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  • 特開-バナナ繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064943
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】バナナ繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01B 1/10 20060101AFI20240507BHJP
   D01C 1/02 20060101ALI20240507BHJP
   D01B 1/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
D01B1/10
D01C1/02 A
D01B1/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044733
(22)【出願日】2023-03-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】111141185
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523103284
【氏名又は名称】楊富翔
【氏名又は名称原語表記】Fu-Hsiang YANG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】楊富翔
(57)【要約】
【課題】バナナの仮茎の利用価値を創造しながら、バナナ繊維の生産効率を効果的に向上させることができるバナナ繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】バナナの仮茎からバナナ繊維を採取するバナナ繊維の製造方法であって、バナナの仮茎を圧搾し、圧搾済みのバナナの仮茎を得るステップ(A)と、圧搾済みのバナナの仮茎をサッカロミセス・セレビシエにより発酵反応させ、発酵培養物を得るステップ(B)と、発酵培養物が発酵している状態で、発酵培養物をペクチナーゼにより加水分解させ、発酵・加水分解産物を得るステップ(C)と、発酵・加水分解産物を固体部分及び液体部分となるように固液分離させるステップ(D)と、固体部分に対してアルカリ処理と洗浄処理と漂白処理と軟化処理と乾燥処理とを行なって繊維材料を得るステップ(E)と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バナナの仮茎からバナナ繊維を採取するバナナ繊維の製造方法であって、
前記バナナの仮茎を圧搾し、圧搾済みのバナナの仮茎を得るステップ(A)と、
前記ステップ(A)で得た圧搾済みのバナナの仮茎をサッカロミセス・セレビシエにより発酵反応させ、発酵培養物を得るステップ(B)と、
前記ステップ(B)で得た発酵培養物が発酵している状態で、前記発酵培養物をペクチナーゼにより加水分解させ、発酵・加水分解産物を得るステップ(C)と、
前記ステップ(C)で得た発酵・加水分解産物を、固体部分及び液体部分となるように固液分離させるステップ(D)と、
前記ステップ(D)で得た固体部分に対して、アルカリ処理と洗浄処理と漂白処理と軟化処理と乾燥処理とを行なって繊維材料を得るステップ(E)と、を含む、
ことを特徴とするバナナ繊維の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ(B)においては、前記圧搾済みのバナナの仮茎を、20℃~32℃の範囲内にある温度で発酵反応させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のバナナ繊維の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(C)においては、前記発酵培養物を、15℃~55℃の範囲内にある温度で加水分解させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のバナナ繊維の製造方法。
【請求項4】
前記バナナ繊維の製造方法は、
前記ステップ(E)で得た繊維材料に対して開繊作業を行なうステップ(F)を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のバナナ繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物繊維の製造技術に関し、具体的には、バナナの仮茎から繊維を採取するバナナ繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バナナ(学名:Musa × paradisiaca)は、バショウ科(Musaceae)における多年生植物であり、且つ食用果実として重要な作物である。しかし、バナナの果実が採集された後、仮茎(pseudostem)などの農業廃棄物が残る。また、大量のバナナの仮茎が廃棄されると、例えばゾウムシや蟻などの農作物に被害を及ぼす害虫を招くだけではなく、バナナの仮茎の腐敗に伴ってメタンのような温室効果ガスが排出して地球環境に悪影響を与える恐れがある。このため、農業廃棄物と食糧と環境保護といった課題に配慮するためには、農作物の採集後に残されたもの(例えば残茎)を利用することが益々重要となっている。
【0003】
また、バナナの仮茎に含まれているセルロース(cellulose)とヘミセルロース(hemicellulose)とリグニン(lignin)とは、互いに絡まり合っていて、バナナの仮茎において複雑で強靭な網状構造をなしている。したがって、バナナの仮茎を処理するためには、バナナの仮茎に対して脱リグニン処理(delignification)を行なう必要がある。なお、従来のバナナの仮茎の処理方法は、削り落とす工程(scrape)(物理的な処理)と、酸処理(acid treatment)やアルカリ処理(alkaline treatment)といった工程(化学的な処理)と、を含む。しかしながら、従来のバナナの仮茎の処理方法によれば、繊維の採取効率が悪く、また綿繊維のような細かい繊維が流失するといった産量に悪影響を及ぼす問題が発生する可能性がある。
【0004】
なお、特許文献1には、パイナップル葉から繊維を採取する方法が開示されている。この方法は、パイナップル葉に対してアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)及び酵素加水分解(enzymatic hydrolysis)で順に反応させることによって、パイナップル葉繊維を採取する。その中で、該酵素は、ラッカーゼ(laccase)、キシラナーゼ(xylanase)、及びペクチナーゼ(pectinase)から選択されたものである。また、特許文献1では、異なる酵素溶液でパイナップル葉を処理してパイナップル葉繊維を取得する方法が開示され、そして取得したパイナップル葉繊維に対して残留セリシン(residual sericin)や太さや柔軟度や色や光沢に係る分析を行なった結果も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第111996603号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の結果によると、当該パイナップル葉繊維の採取方法によれば、ペクチナーゼだけを酵素とする場合に比べて、ラッカーゼ及びキシラナーゼを合わせたものを酵素として得られたパイナップル繊維は、より優れた分析結果を得ることができるとある。これは、すべての脱リグニンに用いられる酵素がパイナツプル葉繊維の採取に適用され得ることではないことを表している。
【0007】
また、上記のような研究が存在しているが、依然としてバナナの仮茎のような農業廃棄物を有効活用して植物繊維の生産効率を向上させる製造工程を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、バナナの仮茎からバナナ繊維を採取するバナナ繊維の製造方法であって、以下の(A)~(E)の各ステップを含むことを特徴とするバナナ繊維の製造方法を提供する。
(A)前記バナナの仮茎を圧搾し、圧搾済みのバナナの仮茎を得る。
(B)前記ステップ(A)で得た圧搾済みのバナナの仮茎をサッカロミセス・セレビシエにより発酵反応させ、発酵培養物を得る。
(C)前記ステップ(B)で得た発酵培養物が発酵している状態で、前記発酵培養物をペクチナーゼにより加水分解させ、発酵・加水分解産物を得る。
(D)前記ステップ(C)で得た発酵・加水分解産物を、固体部分及び液体部分となるように固液分離させる。
(E)前記ステップ(D)で得た固体部分に対して、アルカリ処理と洗浄処理と漂白処理と軟化処理と乾燥処理とを行なって繊維材料を得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバナナ繊維の製造方法によれば、バナナの仮茎の利用価値を創造しながら、バナナ繊維の生産効率を効果的に向上させることができる。これによって、農業廃棄物による環境問題を大いに低減することができることに加え、バナナの経済価値を高めることもできる。
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る分割されたバナナの仮茎の写真を示す図である。
図2】該実施形態に係る圧搾済みのバナナの仮茎の写真を示す図である。
図3】該実施形態に係る発酵・加水分解産物の写真を示す図である。
図4】該実施形態に係る繊維材料の写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、何らかの先行技術文献が本明細書において引用されても、台湾またはいかなる国においても、該先行技術文献の内容が本発明の属する分野における一般知識であることを示すものではないことを理解されたい。
【0013】
また、「含む」という用語は「含むが、これに限定されない」ことを意味し、「有する」という用語もこれに対応する意味を有することも理解されたい。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。当業者であれば、本開示の実施において、本明細書に記載のものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識し、利用することができる。実際、本開示は記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0015】
本発明の一実施形態に係るバナナ繊維の製造方法は、バナナの仮茎からバナナ繊維を採取するための方法であり、且つ以下のステップS1~ステップS7を含む。なお、本発明明細書に使われる「仮茎」という用語は、「残茎」と言い替えることもある。
【0016】
ステップS1において、バナナの仮茎を用意し、該バナナの仮茎を個々に分割して分割済みの複数のバナナの仮茎を得る。なお、本実施形態では、該分割済みのバナナの仮茎は、長さが60cm~100cmの範囲内にあるものであるが、それに限定されない。ここで、図1は該実施形態に係る分割済みのバナナの仮茎の写真を示している。
【0017】
具体的には、上記したバナナは、キャベンディッシュ(Cavendish spp.)、バショウ(Musa spp.)、又はエンセーテ(Ensete spp.)に属するものであることができるが、それらに限定されない。なお、本実施形態では、該バナナは、キャベンディッシュに属するものである。
【0018】
留意されたいのは、該ステップS1は選択的に実施されるステップである。即ち、たとえ該実施形態に係るバナナ繊維の製造方法において、該ステップS1が含まれなくても、当業者であれば、依然として該製造方法を実施することができると考えられる。
【0019】
ステップS2において、バナナの仮茎を油圧式圧搾機で圧搾し、該バナナの仮茎における30%~50%の水分を除去した後、圧搾済みのバナナの仮茎を得る。ここで、図2は該実施形態に係る圧搾済みのバナナの仮茎の写真を示している。
【0020】
ステップS3において、ステップS2で得た圧搾済みのバナナの仮茎を、20℃~32℃の範囲内にある温度で酵母により発酵反応させ、発酵培養物を得る。本実施形態では、該発酵反応は、温度28℃で行われることが好ましい。本実施形態に係る酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0021】
また、該ステップS3においては、発酵条件として、発酵が行われている際に糖類を添加して発酵培養物のブリックス(Brix)値を調整することができる。ここで、本実施形態の発酵培養物のBrix値が、18Brix~20Brixの範囲内にあることは好ましい。その中で、糖類は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、蔗糖を主要成分とする食用糖、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである。本実施形態では、蔗糖を主要成分とする食用糖は砂糖である。
【0022】
更に、該ステップS3においては、発酵培養物をろ過してそのろ過液を収集し、該ろ過液に対して78℃~100℃の範囲内にある温度で蒸留処理を行なうこともできる。これにより、燃料や有機肥料とされるバイオエタノール(bioethanol)又は蒸留残さ(distillation residue)を得ることができる。これによって、バナナの仮茎の利用価値を更に向上させることができる。
【0023】
ステップS4において、ステップS3で得た発酵培養物が発酵している状態で、該発酵培養物を、例えば15℃~55℃の範囲内にある温度で酵素により加水分解させ、発酵・加水分解産物を得る。本実施形態では、該加水分解は、温度50℃で行われることが好ましい。ここで、図3は該実施形態に係る発酵・加水分解産物の写真を示している。
【0024】
具体的には、本実施形態に係る酵素は、食品工業や畜産や農業などの産業においてよく用いられるペクチナーゼである。なお、本実施形態では、該ペクチナーゼは、台湾のビール醸造材料商社である貝肯布(Bake n Brew Homebrew Supply)社から購入したNorth Mountain Supply社製のPectic Enzymeというものである。
【0025】
なお、本発明の明細書で使われる「発酵(fermentation)」という用語は、「培養(culturing)」または「栽培(cultivation)」という用語で言い替えることができる。
【0026】
また、優れた発酵効果を得るためには、発酵に関する条件が、菌株の種類または該菌株とバナナの仮茎との用量の比率によって調整され得る。つまり、発酵に係る作業プロセスやパラメータ条件については、ここで詳細な説明がなくても、当業者であれば、適宜に実行することができると考えられる。
【0027】
ステップS5において、ステップS4で得た発酵・加水分解産物を、固体部分及び液体部分となるように固液分離させる。
【0028】
ステップS6において、ステップS5で得た固体部分に対して、アルカリ処理と洗浄処理と漂白処理と軟化処理と乾燥処理とを行なって繊維材料を得る。
【0029】
より具体的に言うと、該実施形態のアルカリ処理とは、該固体部分を、60℃~90℃の範囲内にある温度でアルカリ溶液内に3時間に浸入するプロセスである。その中で、アルカリ性溶液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、炭酸カルシウム溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである。なお、本実施形態では、該アルカリ性溶液は、2wt%~4wt%の水酸化カリウム溶液であり、ここでその重量パーセント濃度が2wt%であることが好ましい。
【0030】
該実施形態の洗浄処理とは、アルカリ処理が行われた固体部分を、圧力が100barである高圧ジェット水流で洗浄して、該固体部分におけるリグニンを除去するプロセスである。
【0031】
該実施形態の漂白処理とは、洗浄処理が行われた固体部分を、20℃~150℃の範囲内にある温度で漂白剤内に3時間浸入するプロセスである。その中で、漂白剤は、過酸化水素溶液、次亜塩素酸ナトリウム溶液、次亜塩素酸カルシウム溶液、過ホウ酸ナトリウム溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである。なお、本実施形態では、該漂白剤は、2wt%~4wt%の過酸化水素溶液であり、ここでその重量パーセント濃度が2wt%であることが好ましい。
【0032】
該実施形態の軟化処理とは、漂白処理が行われた固体部分を、陰イオン性油により90分間軟化させるプロセスである。なお、本実施形態では、陰イオン性油は、台湾の巨聖油脂化学株式会社(GIANT SUN FAT & OIL CHEMICAL CO.,LTD.)から購入したリン酸化合成加脂剤である。
【0033】
該実施形態の乾燥処理とは、軟化処理が行われた固体部分を、40℃~100℃の範囲内にある温度で時間90分~120分乾燥させるプロセスである。ここでは、温度が100℃であり且つ時間が120分間であることは好ましい。
【0034】
ステップS7において、ステップS6で得た繊維材料に対して開繊作業(bale opening)を行ない、開繊繊維を得る。また、該ステップS7において得られた開繊繊維は、トウの繊度(fineness of tow)が0.9~5.0decitex(dtex)であるもの、及びトウの繊度が40~60dtexであるものを含む。
【0035】
なお、ステップS6で得られる繊維材料においては、該繊維材料の総重量を計算基礎として、80wt%の0.9~5.0dtexの繊維、及び20wt%の40~60dtexの繊維が含まれている。
【0036】
留意されたいのは、上記の製造方法において、ステップS1の分割作業、ステップS2の圧搾作業、ステップS3の発酵反応、ステップS4の加水分解、ステップS5の固液分離、及びステップS6のアルカリ処理と洗浄処理と漂白処理と軟化処理と乾燥処理は、いずれも上記した条件で実行することに限定されず、当業者が場合によって相応しい条件で実施され得る。
【0037】
本発明は、上記の製造方法により得られたバナナ繊維も提供する。上記のバナナ繊維は、織物製品となるように加工されることができる。その織物製品は、例えば織り糸、綿糸、又は服飾用生地や帆布やカーテン用生地や靴ひもといった織物や不織布を含むが、それらに限定されない。それだけではなく、該バナナ繊維は、製紙工業及び人造繊維や繊維加工に関する産業などにおいても用いられ、即ち、紙製品や家具や食器や靴や皮革やろ過材などのものを製造するために、1つの材料として利用され得る。
【実施例0038】
<具体的な実施例>
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、これら実施例は単に例示を目的としたものであり、本発明の特許請求の範囲を限定する目的で用いられるべきではないことを理解されたい。
【0039】
一般的試験材料:
1.バナナの仮茎の用意
以下の実験で使用したバナナの仮茎は、台湾南投県の集集鎮、台湾雲林県のツートン郷、台湾高雄市の大樹区、及び台湾屏東県の長治郷で生産されたバナナから入手されたものである。
【0040】
2.酵母の用意
以下の実験で使用したサッカロミセス・セレビシエは、貝肯布(Bake n Brew Homebrew Supply)社から購入したLesaffre Yeast Corporation社製のFermentis SafAleTM US-05 Ale Yeastである。
また、サッカロミセス・セレビシエ0.122kg、砂糖6kg(台湾糖業公司(Taiwan Sugar Corporation)から購入)、及び逆浸透膜(RO膜)でろ過した純水18Lを十分に混合してサッカロミセス・セレビシエの接種源(inoculum of Saccharomyces cerevisiae)を得た。
【0041】
3.酵素の用意
以下の実験で使用したペクチナーゼは、貝肯布(Bake n Brew Homebrew Supply)社から購入したNorth Mountain Supply社製のPectic Enzymeである。
【0042】
実施例1.バナナの仮茎によるバナナ繊維の製造
【0043】
A. バナナ繊維の製造方法
第1に、分割機により30kgのバナナの仮茎を、長さが60cm~100cmの範囲内(図1を参照)となるように分割した。そして、油圧式圧搾機でバナナの仮茎を圧搾し、圧搾済みのバナナの仮茎(図2を参照)を得た。
第2に、圧搾済みのバナナの仮茎を発酵槽内に放置し、発酵槽に上記「一般的試験材料」の項目2に記載したサッカロミセス・セレビシエの接種源を0.5%(v/v)接種し、温度28℃で120時間発酵させ、発酵培養物を得た。また、発酵過程において、糖度計(saccharometer)で発酵培養物のBrix値を測定し、且つ砂糖により当該発酵培養物のBrix値を18Brix~20Brixの範囲内に維持させた。
第3に、発酵培養物が発酵している状態で、0.027mL且つ0.005wt%のペクチナーゼ溶液を、発酵培養物に添加して十分に混合し、温度50℃で120時間加水分解させ、発酵・加水分解産物(図3を参照)を得た。
第4に、ろ過網により発酵・加水分解産物を2時間固液分離させ、該発酵・加水分解産物を固体部分及び液体部分とした。
第5に、温度90℃で固体部分を、2wt%の水酸化カリウム溶液に3時間浸入するアルカリ処理を行なった。アルカリ処理が行われた固体部分を、圧力100barの高圧ジェット水流で洗浄して、該固体部分におけるリグニンを除去する洗浄処理を行なった。洗浄処理が行われた固体部分を、温度100℃で2wt%の過酸化水素溶液内に3時間浸入する漂白処理を行なった。漂白処理が行われた固体部分を、適量のリン酸化合成加脂剤(巨聖油脂化学株式会社から購入、商品の名称:リン酸化合成油脂、型番:SOFCON SWK)内に90分間浸入して軟化させる軟化処理を行なった。そして、軟化処理が行われた固体部分を、熱風循環式乾燥装置により温度100℃で120分間乾燥させる乾燥処理を行なった。このようにして、束状の繊維材料を得た。
第6に、束状の繊維材料に対して開繊作業を行なった。それにより、図4に示されるような、太さの異なる2種類のバナナ繊維(即ち、トウの繊度0.9~5.0dtexのバナナ繊維及びトウの繊度40~60dtexのバナナ繊維)を得た。
【0044】
B.バナナ繊維の生産効率の測定
実施例1の項目Aに記載の製造方法により得られたすべてのバナナ繊維(以下、「実験群」とも呼ぶ)に対して重量を測定した。バナナ繊維の生産効率(%)は、使用したバナナの仮茎の重量(即ち、30kg)及び取得したバナナ繊維の総重量を以下の式(I)に代入して計算され得る。
A=(B/C)×100 (I)
式中、A=バナナ繊維の生産効率(%)
B=取得したバナナ繊維の総重量(kg)
C=使用したバナナの仮茎の重量(kg)
【0045】
なお、実施例1の項目Aに記載の製造方法を再び実行してバナナ繊維を対照群とした。しかし、異なるのは、対照群においてバナナの仮茎を圧搾せず、代わりに従来のリグニン及びヘミセルロースを削り落とす工程を行なった。
【0046】
ここで、計算したバナナ繊維の生産効率は、以下の表1に示される。
【0047】
【表1】
【0048】
結果として、表1に示されるように、実験群の生産効率は、対照群の生産効率よりも著しく優れている。それだけではなく、対照群によれば、トウの繊度が4.0dtex以下である繊維が得られなかった。したがって、対照群(従来の方法)と比べると、実験群(本発明の方法)は、バナナ繊維の生産効率を向上させると共に、より多くの種類の繊維を得ることができるので、バナナの仮茎の利用価値を高めることができる。
【0049】
実施例2.本発明のバナナ繊維の製造方法による副産物の利用
【0050】
A. バイオエタノール及び蒸留残さの製造方法
実施例1の項目Aに記載の製造方法において得られた発酵培養物を、ろ過網によりろ過してそのろ過液を収集した。そして、蒸留器により78℃~100℃の範囲内にある温度で該ろ過液に対して蒸留処理を行なった。これによって、バイオエタノール及び蒸留残さを得た。
【0051】
B.蒸留残さにおけるアミノ酸の種類及び含有量の測定
台湾のJACKSON INTERNATIONAL STANDARD INSPECTION CO., LTD.に委託して実施例2の項目Aに記載の製造方法により得られた蒸留残さにおけるアミノ酸の種類及び含有量を測定した。
【0052】
ここで、測定した結果は、以下の表2に示される。
【0053】
【表2】
【0054】
C.蒸留残さにおける金属の種類及び含有量の測定
台湾のJACKSON INTERNATIONAL STANDARD INSPECTION CO., LTD.に委託して実施例2の項目Aに記載の製造方法により得られた蒸留残さにおける金属の種類及び含有量を測定した。
【0055】
ここで、測定した結果は、以下の表3に示される。
【0056】
【表3】
【0057】
結果として、表3に示されるように、実施例2の項目Aに記載の製造方法により得られた蒸留残さにおける金属の種類及び含有量は、台湾行政院農業委員会(Agriculture and Food Agency, Council of Agriculture, Executive Yuan)により制定された肥料に関する規定に沿う。
【0058】
実施例1及び実施例2の結果を総合すると、本発明に係るバナナ繊維の製造方法によれば、バナナの仮茎の利用価値を創造しながら、バナナ繊維の生産効率を効果的に向上させることができる。これよって、農業廃棄物による環境問題を大いに低減することができることに加え、バナナの経済価値を高めることもできる。
【0059】
それだけではなく、該製造方法における圧搾済みのバナナの仮茎を発酵反応させるステップで得られた発酵培養物より、燃料や有機肥料とされるバイオエタノール又は蒸留残さを得ることができるので、バナナの仮茎の利用価値を更に向上させることができる。
【0060】
上記においては、説明のため、実施形態の完全な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のバナナ繊維の製造方法は、バナナの仮茎の利用価値を創造しながら、バナナ繊維の生産効率を効果的に向上させることができる。このため、産業上の利用可能性がある。
図1
図2
図3
図4