(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064907
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、及び、航走体
(51)【国際特許分類】
B63H 11/103 20060101AFI20240507BHJP
B63H 11/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B63H11/103
B63H11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173861
(22)【出願日】2022-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】721009461
【氏名又は名称】山本 茂
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂
(57)【要約】
【課題】航走体に用いる推力を、回転機構が無くて、製造及びメンテナンスが容易な構造の推力発生システムで得る。
【解決手段】水蒸気で構成される気体S2、又は、水蒸気Sw1を含む気体G2を駆動流体Fd2として使用して、駆動流体Fd2の噴射によるベンチュリー効果により水W2を吸引し、この吸引した水W2で駆動流体Fd2を冷却して、駆動流体Fd2に含まれている水蒸気S2、Sw1を凝結させて、水W2を吸引する吸引力を増加すると共に、水蒸気S2、Sw1の凝結水Ws2と吸引した水W2を噴射することにより、推力Tを得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気で構成される気体(S2)、又は、水蒸気(Sw1)を含む気体(G2)を駆動流体(Fd2)として使用して、前記駆動流体(Fd2)の噴射によるベンチュリー効果により水(W2)を吸引し、この吸引した水(W2)で前記駆動流体(Fd2)を冷却して前記水蒸気(S2、Sw1)を凝結させて、前記水(W2)を吸引する吸引力を増加すると共に、前記水蒸気(S2、Sw1)の凝結水(Ws2)と吸引した水(W2)を噴射することにより、推力(T)を得ることを特徴とする噴射式推力発生方法。
【請求項2】
前記駆動流体(Fd2)と前記吸引した水(W2)とを混合して、直接接触により前記駆動流体(Fd2)を冷却して、前記駆動流体(Fd2)に含まれている水蒸気(S2、Sw1)を凝結させることを特徴とする請求項1に記載の噴射式推力発生方法。
【請求項3】
水蒸気(S1)、又は、水蒸気(Sw1)を含む気体(G1)、又は、気体(G1)と水(W1)とを接触又は混合することにより、前記駆動流体(Fd2)を生成することを特徴とする請求項1に記載の噴射式推力発生方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の噴射式推力発生方法を用いて発生した推力を、航走体を推進させる推進力の一部又は全部とすることを特徴とする航走体の推進方法。
【請求項5】
水蒸気(S2)、又は、水蒸気(Sw1)を含む気体(G2)で構成される駆動流体(Fd2)を生成する気化膨張部(30A、30B)と、
前記気化膨張部(30A、30B)の出口に設けられた駆動ノズル(34A)から噴射される前記駆動流体(Fd2)の噴射に伴うベンチュリー効果により水(W2)を吸引して、この吸引した水(W2)で前記駆動流体(Fd2)を冷却して、前記駆動流体(Fd2)に含まれる水蒸気(S2、Sw1)を凝結する冷却凝結部(40A、40B)と、
前記冷却凝結部(40A、40B)に連続して設けられる末広部材(51A、51B)を有して構成され、前記駆動流体(Fd2)と吸引された水(W2)とで構成される噴射流体(W3、F3)の圧力を回復する圧力回復部(50A、50B)と、
前記圧力回復部(50A、50B)で圧力を回復した噴射流体(W3、F3)を噴射する噴射部(60A、60B)を有して構成されていることを特徴とする噴射式推力発生システム。
【請求項6】
水蒸気(S1)、又は、水蒸気(Sw1)を含む気体(G1)、又は、気体(G1)と水(W1)とを接触又は混合することにより、前記駆動流体(Fd2)を生成する気化膨張部(30A、30B)を備えて構成されていることを特徴とする請求項5に記載の噴射式推力発生システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の噴射式推力発生システムを備えていることを特徴とする航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に接する面を有する航走体に使用する推力の発生に関し、より詳細には、回転機構が無くて製造及びメンテナンスが容易な構造で推力を得ることができる、噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、及び、航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
水上を航行する船舶や水中を潜航する潜水艦等の航走体においては、航走体が移動する際に水に接する面が水から流体抵抗を受けるため、これに抗する推進力を発揮する必要がある。そのため、多くの場合、航走体の船尾に推進器を設けて、航走のための推進力を得ている。
【0003】
この推進器としては、一般的にスクリュウプロペラ推進器とウォータージェット推進器が採用されている。このような推進器では、プロペラ又はポンプを駆動するために回転力を必要としており、そのため、ディーゼルエンジン、タービンエンジン、発電機と電動機の組み合わせ等を用いることが多い。そのため、推進システムが複雑になり、製造時においても、また、保守点検時においても、高度な技術が必要となり、高コストとなっている。これに対して、回転力を利用せずに、ガスや水を噴射することで推力を得る方法が幾つか提案されている。
【0004】
例えば、圧縮機から燃焼機を介してタービンがあるターボジェットの排気ガスを、海水中の筒内に配置された多数の小径管から筒内の海水中に噴射して、排気ガスと海水と混ぜて、噴射流体を作り、後方に噴射することで、推力を得る船舶用の分散噴射型エンジンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この船舶用エンジンでは、排気ガスを小径管から分散噴射して、筒内の海水に混入して、筒前方から海水を吸引しつつ、筒の後方から噴射する構成となっている。そして、排気ガスを前後開放の筒の中間部に後方に向けて噴射することで、排気ガスの圧力エネルギーから変換された速度エネルギーを海水の吸引と噴出に用いている。これにより、海水と接して常温(約50度)及び低圧(2パスカル)となった排気ガスの噴出で、海水を加速して、排気ガスと海水を後方に噴射することで推力を得ている。なお、タービンを通過した排気ガスは、噴射時には、燃焼時の1000℃から50℃に低下して、温度による熱膨張が略無くなった状態で噴射されている。
【0006】
また、可燃性ガスの燃焼時における膨張を利用して推力を発生する船舶推進装置として、前端に逆止弁と後端に噴射口を備えた燃焼室において、逆止弁から注水した充填水の上に可燃性ガスを圧入し、点火により可燃ガスを急激に燃焼させて拡大膨張させることで、充填水の全部を噴射口から噴出し、推力を発生する船舶推進装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
この船舶推進装置では、燃焼して拡大膨張した燃焼ガスが常温まで冷却収縮することで、充填水を吸引する。これにより、回転駆動型原動機、動力伝達用の推進軸およびスクリューが不要になるので、主要な駆動機構に摩擦箇所が少ない簡素な構造となり、水質汚染や騒音の発生が少なく、しかも、取り扱いが容易な船舶推進装置となるとされている。
【0008】
また、圧縮空気とイオン(水素イオンなど)とを燃焼室にて混合し、燃焼爆破させることにより得られた燃焼ガスを、ジェット流として噴射ノズルに供給すると共に、このジェット流に、水汲上装置から汲み上げた水を加えて水中に噴射する水中噴射ジェット装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この水を加える効果については、「海水汲上装置から汲み上げた水を一緒にして水中に噴射するとより一層の船の推進力が得られる。」と記載されているが、ジェット流に水を加える方法や構成に関しては具体的な記載はない。
【0009】
また、海水を燃焼高圧ガスで直接的に加圧し、船外に高速で噴射することで推進力を得る、水噴射型推進システム船舶が提案されている(例えば、特許文献4参照)。ここでは、燃焼圧力を、燃焼室の下側の垂直配管内に配置された断熱フリーピストンを介して高圧蓄圧配管内の海水を直接的に加圧する構造となっている。そして、燃焼量の増減で燃焼圧力を調整して、海水圧力の影響を受ける海水の噴射速度と噴射量を調整して、推進力を調整している。
【0010】
また、スクリュウなどの機械作動でなく、蒸気及び過熱高圧蒸気の噴射による水圧の変化を利用して、ジェット水流を発生させて、推進力を得る筒体装置が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この筒体装置では、ジェット流により周囲から水を吸引して、後方に排出することで推進力を得ているが、蒸気及び過熱高圧蒸気を用いる理由に関しては「蒸気噴射に依る水圧の変化を利用して、ジェット水流を発生させる。」「ジェット水流発生の、」「ジェット水流発生の、減圧帯発生に噴射する蒸気は過熱高圧蒸気を使用する。」の記載だけで、具体的な記載はない。
【0011】
また、スクリューによって発生した軸方向高速水流の内部に、ガス吹出管及び噴射ノズルの壁面のガス放出口から、排気ガス等の低圧気体又は高圧ガスを吸引させて、ガスを水と混合させて、噴射ノズルから放出する推力増進装置が提案されている(例えば、特許文献6参照)。この推力増進装置では、ガスが水と混合した後に、気泡を大量に発生し、噴射ノズルの縮径部でガス圧縮機能により圧縮されて、噴射ノズルから放出されるときに、内外の圧力差によって気泡が瞬間膨張することで、反作用力を増大させ、噴水推進装置の推力を増進するとされている。
【0012】
さらに、燃焼チャンバで発生させた高温ガスを、燃焼チャンバの排気ノズルから外部の水中に噴射することで、推進力を得る船舶用推進システムと、この高温ガスのノズル内への噴射で、前方の水を吸引して後方に噴射することで、推進力を得る船舶用推進システムが提案されている(例えば、特許文献7参照)。これらの船舶用推進システムでは、推進力は、高温ガスの推進力(航空機のジェットエンジンと同様である)と、排気ノズルの近傍において水中に形成された気泡の背圧とによって得られるとされている。
【0013】
これらの特許文献1~7に記載されたいずれの構成においても、排気ガスの温度による体積の変化、水蒸気の温度による体積の変化、水蒸気の凝縮による気相から液相への変化による体積の変化、及び、これらの体積の変化に基づく圧力の変化(負圧の発生)に関しては、全く触れておらず、これらの特性を生かした装置となっていない。特に、水蒸気の凝縮(液化)による体積の減少に伴って発生する負圧、及びこの負圧を利用した外部水の吸引力の増加に関しては触れていない。
【0014】
一方、
図16に示すように、ベンチュリー効果を利用して、ディフューザ(末広ノズル)ののど部に配置された第1のノズル220から高速で噴射される第1の流体Sにより、第1のノズル220の周囲の圧力を低下させて、この低圧を利用して第2の流体W1を吸引した後、広がり部214で減速昇圧させて、吸引した第2流体W1を第1の流体Sに混合して昇圧し、噴射する装置200がある。なお、第1の流体Sが液体の排出装置の場合は「エジェクター、エゼクタ:Ejector」と呼ばれ、第1の流体Sが気体の排出装置の場合は「エダクター(Eductor)」と呼ばれる場合があるが、ここでは、両方を「エジェクター(Ejector)」(水エジェクター、蒸気エジェクター、空気エジェクター)と呼ぶことにしている。これらの装置は、簡単な構造で、運動部分がないために、耐久性及び信頼性が高い。
【0015】
また、ボイラ等で用いる装置で、「インジェクター」と呼ばれる装置がある。この「インジェクター」では、管内に噴射された蒸気はその内部に霧吹きの原理で低圧を作り出し、水を吸い込む。吸引された水は噴出する蒸気により加速される。この過程では、蒸気は常温の水と混合凝縮し、結果としてある程度高温の運動エネルギーが大きい液体となる。
【0016】
また、本発明の参考となる「単純な構造の推力発生用機関」として、航空機用エンジンのパルスジェットエンジン(間欠燃焼型のジェット推進機関)がある。このパルスジェットエンジンには、
図14に示すような、燃焼室110と長い排気管120を備えているパルスジェットエンジンAと、
図15に示すような、U字型のバブルレスパルスジェットエンジン100Bがある。
【0017】
この
図14に示すパルスジェットエンジン100Aでは、燃焼室110の空気取入口111には、入口逆流防止弁112が設けられ、燃焼ガスGの出口には、燃焼で発生する衝撃波を反射して、吸気を圧縮するための絞り部113があるノズルが設けられている。そして、入口逆流防止弁112を持つ空気取入口111から燃焼室110内に取り入れた空気Aに燃料Fが吹き込まれて(最初のみ点火装置132により点火されて)燃焼する過程(低容量燃焼)と、燃焼により圧力が上昇する(断熱膨張)と共に、入口逆流防止弁112が閉じて、燃焼ガスGが排気管120から流出する過程と、慣性により燃焼ガスGが流出して、燃焼室110の圧力が大気圧以下に下がる(低圧冷却)と入口逆流防止弁112が開いて新気Aが導入される過程が、サイクルとして繰り返される。そして、燃焼ガスGの排出により、推進力が発生する。
【0018】
また、
図15に示すバブルレスパルスジェットエンジン100Bでは、入口逆流防止弁112を設ける替りに、細管114で燃焼ガスGの噴射方向とは逆方向から空気Aを吸引する構造となっている。なお、排気管120は、排出圧力を高めるため、拡径している。
【0019】
これらのパルスジェットエンジンは、混合気が圧縮されて爆発するため、通常の燃焼より効率が良く、熱効率もよい上に、回転駆動部等が無く、構造が非常に単純なため低コストで大量生産に適している。その一方で、ターボジェットエンジンに比べて圧縮率が低く燃費の割に推力が低く性能が低い上に、騒音と振動が大きい。そのため、現状では、航空機用のエンジンとしてではなく、給湯器の熱供給源の「パルス燃焼器」等で利用されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2013-117230号公報
【特許文献2】特開2016-107665号公報
【特許文献3】特開2000-168683号公報
【特許文献4】特開2009-126509号公報
【特許文献5】特開2008-302912号公報
【特許文献6】特開2013-52719号公報
【特許文献7】特表2011-520691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記のような、構造が単純なパルスジェットエンジンと、スチーム・エジェクターの構造の類似性と、スチーム・エジェクターのベンチュリー効果による流体の吸引作用を考えると、駆動流体の水蒸気を凝結させて負圧を発生させることで、スチーム・エジェクターの吸引効果を最大限に発揮させつつ、吸引した第2の流体を推力に利用できるのではないかとの知見に至った。
【0022】
そして、スチーム・エジェクターの駆動流体である高圧蒸気に水を吸引させて蒸気にしただけでは、噴出する容積の割に質量が小さく、大きな推力の発生は難しいと考えた。また、周囲の海水を利用してスチーム・エジェクターの内部に海水を導入すると、海水中の塩分の析出が発生するので、これを回避するために、スチーム・エジェクターのベンチュリー効果で発生する負圧を利用して、高い位置にある水タンク内に水を吸引してから、この水の位置エネルギーを利用して水を噴射させて推力を得ることも考えられるが、水タンクの必要性や駆動流体である水蒸気の冷却の問題があり、推力発生システムが複雑化し、また、エネルギー効率も悪いと考えた。
【0023】
本発明は上記のことを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高エンタルピーの気体と水蒸気の温度の低下による体積の変化、特に水蒸気の凝結による体積の減少を利用しつつ、エジェクターにおける、駆動流体の噴射による周囲の水を吸引するベンチュリー効果と、ディフユーザーによる流体の減速による圧力の上昇の効果を取り入れて、推力を発生することにより、回転機構が無くて構造が単純で製造及びメンテナンスが容易な、噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、航走体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記のような目的を達成するための本発明の噴射式推力発生方法は、水蒸気で構成される気体、又は、水蒸気を含む気体を駆動流体として使用して、前記駆動流体の噴射によるベンチュリー効果により水を吸引し、この吸引した水で前記駆動流体を冷却して前記水蒸気を凝結させて、前記水を吸引する吸引力を増加すると共に、前記水蒸気の凝結水と吸引した水を噴射することにより、推力を得ることを特徴とする噴射式推力発生方法である。
【0025】
この方法によれば、体積の大きい気相状態の水蒸気を駆動流体の全部又は一部として使用し、この駆動流体を冷却することで、体積の小さい液相状態の水に凝結させて、低圧状態(負圧状態)を作り出して、周囲の水を大量に吸引することができる。そして、この大量の水を噴射することにより、効率よく、推力を発生できる。
【0026】
そして、この噴射式推力発生方法では、エジェクターのベンチュリー効果を利用するため、高エンタルピー(内部エネルギーと圧力エネルギーの和)の水蒸気又は水蒸気を含む気体を噴射できれば良いので、ウォータージェット推進で用いているような「高圧ポンプ(軸流水ポンプ)」、「インペラと呼ばれるプロペラ」とよばれる回転機構を用いる必要が無くなる。従って、この噴射式推力発生方法を実施するための装置及びシステムは、回転機構が無い単純な構成となり、回転機構が無いので、設計、製造、試験、保守点検などが簡素化され、低コストで提供できるようになる。
【0027】
そして、上記の噴射式推力発生方法において、前記駆動流体と前記吸引した水とを混合して、直接接触により前記駆動流体を冷却して、前記駆動流体に含まれている水蒸気を凝結させる。これにより、簡単な構成で、効率よく、駆動流体を冷却できる。
【0028】
また、上記の噴射式推力発生方法において、水蒸気、又は、水蒸気を含む気体、又は、気体と水とを接触又は混合することにより、前記駆動流体を生成する。これにより、簡単な構成で、効率よく、水蒸気を含む駆動流体を生成できる。
【0029】
また、上記のような目的を達成するための本発明の航走体の推進方法は、上記の噴射式推力発生方法を用いて発生した推力を、航走体を推進させる推進力の一部又は全部とすることを特徴とする航走体の推進方法である。この方法により、回転機構が無くて構造が単純で製造及びメンテナンスが容易な噴射式推力発生装置を用いて、航走体を推進することができる。
【0030】
また、上記のような目的を達成するための本発明の噴射式推力発生システムは、水蒸気、又は、水蒸気を含む気体で構成される駆動流体を生成する気化膨張部と、前記気化膨張部の出口に設けられた駆動ノズルから噴射される前記駆動流体の噴射に伴うベンチュリー効果により水を吸引して、この吸引した水で前記駆動流体を冷却して、前記駆動流体に含まれる水蒸気を凝結する冷却凝結部と、前記冷却凝結部に連続して設けられる末広部材を有して構成され、前記駆動流体と吸引された水とで構成される噴射流体の圧力を回復する圧力回復部と、前記圧力回復部で圧力を回復した噴射流体を噴射する噴射部を有して構成されていることを特徴とする噴射式推力発生システムである。この噴射式推力発生システムによれば、上記の噴射式推力発生方法を実施でき、同様の効果を発揮できる。
【0031】
そして、上記の噴射式推力発生システムにおいて、水蒸気、又は、水蒸気を含む気体、又は、気体と水)とを接触又は混合することにより、前記駆動流体を生成する気化膨張部を備えて構成されている。これにより、簡単な構成で、効率よく、水蒸気を含む駆動流体を生成できる。
【0032】
また、上記のような目的を達成するための本発明の航走体は、上記の噴射式推力発生システムを備えていることを特徴とする航走体である。これにより、上記の噴射式推力発生方法と上記の噴射式推力発生システムと同様の効果を発揮できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、航走体によれば、高エンタルピーの気体と水蒸気の温度の低下による体積の変化、特に水蒸気の凝結による体積の減少を利用しつつ、エジェクターにおける、駆動流体の噴射による水(第2の流体)の吸引の効果と、ディフユーザーによる流体の減速による圧力の上昇の効果を取り入れて、推力を発生することができる。従って、回転機構が無くて製造及びメンテナンスが容易な構造で推力を得ることができる、噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、航走体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の噴射式推力発生システムにおける機能を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態の噴射式推力発生システムにおける具体的な構成を例示する側断面図である。
【
図3】一次水の導入の第2の方法に関する図であり、(a)は、機能を示すブロック図で、(b)は、構成を例示する図である。
【
図4】一次水の導入の第3の方法に関する図であり、(a)は、機能を示すブロック図で、(b)は、構成を例示する図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態の噴射式推力発生システムにおける機能を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態の噴射式推力発生システムにおける具体的な構成を例示する側断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態の噴射式推力発生システムにおけるガス発生部とガス供給部が一体化した構成を部分的に例示する側断面図である。
【
図8】噴射式推力発生システムにおける噴射式推力発生ユニットを例示する図で、(a)は側断面図で、(b)は平面図で、(c)は正面図で、(d)は背面図である。
【
図9】航走体における噴射式推力発生ユニットが船内に配置された例を示す図で、(a)は噴射式推力発生ユニットが水面上に配置されて水上噴射する側面図で、(b)は(a)の船舶の底面図であり、(c)は噴射式推力発生ユニットが水面下に配置されて水中噴射する側面図で、(d)は(c)の船舶の底面図である。
【
図10】航走体における噴射式推力発生ユニットが船側の水面上に配置された例を示す図で、(a)は噴射式推力発生ユニットが船内水路を利用した側面図で、(b)は(a)の船舶の底面図であり、(c)は噴射式推力発生ユニットが船外水路を利用した側面図で、(d)は(c)の船舶の底面図である。
【
図11】航走体における噴射式推力発生ユニットの船尾側の水面上に配置されて水上に噴射する例を示す図で、(a)は噴射式推力発生ユニットが船底部から吸引する船内水路に配置された側面図で、(b)は(a)の船舶の底面図であり、(c)は噴射式推力発生ユニットが船側側から吸引する船内水路に配置された側面図で、(d)は(c)の船舶の底面図である。
【
図12】航走体における噴射式推力発生ユニットの船尾側の水面下に配置されて水中に噴射する例を示す図で、(a)は噴射式推力発生ユニットが船底部から吸引する船内水路に配置された側面図で、(b)は(a)の船舶の底面図であり、(c)は噴射式推力発生ユニットが船側側から吸引する船内水路に配置された側面図で、(d)は(c)の船舶の底面図である。
【
図13】航走体における噴射式推力発生ユニットが船側に配置されて水中に噴射する例を示す図で、(a)は噴射式推力発生ユニットが船首側に配置された側面図で、(b)は(a)の船舶の底面図であり、(c)は噴射式推力発生ユニットが船尾側に配置された側面図で、(d)は(c)の船舶の底面図である。
【
図14】本発明の参考となるパルスジェットエンジンの構成を例示する側断面図である。
【
図15】本発明の参考となるU字形状のバルブレスパルスジェットエンジンの構成を例示する側断面図で、(a)空気を吸引して燃料を供給する構成を示す図であり、(b)は、燃料と空気を供給する構成を示す図である。
【
図16】本発明の参考となるスチーム・エジェクターの構成を例示する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔イントロ及び図の概説〕以下、図面を参照して本発明に係る、噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム、及び、航走体の実施の形態について説明する。なお、ここで示す図面は本発明を説明するための概略図であり、必ずしも正確な寸法の比率で示しておらず、また、必ずしも正確な位置を示すものではない。
【0036】
本発明に係る第1の実施の形態の噴射式推力発生方法と噴射式推力発生システムは高エンタルピーの水蒸気を駆動源とするものであり、また、本発明に係る第2の実施の形態の噴射式推力発生方法と噴射式推力発生システムは高エンタルピーのガス(水蒸気を含まない)を駆動源とするものである。そして、本発明に係る第3の実施の形態の噴射式推力発生方法と噴射式推力発生システムは、高エンタルピーのガス(水蒸気を含む)を駆動源とするものである。
【0037】
そして、
図1~
図7は、噴射式推力発生システムの構成を示す図であり。
図8は、噴射式推力発生ユニットの構成を示す図であり、
図9~
図13は、航走体の構成を示す図である。また、
図14と
図15は、本発明の参考となるパルスジェットエンジンの説明用の側断面図であり、
図16は、本発明の参考となるスチーム:エジェクターの側断面図である。
【0038】
より詳細には、
図1~
図4は、高エンタルピーの水蒸気を駆動流体とする噴射式推力発生システムを示し、また、
図5、
図6は、高エンタルピーのガス(気体)を駆動流体とする噴射式推力発生システムを示す。
図7は、燃焼ガスの発生器と気体膨張部を一体化した噴射式推力発生システムを示す。そして、
図1、
図3(a)、
図4(a)及び、
図5は、噴射式推力発生システムの基礎構成要素とその機能を示すブロック図であり、
図2、
図3(b)、
図4(b)、及び、
図6は、噴射式推力発生システムの具体的な構成を模式的に示す側断面図である。
【0039】
また、
図9~
図13は、本発明の噴射式推力発生システムを備えた航走体における噴射式推力発生ユニットの配置を例示する図である。より詳細には、
図9は、吸引口を船首部に配置した例を示し、
図10は吸引口を船側に配置した例を示し、
図11及び
図12は、吸引口を船尾に配置した例を示す。また、
図13は、噴射式推力発生ユニットを船側に配置した例を示す。
【0040】
〔実施の形態〕最初に、噴射式推力発生システムの実施の形態について説明し、その後で、噴射式推力発生方法の実施の形態について説明する。次に、噴射式推力発生システムを備えた航走体の実施の形態について説明し、その後で、航走体の推進方法の実施の形態について説明する。
【0041】
〔第1の実施の形態の噴射式推力発生システム〕本発明に係る第1の実施の形態の噴射式推力発生システム1Aは、
図1~
図4に示すように、飽和水蒸気等のエンタルピー(内部エネルギーと圧力エネルギーの和)の高い水蒸気(以下、「一次蒸気」という)S1を用いて、この水蒸気S1に加えて水蒸気Sw1を発生させて、これらの水蒸気(以下、「二次蒸気」という)S2(=S1+Sw1)をスチーム・エジェクターの駆動流体Fd2として用いて、ベンチュリー効果と共に、水蒸気S2の凝結により発生する負圧を利用して、周囲の水(二次水)W2を吸引して、ディフユーザー等の拡径部材を通過させた後に噴射することで推力Tを得るシステムである。
【0042】
図1に示すように、この噴射式推力発生システム1Aは、蒸気発生部2Aと、噴射式推力発生装置10Aとを備えて構成される。そして、噴射式推力発生装置10Aは、蒸気供給部20A、気化膨張部30A、冷却凝結部40A、圧力回復部50A、噴射部60A等を有して構成される。
【0043】
〔蒸気発生部〕この蒸気発生部2Aは、蒸気供給部20Aに供給する高エンタルピーの水蒸気(気体:気相状態:以下「一次蒸気」という)S1を発生させる部分である。この蒸気発生部2Aとしては、通常使用されている蒸気ボイラが考えられる。
【0044】
しかし、この噴射式推力発生装置10Aを海上で使用する場合においては、ボイラ用の水として予め清水をタンクに溜めておいたり、海水を淡水化する設備又は装置が必要になったりするので、現状では実用的ではない。
【0045】
従って、この第1の実施の形態の噴射式推力発生システム1Aは、この噴射式推力発生システム1Aを備えている航走体5で使用している水蒸気の一部、余剰の水蒸気、使用後の廃棄する水蒸気等の何らかの水蒸気を利用できるか、あるいは、何らかの方法で水蒸気を容易に発生できる場合に適している。なお、海水を淡水化する実用的で低コストの方法が開発された場合は、蒸気ボイラを使用できる。
【0046】
〔噴射式推力発生装置:蒸気供給部〕噴射式推力発生装置10Aの蒸気供給部20Aは、蒸気発生部2Aから供給される高エンタルピーの一次蒸気S1を一時的に貯留して、蒸気出口23Aから排出される一次蒸気S1の圧力及び排出量を調整するための部分である。この蒸気供給部20Aは、一次蒸気S1を一時的に貯留するためのタンク21Aと、蒸気入口22Aと、蒸気出口23Aと、圧力調整弁等の圧力調整機構24Aとを備えて構成されている。蒸気入口22Aは、蒸気発生部2Aからの一次蒸気S1が入る入口であり、蒸気供給流路2Aaに連結している。蒸気出口23Aは一次蒸気S1を気化膨張部30Aに送り出す出口である。また、蒸気供給部20Aは、タンク21Aからの放熱によって一次蒸気S1のエンタルピーが減少するのを防止するために断熱材等で覆って保温構造とすることが望ましい。
【0047】
そして、蒸気発生部2Aから蒸気供給部20Aへの一次蒸気S1の供給量は蒸気供給流路2Aaに配設された蒸気供給調整弁2Abにより調整される。また、蒸気供給部20Aから気化膨張部30Aへの一次蒸気S1の排出量は、蒸気供給流路2Aaに配設された蒸気供給調整弁2Abの制御と、圧力調整機構24Aによる蒸気圧の制御とにより、制御される。
【0048】
〔気化膨張部〕気化膨張部30Aは、駆動流体Fd2を構成する水蒸気S2を生成する部分であり、蒸気供給部20Aから供給される一次蒸気S1のエンタルピーの一部で、水(ここでは、以下、「一次水」という)W1を蒸発させて、蒸気量を増加するための部分である。そして、一次水W1を蒸発させるためのタンク(又は流路)31Aと、蒸気供給部20Aの蒸気出口23Aから供給される一次蒸気S1を導入する蒸気導入機構32Aと、一次水W1を導入する水導入機構33Aと、二次蒸気S2を冷却凝結部40Aに噴射する駆動ノズル34Aを備えて構成される。そして、タンク(又は流路)31Aからの放熱により、一次蒸気S1のエンタルピーが減少しないように、タンク(又は流路)31Aは保温構造とすることが好ましい。
【0049】
この気化膨張部30Aでは、一次蒸気S1に一次水W1を加えて、この一次水W1と一次蒸気S1との間で熱交換させて、この一次水W1を気化させる。つまり、熱交換で、一次蒸気S1のエンタルピーの一部を一次水W1に付与することにより、一次水W1を沸点以上に昇温させて水蒸気Sw1を発生させる。これにより、全体としての水蒸気S2(=S1+Sw1)の量を増加させる。なお、一次水W1は蒸発させることになるので、蒸気供給部20Aのタンク21Aの周囲に水導入機構33Aの水路を巡らして、タンク21Aからの放熱を利用して予め加熱しておく構造とすることが好ましい。
【0050】
この熱交換では、一次蒸気S1の温度の低下により、一次蒸気S1の体積が減少するが、一方で、一次水W1の蒸発により、一次水W1が水蒸気Sw1となり体積が増加する。そのため、気化膨張部30Aの温度と圧力にもよるが、通常は、一次蒸気S1の温度低下による体積の減少よりも、一次水W1の蒸発(気化)による体積の増加の方が大きいので、全体(S2=S1+Sw1)としての体積が増加する。
【0051】
そして、この一次蒸気S1で一次水W1を蒸発させる方法としては、次の3つの方法等が考えられる。第1の方法は、
図2に示すように、スチーム・エジェクター32AAを用いて、一次水W1を吸引する方法であり、第2の方法は、
図3(a)に示すように、水蒸気S1に一次水W1を噴射する方法であり、第3の方法は、
図3(b)に示すように、溜まっている水W0に一次蒸気S1に混入させて、水W0を沸騰させる方法である。
【0052】
第1の方法では、
図2に示すように、水蒸気S1を駆動流体として使用するスチーム・エジェクター32AAを用いて、一次水W1をベンチュリー効果により吸引することにより、水蒸気S1に一次水W1を混入する。この場合は、スチーム・エジェクター32AAは蒸気導入機構32Aと水導入機構33Aの一部を併せ持ち、水導入機構33Aは、スチーム・エジェクター32AAの第2流体の吸引部を有して構成される。そして、スチーム・エジェクター32AAで、一次蒸気S1を噴射し、一次水W1を吸引する。
【0053】
なお、この一次水W1の供水量の調整は、
図1及び
図2に示すように、吸引部に連結する水導入流路33Aaが有る場合は、水導入流路33Aaに設けた水導入量調整弁33Abの開閉又は調整により行う。あるいは、水導入流路33Aaの吸引部に設けられたシャッターなどの開口面積の調整機構(図示しない)により行う。
【0054】
また、第2の方法では、
図3に示すように、気化膨張部30Aに充填されている一次蒸気S1に対して、水供給ノズル33Acなどで一次水W1を噴射する。この場合は、蒸気導入機構32Aは蒸気導入流路32Aaと、気化膨張部30A側からの圧力の影響を回避するための蒸気噴射ノズル32Acを有して構成される。そして、気化膨張部30Aに充填されている一次蒸気S1に対して、水導入流路33Aaから、一次水W1を混入する。
【0055】
なお、この一次水W1の水導入量の調整は、水導入流路33Aaに設けた水導入量調整弁33Abの開閉又は調整により行う。あるいは、水導入流路33Aaの吸引部に設けられたシャッターなどの開口面積の調整機構(図示しない)により行う。
【0056】
また、第3の方法は、噴射式推力発生装置10Aの周囲の水が海水などで、蒸発した後に塩分などを残す可能性が有る場合に、塩分の残留を回避するための方法である。この第3の方法では、
図4に示すように、蒸気導入機構32Aは水導入流路33Aaと水中噴射ノズル32Adを有して構成され、水導入機構33Aは、気化膨張部30Aの内部の水蒸気S1の圧力に打ち勝って沸騰用の水W0を供給するための水導入流路33Aaを有して構成される。さらに、沸騰用の水W0が濃縮される前に排出するための水排出流路33Adを有して構成される。
【0057】
そして、一次蒸気S1を、気化膨張部30Aの底部に溜まっている沸騰用の水W0の中に放出することにより、一次蒸気S1のエンタルピーにより、沸騰用の水W0を沸騰させて、沸騰用の水W0の一部である一次水W1を蒸発させる。
【0058】
なお、
図4(b)に示すように、噴射式推力発生装置10Aを備えた航走体5の航走時においては、水面下に設けた水導入流路33Aaの入口に流入してくる水W1を、水流の勢いを利用して、気化膨張部30Aに導入させて、沸騰用の水W0又は一次水W1として利用してもよい。あるいは、別の水槽に溜めておいた水の水圧を利用して、この水を気化膨張部30Aに導入してもよい。
【0059】
なお、一次水W1として海水を用いる場合には、一次水W1の蒸発に伴って、海水中の塩分などが析出する可能性がある。この析出物は、第1及び第2の方法では、小さい粒子となるので、二次蒸気S2と共に冷却凝結部40Aに搬送されるが、始動時や停止時に、タンク(又は流路)31Aの内部に溜まる可能性が有るので、タンク(又は流路)31Aの内部を洗浄して、析出物を排出できるように構成しておくことが必要である。
【0060】
また、第3の方法では、沸騰用の水W0が濃縮される前に、沸騰用の水W0の入れ替えを行うことで析出物を排出できる。この入れ替えは間欠的に行ってもよく、常時行ってもよい。この入れ替えは、
図4に示すように、水導入流路33Aaに設けた水導入量調整弁33Abの開閉又は調整と水排出流路33Adに設けた水排出量調整弁33Aeの開閉又は調整により行う。なお、この水排出流路33Adを、冷却凝結部40Aの二次水W2の水吸引流路43Aaに接続すると、沸騰用の水W0の入れ替えをより円滑に行うことができる。
【0061】
〔冷却凝結部〕冷却凝結部40Aは、熱力学的には、二次蒸気S2のエンタルピーの一部を噴射流体(水分)W3の運動エネルギーに変換するという重要な機能を持っている部分である。そして、
図1~
図4に示すように、二次蒸気S2と二次水W2とを混合して、二次水W2を吸引する負圧を発生させるための流路(又はタンク)41Aで構成される。この流路(又はタンク)41Aは、二次蒸気S2を冷却する必要があるので、保温構造にする必要はないと考えられるが、負圧の発生位置との関係で、上流側を保温構造にする方が良い場合もある可能性がある。
【0062】
この冷却凝結部40Aでは、気化膨張部30Aの出口に設けられた駆動ノズル34Aから噴射される駆動流体Fd2の噴射に伴うベンチュリー効果により二次水W2を吸引して、この吸引した二次水W2で駆動流体Fd2を冷却して、駆動流体Fd2に含まれる水蒸気S2を凝結させる。この冷却凝結部40Aでは、二次蒸気S2が凝結して負圧が発生する状態まで、二次水W2の吸引と熱交換を行う。
【0063】
この冷却凝結部40Aでは、駆動ノズル34Aから噴射される二次蒸気S2をエジェクターの駆動流体Fd2として使用することにより、噴射式推力発生装置10Aの周囲の水(以下「二次水」という)W2を外部から吸引して、この二次水W2を二次蒸気S2と混合する。これにより、二次水Wと二次蒸気S2の間で熱交換して、この二次蒸気S2を凝結(液化)させる。そして、二次蒸気S2を凝結させることで、二次蒸気S2の体積の減少を図り、この体積の減少による圧力の低下(負圧の発生)を利用して、二次水W2を吸引する効果を大きくする。
【0064】
この冷却凝結部40Aでは、二次蒸気S2と二次水W2の混合により、二次蒸気S2が凝結して、負圧が発生する。この二次水W2の一部の吸引は、駆動ノズル34Aにおける外部流体の吸引力によっても行われるが、発生した負圧による吸引力でも行うので、負圧発生部位の前方に残りの二次水W2を吸引する吸引口42Aを設ける。この負圧の発生部位と、二次水W2の吸引口42Aの位置が重要となるが、この吸引口42Aの位置と大きさは、噴射式推力発生装置10Aの模型や実物による水槽実験や数値流体力学(CFD)によるシミュレーション計算等の結果を解析することにより、容易に設定できる。
【0065】
つまり、この冷却凝結部40Aでは、駆動流体Fd2の噴射流によるベンチュリー効果に加えて、二次蒸気S2の凝結による体積の減少により、さらなる負圧を発生させて、二次水W2に対する吸引力を増加し、二次水W2の吸引を促進する。なお、この冷却凝結部40Aの出口の水(以下「噴射流体」という)W3は、二次水W2に、更に、二次蒸気S2が液化した水Ws2が加わっている。
【0066】
そして、この冷却凝結部40Aでは、噴射流体W3が逆流する可能性が有るので、この逆流を、二次水W2の運動エネルギーで防止する。つまり、二次水W2の流入方向と流入速度により、噴射流体W3の流れを圧力回復部50Aに向かわせて、噴射流体W3の逆流を防止する。なお、特に、始動時と停止時において、逆流が生じる可能性が有るが、この逆流が生じる場合には、冷却凝結部40Aの出口側に逆流防止機構を設けたり、流路面積調整機構を設けたりして、逆流を防止する。
【0067】
そして、冷却凝結部40Aにおいて、噴射流体W3の運動エネルギーを大きくすることが、この噴射式推力発生システム1Aのエネルギー効率を高くすることになる。そのため、二次蒸気S2の流入方向と二次水W2の吸引方向と噴射流体W3の流出方向ができるだけ同じ方向になるように構成して、二次水W2の流入エネルギーの恋率良く利用する。
【0068】
〔圧力回復部〕圧力回復部50Aは、駆動流体Fd2と吸引された二次水W2とで構成される噴射流体W3の圧力を回復する部分である。つまり、この冷却凝結部40Aで低下した噴射流体W3の圧力を、噴射流体W3の流速の低下により上昇させて、噴射部60Aで噴射が可能となる圧力を得る部分である。そして、この圧力回復部50Aは、冷却凝結部40Aの排出口に接続して設けられるディフューザー(末広部材)51Aを有して構成される。この冷却凝結部40Aは保温構造にする必要は無い。
【0069】
〔噴射部〕噴射部60Aは、圧力が回復した噴射流体W3を推力発生ノズル62Aから噴射することにより、推力Tを得る部分であり、圧力維持のためのタンク(又は流路)61Aと推力発生ノズル62Aを有して構成される。この推力発生ノズル62Aから圧力が回復した噴射流体W3を噴射することにより、推力Tを発生させる。この噴射部60Aも保温構造にする必要は無い。
【0070】
〔まとめ1〕上記のように、噴射式推力発生装置10Aでは、一次蒸気S1と二次蒸気S2の噴射により、噴射式推力発生装置10Aの周囲の一次水W1と二次水W2を外部から吸引して、噴射流体W3を推力発生ノズル62Aから噴射することにより、推力Tを発生させる。ここでは、一次蒸気S1と一次水W1とで熱交換して、二次蒸気S2を発生させた後で、二次水W2により二次蒸気S2を冷却して二次蒸気S2を凝結させることで、二次蒸気S2の体積の減少による圧力の低下(負圧の発生)を図る。そして、この圧力の低下により、二次水W2に対する吸引力を増加させると共に、推力発生ノズル62Aから噴射する噴射流体W3の量の増加と増速を行い、推力Tを大きくする。
【0071】
熱力学的には、一次蒸気S1のエンタルピーを利用して、二次蒸気S2を発生させた後に凝結させることで、負圧を発生させて、二次蒸気S2のエンタルピーを噴射流体W3の運動エネルギーに変換し、この運動エネルギーを推力Tに変換する。
【0072】
〔計算例1〕参考までに、水蒸気S1、S2を駆動流体Fd1、Fd2として使用する場合について、以下に計算例の結果を示す。一次蒸気S1、二次蒸気S2、一次水W1、二次水W2、噴射流体W3の具体的な量に関して、仮に、140℃で3.7Pa(約3.8atm)の飽和水蒸気1kg(0.51m3:1.244Nm3/kg)を一次蒸気S1とし、更に、15℃の水を用いて、噴射流体W3を50℃に冷却するとする。140℃の一次蒸気S1を1.0Pa(約1.0atm)の100℃の二次蒸気S2にするためには、15℃の一次吸引水W1が約0.022kg必要で、1.022kg(1.71m3)の二次蒸気S2となる。
【0073】
この二次蒸気S2を1.0Pa(約1.0atm)の100℃の水にするためには、15℃の水が6.48kg必要で、100℃の水が7.50kg発生する。これを50℃の水にするためには、15℃の水が、10.71kg必要であり、必要な二次吸引水W2は、18.21kgとなる。一方、噴出水W3は全体で、18.21kgとなる。
【0074】
従って、140℃で3.7Pa(約3.8atm)の飽和水蒸気1kg(0.51m3)の一次蒸気S1を、50℃の噴射流体W3とするためには、15℃の水17.21kgを吸引する必要がある。なお、25℃の噴射流体W3とするためには、更に、15℃の水28.7kgを吸引する必要があり、噴射流体W3は49.5kg(0.050m3)となる。
【0075】
〔第2の実施の形態の噴射式推力発生システム〕本発明に係る第2の実施の形態の噴射式推力発生システム1Bは、駆動流体Fd1に、燃焼ガス等のエンタルピー(内部エネルギーと圧力エネルギーの和)が大きいガス(以下、「一次ガス」という)G1を用いて、水蒸気Sg1を発生させて、これらのガス(以下、「二次ガス」という)G2(=G1+Sg1)をエジェクターの駆動流体Fd2として用いて、ベンチュリー効果と共に、一次ガスG1のエンタルピーの変化による体積の減少と水蒸気Sg1の凝結により発生する負圧を利用して、周囲の水(二次水)W2を吸引して、ディフユーザー等の拡径部材を通過させた後に噴射することで推力Tを得るシステムである。
【0076】
図5及び
図6に示すように、噴射式推力発生システム1Bは、ガス発生部3Bと、噴射式推力発生装置10Bとを備えて構成される。そして、噴射式推力発生装置10Bは、ガス供給部20B、気化膨張部30B、冷却凝結部40B、圧力回復部50B、噴射部60B等を有して構成される。また、
図7に示すように、ガス発生部3Bとガス供給部20Bとを一体化して構成してもよい。
【0077】
〔ガス発生部〕ガス発生部3Bは、ガス供給部20Bに供給する高エンタルピーの一次ガス(気体:気相状態)G1を発生させる部分である。このガス発生部3Bとしては、燃焼器が考えられる。このガス発生部3Bでは、高エンタルピーの一次ガスG1を発生できれば良いので、
図6及び
図7に示すように、燃焼室3Baに燃焼器(バーナー)3Bbを設けた構成であってもよい。この場合は、ガス発生部3Bは、使用する燃料Fに応じて、その燃料Fに適した燃焼器3Bbと燃焼用の空気Aを供給する空気供給装置(図示しない)と燃焼室3Baを有して構成される。
【0078】
そして、
図6に示す構成では、ガス発生部3Bで発生する一次ガスG1の量は、燃料供給流路3Bfに配設された燃料供給調整弁3Bfvの操作と、空気供給流路3Bcに配設された空気供給調整弁3Bcvの操作により制御される。また、ガス発生部3Bからガス供給部20Bへの一次ガスG1の供給量はガス供給流路3Bdに配設されたガス供給調整弁3Beの調整により制御される。一方、
図7に示す構成では、ガス発生部3B(ガス供給部20B)で発生する一次ガスG1の量は、燃料供給流路3Bfに配設された燃料供給調整弁3Bfvの操作と、空気供給流路3Bcに配設された空気供給調整弁3Bcvの操作と、圧力調整機構24Bによるガス圧の調整とにより、制御される。
【0079】
なお、この一次ガスG1は、NOxやSOx等を除去するガス処理装置を通過させることでエンタルピーが低下してしまうと、エネルギー効率が悪化するので、ガス処理装置が不要な水素ガスや天然ガス等のクリーンな燃料を用いることが好ましい。また、高エンタルピーの一次ガスG1としては、燃焼ガスに限らず、高圧の空気又は高温の空気などであってもよい。従って、この第2の実施の形態の噴射式推力発生システム1Bの場合では、高エンタルピーのガスであれば良く、この噴射式推力発生システム1Bを備えている航走体5で使用しているエンジンの排気ガス、冷却用の空気、余剰の圧縮空気等も使用することができる。
【0080】
〔噴射式推力発生装置:ガス供給部〕噴射式推力発生装置10Bのガス供給部20Bは、燃焼ガスなどの高エンタルピーの一次ガスG1を一時的に貯留して、ガス出口23Bから排出される一次ガスG1の圧力を調整するための部分である。
【0081】
図6に示す構成では、このガス供給部20Bは、一次ガスG1を一時的に貯留するためのタンク21Bと、ガス入口22Bと、ガス出口23Bと、圧力調整弁等の圧力調整機構24Bとを備えている。ガス入口22Bは、ガス発生部3Bからの一次ガスG1が入る入口であり、ガス供給流路3Bdに連結している。ガス出口23Bは一次ガスG1を気化膨張部30Bに送り出す出口である。なお、ガス供給部20Bから気化膨張部30Bへの一次ガスG1の供給量は、ガス供給流路3Bdに配設されたガス供給調整弁3Beの操作と、圧力調整機構24Bによるガス圧の調整とにより、制御される。
【0082】
一方、
図7に示す構成では、このガス供給部20Bは、ガス発生部3Bと一体化しているため、燃焼室3Baがタンク21Bとの兼用となり、ガス入口22Bが省略されている。なお、ガス発生部3B(ガス供給部20Bとの兼用)から気化膨張部30Bへの一次ガスG1の供給量は、ガス発生部3Bで発生する一次ガスG1の量であり、この量は、燃料供給調整弁3Bfvの操作と、空気供給調整弁3Bcvの操作と、圧力調整機構24Bによるガス圧の調整とにより、制御される。
【0083】
〔気化膨張部〕気化膨張部30Bは、ガス供給部20Bから供給される一次ガスG1の一部で、水(ここでは、以下、「一次水」という)W1を蒸発させて、水蒸気を発生させたり、水蒸気の量を増加したりするための部位である。そして、一次水W1を蒸発させるためのタンク(又は流路)31Bと、ガス供給部20Bのガス出口23Bから供給される一次ガスG1を導入するガス導入機構32Bと、一次水W1を導入する水導入機構33Bと、二次ガスG2を冷却凝結部40Bに噴射する駆動ノズル34Bを備えて構成される。
【0084】
この気化膨張部30Bでは、一次水W1を追加して、この一次水W1と一次ガスG1との間で熱交換させて、この一次水W1を気化させる。つまり、熱交換で、一次ガスG1のエンタルピーの一部を一次水W1に付与することにより、一次水W1を沸点以上に昇温させて水蒸気Sw1を発生させる。これにより、全体としてのガスG2(=G1+Sw1)の量を増加させる。
【0085】
つまり、一次ガスG1の温度の低下により、一次ガスG1の体積が減少するが、一方で、一次水W1の蒸発により、一次水W1が水蒸気Sw1となり体積が増加する。そのため、気化膨張部30Bの温度と圧力にもよるが、通常は、一次ガスG1の温度低下による体積の減少よりも、一次水W1の蒸発(気化)による体積の増加の方が大きいので、ガス全体(G2=G1+Sw1)としての体積が増加する。なお、この一次水W1の供給に関しては、第1の実施の形態の噴射式推力発生装置10Bと同様な方法と構成を採用することができる。
【0086】
〔冷却凝結部〕冷却凝結部40Bは、気化膨張部30Bの駆動ノズル34Bから噴射される二次ガスG2をエジェクターの駆動流体として使用することにより、噴射式推力発生装置10Bの周囲の水(以下「二次水」という)W2を外部から吸引して、この二次水W2を二次ガスG2と混合することで、二次ガスG2と二次水W2の間で熱交換して、二次ガスG2を冷却し、この二次ガスG2に含まれている水蒸気Sw1を凝結(液化)させる部分である。そして、
図5に示すように、二次ガスG2と二次水W2とを混合するためのタンク(又は流路)41Bで構成される。この冷却凝結部40Bでは、二次ガスG2に含まれる水蒸気Sw1が凝結して負圧が発生する状態まで、二次水W2の吸引と熱交換を行う。
【0087】
この冷却凝結部40Bでは、気化膨張部30Bから供給される二次ガスG2を二次水W2で冷却することで、一次ガスG1の体積の減少と水蒸気Sw1の凝結による体積の減少を図り、この体積の減少による圧力の低下(負圧の発生)を利用して、二次水W2の吸引する効果を大きくする。言い換えれば、駆動流体Fd2としての二次ガスG2の噴射流によるベンチュリー効果に加えて、二次ガスG2に含まれている水蒸気Sw1の凝結による体積の減少により、負圧を発生させて、二次水W2に対する吸引力を増加し、二次水W2の吸引を促進する。なお、この冷却凝結部40Bの出口のガスを含有する水(以下「噴射流体」という)F3では、燃焼ガスG1と二次水W2に、更に、二次ガスG2に含まれていた水蒸気Sw1が液化した水Ws1が加わっている。
【0088】
〔圧力回復部〕圧力回復部50Bは、冷却凝結部40Bで低下した噴射流体F3の圧力を、流速の低下により上昇させて、噴射部60Bで噴射が可能となる圧力を得る部分であり、ディフユーザー(末広部材)51Bで構成される。
【0089】
〔噴射部〕噴射部60Bは、圧力が回復した噴射流体F3を推力発生ノズル62Bから噴射することにより、推力Tを得る部分であり、圧力維持のためのタンク(又は流路)61Bと推力発生ノズル62Bを有して構成される。この推力発生ノズル62Bから圧力が回復した噴射流体F3を噴射することにより、推力Tを発生させる。
【0090】
〔まとめ2〕上記のように、噴射式推力発生装置10Bでは、一次ガスG1と二次ガスG2の噴射により、噴射式推力発生装置10Bの周囲の一次水W1と二次水W2を外部から吸引して、推力発生ノズル62Bから噴射することにより、推力Tを発生させる。ここでは、一次ガスG1と熱交換して、二次ガスG2を発生させた後で、二次ガスG2の体積を減少させることで、二次ガスG2の体積の減少による圧力の低下(負圧の発生)を図る。この圧力の低下により、二次水W2に対する吸引力を増加させて、推力発生ノズル62Bから噴射する噴射流体F3の増加と速度の増速を行い、推力Tを大きくする。
【0091】
〔計算例2〕参考までに、燃焼ガスG1により水蒸気Sw1を発生させて、この水蒸気Sw1を含んだ燃焼ガスG2を駆動流体Fd2として使用する場合における、一次ガスG1、二次ガスG2、一次水(一次吸引水)W1、二次水(二次吸引水)W2、噴射流体F3の具体的な量に関して、以下に仮計算結果を示す。
【0092】
仮に、600℃で4.0Pa(約4.0atm)の燃焼ガス0.80m3(1Nm3:比熱を仮に1.37kJ/Nm3・K:0.33kcal/Nm3とする)を一次ガスG1とし、更に、15℃の水を用いて、噴射流体F3を50℃に冷却するとする。600℃の一次ガスG1を1.0Pa(約1.0atm)の100℃の二次ガスG2にするためには、15℃の一次吸引水W1が約1.9kg必要で、蒸気では2.4Nm3となり、二次ガスG2は、4.65m3(3.4Nm3)となる。
【0093】
この二次ガスG2を1.0Pa(約1.0atm)100℃の水にするためには、燃焼ガス用には、水がゼロでも、水蒸気用に15℃の水が12.1kg必要で、100℃の水が14.0kg発生する。これを50℃の水にするためには、15℃の水が、ガス用に、0.47kg必要であり、更に、水用に、20.0kg必要であり、必要な二次水W2は、20.5kgとなる。一方、噴射流体F3は全体で、34.5kgとなり、噴射ガスの量は、1.05m3(1.0Nm3)となる。
【0094】
従って、600℃で4.0Pa(約4.0atm)の燃焼ガス0.80m3(1Nm3)の一次ガスG1を、50℃の噴射流体(水WaとガスG2)F3とするためには、15℃の水34.5kgを吸引する必要がある。なお、25℃の噴射流体の水分W3aとするためには、更に、15℃の水86.5kgを吸引する必要があり、噴射流体の水分W3aは121.0kg(0.12m3)となり、燃焼ガスの1.05m3と併せると、1.12m3となる。
【0095】
〔第3の実施の形態の噴射式推力発生システム〕本発明に係る第3の実施の形態の噴射式推力発生システムは、水素ガスを燃焼したり、燃焼ガスに水蒸気を混入させたりして、ガス発生部で発生する初期ガス中に一次蒸気が多量に含まれている初期ガスを用いるシステムである。
【0096】
この第3の実施の形態の噴射式推力発生システムでは、初期ガスG0として、第1の実施形態の一次蒸気S1と第2の実施形態の一次ガスG1とが混合したものとして、ぞれぞれの水蒸気S1とガスG1の状態を扱えばよいことになる。この第3の実施の形態の噴射式推力発生システムの構成要素としては、第2の実施の形態の噴射式推力発生システム1Bと同じであるので、特に図示しない。また、この第3の実施の形態の噴射式推力発生システムに対する説明も、物理量が第1の実施形態の一次蒸気S1と第2の実施形態の一次ガスG1とが合わさっただけであるので、省略する。
【0097】
〔ユニット化〕次に、噴射式推力発生システム1A、1Bのユニット化について説明する。このユニット化については、蒸気発生部2Aは既存の装置を用いることが多いので、第1の実施の形態の噴射式推力発生システム1Aでは、蒸気発生部2Aを切り放して、一次蒸気S1は外部から供給されるものとして、噴射式推力発生装置10Aをユニット化する。
【0098】
一方、第2の実施の形態の噴射式推力発生システム1Bでは、ガス発生部3Bを含めて、一体化することも比較的容易であるので、ガス発生部3Bと噴射式推力発生装置10Bを一体化して、燃料を供給されるものとして、ユニット化する。なお、ガス発生部3Bをガス発生部3Bと噴射式推力発生装置10Bから切り離して、一次ガスG1は外部から供給されるものとして、噴射式推力発生装置10Bのみを一体化してユニット化してもよい。なお、このユニット化に際しては、ガス発生部3Bは、一次蒸気S1及び一次ガスG1のエンタルピーが低下しないように保温構造にすることが好ましい。
【0099】
そして、二次蒸気S2を発生するために必要な一次水W1は、気化膨張部30A、30Bに導入される前に、予め加熱されていることが好ましい。この一次水W1を加熱する構成として、蒸気発生部2Aやガス発生部3Bからの放熱の一部で、一次水W1を加熱して昇温させることが考えられる。この場合には、一次水W1を吸引する吸引水路を蒸気発生部2Aやガス発生部3Bの周囲に配置する。具体的には、蒸気発生部2Aやガス発生部3Bの周囲に吸引水路としての配管を接して設けたり、蒸気発生部2Aやガス発生部3Bの周囲を2重構造にして、この間の空間を吸引水路として利用したりする。この場合は、吸引水路を含めて、蒸気発生部2Aやガス発生部3Bの外側を保温する。
【0100】
また、例えば、
図8に示すように、ユニット10Uの外形は、水中及び水路中に配置する場合も考えて、支持部材11A、11Bも含めて水中抵抗の少ない形状とすることが好ましい。例えば、魚雷などで用いられている筒形形状に形成され、一次水W1と二次水W2を取り込むための一次吸引口12Bと二次吸引口13Bが設けられる。この場合に、一次蒸気S1、一次ガスG1、燃料F、燃焼用空気A等を供給する部分はユニット10Uの支持部材11A、11Bに中に収容することが好ましい。
【0101】
そして、このユニット10Uの設計要素としては、気化膨脹部30A、30Bの容積、冷却凝結部40A、40Bの容積、圧力回復部50A、50Bの容積、噴射部60A、60Bの容積等がある。例えば、気化膨脹部30A、30Bの容積は、一次水W1が蒸発した水蒸気Sw1と一次蒸気S1(又は一次ガスG1)の量によって決まるが、一次水W1が蒸発した水蒸気Sw1の量は、システムの運用時の圧力と温度に依存し、一次蒸気S1(又は一次ガスG1)が持つエンタルピーに従って変化する。また、冷却凝結部40A、40Bの容積は、二次蒸気S2および二次ガスG2の容積と二次水W2の量によって決まる。そして、圧力回復部50A、50Bの容積は、噴射流体の水分W3aの量と、運用圧力(入口の圧力と出口の圧力)によって決まる。
【0102】
これらの各容積に関しては、筒形形状の断面積(断面形状)を固定した場合には、筒形の長さの問題となるが、予め、運用時の基準圧力及び基準温度を設定しておくことにより、このそれぞれの長さを設定できる。なお、運用条件が異なる場合に対しては、容積が異なる幾つかの標準の部品を用意しておくか、容積増加の追加用の部品を用意しておくことで対応できる。従って、各機能別の部品に対して、これらの部品を選択して組み合わせることで、各運用条件に対応したユニット10Uを組み上げることができる。
【0103】
〔ユニット化の効果〕これらのユニット化により、既存の航走体5において、これらのユニット10Uを配置することにより、噴射式推力発生システム1A、1Bを採用することが容易となる。そして、これらのユニット10Uにより、余剰蒸気や排気ガスや圧縮空気などの高エンタルピーの余剰の気体(一次蒸気S1、一次ガスG1)が有る場合には、補助推力Tを得ることができる。
【0104】
また、新造の航走体5においては、これらのユニット10Uの数の調整で必要な推進力を得ることができる。そのため、従来、エンジンとプロペラ等で比較的受注生産が多い推進器システムとは異なり、ユニット10Uの大量生産が可能となり、製造コストの低減を図ることができる。また、ユニット10U自体の構造が単純で回転部分が無いので、故障が発生し難く、保守点検が容易である上に、ユニット10Uの規格化して、交換可能な構成とすることにより、さらに、メンテナンスが容易となる。
【0105】
〔噴射式推力発生方法〕次に、本発明の噴射式推力発生方法の実施の形態について説明する。この噴射式推力発生方法は、上記の実施形態の噴射式推力発生システム1A、1Bを用いて実施できる方法であり、次のような方法である。なお、第1の実施形態の噴射式推力発生システム1Aでは、「水蒸気で構成される気体S2」の場合を、第2及び第3の実施形態の噴射式推力発生システム1Bでは、「水蒸気Sw1を含む気体G2」の場合をそれぞれ実施できる。
【0106】
そして、本発明に係る第1の実施の形態の噴射式推力発生方法は噴射式推力発生システム1Aを用いる方法であり、この噴射式推力発生方法では、水蒸気で構成される二次蒸気(気体)S2を駆動流体Fd2として使用して、駆動流体Fd2の噴射によるベンチュリー効果により二次水(水)W2を吸引し、この吸引した二次水(水)W2で駆動流体Fd2を冷却して水蒸気(二次蒸気S2)を凝結させて、二次水(水)W2を吸引する吸引力を増加すると共に、水蒸気S2と、水蒸気Sw2の凝結水Ws2と吸引した二次水(水)W2を噴射することにより、推力Tを得る。
【0107】
また、本発明に係る第2の実施の形態の噴射式推力発生方法は噴射式推力発生システム1Bを用いる方法であり、この噴射式推力発生方法では、燃焼ガス等の高エンタルピーのガスを駆動源として、水蒸気Sw2を含む二次ガス(気体)G2を駆動流体Fd2として使用して、駆動流体Fd2の噴射によるベンチュリー効果により二次水(水)W2を吸引し、この吸引した二次水(水)W2で駆動流体Fd2を冷却して水蒸気(二次ガスG2に含まれている水蒸気Sw2、または、二次蒸気S2)を凝結させて、二次水(水)W2を吸引する吸引力を増加すると共に、水蒸気S2の凝結水Ws2、及び、水蒸気Sw2の凝結水Ws2と吸引した二次水(水)W2を噴射することにより、推力Tを得る。
【0108】
また、本発明に係る第3の実施の形態の噴射式推力発生方法は噴射式推力発生システムを用いる方法であり、この噴射式推力発生方法では、水蒸気S1を含んでいる高エンタルピーのガス(G1+S1)を駆動源として、二次蒸気S1、S2、及び、水蒸気Sw2を含む二次ガス(気体)G2を駆動流体Fd2として使用して、駆動流体Fd2の噴射によるベンチュリー効果により二次水(水)W2を吸引し、この吸引した二次水(水)W2で駆動流体Fd2を冷却して水蒸気(二次蒸気S1、S2、及び、二次ガスG2に含まれている水蒸気Sw2)を凝結させて、二次水(水)W2を吸引する吸引力を増加すると共に、水蒸気S1の凝結水Ws1、及び、二次蒸気S2の凝結水Ws2、及び、水蒸気Sw2の凝結水Wsw2と吸引した二次水(水)W2を噴射することにより、推力Tを得る。
【0109】
これらをまとめると、本発明に係る実施の形態の噴射式推力発生方法は、水蒸気で構成される二次蒸気(気体)S2、又は、蒸気Sw1を含む気体G2を駆動流体Fd2として使用して、駆動流体Fd2の噴射によるベンチュリー効果により二次水(水)W2を吸引し、この吸引した二次水(水)W2で駆動流体Fd2を冷却して水蒸気S2、Sw1を凝結させて、二次水(水)W2を吸引する吸引力を増加すると共に、水蒸気S2、Sw1の凝結水Ws2と吸引した二次水(水)W2を噴射することにより、推力Tを得る方法となる。この噴射式推力発生方法は、上記の噴射式推力発生システム1A、1Bを用いて実施できる。
【0110】
〔噴射式推力発生システムと噴射式推力発生方法の効果〕上記の噴射式推力発生システム1A、1Bと噴射式推力発生方法によれば、体積の大きい気相状態の水蒸気S1、S2、Sw2を駆動流体Fd2の全部又は一部として使用し、この駆動流体Fd2を冷却することで、体積の小さい液相状態の水Ws1、Ws2に凝結させて、低圧状態(負圧状態)を作り出す。ベンチュリー効果に加えて、この負圧状態(低圧状態)を利用することで、周囲の二次水W2を大量に吸引することができる。そして、この大量の二次水W2を含んだ噴射流体W3、F3を噴射することにより、効率よく、推力Tを発生できる。
【0111】
これらの噴射式推力発生方法では、水蒸気S2又は水蒸気Sw1を含み、かつ、高エンタルピー(内部エネルギーと圧力エネルギーの和)の気体G2を駆動流体Fd2として噴射することで、エジェクターのベンチュリー効果を利用する構成であるので、ウォータージェット推進で用いているような「高圧ポンプ(軸流水ポンプ)」、「インペラと呼ばれるプロペラ」等で使用されている回転機構が不要になる。従って、この噴射式推力発生方法を実施するための噴射式推力発生システム1A、1Bは、回転機構が無い単純な構成となり、回転機構が無いので、設計、製造、試験、保守点検などが簡素化され、低コストで提供できるようになる。
【0112】
そして、上記の噴射式推力発生システム1A、1B及び噴射式推力発生方法において、駆動流体Fd2と吸引した二次水W2とを混合して、直接接触により駆動流体Fd2を冷却して、駆動流体Fd2に含まれている水蒸気S2、Sw2を凝結させる方法を採用すると、これにより、簡単な構成で、効率よく、駆動流体Fd2を冷却できる。
【0113】
また、上記の噴射式推力発生システム1B及び噴射式推力発生方法において、第2の実施の形態の噴射式推力発生システム1Bのように、燃焼ガスG1に一次水(水)W1を直接接触又は混合することにより、駆動流体Fd2を生成すると、これにより、簡単な構成で、効率よく、水蒸気Sw2を含む駆動流体Fd2を生成できる。
【0114】
〔航走体〕次に、本発明に係る実施の形態の航走体について説明する。
図9~
図11に示すように、本発明に係る実施の形態の航走体5は、上記の噴射式推力発生システム1A、1Bを備えて構成される。
【0115】
〔主要部の配置〕最初に、噴射式推力発生装置10A、10Bの要部又はユニット10U等の主要部の配置に関して説明する。この主要部は吸引水路7と排水水路8に接続して配置されたり、または吸引水路7と排水水路8で構成される水路内に配置されたり、又は、航走体5の外側の水中に配置される。
【0116】
この主要部の上下位置に関しては、この主要部を水面上に配置する場合には、吸引口6からの水W1、W2を噴射式推力発生装置10A、10B又はユニット10Uに導く吸引水路7と、この主要部からの噴射流体W3、F3を排出口9に導く排出水路8が長くなる。その結果、水流の曲り部も必要となるので、これらの水路における流路抵抗が増加する。しかし、この場合には、主要部が水面上にあることから、保守点検が容易となるという大きなメリットがある。
【0117】
一方、この主要部を、水面下に配置する場合には、吸引口6と排出口9を略直線状に結ぶ水路(吸引水路7と排出水路8)に設けることができ、水路7、8の長さを短くしたり、水流の曲り部分を少なくしたりすることができる。その結果、これらの水路7、8における流路抵抗を減少させることができる。この場合には、この主要部が水面下にあるため、保守点検は水面上に配置された場合よりは面倒であるが、もともと、この主要部の構造が単純で、点検・修理・部品交換なども容易となっているので。水中配置でもデメリットは少ない。また、主要部又は主要部を配置した水路部分を取り外し可能若しくは交換可能に構成することで、保守点検の作業を容易化することができる。
【0118】
また、この主要部の航走体5の前後方向の位置に関しては、様々な位置が考えられるが、水路7、8における流路抵抗を少なくすることを考慮すると、吸引口6と排出口9の位置によって略決まる。
【0119】
〔吸引口の配置〕そして、一次水W1と二次水W2の吸引口6の配置に関しては、
図9に示すような、航走体5の船首部5aに配置する第1の配置と、
図10及び
図11に示すような、航走体5の船体側部5cに配置する第2の配置と、
図12に示すような、航走体5の船尾部5dに配置する第3の配置等が考えられる。これらの吸引口6は、「点吸込み(Point Sink)」に相当するので、吸引口6の配置位置によっては、造波抵抗の低減に効果を発揮できる。また、ユニット10Uを複数基束ねたり、単独のユニット10Uの吸引口6を複数設けたりすることで、「点吸込み(Point Sink)」を帯状や面状に配置した「吸込み領域」を形成することもできる。
【0120】
第1の配置では、
図9(a)、(b)に示すように、航走体5の船首部5aのよどみ点の近傍等の圧力が高い部分に吸引口6を設けることで、船首部5aで発生する圧力抵抗を低減することができる。また、船首部5aで波が発生する部分に吸引口6を設けることで、造波抵抗を低減できる。さらには、
図9(c)、(d)に示すように、船首部5aの船底部5b等に「吸込み領域」を設けることができるので、この「吸込み領域」により発生する波を、船首部5aで発生する船首系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。この場合は、吸引口6は船首部5aの中央又は中央を挟んだ両側に配置され、吸引水路7は船首部5aの船体内部に配置される。
【0121】
また、第2の配置では、航走体5の船体側部5cに吸引口6を配置することで、航走体5の船体側部5cに「吸込み領域」を設けることができる。これにより、この「吸込み領域」で発生する波を、船首部5aと船首肩部等で発生する船首系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。これらの場合では、吸引水路7は、
図10(a)、(b)に示すように、船首部5aの船体内部に配置したり、あるいは、
図10(c)、(d)に示すように、船首部5aの船体外部に配置したりする。
【0122】
また、一方で、水路7、8を設けることなく、
図13に示すように、ユニット10Uを船体側部5cに配置することもできる。この場合に、
図13(a)、(b)に示すように、ユニット10Uを個別に配置したり、ユニット10Uを幾つかを束ねて帯状又は面状に配置したりすることもできる。
【0123】
また、第3の配置では、
図11及び
図12に示すように、現状で多くの推進器(プロペラ推進器、ウォータージェット推進器等)が配置されているのと同様な船尾部5dに配置する。この船尾部5dにおける吸引口6の配置としては、船体側部5cへの配置、船底部5bへの配置、船尾端の後方の配置などがある。そして、この吸引口6の船尾部5dへの配置では、ユニット10Uの相互間の距離を大きくとるのは難しいので、吸引水路7は短い水路となるか、ユニット10Uと一体化することになる。
【0124】
この第3の配置では、航走体5の内部配置を現状の内部配置から大幅に変更する必要が無くなる。なお、船尾部5dに吸引口6を設けることで、航走体5の船尾部5dに「吸込み領域」を設けることができるので、この「吸込み領域」で発生する波を、船尾部5dで発生する船尾系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。
【0125】
〔排出口の配置〕そして、ユニット10Uの排出口9の配置に関しては、水面WLより上に排出口9を配置する場合には、排出口9の外側の圧力が小さいので、噴射流体W3を効率よく噴射できる。一方、水面WLより下に排出口9を配置する場合には、排出口9に水深に応じた水圧が加わるため、噴射するために必要な噴射流体W3の圧力が高くなる。
【0126】
しかし、この排出口9を「点吹き出し(Point Souce)」とすることができるので、この「点吹き出し」で発生する波を、船首系波や船尾系波と干渉させることで、造波抵抗を低減することができる。なお、ユニット10Uを複数基束ねたり、単独のユニット10Uの排出口9を複数設けたりすることで、「点吸込み」を帯状や面状に配置した「吹き出領域」を形成することもできる。
【0127】
また、排出口9の船長方向に関しての配置についても、航走体5の船首部5aに配置する第1の配置と、航走体5の船体側部5cに配置する第2の配置と、航走体5の船尾部5dに配置する第3の配置等が考えられる。
【0128】
この第1の配置では、図示しないが、排出口9を船首部5aに配置することで、船首部5aに「吹き出領域」を設けることができる。従って、この「吹き出領域」で発生する波を、船首部5aで発生する船首系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。しかしながら、この場合は、噴射流体W3、F3の噴射方向を船尾側にしないと、噴射による推力Tを航走体5の推進力として利用できない。そのため、噴射流体W3、F3の噴射方向を航走体5の前方向にする場合は、造波抵抗の減少効果と噴射による推力Tの抵抗増加のバランスを考える必要がある。一方、噴射流体W3、F3の噴射方向を航走体5の後方向にする場合は、噴射による推力Tを推進力Ttとして利用できる。
【0129】
また、第2の配置では、
図9(a)、(b)、
図10及び
図13に示すように、排出口9を航走体5の船体側部5cに配置することで、航走体5の船体側部5cに「吹き出し領域」を設けることができ、この「吹き出し領域」で発生する波を、船首部5aと船首肩部等で発生する船首系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。この場合に、排出口9から噴射する噴射流体W3、F3により推力Tを得ることができる。そして、両舷に推力Tを発生できる排出口9が設けられるので、これらの推力Tをそれぞれ調整することにより、航走体5の旋回力を得ることができる。
【0130】
また、第3の配置では、
図12に示すように、現状で多くの推進器が配置されているのと同様な船尾部5dへの配置、あるいは、船体側部5cへの配置、船底部5bへの配置、船尾端の後方への配置などがある。そして、この排出口9の船尾部5dの配置では、ユニット10Uの相互間の距離を大きくとるのは難しいので、排出水路8は短い水路となるか、ユニット10Uと一体化することになる。
【0131】
この第3の配置では、航走体5の各機器やタンクや船倉等の配置を現状の配置から大幅に変更する必要が無くなる。また、排出口9を船尾部5dに設けることで、航走体5の船尾部5dに「吹き出し領域」を設けることができるので、この「吹き出し領域」で発生する波を、船尾部5dで発生する船尾系波と干渉させて、航走体5の造波抵抗を低減できる。
【0132】
〔航走体の推進方法〕次に、本発明に係る実施の形態の航走体の推進方法について説明する。本発明に係る実施の形態の航走体の推進方法は、上記の噴射式推力発生方法を用いて発生した推力Tを、航走体5を推進させる推進力Ttの一部又は全部とすることを特徴とする方法である。この航走体の推進方法は、上記の航走体5を用いることで実施できる。この方法により、回転機構が無くて構造が単純で製造及びメンテナンスが容易な噴射式推力発生装置10A、10B又はユニット10Uを用いて、航走体5を推進することができる。
【0133】
〔本発明の効果〕上記の噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム1A、1B、航走体5によれば、高エンタルピーの気体G1と水蒸気S1の温度の低下による体積の変化、特に水蒸気S1、S2、Sw1の凝結による体積の減少を利用しつつ、エジェクターにおける、駆動流体Fd2の噴射による水(第2の流体)W2の吸引の効果と、ディフユーザーによる流体の減速による圧力の上昇の効果を取り入れて、推力Tを発生することができる。従って、回転機構が無くて構造が単純で製造及びメンテナンスが容易な、噴射式推力発生方法、航走体の推進方法、噴射式推力発生システム1A、1B、航走体5を提供することができる。
【符号の説明】
【0134】
1A、1B 噴射式推力発生システム
2A 蒸気発生部
2Aa 蒸気供給流路
2Ab 蒸気供給調整弁
3B ガス発生部
3Ba 燃焼室
3Bb 燃焼器
5 航走体
5a 船首部
5b 船底部
5c 船体側部
5d 船尾部
6 吸引口
7 吸引水路(水路)
8 排出水路(水路)
9 排出口
10A 噴射式推力発生装置(第1の実施の形態:水蒸気)
10B 噴射式推力発生装置(第2の実施の形態:燃焼ガス)
11A、11B 支持部材
12B 一次吸引口
13B 二次吸引口
20A 蒸気供給部
20B ガス供給部
21A、21B タンク
22A 蒸気入口
22B ガス入口
23A 蒸気出口
23B ガス出口
24A、24B 圧力調整機構
30A、30B 気化膨張部
31A、31B タンク(又は流路)
32A 蒸気導入機構
32AA スチーム・エジェクター
32Aa 蒸気導入流路
32Ac 蒸気噴射ノズル
32Ad 水中噴射ノズル
32B ガス導入機構
33A、33B 水導入機構
33Aa、33Ba 水導入流路
33Ab 水導入量調整弁
33Ac 水供給ノズル
33Ad 水排出流路
33Ae 水排出量調整弁
34A、34B 駆動ノズル
40A、40B 冷却凝結部
41A、41B タンク(又は流路)
43Aa、43Ba 水吸引流路
50A、50B 圧力回復部
51A、51B 拡径部材(ディフユーザー)
60A、60B 噴射部
61A、61B タンク(又は流路)
62A、62B 推力発生ノズル
100 パルスジェットエンジン
100A 間欠燃焼型のジェット推進機関
100B U字型のバブルレスパルスジェットエンジン
110 燃焼室
111 空気取入口
112 入口逆流防止弁
114 細管
120 排気管
132 点火装置
A 空気(新気)
F 燃料
G 燃焼ガス
G1 一次ガス
G2 二次ガス
S1 一次蒸気
S2 二次蒸気
Sw1 一次水が蒸発した水蒸気(一次ガスにより発生した水蒸気)
Sw2 二次水が蒸発した水蒸気
T 推力
Tt 推進力
W0 溜まっている水
W1 一次水
W2 二次水
W3 噴射流体
Ws1 二次ガスに含まれていた水蒸気が液化した水
Ws2 二次蒸気が液化した水