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特開2024-64885アスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置
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  • 特開-アスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064885
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/10 20180101AFI20240507BHJP
   A01G 7/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A01G22/10
A01G7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173833
(22)【出願日】2022-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000180368
【氏名又は名称】四国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 りか
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬司
(57)【要約】
【課題】 アスパラガスの若茎の生産量と市場価値の向上を図ることができるアスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置を提供する。
【解決手段】 土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させ、さらに若茎に含まれるルチンの量を増加させる。これにより、アスパラガスの若茎の生産量と市場価値の向上を図ることができる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させることを特徴とするアスパラガスの若茎の生産方法。
【請求項2】
土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量を増加させることを特徴とするアスパラガスの若茎の生産方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアスパラガスの若茎の生産方法を実施するための装置であって、
土壌中に互いに所定距離を隔てて配置される対をなす電極と、
該両電極の間の土壌に所定の大きさの電流を所定時間安定して流すために、両電極に対する電気の供給量を制御する電流制御手段と、
を備えるアスパラガスの若茎の生産装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させ、また、アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量を増加させるアスパラガスの若茎の生産方法と生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の植物を栽培する土壌に電流を流すことで、これらの植物の成長を促進する技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1には、アスパラガスの成長促進に関する記載はなく、また、植物に含まれる特定の物質の量の増加促進に関する記載もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-278796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させることで、アスパラガスの若茎の収穫量を増やすことができ、また、アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量を増加させることで、アスパラガスの若茎の市場価値を高めることができるアスパラガスの若茎の生産方法を提供することを課題とする。
さらに、そのアスパラガスの若茎の生産方法を効率的に実施することができる生産装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の手段により解決された。
[1] 土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して、上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させることを特徴とするアスパラガスの若茎の生産方法。
【0007】
[2] 土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して、上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量を増加させることを特徴とするアスパラガスの若茎の生産方法。
【0008】
[3] 上記[1]又は[2]に記載のアスパラガスの若茎の生産方法を実施するための装置であって、土壌中に互いに所定距離を隔てて配置される対をなす電極と、該両電極の間の土壌に所定の大きさの電流を所定時間安定して流すために、両電極に対する電気の供給量を制御する電流制御手段と、を備えるアスパラガスの若茎の生産装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明における上記[1]に記載のアスパラガスの若茎の生産方法によれば、土壌中に対をなす電極を互いに所定距離を隔てて配置し、両電極間の上記土壌に0.1~10mAの電流を流して上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させて、アスパラガスの若茎の収穫量を増やすことができる。
【0010】
また、本発明における上記[2]に記載のアスパラガスの若茎の生産方法によれば、上記[1]と同様に、上記土壌に0.1~10mAの電流を流して上記土壌に植えたアスパラガスを栽培することによって、該アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量を増加させて、アスパラガスの若茎の市場価値を高めることができる。
【0011】
さらに、本発明における上記[3]に記載のアスパラガスの若茎の生産装置によれば、土壌中に互いに所定距離を隔てて配置される対をなす電極と、該両電極の間の土壌に所定の大きさの電流を所定時間安定して流すために、両電極に対する電気の供給量を制御する電流制御手段とを備えるため、アスパラガスを栽培する土壌の温度・湿度や土壌を構成する各種成分にかかわらず、所定の大きさの電流を、任意に設定した所定時間、電流の大きさの変動を小さく安定した状態で流すことができる。したがって、アスパラガスの若茎を生産する者が、常に電流の大きさの変動を監視したり、電流の大きさを頻繁に調節したりする必要がないため、アスパラガスの若茎の生産を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアスパラガスの若茎の生産装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置の実施形態を説明する。なお、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
また、本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本発明のアスパラガスの若茎の生産方法は、本発明者らが、アスパラガスを栽培する際に土壌に微弱電流を流すことによって、アスパラガスの若茎の萌芽数が増加すること、さらに、アスパラガスの若茎に含まれるルチンの量が増加することを見出したことによって完成したものである。
【0015】
アスパラガスはユリ科の多年生植物で、主にその若茎が食用に供されている。いわゆる「グリーンアスパラガス」の商品名で呼ばれる若茎は、日光に当てながら栽培した若茎であり、「ホワイトアスパラガス」の商品名で呼ばれる若茎は、日光に当てずに栽培した若茎であり、本発明はこれらの両方に適用されるものである。
【0016】
アスパラガスの若茎は、栽培される地域の気候によって収穫時期が異なるが、例えば、香川県では毎年2~10月にかけて収穫することができる。
アスパラガスの若茎は、一般に、栽培2年目以降の株で毎年1株につき50~100本程度萌芽するが、本発明のアスパラガスの若茎の生産方法によれば、その萌芽数を増加させて収穫量を増やすことができる。
【0017】
アスパラガスの若茎には、ポリフェノールの一種であるルチンが含まれている。ルチンは、人体内で抗酸化物質として活性酸素の発生や働きを阻害したり、活性酸素を取り除いたりする作用があるとされており、近年注目を集めている機能性栄養素である。
本発明のアスパラガスの若茎の生産方法によれば、若茎に含まれるルチンの量を大幅に増やすことができるため、アスパラガスの若茎の市場価値を高めることができ、アスパラガスの若茎の販売量の増加や販売価格の上昇が期待できる。
【0018】
図1は、本発明のアスパラガスの若茎の生産装置の模式図である。この図1に示すように生産装置1は、例えば長方形箱状の容器2を備えており、容器2内には、アスパラガスの栽培に適した一般的な土壌Sを容器2の上縁近くの深さまで収容してある。
【0019】
容器2内には、炭素材からなる円柱状の2本の電極3a,3bが、容器2の幅方向へ所定距離を隔てて、電極3a,3bの下部を土壌Sに差し込むように配置してあり、上部が土壌Sの表面から突出するようにしてある。これら両電極3a,3bの土壌Sに差し込まれた部分が、両電極3a,3bの有効部分である。
なお、電極3a,3bは、炭素材のほかに、各種の金属材や導電性樹脂材など、種々の導電性材料を用いることができる。また、電極3a,3bの形態は円柱状に限られず、任意の形態、例えば平板状やネット状などを採用することができる。
【0020】
土壌Sの両電極3a,3b間の部分には、複数本のアスパラガスが略直線状に略等間隔で定植され栽培されている。
電極3a,3bには、電流制御装置4(特許請求の範囲における「電流制御手段」に該当する。)から電線5a,5bを介して電気が供給される。本実施形態においては、土壌Sの両電極3a,3b間の部分に、1mAの直流電流が一日中継続して安定的に流れるように、電流制御装置4によって両電極3a,3bへの電気の供給量が制御されている。なお、土壌Sに流す電流は、直流電流に限られず交流電流であっても差し支えない。
【0021】
電流制御装置4は、土壌Sの両電極3a,3b間の部分に流す電流の大きさを任意に設定することができ、また、一日間における通電時間帯を任意に設定することができる。
また、電流制御装置4に対しては、電線5cを介して図示しない外部電源から電気が供給されるが、その外部電源は、一般の商用電源(交流100V又は200V)のみならず、太陽電池や風力発電機などの自然エネルギー電源や蓄電池であってもよい。
【0022】
本実施形態においては、一つの容器2に対して一対の電極3a,3bを用いているが、一つの容器2に対して二対以上の電極3a,3bを用いることも可能である。二対以上の電極3a,3bを用いる場合には、電極3a,3bの増加数に合わせて栽培するアスパラガスの株数を増やすことができる。
【0023】
本発明のアスパラガスの若茎の生産方法を実施する際に、上記の本発明のアスパラガスの若茎の生産装置1を使用すれば、生産者が、常に電流の大きさを監視したり調節したりする必要がなくなるため、アスパラガスの若茎の生産を効率的に行うことができる。
【0024】
アスパラガスを栽培するには、まず、アスパラガスの種子をセルトレーなどに播種して発芽させて幼苗とし、その幼苗をそのまま本発明の生産装置1の容器2内の土壌Sに定植するか、又は、幼苗を一旦小型の植木鉢内に収容した土壌に移植して約1ヶ月間栽培し、その後本発明の生産装置1の容器2内の土壌Sに定植すればよい。
【0025】
アスパラガスの幼苗を生産装置1に定植した後は、土壌Sに所定の大きさの電流を流しつつ、その他は一般的な栽培方法に準じて栽培すればよい。
土壌Sに流す電流の大きさは0.1~10mAとする。より好ましくは1~10mAである。電流が0.1mAよりも小さい場合、または10mAよりも大きい場合には、若茎の萌芽数が有意に増加せず、また、若茎に含まれるルチンの量が有意に増加しない。
【0026】
土壌Sへの通電は、アスパラガスの栽培期全てを通じて、毎日12時間以上行うことが望ましい。より好ましくは、毎日24時間連続的に行うことが望ましい。
【0027】
[実施例]
本発明のアスパラガスの若茎の生産装置1を用いて、本発明のアスパラガスの若茎の生産方法によってアスパラガスの若茎を生産した。
【0028】
(1)アスパラガスの栽培
アスパラガス(品種名:ウェルカム)の種子を、2019年5月下旬にセルトレーに播種した。その後セルトレーを温室内に置いて発芽させ、得られた幼苗を、同年6月中旬に小型の植木鉢に収容した土壌に移植し、温室内で栽培した。次いで、同年6月下旬に生産装置1の容器2内の土壌Sに定植し、同じく温室内で栽培した。
【0029】
生産装置1の容器2内には、炭素材からなる円柱状(長さ350mm、断面の直径8mm)の2本の電極3a,3bが、容器2の幅方向へ約1700mmを隔てて、電極3a,3bの下部の約200mmを土壌Sに差し込むように配置してあり、上部の約50mmが土壌Sの表面から突出するようにしてある。
【0030】
アスパラガスの幼苗の定植は、16本の幼苗を、土壌Sの両電極3a,3b間の部分に略直線状に略等間隔になるように植えた。定植72日後に生育調査のため8株を掘り上げ、残り8株の栽培を継続した。
土壌Sへの通電は、電極3aを正極、電極3bを負極として、1mAの直流電流を幼苗の定植直後から連続的に途切らすことなく流し続けた。
アスパラガスの栽培は、土壌Sに電流を流すこと以外は、一般的な温室内での栽培方法に準じて行った。
【0031】
(2)2019年中の若茎の積算萌芽数
上記(1)によって栽培中のアスパラガスについて、2019年6月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査したところ23本であった。すなわち、アスパラガスの一株あたりの若茎の積算萌芽数は平均2.8本であった。
【0032】
(3)2020年中の若茎の積算萌芽数
上記の栽培中のアスパラガスについて、2020年は2月下旬より若茎の萌芽が始まった。そこで、2020年2月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査したところ1061本であった。すなわち、アスパラガスの一株あたりの若茎の積算萌芽数は平均132.6本であった。
【0033】
(4)2021年中の若茎の積算萌芽数
上記の栽培中のアスパラガスについて、2021年も2020年の調査と同様に、2021年2月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査したところ589本であった。すなわち、アスパラガスの一株あたりの若茎の積算萌芽数は平均73.6本であった。
【0034】
(5)若茎に含まれるルチンの量
上記栽培中のアスパラガスについて、2022年8月に若茎を収穫してルチン含有量を測定した。若茎は、一般に可食部とされる地上部から土壌Sに埋まっている地下部数cmまでの部分を収穫した。
ルチンの含有量の測定は、上記若茎の全体を試料として、試料と同重量のメタノールを加えて粉砕し、粉砕試料を4g採取し、メタノール及び2.5%酢酸溶液の混液30mlを加え10分間の振とう抽出を3回行い、遠心分離した後に100mlに定量し、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)を用いて分析した。測定結果は5.3mg/100gであった。
【0035】
[試験例]
本発明のアスパラガスの若茎の生産装置1を用いて、本発明のアスパラガスの若茎の生産方法を実施した場合について、若茎の萌芽数の増加効果と、若茎に含まれるルチンの量の増加効果を確かめる試験を行った。
【0036】
(1)アスパラガスの栽培
上記の実施例と同様に、アスパラガス(品種名:ウェルカム)の種子を、2019年5月下旬にセルトレーに播種して温室内で発芽させ、得られた幼苗を、同年6月中旬に小型の植木鉢に収容した土壌に移植して温室内で栽培した。次いで、同年6月下旬に生産装置1の容器2内の土壌Sに定植して温室内で栽培した。
【0037】
上記の実施例と同じ生産装置1を3台使用して、それぞれの生産装置1に実施例と同様にアスパラガスの幼苗を16本ずつ定植し、定植72日後に8株を掘り上げ、残り8株ずつの栽培とし、1台目は土壌Sに電流を流さず(以下「非通電区」と称する。)、2台目は土壌Sに1mAの直流電流を流して(以下「1mA通電区」と称する。)、3台目は土壌Sに10mAの直流電流を流して(以下「10mA通電区」と称する。)、その他は実施例と同じ方法でアスパラガスを栽培した。
なお、「1mA通電区」は実施例そのものである。
【0038】
(2)2019年中の若茎の積算萌芽数
上記の3台の生産装置1で栽培中のアスパラガスについて、それぞれ2019年6月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査した。
【0039】
調査結果は次のとおりである。
「非通電区」
積算萌芽数:13本 一株あたりの積算萌芽数:平均1.6本
「1mA通電区」(実施例)
積算萌芽数:23本 一株あたりの積算萌芽数:平均2.8本
「10mA通電区」
積算萌芽数:17本 一株あたりの積算萌芽数:平均2.1本
【0040】
上記の調査結果より、「1mA通電区」と「10mA通電区」の2019年中の積算萌芽数は、それぞれ「非通電区」の積算萌芽数の約1.8倍と約1.3倍であることが分かる。
すなわち、土壌Sに1~10mAの電流を流すことによって、若茎の萌芽数が増加することが理解できる。
【0041】
(3)2020年中の若茎の積算萌芽数
上記の3台の生産装置1で栽培中のアスパラガスについて、それぞれ2020年2月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査した。
【0042】
調査結果は次のとおりである。
「非通電区」
積算萌芽数:768本 一株あたりの積算萌芽数:平均96.0本
「1mA通電区」(実施例)
積算萌芽数:1061本 一株あたりの積算萌芽数:平均132.6本
「10mA通電区」
積算萌芽数:1054本 一株あたりの積算萌芽数:平均131.8本
【0043】
上記の調査結果より、「1mA通電区」と「10mA通電区」の2020年中の積算萌芽数は、いずれも「非通電区」の積算萌芽数の約1.4倍であることが分かる。
すなわち、土壌Sに1~10mAの電流を流すことによって、若茎の萌芽数が増加することが理解できる。
【0044】
(4)2021年中の若茎の積算萌芽数
上記の3台の生産装置1で栽培中のアスパラガスについて、それぞれ2021年2月から12月までの若茎の積算萌芽数を調査した。
【0045】
調査結果は次のとおりである。
「非通電区」
積算萌芽数:420本 一株あたりの積算萌芽数:平均52.5本
「1mA通電区」(実施例)
積算萌芽数:589本 一株あたりの積算萌芽数:平均73.6本
「10mA通電区」
積算萌芽数:386本 一株あたりの積算萌芽数:平均48.3本
【0046】
上記の調査結果より、「1mA通電区」と「10mA通電区」の2021年中の積算萌芽数は、それぞれ「非通電区」の積算萌芽数の約1.4倍と約0.92倍であることが分かる。
これにより、土壌Sに1mAの電流を流す場合には若茎の萌芽数が増加するが、10mAの電流を流す場合には、若茎の萌芽数が僅かながら減少することが理解できる。
【0047】
また、2019年から2021年までの若茎の積算萌芽数の合計は、次のとおりである。
「非通電区」
積算萌芽数:1201本 一株あたりの積算萌芽数:平均150.1本
「1mA通電区」(実施例)
積算萌芽数:1673本 一株あたりの積算萌芽数:平均209.1本
「10mA通電区」
積算萌芽数:1457本 一株あたりの積算萌芽数:平均182.1本
【0048】
これにより、アスパラガスの栽培を開始してから少なくとも約3年間は、土壌Sに1~10mAの電流を流すことによって、若茎の積算萌芽数を増加させることができることが分かる。
【0049】
(5)若茎に含まれるルチンの量
上記の3台の生産装置1で栽培中のアスパラガスについて、それぞれ2022年8月に若茎を収穫してルチン含有量を測定した。若茎の収穫方法とルチンの含有量の測定方法は実施例と同じである。
【0050】
測定結果は次のとおりである。
「非通電区」 3.0mg/100g
「1mA通電区」(実施例) 5.3mg/100g
「10mA通電区」 4.4mg/100g
【0051】
上記の測定結果より、「1mA通電区」と「10mA通電区」の若茎のルチン含有量は、それぞれ「非通電区」のルチン含有量の約1.8倍と約1.5倍であることが分かる。
すなわち、土壌Sに1~10mAの電流を流すことによって、若茎に含まれるルチンの量が増加することが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のアスパラガスの若茎の生産方法及び生産装置は、アスパラガスの若茎の萌芽数を増加させ、また、若茎に含まれるルチンの量を増加させることによって、アスパラガスの若茎の生産量と市場価値の向上のために利用できるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 アスパラガスの若茎の生産装置
2 容器
3a,3b 電極
4 電流制御装置
5a,5b,5c 電線
Aa アスパラガスの若茎
Ab アスパラガスの偽葉
S 土壌
図1