われ、この報知に応じてCRRT血液回路210を流通する血液の濃度が一定に保たれれば、CRRTシステム200Bにおける血液の濃縮が防がれ、血栓の発生が抑制される。
【0093】
ECMOシステム100に発生した問題が軽度であった場合、図11に示すように、CRRT血液回路210、中間脱血ライン310、中間返血ライン320及びECMOシステム100Aの一部を介して血液の少なくとも一部が再循環される。よって、ECMOシステム100Aの復旧を待機している間、中間システム300及びCRRTシステム200Bで再循環が行われていても血液の濃縮を防げるので、血栓の発生を抑制できる。また、ECMOシステム100と中間システム300との接続部においても血液の流通が停止されないため、ECMOシステム100の問題が解消された場合に、CRRTシステム200との連携を速やかに再開させられる。
【0094】
また、ECMOシステム100Aに高度な問題が発生した場合には、図12に示すように、中間脱血ライン310、CRRT血液回路210、中間返血ライン320及びバイパスライン340を介して血液は全部が再循環する。このとき、報知部350による報知が行われ、この報知に応じてCRRT血液回路210を流通する血液の濃度が一定に保たれれば、中間システム300及びCRRTシステム200Bにおける血液の濃縮が防がれ、血栓の発生が抑制される。また、ECMOシステム100Aの復旧を待機している間、中間システム300及びCRRTシステム200AはECMOシステム100Aから切り離されて再循環が行われるので、ECMOシステム100Aの復旧作業が容易となる。
【0095】
以上、本発明のCRRTシステム及び中間システムの好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
100、100A 体外式膜型人工肺(ECMO)システム
110、110A 血液回路
110a 脱血ライン
110b 接続ライン
120 ECMO血液ポンプ
130 人工肺
200、200A、200B 持続的腎代替療法(CRRT)システム
210、210B 血液回路
210a 脱血ライン
210b 返血ライン
220 血液浄化ポンプ
230 血液浄化器
300 中間システム
310 中間脱血ライン
311 流量調整部
312 脱血側圧力緩衝部
320 中間返血ライン
321 返血ポンプ
322 返血側圧力緩衝部
3121 脱血側検出部
3221 返血側検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12