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特開2024-64880磁石付き弾性部材及びバウンドストッパ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064880
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】磁石付き弾性部材及びバウンドストッパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20240507BHJP
   F16F 15/03 20060101ALI20240507BHJP
   F16F 3/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F16F9/58 B
F16F15/03 D
F16F3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173826
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】牧原 伸征
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AD16
3J048BA24
3J048BB05
3J048BE08
3J048EA16
3J059AA06
3J059BA41
3J059BB08
3J059BC05
3J059BC20
3J059GA02
3J069CC06
(57)【要約】
【課題】今までにはない弾性部材を提供する。
【解決手段】本開示の弾性部材は、第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置される第2磁石と、前記第1磁石と前記第2磁石とを支持すると共に、それらの間隔が変化するように弾性変形する支持体と、を備える磁石付き弾性部材である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁石と、
前記第1磁石と間隔を空けて配置される第2磁石と、
前記第1磁石と前記第2磁石とを支持すると共に、それらの間隔が変化するように弾性変形する支持体と、を備える磁石付き弾性部材。
【請求項2】
前記支持体は、樹脂製で柱状又は筒状をなしている請求項1に記載の磁石付き弾性部材。
【請求項3】
前記第1磁石と前記第2磁石は、リング状をなし、前記支持体の外周面に取り付けられている請求項2に記載の磁石付き弾性部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の磁石付き弾性部材を備えるバウンドストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外力を受けて弾性変形する弾性部材として、様々なものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6435741号(段落[0021]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、今までにはない弾性部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、第1磁石と、前記第1磁石と間隔を空けて配置される第2磁石と、前記第1磁石と前記第2磁石とを支持すると共に、それらの間隔が変化するように弾性変形する支持体と、を備える磁石付き弾性部材である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の第1実施形態に係る車両のサスペンションに取り付けられた状態の磁石付き弾性部材の断面図
図2】第1磁石と第2磁石が異極対向配置された場合の(A)圧縮変形前の磁石付き弾性部材の断面図、(B)圧縮変形しているときの磁石付き弾性部材の断面図
図3】第1磁石と第2磁石が同極対向配置された場合の(A)圧縮変形前の磁石付き弾性部材の断面図、(B)圧縮変形しているときの磁石付き弾性部材の断面図
図4】第1実施形態の他の例に係る磁石付き弾性部材の断面図
図5】第2実施形態に係る磁石付き弾性部材の断面図
図6】他の実施形態に係る磁石付き弾性部材の断面図
図7】試験サンプルの断面図
図8】試験装置の概念図
図9】確認実験における周波数とtanδの関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1には、本開示の第1実施形態に係る磁石付き弾性部材20が示されている。図1及び図2に示すように、本実施形態の例では、磁石付き弾性部材20は、車両60のサスペンション61に組付けられ、バウンドストッパとして使用される。
【0008】
車両60のサスペンション61は、図1に示すように、ショックアブソーバ62とサスペンションばね63を有する。サスペンションばね63は、ショックアブソーバ62のシリンダ65から外側に張り出した環状突部65Tと車体60Bとの間に挟まれている。そして、磁石付き弾性部材20は、サスペンションばね63の内側で、ショックアブソーバ62のピストンロッド64に嵌合されている。そして、磁石付き弾性部材20(詳細には後述の支持体22)は、ショックアブソーバ62が縮むと、シリンダ65と車体60Bとの間で圧縮変形し、車両60のバウンドを抑える役割を果たす。
【0009】
なお、本実施形態では、車両60として自動車を例示するが、例えば、二輪車や電車等の車両サスペンションに適用してもよい。また、自動車としては、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の電動車両が挙げられる。
【0010】
磁石付き弾性部材20は、磁石21と、磁石21を支持する支持体22とを有する。本実施形態の例では、磁石21として、第1磁石21Aと第2磁石21Bが互いに間隔を空けて配置され、支持体22は、第1磁石21Aと第2磁石21Bとの間隔が変化するように弾性変形する(図2参照)。本実施形態の例では、支持体22は、円筒状をなしていて、磁石21は、支持体22の外周面に取り付けられている。なお、本実施形態の例では、支持体22の上端面は、車体60Bに固定されている(例えば接着剤等で固定されている)。また、支持体22の下端面は、例えば、シリンダ65に固定されていてもよいし(例えば接着剤等で固定されていてもよいし)、支持体22が自然長状態のときにはシリンダ65と離れていて、支持体22が圧縮されたときにシリンダ65と接するように配置されていてもよい。
【0011】
なお、支持体22は、断面円形に限らず、例えば、断面多角形であってもよい。また、支持体22は、軸方向に断面が均一になった形状に限られず、例えば、軸方向の一方に向かって細くなっていく形状であってもよい。磁石付き弾性部材20がバンプストッパに用いられる場合、支持体22は、例えば円筒状や円柱状等のように中心軸を有する形状になっていることが好ましい。
【0012】
本実施形態では、支持体22は、樹脂製であり、例えば、発泡エラストマーからなる。本実施形態の例では、支持体22は、ポリウレタンエラストマーの発泡体であり、例えば、連続気泡構造又は半連続気泡構造になっているが、支持体22は、ゴムの発泡体や、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の発泡体等であってもよい。また、支持体22は、全体が連続気泡構造又は半連続気泡構造であることが成形性や弾性変形容易性の観点から好ましいが、連続気泡構造又は半連続気泡構造となる部分は一部であってもよい。また、支持体22は、少なくとも部分的に連続気泡構造を備えることで、成形後に支持体22が縮む(いわゆる、シュリンクする)ことを抑制することができる。支持体22の発泡倍率は、1.4~6倍であることが好ましく、1.7~5倍であることがより好ましく、2~4倍であることが更に好ましい。ここで、支持体22の発泡倍率が1.4倍以上であることで、クッション性が特に良好となり、発泡倍率が6倍以下であることで、成形性と耐久性が特に良好となる。
【0013】
なお、支持体22は、JIS K 6262:2013 A法に準拠した圧縮永久ひずみが、30%以下であることが好ましい。また、支持体22は、1Hzで10万回50%圧縮を繰返した場合の繰返し圧縮ひずみが、20%以下であることが好ましい。これらの構成によれば、支持体22を弾性変形させた後の復元が良好である。
【0014】
本実施形態では、磁石21は、リング状になっていて、具体的には、剛体リングである。そして、第1磁石21Aと第2磁石21Bが、それぞれ支持体22の軸方向の一端側(本実施形態の例では上端側)と他端側(本実施形態の例では下端側)とに離されている。本実施形態では、第1磁石21Aが、支持体22の上端部に取り付けられて車体60Bに固定されると共に、第2磁石21Bが、支持体22の下端寄り位置に取り付けられる。第2磁石21Bは、支持体22の下端と面一に配置されると、シリンダ65に当接して破損し易くなることが考えられるが、支持体22の下端から離れて配置されるので、シリンダ65と当接することが抑制される。なお、第1磁石21Aと第2磁石21Bは、支持体22の外周面に形成された環状凹部22Kに嵌め込まれる。
【0015】
上述のように、本実施形態の磁石付き弾性部材20がシリンダ65と車体60Bとの間にセットされ、この間隔が変化すると、図2に示すように、支持体22が軸方向で伸縮される。本実施形態の磁石付き弾性部材20は、磁石21が支持体22に支持されているので、支持体22の伸縮によって磁石21同士の間隔も変化する。
【0016】
ここで、支持体22に支持される磁石21同士は、互いに引き合うように、異極同士が対向する異極対向配置(それらのN極とS極とが対向する配置)になっていてもよいし、互いに反発し合うように、同極同士が対向する同極対向配置(互いにN極同士又はS極同士が対向する配置)になっていてもよい。
【0017】
図2(A)及び図2(B)に示すように、異極対向配置では、磁石21同士が引き合うので、同極対向配置よりも、支持体22を軸方向に圧縮し易くすることが可能となる。これにより、磁石付き弾性部材20がバウンドストッパに用いられる場合等に、路面の凹凸による振動に対し、磁石21間の引力によって粘性の向上を図ることが可能となり、乗り心地の向上も期待できる。
【0018】
一方、図3(A)及び図3(B)に示すように、同極対向配置では、支持体22が軸方向に圧縮されたときに、磁石21同士が反発し合うので、異極対向配置よりも支持体22が軸方向に圧縮し難くなり、例えば、支持体22の座屈を抑制可能となる。これにより、磁石付き弾性部材20がバウンドストッパに用いられる場合等に、圧縮時のバウンドストッパ等(磁石付き弾性部材20)のいわゆる底付きを抑制可能となる。また、支持体22の圧縮率を低減させ、路面の凹凸による衝撃の緩和を図ることが可能となる。
【0019】
このように、第1磁石21Aと第2磁石21Bを、異極対向配置と同極対向配置の何れを採用するかにより、同じ支持体22を用いていても磁石付き弾性部材20(支持体22)の変形し易さ(粘弾性)を変更することが可能となる。その結果、同じ支持体22を用いても、車両60の使用者の好みに応じた乗り心地を実現することも可能となる。
【0020】
磁石21を永久磁石で構成する場合、磁石21は、例えばその軸方向に着磁されている。また、例えば、磁石21は、永久磁石化した際に強い磁力を有するネオジム系磁石からなることが好ましいが、ネオジム系磁石に限定されるものではなく、サマリウム系磁石、アルニコ系磁石、フェライト系磁石等の公知の磁石であってもよい。
【0021】
ここで、図1に示す例のように、伸縮される支持体22の一端部(例えば上端部)が支持部材(例えば車体60B)に固定される構成において、第1磁石21Aと第2磁石21Bのうち一方の磁石(例えば第1磁石21A)を、上記支持部材に固定してもよい。例えば、この構成では、第1磁石21Aを、電磁石として、その磁力の強さを変更可能に構成すれば、磁石21同士の引力や反発力を調整することができる。これにより、例えば、支持体22の圧縮量が大きくなる状況(例えば、車両60の振動の振幅が大きくなる状況等)では、磁石21同士の反発力を通常よりも大きくして、支持体22の座屈(底付き)をより抑制することが可能となる。なお、第1磁石21Aを電磁石とする場合、例えば、第1磁石21Aを取り巻くコイルを設け、そのコイルに電流を流す構成が考えられる。そして、そのコイルに流す電流の向きや大きさを調整することで、第1磁石21Aの磁力の向きや大きさを調整し(例えば、異極対向配置と同極対向配置を切り替える等して)、磁石21同士の引力や反発力を調整することができる。これにより、車両60の使用者の好みに応じた乗り心地を実現することも可能となる。なお、図4に示すように、第1磁石21Aは、支持体22の上端から下方に離して配置してもよい(例えば支持体22の上端寄りの位置に配置してもよい)。
【0022】
また、本実施形態では、磁石21を剛体リングとしたので、支持体22の圧縮時の座屈を抑制することが可能となる。
【0023】
このように本実施形態の磁石付き弾性部材20は、磁石21が弾性樹脂製の支持体22に支持されるという従来にはない構成を有することで、従来の弾性部材では発揮できない効果を奏することができる。
【0024】
また、本実施形態では、支持体22が発泡エラストマーで形成されているので、軸方向で圧縮されると発泡エラストマーの気泡が潰れ、伸びると気泡が膨らみ、径方向のサイズの変化を抑えられた状態で伸縮する。また、非発泡のエラストマーを含む一般的な樹脂や金属等の弾性体で支持体を形成した場合に比べて、大きなストロークで伸縮させることができる。また、支持体22が軽量で且つ破損し難くいので、取り扱いが容易である。また、磁石付き弾性部材20では、支持体22が弾性樹脂製であるので、カットでき、支持体22の形状の自由度が高い。
【0025】
なお、支持体22のうち、磁石21が嵌合される部分以外に、環状溝部20Kが形成されていてもよい(図6参照)。このように、支持体22の外周面に環状溝部20Kが設けられることで、支持体22を伸縮し易くすることが可能となると共に、圧縮時の支持体22の径方向への膨らみを抑制可能となる。環状溝部20Kは、支持体22の軸方向で等間隔に配置されていてもよいし、局所的に配置されていてもよい。
【0026】
なお、本実施形態の磁石付き弾性部材20は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、支持体22が製造される。具体的には、ポリオールとイソシアネートを混合してプレポリマー化した第1液を用意する。ここで、第1液は、イソシアネート基(NCO)を末端に有するプレポリマーである。また、触媒、発泡剤等を含む第2液を用意する。その後、第1液と第2液とを混合し、その混合液を得る。ここで、イソシアネート基を末端に有するプレポリマーのNCO%は、3~7%とすることが好ましく、本実施形態では、6%とした。これにより、成形性や耐久性に優れた支持体22を得ることが可能となる。
【0027】
次に、上記混合液を、あらかじめ温調された成形型に注入して発泡硬化させ、前述した円筒状の支持体22を形成する。なお、上記混合液の成形型での発泡硬化工程では、閉型状態で所定時間キュア(一次キュア)を行った後、得られた発泡成形体を成形型から取り出す。一次キュアは、例えば60~120℃で10~120分間、行われる。一次キュアを行って成形型から取り出された発泡成形体については、さらに二次キュアを行うことが好ましく、二次キュアは、例えば90~180℃で8~24時間、行われる。これにより、支持体22が得られる。
【0028】
上述の如く製造された支持体22に、軸方向の端から磁石21を組み付けて磁石付き弾性部材20が得られる。
【0029】
なお、支持体22に磁石21を組付ける前又は組付けた後に、磁石21を支持体22が圧縮される方向(即ち、磁石21の軸方向)に再着磁してもよい。
【0030】
[第2実施形態]
第2実施形態の磁石付き弾性部材20は、図5に示されており、建物や乗り物の床構造71に組み込まれている。具体的には、この床構造71は、土台72の上に床パネル73が敷かれた構造となっていて、土台72と床パネル73の間には、複数の緩衝材78が敷き詰められている。床パネル73に荷重がかかると、緩衝材78が弾性変形する。そして、本実施形態では、複数の緩衝材78の1つ又は一部複数が、磁石付き弾性部材20になっている。本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、例えば、磁石21は剛体リングであってもよく、例えば柱状又は筒状の支持体22に、軸方向で離されて固定される。例えば、第1磁石21Aを、第2磁石21Bより下側に配置して(例えば支持体22の下端部に固定して)、土台72に固定してもよい。この場合、第1磁石21Aは、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。
【0031】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、支持体22の成形後に磁石21を支持体22の一端部から嵌め込んでいたが、磁石21をインサート成形にて支持体22に取り付ける構成であってもよい。また、インサート成形にて磁石21を取り付ける場合には、磁石21を支持体22の外側面に取り付けてもよいし、支持体22の内部に磁石21を内蔵させる構成としてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態の磁石付き弾性部材20では、磁石21として剛体リングを例示したが、例えば、シート状の磁石21を接着剤にて支持体22の外側面に貼り付ける構成であってもよい。また、磁石付き弾性部材20は、磁石21同士で(例えば、磁性体粉末を含有した弾性樹脂からなる磁石21同士で)、支持体22を挟んだ構成であってもよい。
【0033】
(3)磁石付き弾性部材20の磁石21は、リング状に限らず、例えば、円盤状であってもよい。例えば、図6に示すように、円筒状の支持体22の中心孔22Hの両端部に拡径された凹部22Uを設け、その両端部の凹部22Uにそれぞれ磁石21を受容させて固定してもよい。磁石付き弾性部材20は、第1磁石21Aと第2磁石21Bを間隔を空けて配置し、支持体22の弾性変形により第1磁石21Aと第2磁石21Bとの間隔が変化する構成であればよく、磁石21の形状や支持体22の形状は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、支持体22が、引っ張られる弾性変形や、曲がる弾性変形や、捻じられる弾性変形をした場合に、第1磁石21Aと第2磁石21Bとの間隔が変化するものであってもよい。また、磁石付き弾性部材20は、バウンドストッパや緩衝材78以外に用いられてもよい。
【0034】
(4)上記実施形態では、磁石付き弾性部材20の原料のイソシアネートとして1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)を用いたが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いてもよい。
【0035】
(5)上記実施形態では、支持体22が、樹脂製であったが、金属製であってもよく、例えば、コイルばねであってもよい。この場合、コイルばねの両端に第1磁石と第2磁石を取り付けて、それら磁石の間隔が変化するようにコイルばねが弾性変形するように磁石付き弾性部材が構成されていてもよい。
【0036】
(6)上記実施形態では、バウンドストッパが、磁石付き弾性部材20で形成されていたが、バウンドストッパが、磁石付き弾性部材20を一部に備えていてもよい。この場合、磁石付き弾性部材20が、例えば、バウンドストッパの軸方向の一部を構成していてもよい。
【0037】
(7)上記実施形態では、第1磁石21Aと第2磁石21Bの2つの磁石が設けられていたが、3個以上の磁石21が互いに間隔を空けて配置されていてもよい。
【0038】
(8)上記実施形態において、一方の磁石21(例えば第1磁石21A)を、磁石ではない磁性部材(例えば、磁石と引き合う鉄等の金属)で構成してもよい。
【0039】
[確認実験]
磁石付き弾性部材20(支持体22)の粘弾性(具体的にはtanδ)を算出した。
【0040】
I.磁石付き弾性部材20の構成
磁石付き弾性部材20は、軸方向が上下方向となるように配置され、軸方向の一端側から(下方から)圧縮することで磁石付き弾性部材20を弾性変形させた。磁石付き弾性部材20は、ネオジム系磁石のリング状の磁石21をポリウレタンの発泡エラストマー製の支持体22の外側面の環状溝部20Kに嵌合したものを用いた(図7参照)。
【0041】
磁石付き弾性部材20として、第1磁石21Aと第2磁石21Bを、異極対向配置したものを実施例1、同極対向配置したものを実施例2とした。また、磁石21を設けていない支持体22のみのものを、比較例1とした。
【0042】
(1)支持体22について
支持体22は、図7に示すように、円柱状であり、外径は25mm、軸長は30mmである。また、支持体22としては、連続気泡構造であり、見掛け密度が0.2g/cmであるものを用いた。なお、支持体22の原料は、以下の通りである。
【0043】
[第1液]
ポリオール;ポリエステルポリオール(分子量:2000、官能基数:2、水酸基価:56mgKOH/g、品名:「ポリライト OD-X-102」、DIC社製
イソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート(NCO%:40%、品名:「コスモネートND」、三井化学株式会社製)
[第2液]
触媒;アミン触媒、品名:「Addocat PP」、ラインケミージャパン社製
発泡剤; ヒマシ油と水を含む混合液、品番:「アドベードSV」(ヒマシ油と水の重量比50:50)、ラインケミージャパン社製
【0044】
(2)磁石21について
各磁石21は、リング状になっていて(内径20mm、軸長6mm、径方向の厚み3mm)、支持体22の外側面の2つの環状凹部22K(支持体22の両端寄り位置に設けられ、両端からは離れている。)に嵌合されて取り付けられている。2つの磁石21(第1磁石21A、第2磁石21B)は、支持体22の軸方向で対称に配置され、それら磁石21同士は、15mm離れている。また、表面磁束密度は20mTであり、その着磁方向は支持体22の軸方向に沿った方向となっている。
【0045】
III.試験方法
図8に示す試験装置40により、複数の周波数について、磁石付き弾性部材20(支持体22)の軸方向で圧縮と復元を繰り返すように磁石付き弾性部材20を振動変形させた(振幅は、5mmとした)。
【0046】
試験装置40の詳細は、以下のようになっている。試験装置40は、磁石付き弾性部材20をその軸方向で挟むピストン41と固定部材42とを有する。ピストン41は、駆動源43からの動力を受けて磁石付き弾性部材20の軸方向に振動し、磁石付き弾性部材20を振動変形させる。固定部材42とピストン41の間隔は、ピストン41が振動のストロークにおいて最も固定部材42から遠ざかったときに、磁石付き弾性部材20の自然長と同じになるように設定されている。即ち、本実験では、固定部材42とピストン41が、磁石付き弾性部材20に常に接する。
【0047】
また、試験装置40には、ピストン41の振動を検出するためのレーザー変位計45が設けられている。レーザー変位計45からは、ピストン41の振幅や周波数等に関する信号がアンプユニット46を介してオシロスコープ44に出力され、オシロスコープ44でピストン41の振動の振幅や周波数を確認できるようになっている。固定部材42には、ロードセルが備えられ、ロードセルが受ける荷重と、ピストン41の変位とから、磁石付き弾性部材20(支持体22)の粘弾性(具体的にはtanδ)を算出した。
【0048】
IV.試験結果
図9に示すように、第1磁石21Aと第2磁石21Bを有する磁石付き弾性部材20によれば、磁石21の無い従来の弾性部材とは全く異なる粘弾性(tanδ)を示すことがわかった。第1磁石21Aと第2磁石21Bが同極対向配置の場合、異極対向配置の場合よりも、tanδが小さくなることがわかった。これは、同極対向配置では、異極対向配置よりも、第1磁石21Aと第2磁石21Bの反発力により、磁石付き弾性部材20(支持体22)が圧縮し難くなり、弾性が向上するためと考えられる。
【0049】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。下記特徴群は、弾性部材に関し、「従来から、外力を受けて弾性変形する弾性部材として、様々なものが開発されている(例えば、特許第6435741号(段落[0021]、図1等)参照)。」という背景技術について、「今までにはない弾性部材を提供する。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来から、今までにない弾性部材や、今までにないバウンドストッパ、今までにない複合材が求められている。
【0050】
[特徴1]
第1磁石と、
前記第1磁石と間隔を空けて配置される磁性部材と、
前記第1磁石と前記磁性部材とを支持すると共に、それらの間隔が変化するように弾性変形する支持体と、を備える磁石付き弾性部材。
【0051】
[特徴2]
前記磁性部材としての第2磁石を備える磁石付き弾性部材。
【0052】
[特徴3]
第1磁石と、
前記第1磁石と間隔を空けて配置される第2磁石と、
前記第1磁石と前記第2磁石とを支持すると共に、それらの間隔が変化するように弾性変形する支持体と、を備える磁石付き弾性部材。
【0053】
特徴1~3によれば、今までにない弾性部材が提供可能である。例えば、第1磁石と磁性部材の間の引力、又は、第1磁石と第2磁石の間の引力もしくは反発力、を利用することで、同じ支持体を備える弾性部材で変形し易さを異ならせることが可能となる。
【0054】
[特徴4]
前記第2磁石は、永久磁石であり、
前記第1磁石は、電磁石である特徴2又は3に記載の磁石付き弾性部材。
【0055】
特徴4では、第1磁石を電磁石とすることで、第2磁石との間の磁力を変更することが可能となり、磁石付き弾性部材の変形し易さを変更することが可能となる。例えば、磁石付き弾性部材を車両等のバウンドストッパに用いる場合には、バウンドストッパのクッション性等を変更可能となる。
【0056】
[特徴5]
前記第1磁石と前記第2磁石は、永久磁石である特徴2又は3に記載の磁石付き弾性部材。
【0057】
特徴5では、第2磁石が電磁石である場合よりも、磁石付き弾性部材を簡易な構成とすることが可能となる。
【0058】
[特徴6]
前記第1磁石と前記第2磁石は、異極同士が対向するように配置されている特徴5に記載の磁石付き弾性部材。
【0059】
特徴6によれば、第1磁石と第2磁石の反発力を利用することで、支持体を圧縮し難くすることが可能となる。
【0060】
[特徴7]
前記第1磁石と前記第2磁石は、同極同士が対向するように配置されている特徴5に記載の磁石付き弾性部材。
【0061】
特徴7によれば、第1磁石と第2磁石の引力を利用することで、支持体を圧縮し易くすることが可能となる。
【0062】
[特徴8]
前記支持体は、樹脂製で柱状又は筒状をなしている特徴1から7の何れか1の特徴に記載の磁石付き弾性部材。
【0063】
[特徴9]
前記第1磁石と前記第2磁石は、前記支持体の軸方向で間隔を空けて配置されている特徴8に記載の磁石付き弾性部材。
【0064】
[特徴10]
前記第1磁石と前記第2磁石は、リング状をなし、前記支持体の外周面に取り付けられている特徴8又は9に記載の磁石付き弾性部材。
【0065】
[特徴11]
特徴7から10の何れか1の特徴に記載の磁石付き弾性部材を備えるバウンドストッパ。
【0066】
[特徴12]
前記第1磁石と前記第2磁石が、前記バウンドストッパの圧縮方向で間隔を空けて配置されている特徴11に記載のバウンドストッパ。
【0067】
特徴12によれば、第1磁石と第2磁石の引力又は反発力により、同じ支持体を備えるバウンドストッパでも圧縮し易さを変更することが可能となる。
【0068】
[特徴13]
第1磁石と、
第2磁石と、
前記第1磁石と前記第2磁石の間に配置される弾性体と、を備える複合材。
【0069】
特徴13によれば、今までにない複合材が提供可能である。
【0070】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0071】
20 磁石付き弾性部材
21 磁石
21A 第1磁石
21B 第2磁石
22 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9