(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064978
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】周波数応答を平坦化する音響装置およびホルダ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240507BHJP
H04R 1/24 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R1/24
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107809
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】63/420,096
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/336,030
(32)【優先日】2023-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】陳 昭瑜
(72)【発明者】
【氏名】羅 烱成
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】陳 文健
(72)【発明者】
【氏名】任 頡
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA02
5D004BB01
5D004DD07
5D004EE01
(57)【要約】
【課題】より平坦な周波数応答を有する音響装置を提供することを課題とする。
【解決手段】音響装置は、第1の音生成構成要素およびバックキャビティ構造を含む。第1の音生成構成要素は、第1の前面側および第1の背面側を有し、第1の音生成構成要素は、高周波数音ユニットであり、第1の前面側は、音響装置の音伝播開口部に面している。バックキャビティ構造は、第1の音生成構成要素の第1の背面側に接続される。第1の音生成構成要素は、第1の前面側から音伝播開口部に向かって第1の音響波を生成し、第1の音生成構成要素は、第1の背面側からバックキャビティ構造のバックキャビティに向かって第2の音響波を生成する。バックキャビティ構造は、第1の音生成構成要素の周波数応答のピークまたはディップを平坦化するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響装置であって、
第1の前面側および第1の背面側を有する第1の音生成構成要素であって、前記第1の音生成構成要素は、高周波数音ユニットであり、前記第1の前面側は、前記音響装置の音伝播開口部に面している、第1の音生成構成要素と、
前記第1の音生成構成要素の前記第1の背面側に接続されたバックキャビティ構造と、
を備え、
前記第1の音生成構成要素は、前記第1の前面側から前記音伝播開口部に向かって第1の音響波を生成し、前記第1の音生成構成要素は、前記第1の背面側から前記バックキャビティ構造のバックキャビティに向かって第2の音響波を生成し、
前記バックキャビティ構造は、前記第1の音生成構成要素の周波数応答のピークまたはディップを平坦化するように構成される、
音響装置。
【請求項2】
第2の音生成構成要素をさらに備え、前記第2の音生成構成要素は、低周波数音ユニットである、請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
第2の音生成構成要素をさらに備え、前記バックキャビティ構造は、前記第2の音生成構成要素と前記第1の音生成構成要素との間にある、請求項1に記載の音響装置。
【請求項4】
前記バックキャビティ構造を有するホルダをさらに備え、前記第1の音生成構成要素は、前記ホルダの第1の保持側に配置される、請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
前記ホルダの第2の保持側に配置された第2の音生成構成要素をさらに備え、前記第2の保持側は、前記第1の保持側の反対側にある、請求項4に記載の音響装置。
【請求項6】
前記ホルダは、前記第1の保持側と前記第2の保持側との間に接続された空気通路を備え、前記第2の音生成構成要素は、第3の音響波を生成するように構成され、
前記第1の音響波は、前記ホルダの前記第1の保持側から前記音伝播開口部に向かって伝播し、前記第3の音響波は、前記第2の保持側から前記空気通路を通って前記音伝播開口部に向かって伝播する、
請求項5に記載の音響装置。
【請求項7】
前記第1の音響波と前記第2の音響波との間の位相差は、180度である、請求項1に記載の音響装置。
【請求項8】
前記バックキャビティ構造は、前記第1の音生成構成要素に接続された接続ポートを有し、前記バックキャビティは、前記接続ポートを通してのみ前記バックキャビティ構造の外部に接続される、請求項1に記載の音響装置。
【請求項9】
前記バックキャビティ構造は、共振して、前記第1の音生成構成要素の前記周波数応答の前記ピークまたは前記ディップを平坦化する、請求項8に記載の音響装置。
【請求項10】
第1の波長は、前記第1の音生成構成要素の前記周波数応答における前記ピークまたは前記ディップに対応し、前記バックキャビティ構造は、第1のサブ部分を含み、前記第1のサブ部分のサイズは、前記第1の波長の2分の1または前記第1の波長の4分の1に対応する、請求項1に記載の音響装置。
【請求項11】
前記バックキャビティ構造は、第1のサブ部分および第2のサブ部分を含み、前記第1のサブ部分のサイズは、前記第2のサブ部分のサイズとは異なる、請求項1に記載の音響装置。
【請求項12】
前記バックキャビティ構造は、空気チャネルを含む、請求項1に記載の音響装置。
【請求項13】
前記空気チャネルの一端は、前記第1の音生成構成要素の前記第1の背面側に接続され、前記空気チャネルの他端は、前記音響装置の前記音伝播開口部に面している、請求項12に記載の音響装置。
【請求項14】
前記バックキャビティ構造の前記空気チャネルは、第1の波長に対応し、
前記第2の音響波が前記第1の波長の波を有する場合、前記バックキャビティ構造の前記空気チャネルは、前記第1の波長の波に180度の位相遅延を持たせる、
請求項12に記載の音響装置。
【請求項15】
前記音伝播開口部に向かって第3の音響波を生成するように構成された第2の音生成構成要素をさらに備え、前記第3の音響波は、前記バックキャビティ構造の前記空気チャネルの少なくとも一部を通過する、請求項12に記載の音響装置。
【請求項16】
前記第1の音生成構成要素は、マイクロスピーカである、請求項1に記載の音響装置。
【請求項17】
前記第1の音生成構成要素は、MEMSで製造されたマイクロスピーカである、請求項1に記載の音響装置。
【請求項18】
前記第1の音生成構成要素の膜共振周波数は、13KHzよりも大きい、請求項1に記載の音響装置。
【請求項19】
前記第1の音生成構成要素は、第1の膜サブ部分および第2の膜サブ部分を含み、
前記第1の膜サブ部分は、前記第2の膜サブ部分の反対側にある、
請求項1に記載の音響装置。
【請求項20】
前記第1の音生成構成要素のアスペクト比または前記第1の音生成構成要素の膜のアスペクト比は、2よりも大きい、請求項1に記載の音響装置。
【請求項21】
前記音響装置は小型イヤホンである、請求項1に記載の音響装置。
【請求項22】
音響装置内に配置された、または配置されるホルダであって、
前記ホルダ内に形成されたバックキャビティ構造を備え、
前記ホルダが前記音響装置内に配置されるとき、第1の音生成構成要素は、前記ホルダ上に配置され、前記バックキャビティ構造は、前記第1の音生成構成要素の第1の背面側に接続され、前記第1の音生成構成要素は、第1の前面側から前記音響装置の音伝播開口部に向かって第1の音響波を生成し、前記第1の音生成構成要素は、前記第1の背面側から前記バックキャビティ構造のバックキャビティに向かって第2の音響波を生成し、
前記第1の音生成構成要素は、高周波数音ユニットであり、
前記バックキャビティ内の音響経路の長さは、周波数における前記第1の音生成構成要素の周波数応答が平坦化されるように、前記周波数に対応する2分の1波長または4分の1波長である、
ホルダ。
【請求項23】
前記バックキャビティ構造は、密閉されたバックボリュームを含む、請求項22に記載のホルダ。
【請求項24】
バックキャビティ構造は、複数のサブ部分を含み、
前記複数のサブ部分内の複数の音響経路の長さは、複数のターゲット周波数に対応し、
前記複数のターゲット周波数における前記第1の音生成構成要素の周波数応答が平坦化される、
請求項22に記載のホルダ。
【請求項25】
前記バックキャビティ構造の形状は螺旋状である、請求項22に記載のホルダ。
【請求項26】
前記バックキャビティ構造は、空気チャネルを含む、請求項22に記載のホルダ。
【請求項27】
前記空気チャネルの一端は、前記第1の音生成構成要素の前記第1の背面側に接続され、前記空気チャネルの他端は、前記音響装置の前記音伝播開口部に面している、請求項26に記載のホルダ。
【請求項28】
前記空気チャネルはU字形である、請求項26に記載のホルダ。
【請求項29】
前記音響装置は、第2の音生成構成要素を備え、
前記第2の音生成構成要素は、低周波数音ユニットである、
請求項22に記載のホルダ。
【請求項30】
前記音響装置は小型イヤホンである、請求項22に記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、音響装置およびホルダに関し、より詳細には、周波数応答を平坦化することが可能な音響装置およびホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(微小電気機械システム)音響部品(例えば、MEMS音生成構成要素またはMEMSマイクロホン)を含む音響装置は、サイズが小さいため様々な電子装置において広く使用可能であるので、音響装置は近年急速に開発されている。通常、音響装置の性能は、音響装置の周波数応答に関連する。したがって、音響装置を高性能化するためには、音響装置は、適切な周波数応答を有するように設計される必要がある。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の主な目的は、より平坦な周波数応答を有する音響装置を提供することである。
【0004】
本発明の一実施形態は、第1の音生成構成要素とバックキャビティ構造とを含む音響装置を提供する。第1の音生成構成要素は、第1の前面側および第1の背面側を有し、第1の音生成構成要素は、高周波数音ユニットであり、第1の前面側は、音響装置の音伝播開口部に面している。バックキャビティ構造は、第1の音生成構成要素の第1の背面側に接続される。第1の音生成構成要素は、第1の前面側から音伝播開口部に向かって第1の音響波を生成し、第1の音生成構成要素は、第1の背面側からバックキャビティ構造のバックキャビティに向かって第2の音響波を生成する。バックキャビティ構造は、第1の音生成構成要素の周波数応答のピークまたはディップを平坦化するように構成される。
【0005】
本発明の別の実施形態は、音響装置内に配置されたまたは配置されるホルダを提供する。ホルダは、ホルダ内に形成されたバックキャビティ構造を含む。ホルダが音響装置内に配置されるとき、第1の音生成構成要素は、ホルダ上に配置され、バックキャビティ構造は、第1の音生成構成要素の第1の背面側に接続され、第1の音生成構成要素は、第1の前面側から音響装置の音伝播開口部に向かって第1の音響波を生成し、第1の音生成構成要素は、第1の背面側からバックキャビティ構造のバックキャビティに向かって第2の音響波を生成する。第1の音生成構成要素は、高周波数音ユニットである。バックキャビティ内の音響経路の長さは、周波数における第1の音生成構成要素の周波数応答が平坦化されるように、周波数に対応する2分の1波長または4分の1波長である。
【0006】
本発明のこれらおよび他の目的は、様々な図および図面に示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者には疑いもなく明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1のタイプの一実施形態による音響装置を示す断面図の概略図である。
【
図2】本発明の第1のタイプの一実施形態による音響装置のバックキャビティ構造を示す概略図である。
【
図3】本発明の第1のタイプの一実施形態による音響装置のバックキャビティ構造を示す概略図である。
【
図4】本発明の第2のタイプの実施形態による音響装置を示す断面図の概略図である。
【
図5】本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置を示す概略図である。
【
図6】
図5に示す実施形態による音響装置の音響波の経路を示す概略図である。
【
図7】本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置のホルダの上面図を示す概略図である。
【
図8】本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置のホルダの底面図を示す概略図である。
【
図9】本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置を示す概略図である。
【
図10】
図9に示す実施形態による音響装置の音響波の経路を示す概略図である。
【
図11】本発明の一実施形態による音生成構成要素の膜を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者に本発明のより良い理解を提供するために、重要な構成要素のための好ましい実施形態および典型的な材料または範囲パラメータが、以下の説明において詳述される。本発明のこれらの好ましい実施形態は、達成されるべき内容および効果について詳述するために、番号付けされた要素とともに添付の図面に示される。図面は簡略化された概略図であり、重要な構成要素の材料およびパラメータの範囲は、現在の技術に基づいて例示的であり、したがって、本発明の基本的な構造、実装または動作方法についてのより明確な説明を提供するために、本発明に関連付けられた構成要素および組み合わせのみを示すことに留意されたい。構成要素は、実際にはより複雑であり、使用されるパラメータまたは材料の範囲は、技術が将来進歩するにつれて発展し得る。加えて、説明を容易にするために、図面に示される構成要素は、それらの実際の数、形状、および寸法を表していない場合があり、詳細は、設計要求事項にしたがって調整され得る。
【0009】
以下の説明および特許請求の範囲において、「含む(include)」、「備える(comprise)」、および「有する(have)」という用語は、オープンエンド方式で使用され、したがって、「~を含むが、これに限定されない(include, but not limited to...)」を意味するものと解釈されるべきである。したがって、「含む(include)」、「備える(comprise)」、および/または「有する(have)」という用語が本発明の説明で使用される場合、対応する特徴、エリア、ステップ、動作および/または構成要素の存在が指し示されるが、1つまたは複数の対応する特徴、エリア、ステップ、動作および/または構成要素の存在に限定されない。
【0010】
以下の説明および特許請求の範囲において、「A1構成要素がB1によって/から形成される」とき、B1はA1構成要素の形成において存在するか、またはB1はA1構成要素の形成において使用され、A1構成要素の形成において、1つまたは複数の他の特徴、エリア、ステップ、動作および/または構成要素の存在および使用が除外されるものではない。
【0011】
以下の説明および特許請求の範囲において、「実質的に(substantially)」という用語は、一般に、小さな偏差が存在しても存在しなくてもよいことを意味する。例えば、「実質的に平行(substantially parallel)」および「実質的に沿って(substantially along)」という用語は、2つの構成要素間の角度が、特定の角度しきい値、例えば、10度、5度、3度、または1度以下であり得ることを意味する。例えば、「実質的に位置合わせされた(substantially aligned)」という用語は、2つの構成要素間の偏差が、特定の差分しきい値、例えば、2μmまたは1μm以下であり得ることを意味する。例えば、「実質的に同じ(substantially the same)」という用語は、偏差が、例えば、所与の値もしくは範囲の10%以内であることを意味するか、または所与の値もしくは範囲の5%、3%、2%、1%、もしくは0.5%以内であることを意味する。
【0012】
本説明および以下の特許請求の範囲において、「水平方向(horizontal direction)」という用語は、一般に、水平面に平行な方向を意味し、「水平面(horizontal surface)」という用語は、一般に、図面における方向Xおよび方向Yに平行な面を意味し(すなわち、本発明の方向Xおよび方向Yは、水平方向とみなされ得る)、「垂直方向(vertical direction)」という用語は、一般に、図面における方向Zに平行で、水平方向に垂直な方向を意味し、方向X、方向Y、および方向Zは互いに垂直である。本説明および以下の特許請求の範囲において、「上面図(top view)」という用語は、一般に、垂直方向に沿って見た表示結果を意味する。本説明および以下の特許請求の範囲において、「断面図(cross-sectional view)」という用語は、一般に、垂直方向に沿って切断した構造を水平方向に沿って見た表示結果を意味する。
【0013】
第1、第2、第3などの用語は、多様な構成要素を説明するために使用され得るが、そのような構成要素は、それらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、本明細書においてある構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ使用され、本明細書に記載がない場合、これらの用語は製造順序に関係しない。特許請求の範囲は、同じ用語を使用しないことがあるが、代わりに、要素が請求される順序に関して、第1、第2、第3などの用語を使用することがある。したがって、以下の説明では、第1の構成要素は、請求項における第2の構成要素であってもよい。
【0014】
以下で説明される異なる実施形態における技術的特徴は、本発明の趣旨から逸脱することなく、別の実施形態を構成するために、互いに置き換えられ、組み替えられ、または混合され得ることに留意されたい。
【0015】
本発明では、音響装置は、音響変換を実行するように構成された音響トランスデューサを含み得、音響変換は、信号(例えば、電気信号または他の適切なタイプの信号)を音響波に変換し得るか、または音響波を他の適切なタイプの信号(例えば、電気信号)に変換し得る。いくつかの実施形態では、音響トランスデューサは、電気信号を音響波に変換するために、音生成構成要素、スピーカ、マイクロスピーカ、または他の適切な装置であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、音響トランスデューサは、音響波を電気信号に変換するために、音測定装置、マイクロホン、または他の適切な装置であり得るが、これらに限定されない。例えば、以下では、音響装置は、イヤホン(earphone)または小型イヤホン(earbud)であり得、音響トランスデューサは音生成構成要素であり得るが、これに限定されない。
【0016】
図1を参照すると、
図1は、本発明の第1のタイプの一実施形態による音響装置を示す断面図の概略図である。
図1に示すように、音響装置100は、第1の音生成構成要素110を含み、音響装置100は、任意選択で第2の音生成構成要素120を含み、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120は、電気信号を音響波に変換する音響変換を実行するように構成される。
【0017】
第1の音生成構成要素110によって生成される音響波の周波数範囲および第2の音生成構成要素120によって生成される音響波の周波数範囲は、要件(複数可)に基づいて設計され得る。例えば、一実施形態では、第1の音生成構成要素110は、特定の周波数より高い周波数を有する音響波を生成して高周波数音ユニット(ツイーター)として機能し得、第2の音生成構成要素120は、別の特定の周波数より低い周波数を有する音響波を生成して低周波数音ユニット(ウーファー)として機能し得るが、これに限定されない。すなわち、第1の音生成構成要素110は、第1の周波数範囲内の音響波を生成し得、第2の音生成構成要素120は、第2の周波数範囲内の音響波を生成し得、第1の周波数範囲および第2の周波数範囲はいずれも、人間の可聴周波数範囲(例えば、20Hzから20kHz)を完全にはカバーせず、第1の周波数範囲の平均値は、第2の周波数範囲の平均値よりも高いが、これに限定されない。特定の周波数は、800Hz~4kHzの範囲の値(例えば、1.44kHz)であり得るが、これに限定されないことに留意された。
【0018】
一実施形態では、第1の音生成構成要素110はマイクロスピーカであり得、マイクロスピーカの寸法(例えば、長さまたは幅)は、15mm未満またはさらには10mm未満であり得、マイクロスピーカの厚さ(高さ)は、2mm未満であり得るが、これに限定されない。さらに、第1の音生成構成要素110は、MEMS(微小電気機械システム)製造プロセスを介して製造され得るが、これに限定されない。
【0019】
第1の音生成構成要素110は、第1の膜を含み得る。第1の音生成構成要素110の/ための膜設計は限定されない。一実施形態では、第1の音生成構成要素110の第1の膜は、13KHzまたは20KHzよりも大きい膜共振周波数を有してもよいし、米国特許第10,805,751号または第11,057,716号に開示される設計原理にしたがってもよいが、これに限定されない。
【0020】
一実施形態では、米国特許第11,172,300号または出願第17/720,333号に開示されている(小型の)膜設計が、第1の音生成構成要素110内で活用されてもよい。具体的には、第1の音生成構成要素110は、第1の膜112を含み得、第1の膜112は、
図11に示すように、膜サブ部分112aおよび膜サブ部分112bを含み、その上にアクチュエータ113aおよび113bがそれぞれ配置され得、膜サブ部分112aは、上面図において膜サブ部分112bの反対側にある。具体的には、膜サブ部分112aは、固定縁AE1および解放縁RE1を含み得、膜サブ部分112bは、固定縁AE2および解放縁RE2を含み得る。解放縁RE1は、上面図において解放縁RE2の反対側にあり得る。一実施形態では、膜112のアスペクト比または第1の音生成構成要素110のアスペクト比は、2よりも大きくてもよく、アスペクト比は、長さ(長い側に対応する)の、その幅(より短い側に対応する)に対する比である。
【0021】
特許第10,805,751号、第11,057,716号、第11,172,300号および出願第17/720,333号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
一実施形態では、第2の音生成構成要素120は、MEMS装置/チップ、ダイナミックドライバ(DD)、またはバランスドアーマチュアドライバ(BA)によって実現され得るが、これらに限定されない。
【0023】
例えば、別の実施形態では、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120は、人間の可聴周波数範囲(例えば、20Hz~20kHz)をカバーする周波数範囲を有する音響波を生成し得るが、これに限定されない。
【0024】
本発明では、第1の音生成構成要素110は、第1の膜を有するMEMSチップまたはパッケージであり得、第2の音生成構成要素120は、第2の膜を有するMEMSチップまたはパッケージであり得、第1の膜および第2の膜は、音響波を生成するためにアクチュエータを通して作動される。例えば、第1の音生成構成要素110は、第1の膜と、第1の膜を作動させるアクチュエータ(複数可)とを有し得、第2の音生成構成要素120は、第2の膜と、第2の膜を作動させるアクチュエータ(複数可)とを有し得る。
【0025】
第1の膜および第2の膜は、任意の適切な作動方法によって作動され得る。本発明では、アクチュエータは、ある方向(例えば、Z方向)に沿った膜の移動に対して単調な電気機械変換機能を有する。いくつかの実施形態では、アクチュエータは、圧電アクチュエータ、静電アクチュエータ、ナノスコピック静電駆動(NED)アクチュエータ、電磁アクチュエータ、または任意の他の適切なアクチュエータを含み得るが、これらに限定されない。例えば、一実施形態では、アクチュエータは、圧電アクチュエータを含み得、圧電アクチュエータは、例えば、2つの電極と、電極間に配置された圧電材料層(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、PZT)とを含み得、圧電材料層は、電極によって受信された駆動信号(例えば、駆動電圧および/または2つの電極間の駆動電圧差)に基づいて膜を作動させ得るが、これに限定されない。例えば、別の実施形態では、アクチュエータは、電磁アクチュエータ(平面コイルなど)を含み得、電磁アクチュエータは、受け取った駆動信号(例えば、駆動電流)および磁場に基づいて膜を作動させ得る(すなわち、膜は、電磁力によって作動され得る)が、これに限定されない。例えば、さらに別の実施形態では、アクチュエータは、静電アクチュエータ(導電性プレートなど)またはNEDアクチュエータを含み得、静電アクチュエータまたはNEDアクチュエータは、受け取った駆動信号(例えば、駆動電圧)および静電場に基づいて膜を作動させ得る(すなわち、膜は、静電力によって作動され得る)が、これに限定されない。以下において、アクチュエータは、例えば、圧電アクチュエータであり得る。
【0026】
図1に示すように、音響装置100は、外側ハウジング構造150を含み、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120は、外側ハウジング構造150内に配置される。
図1において、外側ハウジング構造150は、音出口となるように構成された音伝播開口部152を有し(すなわち、ユーザは、音伝播開口部152から音を聞く)、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aは、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bよりも音伝播開口部152に近い(すなわち、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aおよび第1の背面側110bは反対側である)。例えば、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aは、音伝播開口部152に面していてもよいが、これに限定されない。任意選択で、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、第2の音生成構成要素120の第2の背面側120bよりも音伝播開口部152に近い(すなわち、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aおよび第2の背面側120bは反対側である)。例えば、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、音伝播開口部152に面していてもよいが、これに限定されない。
【0027】
本発明では、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120は、任意の適切な方法で外側ハウジング構造150内に配置され得る。
図1に示すように、音響装置100は、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120が配置されるホルダ140を含み、ホルダ140は、外側ハウジング構造150内に配置され、外側ハウジング構造150に固定され、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120が外側ハウジング構造150内に配置されるようにする。
【0028】
図1において、第1の音生成構成要素110は、ホルダ140の第1の保持側142に配置され、第2の音生成構成要素120は、ホルダ140の第2の保持側144に配置され、第2の保持側144は、第1の保持側142の反対側にある。例えば、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bは、ホルダ140の第1の保持側142に面していてもよく、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、ホルダ140の第2の保持側144に面していてもよいが、これに限定されない。
【0029】
ホルダ140は、任意の適切な材料を含んでもよいし、任意の適切な方法によって形成されてもよい。例えば、ホルダ140は、ポリマー、金属、任意の他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ホルダ140は、成形プロセスによって形成され得るが、これに限定されない。
【0030】
図1において、外側ハウジング構造150は、第1のキャビティCB1および第2のキャビティCB2を有し、第1のキャビティCB1は、音伝播開口部152と第2のキャビティCB2との間にあり、第1の音生成構成要素110および第2の音生成構成要素120は、第1のキャビティCB1と第2のキャビティCB2との間にある。例えば、ホルダ140は、第1のキャビティCB1と第2のキャビティCB2との間に配置され得るが、これに限定されない。例えば、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aは、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bよりも第1のキャビティCB1に近く、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、第2の音生成構成要素120の第2の背面側120bよりも第1のキャビティCB1に近い。例えば、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aおよび第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、第1のキャビティCB1に面していてもよく、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bおよび第2の音生成構成要素120の第2の背面側120bは、第2のキャビティCB2に面していてもよいが、これに限定されない。
【0031】
本発明では、
図1に示すように、第1の音生成構成要素110は、第1の前面側110aから音伝播開口部152に向かって第1の音響波AW1を生成し、第1の音生成構成要素110は、第1の背面側110bから第2の音響波AW2を生成し、第1の音響波AW1と第2の音響波AW2との間の位相差は180度であり得る。いくつかの実施形態では、第1の音響波AW1および第2の音響波AW2は、第1の音生成構成要素110の第1の膜によって同時に生成される。
図1において、第1の音響波AW1は、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110a、第1のキャビティCB1、および音伝播開口部152を順に通過し得る。本発明では、第2の音生成構成要素120の第2の膜は、第2の前面側120aから音伝播開口部152に向かって第3の音響波AW3を生成し、第3の音響波AW3は、第1のキャビティCB1および音伝播開口部152を順に通過する。
【0032】
図1において、第3の音響波AW3は音伝播開口部152に向かって伝播するので、第3の音響波AW3はホルダ140を通過する必要がある。いくつかの実施形態では、ホルダ140は、第1の保持側142と第2の保持側144との間に接続された少なくとも1つの空気通路AP(例えば、空気通路APは
図2および
図3に示されている)を含み得、第3の音響波AW3は、第2の保持側144から第1の保持側142に向かって空気通路APを通過し得、その結果、第3の音響波AW3は音伝播開口部152に向かって伝播する。したがって、
図1に示すように、第1の音響波AW1は、ホルダ140の第1の保持側142から音伝播開口部152に向かって伝播し、第3の音響波AW3は、第2の保持側144から空気通路APを通過して音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0033】
図1に示すように、音響装置100は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bに接続されたバックキャビティ構造130を含み、バックキャビティ構造130内にバックキャビティ130iが存在する。バックキャビティ構造130が第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bに接続されているので、第1の音生成構成要素110は、第1の背面側110bからバックキャビティ130iに向かって第2の音響波AW2を生成する。
【0034】
バックキャビティ構造130の位置は、要件(複数可)に基づいて設計され得る。
図1において、バックキャビティ構造130は、第1の音生成構成要素110と第2の音生成構成要素120との間にあり得る(ホルダ140内に形成され得る)が、これに限定されない。例えば、バックキャビティ構造130は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bと第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aとの間にあり得るが、これに限定されない。
【0035】
本発明では、バックキャビティ構造130は、任意の適切な方法で実現され得る。いくつかの実施形態では、
図1に示すように、ホルダ140は、バックキャビティ構造130を有し得、バックキャビティ130iは、ホルダ140内の空の空間であるが、これに限定されない。
【0036】
原則として、音生成構成要素の周波数応答は、音生成構成要素の性能および動作に関連する。音生成構成要素の周波数応答が少なくとも1つの明らかな(または極端な)ピークおよび/または少なくとも1つの明らかな(または極端な)ディップを有する場合、この音生成構成要素の動作では、このピークまたはディップに対応する波長を有する音響波を生成するためにこの音生成構成要素に提供する信号は、音圧レベル(SPL)が明らかに(または極端に)高くなったり明らかに(または極端に)低くなったりしないように、特別に設計される必要がある。この状態では、音生成構成要素は、操作しにくく、その音生成周波数範囲において高い性能を発揮しにくいであろう。反対に、音生成構成要素の周波数応答が、明らかな(または極端な)ピークおよび明らかな(または極端な)ディップを有さない場合、この音生成構成要素は、操作しやすく、その音生成周波数範囲において高い性能を発揮しやすいであろう。
【0037】
本発明では、第1の音生成構成要素110の周波数応答は、周波数応答測定プロセスにおける第1の音響波AW1の測定結果である。
【0038】
本発明では、バックキャビティ構造130は、第1の音生成構成要素110の周波数応答のピークおよび/またはディップを平坦化するように構成され、第1の音生成構成要素110の周波数応答のピークおよび/またはディップを平坦化するために、任意の適切な設計がバックキャビティ構造130に適用され得る。以下では、第1の音生成構成要素110およびバックキャビティ構造130が組み合わされた構造は、補償音生成構成要素(compensated sound producing component)CPCと呼ばれ、補償音生成構成要素CPCの周波数応答は、周波数応答測定プロセスにおける補償音生成構成要素CPCの測定結果である。
【0039】
言い換えれば、第1の背面側110bにバックキャビティ構造130が配置されていない場合、第1の音生成構成要素110の周波数応答は、特定の周波数においてピークまたはディップを有し得る。周波数応答が特定の周波数においてディップを有する場合、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bにバックキャビティ構造130(適切に、例えば、2分の1波長λ/2としての音響経路で設計された)を配置することによって、特定の周波数における音響エネルギーが増加することになる。したがって、第1の音生成構成要素の背面側にバックキャビティ構造を配置することによって、(バックキャビティ構造がない場合と比較して)周波数応答が特定の周波数において平坦化されることになる。一方、周波数応答が特定の周波数においてピークを有する場合、バックキャビティ構造130(例えば、適切に、4分の1波長λ/4の音響経路で設計された)を第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bに配置することによって、特定の周波数における音響エネルギーが減少することになる。したがって、第1の音生成構成要素の背面側にバックキャビティ構造を配置することによって、(バックキャビティ構造がない場合と比較して)周波数応答が特定の周波数において平坦化されることになる。
【0040】
第1の音生成構成要素110の周波数応答によれば、バックキャビティ構造130は、平坦化されることが望まれるターゲットピーク(複数可)に対応する少なくとも1つのターゲットピーク波長および/または平坦化されることが望まれるターゲットディップ(複数可)に対応する少なくとも1つのターゲットディップ波長に関連するように設計され得る。第1の音生成構成要素110の周波数応答と補償音生成構成要素CPCの周波数応答との間の比較において、第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットピークおよび/またはターゲットディップが平坦化される。
【0041】
第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットピークが平坦化される場合、補償音生成構成要素CPCの周波数応答におけるターゲットピーク波長に対応する大きさが、第1の音生成構成要素110の周波数応答におけるターゲットピーク波長に対応するピークの大きさよりも小さいか、または第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットピークに関連する補償音生成構成要素CPCの周波数応答のピークが、第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットピークよりも小さい(低い)ことに留意されたい。
【0042】
第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットディップが平坦化される場合、補償音生成構成要素CPCの周波数応答におけるターゲットディップ波長に対応する大きさが、第1の音生成構成要素110の周波数応答におけるターゲットディップ波長に対応するディップの大きさよりも高いか、または第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットディップに関連する補償音生成構成要素CPCの周波数応答のディップが、第1の音生成構成要素110の周波数応答のターゲットディップよりも小さい(浅い)ことに留意されたい。
【0043】
いくつかの実施形態では、第1の音生成構成要素110の周波数応答と比較して、バックキャビティ構造130の存在により、ピークおよび/またはディップは、補償音生成構成要素CPCの周波数応答において明らかではなく、極端ではない場合がある。
【0044】
図1に示すように、第2の音響波AW2は第1の背面側110bからバックキャビティ130iに向かって伝播するので、バックキャビティ構造130は、第1の音生成構成要素110の周波数応答のピークおよび/またはディップを平坦化する。
【0045】
図1に示されているように、第1のタイプTP1のバックキャビティ構造130では、バックキャビティ構造130は、共振して、第1の音生成構成要素110の周波数応答のピークおよび/またはディップを平坦化する。第2の音響波AW2がバックキャビティ130iに向かって伝播する場合、バックキャビティ構造130は、ターゲットピーク波長および/またはターゲットディップ波長で共振し、ピークおよび/またはディップがバックキャビティ構造130の/その内部の共振によって平坦化されるようにする。
【0046】
同様に、バックキャビティ構造130がターゲット波長で共振する場合、ターゲット波長を有する第1の補償波が生成され、第1の補償波は第1の音響波AW1に対して位相遅延を有し、第1の補償波と第1の音響波AW1との間で干渉が発生する。したがって、第1の音生成構成要素110および補償音生成構成要素CPCの周波数応答において、ピークおよび/またはディップは、第1の補償波と第1の音響波AW1との間の干渉によって平坦化されることとなる。
【0047】
第1の補償波の位相遅延の値は、ピークおよび/またはディップの平坦化効果を決定することになる。本発明では、第1の補償波の位相遅延は、第1の音響波AW1に対して、0より大きくターゲット波長(λ)より小さくてもよい。例えば、第1の補償波の位相遅延が第1の音響波AW1に対してターゲット波長の2分の1(λ/2)(すなわち、180度の位相遅延)である場合、最良の平坦化効果が実行される(例えば、相殺的干渉が実行される)こととなり、ピークおよび/またはディップが大幅に平坦化されることとなる。例えば、第1の補償波の位相遅延が実質的にターゲット波長の4分の1(λ/4)(すなわち、90度の位相遅延)である場合、大きな平坦化効果が実行され、ピークおよび/またはディップが平坦化および緩和されることとなる
【0048】
第1のタイプTP1のバックキャビティ構造130の構造では、
図1に示すように、バックキャビティ構造130は、第1の音生成構成要素110に接続された接続ポート132を有し、接続ポート132のみを通してバックキャビティ構造130の外部にバックキャビティ130iが接続され、バックキャビティ130iは、第1の音生成構成要素110のための密閉されたバックボリューム(の形態である)とみなされ得、すなわち、バックキャビティ構造130は、密閉されたバックボリュームを含む。すなわち、バックキャビティ構造130は、接続ポート132を除く他の部分が気密封止されている。例えば、バックキャビティ構造130は、共鳴チャンバである。
【0049】
第1の補償波の位相遅延の値は、要件(複数可)に基づいて設計され得、第1の補償波の位相遅延の値は、バックキャビティ構造130の設計に関連する。第1のタイプTP1を有するバックキャビティ構造130では、バックキャビティ構造130のサイズの少なくとも一部は、ターゲットピークおよび/またはターゲットディップがバックキャビティ構造130によって平坦化され得るように、ターゲット波長(例えば、ターゲットピークに対応するターゲットピーク波長またはターゲットディップに対応するターゲットディップ波長)に関連するように設計され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、バックキャビティ構造130は、少なくとも1つのサブ部分134を含み得、接続ポート132は、サブ部分134と第1の音生成構成要素110との間に接続され、サブ部分134のサイズは、ターゲット波長/周波数に関連する/対応する。サブ部分(複数可)134の数およびサブ部分134の形状は、要件(複数可)に基づいて設計され得、サブ部分134の形状は、多角形(すなわち、矩形または面取りを伴う矩形)、曲線縁を有する形状、または他の適切な形状であり得る。
【0051】
第1の補償波の位相遅延の値は、サブ部分134のサイズ(例えば、長さ)に対応する部分ターゲット波長に等しい。すなわち、ターゲット波長において、第1の補償波の位相遅延の値は、サブ部分134のサイズ(例えば、長さ)に比例する。例えば、サブ部分134のサイズ(例えば、長さ)は、ターゲット波長の2分の1(λ/2)またはターゲット波長の4分の1(λ/4)に対応し(例えば、等しく)、サブ部分134のサイズ(例えば、長さ)がターゲット波長の2分の1(λ/2)に対応する(例えば、等しい)場合、第1の補償波の位相遅延は、第1の音響波AW1に対してターゲット波長の2分の1(λ/2)(すなわち、180度の位相遅延)であり、サブ部分134のサイズ(例えば、長さ)がターゲット波長の4分の1(λ/4)に対応する(例えば、等しい)場合、第1の補償波の位相遅延は、第1の音響波AW1に対してターゲット波長の4分の1(λ/4)(すなわち、90度の位相遅延)であるが、これに限定されない。λ=c/fであり、ここで、cは音速、fは対応するターゲット周波数であることに留意されたい。
【0052】
図1において、バックキャビティ構造130は、第1のサブ部分134aおよび2のサブ部分134bを含み得、第1のサブ部分134aのサイズ(例えば、長さ)は、第2のサブ部分134bのサイズ(例えば、長さ)とは異なり得、その結果、第1のサブ部分134aおよび第2のサブ部分134bは、異なるターゲット波長/周波数に関連し得る。
【0053】
第1のタイプTP1(
図1)の一実施形態のバックキャビティ構造130を示す
図2に示すように、第1のサブ部分134aのサイズ(すなわち、長さ)は、第2のサブ部分134bのサイズ(すなわち、長さ)よりも大きく、第1のサブ部分134aの形状および第2のサブ部分134bの形状は矩形であるが、これに限定されない。
図2において、バックキャビティ構造130の形状は矩形であるが、これに限定されない。
【0054】
第1のタイプTP1(
図1)の別の実施形態のバックキャビティ構造130を示す
図3に示すように、バックキャビティ構造130は、第3のサブ部分134cおよび第4のサブ部分134dをさらに含み得、4つのサブ部分134のサイズ(すなわち、長さ)は異なり、4つのサブ部分134の形状は、曲線縁を有するストリップ形状であるが、これに限定されない。
図3において、バックキャビティ構造130の形状は、水平方向におけるバックキャビティ構造130の横方向サイズを低減するために、螺旋である(または、サブ部分(例えば、134a~134d)の形状が螺旋である)が、これに限定されない。
【0055】
音響装置100は、要件(複数可)に基づいて任意の適切な構造および/または任意の適切な構成要素をさらに含み得る。例えば、
図1において、外側ハウジング構造150は、音質を向上させるために、第1のキャビティCB1に接続された通気口154を有するが、これに限定されない。
【0056】
結果として、第1のタイプTP1を有する音響装置100では、音響装置100の外側に向かって伝播する最終音響波は、第1の音響波AW1、第1の補償波、および第3の音響波AW3の重ね合わせによって形成される。
【0057】
図4を参照すると、
図4は、本発明の第2のタイプの実施形態による音響装置を示す断面図の概略図である。
図1に示す第1のタイプTP1と
図4に示す第2のタイプTP2との違いは、バックキャビティ構造130の設計である。
図4に示すように、第2のタイプTP2の音響装置200において、バックキャビティ構造130は、空気チャネル232であるか、またはそれを含み、バックキャビティ130iが空気チャネル232としての形態であることが見て取れる。バックキャビティ構造130の空気チャネル232において、空気チャネル232の一端は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bに接続され、空気チャネル232の他端は、音伝播開口部152に面している。例えば、バックキャビティ構造130の空気チャネル232は、適切な形状(例えば、U字形状)を有する。
【0058】
空気チャネル232は、ターゲット波長に対応する第2の音響波AW2の一部(以下では、この部分は、第2の補償波CW2と呼ばれる)が空気チャネル232を通過し、音伝播開口部152に向かって伝播するように、ターゲット波長(例えば、ターゲットピークに対応するターゲットピーク波長またはターゲットディップに対応するターゲットディップ波長)に関連および対応している。
【0059】
第2のタイプTP2を有するバックキャビティ構造130では、バックキャビティ構造130の空気チャネル232は、第2の補償波CW2が元の第2の音響波AW2に対して180度の位相遅延を有するように設計され得る。第1の音響波AW1と元の第2の音響波AW2との間の位相差は180度であり、第2の補償波CW2は元の第2の音響波AW2に対して180度の位相遅延を有するので、第2の補償波CW2と第1の音響波AW1との間の位相差は360度または実質的に0である。したがって、第2の補償波CW2がバックキャビティ構造130の空気チャネル232から外に伝播する場合、第2の補償波CW2と第1の音響波AW1との間で干渉(例えば、建設的干渉)が発生することになる。例えば、第1の音響波AW1がターゲットディップ波長に対応するターゲットディップを有する場合、ターゲットディップ波長を有する第2の補償波CW2と第1の音響波AW1との間の位相差が0なので、ターゲットディップ波長を有する第2の補償波CW2によって引き起こされるSPLとターゲットディップ波長を有する第1の音響波AW1によって引き起こされるSPLとが加算されることとなり、その結果、ターゲットディップ波長におけるSPLが増加し、第1の音生成構成要素110の周波数応答のディップを平坦化する。
【0060】
空気チャネル(複数可)232の数は、要件(複数可)に基づいて設計され得る。異なる空気チャネル232は、第1の音生成構成要素110の周波数応答のディップ(複数可)および/またはピーク(複数可)を平坦化するために、異なるターゲット波長に対応し得、異なる空気チャネル232は、異なるターゲット波を有する異なる第2の補償波CW2を引き起こす。
【0061】
第1のタイプTP1と同様に、第2のタイプTP2の実施形態のホルダ140は、第1の保持側142と第2の保持側144との間に接続された少なくとも1つの空気通路AP(空気通路APは
図5~
図10に示されている)を含み得、第3の音響波AW3は、第2の保持側144から第1の保持側142に向かって空気通路APを通過し得、その結果、第3の音響波AW3は音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0062】
結果として、第2のタイプTP2を有する音響装置200では、音響装置200の外側に向かって伝播する最終音響波は、第1の音響波AW1、第2の補償波CW2、および第3の音響波AW3の重ね合わせによって形成される。
【0063】
図5および
図6を参照すると、
図5は、本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置を示す概略図であり、
図6は、
図5に示す実施形態による音響装置の音響波の経路を示す概略図である。音響装置200_1の構造、外側ハウジング構造150の形状、および音響装置200_1内の構成要素の配置は、
図5および
図6によって限定されるものではないことに留意されたい。
図5および
図6において、空気通路APと第1の音生成構成要素110との間の中空部は、空の空間であっても固体構造であってもよい。例えば、
図5および
図6の中空部は、ホルダ140に含まれる固体構造である。
【0064】
図6に示すように、音響波の3つの経路が示されており、第1の音響波AW1の第1の経路P1は
図6に細線で示され、第2の補償波CW2(第2の音響波AW2の一部)の第2の経路P2は
図6に細破線で示され、第3の音響波AW3の第3の経路P3は
図6に粗線で示されている。第1の経路P1は、第1の音生成構成要素110の第1の前面側110aおよび音伝播開口部152を順に通る。第2の経路P2は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110b、バックキャビティ構造130(すなわち、空気チャネル232)、および音伝播開口部152を通る。第3の経路P3は、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120a、空気通路AP、および音伝播開口部152を通る。
【0065】
図6に示すように、バックキャビティ構造130の空気チャネル232は、接続通路CTPと空気通路APの少なくとも一部とを含み、接続通路CTPは、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bと空気通路APとの間に接続される。したがって、第2の補償波CW2は、接続通路CTPおよび空気通路APを通過することによって音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0066】
図6において、第3の音響波AW3は、空気通路APを通過することによって音伝播開口部152に向かって伝播するので、第3の音響波AW3は、バックキャビティ構造130の空気チャネル232の少なくとも一部を通過する。したがって、第3の音響波AW3の第3の経路P3は、第2の補償波CW2の第2の経路P2の一部と重なり得る。
【0067】
図7および
図8を参照すると、
図7は、本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置のホルダの上面図を示す概略図であり、
図8は、本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置のホルダの底面図を示す概略図である。
図7は、ホルダ140の第1の保持側142を示し、
図8は、ホルダ140の第2の保持側144を示す。
【0068】
図7に示すように、第1の音生成構成要素110は、第1のノッチN1内に配置され、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bは、ホルダ140の第1の保持側142に面しており、第2の音響波AW2は、バックキャビティ構造130(空気チャネル232)を通って音伝播開口部152に向かって伝播し、バックキャビティ構造130(空気チャネル232)は、接続通路CTP(例えば、U字形接続通路)および空気通路APの一部を含み、接続通路CTPの一端は、第1のノッチN1内の穴HLであり、接続通路CTPの他端は、空気通路APの中間に接続される。
図7および
図8において、接続通路CTPは、第1の保持側142と第2の保持側144との間にあり得るが、これに限定されない。
図7および
図8において、空気通路APは貫通孔であり得るがが、これに限定されない。
【0069】
図8に示すように、第2の音生成構成要素120は、第2のノッチN2に配置され、第2の音生成構成要素120の第2の前面側120aは、ホルダ140の第2の保持側144に面しており、第3の音響波AW3は、空気通路APを通って音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0070】
ホルダ140は、要件(複数可)に基づいて任意の適切な構造を含み得る。例えば、2つの第3のノッチN3が第1のノッチN1に配置され、第1の音生成構成要素110と外部装置との間で電気的に接続されるために、導電線が第3のノッチN3に配置され得る。例えば、第4のノッチN4は、第1のノッチN1に隣接して配置される。例えば、第1の保持側142と第2の保持側144との間を接続する別の貫通孔THが第1のノッチN1に隣接して配置される。
【0071】
図9および
図10を参照すると、
図9は、本発明の第2のタイプの一実施形態による音響装置を示す概略図であり、
図10は、
図9に示す実施形態による音響装置の音響波の経路を示す概略図である。
図5および
図6に示す実施形態と比較すると、音響装置200_2では、別の第2の補償波CW2’(第2の音響波AW2の別の部分)の第4の経路P4が
図10に細い破線で示されており、第2の経路P2に沿って伝播される第2の補償波CW2および第4の経路P4に沿って伝播される別の第2の補償波CW2’は、異なるターゲット波長を有する。第2の経路P2は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110b、バックキャビティ構造130の一部(すなわち、第1の空気チャネル232a)、および音伝播開口部152を通り、第4の経路P4は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110b、バックキャビティ構造130の別の一部(すなわち、第2の空気チャネル232b)、および音伝播開口部152を通る。
【0072】
図10に示すように、バックキャビティ構造130の第1の空気チャネル232aは、第1の接続通路CTP1と空気通路APの少なくとも一部とを含み、第1の接続通路CTP1は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bと空気通路APとの間に接続される。したがって、第2の補償波CW2は、第1の接続通路CTP1および空気通路APを通過することによって音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0073】
図9および
図10に示すように、バックキャビティ構造130の第2の空気チャネル232bは、第2の接続通路CTP2を含み、第2の接続通路CTP2は、第1の音生成構成要素110の第1の背面側110bと外側ハウジング構造150の第1のキャビティCB1との間に接続される。したがって、別の第2の補償波CW2’は、第2の接続通路CTP2を通過することによって音伝播開口部152に向かって伝播する。
【0074】
音響装置200_2の構造、外側ハウジング構造150の形状、および音響装置200_2内の構成要素の配置は、
図9および
図10によって限定されるものではないことに留意されたい。
【0075】
つまり、バックキャビティ構造の設計によれば、音響装置は、簡単な操作および高い性能を有するために、より平坦な周波数応答を有する。
【0076】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置および方法の多数の修正および変更を行うことができることを容易に認識するであろう。したがって、上記の開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ限定されると解釈されるべきである。