(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064992
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】変位センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125444
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022173539
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】小幡 孝義
(72)【発明者】
【氏名】大内 友貴
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BD11
2F063CA06
2F063CA09
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD06
2F063EC02
2F063EC05
2F063EC07
2F063EC08
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC17
2F063EC18
2F063EC20
(57)【要約】
【課題】変位センサの湾曲を抑制し、センサの特性が変化することを抑制する。
【解決手段】変位センサ10は、ベース材20及びセンサシート30を備えるセンサ部SDと、第1カバーシート50と、を備えている。ベース材20は、板状である。センサシート30は、ベース材20の第1主面20A上に配置されている。センサシート30は、ベース材20の変位量を計測可能である。第1カバーシート50は、センサシート30に対してベース材20とは反対側に配置されている。第1カバーシート50は、着脱可能である。第1カバーシート50の弾性率は、ベース材20の弾性率に対して大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、
前記センサシートに対して前記ベース材とは反対側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、
を備え、
前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい
変位センサ。
【請求項2】
前記第1カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記センサシートは、伸長した状態で前記ベース材に取り付けられている
請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記センサ部は、前記センサシートと前記第1カバーシートとの間に位置する保護シートをさらに備える
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記ベース材の前記第1主面とは反対の第2主面側に着脱可能に配置された第2カバーシートをさらに備え、
前記第2カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい
請求項1に記載の変位センサ。
【請求項6】
前記第2カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい
請求項5に記載の変位センサ。
【請求項7】
第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、
前記ベース材の前記第1主面とは反対の第2主面側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、
を備え、
前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい
変位センサ。
【請求項8】
前記第1カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい
請求項7に記載の変位センサ。
【請求項9】
前記第1主面の法線方向から平面視したときに、前記第1カバーシートは前記センサシートの全域を覆っている
請求項1~8のいずれか一項に記載の変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のひずみセンサは、板状のベース板と、フィルム状のセンサ素子とを有している。センサ素子は、ベース板の一方の主面に積層されている。センサ素子は、第1保護膜、第1電極、圧電フィルム、第2電極、及び第2保護膜を有している。センサ素子は、これらの部材が上述の順番に積層された構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなひずみセンサを保管する際、当該ひずみセンサが湾曲した状態で保管されることもある。このようにひずみセンサが湾曲すると、その湾曲の一部がセンサシートの不可逆的な湾曲として残存することがある。この場合、センサシートの特性が変化することになるので、ひずみセンサの検出精度に悪影響を及ぼすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、前記センサシートに対して前記ベース材とは反対側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、を備え、前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい変位センサである。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明は、第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、前記ベース材の前記第1主面とは反対の第2主面側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、を備え、前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい変位センサである。
【0007】
上記構成によれば、カバーシートは、ベース材よりも変形しにくい。そのため、カバーシートがセンサ部に配置されていることにより、ベース材の湾曲を抑制できる。すなわち、ベース材の第1主面に位置するセンサシートの湾曲を抑制できる。その結果、変位センサの保管時等に、センサ特性が変化してしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
変位センサの湾曲を抑制し、センサの特性が変化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の変位センサの平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における引張試験を説明する図である。
【
図4】
図4は、比較例となる変位センサの湾曲の様態を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における変位センサ及び比較例となる変位センサを保管したときの抵抗値の変化を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変位センサの断面図である。
【
図7】
図7は、変更例の変位センサの断面図である。
【
図8】
図8は、変更例の変位センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、変位センサの第1実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。
【0011】
<全体構成について>
図1に示すように、変位センサ10は、センサ部SDと、端子100と、を備えている。また、
図2に示すように、変位センサ10は、第1カバーシート50と、接着シート90と、を備えている。
【0012】
図2に示すように、センサ部SDは、ベース材20と、センサシート30と、保護シート40と、を備えている。
ベース材20は、板状である。ベース材20は、第1主面20Aと、第1主面20Aと反対側の第2主面20Bとを有している。
図1に示すように、第1主面20Aの法線方向からベース材20を視たとき、第1主面20Aは、全体として略長方形状である。ベース材20の材質は、例えば、ゴムスポンジなどの軟質発泡材料である。ベース材20の第1主面20Aから第2主面20Bまでの最小寸法、すなわちベース材20の厚みは、数mm程度である。
【0013】
なお、以下の説明では、
図2に示すように、第1主面20Aの法線方向に沿う軸を第1軸Xとする。また、
図1に示すように、第1主面20Aの長辺に平行な軸を第2軸Yとする。さらに、第1主面20Aの短辺に平行な軸を第3軸Zとする。そして、
図2に示すように、第1軸Xに沿う方向のうちの第1主面20Aが向く方向を第1正方向X1とし、第2主面20Bが向く方向を第1負方向X2とする。
【0014】
図2に示すように、センサシート30は、全体として板状である。センサシート30は、ベース材20の第1主面20A上に配置されている。センサシート30は、ベース材20に固定されている。
【0015】
図1に示すように、センサシート30は、基材31と、5つのセンサ素子32と、を備えている。
基材31は、板状である。基材31の材質は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂である。具体的な基材31の材質は、例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等である。基材31の第1軸Xに沿う方向の寸法、すなわち、基材31の厚さは、例えば約40μmである。
【0016】
図2に示すように、基材31は、ベース材20の第1主面20A上に直接積層されている。また、基材31は、ベース材20の第1主面20Aに取り付けられている。したがって、基材31は、ベース材20に対して取り外しが不可能である。なお、ここでいう「取り外しが不可能」とは、センサシート30又はベース材20の破損を伴うことなく基材31をベース材20から取り外すことが困難であることをいう。
【0017】
図1に示すように、第1負方向X2を向いて基材31を視たとき、基材31は、略長方形状である。基材31の長辺は、第2軸Yに平行である。基材31の短辺は、第3軸Zに平行である。基材31の長辺は、ベース材20の長辺よりも短くなっている。また、基材31の短辺は、ベース材20の短辺よりも短くなっている。また、第1負方向X2を向いて視たときに、基材31の全域は、ベース材20の範囲内に収まっている。具体的には、基材31の幾何中心と、ベース材20の幾何中心とは一致している。基材31は、ベース材20の湾曲に従ってベース材20と共に湾曲可能である。
【0018】
図1に示すように、各センサ素子32は、線状である。各センサ素子32の材質は、当該センサ素子32の伸縮に対する抵抗値の変化が大きい電導体である。具体的には、各センサ素子32の材質は、例えば、銀、銅等の金属粉とシリコーン等のエラストマー系樹脂との混合物である。
【0019】
図2に示すように、各センサ素子32の一部は、基材31の第1正方向X1側の面に直接取り付けられている。また、センサ素子32は、基材31に対して取り外し不可能である。なお、
図2において、5つのセンサ素子32を簡略化して1つ部材として図示している。
【0020】
図1に示すように、各センサ素子32の第1端は、端子100に接続している。そして、各センサ素子32を第1端から辿っていくと、第1端から基材31上に至り、基材31上で第2軸Yに平行に延び、途中で180度折り返され、再び第2軸Yに平行に延びている。そして、センサ素子32の第2端は、端子100に接続している。
【0021】
図1に示すように、5つのセンサ素子32は、いずれも検知部32Aを有している。検知部32Aは、センサ素子32のうち、上述の基材31上で折り返し部分を含めた第2軸Yに平行に延びる部分である。5つのセンサ素子32の検知部32Aは、互いに平行に並列している。すなわち、5つのセンサ素子32の検知部32Aは、第3軸Zに沿う方向に並んでいる。また、センサ素子32の検知部32Aは、等間隔毎に配置されている。各センサ素子32は、基材31の湾曲に従って基材31と共に湾曲可能である。
【0022】
センサ素子32は、検知部32Aが湾曲することに伴ってその長さが変化することにより抵抗値が変化する。センサ素子32は、当該抵抗値の変化を検出することにより、被測定物の湾曲の大きさを測定可能である。すなわち、センサ素子32は、歪みを検出できる素子である。例えば、センサ素子32は、外部から力が作用していない状態では、直線状である。そして、センサ素子32は、外部から力が作用することにより湾曲する。また、上述したように、センサ素子32は基材31の湾曲に追従して湾曲する。そして、基材31は、ベース材20の湾曲に追従して湾曲する。そのため、各センサ素子32は、ベース材20の湾曲の程度を変位量として計測可能である。
【0023】
端子100は、外部機器500と接続可能である。外部機器500は、多軸ケーブルを介して端子100に接続している。外部機器500は、端子100を介して各センサ素子32に所定の電圧を印加する。また、外部機器500は、各センサ素子32に電圧を印加したときの各センサ素子32の電流値を測定する。外部機器500は、測定した各センサ素子32の電流値に基づいて、各センサ素子32の抵抗値を測定する。
【0024】
図2に示すように保護シート40は、板状である。保護シート40の材質は、伸縮性を有する合成樹脂からなる。本実施形態において、保護シート40の材質は、基材31の材質と同じである。
【0025】
保護シート40は、センサシート30の第1正方向X1側の面、及びベース材20の第1正方向X1側の面に直接配置されている。保護シート40は、センサシート30と、後述の第1カバーシート50との間に位置している。保護シート40は、センサシート30の第1正方向X1側の面、及びベース材20の第1正方向X1側の面に、取り付けられている。したがって、保護シート40は、センサシート30及びベース材20に対して取り外し不可能である。
【0026】
図1に示すように、第1負方向X2を向いて保護シート40を視たとき、保護シート40は略長方形状である。保護シート40の長辺は、基材31の長辺よりも長い。また、保護シート40の短辺は、基材31の短辺よりも長い。そして、第1負方向X2を向いて平面視したとき、保護シート40は、センサシート30の全域を覆っている。なお、保護シート40の長辺は、ベース材20の長辺よりも短くなっている。また、保護シート40の短辺は、ベース材20の短辺よりも短くなっている。そのため、保護シート40は、ベース材20の範囲内に収まっている。保護シート40の幾何中心と、ベース材20の幾何中心とは一致している。保護シート40は、センサシート30の湾曲に従ってセンサシート30と共に湾曲可能である。保護シート40の第1軸Xに沿う方向の寸法、すなわち保護シート40の厚さは、例えば約20μmである。
【0027】
図2に示すように、接着シート90は、板状である。接着シート90は、ベース材20の第2主面20Bに直接張り付けられている。図示は省略するが、第1正方向X1を向いて接着シート90を視たとき、接着シート90は略長方形状である。接着シート90の長辺は、ベース材20の長辺よりも短くなっている。また、接着シート90の短辺は、ベース材20の短辺よりも短くなっている。そのため、接着シート90は、ベース材20の範囲内に収まっている。接着シート90の幾何中心と、ベース材20の幾何中心とは一致している。接着シート90は、センサシート30の湾曲に従ってセンサシート30と共に湾曲可能である。なお、接着シート90の厚さは、他のシートの厚さと比較して非常に薄くなっている。接着シート90の第1負方向X2側の面は、他の物体に対する接着性を有している。また、接着シート90の接着力は、変位センサ10の測定対象に張り付けた後、再び取り外すことのできる程度の接着力になっている。
【0028】
図2に示すように、第1カバーシート50は、板状である。第1カバーシート50は、保護シート40の第1正方向X1側の面に直接積層されている。すなわち、第1カバーシート50は、センサシート30に対してベース材20とは反対側に配置されている。
【0029】
図1に示すように、第1負方向X2を向いて第1カバーシート50を視たとき、第1カバーシート50は略長方形状である。第1負方向X2を向いて平面視したとき、第1カバーシート50は、保護シート40と略同じ寸法、且つ略同じ形状である。そして、第1負方向X2を向いて平面視したとき、第1カバーシート50は、センサシート30の全域を覆っている。第1カバーシート50の第1軸Xに沿う方向の寸法、すなわち、第1カバーシート50の厚さは、例えば0.1mm以下である。
【0030】
第1カバーシート50の保護シート40に対する接着力は、保護シート40のベース材20及びセンサシート30に対する接着力に対して十分に小さくなっている。具体的には、第1カバーシート50は、静電気により保護シート40に接着している。そのため、第1カバーシート50は、手指の力等で保護シート40から簡単に取り外し可能であり、且つ取り外した後に再び保護シート40に取り付けることが可能である。すなわち、第1カバーシート50は、保護シート40に対して着脱可能である。第1カバーシート50の材質は、非伸縮性の合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートである。
【0031】
<弾性率について>
第1カバーシート50の弾性率は、センサ部SDの弾性率より大きくなっている。すなわち、第1カバーシート50の弾性率は、ベース材20の弾性率、センサシート30の弾性率、保護シート40の弾性率より大きい。つまり、第1カバーシート50は、センサ部SD、に比べて硬質である。なお、接着シート90の弾性率は、第1カバーシート50弾性率、センサシート30の弾性率、保護シート40の弾性率、及びベース材20の弾性率のいずれに対しても小さくなっている。
【0032】
なお、上記各部材の弾性率の関係は、以下の引張試験により確認できる。
図3に示すように、センサ部SDにおける第2軸Yに沿う方向の一端を第1クランプ71に固定する。また、同様に、センサ部SDの第2軸Yに沿う方向の他端を別の第2クランプ72に固定する。このとき、第1クランプ71及び第2クランプ72がベース材20、保護シート40、基材31及びセンサ素子32のすべてを挟み込むことができるように第1クランプ71及び第2クランプ72とセンサ部SDとを位置合わせする。
【0033】
また、第2クランプ72にフォースゲージ73を取り付ける。そして、この状態で、フォースゲージ73を、第2軸Yに沿って第1クランプ71から遠ざかる方向に引っ張るこのとき、フォースゲージ73が検出する引っ張り荷重が特定の一定値になるようにする。そして、このようにしてセンサ部SDに一定値の引っ張り荷重をかけたときの、センサシート30の第2軸Yに平行な方向の伸び量を測定する。この測定により、ベース材20とセンサシート30と保護シート40とを含むセンサ部SDの伸び量を測定することができる。一定値の引っ張り荷重をかけたときのセンサ部SDの伸び量は、ベース材20単体での伸び量よりも小さく、センサシート30単体での伸び量よりも小さく、保護シート単体での伸び量よりも小さい。
【0034】
上記の引張試験と同様にして、センサ部SDの伸び量だけでなく、ベース材20の伸び量、第1カバーシート50の伸び量を測定する。
ベース材20の伸び量は、第1クランプ71及び第2クランプ72がベース材20の端部のみを挟み、センサシート30と保護シート40とを挟み込なまない位置に第1クランプ71及び第2クランプ72とを位置合わせすることにより、測定可能である。保護シート40がベース材20の第1主面20A全体を覆っている場合は、保護シート40の一部を削り、削った部分に第1クランプ71と第2クランプ72とを位置合わせしてもよい。
【0035】
そして、これら各部材の伸び量の大小関係により、どちらの部材の弾性率が大きいかが確認できる。例えば、第1カバーシート50の伸び量が、センサ部SDの伸び量に比べて小さい場合、第1カバーシート50の弾性率がセンサ部SDの弾性率に対して大きいといえる。そして、センサ部SDの伸び量はベース材20単体での伸び量より小さく、センサシート30単体の伸び量よりも小さく、保護シート40の伸び量よりも小さい。そのため、第1カバーシート50の弾性率は、ベース材20の弾性率より大きく、センサシート30の弾性率よりも大きく、保護シート40よりも大きいといえる。
【0036】
<第1実施形態の作用について>
変位センサ10の使用時には、ユーザは、先ず、第1カバーシート50を取り外す。そして、ベース材20の第2主面20B側を測定対象に向けて、接着シート90の接着力により、変位センサ10を張り付ける。測定対象は、例えば、被験者の首等の身体の一部である。第1カバーシート50を取り外した変位センサ10は、全体として測定対象の形状に合わせて湾曲する。
【0037】
そして、測定後、変位センサ10は、測定対象から取り外される。ここで、仮に、第1カバーシート50を保護シート40上に取り付けずに、変位センサ10を保管したとする。この場合、測定時の変位センサ10の湾曲が、センサシート30の不可逆的な湾曲として残存することがある。
【0038】
変位センサ10を製造するにあたっては、ベース材20及びセンサシート30にしわなどが発生しないように、これらベース材20及びセンサシート30に一定の張力を与えつつ、ベース材20の第1主面20Aにセンサシート30を取り付ける。
【0039】
このようにして製造する場合、ベース材20に比較してセンサシート30が伸長した状態でベース材20の第1主面20Aに取り付けられる。したがって、
図4に示すように、ベース材20の第1主面20A側においては、第2主面20B側に比べて、より縮もうとする力が強い。その結果、変位センサ10は全体として、第1負方向X2側に凸となるように湾曲する可能性が高い。なお、上述した湾曲の様態は一例であり、変位センサ10が保管されている外部環境によっては、異なる様態で変位センサ10が湾曲することもある。
【0040】
<抵抗値の変化試験>
上記実施形態の変位センサ10に関して、第1カバーシート50を取り付けずに保管した変位センサ10と、第1カバーシート50を取り付けて保管した変位センサ10を用意した。このとき、上記2つのサンプルの保管環境が同じになるように8日間保管した。そして、上記の各サンプルについて、1日毎に、センサシート30のセンサ素子32の抵抗値を測定した。
【0041】
図5のグラフにおいて実線で示すように、第1カバーシート50を取り付けずに保管した変位センサ10の場合、保管期間が長くなるにつれて、センサ素子32の抵抗値が増加する傾向がみられた。特に、8日間保管した後のセンサ素子32の抵抗値は、試験開始時のセンサ素子32の抵抗値の2倍以上であった。その一方で、
図5のグラフにおいて一点鎖線で示すように、第1カバーシート50を取り付けて保管した変位センサ10の場合、保管期間が長くなっても、センサ素子32の抵抗値はほぼ変化しなかった。
【0042】
<第1実施形態の効果>
(1-1)上記実施形態では、第1カバーシート50の方がベース材20に対して弾性率が大きい。すなわち、第1カバーシート50は、ベース材20よりも変形しにくい。したがって、第1カバーシート50は、ベース材20の湾曲を抑制できる。すなわち、ベース材20の第1主面20A上に位置する、センサシート30の湾曲も抑制できる。その結果、変位センサ10の保管時に、ベース材20及びセンサシート30が湾曲して、センサ特性が変化してしまうことを抑制できる。なお、第1カバーシート50は着脱可能であるので、変位センサ10の使用時には取り外せる。したがって、第1カバーシート50が変位センサ10の使用の妨げとなることは防げる。
【0043】
(1-2)上記実施形態では、第1カバーシート50の方が、センサ部SDに対して弾性率が大きい。すなわち、第1カバーシート50は、センサ部SDよりも変形しにくい。このような弾性率の大小関係によれば、センサシート30の湾曲をより確実に抑制できる。
【0044】
(1-3)上記実施形態において、センサシート30は伸張した状態でベース材20に配置されている。これにより、変位センサ10は、第1正方向X1側が凹となり、第1負方向X2側が凸となるように湾曲する可能性が高い。このような場合に、ベース材20とは反対側、すなわち湾曲の凹側に硬質な第1カバーシート50が存在していると、変位センサ10の湾曲を効果的に抑制できる。
【0045】
(1-4)上記実施形態では、第1主面20Aの法線方向から平面視したときに、第1カバーシート50はセンサシート30の全域を覆っている。そのため、第1カバーシート50は、センサシート30の全域において、当該センサシート30の湾曲を抑制できる。
【0046】
(1-5)上記実施形態では、センサシート30と第1カバーシート50との間に、保護シート40が位置している。したがって、第1カバーシート50を外して変位センサ10を使用した場合においても、センサシート30が他の部材に直接接触することを防止できる。
【0047】
(1-6)上記実施形態では、第1カバーシート50の弾性率は、保護シート40の弾性率よりも大きい。すなわち、第1カバーシート50は、保護シート40よりも硬質である。この構成によれば、第1カバーシート50の存在により、保護シート40の塑性変形を抑制できる。
【0048】
上記構成によれば、第1カバーシート50を保護シート40から剥がす際に第1カバーシート50が変形しにくいので、第1カバーシート50を保護シート40から剥がしやすい。仮に、第1カバーシート50の弾性率が、保護シート40の弾性率よりも小さいとする。この場合、第1カバーシート50を保護シート40から剥がす際に、第1カバーシート50の動きに保護シート40が連動して、第1カバーシート50ごと保護シート40が当該保護シート40の表面に対して平行な方向に引っ張られることがある。このように、保護シート40に対して平行な方向の引っ張り荷重がかかると、保護シート40が伸びて変形するおそれがある。一方で、本実施形態では、第1カバーシート50の弾性率は、保護シート40の弾性率よりも大きいため、保護シート40に対する角度が例えば90度以下の状態で、第1カバーシート50を剥がすことができる。このとき、保護シート40は、当該保護シート40の表面に対して略鉛直方向に引っ張られることになる。しかしながら、保護シート40は、センサシート30及びベース材20に積層して取り付けられているため、保護シート40の鉛直方向の変形は抑制される。したがって、上記構成によれば、保護シート40の変形を抑制しつつ、第1カバーシート50を保護シート40から剥がすことができる。
【0049】
(1-7)上記実施形態では、変位センサ10の使用時には、第1カバーシート50は取り外される。そのため、変位センサ10を使用して変位を測定する際に、第1カバーシート50の硬さによる影響を受けずに測定可能である。そして、保護シート40が残った状態であっても、当該保護シート40は第1カバーシート50よりも柔らかいので、保護シート40がセンサシート30の変位を過度に阻害しにくい。
【0050】
(第2実施形態)
以下、変位センサの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の変位センサ10において、センサ部SD及び第1カバーシート50の構成は上記実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と異なる構成について記載する。
【0051】
<第2カバーシートについて>
図6に示すように、変位センサ10は、第1実施形態の変位センサ10の第1カバーシート50に加え、さらに第2カバーシート60を備えている。
【0052】
第2カバーシート60は、板状である。第2カバーシート60の材質は、第1カバーシート50の材質と同じである。第2カバーシート60は、接着シート90を介してベース材20に対して第1主面20Aとは反対の第2主面20B側に配置されている。第1正方向X1側を向いて視たとき、第2カバーシート60は、ベース材20と同じ略長方形状である。第2カバーシート60は、ベース材20の全域を覆っている。第2カバーシート60の厚みは、第1カバーシート50の厚みと同じであり、例えば0.1mm以下である。
【0053】
第2カバーシート60は、接着シート90を介してベース材20の第2主面20Bに接着している。上述したとおり、接着シート90の接着力は、測定対象に対して着脱可能な程度の接着力である。そのため、第2カバーシート60は、手指の力等でベース材20から簡単に取り外し可能であり、且つ再び接着シート90を介してベース材20に取り付け可能である。すなわち、第2カバーシート60は、ベース材20に対して着脱可能である。
【0054】
<弾性率について>
第2カバーシート60の弾性率は、センサ部SDの弾性率よりも大きい。すなわち、第2カバーシート60の弾性率は、センサシート30の弾性率、保護シート40の弾性率、及びベース材20の弾性率に比較して、大きくなっている。つまり、第2カバーシート60は、センサシート30、保護シート40、及びベース材20に比べて硬質である。また、第2カバーシート60の弾性率は、第1カバーシート50の弾性率と同じである。なお、接着シート90の弾性率は、第2カバーシート60弾性率、センサシート30の弾性率、保護シート40の弾性率、及びベース材20の弾性率のいずれに対しても小さくなっている。
【0055】
<第2実施形態の作用について>
センサシート30は、伸長した状態でベース材20に取り付けられている。また、第2実施形態では、センサシート30は、保護シート40に伸長した状態で取り付けられている。このように、センサシート30が、第1負方向X2側のベース材20、及び第1正方向X1側の保護シート40の双方に対して伸長した状態であると、センサシート30の湾曲の向きが均一化しにくい。すなわち、第2実施形態のセンサシート30は、第1負方向X2側に凸となるように湾曲したり、第1正方向X1側に凸となるように湾曲したり、全体的に波打つように湾曲したり、様々な態様で湾曲する。
【0056】
<第2実施形態の効果>
(2-1)第2実施形態において、ベース材20の第2主面20B側には第2カバーシート60が配置されている。そして、第2カバーシート60の弾性率は、ベース材20の弾性率に対して大きい。したがって、第2カバーシート60の存在により、ベース材20が湾曲することを抑制できる。すなわち、ベース材20の第1主面20A上に位置するセンサシート30が湾曲することも抑制できる。また、ベース材20の第1主面20A側の第1カバーシート50に加えて、その反対側に第2カバーシート60を設けることで、変位センサ10がどのような態様で湾曲しようとしても、その湾曲を効果的に抑制できる。
【0057】
(2-2)上記実施形態では、第2カバーシート60の方が、センサ部SDに対して弾性率が大きい。すなわち、第2カバーシート60は、センサ部SDよりも変形しにくい。このような弾性率の大小関係によれば、センサシート30の湾曲をより確実に抑制できる。
【0058】
(2-3)上記第2実施形態において、第2カバーシート60は、接着シート90の第1負方向X2側を向く面に取り付けられている。したがって、第2カバーシート60は、変位センサ10の保管中に接着シート90に埃等が付着することを防ぐ防汚シートとしても機能する。
【0059】
<変更例>
上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
・上記実施形態において、ベース材20の形状、厚み、及び材質は上記実施形態の例に限定されない。また、上記実施形態において、ベース材20の弾性率が、第1カバーシート50及び第2カバーシート60の弾性率に対して小さければ、ベース材20の形状、厚み、及び材質は上記実施形態の例に限定されない。
【0061】
・上記実施形態において、基材31の形状、厚み、及び材質は、上記実施形態の例に限定されない。また、上記実施形態において、センサシート30の弾性率が、第1カバーシート50及び第2カバーシート60の弾性率に対して小さければ、基材31の形状、厚み、及び材質は上記実施形態の例に限定されない。
【0062】
・上記実施形態において、センサ素子32は抵抗値によって変位量を計測するものに限らず、ポリ乳酸を用いた圧電シートなど、出力する電圧値の変化で変位量を計測するもので代用してもよい。
【0063】
・上記実施形態において、センサ素子32は、少なくとも1つあれば、その数は問わない。すなわち、センサ素子32の数は、1~4つでもよいし、6つ以上あってもよい。
・上記実施形態において、センサシート30は、歪みの大きさを測定可能であれば、その具体的な構成は上記実施形態の例に限定されない。例えば、センサシート30は、一対の電極とその間に位置する誘電層とを有しており、静電容量の変化を検出することで歪みの大きさを測定する静電容量型のセンサでもよい。また、センサシート30は、光やカメラ等で歪みの大きさを検出するものでもよい。また、センサシート30は、圧電フィルムによって構成されていてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、変位センサ10において、第1負方向X2側からベース材20、センサシート30、第1カバーシート50の順に積層されていれば、これらの部材の間に別の層が配置されていてもよい。例えば、ベース材20とセンサシート30との間に、別のシートが位置していてもよい。
【0065】
・上記実施形態において、保護シート40の形状、厚み、及び材質は、上記実施形態の例に限定されない。また、上記実施形態において、保護シート40の弾性率が、第1カバーシート50及び第2カバーシート60の弾性率に対して小さければ、保護シート40の形状、厚み、及び材質は上記実施形態の例に限定されない。
【0066】
・上記実施形態において、保護シート40は、省略可能である。
・上記実施形態において、接着シート90は、省略可能である。その場合、例えば、変位センサ10において測定対象と接触する面に、両面接着可能なテープ等を張り付ければよい。
【0067】
・上記実施形態において、第1カバーシート50の形状、厚み、及び材質は、上記実施形態の例に限定されない。また、上記実施形態において、第1カバーシート50の弾性率が、ベース材20弾性率に対して大きければ、第1カバーシート50の形状、厚み、及び材質は上記実施形態の例に限定されない。この点、第2カバーシート60も同様である。
【0068】
・上記実施形態において、各部材の弾性率は、上記実施形態の例と異なる方法で確認してもよい。例えば、ベース材20は、ISO1798:2008、ISO8067:2008に基づいて試験をして弾性率を確認してもよい。また、センサ部SDは、ISO37:2011に基づいて試験をして弾性率を確認してもよい。また、第1カバーシート50及び第2カバーシート60は、ISO527-1:2012に基づいて試験をして弾性率を確認してもよい。
【0069】
・第2実施形態において、第1カバーシート50の材質と、第2カバーシート60の材質とが異なっていてもよい。また、第1カバーシート50の弾性率と第2カバーシート60の弾性率とが異なっていてもよい。
【0070】
・第2実施形態において、第1カバーシート50は省略可能である。例えば、
図7に示す例では、変位センサ10は、ベース材20、センサシート30、及び保護シート40を含むセンサ部SDと、接着シート90と、第2カバーシート60を備えている。そして、ベース材20の第1主面20A側には、順にセンサシート30の基材31、センサ素子32、保護シート40が積層されている。また、第2主面20B側には、順に接着シート90、第2カバーシート60が積層されている。第2カバーシート60の弾性率は、ベース材20の弾性率に対して大きくなっている。
【0071】
図7に示す例において、第2カバーシート60は、ベース材20の湾曲を抑制できる。したがって、ベース材20と共に湾曲するセンサシート30の湾曲を抑制できる。また、
図7に示す例においても、保護シート40及び接着シート90は省略可能である。
【0072】
・各実施形態において、センサシート30が伸長した状態でベース材20に取り付けられていなくてもよい。ただし、
図7に示す例において、ベース材20が伸長した状態でセンサシート30に取り付けられていると好ましい。この場合、ベース材20の第2主面20B側においては、第1主面20A側に比べて、より縮もうとする力が強くなる。その結果、変位センサ10は全体として、第1正方向X1側に凸となるように湾曲する可能性が高い。このような場合に、第2主面20B側に第2カバーシート60が位置していると、変位センサ10の湾曲を効果的に抑制できる。
【0073】
・第1実施形態において、第1カバーシート50は、センサシート30全体を覆っていなくてもよい。すなわち、第1負方向X2を向いて視たときに、第1カバーシート50の面積はセンサシート30の面積よりも小さくてもよい。例えば、
図8に示す例では、変位センサ10は、2つの第1カバーシート50Aを備えている。1つの第1カバーシート50Aは、センサシート30の一方の長辺に沿って延びている。すなわち、当該第1カバーシート50Aは、センサシート30の一方の長辺を覆っている。また、もう1つの第1カバーシート50Aは、センサシート30のもう一方の長辺に沿って延びている。すなわち、当該第1カバーシート50Aは、センサシート30のもう一方の長辺を覆っている。そして、2つの第1カバーシート50Aは、第3軸Zに沿う方向に離れている。その結果、第1負方向X2を向いて視たときに、センサシート30の一部は、各第1カバーシート50Aに覆われていない。このように、第1カバーシート50がセンサシート30の一部を覆っている構成においてもセンサシート30の湾曲を抑制できる。また、
図8に示す例において、第1カバーシート50は1つであってもよい。
【0074】
また、第1カバーシート50が、センサシート30全体を覆っていない場合において、第1カバーシート50がセンサシート30の一部を覆っていれば、第1カバーシート50の形状及び位置は問わない。ただし、第1カバーシート50が、センサシート30全体を覆っていない場合、第1カバーシート50は、センサ素子32の検知部32Aが延びる方向に長尺であることが好ましい。
【0075】
上記実施形態及び変更例から導き出せる技術思想を以下に記載する。
[1]第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、前記センサシートに対して前記ベース材とは反対側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、を備え、前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい変位センサ。
【0076】
[2]前記第1カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい[1]に記載の変位センサ。
[3]前記センサシートは、伸長した状態で前記ベース材に取り付けられている[2]に記載の変位センサ。
【0077】
[4]前記センサ部は、前記センサシートと前記第1カバーシートとの間に位置する保護シートをさらに備える[1]~[3]のいずれか1つに記載の変位センサ。
[5]前記ベース材の前記第1主面とは反対の第2主面側に着脱可能に配置された第2カバーシートをさらに備え、前記第2カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい[1]~[4]のいずれか1つに記載の変位センサ。
【0078】
[6]前記第2カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい[5]に記載の変位センサ。
[7]第1主面を有する板状のベース材及び前記ベース材の前記第1主面上に配置され、前記ベース材の変位量を計測可能なセンサシートを備えるセンサ部と、前記ベース材の前記第1主面とは反対の第2主面側に、着脱可能に配置された第1カバーシートと、を備え、前記第1カバーシートの弾性率は、前記ベース材の弾性率より大きい変位センサ。
【0079】
[8]前記第1カバーシートの弾性率は、前記センサ部の弾性率より大きい[7]に記載の変位センサ。
[9]前記第1主面の法線方向から平面視したときに、前記第1カバーシートは前記センサシートの全域を覆っている[1]~[8]のいずれか1つに記載の変位センサ。