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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064891
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】外部との通信が可能な耳栓
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/08 20060101AFI20240507BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240507BHJP
   A61F 11/12 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61F11/08 100
H04R1/10 104Z
A61F11/12 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173842
(22)【出願日】2022-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】513020973
【氏名又は名称】ジェイフォニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】大八木 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】保坂 篤紀
(72)【発明者】
【氏名】大八木 啓之
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BA13
5D005BB11
(57)【要約】
【課題】 騒音環境における騒音は適切に遮断して必要な情報のみが鼓膜に届くように調整すると同時に、通信手段を介する外部との意思疎通を良好に担保し得る外部との通信が可能な耳栓を提供する。
【解決手段】 外耳道の開口部が臨む耳介の凹部である耳甲介に嵌め込むとともに、先端の突出部1Aが前記外耳道に挿入されることにより人の耳介に装着される本体1と、前記耳介の外部環境と前記外耳道との間を連通するように本体1に設けた貫通孔2と、貫通孔2の前記外部環境に臨む部位で貫通孔2の一方の開口部を閉塞するように貫通孔2に配設された音響フィルター3と、音源から伝送される音響信号を再生するよう本体1に埋設されたスピーカ4と、スピーカ4から出力される放射音を、前記外耳道を介し鼓膜に向けて案内するよう本体1内に形成した導音管5とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道の開口部が臨む耳介の凹部である耳甲介に嵌め込むとともに、先端の突出部が前記外耳道に挿入されることにより人の耳介に装着される本体と、
耳介の外部環境と前記外耳道との間を連通するように前記本体に設けた貫通孔と、
前記貫通孔の前記外部環境に臨む部位で前記貫通孔の一方の開口部を閉塞するように前記貫通孔に配設された音響フィルターと、
音源から伝送される音響信号を再生するよう前記本体に埋設されたスピーカと、
前記スピーカから出力される放射音を、前記外耳道を介し鼓膜に向けて案内するよう前記本体内に形成した導音管と、
を有することを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【請求項2】
請求項1に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
前記音響フィルターは、前記外部環境から前記外耳道へ向かう特定周波数帯の音は通過させるとともに、前記スピーカから出力される前記放射音は低減するように構成したことを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
音響フィルターを脱着できるように形成したものであることを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
耳栓の形状を個人の耳の外耳道、耳孔介またはその双方の形状に合わせて作成するように形成したものであることを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
無線受信機あるいはマイクあるいはその双方を連結させる接続金具を有するように形成したものであることを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
前記無線受信機あるいはマイク、あるいはその双方は、前記本体に収納したものであることを特徴とする外部との通信が可能な耳栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部との通信が可能な耳栓に関し、特に高レベルの騒音環境で必要に応じ、聴覚を介した外部との情報の授受を行う用途に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
多くの電子機器等が駆動されている空間である手術室は高レベルの騒音環境となっている。かかる手術室で働く医師や看護師等の医療従事者には、手術の実施等、本来的な医療作業に伴う肉体的、精神的疲労に加え、手術に従事中に晒される高レベル騒音による疲労も重ねて蓄積され集中力の低下を誘発し、また騒音環境は明確なコミュニケーションの妨げとなり、正確な情報伝達が求められる施術の大きな妨害要因となっている。
【0003】
手術室の騒音は、耳栓をすることにより遮音することができる。しかしながら、複数の医師および看護師がチームを組んで手術を円滑に進めるためには、執刀する医師と他の医師との間および看護師との間での意思の疎通が円滑に行われることも肝要である。そこで、騒音防止のために防音だけが目的の耳栓により外耳道を塞いでしまったのでは、必要な意思疎通ができない。
【0004】
また、近年の高度に専門化が進んだ手術においては、当該専門分野に特化した高度の知識や優れた経験を有する著名な医師の指示を受けながら手術を進める場合があり、これは指示を出す医師が別室で別の手術を行っている場合でも同様である。この場合、指示を出す医師と、指示を受ける医師との間では、携帯電話等での通信会話により必要な情報の交換を行っている。ところが、かかる情報の交換に際し、携帯電話による会話の場合、執刀医をはじめ所定の消毒をした医療従事者は、電話機を手で触れる訳にはいかないので、看護師が回線を繋いだ状態で会話を行う医師の耳元に電話機を保持する等の面倒な作業を必要としているのが実情である。
【0005】
このように、特に医療分野では、手術中の適正な騒音対策を実現した上で、執刀医師と他の医師や看護師等の手術チーム内並びに手術室外部との手術中における会話の成立を担保するシステムが待望されている。
【0006】
通常の防音を目的とする耳栓は、いわゆる耳穴用成形品であり、利用者の外耳孔の大きさ形状に適合させるため、所定の標準形状に従って形成して軟性素材の膨張反発力等を利用しているものであり、いずれも耳栓と外耳道との間の隙間を可能な限り密閉して騒音の侵入を防止できるようにしたものが知られている。特許文献1に開示されている耳栓および特許文献2に開示されている耳栓フィルターは、このような耳栓本体に音響フィルターを装備し希望する音域帯を選択して透過させ騒音環境下で必要な情報や音声を聴取することを目的とした耳栓である。
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示される発明では、通信による情報伝達の方法がないために、電話等で会話を行う場合は、その都度耳栓を取り外すか、あるいは耳栓を装着したままで会話を行うこととなり、この場合本来音の制限を行う必要のない会話の音声に対しても、音質音量に変化を与えてしまうこととなる。
【0008】
また、特許文献3の耳栓付きイヤホンでは、通信を行うイヤホンに接着固定した低反発素材で外耳孔を塞ぎ、騒音を遮音する方法を開示している。
【0009】
しかしながら、特許文献3では外部との通信による情報伝達は行えるが、騒音下にある騒音音域全てを防音しているため、騒音環境下の中にある、会話や医療機器の発する警告音等の聴取を必要とする音までも遮音してしまい、会話によるコミュニケーションを正常な音として聴取することができない。
【0010】
また、特許文献4に開示する外耳道内挿入用イヤプラグでは、騒音を遮音するイヤプラグに音響通信を行えるスピーカと環境音を聴取するための音響弁を備えて構成している。
【0011】
しかしながら、特許文献4では、騒音量を電気的に測定し、その量に応じて音響弁を制御することで騒音量を調整し外部周囲音の聴取を行っており、環境の騒音レベルが上がる程、環境音を低減させると同時に会話音も低減させることとなり、騒音環境の中から必要とする情報音を選んで聴取することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭50-148098号公報
【特許文献2】実開平6-33198号公報
【特許文献3】実用新案登録第3221593号
【特許文献4】特表2009-527979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術に鑑み、騒音環境における騒音は適切に遮断して必要な情報のみが鼓膜に届くように調整すると同時に、通信手段を介する外部との意思疎通を良好に担保し得る外部との通信が可能な耳栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
外耳道の開口部が臨む耳介の凹部である耳甲介に嵌め込むとともに、先端の突出部が前記外耳道に挿入されることにより人の耳介に装着される本体と、
耳介の外部環境と前記外耳道との間を連通するように前記本体に設けた貫通孔と、
前記貫通孔の前記外部環境に臨む部位で前記貫通孔の一方の開口部を閉塞するように前記貫通孔に配設された音響フィルターと、
音源から伝送される音響信号を再生するよう前記本体に埋設されたスピーカと、
前記スピーカから出力される放射音を、前記外耳道を介し鼓膜に向けて案内するよう前記本体内に形成した導音管と、
を有することを特徴とする。
【0015】
第2の態様は、
第1の態様に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
前記音響フィルターは、前記外部環境から前記外耳道へ向かう特定周波数帯の音は通過させるとともに、前記スピーカから出力される前記放射音は低減するように構成したことを特徴とする。
【0016】
第3の態様は、
第1または第2の態様に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
音響フィルターを脱着できるように形成したものであることを特徴とする。
【0017】
第4の態様は、
第1または第2の態様に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
耳栓の形状を個人の耳の外耳道、耳孔介またはその双方の形状に合わせて作成するように形成したものであることを特徴とする。
【0018】
第5の態様は、
第1または第2の態様に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
無線受信機あるいはマイクあるいはその双方を連結させる接続金具を有するように形成したものであることを特徴とする。
【0019】
第6の態様は、
第1または第2の態様に記載する外部との通信が可能な耳栓において、
前記無線受信機あるいはマイク、あるいはその双方は、前記本体に収納したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外部の環境音は音響フィルターを介して外耳道に入力され、鼓膜に達するので、不必要な騒音を効果的に遮音して必要な情報のみが聞こえるようにすることができる。同時に、外部から伝送されてきた音響信号を再生したスピーカの放射音を導音管から外耳道を介して鼓膜に導くことができるので、スピーカを介しての外部との意思疎通は良好に担保することができる。
【0021】
この結果、環境の騒音を効果的に遮断して周囲との必要な会話を行いつつ外部からの緊急の電話等による情報のやり取りも良好に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓を装着する耳介を概念的に示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓(右耳用)を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓(右耳用)を示す右側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓に配設する音響フィルターの構成例を示す縦断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓の受信機部分を含む全体を示す正面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る外部との通信が可能な耳栓を耳介に装着した使用時の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態の説明に先立ち、当該外部との通信が可能な耳栓を装着する耳介の構造に関して簡単に説明しておく。図1は当該耳栓を装着する耳介Aを概念的に示す模式図である。同図に示すように、耳甲介01は、耳甲介舟01Aと耳甲介腔01B、外耳道01Cからなり、外部との通信が可能な耳栓I(図2参照;以下同じ)を装着する凹部となっている。図示はしないが、外耳道は耳甲介腔01Bに臨んで開口している。また、同図中、02は耳輪、03は耳垂で、耳介Aの外縁形状を形成している。
【0024】
<実施の形態>
図2は本発明の実施の形態に係る耳栓(右耳用)を示す正面図、図3はその右側面図である。両図に示すように、本形態に係る耳栓Iは、本体1、貫通孔2、音響フィルター3、スピーカ4、導音管5を有している。このうち本体1は、外耳道の開口部が臨む耳介A(図1参照;以下同じ)の凹部である耳甲介01(図1参照;以下同じ)の耳甲介腔01B(図1参照;以下同じ)に嵌め込むとともに、先端の突出部1Aが外耳道に挿入されることにより耳介A(図1参照;以下同じ)に装着される。
【0025】
ここで、本体1の材料としては加工性に優れ、適度な弾力を有するため装着感が良好なシリコンゴムが好適である。また、外部から侵入する環境音を最大限度低減するためには、音響フィルター3で調整できない耳孔介腔01Bと耳栓Iとの隙間からの環境音の侵入を、可能な限り低減する効果を高め、高度な騒音低減性能を得るには、利用者個人の耳孔介腔01Bおよび外耳道01Cの形状を採取し、その形状で耳栓Iを作成する、すなわち個人に固有の耳孔介腔01Bおよび外耳道01Cの形状に合わせた専用品とするのが望ましい。ここで、耳孔介腔01Bまたは外耳道01Cのいずれか一方の形状を採取して、その形状で耳栓Iを形成しても良い。この場合でも、かなりの騒音低減効果は期待できる。
【0026】
貫通孔2は、耳介Aの外部環境と外耳道との間を連通するように本体1に設けてある。貫通孔2の外部環境に臨む部位には、貫通孔2の一方の開口部(外部環境側の開口部)を閉塞するように音響フィルター3が配設してある。ここで、音響フィルター3は、貫通孔2を介して鼓膜を振動させたい周波数の外部音、例えば人の声は減衰させることなく透過させ、騒音として感じられる低周波数域の機械音や、高周波数域の機械音は可及的に低減されるように用途に応じて適切に特性を設定してある。
【0027】
本形態に係る耳栓Iは、後に詳述するように本体1内にスピーカ4が埋設されており、外部の音源から伝送される音響信号を再生するように構成してある。そこで、通信を介してスピーカ4から外耳道内に放射された音は、音響フィルター3を透過して、あるいは本体1と外耳道の隙間から外部環境へ漏出する可能性があるが、かかる漏出音は可及的に低減する必要がある。漏出が生起されると通信情報の音量を半減させ、また通信会話に関しない周囲の人にとっては騒音を増加させることとなり、さらに通信内容が外部環境に漏れ出ることで守秘義務を要するような内容の会話が行えなくなる場合が発生するからである。
【0028】
かかる問題を解決する為には、音響フィルター3に方向特性を持たせれば良い。
かかる音響フィルターの構造の一例を図4に示す。
【0029】
図4は本形態における音響フィルター3の縦断面図である。同図に示すように、音響フィルター3は、外部環境側から外耳道の内部側(鼓膜側)に向かう方向(図3に矢印で示す方向)における特定周波数の音は選択的に透過させるが、鼓膜側から外部環境側へ向かう方向の音は遮断するように構成してある。これは、例えば音響フィルター3を重層構造で形成することにより、構成されるフィルター膜の素材性能に加えて、フィルター膜間に適切な共振空間を設けてある。具体的には、図4に示すように、音響フィルター3を、円板状の2枚のフィルター膜3A,3Bを相対向させて円筒状の枠体3Cに固定して構成する。ここで、フィルター膜3Aは平板状の部材で、その一方の面を外部環境側に臨ませる一方、フィルター膜3Bは、外耳道内部側(鼓膜側)に凸となる所定の曲率を持つ曲面を構成して鼓膜側に臨ませる。このように、2枚あるいは複数枚(図では2枚)のフィルター膜3A,3Bの重層構造を有する音響フィルター3を用いる事により、特定任意の音域を選択して透過させることが可能となる。
【0030】
さらに詳言すると、フィルター膜3A,3Bの重層構造のうち外耳道内部側となるフィルター膜3Bの鼓膜側の形状を凸面として成形し、特定のふくらみを持たせる事によりフィルター膜3A,3B間に形成される共振空間3Dにおけるフィルター膜3A,3B間の距離L1,L2,L3に差異(L1>L2>L3)を設けることができる。この結果、フィルター膜3A,3Bの両面の表面積に差違が形成され、鼓膜側から外部環境側への振動の伝播を低減させることができる。
【0031】
すなわち、フィルター膜3Aの平面側から伝播した外部環境の音の振動波が、この共振空間3D内を伝わって曲面側のフィルター膜3Bに振動として伝わり、曲面の表面が振動することによって鼓膜側の外耳道内の空気に振動を拡散し音として伝わる一方、鼓膜側の外耳道内のフィルター膜3Bの曲面側から伝えられた振動は、表面積を縮小された平面側に到達する以前に共振空間3D内で、外耳道で反射された振動波、すなわちスピーカ4から外耳道内に放射された音が曲面構造による到達時間のズレにより逆位相を発生させ、振動を相殺させることで音を低減させる。
【0032】
さらに本形態ではフィルター膜3B自体も鼓膜側の形状が凸面となるように構成されている。すなわち、距離L1,L2,L3に対応する部分のフィルター膜3Bの膜厚T1,T2,T3はT1>T2>T3となっており、外耳道で反射された振動波が曲面構造による到達時間のズレにより逆位相を発生させ、振動を相殺させてスピーカ4から外耳道内に放射された音を低減させるという効果はフィルター膜3B自体でも生起される。この結果、共振空間3Dでの低減効果と相俟ってフィルター膜3Bでの低減効果も相乗され、より適切な所望のフィルター効果が得られる。
【0033】
このように、フィルター膜3Bの表面曲率とフィルター膜3Bの厚み、及び成形素材の振動係数、さらにはフィルター膜3B自体の表面曲率を複合的に加味した構造とすることにより、主に会話領域帯の振動周波数である250Hzから4000Hzの周波数の振動の伝達に制限を加えられ、この結果、音響フィルター3からの漏出という逆透過の現象を可及的に低減することができる。
【0034】
スピーカ4は、例えば電話の送信機である音源から伝送される音響信号を再生するもので、本体1の内部に埋設されている。このスピーカ4には、一端が接続金具コネクタ6に接続されて本体1の内部に埋設されたリード線7A,7Bの他端が接続されている。コネクタ6は、外部環境に臨む開口を有し、耳介Aの外部の電気機器、例えば無線通信機器の受信機(図2図3には図示せず)が接続される。導音管5は、スピーカ4から出力される放射音が外耳道を介し、鼓膜に向けて放射されるように案内するもので、本体1の内部に形成してある。
【0035】
ここで、導音管5はスピーカ4の出力音が本体1の突出部1Aの先端と鼓膜との間の外耳道空間に放射されるように案内する機能を有していれば良い。そこで、本形態では、導音管5の両端の開口のうちスピーカ4の反対側(放射側)の開口5Aが貫通孔2の途中に開口するように貫通孔2に接続されている。かくして本形態においては、スピーカ4から放射した音響は貫通孔2を介して外耳道に至り鼓膜を振動させるようになっている。
【0036】
図5は本形態に係る外部との通信が可能な耳栓の受信機部分を含む全体を示す正面図である。同図左側が右耳用、右側が左耳用である。同図に示す実施の形態の場合には、例えばブルーツース伝送方式における送信機から無線伝送される音響信号を受信する受信機8がフレーム9を介して本体1と一体化されており、図6に示すようにフレーム9を耳介Aの耳輪02の内側に懸けることにより装着するようになっている。ここで、フレーム9には、受信機8に一端側が接続されるとともに他端側がコネクタ6(図2参照)に接合されるリード線が埋設してある。
【0037】
この結果、送信機(図示せず)から、例えばブルーツース方式の無線により送出された音響信号は、受信機8で受信し、スピーカ4(図2参照)で所定の音響に再生され、導音管5(図2参照;以下同じ)に向けて放射される。かかる音響は、導音管5を介して貫通孔2(図2参照)に至り、さらに外耳道を介して鼓膜を振動させ、音声情報として聴取される。したがって、別途マイクを用意しあるいは受信機8にマイク10を付属させておくことで送話機能と受話機能とを有する電話システムとして組み合わせれば、第3者との会話を成立させることができる。かかる会話システムは、必ずしも無線を介する必要はない。送信機能と受信機能とを有線で結合するように構成しても構わない。
【0038】
上述の如き本形態によれば、外部の環境音は音響フィルター3を介してその低音域や高音域の騒音成分が低減された後、外耳道に入力されて鼓膜に達するので、不必要な騒音を効果的に遮音して必要な情報のみが聞こえるようにすることができる。すなわち、騒音が原因となる疲労を感じることなく必要な会話を進めることができる。
【0039】
同時に、外部から伝送されてきた音響信号を再生したスピーカ4の放射音を導音管5から外耳道を介して鼓膜に導くことができるので、スピーカ4を介しての外部との意思疎通を良好に図ることもできる。特に、本形態では音響フィルター3が、その外部環境側から鼓膜側方向への音のみを透過し、音響フィルター3の鼓膜側から外部環境側へ向かう音は低減するように構成した、すなわち特定周波数帯域の音であっても外部環境側から鼓膜側へ向かう一方向のみの音を透過させるように構成しているので、スピーカ4から放射される会話の内容が外部環境に漏洩するのを可及的に防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
I 外部との通信が可能な耳栓
1 本体
2 貫通孔
3 音響フィルター
4 スピーカ
5 導音管
10 マイク


図1
図2
図3
図4
図5
図6