(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064889
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】苔用壁面緑化ユニット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240507BHJP
【FI】
A01G9/02 B
A01G9/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173840
(22)【出願日】2022-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】500417753
【氏名又は名称】株式会社伊藤商事
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】猪田 淳
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NA10
2B327NC05
2B327NC18
2B327NC24
2B327NC36
2B327ND20
2B327NE09
2B327QA03
2B327UA30
(57)【要約】
【課題】苔を壁面に設置する際の作業効率が良く、壁面に設置された苔を長期間に亘って維持し、小面積での交換を可能とし、且つ高いインテリアデザイン性を有する苔用壁面緑化ユニットを提供する。
【解決手段】苔用壁面緑化ユニット1は、壁面に設置される平板状のパネル体2と、パネル体2に固定される環状構造体3と、環状構造体3の内部空間に収容される苔用人工培地4と、を備え、環状構造体3は、パネル体2に固定される外枠構造体31と、外枠構造体31の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体32と、を有し、苔用人工培地4を収容した内枠構造体32単位での交換を可能とする。この構成により、苔用壁面緑化ユニット1では苔を壁面に設置する際の作業効率が良く、壁面に設置された苔を長期間に亘って維持し、小面積での交換を可能とし、且つ高いインテリアデザイン性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って苔を設置するための苔用壁面緑化ユニットであって、
壁面に設置される平板状のパネル体と、
前記パネル体に固定される環状構造体と、
前記環状構造体の内部空間に収容される苔用人工培地と、を備え、
前記環状構造体は、前記パネル体に固定される外枠構造体と、当該外枠構造体の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体と、を有し、
前記苔用人工培地を収容した前記内枠構造体単位での交換を可能とする、ことを特徴とする苔用壁面緑化ユニット。
【請求項2】
前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底六角筒形状を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項3】
前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底四角筒状体を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項4】
前記環状構造体の外側面には、隣接する前記環状構造体と嵌合するための凹凸部が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項5】
前記苔用人工培地は、保水層と、当該保水層の上層に設けされた繊維層とを有し、且つ、前記繊維層及び前記保水層の上層にはスリット状の複数の切り込みが形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の壁面緑化ユニット。
【請求項6】
前記苔用人工培地の容積は、前記内枠構造体の内部空間の容積より大きい、ことを特徴とする請求項5記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項7】
前記内枠構造体には、さらに、植物を収容するための筒状鉢が着脱可能に収容され、当該筒状鉢の開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成され、
且つ、前記筒状鉢の表面側が前記内枠構造体より突出する、ことを特徴とする請求項5記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項8】
前記パネル体は、複数の同サイズの正六角形パネルの集合体で構成される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の苔用壁面緑化ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内の壁面や、屋外の建築物や構築物の壁面に沿って設置することで、壁面を苔で緑化する苔用壁面緑化ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内の壁面や、建物や構築物の壁面に沿って緑を設置する壁面緑化が盛んになってきている。壁面緑化による効果は様々であり、緑に囲まれた空間にすることにより癒しやリラックス効果が生じる以外にも、都市部の気温の上昇を防ぐヒートアイランド対策、夏期には室温の上昇を抑えて冬期には外に温度が逃げるのを防ぐという省エネ対策などの効果が知られている。このため、壁面緑化は、今後、益々普及が進むものと予測される。
【0003】
植物の壁面緑化の構造に関しては様々な技術が開示されている。例えば、出願人の器材として、通水性素材で被覆された植物を収容する植物収容鉢と、上面が開口されて複数の植物収容鉢を載置するための傾斜部、傾斜部の下端側において水を溜める水溜部、及び水溜部に溜まりきらない水の排水口を有する箱状体と、を備えた壁面緑化構造体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、苔の根部は観葉植物の根部と比較して非常に脆いため、壁面緑化など垂直面に苔を植栽する場合には専用の器材が必要となる。苔用の壁面緑化資材に関しては、ポーラス構造ブロックの外表面に苔又は苔植生マットを層着して外装壁を形成する住居建物の外壁外装用ブロックが開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、ネットで苔とマット・不織布・排水マットが大型ミシンで縫製されて一体化され、これを壁面緑化に用いる構造も開示されている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、建物の屋上・壁面を緑化するために苔を付着させるため、保水マット、苔を絡ませる立体マット、飛散防止ネットの層を有する緑化パネルユニットの構造も開示されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5223025号公報
【特許文献2】特開2002-146991号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“SYSTEMコケ緑化システム”[令和4年10月24日検索]、インターネット<URL:https://moss-yamato.com/system/index.html>
【非特許文献2】“コケ緑化で省エネを実現-環境省”[令和4年10月24日検索]、インターネット<URL:https://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/B_industry/frontrunner/reports/h27engine_22buaroru.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来より苔を農場や植物工場で特殊な光源を用いて促進栽培して短期間で苔を付着させた苔用緑化ユニットを、現場で屋上・壁面に敷き詰めて緑化する構造は知られている。
【0008】
しかしながら、従来の苔用壁面緑化システムは大面積の壁面緑化花壇を形成するには機能的である一方、室内インテリアや壁面花壇として設置される苔の位置の変更や微妙なデザインが困難となり、小面積で詳細なデザインの苔用壁面花壇を作るには不向きであるという問題がある。
【0009】
また、従来の苔用壁面緑化システムでは、観葉植物などと比較して根部の保持力が脆弱な苔類を、長期間、壁面に沿って垂直面に維持することが難しく、定期的な苔植物の生育状態のメンテナンスを要するという問題もある。
【0010】
さらに、従来の苔用壁面緑化システムは、苔を屋外や屋内の壁面に沿って単に作業効率よく設置するための器材であって、インテリアとしての意匠性が非常に乏しいものがほとんどである。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、苔を壁面に設置する際の作業効率が良く、壁面に設置された苔を長期間に亘って確実に維持し、小面積での交換を可能とし、且つ高いインテリアデザイン性を有する苔用壁面緑化ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、壁面に沿って苔を設置するための苔用壁面緑化ユニットであって、壁面に設置される平板状のパネル体と、前記パネル体に固定される環状構造体と、前記環状構造体の内部空間に収容される苔用人工培地と、を備え、前記環状構造体は、前記パネル体に固定される外枠構造体と、当該外枠構造体の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体と、を有し、前記苔用人工培地を収容した前記内枠構造体単位での交換を可能とすることを特徴とする。
【0013】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底六角筒形状を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成されることが好ましい。
【0014】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底四角筒状体を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成されることが好ましい。
【0015】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記環状構造体の外側面には、隣接する前記環状構造体と嵌合するための凹凸部が形成されることが好ましい。
【0016】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記苔用人工培地は、保水層と、当該保水層の上層に設けされた繊維層とを有し、且つ、前記繊維層及び前記保水層の上層にはスリット状の複数の切り込みが形成されていることが好ましい。
【0017】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記苔用人工培地の容積は、前記内枠構造体の内部空間の容積より大きいことが好ましい。
【0018】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記内枠構造体には、さらに、植物を収容するための筒状鉢が着脱可能に収容され、当該筒状鉢の開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成されることが好ましい。
【0019】
この苔用壁面緑化ユニットにおいて、前記パネル体は、複数の同サイズの正六角形パネルの集合体で構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る苔用壁面緑化ユニットは、壁面に設置される平板状のパネル体と、パネル体に固定される環状構造体と、環状構造体の内部空間に収容される苔用人工培地と、を備える。環状構造体は、パネル体に固定される外枠構造体と、外枠構造体の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体と、を有し、苔用人工培地を収容した内枠構造体単位での交換を可能とする。この構成により、本件発明は、苔を壁面に設置する際の作業効率が良く、壁面に設置された苔を長期間に亘って確実に維持し、小面積での交換を可能とし、且つ高いインテリアデザイン性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニットの斜視図である。
【
図4】(a)同上苔用壁面緑化ユニットを構成するパネル体の平面図、(b)同上パネル体の左側面図、(c)同上パネル体の正面図、(d)同上パネル体の背面図である。
【
図5】(a)同上苔用壁面緑化ユニットに備わる環状構造体の分解斜視図、(b)同上環状構造体の斜視図である。
【
図6】(a)同上環状構造体の平面図、(b)同上環状構造体の左側面図、(c)同上環状構造体の正面図、(d)同上環状構造体の背面図である。
【
図7】(a)同上苔用壁面緑化ユニットに備わる第二環状構造体の平面図、(b)同上第二環状構造体の左側面図、(c)同上第二環状構造体の正面図、(d)同上第二環状構造体の背面図、(e)同上第二環状構造体の底面図である。
【
図8】同上苔用壁面緑化ユニットに備わる苔用人工培地の斜視図である。
【
図9】(a)同上苔用人工培地の平面図、(b)同上苔用人工培地の左側面図、(c)同上苔用人工培地の正面図、(d)同上苔用人工培地の背面図である。
【
図10】(a)及び(b)本実施の形態の変形例に係る苔用壁面緑化ユニットに備わる筒状鉢の斜視図である。
【
図11】同上苔用壁面緑化ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニットについて図面を参照して説明する。
図1に示すように、苔用壁面緑化ユニット1は、主として室内の壁面、屋外の建物や構築物の壁面に沿って苔を設置(壁面緑化)するために用いられる。壁面緑化は近年普及が進んでおり、植物による癒し、リラックス効果以外にも、苔は水や肥料を与えなくても生存できることからメンテナンス性、ランニングコスト性に優れている。また、苔の水分が蒸発することによる冷却効果や苔の空気の層による断熱効果による省エネ効果や、ヒートアイランド現象の緩和、紫外線による建築物の劣化を防止する効果が期待されている。
【0023】
苔用壁面緑化ユニット1は、
図1乃至
図3に示すように、パネル体2と、環状構造体3と、苔用人工培地4(以下、人工培地4と記載)と、を備え、これらを組み立てて壁面に設置する。この苔用壁面緑化ユニット1を用いて、例えば、強い光や急激な乾燥に耐える日向用のスナゴケを屋外の壁面に、地を這うように重なりあって日陰で群生を形成する日陰用のハイゴケを屋内の壁面に設置できる。
【0024】
パネル体2は、
図4に示すように、環状構造体3の環状面と同サイズの面積を有する平板状の正六角形パネル21の集合体(本図では3つの正六角形パネル21の集合体)である。パネル体2は、例えば、厚さ3mm程度のABS樹脂を用いて成形され、壁面に浸水して壁面が腐敗することなどを防止する。なお、パネル体2は、例えば、アルミや鉄などを用いて作成することもできる。パネル体2を正六角形パネル21の集合体とすることで、パネル体2を壁面の全方向に自在に展開でき、壁面緑化の意匠性を向上できる。
【0025】
環状構造体3は、
図5に示すように、パネル体2に固定される外枠構造体31と、外枠構造体31の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体32と、を有する。外枠構造体31は、環状構造体(ハニカム構造体)3の外枠の構造体であって、有底六角筒形状を有し、開口を正面とした場合、その上側面には給水口31a、その下側面には排水口31bが形成される。このため、苔用壁面緑化ユニット1の最上縁から給水するだけで全ての人工培地4に効率的に給水でき、潅水管理が非常に容易である。なお、潅水は苔表面に霧吹きなどを用いて行っても良い。外枠構造体31の背面(底面)の中央位置には、ネジなどの固定具を用いてパネル体2に固定するための挿通孔31aが形成される。なお、外枠構造体31は、パネル体2の正六角形パネル31とハニカム構造と重複する位置に固定する。環状構造体3は、例えば、ABS樹脂、アルミ等の金属を用いて作成することもできる。
【0026】
内枠構造体32は、その内部空間に人工培地4が交換可能に収容され、且つ苔の交換時などには人工培地4を収容した内枠構造体32単位で交換する。内枠構造体32は、
図5に示すように、外枠構造体31の内部空間に収容可能となるよう、外枠構造体31と相似形状の有底六角筒形状を有し、開口を正面とした場合、その上側面には給水口32a、その下側面には排水口32bが形成される。そして、例えば、外枠構造体31の内側面には凹部31d、内枠構造体31の外側面には凸部32cが形成され、これらが嵌合することで内枠構造体32が外枠構造体31に嵌め込まれる。
【0027】
なお、
図1乃至
図3に示すように、パネル体2の縁部においては、環状構造体3が設置できない領域が上下で発生する。このため、
図7に示すような有底四角筒形状(本実施の形態では台形筒形状)を有した第二環状構造体5を用いる。この第二環状構造体5の外枠構造体51及び内枠構造体52は、有底四角筒状体を有し、開口面を正面とした場合、環状構造体3と同様に潅水のためその上側面には給水口51a、その下側面には排水口51bが形成される。
【0028】
人工培地4は、
図8及び
図9に示すように、スポンジ状の保水層41及び保水層41の上層に設けられた繊維層42の2層構造を有し、且つ、人工培地4の表面(即ち繊維層42及び保水層41の上層)には複数のスリット状の切り込み42aが並列に形成されている。ここで、保水層41は、例えば厚さ30~40mm程度のスポンジ状ウレタンフォームである。繊維層42は、例えば厚さ2~3mm程度であって、培養される苔の根部が絡み易いような線密度を有し、且つ一定程度の強度を有する金属繊維や合成繊維である。なお、苔用人工培地4の表面の繊維層42に起伏を設けても良い。
【0029】
人工培地4では、培養される種苔が、切り込み42aに沿って埋め込まれ、農場や植物工場などにおいて養生されて、苔の根部が人工培地4の繊維層42に絡まって人工培地4の表面に完全に付着した状態とした後に出荷される。通常、苔は育成に数年を要するが、特殊な光や温度の条件下では、数か月ほどの短期間で育成する。このため、苔の根が人工培地4の繊維層42に十分に絡まり付着した状態で、設置現場に搬入されて壁面に飾りつけられる。この結果、根の付着力が脆弱な苔が、長期間の使用においても壁面から剥がれ落ちることを効果的に防止できる。また、後々の作業等で苔の根部と人工培地4との接触点が動いて植物にストレスを与えることを確実に防止する。その結果、苔の毛細根と人工培地4とのバランスがくずれ、苔にストレスを与えるという事態を防止できる。
【0030】
また、人工培地4の容積を、内枠構造体32の内部空間の容積より多少大きくする。このことで、人工培地4を内枠構造体32の内部空間に押し込むように収容して、苔の根部を切り込み42aが外側から軽く押圧する。この結果、根の付着力が脆弱な苔が、長期間に亘って垂直面から剥がれ落ちることをより効果的に防止できる。
【0031】
次に、苔用壁面緑化ユニット1の使用状態に関して説明する。苔用壁面緑化ユニット1は、
図1に示すように、最初に、パネル体2が屋内の壁面に固定具などを用いて直接取り付けられる。この際、壁面に沿ってパネル体2の領域を自在に展開できる。次に、パネル体2の表面に外枠構造体31をネジなどの固定具を用いて固定する。なお、外枠構造体31の挿通孔31cは固定具の頭部が背面から突出することを防止する。そして、人工培地を収容した内枠構造体32が外枠構造体31に取り付けられる。
【0032】
(変形例)
本発明の実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニット1の変形例に関して
図10及び
図11を参照して説明する。本変形例においては、内枠構造体32に、さらに、観葉植物などを収容するための筒状鉢6が着脱可能に収容される。筒状鉢6の開口面を正面とした場合、その上側面には給水口61、その下側面には排水口(図示せず)が形成される。この筒状鉢6は、六角筒形状を有して、比較的容量・重量のある観葉植物を維持するために、表面側が環状構造体3(内枠構造体32)より突出する。本変形例に係る筒状鉢6を用いることで、苔と観葉植物とが混在した美しい壁面デザインを提供できる。
【0033】
以上の説明のように、本発明は、壁面に沿って苔を設置するための苔用壁面緑化ユニット1であって、壁面に設置される平板状のパネル体2と、パネル体2に固定される環状構造体3と、環状構造体3の内部空間に収容される苔用人工培地4と、を備え、環状構造体3は、パネル体2に固定される外枠構造体31と、外枠構造体31の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体32と、を有し、苔用人工培地4を収容した内枠構造体32単位での交換を可能とする。この構成により、本発明に係る苔用壁面緑化ユニット1は、苔を壁面に設置する際の作業効率が良く、壁面に設置された苔を長期間に亘って確実に維持し、小面積(すなわち人工培地4を収容した内枠構造体32単位での)での交換を可能とし、且つ高いインテリアデザイン性を有する
【0034】
例えば、苔用壁面緑化ユニット1に使用する植物は、生産農家の温室など、別の生育環境のいい場所で、予め根部を人工培地4の表面に付着させ、環状構造体3(内枠構造体32)に収容される。従って、現場で植え替える等の必要が無く、現場では、パネル体2及び外枠構造体31を壁面に設置し、人工培地4の収容された内枠構造体32を外枠構造体32に収容するのみであり、作業性が極めて高く、苔の植替えによる植え痛みも皆無である。
【0035】
また、病気等で傷んだ株の交換に関しても、現場での植え替えは効率的ではなく、その部分のみが幼苗状態であったりすると他部分とのバランスも悪く、見栄えの悪いこととなる。本実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニット1を用いることで、人工培地4を収容した内枠構造体32,52を交換するだけで、小面積単位で極めて容易に花株を交換することができ、作業効率が良い。
【0036】
そして、本実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニット1では、ハニカム構造の環状構造体3を用いるため、配置に関する自由度が大きい。このため、
図1乃至
図3に示すように、従来の苔用壁面花壇とは全くレベルの違う、極めてデザイン性の高い作品作りが可能となり、この結果、インテリアデザインとして屋内の壁面に美しい苔のデザインを提供できる。特に、本実施の形態に係る苔用壁面緑化ユニット1は、パネル体2として正六角形パネル21を用いるため、小規模なディスプレイ用など、自由に環状構造体3の位置を動かせるという極めて大きなメリットがある。
【0037】
また、人工培地4は、保水層41と、保水層41の上層に設けされた繊維層42とを有し、且つ、繊維層42及び保水層41の上層にはスリット状の複数の切り込み42aが形成されている。この構成により、根の付着力が脆弱な苔が、長期間に亘って垂直面から剥がれ落ちることをより効果的に防止できる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、環状構造体3の形状は、ハニカム形状や台形状に限定されるものではなく、その他の形状でもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 苔用壁面緑化ユニット
2 パネル体
3 環状構造体
4 苔用人工培地
5 第二環状構造体(環状構造体)
6 筒状鉢
21 正六角形パネル
31,51 外枠構造体
31a,32a,51a,61 給水口
31b,32b,51b 排水口
31c 挿通孔
31d 凹部
31e 凹凸部
32,52 内枠構造体
32c 凸部
41 保水層
42 繊維層
42a 切り込み
【手続補正書】
【提出日】2023-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って苔を設置するための苔用壁面緑化ユニットであって、
壁面に設置される平板状のパネル体と、
前記パネル体に固定される環状構造体と、
前記環状構造体の内部空間に収容される苔用人工培地と、を備え、
前記環状構造体は、前記パネル体に固定される外枠構造体と、当該外枠構造体の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体と、を有し、
前記苔用人工培地を収容した前記内枠構造体単位での交換を可能とし、
前記パネル体は、複数の同サイズの正六角形パネルの集合体で構成される、ことを特徴とする苔用壁面緑化ユニット。
【請求項2】
前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底六角筒形状を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項3】
前記外枠構造体及び前記内枠構造体は、有底四角筒状体を有し、開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項4】
前記環状構造体の外側面には、隣接する前記環状構造体と嵌合するための凹凸部が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項5】
前記苔用人工培地は、保水層と、当該保水層の上層に設けされた繊維層とを有し、且つ、前記繊維層及び前記保水層の上層にはスリット状の複数の切り込みが形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の壁面緑化ユニット。
【請求項6】
前記苔用人工培地の容積は、前記内枠構造体の内部空間の容積より大きい、ことを特徴とする請求項5記載の苔用壁面緑化ユニット。
【請求項7】
前記内枠構造体には、さらに、植物を収容するための筒状鉢が着脱可能に収容され、当該筒状鉢の開口面を正面とした場合、その上側面には給水口、その下側面には排水口が形成され、
且つ、前記筒状鉢の表面側が前記内枠構造体より突出する、ことを特徴とする請求項5記載の苔用壁面緑化ユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、壁面に沿って苔を設置するための苔用壁面緑化ユニットであって、壁面に設置される平板状のパネル体と、前記パネル体に固定される環状構造体と、前記環状構造体の内部空間に収容される苔用人工培地と、を備え、前記環状構造体は、前記パネル体に固定される外枠構造体と、当該外枠構造体の内部空間に嵌め込まれる内枠構造体と、を有し、前記苔用人工培地を収容した前記内枠構造体単位での交換を可能とし、前記パネル体は、複数の同サイズの正六角形パネルの集合体で構成されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】