IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

特開2024-64972ゴム組成物、ゴム部材、及び導電性ゴムローラ
<>
  • 特開-ゴム組成物、ゴム部材、及び導電性ゴムローラ 図1
  • 特開-ゴム組成物、ゴム部材、及び導電性ゴムローラ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064972
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム部材、及び導電性ゴムローラ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20240507BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/04
C08L9/02
C08L71/03
C08L57/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093784
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022173267
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 晃稔
(72)【発明者】
【氏名】船田 俊明
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC07X
4J002BA014
4J002BB15W
4J002CH04Y
4J002DA036
4J002DA047
4J002FD116
4J002FD147
4J002GM00
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】連続通電における抵抗値上昇を抑制しつつ、温度湿度の異なる環境下における抵抗値の変化を抑制することができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】ゴム成分と、相溶化剤と、カーボンブラックと、を含むゴム組成物である。前記ゴム成分は、NBRと、GECOと、EPDMとを含み、前記EPDMの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上65質量部以下であり、前記相溶化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上20質量部以下であり、前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以上70質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、相溶化剤と、カーボンブラックと、を含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体と、エチレン-プロピレン-ジエンゴムとを含み、
前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上65質量部以下であり、
前記相溶化剤は、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素水素添加樹脂、脂環式炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び芳香族炭化水素水素添加樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂であり、
前記相溶化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上20質量部以下であり、
前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以上70質量部以下である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックは、算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒径カーボンブラックを含み、
前記特定粒径カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上35質量部以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上40質量部以下である、請求項1又は請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のゴム組成物を用いた導電性ゴム部材。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のゴム組成物を用いた導電性ゴムローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム組成物、ゴム部材、及び導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ゴム組成物が開示されている。これは、アクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリンゴムに、カーボンブラック等の導電性粉末を分散させたゴム組成物である。
特許文献1のゴム組成物は、連続通電における抵抗値上昇を抑制できる。
しかし、このゴム組成物は、温度湿度の異なる環境下における抵抗値の変化を必ずしも十分に抑制できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-80374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、連続通電における抵抗値上昇を抑制しつつ、温度湿度の異なる環境下における抵抗値の変化を抑制できるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]ゴム成分と、相溶化剤と、カーボンブラックと、を含むゴム組成物であって、
前記ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエンゴムと、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体と、エチレン-プロピレン-ジエンゴムとを含み、
前記エチレン-プロピレン-ジエンゴムの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して15質量部以上65質量部以下であり、
前記相溶化剤は、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素水素添加樹脂、脂環式炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び芳香族炭化水素水素添加樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂であり、
前記相溶化剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して3質量部以上20質量部以下であり、
前記カーボンブラックの含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して30質量部以上70質量部以下である、ゴム組成物。
【0006】
[2]前記カーボンブラックは、算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒径カーボンブラックを含み、
前記特定粒径カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量は、5質量部以上35質量部以下である、[1]のゴム組成物。
【0007】
[3]前記エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して20質量部以上40質量部以下である、[1]または[2]のゴム組成物。
【0008】
[4][1]-[3]のいずれかのゴム組成物を用いた導電性ゴム部材。
【0009】
[5][1]-[3]のいずれかのゴム組成物を用いた導電性ゴムローラ。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、連続通電における抵抗値上昇を抑制しつつ、温度湿度の異なる環境下における抵抗値の変化を抑制できるゴム組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る導電性ロールの正面図と断面図である。
図2】抵抗の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本開示において数値範囲を示す上限値と下限値は任意の組合せを採用できる。
【0013】
1.ゴム組成物
ゴム組成物は、ゴム成分と、相溶化剤と、カーボンブラックと、を含む。
ゴム成分は、アクリロニトリルブタジエンゴム(以下「NBR」ともいう。)と、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(以下「GECO」ともいう。)と、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(以下「EPDM」ともいう。)と、を含む。
【0014】
(1)ゴム成分
本開示のゴム組成物のゴム成分としては、NBR、GECO、及びEPDMが含まれる。ゴム成分は、上記のNBR、GECO、及びEPDMとともに、他の種類のゴムを含んでいてもよい。
【0015】
(1.1)アクリロニトリルブタジエンゴム
NBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体である。NBRのアクリロニトリル含量は問わない。NBRは、アクリロニトリル含量により、高ニトリルタイプ(アクリロニトリル含量36質量%-42質量%)、中高ニトリルタイプ(アクリロニトリル含量31質量%-35質量%)、中ニトリルタイプ(アクリロニトリル含量25質量%-30質量%)、低ニトリルタイプ(アクリロニトリル含量24質量%以下)に種別される。これらのいずれのタイプも使用できる。尚、アクリロニトリル含量とは、アクリロニトリルとブタジエンの合計を100質量%とした場合のアクリロニトリル含量(質量%)である。
【0016】
耐油性の観点から、アクリロニトリルとブタジエンとの合計を100質量%とした場合のNBRのニトリル含量は、10質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましく、19質量%以上がさらに好ましい。他方、アクリロニトリルとブタジエンの合計を100質量%とした場合のNBRのニトリル含量は、耐寒性の観点から、48質量%以下が好ましく、36質量%以下がより好ましく24質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、NBRのニトリル含量は、10質量%以上42質量%以下が好ましく、12質量%以上36質量%以下が好ましく、15質量%以上24質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
NBRの配合割合は、特に問わない。ゴムの加工性を担保するという観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、35質量部以上がさらに好ましい。他方、NBRの配合割合は、オゾンクラックの発生を抑制するという観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、75質量部以下が好ましく、65質量部以下であることがより好ましく、55質量部以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、NBRの配合割合は、ゴム成分の合計100質量部に対して、5質量部以上75質量部以下が好ましく、15質量部以上65質量部以下がより好ましく、35質量部以上55質量部以下がさらに好ましい。
【0018】
(1.2)GECO
GECOは、エピクロロヒドリンゴムの一種である。GECOは、エピクロロヒドリンと、エチレンオキサイドと、アリルグリシジルエーテルとの共重合体である。GECOは、側鎖にアリルグリシジルエーテル由来の二重結合を有する。このため、GECOは、熱劣化やオゾン亀裂性といった老化現象が抑制され、本来の耐油性や強度特性、耐寒性等は保持しているという優れた特性を有する。GECOは、オキシエチレン鎖に由来する固有の半導電的な性質のため、電気抵抗が低いという特徴をもっている。
【0019】
GECOにおいて、ゴム組成物の抵抗値を下げるという観点から、エピクロロヒドリンユニットと、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、エチレンオキサイドユニット含量は、20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましい。他方、エチレンオキサイドの結晶化を抑制するという観点から、GECOにおいてエチレンオキサイドユニット含量は、エピクロロヒドリンユニットと、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、80モル%以下であることが好ましく、77モル%以下であることがより好ましく、GECOにおいてエチレンオキサイドユニット含量は、75モル%以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、GECOにおいてエチレンオキサイドユニット含量は、エピクロロヒドリンユニットと、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、20モル%以上80モル%以下が好ましく、25モル%以上77モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上75モル%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
GECOにおけるアリルグリシジルエーテルユニット含量は、架橋密度を上げるという観点から、エピクロロヒドリンユニットと、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、2.0モル%以上であることが好ましく、4.0モル%以上であることがより好ましく、6.0モル%以上であることがさらに好ましい。他方、耐老化防止の観点から、GECOにおけるアリルグリシジルエーテルユニット含量は、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。これらの観点から、GECOにおいてアリルグリシジルエーテルユニット含量は、エチレンオキサイドユニットと、アリルグリシジルエーテルユニットの含量の合計を100モル%とした場合に、2.0モル%以上20モル%以下が好ましく、4.0モル%以上15モル%以下がより好ましく、6.0モル%以上10モル%以下がさらに好ましい。
【0021】
連続通電における抵抗値上昇及び抵抗値の環境依存性の観点から、GECOの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。他方、成形性を確保するという観点から、GECOの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。以上観点から、GECOの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに、10質量部以上50質量部以下が好ましく、20質量部以上40質量部以下がより好ましく、25質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
【0022】
(1.3)EPDM
EPDMは、エチレン、プロピレン、及びジエン類の共重合体である。EPDMは、エチレン-プロピレン共重合体に、更にジエン類を共重合させて不飽和結合を導入することにより、加硫剤による加硫を可能としている。ジエン類は、特に限定されないが、非共役ジエンが好ましく、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が用いられる。本開示のゴム発泡体の特性を得る観点から、ジエン類として5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0023】
EPDMにおけるジエン類の含有量(ジエン含有量)は、特に限定されない。エチレン、プロピレン、及びジエン類の質量合計を100質量%とした場合のジエン類の含有量は、架橋(加硫)反応及び、機械物性の影響の観点から、2質量%以上17質量%以下が好ましく、2.5質量%以上16質量%以下がより好ましく、3質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
EPDMにおけるエチレン含有量は、特に限定されない。エチレン、プロピレン、及びジエン類の質量合計を100質量%とした場合のエチレン含有量は、耐熱性、耐永久歪性の観点から、40質量%以上80質量%以下が好ましく、42質量%以上70質量%以下がより好ましく、45質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。
EPDMは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
連続通電における抵抗値上昇及び環境依存性の観点から、EPDMの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに、15質量部以上であり、35質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。他方、成形性を確保するという観点から、EPDMの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに、65質量部以下であり、63質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。以上の観点から、EPDMの配合割合は、ゴム成分の合計を100質量部としたときに、15質量部以上65質量部以下であり、35質量部以上63質量部以下が好ましく、50質量部以上60質量部以下がより好ましい。
【0025】
(2)相溶化剤
相溶化剤は、ゴム成分であるNBR、GECO、EPDMの3者間の極性差を解消することにより、ゴム配合組成物の均一分散性が向上する。EPDMは、NBR及びGECOと比較して、溶解度パラメータ(SP値)が低い。EPDMは、NBR及びGECOへの分散が困難である。相溶化剤を使用することにより、極性差が解消されて、NBR及びGECOに対して、EPDMのブレンドが容易となる。これにより、EPDMの多量添加が可能となって、導電体組成物の通電特性と環境特性が改善される。
相溶化剤は、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素水素添加樹脂、脂環式炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び芳香族炭化水素水素添加樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂である。組成物の均一分散の観点から、脂肪族炭化水素樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
脂肪族炭化水素樹脂は、鎖状又は環状の非芳香族性の炭化水素の樹脂である。脂肪族炭化水素樹脂の炭素原子間の結合は、すべて単結合であっても、二重結合や三重結合などの不飽和結合を有していてもよい。
脂肪族炭化水素樹脂としては、例えば、パフォーマンスアディテイブ社製 商品名「UB6000」、Schill+Seilacher社製 ストラクトール 40 MS、Schill+Seilacher社製 商品名「ストラクトール 50 MS」、Schill+Seilacher社製 商品名「ストラクトール 60 NS」、Schill+Seilacher社製 商品名「ストラクト―ル 60NSF」、Schill+Seilacher社製「ストラクト―ルHP55」が好適に挙げられ、脂肪族炭化水素水素添加樹脂としては、パフォーマンスアディテイブ社製、商品名「UB XP108」が好適に挙げられる。以上の樹脂は、単独で使用しても良いし、2種以上混合しても使用しても良い。
【0027】
脂環式炭化水素樹脂は、分子の形状が環式の脂肪族炭化水素のことをいい、単結合の環状化合物であるシクロアルカン、二重結合の環状化合物であるシクロアルケン、三重結合の環状化合物であるシクロアルキンが含まれる。
脂環式炭化水素樹脂としては、特にジシクロペンタジエン樹脂が好適に挙げられる。ジシクロペンタジエン樹脂としては、日本ゼオン(株)製、商品名「クイントン 1325」、「クイントン 1700」、丸善石油化学(株)製、商品名「マルカレッツM M-890A」等が挙げられる。他の脂環式炭化水素樹脂としては、荒川化学工業(株)製、商品名「アルコン P-90」等が挙げられる。
【0028】
芳香族炭化水素樹脂は、環状不飽和有機化合物である。芳香族炭化水素樹脂は、例えば、ナフサの熱分解により得られ、そのC8-C10留分(特に、C9留分)中に含まれるα-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエン等のビニル置換芳香族炭化水素等を重合した樹脂などが挙げられる。例えば、新日本石油精製(株)製、商品名「日石ネオポリマー L-90」、「日石ネオポリマー 120」等が挙げられる。
【0029】
相溶化剤の配合割合は、組成物の均一分散という観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、3質量部以上であり、3.5質量部以上が好ましく、4.0質量部以上がさらに好ましい。他方、成形性を確保するという観点から、相溶化剤の配合割合は、ゴム成分の合計100質量部に対して、20質量部以下であり、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。以上の観点から、相溶化剤の配合割合は、ゴム成分の合計100質量部に対して、3質量部以上20質量部であり、3.5質量部以上15質量部以下が好ましく、4.0質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0030】
(3)カーボンブラック
カーボンブラックは、ゴム部材に、物性及び導電性を付与するものである。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。ASTM D1765により分類されたカーボンブラックのグレードとしては、N100番台、N200番台、N300番台、N400番台、N500番台、N600番台、N700番台、N800番台、及びN900番台を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。カーボンブラックのグレードは、連続通電における抵抗値上昇及び抵抗値の環境依存性の観点から、少なくともN700番台、N900番台のいずれかを含むことが好ましく、N700番台とN900番台の両方を含むことがより好ましい。
【0031】
カーボンブラックの配合割合は、成形性の観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、70質量部以下であり、65質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。他方、通電特性の環境依存性の観点から、カーボンブラックの配合割合は、ゴム成分の合計100質量部に対して、30質量部以上であり、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。これらの観点から、カーボンブラックの配合割合は、ゴム成分の合計100質量部に対して、30質量部以上70質量部以下であり、40質量部以上65質量部以下が好ましく、50質量部以上60質量部以下がより好ましい。
【0032】
製造に用いるカーボンブラックの算術平均粒子径は、特に限定されない。例えば、算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒子径のカーボンブラックや、算術平均粒子径が201nm以上500nm以下の特定粒子径のカーボンブラックを用いることができる。連続通電における抵抗値上昇及び抵抗値の環境依存性の観点から、少なくとも算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒子径のカーボンブラック、算術平均粒子径が201nm以上500nm以下の特定粒子径のカーボンブラックのいずれかを含むことが好ましく、算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒子径のカーボンブラック、算術平均粒子径が201nm以上500nm以下の特定粒子径のカーボンブラックの両方を含むことがより好ましい。
製造に用いるカーボンブラックの算術平均粒子径は電子顕微鏡による目視観察で求めることができる。具体的にはカーボンブラックを個々の一次凝集体まで分散させて透過型電子顕微鏡にて観察し、任意に100個以上の一次凝集体の最長径を測り、その平均値によって求めることができる。
【0033】
製造に用いるカーボンブラックの算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒径カーボンブラックの配合割合は、抵抗値の環境依存性の観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、5質量部以上含むことが好ましく、10重量部以上がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。他方、連続通電における抵抗値上昇の観点から、35重量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、カーボンブラックの算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒径カーボンブラックの配合割合は、5質量部以上35質量部以下含むことが好ましく、10質量部以上30質量部以下含むことがより好ましく、15質量部以上25質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0034】
ASTM6556に準じて求めたカーボンブラックの窒素比表面積(m/g)は、特に限定されない。カーボンブラックの分散性及びゴム組成物の成形性の観点から、窒素比表面積は、100m/g以下が好ましく、70m/g以下がより好ましく、40m/g以下がさらに好ましい。他方、導電性確保の観点から、ASTM6556に準じて求めたカーボンブラックの窒素比表面積(m/g)は、3m/g以上が好ましく、4m/gがより好ましく、5m/g以上がさらに好ましい。以上の観点から、ASTM6556に準じて求めたカーボンブラックの窒素比表面積(m/g)は、3m/g以上100m/g以下が好ましく、4m/g以上70m/g以下がより好ましく、5m/g以上40m/g以下がさらに好ましい。
【0035】
ASTM2414に準じて求めたカーボンブラック吸油量(cm/100g)は、特に限定されない。カーボンブラックの分散性及び導電性の観点から、カーボンブラック吸油量は、20cm/100g以上が好ましく、30cm/100gがより好ましく、40cm/100gが更に好ましい。他方ゴム組成物の物性確保の観点から、ASTM2414に準じて求めたカーボンブラック吸油量(cm/100g)は、200cm/100g以下が好ましく、100cm/100g以下がより好ましく、50cm/100g以下が更に好ましい。以上の観点からASTM2414に準じて求めたカーボンブラック吸油量(cm/100g)は、20cm/100g以上200cm/100g以下が好ましく、30cm/100g以上100cm/100g以下がより好ましく、40cm/100g以上50cm/100g以下が更に好ましい。
【0036】
(4)架橋剤(任意成分)
架橋剤は、特に限定されない。
架橋剤は、例えば、硫黄、硫黄化合物などの加硫剤を用いても良いし、有機過酸化物系架橋剤を用いてもよい。有機過酸化物系架橋剤として、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジクミルパーオキサイト、ジーt-ブチルパーオキサイト、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイト、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシン)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
有機過酸化物系架橋剤として、特に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアシルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール、ジクミルパーオキサイト、ジーt-ブチルパーオキサイト、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが好ましい。
架橋剤の配合割合は、特に限定されない。例えば、ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、架橋剤は、架橋後の物性確保の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。他方、耐ブルーム性の観点から、架橋剤は、ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、架橋剤の量は、ゴム成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましい。
【0037】
(5)加硫促進助剤(任意成分)
本開示のゴム組成物は、組成物中に加硫促進助剤を配合してもよい。加硫促進助剤は、主に加硫剤の働きを促進させるものである。加硫促進助剤は、特に限定されない。加硫促進助剤は、例えば、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれらの酸化物や水酸化物などを使用することができる。
これら金属化合物のなかでも、特に、酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化マグネシウムが、加硫効果が高いため好ましい。なお、これらの加硫促進助剤は2種以上を併用して用いてもよい。
加硫促進助剤の配合割合は、特に限定されない。ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、加硫促進助剤は、硫黄架橋後の物性確保の観点から、2.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、4.0質量部以上が更に好ましい。他方、加硫促進助剤は、耐ブルーム性の観点から、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、加硫促進助剤の量は、ゴム成分の合計100質量部に対して、2.0質量部以上25質量部以下が好ましく、3.0質量部以上20質量部以下がより好ましく、4.0質量部以上15質量部以下が更に好ましい。
【0038】
(6)加硫活性剤(任意成分)
本開示のゴム組成物は、組成物中に加硫活性剤を配合してもよい。加硫活性剤は、主に有機過酸化物系架橋剤の架橋を促進させるものである。加硫活性剤は、二重結合を複数有する。加硫活性剤は、炭素-炭素二重結合を複数有するものが好ましい。加硫活性剤は、共役二重結合を有するものが好ましい。
加硫活性剤としては、例えば、具体的には、p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム化合物、エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート等のメタクリレート系化合物、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物、マレイミド系化合物、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
特に、ジアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の炭素-炭素二重結合を複数有するアリル化合物、エチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリルレート等の炭素-炭素二重結合を複数有するメタクリレート系化合物が好適に使用される。
加硫活性剤の量は、特に限定されない。ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、加硫活性剤は、ゴム組成物における架橋密度向上の観点から、0.5質量部以上が好ましく、0.7質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。他方、架橋助剤は、ゴム組成物の物性悪化を抑制する観点から、10.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、5.0質量部以下がさらに好ましい。これらの観点から、加硫活性剤の量は、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.7質量部以上7.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下がさらに好ましい。
【0039】
(7)加硫促進剤(任意成分)
加硫促進剤としては、例えば、チアゾール類(例えば、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、ジチオカルバミン酸類(例えば、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン等)、スルフェンアミド類(例えば、ベンゾチアジル-2-ジエチルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等)、チウラム類(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等)、キサントゲン酸類(例えば、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等)、アルデヒドアンモニア類(例えば、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメンチレンテトラミン等)、アルデヒドアミン類(例えば、n-ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミン等)、チオウレア類(例えば、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなど)、ジチオフォスファイド系架橋促進剤等が用いられる。このような架橋促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、加硫促進剤の配合割合は、耐ブルーム性、耐久性、架橋速度調整、などの観点から、例えば、ゴム成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.7質量部以上9.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上8.5質量部以下がさらに好ましい。
【0040】
(8)その他の充填剤(任意成分)
本開示のゴム組成物は、カーボンブラック以外にも充填剤を用いてもよい。その他の充填剤は、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、ケイ酸、及びその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アルミニウム粉等の無機系充填剤、例えば、コルクなどの有機系充填剤、その他公知の充填剤が用いられる。これら充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
その他の充填剤の配合割合は、特に限定されないが、物性を確保するため、例えば、ゴム成分の合計100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、15質量部以上150質量部以下がより好ましく、25質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。
【0041】
(9)加工助剤(任意成分)
本開示のゴム組成物は、相溶化剤以外にも加工助剤を用いても良い。加工助剤は、グリセリン脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン系脂肪酸エステル、プロピレン系脂肪酸エステル、n-ブチルステアレート等の脂肪酸エステルや、硫黄ファクチス、ステアリン酸を用いることができる。加工助剤の配合割合は特に問わない。ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、加工助剤は、他のゴム薬品を凝集なく均一に分散させる観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。他方、加工助剤は、ゴムコンパウンドの粘度を抑制する観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、10.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、脂肪酸エステルの量は、ゴム成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上5.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下が更に好ましい。
【0042】
(10)発泡剤(任意成分)
発泡剤は、特に限定されない。発泡剤として、有機系発泡剤、無機系発泡剤等の公知の発泡剤を使用できる。発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
発泡剤として、例えば、ジニトロペンタジエンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、及び炭酸水素ナトリウムのうち少なくとも一種を用いることができる。
発泡剤の配合割合は、特に限定されない。ゴム成分の合計を100質量部とした場合に、発泡剤は、低密度のゴム発泡体にするための発泡ガス量に調整する観点から、5.0質量部以上が好ましく、8.0質量部以上がより好ましく、9.0質量部以上が更に好ましい。他方、発泡剤は、見栄え確保(ワレ、ピンホール等の欠陥)の観点から、ゴム成分の合計100質量部に対して、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、25質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、発泡剤の量は、ゴム成分の合計100質量部に対して、5.0質量部以上35質量部以下が好ましく、8.0質量部以上30質量部以下がより好ましく、9.0質量部以上25質量部以下が更に好ましい。
【0043】
(11)発泡助剤(任意成分)
発泡助剤は特に限定されない。発泡助剤として、尿素系発泡助剤が好適に用いられる。尿素系発泡助剤は、尿素を主成分とするものであり、例えば、永和化成工業社製のセルペーストK-5、セルペースト101等が例示される。なお、主成分とは、含有率(質量%)が90質量%以上(100質量%以下)の物質をいう。
尿素系発泡助剤の配合割合は、特に限定されない。尿素系発泡助剤の配合割合は、発泡成形時の発泡剤の分解開始温度を調製する観点から、ゴム成分の合計を100質量部に対して、1.0質量部以上9.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以上8.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以上以8.0質量部以下がさらに好ましい。
【0044】
(12)導電性ゴムローラの構成
導電性ゴムローラ10は、図1に示すように、シャフト11と、シャフト11の外周に設けられたゴム部材12と、を備えている。
【0045】
ゴム部材12は、中心にシャフト挿入用孔13を有する円筒形をなしている。導電性ゴムローラ10は、ゴム部材12の層を一層のみ有しているが、複数層を有していてもよい。また、ゴム部材12は、発泡体、非発泡体のいずれも使用できる。ゴム部材12は、例えば0.5mm以上15mm以下とすることができる。
【0046】
シャフト11は、略棒状の金属製のシャフトであり、鉄、ステンレス、アルミニウム等の導電性の良好な金属製のものが採用されている。シャフト11は、両端を除いて、外周面が、ゴム部材12によって覆われている。なお、シャフト11として、金属製のシャフト以外に、樹脂製のシャフト等を採用することが可能である。樹脂製のシャフトとしては、高剛性であり、導電性を有するものを採用することが好ましく、樹脂製のシャフトは、例えば、高剛性樹脂に導電剤を添加、分散させて形成される。
【0047】
導電性ゴムローラ10は、電子写真機器用導電部材の構成材料に用いられるものである。導電ゴム部材としては、例えば、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロール等の各種の導電性弾性ロールが挙げられる。導電性ゴムローラ10は、用途に応じて求められる機能に合わせてゴム部材12の表面に塗装が施されてもよい。例えば、導電性ゴムローラ10が帯電ロールの場合には、帯電性が要求され、一方、現像ロールの場合には、トナー帯電性やトナー離型性、残留電荷減衰性などの機能が要求されるため、要求機能に応じた組成物を調製し、ゴム部材12の表面に塗装することができる。
【実施例0048】
以下の実施例において、実施例1A-7Eは、実施例1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、6B、7A、7B、7C、7D、7Eの全ての実施例を表している。実施例1A-7Aは、実施例1A、2A、3A、4A、5A、6A、7Aの実施例を表している。実施例1B-7Bは、実施例1B、2B、3B、4B、5B、6B、7Bの実施例を表している。
1.ゴム組成物の調製(実施例1A-7E、及び、比較例1-8)
表1-3に示す配合割合で、ゴム組成物を調製した。表1-3において、主要な原料の詳細を以下に示す。
・NBR:JSR株式会社製 N250S(ニトリル含量19.5質量%)を用いた。
・GECO:大阪ソーダ(ダイソー)社製 エピクロマーCG102
・EPDM:三井化学株式会社製 EPT3045(エチレン量56質量%、ジエン量4.7質量%、ジエン類、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB))を用いた。
・相溶化剤 脂肪族炭化水素樹脂:Schill+Seilacher社製 (ストラクト―ル60NSF)を用いた。
・カーボンブラック(N900番台):cancarb社製 N990(ASTM6556に準じて求めたカーボンブラックの窒素表面積 7.0-12.0 m/g、ASTM2414に準じて求めたカーボンブラック吸油量 44.0cm/100g、算術平均粒子径280nm)を用いた。
・カーボンブラック(N700番台):旭カーボン株式会社製 旭#50(ASTM6556に準じて求めたカーボンブラックの窒素表面積 22.0 m/g、ASTM2414に準じて求めたカーボンブラック吸油量 62.0cm/100g、算術平均粒子径80nm)を用いた。
・充填剤 重質炭酸カルシウム 丸尾カルシウム株式会社製 (重質炭酸カルシウム)を用いた。
・加硫促進助剤 酸化亜鉛 ハクスイテック株式会社製 (酸化亜鉛2種)を用いた。
・加工助剤 ステアリン酸 日本油脂株式会社製 (ステアリン酸つばき)を用いた。
・加硫剤:硫黄(ランクセス(株)製 レノグランS-80)を用いた。
・加硫促進剤1 :チウラム系加硫促進剤(ラインケミー株式会社 TETD-75)を用いた。
・加硫促進剤2 :スルフェンアミド系加硫促進剤(三新化学株式会社 CM-G)を用いた。
【0049】
各ゴム組成物は、具体的には以下のように作製した。
<実施例1A-7E、比較例1-8>
NBR、GECO、EPDM、相溶化剤、カーボンブラック、充填剤、加硫促進助剤をバンバリーミキサーに投入し、バンバリーミキサー用いて混練りした。その後、そのコンパウンドに、加硫剤、加工助剤、加硫促進剤1,2を加え、ミキシングロールで、更に混練りし、ロールにて、シート状に分出しをおこなって、ゴム組成物を調製した。ゴム組成物の配合割合を表1-3に示す。表1-3において、配合の欄、合計の欄の単位は、全て「質量部」である。以下に示す実施例及び比較例において、NBR、EPDM、相溶化剤、カーボンブラックの種類、及び添加量を変えてゴム組成物を調製した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
<実施例1A>
NBRを35質量部、EPDMを35質量部、相溶化剤を3質量部、カーボンブラックを50質量部添加して、上記の手順でゴム組成物を調製した。
<上記実施例1A以外の実施例、及び比較例1-8>
NBR、EPDM、相溶化剤、カーボンブラックの種類、及び添加量以外は、実施例1Aと同様にゴム組成物を調製した。
【0054】
(1)実施例1A-7Aの各要件の充足状況
実施例1A-7Aの導電ゴムを構成する組成物は、下記要件(a)-(e)を全て満たしている。
・要件(a):NBRが含まれる。
・要件(b):GECOが含まれる。
・要件(c):EPDMが15質量部以上65質量部以下である。
・要件(d):相溶化剤が3質量部以上20質量部以下である。
・要件(e):カーボンブラックが30質量部以上70質量部以下である。
【0055】
(2)実施例1B-7B、7C、7D、及び7Eの各要件の充足状況
実施例1B-7B、7C、7D、及び7Eの導電ゴムを構成する組成物は、上記要件(a)-(e)に加え、下記要件(f)、(g)を全て満たしている。
要件(f):算術平均粒子径が61nm以上100nm以下の特定粒径カーボンブラックを含んでいる。
要件(g):上記特定粒径カーボンブラックは、5質量部以上35質量部以下である。
【0056】
(3)比較例1-8の各要件の充足状況
これに対して、比較例1-8の導電ゴムを構成する組成物は、以下の要件を満たしていない。
比較例1-2、5は、要件(c)(f)(g)を満たしていない。
比較例1-4、8は、要件(d)(f)(g)を満たしていない。
比較例5は、要件(a)(f)(g)を満たしてない。
比較例6、7は、要件(e)(f)(g)を満たしていない。
【0057】
2.導電性ゴムローラの作製
実施例及び比較例で調製したゴム組成物を押出成形機に供給して、外径15mm、内径4.5mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットし、架橋用の仮のシャフトに装着して、加硫釜において160℃で、30分間架橋させた。
【0058】
次に、架橋させた筒状体から仮シャフトを抜き、製品のシャフトを挿入した。次いで、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨して、研磨後の外径が12mmである導電性ゴムローラを作製した。
【0059】
3.評価方法
評価方法は以下の試験項目による評価を行った。
(1)通電耐久試験
実施例及び比較例で調製したゴム組成物で作製した導電性ゴムローラについて、通電耐久試験を行った。通電耐久試験では、温度22℃、相対湿度55%の雰囲気下で、導電ゴムローラの両端にそれぞれ500gfの荷重Fをかけて金属ドラム20に圧接させ、金属ドラム20を30rpmで連続回転させて、両者間に20μAの電流を通電させた。通電直後と24時間通電後の抵抗値(logΩ)をそれぞれ測定し、通電直後から24時間通電後の抵抗値(logΩ)の変化を通電上昇値として求めた。結果は表1-3に示すとおりである。なお、通電上昇値は、式(1)で表される。

式(1)通電上昇値Δ=24時間通電後の抵抗値(logΩ)-通電直後の抵抗値(logΩ)
【0060】
(2)通電耐久性の評価
実施例及び比較例で調製したゴム組成物で作製した導電性ゴムローラについて、24時間通電後の通電上昇値に基づき導電性ゴムローラの通電耐久性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果は表1-3に示すとおりである。

「A」 :24時間通電後の通電上昇値Δが0.1未満
「B」 :24時間通電後の通電上昇値Δが0.1以上、かつ、0.2未満
「C」 :24時間通電後の通電上昇値Δが0.2以上
【0061】
(3)環境変動試験
高温高湿環境(32.5℃、80%RH)、常温常湿環境(22℃、55%RH)、低温低湿環境(10℃、20%RH)の3環境下において、抵抗値(logΩ)をそれぞれ測定した。抵抗値(logΩ)は、通電耐久試験と同様に、導電性ゴムローラ10の両端にそれぞれ500gfの荷重Fをかけて金属ドラム20に圧接させ、金属ドラム20を30rpmで連続回転させ、両者間に1000Vの電流を通電させて測定した。結果は表1-3に示すとおりである。環境変動量は、式(2)で算出される。尚、環境変動量Δが小さいほど環境依存性が小さい。
式(2)
環境変動量Δ=|常温常湿環境の抵抗値(logΩ)-高温高湿環境の抵抗値(logΩ)|+|低温低湿環境の抵抗値(logΩ)-常温常湿環境の抵抗値(logΩ)|
【0062】
(4)環境変動性の評価
実施例及び比較例で調製したゴム組成物で作製した導電性ゴムローラについて、環境変動量Δに基づき環境変動を評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果は表1-3に示すとおりである。

「A」 :環境変動量Δが1.0未満
「B」 :環境変動量Δが1.0以上、かつ、1.3以下
「C」 :環境変動量Δが1.3より大きい
【0063】
(5)成形性評価
実施例及び比較例で調製したゴム組成物で作製した導電性ゴムローラについて、ローラ形状に成形した際の外観異常の有無を目視で評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果は表1-3に示すとおりである。

「A」 :ひび割れ、クラックなどの問題なく成形可能であった。
「C」 :ひび割れ、クラックなどの発生により成形不可であった。
【0064】
(6)総合判定
実施例及び比較例で調製したゴム組成物で作製した導電性ゴムローラについて、総合評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果は表1-3に示すとおりである。

「A」 :通電耐久、環境変動、成形性がすべてAである。
「B」 :通電耐久、環境変動がB以上かつ成形性がAである。
「C」 :通電耐久、環境変動、成形性のうち、いずれかがCである。
【0065】
4.結果
比較例1及び2で作製した導電性ゴムローラは、通電耐久性及び環境変動評価がCであることが確認された。
比較例3-5、7、8で作製した導電性ゴムローラは、いずれも成形不可であることが確認された。
比較例6で作製した導電性ゴムローラは、環境変動評価がCであることが確認された。
実施例1A-7Eで作製した導電性ゴムローラは、通電耐久、環境変動、及び成形性評価が良好で、総合評価がA又はB以上であることが確認された。
実施例4A、4B、5A、5B、7A、7B、7C、7D、7Eで作製した導電性ゴムローラは、通電耐久、環境変動、成形性評価がともにAであり、総合評価がAであることが確認された。
実施例1A、1B、2A、2B、3A、3B、6A、6Bで作製した導電性ゴムローラは、通電耐久、環境変動評価がBであり、総合評価がBであることが確認された。
実施例1Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例1Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例2Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例2Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例3Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例3Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例4Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例4Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例5Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例5Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例6Bで作製した導電性ゴムローラは、実施例6Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
実施例7B、7C、7D、7Eで作製した導電性ゴムローラは、実施例7Aと比較して環境変動が良好な結果であることが確認された。
【0066】
5.結果についての考察
実施例3A、4A、5Aを比較すると、実施例4A、5Aで作製した導電性ゴムローラの通電耐久性と、環境変動は、より良好な結果となった。このことから、EPDMの添加量は、50質量部以上65質量部以下であることがより好ましい結果となった。
実施例4A、6A、7Aを比較すると、実施例4A、7Aで作製した導電性ゴムローラの環境変動は、より良好であった。このことから、カーボンブラックの添加量は、50質量部以上70質量部以下であることがより好ましい結果となった。
実施例4Aと比較例4を比較すると、実施例4Aで作製した導電性ゴムローラのほうが、成形性が良好であった。このことから、相溶化剤の添加により、EPDMの分散が可能となる結果となった。
要件(f)、(g)を全て満たしている実施例1B-7B、7C、7D、及び7Eの導電性ゴムローラは、同条件下において、要件(f)、(g)を満たしていない実施例1A-7Aの導電性ゴムローラよりも、環境変動が良好な結果であることが確認された。
【0067】
6.実施例の効果
以上の実施例によれば、通電耐久性が良好で、環境依存性が小さい導電性ゴムローラを提供できる。
【0068】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
本実施例は、ゴム組成物に発泡剤、及び発泡助剤を使用していないが、例えば、以下の手順でゴム組成物に発泡剤、及び発泡助剤を添加して、発泡ゴム組成物、及び導電性発泡ゴムローラを作製してもよい。
(1.1)
NBR、GECO、EPDM、相溶化剤、カーボンブラック、充填剤、加硫促進助剤をバンバリーミキサーに投入し、バンバリーミキサー用いて混練りする。その後、そのコンパウンドに、加硫剤、加工助剤、加硫促進剤1,2、発泡剤、発泡助剤を加え、ミキシングロールで、更に混練りし、ロールにて、シート状に分出しをおこなって、ゴム組成物を調製する。
(1.2)
上記のように調製したゴム組成物を押出成形機に供給して、外径15mm、内径4.5mmの筒状に押出成形した後、所定の長さにカットし、架橋用の仮のシャフトに装着して、加硫釜において160℃で、30分間架橋させる。
(1.3)
架橋させた筒状体から仮シャフトを抜き、製品のシャフトを挿入する。次いで、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨して、研磨後の外径が12mmである導電性発泡ゴムローラを作製する。
(2)本実施例において、導電性ゴム部材として、導電性ゴムローラを使用しているが、これに限られない。例えば、導電性ゴム部材は、キーボードなど電子部品のスイッチ部や、コネクタなど電子部品の導電層などに用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
10… 導電性ゴムローラ
11… シャフト
12… ゴム部材
20… 金属ドラム
図1
図2