(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006487
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】容器詰発泡性飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20240110BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23L2/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107389
(22)【出願日】2022-07-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売 販売した場所:全国 公開者:株式会社 伊藤園 販売開始日:令和4年6月13日
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】福島 武
(72)【発明者】
【氏名】正木 智之
(72)【発明者】
【氏名】西谷 栄盛
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK01
4B117LK02
4B117LK04
4B117LP12
4B117LP14
4B117LP18
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】 ナトリウムが含有されている無糖・無甘味かつ無果汁の発泡性飲料であって、ナトリウムや炭酸由来の後味が抑制され、また飲み心地が向上した発泡性飲料を提供する。
【解決手段】 ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であって、ナトリウムを200~800ppm、塩化物イオンを80~300ppm含有し、ガスボリュームが2.0~6.0である、容器詰発泡性飲料。さらに本発明は、容器詰発泡性飲料の製造方法、無糖、無甘味かつ無果汁のナトリウム含有容器詰発泡性飲料における後味改善方法および飲み心地向上方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であって、
ナトリウムの含有量が200~800ppmであり、
塩化物イオンの含有量が80~300ppmであり、
ガスボリュームが2.0~6.0である、
容器詰発泡性飲料。
【請求項2】
更にカリウムを含有し、
前記ナトリウムの含有量に対する前記カリウムの含有量の比率(K/Na)が0.15~1.5である
請求項1に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項3】
更にシリカを5~100ppm含有する
請求項1または2に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項4】
熱中症対策飲料である、
請求項1または2に記載の容器詰発泡性飲料。
【請求項5】
ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料の製造方法であって、
ナトリウムの含有量を200~800ppm、
塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整し
ガスボリュームを2.0~6.0に調整する、
容器詰発泡性飲料の製造方法。
【請求項6】
ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料における後味改善方法であって、
ナトリウムの含有量を200~800ppm、
塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整し
ガスボリュームを2.0~6.0に調整する、
容器詰発泡性飲料における後味改善方法。
【請求項7】
ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料における飲み心地向上方法であって、
ナトリウムの含有量を200~800ppm、
塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整し
ガスボリュームを2.0~6.0に調整する、
容器詰発泡性飲料における飲み心地向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱中症対策としてナトリウムが含有されている容器詰発泡性飲料に関し、より詳細には、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であって、ナトリウムや炭酸由来の後味が抑制され、また飲み心地が良好な容器詰発泡性飲料に関する。さらに本発明は、ナトリウムを含有する容器詰発泡性飲料の製造方法、ナトリウムを含有する容器詰発泡性飲料における後味改善方法、ナトリウム含有容器詰発泡性飲料における飲み心地向上方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性飲料は、その味わいのみならず、飲用した時に炭酸ガスの刺激によって爽快感を得ることができ、その市場はますます拡大をしている。また、市場拡大とともに消費者ニーズも多様化してきており、従来の果汁系発泡性飲料やコーラ系発泡性飲料だけではなく、健康志向を背景に無糖系発泡性飲料の市場が近年急速に成長しており、無糖系発泡性飲料もいくつか提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、近年の気候変動により、特に夏場で熱中症を発症する人の数が増加しており、社会問題となっている。熱中症予防の水分補給として、ナトリウムを含有する飲料を摂取することが推奨されている。しかしながら、ナトリウムを含有する飲料は、ナトリウムに起因する塩味が感じられるため、呈味が改善された飲料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-103945号公報
【特許文献2】特開2021-101699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、無糖系発泡性飲料、特に強炭酸水は泡が大きくて飲みにくい、苦い、酸味が苦手という消費者が一定数存在する。また、ナトリウムに起因する塩味を改善した熱中症対策飲料としてスポーツ飲料や経口補水液が飲用されているが、これらは塩分のみならず糖分が含まれており、非運動時に飲用すると、糖分過多となる場合があり、日常の生活における熱中症対策飲料に関する提案としては充分とは言えなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、無糖・無甘味かつ無果汁でナトリウムが配合された発泡性飲料でありながら、無糖系発泡性飲料特有の苦い後味や飲みにくさが改善され、かつナトリウム由来の塩味が後を引く後味が抑制され、飲用後に心地よい発泡性飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明者等が鋭意検討したところ、ナトリウム及び塩化物イオンの配合量を所定範囲に調整するとともに、発泡性飲料におけるガスボリュームを所定範囲内とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕 ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であって、
ナトリウムの含有量が200~800ppmであり、塩化物イオンの含有量が80~300ppmであり、ガスボリュームが2.0~6.0である、容器詰発泡性飲料。
〔2〕 更にカリウムを含有し、前記ナトリウムの含有量に対する前記カリウムの含有量の比率(K/Na)が0.15~1.5である〔1〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔3〕 さらにシリカを10~100ppm含有する〔1〕または〔2〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔4〕 熱中症対策飲料である、〔1〕または〔2〕に記載の容器詰発泡性飲料。
〔5〕 ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料の製造方法であって、ナトリウムの含有量を200~800ppm、塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整しガスボリュームを2.0~6.0に調整する、容器詰発泡性飲料の製造方法。
〔6〕 ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料における後味改善方法であって、ナトリウムの含有量を200~800ppm、塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整しガスボリュームを2.0~6.0に調整する、容器詰発泡性飲料における後味改善方法。
〔7〕 ナトリウムを含有する無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料における飲みやすさ向上方法であって、ナトリウムの含有量を200~800ppm、塩化物イオンの含有量を80~300ppmに調整しガスボリュームを2.0~6.0に調整する、容器詰発泡性飲料における飲み心地向上方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナトリウムを含有する容器詰発泡性飲料は、無糖・無甘味かつ無果汁でありながら、ナトリウムや炭酸由来の後味が抑制され、また飲み心地が良好で、嗜好的に好ましいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、無糖、無甘味かつ無果汁であって、ナトリウムおよび塩化物イオンの含有量を所定範囲で含有し、ガスボリュームが所定範囲にあるものである。
【0010】
(無糖)
本実施形態において「無糖」の飲料とは、糖類を実質的に含有しない飲料を意味する。健康増進法に基づく栄養表示基準においては、飲料100mlあたり0.5g未満であれば無糖と表示することができる。本明細書においても当該表示基準と同様に、糖類の含有量が飲料100mlあたり0.5g未満である発泡性飲料を「無糖」の発泡性飲料とする。糖類含有量は、飲料100mlあたり0.1g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、糖類とは、単糖類または二糖類であって、糖アルコールでないものを意味し、ぶどう糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖などが包含される。
【0011】
(無甘味)
本実施形態において「無甘味」の飲料とは、甘味料を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、含有する糖類および甘味料に由来する甘味度が飲料100mlあたりショ糖として0.5g未満である発泡性飲料を「無甘味」の発泡性飲料とする。糖類および甘味料の含有量は、飲料100mlあたりショ糖として0.3g相当未満であることが好ましく、0.0g相当であることが特に好ましい。なお、甘味度とは、甘味料の甘さを示す指標であり、ショ糖の甘さを1とした相対値で示される。甘味料とは、食品に甘みを呈する成分であり、糖質系甘味料と非糖質系甘味料の2種類に分けられる。糖質系甘味料は、砂糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコールがあり、非糖質系甘味料は、天然甘味料(ステビア等)と合成甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等)などが包含される。
【0012】
(無果汁)
本実施形態において「無果汁」の飲料とは、果汁を実質的に含有しない飲料を意味する。本明細書においては、果汁の含有量が飲料100mlあたり1.0g(ストレート換算)未満である発泡性飲料を「無果汁」の発泡性飲料とする。果汁の含有量は、飲料100mlあたり0.5g未満であることが好ましく、0.0gであることが特に好ましい。なお、「果汁」とは、果実を粉砕して搾汁、裏ごし等をし、皮、種子等を除去したものをいい、果実は日本標準商品分類による果実とする。果汁の含有量は、果実飲料の日本農林規格に定める測定方法に基づき測定可能である。
【0013】
(ナトリウム)
本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ナトリウムを所定量含有する。本発明においてナトリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはナトリウムを豊富に含む海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができるナトリウムの塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明においてナトリウムは、これらのナトリウム塩に由来することができる。本発明の飲料は、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含有する。本発明においてナトリウムは、好ましくは炭酸水素ナトリウム由来である。
【0014】
(ナトリウムの含有量)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、ナトリウムの含有量が200ppm以上800ppm以下である。熱中症予防を目的として効果的に水分補給を行うには、一定量のナトリウムを含有する飲料を摂取するのが有効だからである。好ましくは300ppm以上であり、さらに好ましくは350ppm以上であり、清涼飲料工業会が2012年に制定した「熱中症対策」表示ガイドラインによれば、400ppm以上であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記下限値以上であることで、飲用者にとって十分な量のナトリウムを含んだ容器詰発泡性飲料とすることができる。
また、本実施形態の容器詰発泡性飲料は、ナトリウムの含有量が700ppm以下であることが好ましく、600ppm以下であることがさらに好ましく、500ppm以下であることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が上記上限値以下であることで、無糖炭酸に由来する苦みなどの後味の悪さを改善するといった本実施形態の効果がより効果的に発揮される。
【0015】
(塩化物イオン)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、塩化物イオンの含有量が80ppm以上300ppm以下である。本発明において塩化物イオンは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いは塩化物を含む天然水、海洋深層水、にがりや海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができる塩化物としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明において塩化物イオンは、これらの塩化物に由来することができる。本発明の飲料は、好ましくは塩化カリウムを含有する。本発明において塩化物イオンは、好ましくは塩化カリウム由来である。塩化物イオンが多く含有していると、飲用した場合に塩味を感じ、味を損なう可能性があるが、所定範囲で存在することにより、後味に締まりを与え、飲み心地の良さに影響を与える。本実施形態の容器詰発泡性飲料中の塩化物イオンの含有量は、好ましくは90ppm以上290ppm以下、更に好ましくは100ppm以上280ppm以下である。
【0016】
(カリウム)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、カリウムを含有することが好ましい。カリウムの含有量は、40ppm以上640ppm以下であることが好ましい。本発明においてカリウムは、飲食品に用いることができる塩の形態、或いは塩化物を含む天然水、海洋深層水や海藻エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができる塩化物としては、例えば、塩化カリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明においてカリウムは、これらの塩化物に由来することができる。本発明の飲料は、好ましくは塩化カリウムを含有する。本発明においてカリウムは、好ましくは塩化カリウム由来である。カリウムが多く含有していると、飲用した場合に苦みやえぐみといった雑味をもたらし、味を損なう可能性があるが、所定範囲で存在することにより、冷涼感を感じさせることができる。本実施形態の容器詰発泡性飲料中のカリウムの含有量は、好ましくは60ppm以上400ppm以下、更に好ましくは80ppm以上300ppm以下である。
【0017】
(カリウム含有量/ナトリウム含有量)
本実施形態の容器詰発泡性飲料において、ナトリウムの含有量(ppm)に対するカリウムの含有量(ppm)の比(カリウム含有量/ナトリウム含有量)は、例えば0.15以上1.5以下であり、好ましくは0.2以上1.0以下であり、より好ましくは0.3以上0.8以下である。上記範囲内に調整されることで、ナトリウムを高濃度に含有した場合でも、軽やかに感じられ嗜好的に好ましい飲料となる。
【0018】
(シリカ)
本実施形態の容器詰発泡性飲料は、シリカの含有量が5ppm以上100ppm以下である。本発明においてシリカ(SiO2)は、飲食品に用いることができる塩の形態、或いはシリカを含む天然水、海洋深層水や野菜・海藻・穀物エキスなどの形態で飲料に添加することができる。本発明で用いることができるシリカとしては、例えば、天然水などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明においてシリカは、好ましくは天然水由来である。シリカが多く含有していると、飲用した場合に、まろやかさが感じられ、心地よさをもたらすことができる。本実施形態の容器詰発泡性飲料中のシリカの含有量は、好ましくは10ppm以上90ppm以下、更に好ましくは12ppm以上80ppm以下である。
【0019】
(ガスボリューム)
本実施形態の発泡性飲料は、ガスボリュームが2.0以上であり、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがさらに好ましく、4.2以上であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記下限値以上であることで、ナトリウムに由来する塩味などの後味を効果的に改善することができる。また、ナトリウムを含有することにより、炭酸の刺激や苦み、酸味がマイルドになり、炭酸ガスの清涼感と、それによる喉越しの良さを得ることができ、嗜好的に好ましい飲料とすることができる。
本実施形態の発泡性飲料は、ガスボリュームが6.0以下であることが好ましく、5.8以下であることがさらに好ましく、5.5以下であることが特に好ましい。ガスボリュームが上記上限値以下であることで、本実施形態の効果が効果的に発揮される。
なお、本明細書における炭酸ガスのガスボリュームとは、20℃において、発泡性飲料中に溶解している炭酸ガスの体積を発泡性飲料の体積で除したものをいい、具体的な測定方法は後述する実施例に示す。
【0020】
(その他の成分)
本実施形態に係る発泡性飲料には、処方上添加して良い成分として、酸化防止剤、各種エステル類、着色料(色素)、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、乳化剤、保存料、調味料、香料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等があげられる。これらを単独、又は併用して配合してもよい。本実施形態は、強い呈味を示す成分を添加しない発泡性飲料にて、より有効である。
【0021】
(水)
本実施形態に適した水としては、例えば、天然水、市水、井水、イオン交換水、脱気水等が挙げられるが、これらのうち天然水を用いるのが好ましい。天然水を用いることで、天然のシリカ等のミネラル成分を含有することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部または全てを脱気水とすることができる。
【0022】
(容器)
本実施形態の発泡性飲料は、容器に充填して提供される。本実施形態において使用する容器としては、通常用いられる飲料用容器であればよいが、炭酸ガスのガス圧を考慮すると、金属缶、PETボトル等のプラスチック製ボトル、瓶などの所定の強度を有する容器であるのが好ましい。また、開栓後も炭酸ガスを効果的に保持するために、当該容器は再栓可能な蓋を備えていることが好ましい。
【0023】
(熱中症対策飲料)
本実施形態の発泡性飲料は、熱中症対策飲料とすることができる。熱中症対策飲料とは、熱中症対策、あるいは熱中症の予防に適した飲料を意味するものである。ここで、熱中症対策とは、熱中症の発症予防、或いは熱中症の症状軽減を意味する。熱中症対策飲料であることは、商品に関するテレビCM、店頭POP、ポスター、説明会などでの説明などにより判断することができる。一般社団法人全国清涼飲料連合会の「熱中症対策」表示ガイドラインによれば、飲料100mlあたり少なくとも40~80mgのナトリウム濃度の清涼飲料水を言う。
【0024】
(製造方法)
本実施形態に係る容器詰発泡性飲料は、ナトリウムの含有量が所定範囲となるようナトリウム源を添加するとともに、塩化物イオンを調整し、ガスボリュームを所定範囲に調整する以外、従来公知の方法により製造することができる。例えば、水に、所定量炭酸水素ナトリウムを添加し、さらに所望により上述した他の成分を添加して攪拌し、飲料原液を調製する。そして、必要に応じてpHの調整及び/又は加熱殺菌をしてから冷却した後、炭酸ガスをガス封入(カーボネーション)し、容器に充填して、殺菌する工程により製造することができる。なお、炭酸飲料の製法には、プレミックス法とポストミックス法とがあるが、いずれを採用してもよい。
【0025】
<用語の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。また、「X以上」或いは「Y以下」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意味を包含する。
【0026】
以上の容器詰発泡性飲料は、ナトリウムを所定量含有し、さらに無糖、無甘味かつ無果汁でありながら、ナトリウムや炭酸由来の後味が抑制されるものである(本発明に係るナトリウムを含有する容器詰発泡性飲料における後味改善方法に該当)。また、以上の容器詰発泡性飲料は、飲み心地が向上したものとなる(本発明に係るナトリウムを含有する容器詰発泡性飲料における飲み心地向上方法に該当)。
【0027】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0028】
以下、製造例、試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例、試験例等に何ら限定されるものではない。
【0029】
<容器詰発泡性飲料の調製、製造方法>
[試料1~11、13~20]
下記の各原料を表1および表2に示す配合で混合、溶解し、調合液を得た後95℃達温で殺菌し、その後5℃まで冷却した。得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが表1および表2に示す値になるよう、カーボネーターで二酸化炭素を混合した後、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填し、容器詰発泡性飲料を得た。
[試料12]
下記の各原料を表2に示す配合で混合、溶解し、調合液を得た後95℃達温で殺菌し、洗浄殺菌済みのPETボトルに充填し冷却後、容器詰飲料を得た。
【0030】
塩化ナトリウム:精製塩(日本食塩製造社製)、
炭酸水素ナトリウム:重炭酸ナトリウム(トクヤマ社製)
塩化カリウム:塩化カリウム(多木食品社製)
天然水1:千葉県で採取された天然水(ナトリウム21.7ppm、カリウム3.2ppm、塩化物イオン(Cl-)29.0ppm、シリカ55.6ppm)
天然水2:山口県で採取された天然水(ナトリウム6.7ppm、カリウム1.4ppm、塩化物イオン(Cl-)7.0ppm、シリカ16.0ppm)
【0031】
<試験例1>炭酸ガスボリュームの測定
JAS法に基づく検査方法に準拠し、以下のようにして炭酸ガス量を測定した。試料1~20の各容器詰発泡性飲料(サンプル)を恒温水槽に30分以上入れて静置して20℃に調整した後、サンプルを静かに取り出し、FREE SHAKE V-CARBO(ビクスル社製,型式:DGV-1)を用いてガスボリュームを測定した。結果を表1および表2に示す。
【0032】
<試験例2>ミネラル量の測定
(ナトリウム、カリウム)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性飲料を脱気して、原子吸光分光光度計 「AA240FS」 (Agilent Technologies 社製)にて、ナトリウム、カリウムの含有量を測定した。
(シリカ)
各試料で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性飲料を脱気して、ICP発光分光分析装置( ICP-OES)「Vista-PRO」(Agilent Technologies 社製)にて、ケイ素(Si)の含有量を測定した。
また、シリカ(SiO2)を以下の条件で算出した。
SiO2(mg/L)=Si(mg/L)× 60.1/28.1
(塩化物イオン)
塩化物イオン(Cl-)
各実施例及び比較例で得た飲料(サンプル)容器詰発泡性飲料を脱気して、イオンクロマトグラフ 「ICS-1000」 (Thermo Scientific 社製)にて塩化物イオン(Cl-)の含有量を測定した。
イオンクロマトグラフの分析条件
カラム:IonPac AS22 4×250mm
ガードカラム:IonPac AG22 4×50mm
移動相:4.5mmol/L Na2CO3/1.4mmol/L NaHCO3
流速:1.2mL/min
注入量:25μL
検出器:電気伝導度検出器
【0033】
<試験例3>官能評価
試料1~20の各容器詰発泡性飲料(サンプル)について、官能評価試験を行った。かかる官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された5人のパネラーにより、サンプル30mLを試飲することにより行った。後味および飲み心地の2項目に関し、それぞれ示す対照、保管条件および評価基準にて、4段階にて評価した。評価人数の多かった点数を評点として採用し、評価人数が同数の場合はパネラー間の協議により評点を決定した。また、下記基準にて総合評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0034】
=後味1=
陰性対照1:試料1
陰性対照2:ナトリウム水(無炭酸,後述する試料12)
陽性対照:試料7(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
3点:陰性対照と比べると後味として残る苦みがかなり和らいでいる、かつ、陰性対照2と比べると後味として残る塩味がかなり和らぎ、エグ味などの不快味を感じにくい。陽性対照と同様。
2点:陰性対照と比べると後味として残る苦みが若干和らいでいる、または、陰性対照2と比べると後味として残る塩味が若干和らぎ、エグ味などの不快味を若干感じる。
1点:陰性対照と比べると後味として残る苦みがわずかに和らいでいる、または、陰性対照2と比べると後味として残る塩味がわずかに和らぎ、エグ味などの不快味をやや感じる。
0点:陰性対照と比べると同程度の苦みが後味として残る、または、陰性対照2と比べると同程度の塩味が後味として残る。あるいは、エグ味などの不快味を感じる。
【0035】
=飲み心地1=
陰性対照:試料1
陽性対照:試料7(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
3点:陰性対照と比べると、刺激がかなり和らぎ、心地よさを感じる。陽性対照と同様。
2点:陰性対照と比べると、刺激が若干和らいでいる。
1点:陰性対照と比べると、刺激がわずかに和らいでいる。
0点:陰性対照と比べると、同程度の刺激である。
【0036】
=総合評価1=
評価基準:
◎:後味1と飲み心地1の評点の積が7点以上。
〇:後味1と飲み心地1の評点の積が4点以上。
△:後味1と飲み心地1の評点の積が2点以上。
×:後味1と飲み心地1の評点の積が1点以下。
【0037】
=後味2=
陰性対照:試料12
陽性対照:試料17(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
3点:陰性対照と比べると後味として残る塩味がかなり和らぎ、エグ味などの不快味を感じにくい。陽性対照と同様。
2点:陰性対照と比べると後味として残る塩味が若干和らぎ、エグ味などの不快味を若干感じる。
1点:陰性対照と比べると後味として残る塩味がわずかに和らぎ、エグ味などの不快味をやや感じる。
0点:陰性対照と比べると同程度の塩味が後味として残る。あるいは、エグ味などの不快味を感じる。
【0038】
=飲み心地2=
陰性対照:試料12
陽性対照:試料17(採点前の事前評価により決定)
保管条件:常温・遮光にて7日間保管後に5℃に冷却し、官能評価
評価基準:
3点:陰性対照と比べるとかなりすっきりして飲みやすく、飲用直後に爽快な心地よさを感じる。陽性対照と同様。
2点:陰性対照と比べると飲みやすく、飲用直後に心地よさを感じる。
1点:陰性対照と比べるとやや飲みにくく、飲用直後に心地よさはあまり感じられない。
0点:陰性対照と比べると同程度の飲みにくさであり、心地よさはほとんど感じられない。
【0039】
=総合評価2=
評価基準:
◎:後味2と飲み心地2の評点の積が7点以上。
〇:後味2と飲み心地2の評点の積が4点以上。
△:後味2と飲み心地2の評点の積が2点以上。
×:後味2と飲み心地2の評点の積が1点以下。
【0040】
【0041】
表1に示すように、ナトリウムの含有量や塩化物イオンの含有量が所定範囲にある容器詰発泡性飲料は、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であっても炭酸由来の苦みが後を引くことなく、炭酸の刺激がマイルドになり、心地よい飲み心地の飲料となった。
【0042】
【0043】
表2に示すように、ナトリウムの含有量や塩化物イオンの含有量及びガスボリュームが所定範囲にある容器詰発泡性飲料は、無糖、無甘味かつ無果汁の容器詰発泡性飲料であってもナトリウムや塩化物イオン由来の塩味やエグ味が後を引くことなく、心地よい飲み心地の飲料となった。
本発明の容器詰発泡性飲料は、無糖・無甘味かつ無果汁でありながら、ナトリウムや炭酸由来の後味が抑制され、また飲み心地が向上したものとなる。そのため、本発明は、近年の気候変動により、熱中症を発症する人が増加傾向にある現在において、飲用することでその対策となり得る、嗜好的に好ましい新たな容器詰発泡性飲料を提供するものである。