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  • 特開-医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064876
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20240507BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173820
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】板橋 優
(72)【発明者】
【氏名】柳川 顕秀
(72)【発明者】
【氏名】生田 祥太郎
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA11
4C086NA20
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】 本開示は、アピキサバンの良好な溶出性を示し、アピキサバンからの類縁物質の発生が抑制された医薬組成物の提供を目的とする。
【解決手段】 本開示の医薬組成物は、アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に60%以下の高さ(体積%)となる領域が存在する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に60%以下の高さ(体積%)となる領域が存在する、
医薬組成物。
【請求項2】
前記第1のピークは、0.1~20μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークであり、かつ、
前記第2のピークは、50~500μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第1のピークの体積%(V1)と前記第2のピークの体積%(V2)との比(V1:V2)は、1:99~91:9である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記アピキサバンの粒子は、D50が1.5~25μmのアピキサバンの粒子とD50が50~400μmのアピキサバン粒子とを、質量比で90:10~50:50含む混合物である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ
前記第2のピークは、前記第1のピークより大きい粒子径範囲に粒子径分布のピークを有し、
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である、
医薬組成物。
【請求項7】
前記第1のピークは、0.1~20μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークであり、かつ、
前記第2のピークは、50~500μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである、
請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記第1のピークの体積%(V1)と前記第2のピークの体積%(V2)との比(V1:V2)は、1:99~91:9である、
請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アピキサバンの粒子は、D50が1.5~25μmのアピキサバンの粒子とD50が150~400μmのアピキサバン粒子とを、質量比で90:10~50:50含む混合物である、請求項6または7に記載の医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的直接作用型第Xa因子(FXa)阻害剤であるアピキサバン(化学名:1-(4-Methoxyphenyl)-7-oxo-6-[4-(2-oxopiperidin-1-yl)phenyl]-4,5,6,7-tetrahydro-1H-pyrazolo[3,4-c]pyridine-3-carboxamide)は、下記式(1)で表され、血液凝固カスケード中のFXaの活性を阻害することにより、トロンビン産生および血栓形成を抑制する。アピキサバンは、弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制等に対する医薬品として、「エリキュース(登録商標)錠2.5mg」、「エリキュース(登録商標)錠5mg」等の名称で販売されている(非特許文献1)。
【化1】
【0003】
アピキサバンは、固形製剤とした際に溶出速度に律速が生じるとの問題がある。上記問題を解決するために、特許文献1では、D90が89μm以下のアピキサバンの結晶形粒子を含む錠剤またはカプセル剤とすることにより、溶出速度を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5846647号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「エリキュース(登録商標)錠2.5mg、エリキュース(登録商標)錠5mg」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、アピキサバンについて、原薬の粒子径を小さくすることにより、アピキサバンの溶出速度の改善を試みた。しかしながら、本発明者らは、アピキサバンの粒子径を小さくすると、アピキサバンからの類縁物質が生成しやすくなるという問題が生じることを見い出した。
【0007】
本開示は、アピキサバンの良好な溶出性を示し、アピキサバンからの類縁物質の発生が抑制された医薬組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本開示の医薬組成物は、アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に60%以下の高さ(体積%)となる領域が存在する。
【0009】
本開示の医薬組成物は、アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ
前記第2のピークは、前記第1のピークより大きい粒子径範囲に粒子径分布のピークを有し、
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、アピキサバンの良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生が抑制された医薬組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示におけるバイモーダル粒子径分布と、前記粒子径分布における第1のピーク、第2のピーク、第1のピークの体積%、および第2のピークの体積%との一例を示す模式図である。
図2A図2Aは、実施例1におけるアピキサバン粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図2B図2Bは、実施例1におけるアピキサバン粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図2C図2Cは、実施例1におけるアピキサバン粒子の粒子径分布を示すグラフである。
図3図3は、実施例1における経時的な溶出率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<医薬組成物>
ある態様において、本開示は、アピキサバンの良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生が抑制された医薬組成物を開示する。本開示の第1の医薬組成物は、前述のように、アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に60%以下の高さ(体積%)となる領域が存在する。
【0013】
本開示の第2の医薬組成物は、アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ
前記第2のピークは、前記第1のピークより大きい粒子径範囲に粒子径分布のピークを有し、
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である。
【0014】
本発明者らは、前述の課題について鋭意研究の結果、小さい粒子径のアピキサバンに、相対的に大きい粒子径のアピキサバンを混合して得られるアピキサバンの混合物では、医薬製剤として十分な溶出性を担保しつつ、小さい粒子径のアピキサバンと比較して、アピキサバンの類縁物質の発生も抑制できることを見出し、本開示を確立するに至った。本開示によれば、異なる粒子径のアピキサバンを含むことにより、アピキサバンの良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生を抑制できる。
【0015】
本開示において、「アピキサバン」は、1-(4-Methoxyphenyl)-7-oxo-6-[4-(2-oxopiperidin-1-yl)phenyl]-4,5,6,7-tetrahydro-1H-pyrazolo[3,4-c]pyridine-3-carboxamide)を意味する。本開示において、アピキサバン含有製剤は、1錠中に、例えば、2.5mgまたは5mgのアピキサバンを含有する。
【0016】
前記アピキサバンは、結晶のアピキサバンを用いてもよいし、非晶性のアピキサバンを用いてもよいし、固体のアピキサバンを用いてもよいが、好ましくは、結晶のアピキサバンである。
【0017】
前記アピキサバンの類縁物質は、前記アピキサバンの分解物ということもできる。
【0018】
本開示において、「バイモーダル粒子径分布」は、粒子径分布において、2つのピークを有する粒子径の分布を意味する。以下、図1に示すように、2つのピークのうち、粒子径が相対的に小さいピークを、第1のピークといい、粒子径が第1のピークより大きいピークを、第2のピークという。
【0019】
本開示において、前記バイモーダル粒子径分布は、例えば、粒子径または粒子径分布が異なる粒子を2つ含む組成物を測定することで得られる。このため、前記バイモーダル粒子径分布は、例えば、2つの異なる粒子径または粒子径分布の粒子を混合することにより得られる。以下、2つの異なる粒子径または粒子径分布の粒子のうち、粒子径または粒子径分布の小さい粒子を、第1の粒子といい、粒子径または粒子径分布が第1の粒子よりも大きい粒子を、第2の粒子という。本開示において、前記第1のピークは、例えば、前記第1の粒子によって生じる。また、本開示において、前記第2のピークは、例えば、前記第2の粒子によって生じる。
【0020】
前記バイモーダル粒子径分布は、例えば、前記第1のピークおよび前記第2のピークの間に、前記第1のピークの高さ(ピークの体積%)および前記第2のピークの高さ(ピークの体積%)と比較して、体積%が低下する粒子径分布の領域を含む。前記領域は、例えば、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下、55%以下、または60%以下の高さ(体積%)である。
【0021】
前記第1のピークは、例えば、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは1~10μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである。前記第1のピークを、例えば、0.1~20μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークとすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの良好な溶出性を得ることができる。また、前記第2のピークは、例えば、好ましくは50~500μm、より好ましくは70~400μm、さらに好ましくは100~300μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである。前記第2のピークを、例えば、50~500μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークとすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの類縁物質の発生抑制効果を得ることができる。
【0022】
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)は、例えば、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは1~10μmである。前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)を、例えば、0.1~20μmとすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの良好な溶出性を得ることができる。また、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)は、例えば、好ましくは50~500μm、より好ましくは70~400μm、さらに好ましくは100~300μmである。前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)を、例えば、50~500μmとすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの類縁物質の発生抑制効果を得ることができる。
【0023】
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、例えば、好ましくは2.5以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。前記T2/T1は、例えば、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは100以下である。前記T2/T1を2.5以上とすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの類縁物質の発生抑制効果を得ることができる。また、前記T2/T1を300以下とすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの良好な溶出性を得ることができる。
【0024】
前記第1のピークの体積%(V1)は、例えば、好ましくは0.3~10体積%、より好ましくは0.5~8体積%、さらに好ましくは1~5体積%である。前記第1のピークの体積%(V1)を、例えば、0.3~10体積%とすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの良好な溶出性を得ることができる。また、前記第2のピークの体積%(V2)は、例えば、好ましくは1~30体積%、より好ましくは2~25体積%、さらに好ましくは3~20体積%、最も好ましくは3~15体積%である。前記第2のピークの体積%(V2)を、例えば、1~30体積%とすることにより、本開示の医薬組成物は、例えば、アピキサバンの類縁物質の発生抑制効果を得ることができる。
【0025】
前記第1のピークの体積%(V1)と前記第2のピークの体積%(V2)との比(V1:V2)は、例えば、好ましくは1:99~91:9であり、より好ましくは2:98~80:20であり、さらに好ましくは5:95~62.5:37.5である。
【0026】
前記アピキサバンの粒子における第1の粒子の粒子径は、特に制限されず、例えば、前記第1の粒子が、アピキサバンの良好な溶出性を示す範囲に設定できる。具体例として、前記第1の粒子の粒子径(D50)は、例えば、好ましくは1.5~25μm、より好ましくは2~20μm、さらに好ましくは2.5~15μm、最も好ましくは3~10μmである。前記第1の粒子の粒子径(D90)は、例えば、好ましくは3~35μm、より好ましくは4~30μm、さらに好ましくは5~25μm、最も好ましくは6~20μmである。
【0027】
前記第1の粒子は、前記D50およびD90のうちいずれか1つの粒子径を満たしてもよいし、両方の粒子径を満たしてもよい。前記第1の粒子が少なくともD50を満たすと、上記所望の粒子径分布を得られやすくなる。
【0028】
前記アピキサバンの粒子における第2の粒子の粒子径は、特に制限されず、例えば、前記第2の粒子が、アピキサバンの類縁物質の生成を抑制できる範囲に設定できる。具体例として、前記第2の粒子の粒子径(D50)は、例えば、好ましくは50~400μm、より好ましくは75~350μm、さらに好ましくは100~300μm、最も好ましくは150~250μmである。前記第2の粒子の粒子径(D90)は、例えば、好ましくは150~600μm、より好ましくは200~550μm、さらに好ましくは250~500μm、最も好ましくは300~400μmである。
【0029】
前記第2の粒子は、前記D50およびD90のうちいずれか1つの粒子径を満たしてもよいし、両方の粒子径を満たしてもよい。前記第2の粒子が少なくともD50を満たすと、上記所望の粒子径分布を得られやすくなる。
【0030】
前記アピキサバンの粒子において、前記粒子径分布と、D50およびD90とは、後述の実施例1(2)を参照して、レーザ回折散乱法(湿式分散法)により測定できる。より具体的には、前記粒子径分布と、D50およびD90とは、以下の測定方法により測定できる。
(レーザ回折散乱法の測定条件)
測定機器:Mastersizer 3000(Malvern社製)
測定セル:HydroMV(容量:約120mL)
溶媒:ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル水溶液(10g→100g)
撹拌回転数:2000rpm
測定方法:
(1)測定セル内に、別途調製したアピキサバンの飽和溶液を入れる。
(2)ついで、測定セル内の測定対象のアピキサバン粒子50mgを加える。
(3)ついで、測定セル内の溶液に対して超音波処理(強度10%、30秒)を実施する。
(4)超音波処理後の溶液を前記測定機器により測定する。
【0031】
本開示において、前記第1のピークおよび前記第2のピーク、ならびに、これらの体積%は、前記アピキサバンの粒子を測定することで得られる粒子径分布から算出できる。
【0032】
前記アピキサバンは、市販のものを購入してもよいし、自家調製してもよい。また、前記アピキサバンが所望の粒度分布または粒子径より小さいアピキサバン粒子もしくは大きいアピキサバン粒子である場合、前記アピキサバンの粒子径は、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられる手段および/またはふるいによる選別により調整してもよい。
【0033】
本開示において、前記医薬組成物におけるアピキサバンの含有量(第1の粒子と第2の粒子の合計量)は、例えば、0.5~40質量%、0.5~30質量%、または1~20質量%であり、好ましくは、0.5~30質量%、または1~20質量%である。
【0034】
前記アピキサバン粒子において、前記第1の粒子と前記第2の粒子との混合比は、特に制限されず、例えば、アピキサバンが良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生が抑制される範囲に設定できる。具体例として、前記第1の粒子の質量(W1)と前記第2の粒子の質量(W2)との質量比(W1:W2)は、例えば、90:10~40:60であり、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは90:10~60:40である。前記第1の粒子のD50が1.5~25μmであり、前記第2の粒子のD50が50~400μmである場合、前記質量比(W1:W2)を、90:10~50:50とすることにより、前記アピキサバン粒子は、アピキサバンの良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生が抑制される。本開示の医薬組成物では、前記アピキサバン粒子における前記第1の粒子および前記第2の粒子が、上記質量比(W1:W2)を満たし、かつ前記第1のピークの体積%および前記第2のピーク体積%が、前記比(V1:V2)を満たすことにより、アピキサバンがより良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生がより抑制される。
【0035】
本開示の医薬組成物の剤型は、例えば、固体状(固体製剤)である。前記剤型は、例えば、錠剤(素錠、コーティング錠、口腔内崩壊錠などを含む)、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等があげられる。
【0036】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容可能な添加剤または薬学的に許容可能な担体(以下、あわせて「添加剤」という。)を含む。具体例として、前記添加剤は、例えば、基剤原料、賦形剤、滑沢剤、着色剤、結合剤、湿潤剤(界面活性剤)、崩壊剤、流動化剤、安定化剤、コーティング剤、甘味剤、香料(着香剤)または矯味剤等の矯味矯臭剤等があげられる。本開示において、前記添加剤の配合量は、前記アピキサバンの機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。
【0037】
前記賦形剤は、例えば、前記造粒顆粒および/または前記製剤に添加する。前記賦形剤は、例えば、乳糖(例えば、無水乳糖または乳糖水和物)、白糖、ブドウ糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール等の糖または糖アルコール;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、αデンプン、デキストリン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン等の有機系賦形剤;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム等の硫酸塩等の無機系賦形剤があげられる。前記賦形剤は、例えば、前記製剤間でのアピキサバンの含有量のばらつきを抑制できることから、好ましくは、糖または糖アルコール誘導体であり、より好ましくは、乳糖水和物である。前記賦形剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0038】
前記滑沢剤は、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;フマル酸ステアリルナトリウム等のフマル酸金属塩;タルク(例えば、日本薬局方適合品);ポリエチレングリコール;シリカ;硬化植物油等があげられ、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。前記潤滑剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0039】
前記着色剤は、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素;食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、β-カロチン、リボフラビン等があげられる。前記着色剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0040】
前記結合剤は、例えば、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、マクロゴール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ビニルピロリドン・酢酸ビニル共重合物、ポリビニルアルコール・アクリル酸メタクリル酸メチル共重合体、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド等があげられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースである。前記結合剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0041】
前記界面活性剤は、例えば、ステアリン酸ポリオキシル40、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム等があげられ、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムである。前記界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0042】
前記崩壊剤は、例えば、水不溶性で水膨潤性のものが好ましく、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、結晶セルロース、粉末セルロース、二酸化ケイ素等があげられる。前記崩壊剤は、例えば、水で単純に膨潤する崩壊剤が好ましく、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、結晶セルロース、粉末セルロース、二酸化ケイ素等が好ましい。前記崩壊剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0043】
前記流動化剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、タルク等があげられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸である。前記流動化剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0044】
前記安定剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾール等のフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸等があげられる。前記安定化剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0045】
前記コーティング剤は、素錠を被覆する成分として公知の各種成分、例えば、ヒプロメロース、乳糖水和物、マクロゴール6000等のマクロゴール、タルク、酸化チタン、トリアセチン等を含む混合物等があげられる。
【0046】
前記甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸二カリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチン等があげられる。前記甘味剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0047】
前記着香剤は、例えば、オレンジ、レモン、ストロベリー、ハッカ、メントール、メントールミクロン、各種香料等があげられる。前記着香剤は、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0048】
前記矯味剤は、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、イノシン酸二ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウム、ハチミツ等があげられる。前記矯味剤は、例えば、1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0049】
本開示において、アピキサバンの「溶出性」は、後述の実施例1(3)の試験に準じて評価できる。
【0050】
本開示において、アピキサバンの「類縁物質の生成」は、後述の実施例1(4)の試験に準じて評価できる。
【0051】
つぎに、本開示の医薬組成物の製造方法について、説明する。ただし、本開示の医薬組成物の製造方法は、以下の例に限定されない。
【0052】
本開示の医薬組成物は、例えば、以下の工程により実施できる。
(a)前記アピキサバンおよび前記賦形剤、任意に、さらに、前記崩壊剤、および/または前記結合剤を高速撹拌造粒機で混合後、前記界面活性剤を含む造粒液を添加して、練合して造粒物を調製する工程;
(b)前記(a)工程で調製した造粒顆粒に、前記賦形剤、前記崩壊剤、および前記滑沢剤を加え混合し、得られた混合物をロータリー式打錠機にて打錠し、錠剤を調製する工程;
(c)前記(b)工程で得られた錠剤に、前記コーティング剤および/または前記滑沢剤、前記着色剤を用いて、前記錠剤をコーティングする工程。
【0053】
本開示の医薬組成物において、前記アピキサバン粒子の粒子径分布における前記第1のピークおよび前記第2のピークは、例えば、それぞれ、前記第1の粒子単独のピークおよび前記第2の粒子単独のピークと略同一となる。そこで、前記(a)工程では、例えば、所望のピークを有する第1の粒子および所望のピークを有する第2の粒子を混合して用いることにより、前記第1のピークと前記第2のピークを含むバイモーダル粒子径分布を有する前記アピキサバン粒子を調整できる。
【0054】
本開示の医薬組成物において、前記アピキサバン粒子における前記第1のピークおよび前記第2のピークは、例えば、それぞれ、前記第1の粒子のピークおよび前記第2の粒子のピークと略同一となる。そこで、前記(a)工程では、例えば、所望のピークを有する第1の粒子および所望のピークを有する第2の粒子を用いることにより、前記粒子径分布において、前記アピキサバン粒子の前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)を調整できる。
【0055】
本開示の医薬組成物において、前記アピキサバン粒子における、前記第1のピークの体積%とおよび前記第2のピークの体積%は、例えば、それぞれ、前記アピキサバン粒子における第1の粒子の割合および前記第2の粒子の割合により調整できる。そこで、前記(a)工程では、例えば、前記第1の粒子および前記第2の粒子の混合割合を調整することにより、前記粒子径分布において、前記アピキサバン粒子における、前記第1のピークの体積%および前記第2のピークの体積%を調整できる。また、前記(a)工程では、例えば、前記第1の粒子および前記第2の粒子の混合割合を調整することにより、前記粒子径分布において、前記アピキサバン粒子における、前記第1のピークの体積%および前記第2のピークの体積%との比(V1/V2)を調整できる。
【実施例0056】
つぎに、本開示の実施例について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例により制限されない。
【0057】
[実施例1]
バイモーダル粒子径分布を示すアピキサバンを含有することにより、アピキサバンの良好な溶出性が得られ、かつアピキサバンの類縁物質の生成を抑制できることを確認した。
【0058】
(1)製剤の調製
前記第1の粒子としては、D50が2.95μm、D90が6.90μmのアピキサバン粒子を準備し、前記第2の粒子としては、D50が225μm、D90が346μmのアピキサバン粒子を準備した。
【0059】
前記第1の粒子および前記第2の粒子を所定質量割合(W1:W2=100:0、85:15、または60:40)で含有するアピキサバン2.5g、乳糖水和物(乳糖水和物 200M、DFE Pharma株式会社)63g、結晶セルロース(セオラスUF-711、旭化成株式会社)35g、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、DuPont株式会社)2.8g、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L(微粉グレード)、日本曹達株式会社)2.10g、を前記高速撹拌造粒機に投入し、混合後に精製水15.8gにラウリル硫酸ナトリウム1.4gを溶解させた造粒液を加え、撹拌造粒した。前記造粒完了後、得られた造粒顆粒92.4gを秤量し、これに、前記結晶セルロース24g、前記クロスカルメロースナトリウム2.4g、およびステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム植物性、太平化学産業株式会社)1.2gを添加して混合した。得られた混合物をロータリー式打錠機(VIRG 0512SS2AZ、株式会社菊水製作所)にて打錠して、錠剤を得た。得られた錠剤20gを秤量し、これに対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC-5R、信越化学工業株式会社)0.56g、タルク(FL-108、富士タルク工業株式会社)0.075g、酸化チタン(FG、石原産業株式会社)0.08g、マクロゴール6000(マクロゴール6000、三洋化成工業株式会社)0.08g、および色素微量を含むフィルムコート液を、錠剤コーティング装置(PRC GTX-mini、株式会社パウレック)を用いてフィルムコートし、フィルムコート錠を得た。
【0060】
(2)粒子径分布
前記第1の粒子および前記第2の粒子を所定質量割合(W1:W2=100:0、85:15、または60:40)で含有するアピキサバン粒子について、前記レーザ回折散乱法(湿式分散法)により測定し、粒子径分布を取得した。前記レーザ回折散乱法における測定条件は、前述の通りとした。この結果を図2A~Cに示す。
【0061】
図2A~Cは、アピキサバン粒子の粒子径分布を示すグラフである。図2A~Cにおいて、横軸は、粒子径を示し、縦軸は、体積(%)を示す。図2Aに示すように、前記第1の粒子のみの場合、1つのピークとなった。また、図2B~Cに示すように、前記第1の粒子および前記第2の粒子の混合物では、バイモーダル粒子径分布となった。各アピキサバン粒子の粒子径分布の測定値を以下に示す。
(W1:W2=100:0)
第1のピークのピークトップ:2.75μm
第1のピークの体積%(V1):8.33体積%
(W1:W2=85:15)
第1のピークのピークトップ(T1):2.83μm
第2のピークのピークトップ(T2):186μm
粒子径比(T2/T1)=65.72
第1のピークの体積%(V1):3.12体積%
第2のピークの体積%(V2):7.67体積%
比(V1:V2)=28.9:71.1
(W1:W2=60:40)
第1のピークのピークトップ(T1):3.12μm
第2のピークのピークトップ(T2):240μm
粒子径比(T2/T1)=76.92
第1のピークの体積%(V1):1.20体積%
第2のピークの体積%(V2):11.92体積%
比(V1:V2)=9.15:90.85
【0062】
(3)溶出試験
溶出試験は、自動6連溶出試験器(富山産業株式会社)を用いて、日本薬局方第2法に従って実施した。試験液は、アピキサバンが溶解しにくい中性領域の溶液に相当するものとして、日本薬局方溶出試験第2液(pH6.8)900mLを用いた。なお、パドルの回転数は50rpmとした。
【0063】
溶出量の測定は、以下の試験条件にて実施した。
(試験条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280 nm)
カラム:内径4.6 mm,長さ25 cmのステンレス管に5 μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲル
を充填する。
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相A:酢酸アンモニウム2.3 gを水に溶かし1000 mLとする。この液に酢酸を加えてpH 4.0に調整する。この液900 mLに液体クロマトグラフィー用アセトニトリル100 mLを加える。
移動相B:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル/水混液(900mL/100mL)
移動相:移動相Aおよび移動相Bの混合比を3:2(体積比)に調整する。
流量:毎分1.0 mL
面積測定範囲:溶媒のピークの後から注入後5分まで
【0064】
溶出試験開始後、5、10、15、20、30、45、60、90および120分後の溶出量から、溶出率を求めた。後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(薬生薬審発0319第1号)の溶出挙動の類似性の判定に則ると、各製剤におけるアピキサバンが15分以内に85%以上溶出する場合、各製剤は、アピキサバンの良好な溶出性を示すと評価できる。この結果を図3に示す。
【0065】
図3は、各製剤の経時的な溶出率の変化を示すグラフである。図3において、横軸は、溶出試験開始からの溶出時間を示し、縦軸は、溶出率を示す。図3に示すように、粒子径の小さい前記第1の粒子のみから調製された製剤と同様に、アピキサバン粒子がバイモーダル粒子径分布を示す製剤(85:15および60:40)では、15分以内に85%以上の溶出率を示し、アピキサバンの良好な溶出性を示した。これらの結果から、バイモーダル粒子径分布を有するアピキサバン粒子を用いても、十分に良好な溶出性を維持できることがわかった。
【0066】
(4)類縁物質の測定試験
前記第1の粒子および前記第2の粒子を所定質量割合(W1:W2=100:0、85:15、または60:40)で含有するアピキサバン混合物について、温湿度苛酷(60℃、75%RH)条件で、3週間保管する苛酷試験に供した。
【0067】
前記保管後、苛酷試験前のサンプルと、苛酷試験後のサンプルとについて、下記類縁物質の試験条件によりアピキサバン以外のピーク面積の合計面積を求めた。また、標準溶液として、前記苛酷試験前のサンプルが含有するアピキサバンと等量のアピキサバンをアセトニトリル/水混液(3:2(体積比))に溶解させ、0.45μmメンブランフィルターで濾過したものを用いて同様に測定した。そして、標準溶液のアピキサバンのピーク面積に対するアピキサバン以外のピーク面積の合計面積の割合を、総質量に占める総類縁物質の質量の割合として算出した。この結果を、下記表1に示す。
【0068】
(類縁物質の試験条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280 nm)
カラム:内径4.6 mm,長さ25 cmのステンレス管に5 μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填。
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相A:酢酸アンモニウム2.3 gを水に溶かし1000 mLとする。この液に酢酸を加えてpH 4.0に調整する。この液950 mLに液体クロマトグラフィー用アセトニトリル50 mLを加える。
移動相B:酢酸アンモニウム2.3 gを水に溶かし1000 mLとする。この液に酢酸を加えてpH 4.0に調整する。この液100 mLに液体クロマトグラフィー用アセトニトリル900 mLを加える。
流量:毎分0.8 mL
面積測定範囲:溶媒のピークの後から注入後70分まで
【0069】
【表1】
【0070】
前記表1は、総質量に占める総類縁物質の質量の割合(%)を示す。前記表1に示すように、アピキサバン粒子がバイモーダル粒子径分布を示す混合物(85:15および60:40)である場合、粒子径の小さい前記第1の粒子のみの場合に比べ、苛酷試験下における類縁物質の生成量が低下した。これらの結果から、バイモーダル粒子径分布を有するアピキサバン粒子を用いることで、アピキサバンの類縁物質の生成を抑制できることがわかった。
【0071】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0072】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ、
前記第1のピークと前記第2のピークとの間に、前記第1のピークおよび前記第2のピークのいずれか低い方のピークの高さ(体積%)を基準に60%以下の高さ(体積%)となる領域が存在する、
医薬組成物。
(付記2)
前記第1のピークは、0.1~20μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークであり、かつ、
前記第2のピークは、50~500μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである、
付記1に記載の医薬組成物。
(付記3)
前記第1のピークの体積%(V1)と前記第2のピークの体積%(V2)との比(V1:V2)は、1:99~91:9である、付記1または2に記載の医薬組成物。
(付記4)
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークトップのピークの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である、付記1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記5)
前記アピキサバンの粒子は、D50が1.5~25μmのアピキサバンの粒子とD50が150~400μmのアピキサバン粒子とを、質量比で90:10~50:50含む混合物である、付記1から4のいずれかに記載の医薬組成物。
(付記6)
アピキサバンおよび薬学的に許容される担体を含み、
前記アピキサバンの粒子は、
レーザー光散乱法により測定された粒子径分布において、第1のピークと、第2のピークとを含むバイモーダル粒子径分布を有し、かつ
前記第2のピークは、前記第1のピークより大きい粒子径範囲に粒子径分布のピークを有し、
前記第1のピークのピークトップの粒子径(T1)と、前記第2のピークのピークトップの粒子径(T2)との粒子径比(T2/T1)は、2.5以上である、
医薬組成物。
(付記7)
前記第1のピークは、0.1~20μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークであり、かつ、
前記第2のピークは、50~500μmの粒子径範囲にピークトップを有するピークである、
付記6に記載の医薬組成物。
(付記8)
前記第1のピークの体積%(V1)と前記第2のピークの体積%(V2)との比(V1:V2)は、1:99~91:9である、
付記6または7に記載の医薬組成物。
(付記9)
前記アピキサバンの粒子は、D50が1.5~25μmのアピキサバンの粒子とD50が150~400μmののアピキサバン粒子とを、質量比で90:10~50:50含む混合物である、付記6から8のいずれかに記載の医薬組成物。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本開示の医薬組成物によれば、アピキサバンの良好な溶出性を示し、かつアピキサバンからの類縁物質の発生が抑制できる。このため、本開示の医薬組成物は、例えば、医薬分野において、極めて有用といえる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3