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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064915
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】風味付与剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20240507BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240507BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240507BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240507BHJP
   A23L 31/15 20160101ALI20240507BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240507BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240507BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20240507BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20240507BHJP
【FI】
A23L27/10 H
A23L2/00 B
A23L29/00
A23L5/00 H
A23L31/15
A23L27/00 C
A23L2/56
A23L2/38 G
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022183726
(22)【出願日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹尻 崇人
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B036
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB09
4B018LE05
4B018MD81
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF14
4B035LC01
4B035LE02
4B035LE03
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG12
4B035LG17
4B035LG19
4B035LG32
4B035LG35
4B035LG37
4B035LG44
4B035LG50
4B035LK01
4B035LK02
4B035LP01
4B035LP22
4B035LP55
4B035LP59
4B036LC01
4B036LE02
4B036LF01
4B036LF04
4B036LH04
4B036LH09
4B036LH10
4B036LH13
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH39
4B036LH48
4B036LK01
4B036LP01
4B036LP21
4B036LP24
4B047LB03
4B047LE01
4B047LF03
4B047LF04
4B047LF08
4B047LF10
4B047LG03
4B047LG10
4B047LG22
4B047LG28
4B047LG39
4B047LG41
4B047LG43
4B047LG51
4B047LG56
4B047LP01
4B047LP05
4B047LP20
4B117LC03
4B117LK01
4B117LK23
4B117LL01
4B117LP01
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】 本発明は、非動物性原料由来である風味付与剤及びその製造方法、並びに該風味付与剤を含む飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 植物素材を加熱して発生させた煙を通気し、加圧加熱処理することで、該酵母エキス溶液の加圧加熱処理物を有効成分とする風味付与剤が得られることを見出し、本発明を完成した。また、該風味付与剤を使用することで、肉様の風味又は加熱調理感を有する飲食品を提供できる
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物素材を加熱して発生させた煙を通気した酵母エキス溶液の加圧加熱処理物を有効成分とする風味付与剤。
【請求項2】
植物素材が燻製材である、請求項1記載の風味付与剤。
【請求項3】
肉様風味付与用である、請求項1又は2記載の風味付与剤。
【請求項4】
加熱調理感付与用である、請求項1又は2記載の風味付与剤。
【請求項5】
植物素材を加熱して発生させた煙を通気した酵母エキス溶液を加圧加熱処理することを特徴とする風味付与剤の製造方法。
【請求項6】
植物素材が燻製材である、請求項5記載の風味付与剤の製造方法。
【請求項7】
肉様風味付与用の風味付与剤の製造方法である、請求項5又は6記載の風味付与剤の製造方法。
【請求項8】
加熱調理感付与用の風味付与剤の製造方法である、請求項5又は6記載の風味付与剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の風味付与剤を含む、飲食品。
【請求項10】
請求項1又は2記載の風味付与剤を含む、非動物性原料からなる肉様風味飲食品。
【請求項11】
請求項1又は2記載の風味付与増強剤を飲食品に添加することを特徴とする、非動物性原料からなる肉様風味飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風味付与剤及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、燻煙を利用した各種調味料が開発されており、例えば、特許文献1には、スモーク成分を魚介類エキスに吸収させて製造するエキス調味料が開示されている。一方、近年、健康維持、動物愛護、環境保全等への意識の高まりと共に、動物性原料を植物性原料に代替した植物性食品のニーズが高まっており、非動物性原料由来でありながら、動物性原料由来のような風味を有するものが求められている。
【0003】
特許文献2には、食用植物油脂と酵母エキス粉末の混合物を粉末状態で加熱して得られる、ミート様フレーバーを有する粉末調味料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-107769号公報
【特許文献2】特許第4838690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、非動物性原料由来である風味付与剤及びその製造方法、並びに該風味付与剤を含む飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、植物素材を加熱して発生させた煙を通気し、加圧加熱処理することで、該酵母エキス溶液の加圧加熱処理物を有効成分とする風味付与剤が得られることを見出し、本発明を完成した。また、該風味付与剤を使用することで、肉様の風味又は加熱調理感を有する飲食品を提供できる。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]の態様に関する。
[1]植物素材を加熱して発生させた煙を通気した酵母エキス溶液の加圧加熱処理物を有効成分とする風味付与剤。
[2]植物素材が燻製材である、[1]記載の風味付与剤。
[3]肉様風味付与用である、[1]又は[2]記載の風味付与剤。
[4]加熱調理感付与用である、[1]又は[2]記載の風味付与剤。
[5]植物素材を加熱して発生させた煙を通気した酵母エキス溶液を加圧加熱処理することを特徴とする風味付与剤の製造方法。
[6]植物素材が燻製材である、[5]記載の風味付与剤の製造方法。
[7]肉様風味付与用の風味付与剤の製造方法である、[5]又は[6]記載の風味付与剤の製造方法。
[8]加熱調理感付与用の風味付与剤の製造方法である、[5]又は[6]記載の風味付与剤の製造方法。
[9][1]又は[2]記載の風味付与剤を含む、飲食品。
[10][1]又は[2]記載の風味付与剤を含む、非動物性原料からなる肉様風味飲食品。
[11][1]又は[2]記載の風味付与増強剤を飲食品に添加することを特徴とする、非動物性原料からなる肉様風味飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、非動物性原料由来である風味付与剤が得られ、該風味付与剤を使用することで、飲食品の風味を改良でき、また、肉様の風味又は加熱調理感を有する飲食品を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の風味付与剤は、植物素材を加熱して発生させた煙を通気した酵母エキス溶液の加圧加熱処理物を有効成分とし、植物素材を加熱して発生させた煙を酵母エキス溶液に通気し、加圧加熱処理することで得られる。また、該風味付与剤を添加することで、肉様風味又は加熱調理感を付与でき、肉様風味飲食品を調製できる。
【0010】
本発明に記載の酵母エキス溶液は、酵母を、自己消化法、酵素分解法、酸分解法等の方法によってエキス化した酵母エキスを、水等の溶媒に溶解した溶液であればよく、酵母エキスは市販品を使用できる。酵母エキスを溶液中に2~85重量%含むのが好ましく、5~80重量%含むのがより好ましく、10~75重量%含むのがさらに好ましい。
【0011】
本発明に記載の加熱する植物素材は、特に限定されず、サクラ、ブナ、ナラ、オニグルミ、クヌギ、リンゴ、カエデ等の燻製剤、豆類、穀類、果物、コーヒー等から適宜選択でき、二種類以上を使用してもよいが、燻製剤が好ましく、非食用植物素材が好ましい。植物素材の使用量は特に限定されないが、酵母エキス溶液1重量部に対して、0.05~5重量部が好ましく、0.1~4重量部がより好ましく、0.2~2重量部がさらに好ましい。
【0012】
本発明において、植物素材を加熱して煙を発生させる方法としては、一般的な燻煙発生方法で行うことができ、特に限定されないが、植物素材を加熱する温度は、煙が発生する温度に適宜設定でき、100~2,000℃が好ましく、150~1,000℃がより好ましく、200~600℃がさらに好ましく、公知の燻煙発生装置を使用してもよい。
【0013】
発生させた煙を酵母エキス溶液に通気する方法としては、特に限定されず、発生させた煙を、配管、ポンプ等を使用して移送し、タンク中の酵母エキス溶液に通気すればよい。通気時間は好ましい燻香が付与できるように適宜設定できるが、例えば2~120分間が好ましく、5~60分間がより好ましい。
【0014】
本発明における加圧加熱処理としては、特に限定されず、燻香を付与した酵母エキス溶液を、加圧下で100~140℃、0.5~120分間加熱する処理が例示でき、加圧下で105~125℃、1~60分間加熱処理するのが好ましく、加圧加熱処理により、本発明の風味付与剤が得られる。圧力は、大気圧よりも高ければよく、0.02~0.3MPaが例示でき、例えば、耐圧密閉加熱釜、撹拌機付き耐圧密閉加熱釜等を用いて処理することができる。
【0015】
本発明の風味付与剤は、優れた風味を有しているため、各種調味料やその他の飲食品に広く利用できる。例えば、調味料類、スープ類、ソース類、加工食品類、ふりかけ類、インスタント食品、スナック食品類、缶詰食品類等が例示できる。飲食品に添加することにより、肉様風味又は加熱調理感を付与することで、肉類由来の原料を加えることなく、肉類様の風味や加熱調理感を付与することができ、肉様の風味を有する、肉様風味飲食品を調製でき、非動物性原料からなる肉様風味飲食品も調製できる。例えば大豆タンパク質を原料とする大豆ミート等の植物性原料を使用した加工食品に、肉様風味を付与することができる。各飲食品への添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01~30重量%、より好ましくは0.05~20重量%、さらに好ましくは0.1~10重量%である。
【実施例0016】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
【実施例0017】
ウッドチップ(サクラ)10gを300℃~425℃にて加熱して発生させた燻煙を、チューブとポンプを使用して、酵母エキス(ミーストS、アサヒグループ食品株式会社製)69.2g及び水42.0gを混合した酵母エキス溶液に、2分間通気することを繰り返し、合計約12分間通気することにより、燻香が付与された酵母エキス溶液を得た。尚、ウッドチップは、合計60gを使用した。得られた酵母エキス溶液に、食塩9.17gを混合した後、121℃で15分間、加圧加熱し、実施品1の酵母エキス溶液を得た。該酵母エキスは、フライパンで加熱されたベーコンの様な調理感、畜肉様風味及び燻香を有していた。
【実施例0018】
サクラのウッドチップの代わりに、ブナのウッドチップを使用する以外は、実施例1と同様に実施し、燻香が付与された実施品2の酵母エキス溶液を得た。該酵母エキス溶液は、畜肉を焼いたようなロースト感のある畜肉様風味及び燻香を有していた。
【0019】
[比較例1]
酵母エキス(ミーストS)69.2g及び水42.0gを混合した酵母エキス溶液に、食塩9.17gを混合した後、121℃で15分間、加圧加熱し、比較品1の酵母エキス溶液を得た。該酵母エキス溶液は、酵母エキス自体の風味を有しているのみであり、畜肉風味は感じられなかった。
【0020】
[比較例2]
実施例1の方法で、酵母エキス溶液に燻煙を通気し、燻香が付与された酵母エキス溶液を得た。得られた酵母エキス溶液に、食塩9.17gを混合した後、85℃で15分間、開放状態で加熱し、比較品2の酵母エキス溶液を得た。該酵母エキス溶液は、燻香を有していたが、実施例1の様なフライパンで加熱されたベーコンの様な調理感、畜肉様風味は有していなかった。
【0021】
[評価試験1]
実施品1を0.8%含むホワイトソース(実施品3-1)又は実施品1を0.5%含むコンソメスープ(実施品3-2)を、表1又は表2記載の割合で調製し、実施品1の代わりに比較品1を使用して調製したホワイトソース(比較品3-1)又はコンソメスープ(比較品3-2)を各々比較品とし、訓練された8名のパネラーにより、官能評価を行い、結果を表2に示した。官能評価は、厚み(重厚感)、肉様風味及び加熱調理感(香ばしさ)について、実施品1又は比較品1の代わりに水を使用して調製したブランクの評価を「0」とし、ブランクと同等のものを「0」、やや感じるものを「1」、感じるものを「2」、強く感じるものを「3」、非常に強く感じるものを「4」として5段階で評価し、各パネラーの平均値を算出して結果を表3に示した。数値が2.0未満を「×:効果なし」、2.0以上3.0未満を「△:やや効果あり」、3.0以上4.0未満を「○:効果あり」、4.0を「◎:非常に効果あり」として、結果を表3に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
全ての評価項目で、比較品より実施品の数値が高い結果となった。特に、加圧加熱処理のみの比較品1を添加した比較品3-1及び3-2は、何れも肉様風味及び加熱調理感の付与効果がなかったが、実施例1に記載の方法で通気して燻香が付与された酵母エキスに加圧加熱処理した実施品1を添加した実施品3-1及び3-2は、何れも肉様風味及び加熱調理感の付与効果が確認でき、実施例1に記載の方法で通気後に加圧加熱処理した酵母エキス溶液を配合することで、肉様風味及び加熱調理感を付与できることが分かった。