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特開2024-64886繊維用帯電防止加工剤、帯電防止加工繊維及び帯電防止加工繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064886
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】繊維用帯電防止加工剤、帯電防止加工繊維及び帯電防止加工繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/402 20060101AFI20240507BHJP
   D06M 13/325 20060101ALI20240507BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
D06M13/402
D06M13/325
D06M13/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173834
(22)【出願日】2022-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池本 央輔
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AB03
4L033AB04
4L033AC06
4L033BA29
4L033BA45
4L033BA71
(57)【要約】      (修正有)
【課題】繊維の速乾性に優れる繊維用帯電防止加工剤、速乾性及び帯電防止性に優れる繊維、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であり、
前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤。
【請求項2】
前記化合物(a1)が下記一般式(1)で示される、請求項1に記載の繊維用帯電防止加工剤。
【化1】
(一般式(1)において、Rは炭素数1~4のアルキル基である。2つのRは、同じであっても相違してもよい。Rは炭素数5~22のアルキル基又はアルケニル基である。nは1~3の整数である。XおよびYは、それぞれ独立して、メチレン基、―NH-、―NR―又は-O-である。但しRは炭素数1~4のアルキル基である。)
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤(B)が、カルボン酸塩型アニオン界面活性剤、リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の繊維用帯電防止加工剤。
【請求項4】
前記Rの炭素数CR2及び前記アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cがそれぞれ独立して5~22である、請求項2に記載の繊維用帯電防止加工剤。
【請求項5】
前記Rの炭素数CR2及び前記アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cが下記数式(2)を満たす、請求項2又は4に記載の繊維用帯電防止加工剤。
-4≦CR2-C≦4 (2)
【請求項6】
前記アニオン界面活性剤(B)に対する前記化合物(A)の重量比(A/B)が1~100である、請求項1又は2に記載の繊維用帯電防止加工剤。
【請求項7】
工程(I)及び工程(II)から選ばれる少なくとも1つの工程を含む帯電防止加工繊維の製造方法であり、
前記工程(I)が、繊維材料に対して、化合物(A)を含む加工剤を付与する工程(i)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(ii)であり、
前記工程(II)が、繊維材料に対して、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(iii)であり、
前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、帯電防止加工繊維の製造方法。
【請求項8】
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)が付着した帯電防止加工繊維であり、
前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、帯電防止加工繊維。
【請求項9】
化合物(A)を含む第1液と、アニオン界面活性剤(B)を含む第2液とを有する繊維用帯電防止加工剤であり、
前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用帯電防止加工剤、帯電防止加工繊維及び帯電防止加工繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成繊維は非導電性かつ疎水性であり、摩擦等により静電気が帯電しやすい。合成繊維を衣料に用いた場合、静電気の発生は作業性の低下や、着心地の低下を招くだけでなく、汚れ物質の付着も生じやすくなる。そのため、合成繊維を用いた衣料には帯電防止剤の使用が必要となる。
そのほか、衣料の着心地を向上させるために求められる性能として、吸水速乾性がある。吸水速乾性とは、肌から発生した汗を衣料が吸収し、素早く空気中へ蒸発させる機能である。吸水速乾性が優れることで衣料が保持する水分量を低減でき、発汗時などのベタツキを抑制し、着心地を向上できる。
【0003】
帯電防止剤としては、特許文献1に示すようなアミン化合物や、特許文献2に示すようなアクリロニトリルとアルコキシポリテトラメチレングリコールメタクリレートとの共重合体が提案されている。
一方、繊維製品の吸水速乾性については、特許文献3に示すような繊維構造の変更、すなわち、性質の異なる2種のポリマーを利用し芯鞘型で改善する方法や特許文献4に示すような繊維の断面形状を変化させることで改善する方法、特許文献5に示すような織り編み技術によって繊維布帛の表裏の組織を異ならせ、毛細管現象を利用することによって改善する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-82669号公報
【特許文献2】特開平10-183474号公報
【特許文献3】特開2002-266207号公報
【特許文献4】特開2017-218698号公報
【特許文献5】特開2015-96662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した従来の帯電防止剤は帯電防止性と速乾性を両立できるものではなく、これらの帯電防止剤を処理した繊維を用いた加工布では速乾性が不足し、着心地の低下を招く場合があった。
さらに、前述した従来の繊維製品の速乾性を向上させる技術は高コストであったり、使用できる繊維の種類が限定されたりするため、幅広い用途への応用が困難なことが課題であった。
【0006】
そこで、本発明者らは帯電防止剤に速乾性の効果を付加することが可能となれば、幅広い繊維製品に対して帯電防止性と速乾性を同時に付与することが可能となり、加工コストが低減でき、衣料製品の設計の自由度を向上できることに着想した。
つまり、本発明の目的は、繊維の速乾性に優れる繊維用帯電防止加工剤、速乾性に優れる繊維用帯電防止加工剤が付着した帯電防止加工繊維、及び速乾性に優れる帯電防止加工繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を含む化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であれば、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は以下の態様が含まれる。
<1>
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤。
<2>
前記化合物(a1)が下記一般式(1)で示される、<1>に記載の繊維用帯電防止加工剤。
【化1】
(一般式(1)において、Rは炭素数1~4のアルキル基である。2つのRは、同じであっても相違してもよい。Rは炭素数5~22のアルキル基又はアルケニル基である。nは1~3の整数である。XおよびYは、それぞれ独立して、メチレン基、―NH-、―NR―又は-O-である。但しRは炭素数1~4のアルキル基である。)
<3>
前記アニオン界面活性剤(B)が、カルボン酸塩型アニオン界面活性剤、リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>又は<2>に記載の繊維用帯電防止加工剤。
<4>
前記Rの炭素数CR2及び前記アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cがそれぞれ独立して5~22である、<2>又は<3>に記載の繊維用帯電防止加工剤。
<5>
前記Rの炭素数CR2及び前記アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cが下記数式(2)を満たす、<2>~<4>のいずれかに記載の繊維用帯電防止加工剤。
-4≦CR2-C≦4 (2)
<6>
前記アニオン界面活性剤(B)に対する前記化合物(A)の重量比(A/B)が1~100である、<1>~<5>のいずれかに記載の繊維用帯電防止加工剤。
<7>
工程(I)及び工程(II)から選ばれる少なくとも1つの工程を含む帯電防止加工繊維の製造方法であり、前記工程(I)が、繊維材料に対して、化合物(A)を含む加工剤を付与する工程(i)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(ii)であり、前記工程(II)が、繊維材料に対して、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(iii)であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、帯電防止加工繊維の製造方法。
<8>
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)が付着した帯電防止加工繊維であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、帯電防止加工繊維。
<9>
化合物(A)を含む第1液と、アニオン界面活性剤(B)を含む第2液とを有する繊維用帯電防止加工剤であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、繊維製品等に付着させた場合に、優れた帯電防止性と速乾性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維用帯電防止加工剤の第1の態様は、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤である。
本発明の繊維用帯電防止加工剤の第2の態様は、化合物(A)を含む第1液と、アニオン界面活性剤(B)を含む第2液とを有する繊維用帯電防止加工剤であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、繊維用帯電防止加工剤である。以下詳細に説明する。
【0011】
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含むため、プラスに帯電した化合物(A)が繊維に吸着した際に、その近傍にマイナスに帯電したアニオン界面活性剤が存在することで、化合物(A)の分子間の距離を適度に保つことができ、繊維上で化合物(A)同士の分子間相互作用が抑制され、帯電防止性と速乾性を両立できると考えている。一方、化合物(A)を含みアニオン界面活性剤(B)を含まない場合は、化合物(A)同士の分子間相互作用により繊維表面の疎水化が起こることで繊維表面からの水分の蒸発を妨げ速乾性が劣り、また、アニオン界面活性剤(B)を含み、化合物(A)を含まない場合は、アニオン界面活性剤(B)の表面抵抗値が化合物(A)と比較して高いため優れた帯電防止性を発現できないと考えている。つまり、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を同時に含むことで帯電防止性と速乾性を両立できるものである。
【0012】
〔化合物(A)〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤は化合物(A)を含む。
化合物(A)は3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0013】
〔3級アミン化合物(a1)〕
3級アミン化合物(a1)は、窒素原子に結合する3つの基のうち2つが炭素数1~4のアルキル基であるアミン化合物であり、アルキル基の炭素数は、洗濯耐久性が高いという観点から、2~4が好ましく、3又は4がより好ましく、4が最も好ましい。
窒素原子に結合する2つのアルキル基は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
窒素原子に結合する基のうち1つはアルキル鎖同士の分子間相互作用を抑えるという観点からカルボニル基を含む有機基であると好ましく、アミド基を含む有機基であるとさらに好ましい。
化合物(a1)は、洗濯耐久性が高いという観点から、前記一般式(1)で示されると好ましい。
【0014】
一般式(1)中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、洗濯耐久性が高いという観点から、炭素数2~4が好ましく、3又は4がより好ましく、4が最も好ましい。2つのRは、同じであっても相違してもよいが、分子間相互作用を阻害しない点で同じであると好ましい。Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びブチル基等が挙げられる。
一般式(1)中、Rは炭素数5~22のアルキル基又はアルケニル基であり、洗濯耐久性が高いという観点から、炭素数6~22のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。該炭素数の上限は、より好ましくは20、さらに好ましくは18である。一方、該炭素数の下限は、より好ましくは8、さらに好ましくは10、特に好ましくは12である。また、例えば、6~18がより好ましく、10~18がさらに好ましく、12~18が特に好ましい。
は、具体的には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
nは1~3の整数であり、洗濯耐久性が高いという観点から、1~2が好ましく、1がより好ましい。
XおよびYは、それぞれ独立して、メチレン基、―NH-、―NR-又は―O-であり、好ましくは、―O-、―NH-又はメチレン基、より好ましくはメチレン基又は―NH-である。
洗濯耐久性が高いという観点から、Rは炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数2~4のアルキル基がより好ましく、3~4のアルキル基が特に好ましい。Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0015】
〔化合物(a1)の酸塩(a2)〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤に使用される化合物(a1)の酸塩(a2)塩は、上記化合物(a1)を有機酸又は無機酸で中和したものである。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸等が挙げられるが、乳化性、取り扱い性の観点からギ酸、酢酸、乳酸が好ましく、ギ酸が最も好ましい。
無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、メタケイ酸及び無水ケイ酸等が挙げられる。
中和度としては、中和物の乳化性という観点から、50%~100%が好ましく、80%~100%がより好ましく、100%がさらに好ましい。
【0016】
〔化合物(a1)の4級化物(a3)〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤に使用される化合物(a1)の4級化物(a3)は、上記化合物(a1)を4級化したものである。
4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等の炭素数1以上4以下のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等のアルキル化剤が挙げられ、洗濯耐久性の観点から、塩化エチル及び硫酸ジエチルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0017】
〔アニオン界面活性剤(B)〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、アニオン界面活性剤(B)を含む。アニオン界面活性剤(B)としては、カルボン酸塩型アニオン界面活性剤、リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含むと、速乾性のため好ましく、カルボン酸塩型アニオン界面活性剤及び硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含むとより好ましい。また、カルボン酸塩型アニオン界面活性剤を含むと加工液安定性のためさらに好ましく、硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤を含むと加工上がりの摩擦耐電圧が低いためさらに好ましい。
【0018】
カルボン酸塩型アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらのなかでも、洗濯耐久性のため脂肪酸塩がより好ましい。
脂肪酸塩としては、炭素数が5~21の脂肪酸塩等が挙げられ、これらのなかでも、洗濯耐久性の点で炭素数9~21の脂肪酸塩が好ましく、炭素数11~17の脂肪酸塩がより好ましい。脂肪酸塩としては、具体的には、2-エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸の塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩としては、アルキル基の炭素数が6~22であり、オキシアルキレン基がポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンであり、オキシアルキレンを3~5モル付加したもの等が挙げられ、これらの中でも、3モルが好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩としては、具体的には、ポリオキシエチレン3~5モル付加ラウリルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレン3~5モル付加ラウリルエーテル酢酸塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0019】
リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤としては、アルキルリン酸エステル塩、アルケニルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらの中でもアルキルリン酸エステル塩がより好ましい。
リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤としては、具体的には、炭素数が6~22のアルキルリン酸エステル塩、炭素数が6~22のアルケニルリン酸エステル塩、炭素数が6~22のアルキル基を有するポリオキシエチレン3~5モル付加ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられ、これらの塩としてはナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
スルホン酸塩型アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩、アルケニルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルケニルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキルスルホン酸塩がより好ましい。
スルホン酸塩型アニオン界面活性剤としては、具体的には、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルスルホン酸塩、炭素数6~22のアルケニル基を有するアルケニルスルホン酸塩、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルスルホコハク酸塩、炭素数6~22のアルケニル基を有するアルケニルスルホコハク酸塩等が挙げられ、これらの塩としては、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0021】
硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルケニル硫酸エステル塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル硫酸エステル塩がより好ましい。
硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤としては、具体的には、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数6~22のアルケニル基を有するアルケニル硫酸エステル塩、炭素数6~22のアルキル基を有するポリオキシエチレン3~5モル付加ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、炭素数6~22のアルケニル基を有するポリオキシエチレン3~5モル付加ポリオキシエチレンアルケニル硫酸エステル塩等が挙げられ、これらの塩としては、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
〔その他成分〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、本願発明の効果を損なわない範囲で、その他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、水、溶剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、無機物、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、溶剤等が挙げられる。
【0023】
溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1,1-ジメチルエタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1,1-ジメチルプロパノール、3-メチル-2-ブタノール、1,2-ジメチルプロパノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-へプタノール、2-へプタノール、3-へプタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ベンジルアルコール、ソルフィット、ポリアルキレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、特に限定はないが、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル(ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル等)、ポリオキシアルキレン多環アリールエーテル(ポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレントリスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテル等)、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多環アリールエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル等が挙げられる。
【0025】
これら非イオン性界面活性剤を構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、イソデシル基、トリデシル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等が挙げられ、不飽和結合を有してもよく、第一級、第二級、第三級のいずれでもよく、直鎖でも分岐構造を有してもよい。
【0026】
同様にアルキルアリール基としては、トリル基、キシリル基、クミル基、オクチルフェニル基、2-エチルヘキシルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、メチルナフチル基等が挙げられ、アルキル基の位置、数に限定はない。
【0027】
同様に多環アリール基としては、スチリルフェニル基、スチリルメチルフェニル基、スチリルノニルフェニル基、アルキルスチリルフェニル基、トリスチリルフェニル基、ジスチリルフェニル基、ジスチリルメチルフェニル基、トリスチリルフェニル基、ベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、アルキルジフェニル基、ジフェニル基、クミルフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、置換基の位置や数に限定はない。
【0028】
同様に多価アルコールとしては、ソルビット、ソルビトール、ソルバイド、ソルビタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ネオペンチルグリコール、キシリトール、エリスリトール、アルカノールアミン、糖類等が挙げられる。
【0029】
同様にポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等が挙げられ、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基が好ましい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、又はランダム付加体のいずれを構成してもよい。また、ポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレン基に占めるポリオキシエチレン基の割合は、40モル%以上が好ましく、50モル%がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。オキシアルキレン基の付加モル数は、1~50が好ましく、3~30がより好ましく、5~20がさらに好ましい。
【0030】
本発明が水を含む場合、水としては、純水、蒸留水、精製水、軟水、イオン交換水、水道水のいずれであってもよい。
【0031】
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維用帯電防止加工と同時に加工可能な加工薬剤を含んでもよい。同時に加工可能な加工薬剤としては、変色防止剤、変色抑制剤、防虫剤、防黴剤、防ダニ剤、消臭剤、帯電防止剤、撥水撥油剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防汚剤、深色化剤、平滑剤、柔軟剤、顔料、蛍光増白剤、艶消し剤、浸透剤、湿潤剤、乳化剤、消泡剤、親水剤、抗菌剤、防臭剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、遮熱加工剤、硬仕上げ剤、合成樹脂、可縫性向上剤、架橋剤、溶剤又は吸水剤等が挙げられる。これら薬剤は、複数含んでもよい。各薬剤については、公知のものを採用できる。
【0032】
〔繊維用帯電防止加工剤〕
本発明の繊維用帯電防止加工剤は、繊維材料に速乾性を付与するために用いられるものである。本発明の繊維用帯電防止加工剤の第1の態様は、上記化合物(A)及び上記アニオン界面活性剤(B)を含むものであり、第2の態様は化合物(A)を含む第1液と、アニオン界面活性剤(B)を含む第2液とを有するものである。第2の態様の繊維用帯電防止加工剤は、化合物(A)を含む第1液と、アニオン界面活性剤(B)を含む第2液とを繊維材料に対してそれぞれ別の工程で付与して用いても良いし、繊維材料に付与する直前に第1液と第2液を混合して一度に繊維材料に付与してもよい。どちらにせよ、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)が繊維材料に付着することで本願効果を発揮するものである。なお、本発明の繊維用帯電防止加工剤とは、後述する製造方法で製造された加工剤のみならず、繊維材料に付与する際に該加工剤を水等により希釈した加工処理液を含むものである。
【0033】
本発明の繊維用帯電防止加工剤の不揮発分に占める化合物(A)の重量割合は、帯電防止性が高いという観点から、50~99重量%が好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは72重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは55重量%、さらに好ましくは60重量%である。なお、本発明における不揮発分とは、加工剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0034】
アニオン界面活性剤(B)に対する化合物(A)の重量比(A/B)は、洗濯耐久性が高いという観点から、1~100が好ましい。該重量比の上限は、より好ましくは50、さらに好ましくは25、特に好ましくは15である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは4である。
【0035】
アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cは5~22であると洗濯耐久性の点で好ましい。該炭素数の上限は、22がより好ましく、20がさらに好ましく、18が特に好ましい。一方、該炭素数の下限は、8がより好ましく、10がさらに好ましく、12が特に好ましい。
【0036】
本発明の繊維用帯電防止加工剤が前記一般式(1)で示される化合物を含む場合、一般式(1)におけるRの炭素数CR2及び前記アニオン界面活性剤(B)の炭化水素基の炭素数Cが下記数式(2)を満たすと洗濯耐久性の点で好ましい。
-4≦CR2-C≦4 (2)
該CR2-Cの上限は、より好ましくは3、さらに好ましくは2である。一方、該CR2-Cの下限は、より好ましくは-2、さらに好ましくは0である。
なお、繊維用帯電防止加工剤が前記一般式(1)示される化合物及び/又はアニオン界面活性剤(B)を複数含む場合、CR2及びCはその算術平均値をさす。
【0037】
繊維用帯電防止加工剤のpHは、特に限定はないが、加工剤の貯蔵安定性の点から、1~9が好ましく、3~7がさらに好ましい。
【0038】
本発明の繊維用帯電防止加工剤の不揮発分5重量%の水分散液の粘度(20℃)は、特に限定はないが、0.1~100mPa・sが好ましい。該粘度の上限は、より好ましくは50mPa・s、さらに好ましくは10mPa・s、特に好ましくは5mPa・sである。一方、該粘度の下限は、より好ましくは0.2mPa・s、さらに好ましくは0.5mPa・s、特に好ましくは1mPa・sである。なお、繊維用帯電防止加工剤が2液以上から構成される場合は、すべての液を混合し、不揮発分濃度5重量%の水分散液とした時の粘度をさす。
【0039】
本発明の繊維用帯電防止加工剤は水やアルコール等の溶媒により希釈されていても良い。本発明の加工剤が溶媒で希釈されている場合、加工剤に占める不揮発分の重量割合は、0.01~10重量%であると好ましく、0.1~7重量%であるとより好ましく、0.5~5重量%であるとさらに好ましい。処理剤が第1液及び第2液を有する場合、それぞれの加工剤に占める不揮発分の重量割合の好ましい範囲も同様である。
【0040】
本発明の繊維用帯電防止加工剤の調製方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、構成する成分全てを一度に混合してもよいし、構成する成分の一部を混合した後に残りの成分を混合してもよいし、第1液と第2液を調製する場合は、化合物(A)を含む成分を混合して第1液を調製し、その後アニオン界面活性剤(B)を含む成分を混合して第2液を調製してもよい。また、水による濃度調整や希釈は必要に応じていずれのタイミングで何度実施してもよい。
【0041】
[帯電防止加工繊維の製造方法]
本発明の帯電防止加工繊維の製造方法は、工程(I)及び工程(II)から選ばれる少なくとも1つの工程を含む帯電防止加工繊維の製造方法であり、前記工程(I)が、繊維材料に対して、化合物(A)を含む加工剤を付与する工程(i)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(ii)であり、前記工程(II)が、繊維材料に対して、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤を付与する工程(iii)である。
工程(I)において、工程(i)及び工程(ii)の順番に特に限定はなく、工程(i)の後に工程(ii)を実施してもよく、工程(ii)の後に工程(i)を実施しても良い。また、工程(i)と工程(ii)の間にその他の工程を実施しても良い。
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)としては、前述のものを使用できる。
また、工程(I)及び工程(II)から選ばれる少なくとも1つの工程において、化合物(A)を含む加工剤及びアニオン界面活性剤(B)を含む加工剤以外の加工剤を同時に付与しても良い。
本製造方法によれば、速乾性に優れた帯電防止加工繊維を得ることができる。
【0042】
繊維材料としては、天然繊維、化学繊維のいずれであってもよい。天然繊維としては、例えば、綿、大麻、亜麻、ヤシ、いぐさ等の植物繊維;羊毛、山羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ、絹等の動物繊維;石綿等の鉱物繊維等を挙げることができる。化学繊維としては、例えば、ロックファイバ-、金属繊維、グラファイト、シリカ、チタン酸塩等の無機繊維;レーヨン、キュプラ、ビスコ-ス、ポリノジック、精製セルロース繊維等の再生セルロース系繊維;溶融紡糸セルロース繊維;牛乳タンパク、大豆タンパク等のタンパク質系繊維;再生絹、アルギン酸繊維等の再生・半合成繊維;ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリビニル繊維、ポリアクリルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニリデン繊維、ポリスチレン繊維等の合成繊維を挙げることができる。また、これら繊維を2種以上複合(混紡、混繊、交織、交編等)されていてもよい。
繊維材料としては、帯電防止性をより奏する点で、化学繊維、及び、動物繊維が好ましく、化学繊維がより好ましく、合成繊維がさらに好ましい。また、繊維材料を2種以上複合する場合、動物繊維、半合成繊維、及び、合成繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であると好ましく、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリビニル繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、及び、ポリビニリデン繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であるとより好ましく、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、及び、アクリル繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であるとさらに好ましい。
また、吸水性をより奏する点で、化学繊維、及び、植物繊維が好ましく、半合成繊維、植物繊維がより好ましく、植物繊維がさらに好ましい。また、繊維材料を2種以上複合する場合、植物繊維、半合成繊維、合成繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であると好ましく、綿、レーヨン、キュプラ、ビスコ-ス、ポリノジック、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、及び、アクリル繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であるとより好ましく、綿、レーヨン、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、及び、ポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも2種以上を含む繊維材料の複合繊維であるとさらに好ましい。
【0043】
繊維材料の形態としては、例えば、織物、編物、布帛、糸状、不織布等の形態を挙げることができる。繊維材料の用途としては、帯電防止性、速乾性、耐洗濯性を付与する対象物、例えば、アンダーウェア、作業着、スポーツ衣料、寝具類、カバー類等を挙げることができる。
【0044】
繊維用帯電防止加工剤を繊維材料に付与する方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。これらの中でも、繊維用帯電防止加工剤を繊維材料に確実に固着させることができる点から、吸尽法、パッドドライ法、スプレー法及びコーティング法から選ばれる少なくとも1種の方法が好ましく、パッドドライ法がさらに好ましい。
【0045】
吸尽法、パッドドライ法、スプレー法、コーティング法としては、公知の方法を採用できる。吸尽法とは、加工剤の希薄溶液を用い、温度、浸漬時間、液循環回数等の条件を設定して、加工剤を繊維に選択吸着させることで吸尽付着させる方法である。その後、通常、水洗を行い、遠心脱水、乾燥を行う。パッドドライ法とは、加工剤の溶液中に繊維を短時間浸漬し、直ちに脱水マングル等で絞ることで付着させる方法である。その後乾燥を行い、必要に応じて、キュアリングを行う。スプレー法とは、一定速度のコンベアー上に繊維を乗せ、その上から、加工剤の溶液を一定量スプレーする事で付着させる方法である。その後乾燥を行い、必要に応じて、キュアリングを行う。コーティング法とは、通常マングルで加工剤の溶液を片面より塗布することで付着させる方法である。その後、余分な加工剤はドクターでかき落とし、乾燥を行い、必要に応じて、キュアリングを行う。
【0046】
本発明の繊維用帯電防止加工剤を繊維材料に付与する際の温度は、5~40℃が好適である。付与温度が5℃より低いと、一定温度保持が難しいために繊維材料への一定付与ができなくなることがある。一方、付与温度が40℃より高いと、繊維材料に含まれる染料等の溶出が多くなることがある。
【0047】
〔帯電防止加工繊維〕
本発明の帯電防止加工繊維は、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)が付着した帯電防止加工繊維であり、前記化合物(A)が3級アミン化合物(a1)、前記化合物(a1)の酸塩(a2)及び前記化合物(a1)の4級化物(a3)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記化合物(a1)の窒素原子に結合する3つの基のうち、2つが炭素数1~4のアルキル基である、帯電防止加工繊維である。
化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)としては、前述のものを使用できる。
本発明の帯電防止加工繊維は、繊維材料に前述の帯電防止加工剤が付着した帯電防止加工繊維であり、繊維製品へ帯電防止機能を付与する目的で好適に使用できる。
本発明の帯電防止加工繊維は、前述した繊維材料に前述した帯電防止加工剤を付着させる方法で得られる帯電防止加工繊維であると好ましい。
【0048】
帯電防止加工繊維への繊維用帯電防止加工剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、帯電防止加工繊維の所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は繊維材料に対して0.01~10重量%であると好ましく、0.03~7.0重量%がより好ましく、0.05~5.0重量%がさらに好ましい。
【0049】
本発明の帯電防止加工繊維は、本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止加工と同時に加工可能な薬剤を含んでもよい。同時に加工可能な薬剤としては、変色防止剤、変色抑制剤、防虫剤、防黴剤、防ダニ剤、消臭剤、帯電防止剤、撥水撥油剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防汚剤、深色化剤、平滑剤、柔軟剤、顔料、蛍光増白剤、艶消し剤、浸透剤、湿潤剤、乳化剤、消泡剤、親水剤、抗菌剤、防臭剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤、遮熱加工剤、硬仕上げ剤、合成樹脂、可縫性向上剤、架橋剤、溶剤又は吸水剤等が挙げられる。各薬剤については、公知のものを採用できる。
【実施例0050】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」とあるのは、特に示さない限り、「重量部」及び「重量%」を示す。
【0051】
[3級アミン化合物の酸塩(a2-1)の調製]
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた容量1リットルの反応容器に、公知の方法により得られた上記一般式(1)において、Rが共にブチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―NH-、Rがテトラデシル基であるアミドアミン(a1-1)500g、及び、(a1-1)の中和度が100%となるように76%ギ酸を仕込んだ。攪拌しながら昇温し、60℃で2時間反応を行い、アミドアミン型界面活性剤であるカチオン界面活性剤(a2-1)を得た。
【0052】
[3級アミン化合物の酸塩(a2-2)~(a2-7)の調製]
3級アミン化合物の酸塩(a2-1)の調製において、アミドアミン(a1-1)をそれぞれ下記の(a1-2)~(a1-7)に変更する以外は同様の操作を行い、ギ酸による中和度が100%のアミドアミン型カチオン界面活性剤及びエステルアミン型カチオン界面活性剤である3級アミン化合物の酸塩(a2-2)~(a2-7)を得た。
【0053】
a1-2:一般式(1)においてRが共にブチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―NH-、Rがオクチル基であるアミドアミン
a1-3:一般式(1)においてRが共にブチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―NH-、Rがドデシル基であるアミドアミン
a1-4:一般式(1)においてRが共にブチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―NH-、Rがオクタデシル基であるアミドアミン
a1-5:一般式(1)においてRが共にエチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―NH-、Rがテトラデシル基であるアミドアミン
a1-6:一般式(1)においてRが共にブチル基、nが1、Xがメチレン基、Yが―O-、Rがトリデシル基であるエステルアミン
a1-7:一般式(1)においてRが共にブチル基、nが3、Xが―NH-、Yがメチレン基、Rがウンデシル基であるアミドアミン
【0054】
[3級アミン化合物の酸塩(a2-8)の調製]
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた容量1リットルの反応容器に、アミドアミン(a1-1)500g、及び、(a1-1)の中和度が100%となるように90%乳酸を仕込んだ。攪拌しながら昇温し、60℃で2時間反応を行い、アミドアミン型界面活性剤である3級アミン化合物の酸塩(a2-8)を得た。
【0055】
[3級アミン化合物の酸塩(a2-9)~(a2-10)の調製]
3級アミン化合物の酸塩(a2-8)の調製において、アミドアミン(a1-1)をそれぞれ下記の(a1-2)、(a1-3)に変更する以外は同様の操作を行い、乳酸による中和度が100%のアミドアミン型カチオン界面活性剤である3級アミン化合物の酸塩(a2-9)~(a2-10)を得た。
【0056】
[3級アミン化合物の酸塩(a2-11)の調製]
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた容量1リットルの反応容器に、アミドアミン(a1-1)500g、及び、(a1-1)の中和度が80%となるように76%ギ酸を仕込んだ。攪拌しながら昇温し、60℃で2時間反応を行い、アミドアミン型界面活性剤である3級アミン化合物の酸塩(a2-11)を得た。
【0057】
[3級アミン化合物の4級化物]
a3-1:コータミン(登録商標)86Pコンク(ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、花王株式会社製)
a3-2:カチオンBB(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、日油株式会社製)
【0058】
[アニオン界面活性剤10%溶液の調製]
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた容量1リットルのビーカーに、オクチル硫酸ナトリウム(b1)100g、軟水900gを仕込んだ。攪拌しながら昇温し、80℃30分で完全に溶解させ、オクチル硫酸ナトリウム10%溶液を得た。その他のアニオン界面活性剤も同様な方法で10%溶液を調製し、それぞれの10%溶液を繊維用帯電防止加工剤の製造に用いた。また、アニオン界面活性剤b1~b7としては、それぞれ下記成分を用いた。
b1:オクチル硫酸ナトリウム
b2:ラウリル硫酸ナトリウム
b3:ステアリル硫酸ナトリウム
b4:ラウリン酸ナトリウム
b5:ラウリルリン酸ナトリウム
b6:ラウリン酸カリウム
b7:ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル硫酸Na
【0059】
[その他成分]
d1:POE(18)硬化ひまし油エーテル
d2:N,N-ビス(ステアロイルアミノエチル)N-ポリオキシエチレンN-グリシジルアンモニウム塩
【0060】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<繊維用帯電防止加工剤の第1液の調製>
(製造例1-1)
第1液中の不揮発分組成が、a2-1 85重量%とPOE(18)硬化ひまし油エーテル(HLB=9.7のエーテル型ノニオン界面活性剤) 15重量%となるよう混合し、第1液に占めるイソプロパノール含有量が8.8重量%、不揮発分の重量割合が88.5重量%となるようにイソプロパノール及び水をさらに混合し、繊維用帯電防止加工剤の第1液(1-1)を得た。
【0061】
(製造例1-2~1-18、比較製造例X-1~X-5)
第1液中の不揮発分組成を、表1~2に記載の不揮発分組成、イソプロパノール濃度及び不揮発分濃度とする以外は、製造例1-1と同様にして、繊維用帯電防止加工剤の第1液(1-2)~(1-18)、及び比較製造例の第1液(X-1)~(X-5)を得た。
【0062】
<繊維用帯電防止加工剤の第2液の調製>
アニオン界面活性剤b1~b7それぞれを不揮発分濃度が10%となるように前述の方法にて水と混合し、繊維用帯電防止加工剤の第2液として、b1~b7の水溶液を得た。
【0063】
<繊維用帯電防止加工剤の調製及び評価>
前記工程で得られた繊維用帯電防止加工剤の第1液(1-1)及び第2液(b2の水溶液)を、それぞれの不揮発分の重量割合が、第1液90重量%及び第2液10重量%となるように混合し、さらに繊維用帯電防止加工剤の不揮発分濃度が2重量%となるように水を混合し、繊維用帯電防止加工剤を得た。
この不揮発分濃度が2重量%の繊維用帯電防止加工剤にカチオン可染ポリエステル布帛(CDPニット)を浸漬させ、絞り率82重量%にて処理し、次いで130℃にて2分間熱処理した。得られた処理布(試験布)の洗濯前と洗濯5回後の摩擦帯電圧、吸水性及び速乾性を評価した。その結果を表3に示す。なお、洗濯方法及び摩擦帯電圧、吸水性、速乾性の試験方法については、下記の方法で行った。
【0064】
(実施例2~28、比較例2~7)
第1液及び第2液を表3~6に記載の不揮発分の比率となるように混合し、繊維用帯電防止加工剤の不揮発分濃度が表3~6に記載の濃度となるように水を混合する以外は実施例1と同様にして繊維用帯電防止加工剤を調製し、その後実施例1と同様に評価を行った。その結果を表3~6に示す。
【0065】
(比較例1)
水道水にカチオン可染ポリエステル布帛(CDPニット)を浸漬させ、絞り率82重量%にて処理し、次いで130℃にて2分間熱処理した。得られた処理布(試験布)の洗濯前と洗濯5回後の摩擦帯電圧、吸水性及び速乾性を評価した。その結果を表6に示す。なお、洗濯方法及び摩擦帯電圧、吸水性、速乾性の試験方法については、下記の方法で行った。
【0066】
[吸水性]
上記で得られた試験布を用いて、JIS-L-1907 滴下法に従い、吸水速度(秒)を測定した。吸水性が瞬時であれば、吸水性が良好であることを示している。
【0067】
[速乾性]
上記で得られた試験布を10cm四方に切り取り試験試料とした。試料を温度20±2℃、湿度65±4%の状態(以下の試験はこの状態で行なった)で放置し、放置後の試料の重量(W0)を測定した。試料の肌に当る側に0.6mLの蒸留水を滴下し重量(W1)を測定した後、60分後に重量(WN)を測定し、下記式より60分後の拡散性残留水分率を計算した。60分後の拡散性残留水分率が10%以下であれば、速乾性が良好である。
拡散性残留水分率(%)=(WN―W0)/(W1-W0)×100
【0068】
[摩擦帯電圧]
上記で得られた試験布を20℃、45%RHの恒温室内に2時間調湿したものを用いて、JIS L-1094 B法に従い、ロータリースタティックテスターを用いて、摩擦帯電圧(V)を測定した。摩擦帯電圧が3000V以下であれば、帯電防止性が良好である。
【0069】
[洗濯方法]
JIS-L-0217 103法に準じて、試験布を洗濯した。洗剤はアタック(花王(株)製)を使用し、洗濯液の洗剤濃度を1.0g/Lとして使用した。前記条件により、繰り返し洗濯を5回行った。
【0070】
[洗濯耐久性の評価]
洗濯処理したものについて、上記方法と同様に摩擦帯電圧、吸水性及び速乾性を測定し、評価を行った。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
表3~6から分かるように、実施例1~28に係る帯電防止加工剤は、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含む繊維用帯電防止加工剤であるため、優れた繊維の速乾性及び帯電防止加工性が得られる。
一方、繊維用帯電防止加工剤が付着していない比較例1、及び、比較例2~7に係る繊維用帯電防止加工剤は、化合物(A)及びアニオン界面活性剤(B)を含まない(比較例1及び6)、化合物(A)を含むがアニオン界面活性剤(B)を含まない(比較例2~4)、アニオン界面活性剤(B)を含むが化合物(A)を含まない(比較例5)、アミン化合物とアニオン界面活性剤を含むがアミン化合物が化合物(A)ではない(比較例7)ため、本願課題を解決できない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の帯電防止加工剤は、繊維製品等に付着させた場合に、加工布の風合いを損なわず洗濯耐久性が高い効果を有するため、洗濯耐久性が要求される繊維製品に特に好適に用いることができる。