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特開2024-6498配線・配管材支持具、及びその設置構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006498
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】配線・配管材支持具、及びその設置構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/24 20060101AFI20240110BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16L3/24 C
H02G3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107412
(22)【出願日】2022-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳二
【テーマコード(参考)】
3H023
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB07
3H023AC03
3H023AD02
3H023AD19
3H023AD26
3H023AE02
5G363AA16
5G363BA01
5G363BA07
5G363DA15
(57)【要約】
【課題】ボルト体への設置操作中に自重落下しないよう仮固定できるとともに、ボルト体に沿った位置調整を簡単に行うことができる配線・配管材支持具、及びその設置構造を提供する。
【解決手段】支持具1は、ボルト体60への上方固定部21及び下方突出部22と、配線・配管材を支持する支持部40と、ボルト体60の外面のネジ溝62に入り込み係止する係止凸部30と、を備える。支持具1は、係止凸部30のネジ溝62への係止状態で、自重落下が防止されるようボルト体60に仮固定可能である。係止凸部30は、ボルト体60の延びる方向に沿った直線動で支持具1を強制移動させる力を上下いずれの方向に付しても、弾性変形によりネジ溝62から離脱し、弾性復帰力により係止可能位置まで復帰してネジ溝62に係止して、当該強制移動力のみで支持具1の仮固定位置を変更できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるボルト体に固定されて、配線・配管材を支持する配線・配管材支持具であって、
前記ボルト体への固定部と、前記配線・配管材を支持する支持部と、前記ボルト体の外面に形成されたネジ溝に入り込み係止する係止凸部と、を有し、
前記係止凸部の前記ネジ溝への係止状態で、自重落下が阻止されるよう前記ボルト体に仮固定可能であるとともに、
前記係止凸部は、前記ボルト体の延びる方向に沿った直線動で前記配線・配管材支持具を強制移動させる力を上下いずれの方向に付しても、弾性変形により前記ネジ溝から離脱し、弾性復帰力により係止可能位置まで復帰して前記ネジ溝に係止し、当該強制移動力のみで前記ボルト体への仮固定位置が変更されることを特徴とする配線・配管材支持具。
【請求項2】
前記係止凸部の先端は、前記ボルト体を挟んで当該係止凸部と対向する部位に前記ボルト体を当接させた状態で、前記ボルト体の外面に摺接する位置、または、離れているとともに前記ボルト体と前記配線・配管材支持具との相対角度の変位により直ちに当接する位置にあることを特徴とする請求項1に記載の配線・配管材支持具。
【請求項3】
前記ボルト体に沿って配置される基部を有し、
前記支持部は、前記ボルト体の側方で前記配線・配管材を支持するように前記基部から延出され、
前記固定部は、
前記ボルト体における前記支持部の配置される側の外面に当接する第1当接部と、
前記ボルト体における前記支持部の配置される側と反対側の外面において前記第1当接部よりも上方に当接する第2当接部と、を備え、
前記支持部に支持された前記配線・配管材の荷重によって、前記第1当接部及び前記第2当接部が前記ボルト体の外面に押し付けられるよう構成され、
前記係止凸部は少なくとも、前記第2当接部が形成された側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の配線・配管材支持具。
【請求項4】
前記第2当接部に前記ボルト体が当接した状態から前記第1当接部が前記ボルト体から離間するように前記配線・配管材支持具全体を傾け可能であるとともに、前記係止凸部よりも上方で前記ボルト体に当接して前記第1当接部の離間量の終点を定める第3当接部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配線・配管材支持具。
【請求項5】
前記第1当接部の両側には、前記ボルト体の直径よりも間隔をあけて前記基部から突出形成された2つの腕部が設けられ、当該2つの腕部の突出長は、前記第1当接部に前記ボルト体を当接させた状態における前記ボルト体の中心を越える長さであり、当該腕部における前記ボルト体と対向する面、及び前記第1当接部は、前記ボルト体の外面の雄ネジと係合しないよう平滑に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の配線・配管材支持具。
【請求項6】
前記支持部に前記配線・配管材を支持した状態による落下を防止する本固定のための、前記ボルト体に螺着された別体のナット体が下方から当接する下方側当接部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の配線・配管材支持具。
【請求項7】
前記係止凸部は、前記ナット体の上方への螺進による前記配線・配管材支持具全体の上方への移動を阻害しないことを特徴とする請求項6に記載の配線・配管材支持具。
【請求項8】
前記基部から突出形成された上方固定部を備え、当該上方固定部における前記基部と対向する面が前記第2当接部を構成しており、
前記支持部に前記配線・配管材を支持させた状態による落下を防止する本固定のための、前記ボルト体に螺着された別体のナット体が下方から当接するナット体当接部が前記上方固定部の下端に設けられ、
前記第1当接部と前記ナット体当接部との間が前記ナット体の厚みより大きく、かつ、当該間における前記基部は、前記ナット体の螺回動と干渉しないよう前記ボルト体から離れていることを特徴とする請求項7に記載の配線・配管材支持具。
【請求項9】
前記第1当接部の両側には、前記ボルト体の直径よりも間隔をあけて前記基部から突出形成された2つの腕部が設けられ、
前記上方固定部は、前記ボルト体を端部からのみ内部に受け入れ可能とする貫通孔を有し、当該貫通孔の内面に前記第2当接部が形成されており、
上方に端部を向けた状態の前記ボルト体を前記貫通孔に挿通した状態から、前記2つの腕部が前記ボルト体に螺着された前記ナット体と干渉することなく乗り越えて当該ナット体より下方に配置可能となるよう、前記2つの腕部を前記ボルト体の外面から離間する方向へと前記配線・配管材支持具全体を傾動可能であることを特徴とする請求項8に記載の配線・配管材支持具。
【請求項10】
請求項3に記載の配線・配管材支持具の第1当接部及び第2当接部がボルト体に当接し、
前記第1当接部と前記第2当接部との間で螺回動可能に前記ボルト体に螺着されたナット体が、前記第2当接部の下方から当接して、前記ボルト体に沿った前記配線・配管材支持具の落下を防止していることを特徴とする配線・配管材支持具の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面や床面等に配置されたボルト体に設置され、ケーブル、電線管、給水管等の配線・配管材を支持する配線・配管材支持具、及びその設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記配線・配管材は、天井面や床面に沿って布設するとき、天井面に垂下配置されたり床面に立設配置されたボルト体に支持具を設置し、この支持具に支持させている。この種の支持具として、例えば、特許文献1に記載の支持具が開示されており、この支持具は、図11(a)に示すように、ボルト体60の軸側方から取着可能で、把持部81aの塑性変形によりその取着状態を維持するナット体81と、ナット体81の塑性変形しない位置に固着され、配線・配管材70を受ける支持体82とを備えている。この支持具80は、支持部83の荷重Wにより、支持具80の上方側のフック84の内面と下方側の塑性変形されるナット体81の内面81bとが荷重Wに起因する押す力F1及びF2によってボルト体60に押圧された状態となり、自重落下が阻止された仮固定状態になる。そして、下方側のナット体81の把持部81aの塑性変形により本固定される。
【0003】
また、特許文献2に記載の支持具は、図11(b)に示すように、配線・配管材70を支持する支持部91と、基部93と、第1挟持部94と、ボルト体60の軸方向において第1挟持部94とは異なる位置で基部93から突出し、第1挟持部94と協働してボルト体60を挟持する第2挟持部95と、ボルト体60の軸方向において基部93から離隔した位置に設けられ、ボルト体60に対して支持部91と相反する方向からボルト体60に当接する当接部96と、を備えている。この支持具90は、上方のフック状の固定部92がボルト体60に掛け回され、下方の2つの挟持部94,95によりボルト体60を挟むことで、ボルト体60に本固定される。この支持具90は、特許文献1に記載の支持具80と同様に、支持部91の荷重によって、上方及び下方それぞれにおいてボルト体60に押圧された状態となり、ボルト体60から外れる方向への移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-024197号公報
【特許文献2】特開2016-050643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来、ボルト体における支持具の取着位置を調整する際に、特許文献1の支持具80の場合は、仮固定の姿勢のままではボルト体60の雄ネジとナット体81の雌ネジとが係合しているから、その係合が解除されて雄ネジから離脱するまで支持具80をボルト体60に対して傾動させる必要があり、支持具80の位置調整に手間がかかっていた。
【0006】
また、特許文献2の支持具90の場合、直ちに本固定状態となるため、上方の固定部92と下方の挟持部94,95とを一旦ボルト体60から取り外す必要があり、本固定となる挟持力に抗してボルト体60から取り外すのが面倒であった。
【0007】
そこで、本発明は、ボルト体への設置操作中に自重落下しないよう仮固定できるとともに、ボルト体に沿った位置調整を簡単に行うことができる配線・配管材支持具、及びその設置構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の配線・配管材支持具は、
上下方向に延びるボルト体に固定されて、配線・配管材を支持するものであって、
前記ボルト体への固定部と、前記配線・配管材を支持する支持部と、前記ボルト体の外面に形成されたネジ溝に入り込み係止する係止凸部と、を有し、
前記係止凸部の前記ネジ溝への係止状態で、自重落下が阻止されるよう前記ボルト体に仮固定可能であるとともに、
前記係止凸部は、前記ボルト体の延びる方向に沿った直線動で前記配線・配管材支持具を強制移動させる力を上下いずれの方向に付しても、弾性変形により前記ネジ溝から離脱し、弾性復帰力により係止可能位置まで復帰して前記ネジ溝に係止して、当該強制移動力のみで前記ボルト体への仮固定位置が変更されるものである。
これにより、仮固定位置を変更するときは、配線・配管材支持具を移動させたい方向にそのままボルト体の軸方向に沿って直線的に動かせばよく、そのため、直感的で作業し易く、従来のように位置変更のときにはボルト体への係合を一旦解除するという意識は不要である。
また、係止凸部は移動中にボルト体のネジ溝に嵌まり込むというクリック感が得られるので、勢い余って動かしすぎるのを防止できる。
【0009】
請求項2の配線・配管材支持具は、係止凸部の先端が、ボルト体を挟んで当該係止凸部と対向する部位に前記ボルト体を当接させた状態で、前記ボルト体の外面に摺接する位置、または、離れているとともに前記ボルト体と前記配線・配管材支持具との相対角度の変位により直ちに当接する位置にある。
これにより、ボルト体の直径と同一または僅かに大きい空間内の一部に係止凸部の先端があるので、係止凸部は、移動中ボルト体の雄ネジと摺接する姿勢または当接しない姿勢にあって摩擦が少なく、上下動容易であるとともに、支持具の重量バランスを利用した相対傾動によりボルト体のネジ溝に直ちに係止する。
【0010】
請求項3の配線・配管材支持具は、
ボルト体に沿って配置される基部を有し、
支持部は、前記ボルト体の側方で前記配線・配管材を支持するように前記基部から延出され、
固定部は、
前記ボルト体における前記支持部の配置される側の外面に当接する第1当接部と、
前記ボルト体における前記支持部の配置される側と反対側の外面において前記第1当接部よりも上方に当接する第2当接部と、を備え、
前記支持部に支持された前記配線・配管材の荷重によって、前記第1当接部及び前記第2当接部が前記ボルト体の外面に押し付けられるよう構成され、
前記係止凸部は少なくとも、前記第2当接部が形成された側に設けられている。
係止凸部は、重量バランスによってボルト体に係止する方向となるように形成されている。
これにより、仮に係止凸部がボルト体に対して重量バランスによる傾き方向と交差する側に設けられていると、重量バランスにより傾いた姿勢と第1当接部をボルト体の外面から離した姿勢のどちらにおいても常にボルト体の雄ネジに摺接し弾性変形して削りとられる可能性があるが、本発明の配線・配管材支持具ではそのような不具合を生じない。
【0011】
請求項4の配線・配管材支持具は、第2当接部に前記ボルト体が当接した状態から前記第1当接部が前記ボルト体から離間するように前記配線・配管材支持具全体を傾け可能であるとともに、前記係止凸部よりも上方で前記ボルト体に当接して前記第1当接部の離間量の終点を定める第3当接部が形成されている。
これにより、上下位置調整時に配線・配管材支持具の全体が傾いた姿勢にあることによって、第1当接部とボルト体とが摺接することによる移動抵抗が無くなり、スムーズに位置調整できる。
また、第3当接部によって離間方向への傾きの範囲が定まり、第1当接部の離れすぎが防止され、再度第1当接部をボルト体に当接させる際にはあてがい易い。
そして、第3当接部にボルト体を沿わせた状態の定まった姿勢で案内されるように移動させることができるので、配線・配管材支持具を上下動させ易い。
【0012】
請求項5の配線・配管材支持具は、第1当接部の両側に、前記ボルト体の直径よりも間隔をあけて前記基部から突出形成された2つの腕部が設けられ、当該2つの腕部の突出長は、前記第1当接部に前記ボルト体を当接させた状態における前記ボルト体の中心を越える長さであり、当該腕部における前記ボルト体と対向する面、及び前記第1当接部は、前記ボルト体の外面の雄ネジと係合しないよう平滑に形成されている。
これにより、上下方向の位置調整の際に、多少第1当接部がボルト体から離れても、両側の腕部がボルト体の外面を挟んだ状態すなわち2つの腕部間にボルト体が配置された状態を維持することができるので、ボルト体にガイドされるようにしてねじれ姿勢になることはなく、また、第1当接部がボルト体から離れすぎても、再度第1当接部にボルト体を案内させることができる。
【0013】
請求項6の配線・配管材支持具は、支持部に前記配線・配管材を支持した状態による落下を防止する本固定のための、前記ボルト体に螺着された別体のナット体が下方から当接する下方側当接部が形成されている。
これにより、下方からナット体で支持して確実に落下防止する状態で固定できる。
【0014】
請求項7の配線・配管材支持具は、係止凸部が、前記ナット体の上方への螺進による前記配線・配管材支持具全体の上方への移動を阻害しないものである。
すなわち、ナット体の螺進による支持具の上方への強制移動の際に、係止凸部はその移動を邪魔しない。なお、最終的な配線・配管材の排水勾配の微調整はナット体の螺進により行われる。
【0015】
請求項8の配線・配管材支持具は、基部から突出形成された上方固定部を備え、当該上方固定部における前記基部と対向する面が前記第2当接部を構成しており、前記支持部に前記配線・配管材を支持させた状態による落下を防止する本固定のための、前記ボルト体に螺着された別体のナット体が下方から当接するナット体当接部が前記上方固定部の下端に設けられ、前記第1当接部と前記ナット体当接部との間が前記ナット体の厚みより大きく、かつ、当該間における前記基部は、前記ナット体の螺回動と干渉しないよう前記ボルト体から離れている。
これにより、係止凸部による仮固定が、振動等により外れたり、位置調整時に手を滑らせてしまっても、直下に下側ナット体が配置されていれば、配線・配管材支持具の落下を防止できる。
また、床面に近い箇所で配線・配管材を支持させる際に、第2当接部を下方から支持するナット体を第2当接部の上方から手を入れて指で螺回動操作することが可能であり、この場合、第1当接部よりも下方に位置するナット体を操作して支持させるよりも作業し易い。
【0016】
請求項9の配線・配管材支持具は、第1当接部の両側に、ボルト体の直径よりも間隔をあけて基部から突出形成された2つの腕部が設けられ、上方固定部は、前記ボルト体を端部からのみ内部に受け入れ可能とする貫通孔を有し、当該貫通孔の内面に前記第2当接部が形成されており、上方に端部を向けた状態の前記ボルト体を前記貫通孔に挿通した状態から、前記2つの腕部が前記ボルト体に螺着された前記ナット体と干渉することなく乗り越えて当該ナット体より下方に配置可能となるよう、前記2つの腕部を前記ボルト体の外面から離間する方向へと配線・配管材支持具全体を傾動可能である。
これにより、貫通孔の外側の筒部分でボルト体の径方向への横ずれによる外れを防止できる。
また、先にボルト体において腕部より上方に取り付けられているナット体を乗り越えて腕部をそのナット体の下方に配置することができる。
加えて、上下方向の位置調整の際に、多少第1当接部がボルト体から離れても、両側の腕部がボルト体の外面を挟んだ状態すなわち2つの腕部間にボルト体が配置された状態を維持できるので、ボルト体にガイドされるようにしてねじれ姿勢になることはなく、また、第1当接部がボルト体から離れすぎても、再度第1当接部にボルト体を案内させることができる。
【0017】
請求項10の配線・配管材支持具の設置構造は、請求項3に記載の配線・配管材支持具の第1当接部及び第2当接部がボルト体に当接し、前記第1当接部と前記第2当接部との間で螺回動可能に前記ボルト体に螺着されたナット体が、前記第2当接部の下方から当接して、前記ボルト体に沿った前記配線・配管材支持具の落下を防止しているものである。
これにより、ナット体で配線・配管材支持具を安定して支持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、配線・配管材支持具をボルト体に設置する際、係止凸部がボルト体のネジ溝に弾性的に係脱することによって配線・配管材支持具が自重落下しないように仮固定できる。
そして、特に、係止凸部は、ボルト体の延びる方向に沿った直線動で配線・配管材支持具を強制移動させる力を上下いずれの方向に付しても、弾性変形によりネジ溝から離脱し、弾性復帰力により係止可能位置まで復帰してネジ溝に係止するから、配線・配管材支持具をボルト体の軸方向に沿ってそのまま直線的に上下動させることができ、仮固定、本固定いずれにおいてもボルト体に沿った配線・配管材支持具の位置調整を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の配線・配管材支持具の設置構造を示す斜視図である。
図2図1の配線・配管材支持具の設置構造の縦断面図である。
図3図1の配線・配管材支持具の斜視図である。
図4図1の配線・配管材支持具を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図5図4(a)のC-C切断線による断面図である。
図6図5の支持具を僅かに傾動した状態を示す断面図である。
図7】(a)は図3の配線・配管材支持具をボルト体に取着した状態を示す断面図、(b)は(a)の配線・配管材支持具をボルト体に対して傾けた状態を示す断面図である。
図8図3の配線・配管材支持具を床面に立設されたボルト体に設置した状態を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図9図3の配線・配管材支持具をボルト体に設置する方法を説明する説明図である。
図10】同じく、図3の配線・配管材支持具をボルト体に設置する方法を説明する説明図である。
図11】従来の2件の配線・配管材支持具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材支持具、及びその設置構造を図に基づいて説明する。配線・配管材支持具の設置構造は、配線・配管材支持具がナット体を介してボルト体に設置されたものである。
【0021】
図3乃至図5において、配線・配管材支持具(以下、単に「支持具」という。)は、上下方向に延び外面に雄ネジ61を有するボルト体60に固定されて、配線・配管材を支持するものであり、全体が略一定幅に形成され、ボルト体60への固定部20と、配線・配管材を支持する支持部40と、ボルト体60の外面のネジ溝62に入り込み係止する係止凸部30と、を有する。図1及び図2は、この支持具1がボルト体60に設置され、配線・配管材70が支持具1で支持されたものを示す。
【0022】
支持具1は、ボルト体60に沿って配置される基部10を有し、支持部40は、ボルト体60の側方で配線・配管材70を支持するように基部10から延出している。基部10におけるボルト体60とは反対側の面は配線・配管材70の外径と同一曲率の円弧面10aに形成されている。基部10の下端部からはボルト体60とは反対側に、上面が配線・配管材70の外径と同一曲率の円弧面に形成された支持台部41が延出し、その支持台部41のボルト体60とは反対側の上端部からは配線・配管材70を抱持する第1抱持片42が上方に向けて延設されている。また、基部10の上端からは配線・配管材70を抱持する第2抱持片44が第1抱持片42側に向けて延設されている。第1抱持片42と第2抱持片44とは、相対向して支持台部41上に載置された配線・配管材70を左右両側から抱持する。
【0023】
第1抱持片42の外面側には幅方向に延びた小さい鈎状の複数の係止突条43が所定間隔で連続して円弧方向に突設されている。また、第2抱持片44の内面側には第1抱持片42の係止突条43と対応する位置に幅方向に延びた小さい鈎状の複数の係止突条45が所定間隔で連続して円弧方向に突設されている。これら第1抱持片42と第2抱持片44とは、各係止突条が互いに上下方向から係止することにより配線・配管材70を外面側から締め付け、これら一対の抱持片と基部10と支持台部41とで配線・配管材70を挟持する。
【0024】
固定部20は、基本的には、基部10の上端部からボルト体60側に突出形成された上方固定部21からなるが、後述のように、固定のための下側ナット体50が、基部10の下端部からボルト体60側に突出形成された下方突出部22の下端に当接し支持することもあり得るし、また、下方突出部22は支持具1の下方においてボルト体60に当接して安定した固定に寄与することから、下方突出部22も広く固定部20の一部に含められる。
【0025】
下方突出部22には、ボルト体60における支持部40が配置される側の外面に当接する第1当接部23が形成されている。第1当接部23の両側には、ボルト体60の直径よりも間隔をあけて基部10から突出形成された一対の腕部24,24が設けられており、これら2つの腕部24の突出長は同一であり、いずれも第1当接部23にボルト体60を当接させた状態においてボルト体60の中心Oを越える長さに形成されている。各腕部24におけるボルト体60と対向する面24a及び第1当接部23は、ボルト体60の外面の雄ネジ61と係合しないよう平滑に形成されている。
【0026】
上方固定部21には、ボルト体60の直径と同一または僅かに大きい内径を有し、ボルト体60を端部からのみ内部に受け入れ可能な貫通孔25が設けられており、貫通孔25の内面には、ボルト体60における支持部40とは反対側の外面において第1当接部23よりも上方にてボルト体60が当接する第2当接部26が形成されている。これら第1当接部23及び第2当接部26は、支持具1の荷重あるいは支持部40に支持された配線・配管材70の下方への荷重による重量バランスを利用した相対傾動によりボルト体60の外面に押し付けられるよう構成されている。
【0027】
上方固定部21と下方突出部22との間は、ボルト体60に螺着された下側ナット体50が配置可能であって上下移動可能な間隔に設定されている。別言すると、下方突出部22の第1当接部23と上方固定部21の第2当接部26との間は、下側ナット体50の厚みより大きく、かつ、当該間における基部10は、図5及び図10(e)に示すように、下側ナット体50の螺回動と干渉しないようボルト体60から間隔Lで離間している。
【0028】
上方固定部21の下端の底面は、ボルト体60に螺着された下側ナット体50が下方から当接して支持具1を支持し、支持具1の自重落下を防止するナット体当接部としての下方側当接部28が形成されている。
【0029】
上方固定部21の貫通孔25において係止凸部30よりも上方で第2当接部26と対向する面は、上方に向かうにつれて第2当接部26から離間する方向に連続して直線的に傾斜する傾斜面25aに形成されており、この傾斜面25aはボルト体60に当接して下方突出部22の第1当接部23のボルト体60との離間量の終点を定める第3当接部29を形成している。
【0030】
支持具1は、垂直下方に移動させてボルト体60をその上端から上方固定部21の貫通孔25内に挿通させて図7(a)に示す状態から、図7(b)に示す状態に傾動可能となっている。この傾動は、下方突出部22の2つの腕部24が、先にボルト体60に螺着されている下側ナット体50と干渉することなくこれを乗り越えてその下方に配置可能な状態とするものであり、2つの腕部24をボルト体60の外面から離間する方向に支持具1全体が所定角度傾動する。この図7(a)に示す状態から図7(b)に示す状態への支持具1の傾動においては、上方固定部21の下方側当接部28と貫通孔25の第3当接部29との交点Pを中心に支持具1を図7の左方向に回動して傾け、第3当接部29にボルト体60を当接させる。
【0031】
なお、上方固定部21の外側面は、下方に向けてすぼまり形状となっていて、上方から差し入れた指で下側ナット体50を摘まんで下側ナット体50の螺回動操作をし易くしている。但し、上方固定部21の外面は、必ずしも下方に向けてすぼまる形状にする必要はない。上方固定部21の上面には円形の凹み部27aが形成され、凹み部27aの底面は別体の上側ナット体51が嵌まり込んで上方から当接する上方側当接部27を形成している。上方固定部21の外側面のボルト体60を挟んだ2箇所には、ボルト体60に圧接されるネジが外部から貫通孔25内に向けてねじ込まれるねじ込み孔31が形成されている。
【0032】
上方固定部21の第2当接部26が形成された側には係止凸部30が設けられている。係止凸部30は、第1当接部23及び第2当接部26をボルト体60の外面に当接させた状態で、先端がボルト体60の外面に摺接する位置に設けられている。または、係止凸部30は、第1当接部23がボルト体60から僅かに離間した姿勢においてはボルト体60から離間しているが、第1当接部23がボルト体60に当接するように近接すると直ちにボルト体60の外面に当接する位置に設けられている。つまり、ボルト体60と支持具1との相対角度の変位により、すなわち支持具1がその重量バランスによって下方側当接部28と第3当接部29との交点Pを支点にボルト体60側に傾動することにより、第1当接部23がボルト体60の外面に当接し、図5に示す姿勢から図6に示す仮固定姿勢になると、直ちにボルト体60の外面に当接することになる位置に設けられている。
【0033】
係止凸部30は、支持具1が図6に示す仮固定姿勢において、ボルト体60のネジ溝62に係止する。これを図6で示せば、ボルト体60の斜線で示した係止部分63が係止凸部30の先端より僅かに外方すなわち図6の右方に突き出た状態になる。係止凸部30は、この仮固定姿勢において、支持具1の自重落下を防止する。一方で、係止凸部30は、ボルト体60の延びる方向に沿って直線的に支持具1を強制移動させる力を上下いずれの方向に加えても、弾性変形によりネジ溝62から離脱して係止が解除された後、弾性復帰力によりネジ溝62内の係止可能位置まで復帰して再度ネジ溝62に係止し、この強制移動力のみでボルト体60への仮固定位置を変更することができるものでもある。すなわち、係止凸部30は、仮固定のために支持具1の自重落下を防止し得る支持力を備えるとともに、一方では、弾性変形して、支持具1の上下動においてはボルト体60の外面との抵抗が少ないことにより上下方向への移動が可能なものでもある。
【0034】
係止凸部30は、具体的には、図3乃至図5に示すように、略直角三角形状で一定厚の薄板の小突片で形成され、貫通孔25の内面の第2当接部26の下端部から貫通孔25の内部空間内に水平方向に左右一対突設されており、この箇所において貫通孔25の周縁の一部は係止凸部30の先端によって内部側に僅かに突出形成されている。この係止凸部30は、ボルト体30に押されて貫通孔25の内面側に弾性的に圧縮されたり、薄板の小突片が弾性的に上下いずれかの向きに僅かに撓み変形するなどして、ネジ溝62との係止が解除される。そして、移動中に薄板の小突片の自由端である先端側が別のネジ溝62の位置に移行したときに弾性復帰してネジ溝62内に入り込んで再度ボルト体60の雄ネジ61に係止する。
【0035】
支持具1の傾動は、手で支持具1を動かしたり、支持具1の重量バランスによって行われる。係止凸部30は、支持具1をボルト体60の軸とほぼ平行する姿勢として上下方向に移動させる際に、ボルト体60の雄ネジ61に摺接する状態または当接しない状態にあり、そのために、係止凸部30がこれらいずれの状態にあっても、係止凸部30のボルト体60との摩擦、抵抗は少なく、係止凸部30がボルト体60の雄ネジ61に係止しているときと比べると、支持具1を上下動するのは容易である。本実施形態においては、係止凸部30の先端とその先端に対面する面との間がボルト体60の直径と同一に設定されている。このため、支持具1の位置調整などで、支持具1をボルト体60の軸方向に沿って比較的長い距離を移動させるときは、支持具1は第1当接部23をボルト体60の外面から僅かに離した姿勢とするのがよい。移動後、支持具1は、重量バランスを利用した第1当接部23及び第2当接部26をボルト体60の外面に押し付ける方向への仮固定姿勢となり、係止凸部30は、ボルト体60のネジ溝62に直ちに係止する。
【0036】
支持具1は、ボルト体60に取り付けられる上側ナット体51と下側ナット体50との2つのナット体で挟持され、ボルト体60に本固定される。下側ナット体50は、本固定により下方から支持具1を支持して、支持部40に配線・配管材70を支持させた状態での自重落下を確実に防止する。また、上側ナット体51は、不用意に支持具1が上方に移動するのを防止して支持具1を一定位置に安定して保持する。
【0037】
なお、最終的な配線・配管材70の排水勾配の微調整はこれらのナット体を螺進させて支持具1の高さを微調整して行うことができるが、その際、支持具1の係止凸部30は、下側ナット体50の上方への移動時にその上方への移動を阻害しない。また、本実施形態では、支持具1の係止凸部30は、両ナット体の螺進による支持具1の上下方向への移動を阻害しない。
【0038】
次に、上記のように構成された支持具1をボルト体60に設置する方法を説明する。なお、ボルト体60は、天井面または床面のような水平の面に固定される固定体に固定板やアンカーを介して取り付けられ、固定体に支えられて垂下配置または立設配置される。本実施形態では、図8に示すように、床面64に立設されたボルト体60に支持具1を設置する場合を説明する。図8に示すように、ボルト体60は、ナット体を介して固定体の床面64にアンカー固定され、支持具1は床面64に近接した箇所に設置される。
【0039】
最初に、ボルト体60の中間高さの適宜位置に下側ナット体50を取り付けておく。この状態で、ボルト体60の上端から支持具1の貫通孔25内にボルト体60を挿通し、支持具1を垂直下方に移動させてボルト体60の中間高さの適宜位置に取り付ける。この支持具1の下方への移動時においては、図7(b)及び図9(a)に示すように、支持具1は上方固定部21の下方側当接部28と貫通孔25の第3当接部29との交点Pを中心に左方向に傾動した姿勢で行うと、ボルト体60との抵抗が少ないために支持具1を円滑に移動させることができる。
【0040】
そして、この傾斜姿勢を維持したまま支持具1の下方への移動を継続して、図9(b)から同(c)に示すように、下方突出部22の腕部24の先端が下側ナット体50と干渉することなく乗り越えてその下方にまで移動して下側ナット体50が上方固定部21と下方突出部22との中間に位置し、高さ調整して支持具1がボルト体60のほぼ所定高さに達したら、支持具1の移動を停止する。
【0041】
ここで、この移動時は、支持具1は、第3当接部29がボルト体60に当接する角度以上には傾かず、下方突出部22の第1当接部23が必要以上にボルト体60から離間するのが防止される。そして、支持具1全体が傾いた姿勢であることによって、下方突出部22の第1当接部23とボルト体60との摺接による移動抵抗を受けることがないから、支持具1をスムーズに移動させることができる。加えて、支持具1は、上方固定部21の第3当接部29にボルト体60を沿わせた定まった姿勢で案内されるように移動させることができるので、上下動させ易い。
【0042】
次に、支持具1から手を離すと、支持具1は重量バランスによりボルト体60側に回動し、図9(d)及び図6に示すように、第1当接部23及び第2当接部26はボルト体60の外面に当接する。そして、係止凸部30の先端はボルト体60のネジ溝62内に入り込み、支持具1はボルト体60に仮固定され、下方への自重落下が防止される。
【0043】
このとき、支持具1は、前の図9(c)の工程において、第1当接部23の離間量の終点を定める第3当接部29がボルト体60に当接し、それ以上の角度には開かず、必要以上に傾いて第1当接部23がボルト体60から離れすぎるのが防止されるので、第1当接部23をボルト体60に当接させる際にあてがい易い。
【0044】
支持具1は、図9(d)の工程において、下方側当接部28と第3当接部29との交点Pを中心に傾動した仮固定姿勢にあるときも高さ調整することができる。支持具1は、図7(b)に示す傾斜した姿勢のときは、第1当接部23はボルト体60の外面から離間しており、ボルト体60との摩擦、抵抗が少なく移動させ易いので、比較的長いスパンでの移動に適する。また、図5に示す第2当接部26の面がボルト体60の軸と平行する姿勢にあるときは、係止凸部30はボルト体60の雄ネジ61に摺接する状態または当接しない状態にあって、係止凸部30のボルト体60との摩擦、抵抗は少なく、同じく比較的長いスパンでの移動に適する。一方、図6で示した仮固定姿勢のときは、以下の作用効果から、どちらかというと、比較的小幅な位置調整や微調整など仮固定位置を変更する際の移動に適する。仮固定姿勢のときは、支持具1に直線的に強制移動させる力を上下方向に付したとき、係止凸部30は、弾性変形によりボルト体60のネジ溝62から離脱し、弾性復帰力により別のネジ溝62に係止し、強制移動力のみでボルト体60への仮固定位置を変更できる。したがって、支持具1は移動させたい方向にそのままボルト体60の軸方向に沿って直線的に動かせばよい。この直線的な移動は、作業者にとって直感的で作業し易いものであるし、係止凸部30が移動中にボルト体60のネジ溝62に嵌まり込むというクリック感が得られる。このため、仮固定位置を微調整し易い。
【0045】
また、図9(d)の工程等で、第2当接部26の面がボルト体60の軸と平行する姿勢にあるときなどで上下動させる際、第1当接部23の両側にそれぞれ腕部24が設けられていて2つの腕部24の突出長は第1当接部23にボルト体60を当接させた状態においてボルト体60の中心Oを越える長さに設定されているから、多少第1当接部23がボルト体60から離れていても、両側の腕部24がボルト体60の外面を挟んだ状態すなわち2つの腕部24間にボルト体60が配置された状態が維持される。これにより、支持具1は腕部24がボルト体60にガイドされるように移動することによりねじれ姿勢になることはない。そして、第1当接部23がボルト体60から離れすぎたとしても、第1当接部23をボルト体60に案内させることができる。
【0046】
続いて、図10(e)に示すように、下側ナット体50を上方に螺進して上方固定部21のナット体当接部である下方側当接部28に当接させる。ここで、第1当接部23と下方側当接部28との間における基部10は、ナット体の螺回動と干渉しない間隔Lでボルト体60から離間しているので、下側ナット体50を上方に螺進するとき、基部10と干渉せずに支障なく移動させることができる。また、支持具1は固定体である床面64に近い箇所で配線・配管材70を支持させるのであるが、上方固定部21の外面は、下方に向けてすぼまり形状になっているので、下側ナット体50を第2当接部26の上方から手を入れて指で螺回動操作することもできる。このため、床面64に近接する箇所で床面64に立設されたボルト体60に支持具1を設置する作業を行うときは、下側ナット体50の下方からこれを螺進操作するより作業し易い。なお、図9(d)あるいは図10(e)における仮固定の段階で高さ調整が完了している場合は、以後は単にナット体で支持具1を保持すればよい。一方、図10(e)の状態で、ボルト体60への仮固定位置を変更したい場合は、このまま下側ナット体50を移動させて支持具1をボルト体60に沿って移動させることにより位置調整することができる。
【0047】
この後、図10(f)に示すように、支持具1の支持部40の支持空間内に配線・配管材70を載置し、第1抱持片42を配線・配管材70の上面に重ね置き、第1抱持片42の上面に第2抱持片44を重ね置いて第1抱持片42の係止突条43と第2抱持片44の係止突条45とを係止させて支持台部41、第1抱持片42及び第2抱持片44により配線・配管材70を挟持し保持する。
【0048】
そして、図10(g)に示すように、ボルト体60の上端から上側ナット体51を取り付け、上側ナット体51と下側ナット体50とで支持具1の上方固定部21を挟持する。下側ナット体50、上側ナット体51の取り付けにより支持具1は本固定される。
【0049】
なお、この段階において、支持具1が正規の高さから僅かにずれていて配線・配管材70が所定高さで支持されておらずなおも僅かな位置ずれがある場合は、両ナット体を緩めながら上下方向に螺進させて支持具1の設置位置を微調整することができる。このとき、係止凸部30は弾性変形してこれらナット体の移動を許容する。以上により、支持具1はボルト体60の正規位置に本固定され、設置が完了する。
【0050】
このようにして、支持具1の第1当接部23及び第2当接部26がボルト体60に当接し、第1当接部23と第2当接部26との間で螺回動可能にボルト体60に螺着された下側ナット体50が第2当接部26の下方から当接して、支持具1がボルト体60に本固定され、支持具1の落下が防止されたもの、あるいは更に上側ナット体51が取着されたものは、請求項の配線・配管材支持具の設置構造を構成する。
【0051】
次に、本実施形態の支持具1及びその設置構造の作用を説明する。
支持具1の係止凸部30は、ボルト体60の延びる方向に沿った直線動で強制移動させる力を上下いずれの方向に付しても、弾性変形によりネジ溝62から離脱し、弾性復帰力により係止可能位置まで復帰してネジ溝62に係止するから、仮固定位置を変更するときは、支持具1を移動させたい方向にそのままボルト体60の軸方向に沿って直線的に動かせばよく、そのために、直感的で作業し易く、従来抱いていた、位置変更のときにはボルト体60への係合を一旦解除するという意識は不要である。
また、係止凸部30によれば、支持具1を上下移動中にボルト体60のネジ溝62に嵌まり込むというクリック感が得られるので、勢い余って動かしすぎるのを防止することができる。
【0052】
更に、各固定部20は、支持部40に支持された配線・配管材70の荷重によって、第1当接部23及び第2当接部26がボルト体60の外面に押し付けられるよう構成され、係止凸部30は、第2当接部26が形成された側に設けられているので、仮に、係止凸部30がボルト体60に対して重量バランスによる傾き方向と交差する側すなわち図3図4(c)におけるボルト体60と対向する面24a側に設けられていると、重量バランスにより支持具1が僅かに傾いた仮固定姿勢と、第1当接部23をボルト体60の外面から離した姿勢のどちらにおいても、係止凸部30は常にボルト体60の雄ネジ61に摺接しているために弾性変形して削りとられる可能性が大きくなるが、本発明の支持具1では、そのような不具合を生じない。
【0053】
そして、支持具1は全体を傾け可能であるとともに、ボルト体60に当接して第1当接部23の離間量の終点を定める第3当接部29が設けられているので、第1当接部23とボルト体60とが摺接することによる移動抵抗が無くなり、円滑に上下動させて位置調整することができる。また、支持具1の傾動において、ボルト体60に対する支持具1の離間方向への傾きの範囲が定まり、ボルト体60からの第1当接部23の離れすぎが防止され、再度第1当接部23をボルト体60に当接させる際にはあてがい易い。加えて、第3当接部29にボルト体60を沿わせた状態で案内されるように支持具1を移動させることができるので、支持具1を上下動させ易い。
【0054】
更に、腕部24におけるボルト体60と対向する面24a及び第1当接部23は、ボルト体60の外面の雄ネジ61と係合しないよう平滑に形成されているので、上下方向の位置調整の際に、円滑に上下動させることができる。
【0055】
また、上方固定部21の下端に、下側ナット体50が下方から当接する下方側当接部28が設けられているので、係止凸部30による仮固定が振動等により外れたり、位置調整時に手を滑らせてしまっても、支持具1の落下を防止することができる。また、ナット体で本固定されているときには、支持具1を安定して支持することができる。
【0056】
加えて、上方固定部21に貫通孔25が形成され、その内面に第2当接部26が形成されているので、貫通孔25の外側の筒部分でボルト体60の径方向への横ずれによる外れを防止できる。
【0057】
ところで、上記実施形態の係止凸部30は、略直角三角形状で一定厚の薄板の小突片で形成されているが、本発明を実施する場合には、この形状に限られるものではなく、四角形状、扇形状等に形成してもよい。また、小突片の板厚は一定でなく、弾性変形し易くするために先端に向かうに従って薄肉に形成してもよい。但し、薄肉にしすぎると、係止凸部30全体の強度、剛性が小さくなって支持具1の支持力が低下し自重落下を招くことにもなり兼ねないので注意を要する。
【0058】
更に、係止凸部30は、貫通孔25の内面の第2当接部26の下端部から貫通孔25の内部空間内に水平方向に一対突設されているが、貫通孔25の内面からの突設位置は第2当接部26の下端部でなく、それより僅かに上方であったり上端部などに設けてもよく、その位置は問わない。加えて、係止凸部30は、一対のうちいずれか片側のみを設けてもよいし、3つ以上の小突片を貫通孔25の内面に沿って並設してもよい。あるいは、貫通孔25の内面に沿って三日月形などに突設してもよい。
【0059】
そして、係止凸部30は、第2当接部26が形成された側に設けられているが、ボルト体60を挟んで第2当接部26と反対側すなわち第3当接部29側にも設けてもよい。また、係止凸部30は、腕部24の面24a側に設けるのを妨げるものでもない。
【0060】
更に、上記実施形態の上方固定部21の下端に、下側ナット体50が下方から当接する下方側当接部28が形成されているが、下方側当接部28は下方突出部22の下端に形成してもよい。この場合は、特に、後述の天井からの吊り下げボルト体60に固定する際に有効である。但し、下方側当接部28を第1当接部23の下端に形成すると、上側ナット体51と下側ナット体50との間が離れすぎるので、安定支持の観点からは上方固定部21の下端に設けるのが望ましい。
【0061】
加えて、上記実施形態の支持部40は、第1抱持片42の係止突条43及び第2抱持片44の係止突条45とを係止させ、第1抱持片42及び第2抱持片44と基部10と支持台部41とで挟持する構成としているが、これに限られるものではなく、配線・配管材70を支持できればいかなる構成のものであってもよい。
また、支持部40は、ボルト体60の側方に設けられ、配線・配管材70はボルト体60の側方で支持しているが、ボルト体60の側方に限らず、ボルト体60端部の直下や直上で支持するものとしてもよい。
【0062】
そして、上方固定部21に設けられた第3当接部29は、連続して直線的に傾斜する傾斜面25aに形成されているが、連続する傾斜面でなくてもよいし、傾斜面25aは直線的でなく途中でく字状等に折れ曲がったものでもよい。この場合は、第3当接部29において支持具1を2段階の角度に傾斜させることができる。また、第3当接部29は設けないものとしてもよい。
【0063】
上記実施形態において、2つの腕部24の突出長は、第1当接部23にボルト体60を当接させた状態においてボルト体60の中心Oを越える同一の長さに形成されているが、互いに突出長は異なっていてもよいし、両方あるいはいずれか一方の腕部24は、ボルト体60の中心Oを越えない長さとすることを妨げるものではない。更には、腕部24は、いずれか片方のみでもよく、その場合は、腕部24に摺接させながら上下方向に移動させればよい。
【0064】
なお、配線・配管材70が支持された支持部40の荷重により、支持具1が自然に上方に移動することはないので、支持具1の落下を防止する下側ナット体50は取着する必要はあるものの、上側ナット体51は必ずしも取り付けを要するものではない。
【0065】
また、上記実施形態では、床面64に立設されたボルト体60に支持具1を設置する場合を例示したが、本発明は、天井面に垂下配置されたボルト体60に支持具1を設置する場合などにも同様に適用することができる。なお、天井面に垂下配置されたボルト体60に支持具1を設置する場合は、下側ナット体50はそれより下方から操作して取り付け、上下動させる。
【符号の説明】
【0066】
1 支持具 29 第3当接部
10 基部 30 係止凸部
20 固定部 40 支持部
21 上方固定部 50 下側ナット体
22 下方突出部 51 上側ナット体
23 第1当接部 60 ボルト体
24 腕部 61 雄ネジ
25 貫通孔 62 ネジ溝
26 第2当接部 70 配線・配管材
28 下方側当接部(ナット体当接部) O ボルト体の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11