(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064872
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】錠剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/04 20060101AFI20240507BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20240507BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20240507BHJP
A61J 1/03 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
B65D83/04 H
B65D83/06 N
B65D75/58
A61J1/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173812
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】長島 弘彦
【テーマコード(参考)】
3E067
4C047
【Fターム(参考)】
3E067AA17
3E067AB16
3E067AB81
3E067AB82
3E067AC03
3E067BA01A
3E067BB14A
3E067BC07A
3E067EB17
3E067EB27
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD01
4C047AA05
4C047CC15
4C047DD22
4C047DD32
4C047DD33
4C047DD35
4C047GG23
4C047GG24
(57)【要約】
【課題】 取り出し板を押し込み操作することで容器から錠剤を1錠ずつ取り出すことができる錠剤容器を提供すること。
【解決手段】 錠剤Pを収容する容器本体Aと、容器本体Aの開口を閉塞する中栓Bと、中栓Bを閉蓋する蓋体Cとを備える錠剤容器であって、中栓Bは、錠剤Pを取り出す孔部12が穿設された栓体B1と、上下に弾性変形可能に栓体B1に固定され、先端側を孔部12から容器本体A内に押し込み、錠剤Pを1錠だけ取り出す取り出し板B2と、栓体B1から容器本体A内に連設され、錠剤Pを1錠だけ孔部12の下方に案内する台座B3とを有し、取り出し板B2は、末端側に形成された固定部22と、先端に形成され、錠剤Pを上から押し付け拡径変形させて通過させるリング部20と、リング部20と固定部22との間に形成された押圧部21aとを有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を収容する容器本体と、容器本体の開口を閉塞する中栓と、中栓を閉蓋する蓋体とを備える錠剤容器であって、
中栓は、錠剤を取り出す孔部が穿設された栓体と、上下に弾性変形可能に栓体に固定され、先端側を孔部から容器本体内に押し込み、錠剤を1錠だけ取り出す取り出し板と、栓体から容器本体内に連設され、錠剤を1錠だけ孔部の下方に案内する台座とを有し、
取り出し板は、末端側に形成された固定部と、先端に形成され、錠剤を上から押し付け拡径変形させて通過させるリング部と、リング部と固定部との間に形成された押圧部とを有することを特徴とする錠剤容器。
【請求項2】
栓体の孔部は、リング部に対向する取り出し口と、取り出し口から栓体の中央を通過した所定の位置まで穿設され、取り出し板の押圧部に対向する押し込み口とを有し、
取り出し板は、末端が栓体の外縁からヒンジを介して一体成形されることを特徴とする請求項1に記載の錠剤容器。
【請求項3】
台座は、孔部から垂設され、内側下方に湾曲する湾曲部と、湾曲部の下端に連設され、孔部の下方に皿状に形成される凹皿部と、湾曲部および凹皿部の外縁から外方に向かって傾斜して延びる案内壁とを有することを特徴とする請求項1に記載の錠剤容器。
【請求項4】
リング部は、内側の肉厚が薄くなるように上方に向けて径の小さくなる薄肉変形部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の錠剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平状の錠剤(タブレット)等を収容する錠剤容器に関し、とくに、錠剤を容器から1錠ずつ取り出し可能な錠剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、のど飴などのタブレット状の医薬品、サプリメント、菓子類などの容器として、種々の容器が提案され、例えば、錠剤の場合、包装形態として、PTP(press through pack)シートを紙製の小箱に収容して携行すると、小箱が潰れ、PTPシートが破損して錠剤がこぼれてしまうおそれがあった。
【0003】
この問題を解決するために、容器に複数の大きさの開口と、各開口を開閉する蓋体とを設け、蓋体を開蓋して容器の開口から錠剤を振り出して使用する錠剤容器が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の錠剤容器は、錠剤を少量ずつ振り出す開口では、振り出した時に、複数錠振り出してしまい、1錠ずつ振り出すのが難しいという問題があった。
また、上記錠剤容器では、摘み出し用の大きな開口も用意されているが、1錠のみ必要な場合でも、必要のない錠剤に手指が触ってしまい不衛生であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、取り出し板を押し込み操作することで容器から錠剤を1錠ずつ取り出すことができる錠剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、錠剤容器として、錠剤を収容する容器本体と、容器本体の開口を閉塞する中栓と、中栓を閉蓋する蓋体とを備える錠剤容器であって、中栓は、錠剤を取り出す孔部が穿設された栓体と、上下に弾性変形可能に栓体に固定され、先端側を孔部から容器本体内に押し込み、錠剤を1錠だけ取り出す取り出し板と、栓体から容器本体内に連設され、錠剤を1錠だけ孔部の下方に案内する台座とを有し、取り出し板は、末端側に形成された固定部と、先端に形成され、錠剤を上から押し付け拡径変形させて通過させるリング部と、リング部と固定部との間に形成された押圧部とを有することを特徴とする構成を採用する。
【0008】
錠剤容器の実施形態として、栓体の孔部は、リング部に対向する取り出し口と、取り出し口から栓体の中央を通過した所定の位置まで穿設され、取り出し板の押圧部に対向する押し込み口とを有し、取り出し板は、末端が栓体の外縁からヒンジを介して一体成形されることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
錠剤容器の具体的実施形態として、台座は、孔部から垂設され、内側下方に湾曲する湾曲部と、湾曲部の下端に連設され、孔部の下方に皿状に形成される凹皿部と、湾曲部および凹皿部の外縁から外方に向かって傾斜して延びる案内壁とを有することを特徴とする構成を採用し、また、リング部は、内側の肉厚が薄くなるように上方に向けて径の小さくなる薄肉変形部を有することを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の錠剤容器は、上記構成を採用することにより、中栓を装着した容器本体を台座側に倒した後、正立状態に戻すことにより錠剤を1錠だけ台座に保持し、取り出し板を栓体に対して押し込み操作することによってリング部を錠剤に押し付けて通過させ、錠剤をリング部に載置したまま1錠ずつ取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例である錠剤容器を示す図であり、(a)は閉蓋時の側面断面図、(b)は蓋体取り外し時の上面図である。
【
図2】本発明の実施例である錠剤容器の中栓を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面断面図、(c)は下面図である。
【
図3】本発明の実施例である錠剤容器使用時の状態説明図で、(a)前側に倒した状態、(b)は正立状態に戻した状態、(c)は取り出し板を押し込んだ状態、(c)は取り出し板を復元させた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の錠剤容器について、実施例を示した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、
図1(a)でみて、左方向を「後側」、右方向を「前側」、上方向を「上」、下方向を「下」とする。
【0013】
図1において、Aは錠剤Pを収容する容器本体、Bは容器本体Aの開口を塞ぐ中栓、Cは容器本体Aの開口を中栓Bとともに外側から閉蓋する蓋体である。
本実施例の錠剤容器は、容器本体Aと蓋体Cは、金属や硬材質の合成樹脂によりケースとして保形性を有するもので形成され、中栓Bは、軟材質の合成樹脂により、少なくとも薄肉部が変形可能なもので形成されている。
【0014】
図1に示すように、容器本体Aは、底壁1と、底壁1の外縁から立設される側壁2とから構成され、側壁2の上端内周には、中栓Bを装着する係合突部3が突設されている。
また、側壁2の外周上部には、蓋体Cを開閉可能に装着する装着部4となっている。
【0015】
蓋体Cは、天壁5と、天壁5の外縁から垂設され、内周下部が容器本体Aの装着部4に係合して装着される側周壁6とから構成されている。
本実施例では、容器本体Aおよび蓋体Cは、円筒形状に形成され、容器本体Aの側壁2に形成された装着部4に蓋体Cの側壁2の内周面が係合しているが、互いに乗り越えて係止する突条を設けたり、互いに螺合するねじを螺設して装着するようにしてもよい。
また、容器本体Aに蓋体Cで閉蓋できればよいので、容器本体Aおよび蓋体Cの形状は、円筒形状でなくても嵌合できれば四角形状などの箱形でもよい。
【0016】
図1および
図2に示すように、中栓Bは、容器本体Aの側壁2上端の開口を塞ぐとともに、錠剤Pを取り出す取り出し口12aおよび押し込み口13とからなる孔部12を穿設した栓体B1と、栓体B1に固定され、孔部12を塞ぐとともに、取り出し口12aから錠剤Pを1錠ずつ取り出すための上下に弾性変形可能な薄肉板状の取り出し板B2と、栓体B1下面の取り出し口12aの前側縁に連設され、錠剤Pを1錠ずつ取り出し口12aの下方に案内する台座B3とを備え、栓体B1と取り出し板B2とをヒンジB4を介して連設し、中栓B全体が一体成形されている。
本実施例では、栓体B1と取り出し板B2とをヒンジB4を介して一体成形されているが、栓体B1と取り出し板B2とを別体で成形し、後で取り出し板B2を栓体B1に固定するようにしてもよい。
【0017】
栓体B1は、下面外縁が容器本体Aの側壁2の上端面と当接して、側壁2内を塞ぐように形成される上壁10と、上壁10の下面外縁付近から垂設され、装着時に外周が側壁2の内周の係合突部3と係合し、装着される係合筒部11とを備えている。
【0018】
上壁10には、上壁10の外縁寄り(前側/取り出し方向側)の位置に、錠剤Pの外径よりある程度大きい径に形成された円形の取り出し口12aが穿設され、取り出し口12aの外縁側と反対側(後側)から、取り出し口12aの径より狭く、かつ、錠剤Pの外径より狭い幅αで、上壁10の中央を通過した所定の位置まで穿設された押し込み口13と、押し込み口13の後端から上壁10の外縁端まで上壁10の上面から所定の深さで凹設された装着凹部14とが設けられている。
装着凹部14には、前・後側の2個所にボス孔15が穿設され、外縁端にヒンジB4が連設されている。
【0019】
取り出し板B2は、全体が装着凹部14の深さと同じ厚さの弾性変形可能な薄肉板状に形成され、先端部に、外径が取り出し口12aの径より小さく、内径が錠剤Pの外径より僅かに小さい径でリング状に形成されたリング部20と、リング部20から、幅αより僅かに小さい幅で、上壁10の外縁まで延びる押圧板21とを備えている。
リング部20は、内側の肉厚が薄くなるように、上方に向けて径の小さくなる薄肉変形部20aが形成され、薄肉変形部20aによってリング部20の内方が下から上に変形し易くなっている。
【0020】
押圧板21は、後側端にヒンジB4が連設され、下面の所定の場所に、栓体B1に固定した際に、装着凹部14の前・後側の2個所のボス孔15に挿入され、嵌合する固定部としての2個のボス22が突設されている。
また、押圧板21は、後側が装着凹部14に固定され、装着凹部14より前側は上から下に押圧される押圧部21aとなっている。
【0021】
台座B3は、栓体B1の上壁10の取り出し口12aの前側縁から垂設され、内側下方に湾曲する錠剤Pの外径より少し大きい広さの湾曲部25と、湾曲部25の下端に連設され、取り出し口12aの径とほぼ同じ径で、下に凹んで皿状に形成される凹皿部26と、湾曲部25および凹皿部26の外縁から外方に向かって傾斜して延びる案内壁27とを備えている。
【0022】
次に、本実施例の錠剤容器の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例の錠剤容器は、
図2に示すように、ヒンジB4で連設し、取り出し板B2が栓体B1に対して開いた状態で中栓Bを一体成形する。
開いた状態の中栓Bの取り出し板B2は、ヒンジB4を支点に回動し、取り出し板B2の押圧板21のボス22を栓体B1の装着凹部14のボス孔15に嵌合させて、装着凹部14に押圧板21を固定し、取り出し板B2を栓体B1に屈曲状態でセットした中栓Bとする。
【0023】
容器本体A内に錠剤Pを収容した後、案内壁27の内側に錠剤Pを入れないように容器本体Aの側壁2にセットした中栓Bを被せて中栓Bで容器本体Aの開口を塞ぎ、最後に、容器本体A上部に蓋体Cを被せることで、
図1に示すように、閉蓋した錠剤容器となる。
【0024】
錠剤容器内の錠剤Pを使用する際には、まず、中栓Bを装着した容器本体Aから蓋体Cを外した後、
図3(a)に示すように、容器本体Aを振りながら、台座B3側に傾けて倒した状態にする。
容器本体Aを倒すと、容器本体A内で移動した錠剤Pは、中栓Bの台座B3の案内壁27に当接しながら案内され、湾曲部25の内側に誘導される。
湾曲部25は、錠剤Pの外径より少し大きいくらいの広さがあるので最初に保持された錠剤Pa以外の錠剤Pは、湾曲部25の両側の案内壁27から滑り落ちる。
【0025】
次に、容器を正立状態に戻すと、
図3(b)に示すように、湾曲部25の内側に保持された錠剤Paが湾曲部25内を滑って下方の凹皿部26の上面に案内されて保持される。
また、台座B3内に錠剤Pa以外の錠剤Pが残っていても、凹皿部26の上面に保持された錠剤Pa以外の錠剤Pは、案内壁27から滑り落ち、凹皿部26の上面に錠剤Paが1錠だけ残ることになる。
なお、図示していないが、正立あるいは倒立状態にかかわらず、容器本体Aを振ることで、台座B3側に錠剤Pを誘導して凹皿部26の上面に案内してもよい。
【0026】
次に、中栓Bの取り出し板B2の押圧板21の押圧部21aを、指などで上から押すと、栓体B1の装着凹部14に固定される後側部を支点に押圧部21aが折れ曲がり、押し込み口13内で押されていくとともに、連設された前側のリング部20が取り出し口12a内で下がっていく。
リング部20が下がっていくと、台座B3の凹皿部26の上面に残る錠剤Paの上面にリング部20の下面が当接し、押し込まれていく。
リング部20は、内縁下面が錠剤Paの外縁上面に押し付けられ、薄肉変形部20aによりリング部20が押し広げられて拡径変形しながら下がっていく。最後は、
図3(c)に示すように、リング部20内を錠剤Paが通過し、リング部20の内縁上端に錠剤Paの外縁下面が載置される。
【0027】
押圧部21aの押し込みを解除すると、押圧板21の復元によってリング部20も持ち上がり、
図3(d)に示すように、錠剤Paは、栓体B1の取り出し口12aより上方にリング部20に載置されたままの状態で取り出される。
このようにして、中栓Bの取り出し口12aから出てきた錠剤Paを1錠だけ使用することができる。
【0028】
以上のように、本実施例の錠剤容器は、台座B3側に倒した後、正立状態に戻して台座B3の凹皿部26上に1錠の錠剤Paを保持し、取り出し板B2を栓体B1に対して押し込んだ後、押し込みを解除することで、錠剤Paを栓体B1の取り出し口12aから確実に1錠だけ取り出して使用でき、また、これを繰り返すことで錠剤Pを1錠ずつ取り出して使用できる。
【0029】
本実施例の錠剤容器は、中栓Bの栓体B1の取り出し口12a内にある取り出し板B2のリング部20の内径が錠剤Pの外径より小さいので、取り出し板B2を操作しない限り、錠剤Pが外に出ることはない。
また、容器本体Aに蓋体Cを閉蓋することで容器本体Aを密封することができる。
さらに、本実施例の錠剤容器は、中栓Bが軟材質の合成樹脂で形成されているため、中栓Bを容器本体Aから外し、新しい錠剤Pを容器本体A内に補充した後、再度中栓Bを装着することで、錠剤容器として繰り返して使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の錠剤容器は、中栓を装着した容器本体を台座側に倒した後、正立状態に戻すことにより錠剤を1錠だけ台座に保持し、取り出し板を栓体に対して押し込み操作することによってリング部を錠剤に押し付けて通過させ、錠剤をリング部に載置したまま1錠ずつ取り出すことができ、医薬品、サプリメント、菓子類などの容器として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
A 容器本体
B 中栓
B1 栓体
B2 取り出し板
B3 台座
B4 ヒンジ
C 蓋体
P、Pa 錠剤
α 幅
1 底壁
2 側壁
3 係合突部
4 装着部
5 天壁
6 側周壁
10 上壁
11 係合筒部
12 孔部
12a 取り出し口
13 押し込み口
14 装着凹部
15 ボス孔
20 リング部
20a 薄肉変形部
21 押圧板
21a 押圧部
22 ボス(固定部)
25 湾曲部
26 凹皿部
27 案内壁