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特開2024-64985アルミニウム電池に適用される負極構造
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  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図1A
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図1B
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図2
  • 特開-アルミニウム電池に適用される負極構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064985
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アルミニウム電池に適用される負極構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20240507BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M10/39 B
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023119528
(22)【出願日】2023-07-22
(31)【優先権主張番号】111140965
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】522466326
【氏名又は名称】亞福儲能股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】APh ePower Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】呉 瑞軒
(72)【発明者】
【氏名】蔡 施柏達
(72)【発明者】
【氏名】陳 韋安
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
【Fターム(参考)】
5H017CC05
5H017EE06
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH04
5H029AJ14
5H029AK07
5H029AL11
5H029DJ07
5H029DJ13
5H029EJ04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】容量劣化率の点でアルミニウム電池の性能を向上させ、生産のスケールアップを容易にする、アルミニウム電池に適用される負極構造を提供する。
【解決手段】アルミニウム電池100に適用される負極構造110は、多孔質材料層111と金属めっき層112とを含む。金属めっき層は多孔質材料層上に位置することで、アルミニウム電池の容量劣化率をサイクルあたり5%未満とする。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム電池に適用される負極構造であって、
多孔質材料層と、
前記多孔質材料層上に位置することで、前記アルミニウム電池の容量劣化率をサイクルあたり5%未満とする、金属めっき層とを含む、負極構造。
【請求項2】
前記多孔質材料層上の前記金属めっき層の重量は2mg/cmよりも大きい、請求項1に記載の負極構造。
【請求項3】
前記多孔質材料層上の前記金属めっき層の重量は100mg/cm未満である、請求項2に記載の負極構造。
【請求項4】
前記多孔質材料層の比表面積は100m/g~3000m/gの間である、請求項1に記載の負極構造。
【請求項5】
前記多孔質材料層の材料は、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズ系黒鉛炭素微小球、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の負極構造。
【請求項6】
前記金属めっき層はアルミニウム金属めっき層である、請求項1に記載の負極構造。
【請求項7】
前記金属めっき層は、イオン性液体により前記多孔質材料層上にめっきされる、請求項1に記載の負極構造。
【請求項8】
前記イオン性液体はアルミニウム塩系イオン性液体を含む、請求項7に記載の負極構造。
【請求項9】
前記金属めっき層は、前記アルミニウム電池の正極構造と前記多孔質材料層との間に位置する、請求項1に記載の負極構造。
【請求項10】
前記正極構造は層間材料を含む、請求項9に記載の負極構造。

















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電池に適用される負極構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学エネルギー貯蔵部材としてのアルミニウム電池は、良好な安全性及び低コストの利点がある。更に、アルミニウム電池の容量劣化率は負極のアルミニウム溶解反応の速度に影響され、アルミニウム溶解反応の速度は負極構造に密接に関連する。このため、容量劣化率の点でアルミニウム電池の性能を向上させる、より好ましい負極構造を如何にして設計するかが課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、容量劣化率の点でアルミニウム電池の性能を向上させ、生産のスケールアップを容易にする、アルミニウム電池に適用される負極構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、多孔質材料層と金属めっき層とを含む。金属めっき層は多孔質材料層上に位置することで、アルミニウム電池の容量劣化率をサイクルあたり5%未満とする。
【0005】
本発明の1つの実施形態において、多孔質材料層上の金属めっき層の重量は2mg/cmよりも大きい。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、多孔質材料層上の金属めっき層の重量は100mg/cm未満である。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、多孔質材料層の比表面積は100m/g~3000m/gの間である。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、多孔質材料層の材料は、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズ系黒鉛炭素微小球、又はそれらの組合せを含む。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、金属めっき層はアルミニウム金属めっき層である。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、金属めっき層は、イオン性液体により多孔質材料層上にめっきされる。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、イオン性液体はアルミニウム塩系イオン性液体を含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、金属めっき層は、アルミニウム電池の正極構造と多孔質材料層との間に位置する。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、正極構造は層間材料を含む。
【発明の効果】
【0014】
上記に基づき、アルミニウム電池に適用される本発明の負極構造は、多孔質材料層と金属めっき層の複合電極設計を用いることにより、負極構造の表面上の反応場の数を増加させることができ、これにより、容量劣化率(サイクルあたり5%未満)の点でアルミニウム電池の性能を向上させ、生産のスケールアップを容易にする。
【0015】
本発明の上述した特徴及び利点をより明確且つ理解しやすくするため、以下に実施形態を示し、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明の1つの実施形態による、アルミニウム電池に適用される負極構造の概略図である。
図1B】多孔質材料層上の異なる重量の金属めっき層の容量劣化率のデータ図である。
図2】本発明の1つの実施形態による負極構造の製造の概略図である。
図3】本発明の1つの実施形態による、アルミニウム電池に適用される負極構造の試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これら実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されない。本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0018】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態を詳細に説明するが、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、ここで説明する実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。図面において、明確化のため、様々な領域、部分、層のサイズ及び厚さは実際の縮尺どおりに図示されていない場合がある。理解を容易にするため、以下の説明では同一の要素には同一の符号を付して説明する。
【0019】
ここで用いられる方向に関する用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上、下)は、参照として図示されているのみであり、絶対的な方向を示唆することを意図していない。
【0020】
別段の定義がない限り、ここで用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されものと同じ意味を有する。
【0021】
図1Aは、本発明の1つの実施形態による、アルミニウム電池に適用される負極構造の概略図である。図1Bは、多孔質材料層上の異なる重量の金属めっき層の容量劣化率のデータ図である。図2は、本発明の1つの実施形態による負極構造の製造の概略図である。図3は、本発明の1つの実施形態による、アルミニウム電池に適用される負極構造の試験の概略図である。
【0022】
図1A図1B図2図3を参照し、本実施形態において、アルミニウム電池100に適用される負極構造110は、多孔質材料層111と金属めっき層112とを含む。金属めっき層112は多孔質材料層111上に位置し、アルミニウム電池の容量劣化率はサイクルあたり5%未満である。従って、本実施形態のアルミニウム電池100に適用される負極構造110は、多孔質材料層111と金属めっき層112の複合電極設計を用いることにより、負極構造110の表面上の反応場の数を増加させることができ、これにより、容量劣化率の点でアルミニウム電池100の性能(サイクルあたり5%未満)を向上させ、生産のスケールアップを容易にする。
【0023】
いくつかの実施形態において、多孔質材料層111は高比表面積材料であってよい。多孔質材料層111の比表面積は、例えば、100m/g~3000m/gの間である。多孔質材料層111が孔構造及び高比表面積といった特徴を有し、金属めっき層112が多孔質材料層111上に被覆されることから、活物質は酸化還元電気化学反応をより効率的に行うことができるが、本発明はこれに限定されない。
【0024】
いくつかの実施形態において、多孔質材料層111の材料は、活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェーズ系黒鉛炭素微小球、又はそれらの組合せを含み、金属めっき層112はアルミニウム金属めっき層であるが、本発明はこれに限定されない。多孔質材料層111には他の適切な非炭素系孔材料が用いられてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、図2に示すように、金属めっき層112はイオン性液体103により多孔質材料層111上にめっきされてよい。更に、金属めっき層112がアルミニウム金属めっき層である場合、イオン性液体103はアルミニウム塩イオン性液体を含んでよく、電流Aが多孔質材料層111へ流れるとき、式(1):4AlCl +3e→Al+7AlCl の反応を介してイオン10(AlCl )がイオン20(AlCl )に変換され、均一なアルミニウム金属めっき層がアルミニウム塩イオン性液体により多孔質材料層111上にめっきされる。ここで、アルミニウム金属を多孔質材料層111上にめっきさせるため、多孔質材料層111が電解めっき装置のカソードに設けられてよく、アルミ箔101が電解めっき装置のアノードに設けられてよいが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
いくつかの実施形態において、金属めっき層112は、アルミニウム電池100の正極構造120と多孔質材料層111との間に位置してよく、電解液130が正極構造120と負極構造110との間に提供される。正極構造120と電解液130は、実際の設計要件に応じて選択されてよく、本発明により限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、多孔質材料層111上の金属めっき層112の重量は2mg/cmよりも重く、多孔質材料層111上の金属めっき層112の重量は100mg/cm未満である。例えば、図1Bに示すように、金属めっき層112がアルミニウム金属めっき層であり、アルミニウムめっきの量が0mg/cmである(即ち、金属めっき層112が形成されていない)とき、アルミニウム電池の容量劣化率はサイクルあたり5%であり、アルミニウムめっきの量が4.27mg/cmであるとき、アルミニウム電池の容量劣化率はサイクルあたり1%(サイクルあたり5%未満)である。アルミニウムめっきの量が8.54mg/cm及び14.93mg/cmであるとき、アルミニウム電池の容量劣化率はサイクルあたり0%(サイクルあたり5%未満)である。つまり、容量劣化率の改善の度合いは、多孔質材料層111上の金属めっき層112の重量と正の相関がある。
【0028】
ここで、図1Bのアルミニウム電池の正極構造はグラファイト構造を用い、電解液はクロロアルミン酸イオン性液体を用い、他の説明していない組成及び仕様は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれる内容に基づいて当業者によって得られるはずである。加えて、図1Bの実験データは図3の試験装置により得られる。図3の試験装置は、試験を行うため、固定部材102(例えば、スライドガラス)によってアルミニウム電池100の負極構造110、正極構造120、及び電解液130の間の間隔を固定してよく、負極構造110と正極構造120の位置を固定してよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、正極構造120が層間材料であり、電解液130がハロゲン化アルミニウム及び塩化イミダゾール塩であり、金属めっき層112がアルミニウム金属めっき層であるとき、放電サイクルの間に負極構造体110の表面で大量のアルミニウム溶解反応が起こる。金属Mは、式(2):Al+7AlCl →4AlCl +3eの反応によってイオン20(AlCl )をイオン10(AlCl )に変換し、このため、アルミニウム電池の負極として炭素系材料のみが使用され、表面にアルミニウム源が存在せず、遅いアルミニウムの溶解反応及び正極の活物質の不完全な層間剥離をもたらし得ることにより引き起こされる容量低下の問題を大幅に改善することができる。つまり、高比表面積を有する多孔質材料層111と金属めっき層112の複合電極設計を用いることにより、負極構造110のアルミニウム溶解の量が増加することで、正極構造120から剥離したイオン20(AlCl )と反応してイオン10(AlCl )を形成する。その結果、正極構造120の層間隔中のイオン20(AlCl )は剥離されて実質的に層間隔中に残留せず、これにより、アルミニウムの溶解速度が正極の剥離速度未満の場合に層間隔中に過剰な活物質が残留して次の充電サイクルの間に正極に介在する活物質の数に影響し、電気が次第に減衰する問題を改善する。即ち、後続の充放電サイクルの間に介在する活物質の数は変化なく維持され、これにより容量劣化を効果的に改善することができる。
【0030】
まとめると、本発明のアルミニウム電池に適用される負極構造は、多孔質材料層と金属めっき層の複合電極設計を用いることにより、負極構造の表面上の反応場の数を増加させることができ、これにより、容量劣化率の点でアルミニウム電池の性能を向上させ(サイクルあたり5%未満)、生産のスケールアップを容易にする。
【0031】
上記で実施形態を参照して本発明を説明したが、これら実施形態は本発明を限定することを意図していない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、いくつかの変更及び改変を行うことが可能である。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の負極構造は、アルミニウム電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10、20:イオン
101:アルミ箔
102:固定部材
103:イオン性液体
100:アルミニウム電池
110:負極構造
111:多孔質材料層
112:金属めっき層
120:正極構造
130:電解液
A:電流
M:金属
図1A
図1B
図2
図3
【外国語明細書】