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特開2024-64996分散剤の精製方法、着色分散液、着色分散液セット、記録メディア、疎水性繊維の捺染方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024064996
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】分散剤の精製方法、着色分散液、着色分散液セット、記録メディア、疎水性繊維の捺染方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/00 20060101AFI20240507BHJP
   C09K 23/20 20220101ALI20240507BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240507BHJP
   D06P 1/16 20060101ALI20240507BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240507BHJP
   C09D 11/326 20140101ALN20240507BHJP
【FI】
C08G8/00 F
C09K23/20
C09B67/20 L
C09B67/20 F
D06P1/16
D06P5/30
C09D11/326
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130273
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022172628
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花里 秋津
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 隼人
(72)【発明者】
【氏名】桐田 理生
(72)【発明者】
【氏名】梅田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐司
【テーマコード(参考)】
4D077
4H157
4J033
4J039
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AA08
4D077AB05
4D077AB06
4D077AC05
4D077DA02Z
4D077DC10Z
4D077DC59X
4H157BA08
4H157DA17
4H157GA06
4J033CA02
4J033CA25
4J033CD05
4J033HB08
4J039BE08
4J039BE22
4J039CA06
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】
本発明は、低臭気性を軽減させる分散剤の精製方法、着色分散液、その着色分散液を備える着色分散液セット、その着色分散液又は着色分散液セットが備える各着色分散液が付着した記録メディア、及びその着色分散液又は着色分散液セットを用いた疎水性繊維の捺染方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
但し、該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤がアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物であり、該アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を、有機溶剤を用いて分液分離する工程において、上記低分子量有機化合物が、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、である場合は除く。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
但し、該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤がアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物であり、該アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を、有機溶剤を用いて分液分離する工程において、上記低分子量有機化合物が、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、である場合は除く。
【請求項2】
上記低分子量有機化合物が、キノリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物またはその塩、もしくクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合またはその塩、からなる群から選択される少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤が、下記式(1)~(5)で表される化合物を少なくとも一つ含有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【化1】
(上記式(1)~(5)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンのいずれかである。)
【請求項5】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
【請求項6】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
【請求項7】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤、水不溶性着色剤、及び水を含む着色分散液であり、着色分散液中の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を固形分濃度15質量%とした場合、キノリン含有量が1240ppm以下である、着色分散液。
【請求項8】
上記水不溶性着色剤が、水不溶性染料である、請求項7に記載の着色分散液。
【請求項9】
さらに、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物を含有する請求項7又は請求項8に記載の着色分散液。
【請求項10】
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記吸着剤が、ゼオライトである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤の精製方法、着色分散液、その着色分散液を備える着色分散液セット、その着色分散液又は着色分散液セットが備える各着色分散液が付着した記録メディア、及びその着色分散液又は着色分散液セットを用いた疎水性繊維の捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットによる無製版印刷を行う記録方法が提案され、布等を含めた繊維の捺染においてもインクジェット印刷による捺染(インクジェット捺染)が行われている。インクジェット印刷による捺染は、従来のスクリーン印刷等の捺染方法と比較して、無製版であること;省資源であること;省エネルギーであること;高精細表現が容易であること;等の様々な利点がある。
【0003】
ここで、ポリエステル繊維を代表とする疎水性繊維は、一般に水不溶性色材により染色される。このため、インクジェット印刷により疎水性繊維を捺染するための水性インクとしては、一般に水不溶性色材を水中に分散させた、分散安定性等の性能が良好な分散インクを用いる必要がある。
【0004】
疎水性繊維へのインクジェット捺染方式は、ダイレクトプリント法と昇華転写法とに大別される。ダイレクトプリント法は、疎水性繊維へ直接インクを付与(プリント)した後、高温スチーミング等の熱処理によりインク中の染料を疎水性繊維に染着させる捺染方法である。一方、昇華転写法は、中間記録媒体(専用の転写紙等)にインクを付与(プリント)した後、中間記録媒体のインク付与面と疎水性繊維とを重ね合わせた後、熱により染料を中間記録媒体から疎水性繊維へと転写させる捺染方法である。
【0005】
昇華転写法は、のぼり旗等の捺染加工に主に用いられており、インク中には熱処理による疎水性繊維への転写適性に優れた易昇華型の染料が用いられる。加工工程には、(1)プリント工程:インクジェットプリンタにより染料インクを中間記録媒体に付与する工程、(2)転写工程:熱処理により染料を中間記録媒体から繊維中に転写及び染着させる工程、の2工程が含まれ、市販の転写紙が広く使用できるため繊維の前処理は必要とせず、洗浄工程も省略されている。
【0006】
昇華転写法用のインクとしては、水不溶性染料を水中に分散させた水性インクが一般的に用いられている。このようなインクは、例えば、分散染料及び油溶性染料から選択される昇華性染料を分散剤により水中に分散させた着色分散液に対して、保湿剤(乾燥防止剤)としての水溶性有機溶剤、表面張力調整剤としての界面活性剤、及びその他の添加剤(pH調整剤、防腐防黴剤、消泡剤等)を添加し、粒度、粘度、表面張力、pH等の物理特性(物性)を最適化することにより調製される。
【0007】
分散染料等を分散させるための分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムをホルマリンで縮合した分散剤(例えば、特許文献1、特許文献2参照)が知られている。ナフタレンスルホン酸ナトリウム単一成分をホルマリンで縮合した分散剤を用いた場合、特定の分散染料に対しては吸着が強く、着色分散液又はインクの分散安定性はある程度満足できるものである。その反面、臭気の観点で満足できるものではなかった。
【0008】
また、分散染料等を分散させるための分散剤としては、クレオソート油スルホン酸ナトリウムをホルマリンで縮合した分散剤(例えば、特許文献3参照)も知られている。このような分散剤は、複数成分の芳香族化合物を含むクレオソート油を原料として使用しているため、様々な分散染料に対して吸着が強く、着色分散液又はインクの分散安定性はある程度満足できるものである。その反面、臭気の観点で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9-291235号公報
【特許文献2】特開2003-246954号公報
【特許文献3】国際公開第2005/121263号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、臭気を軽減させる分散剤の精製方法、着色分散液、その着色分散液を備える着色分散液セット、その着色分散液又は着色分散液セットが備える各着色分散液が付着した記録メディア、及びその着色分散液又は着色分散液セットを用いた疎水性繊維の捺染方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0012】
[1]
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
但し、該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤がアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物であり、該アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を、有機溶剤を用いて分液分離する工程において、上記低分子量有機化合物が、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、である場合は除く。
[2]
上記低分子量有機化合物が、キノリンである、[1]に記載の方法。
[3]
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤が、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物またはその塩、もしくクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合またはその塩、からなる群から選択される少なくともいずれかを含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤が、下記式(1)~(5)で表される化合物を少なくとも一つ含有する、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の方法。
【0013】
【化1】
【0014】
(上記式(1)~(5)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンのいずれかである。)
[5]
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
[6]
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法。
[7]
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤、水不溶性着色剤、及び水を含む着色分散液であり、着色分散液中の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を固形分濃度15質量%とした場合、キノリン含有量が1240ppm以下である、着色分散液。
[8]
上記水不溶性着色剤が、水不溶性染料である、[7]に記載の着色分散液。
[9]
さらに、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物を含有する[7]又は[8]に記載の着色分散液。
[10]
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程を有する、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、臭気を軽減させる分散剤の精製方法、着色分散液、その着色分散液を備える着色分散液セット、その着色分散液又は着色分散液セットが備える各着色分散液が付着した記録メディア、及びその着色分散液又は着色分散液セットを用いた疎水性繊維の捺染方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について詳細に説明する。本明細書において「C.I.」はカラーインデックスの略である。
【0017】
<分散剤の精製方法>
本発明は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法に関する。
但し、該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤がアルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物であり、該アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を、有機溶剤を用いて分液分離する工程において、上記低分子量有機化合物が、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、である場合は除く。
本明細書において、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、あるいは、分散剤、と略記する場合がある。
【0018】
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤は、芳香族スルホン酸系化合物とホルマリンとの縮合反応により得られる反応物である。また、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤が、スルホ基や水酸基等の酸性基を、単独あるいは複数有する場合、その一部あるいは全部が、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、あるいは、アンモニウム、等と塩を形成していても良い。
【0019】
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤は、例えば、特開2009-079010号公報、特開2007-099983号公報、特開2007-099719号公報、特開2016-124932号公報等に記載の方法により製造することができる。具体的には、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等を硫酸中で加熱してスルホン化を行い、その後、ホルマリンとの縮合反応を行うことにより得ることができる。
【0020】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩としては、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、1-メチルナフタレンスルホン酸、2-メチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、リグニンスルホン酸等の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)が挙げられる。これらの中でも、クレオソート油スルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩が好ましく、特にクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はそれらの塩が好ましい。
【0021】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物は、市販品として入手することもできる。例えば、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールN(花王(株)製)等が挙げられる。クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールC(花王(株)製)、ラベリンWシリーズ(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。特殊芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールSN-B(花王(株)製)等が挙げられる。メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、ラベリンANシリーズ(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。これらの中でも、デモールN、ラベリンANシリーズ、及びラベリンWシリーズが好ましく、デモールN及びラベリンWシリーズがより好ましく、ラベリンWシリーズがさらに好ましい。リグニンスルホン酸としては、バニレックスN、バニレックスRN、バニレックスG、パールレックスDP(以上、日本製紙(株)製)等が挙げられる。アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合としては、モルウェット(登録商標)D-425パウダー、モルウェット(登録商標)D-400パウダー、モルウェット(登録商標)D-809パウダー(以上、ライオン・アクゾ株式会社製)、ポリティ(登録商標)N-100K(ライオン株式会社製)、Supragil(登録商標)MNS/90、Supragil(登録商標)RM/210-EI(以上、ローディア日華株式会社製)などが挙げられる。
【0022】
低分子量有機化合物としては、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、キノリン、イソキノリン、メチルキノリン、ジメチルキノリン、ビフェニル、ジフェニルメタン等が挙げられる。
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中に含まれる、低分子量有機化合物、特にキノリンの含有量を低減する芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤の精製方法としては、特に限定されないが、例えば、固液抽出、液液抽出、還流抽出、ソックスレー抽出等の抽出、あるいは浸漬や撹拌、RO膜等を用いた膜ろ過、活性炭、活性白土、イオン交換樹脂、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土等の吸着剤による処理等、通常の手段を用いることができる。上記「分液分離」とは、有機溶剤を用いて抽出を行う分離方法であり、一般に、分液抽出、液液抽出とも呼ばれる。これらの手段は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、固液抽出と液液抽出を組み合わせてもよく、撹拌と吸着剤処理を組み合わせてもよい。またその場合、手段間の順序は、効率等目的に応じ任意で設定できる。
【0023】
上記した液液抽出を行う際、抽出のための溶媒として、有機溶媒を用いる事ができる。有機溶媒としては、親水性有機溶媒であっても疎水性有機溶媒であってもよい。有機溶媒の例としては、1価、2価、あるいは多価のアルコール類及びその水溶液;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル等の鎖状エーテル類;ペンタン、ヘキサン等の飽和または不飽和の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;ナタネ油、大豆油等の食用油類;ジアシルグリセロール(DAG)、中鎖脂肪酸油、スクワラン、スクワレン等の油脂類;あるいはこれらの混合物が挙げられる。上記抽出溶媒のうち、メチルエチルケトンが好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。
【0024】
上記抽出の条件は、十分な抽出が行える条件であれば特に限定されないが、例えば、抽出に用いる溶媒の使用量としては、分散剤1gに対して、1~100mL用いることが好ましく、抽出時間は、通常、溶媒が低温であれば長時間、溶媒がより高温であれば短時間でもよい。また、抽出操作は2回以上行ってもよい。好ましい抽出条件としては、例えば、15~40℃で1~2時間を3回実施する等が挙げられる。
【0025】
上記抽出操作後の分散剤層中には、通常有機溶媒が残存するため、さらに減圧下で溶媒を除去する操作を追加してもよい。この場合における減圧の程度及び減圧時間は特に限定されないが、例えば、80mbarで1時間行うことが挙げられる。これら一連の操作により、分散剤を精製することができる。
【0026】
上記した吸着剤による処理方法としては、十分な吸着が行える条件であれば特に限定されないが、例えば、吸着剤の使用量としては、分散剤液100gに対して1~100gを用いることが好ましく、吸着時間は、通常、溶媒が低温であれば長時間、溶媒がより高温であれば短時間でもよい。吸着剤への吸着量は、通常、溶媒が低温であれば高く、溶媒が高温であれば低くなる。また、吸着剤による処理は2回以上行ってもよい。好ましい処理条件としては、例えば、20℃で10分~3時間実施する等が挙げられる。吸着剤の形態は、粉体、ペレット、ビーズ等、特に限定されるものではない。また、吸着剤の溶媒からの分離方法としては、濾過や遠心分離等、分離できれば特に限定されない。また、カラムに吸着剤を充填し、ポンプ等を用いて、液を循環させる方法を用いても良い。
【0027】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中に含まれる、低分子量有機化合物、特にキノリンの含有量を低減する芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤の精製方法としては、
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合と有機溶媒を接触させる工程もしくは吸着剤を混合する工程もしくはRO膜に通液する工程を含む精製方法が好ましく、有機溶媒を接触させる工程もしくは吸着剤を混合する工程を含む精製方法がより好ましく、吸着剤を接触させる工程を含む精製方法がさらに好ましい。吸着剤としては、例えば、イオン交換樹脂やゼオライトが好ましく、ゼオライトがより好ましい。ゼオライトとしては、特に限定されないが、シリカ/アルミナ比が高いものが好ましい。具体的には、シリカ/アルミナ比が、2.5以上が好ましく、5.5以上がさらに好ましく、15以上がさらに好ましい。吸着剤としてゼオライトやイオン交換樹脂を使用すること、液液抽出を行うことで、ナフタレンスルホン酸等の下記式の化合物の過度の低減を抑制することができる。
【0028】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量は、低分子量有機物減少化工程を経たのちに、固形分濃度40質量%に換算すると、低分子量有機物含有量が3300ppm以下になっていることが好ましく、2300ppm以下になっていることがより好ましく、2100ppm以下になっていることがさらに好ましく、1500ppm以下になっていることがさらに好ましく、1200ppm以下になっていることがさらに好ましく、1000ppm以下になっていることが極めて好ましい。
【0029】
上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤は、下記式(1)~(5)で表されるスルホン酸化合物を少なくとも1つ以上含んでいることが好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
(上記式(1)~(5)中、Mは、それぞれ独立に、水素原子、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンのいずれかである。)
【0032】
上記スルホン酸化合物は、原料中に含有していてもよく、後から添加しても良い。
【0033】
上記分散剤は、ナフタレンスルホン酸化合物を含んでいることが好ましい。
【0034】
上記分散剤は、上記式で表される化合物を少なくとも1つ以上含んでいることで、粘度上昇を抑制でき、保存安定性に優れる分散剤とすることができる。
【0035】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法も本願発明に含まれる。
上記、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、はいずれも上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法で述べたものと同じで良い。
【0036】
上記分散剤中に含まれる、スルホン酸化合物の総質量%は、上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のスルホン酸化合物含有量を増加させる方法を経たのちに、0.5%以上、99%以下であることが好ましく、1.0以上、95%以下であることがより好ましく、1.5以上、90%以下であることがさらに好ましく、3.0%以上、80%以下であることがさらに好ましく、5.0%以上、70%以下であることがさらに好ましく、7.0%以上、60%以下であることがさらに好ましく、8.0%以上、50%以下であることが極めて好ましい。
【0037】
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物含有量を増加させる方法であって、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、
該芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、を含む方法、を含む方法も本願発明に含まれる。
上記、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を膜ろ過する工程、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と吸着剤を混合する工程、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を、有機溶剤を用いて分液分離する工程、からなる群から選択されるいずれか工程、はいずれも上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中の低分子量有機化合物含有量を減少させる方法で述べたものと同じで良い。
【0038】
上記分散剤中に含まれる、ナフタレンスルホン酸化合物の総質量%は、上記芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物含有量を増加させる方法を経たのちに、0.01%以上、99%以下であることが好ましく、0.1以上、95%以下であることがより好ましく、0.5以上、90%以下であることがさらに好ましく、1.5%以上、80%以下であることがさらに好ましく、2.0%以上、70%以下であることがさらに好ましく、2.5%以上、60%以下であることがさらに好ましく、3.0%以上、50%以下であることが極めて好ましい。
【0039】
<着色分散液>
芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤、水不溶性着色剤、及び水を含む着色分散液であり、着色分散液中の芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を固形分濃度15質量%とした場合、キノリン含有量が1240ppm以下であり、865ppm以下であることが好ましく、790ppm以下であることがより好ましく、565ppm以下であることがさらに好ましく、450ppm以下であることが特に好ましく、375ppm以下であることが極めて好ましい。
【0040】
(水不溶性着色剤)
上記着色分散液中に含まれる水不溶性着色剤は、水不溶性の着色剤として使用できるものであれば特に制限はなく使用できる。例えば、公知の分散染料、油溶性染料、カーボンブラックや顔料などを用いることができるが、好ましくは水不溶性染料、最も好ましくは分散染料を用いる。また、該水不溶性着色剤は、1種単独で使用、あるいは、複数種を併用しても良い。上記水不溶性染料とは、25℃の水に対する溶解度が3g/L以下、好ましくは2g/L以下、より好ましくは1g/L以下である染料を指す。
上記着色分散液中の水不溶性着色剤の含有量は、0.1~25質量%が好ましく、0.5~20質量%が更に好ましい。本明細書において、水不溶性着色剤を、着色剤、と略記する場合がある。
【0041】
上記水不溶性着色剤の具体例としては、C.I.Disperse Yellow 3、4、5、7、8、9、13、23、24、30、33、34、39、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、186、192、198、199、200、202、204、210、211、215、216、218、224、232、237、C.I.Disperse Orange 1、1:1、3、5、7、11、13、17、20、21、23、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、86、89、90、91、93、96、97、118、119、127、130、139、142、C.I.Disperse Red 1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、55:1、56、58、59、60、65、70、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、158、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、283、288、298、302、303、310、311、312、320、323、324、328、359、364、C.I.Disperse Violet 1、4、8、11、17、23、26、27、28、29、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、97、C.I.Disperse Green 9、C.I.Disperse Brown 1、2、4、9、13、19、C.I.Disperse Blue 3、5、7、9、14、16、19、20、26、26:1、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、64:1、71、72、72:1、73、75、77、79、79:1、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、131、139、141、142、143、145、146、148、149、153、154、158、165、165:1、165:2、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、266、267、270、281、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、341、353、354、358、359、360、364、365、366、368、C.I.Disperse Brack 1、3、10、24、C.I.Solvent Yellow 114、C.I.Solvent Orange 60、67、C.I.Solvent Red 146、C.I.Solvent Blue 36、63、83、105、111、C.I.Reactive Yellow 2、3、18、81、84、85、95、99、102、C.I.Reactive Orange 5、9、12、13、35、45、99、C.I.Reactive Brown 2、8、9、17、33、C.I.Reactive Red 3、3:1、4、13、24、29、31、33、125、151、206、218、226、C.I.Reactive Violet 1、24、C.I.Reactive Blue 2、5、10、13、14、15、15:1、49、63、71、72、75、162、176、C.I.Reactive Green 5、8、19、C.I.Reactive Black 1、8、23、39、C.I.Direct Yellow 2、3、4、9、10、11、12、13、15、16、50、66、73、84、86、87、88、89、91、110、127、128、129、130、132、138、139、141、142、145、C.I.Direct Orange 20、25、35、38、39、41、C.I.Direct Brown 187、195、196、202、208、209、210、213、C.I.Direct Red 76、88、89、92、101、209、220、222、224、225、226、227、234、235、238、240、243、245、247、C.I.Direct Blue 52、55、57、76、80、84、86、87、92、102、105、106、108、110、112、197、199、200、202、205、220、231、233、235、237、238、240、245、248、250、C.I.Direct Green 55、57、59、60、77、80、82、90、C.I.Direct Black 12、19、20、22、23、105、107、110、112、115、117、120、125、129、132、135、136等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、C.I.ディスパースイエロー 54;C.I.ディスパースオレンジ 25、73;C.I.ディスパースレッド 60、92;C.I.ディスパースブルー 60、359、360;C.I.ソルベントオレンジ 60;が好ましい。
【0042】
上記顔料とは、水、有機溶剤等に不溶の白色または有色の紛体であり、有機顔料と無機顔料がある。本発明においては、有機顔料であっても無機顔料であっても良いが、有機顔料である場合が好ましい。具体的には、C.I.Pigment Yellow 74、120、128、138、151、155、185、217、C.I.Pigment Orange 13、16、34、43、C.I.Pigment Red 122、146、148、150、C.I.Pigment Violet 19、23、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、C.I.Pigment Green 7、8、36等を挙げることができる。
【0043】
水不溶性染料として、国際公開第2020/204041号に記載されている染料誘導体(以下、「染料誘導体X1」ともいう。)と水不溶性染料(以下、「水不溶性染料Y1」ともいう。)とを組み合わせて用いることも好ましい様態である。
【0044】
水不溶性染料Y1としては、例えば、C.I.ディスパースレッド 60が好ましい。
【0045】
染料誘導体X1としては、例えば、C.I.ディスパースレッド 92、146;国際公開第2020/204041号に記載のアントラキノン系化合物 E、F、H、I;が好ましく、C.I.ディスパースレッド 92がより好ましい。
【0046】
水不溶性染料Y1と染料誘導体X1との組み合わせの中でも、C.I.ディスパースレッド 60と、C.I.ディスパースレッド 92、146;及びアントラキノン系化合物 E、F、H、I;からなる群から選択される少なくとも1種の染料誘導体との組み合わせが好ましく、C.I.ディスパースレッド 60とC.I.ディスパースレッド 92との組み合わせがより好ましい。
【0047】
水不溶性染料Y1と染料誘導体X1との配合割合は任意で設定可能である。染料誘導体X1の質量(X1)に対する水不溶性染料Y1の質量(Y1)の比(Y1/X1)は、例えば、400>(Y1/X1)>3.125の関係を満たすことが好ましく、400>(Y1/X1)>19の関係を満たすことがより好ましい。
【0048】
また、水不溶性染料として、C.I.ディスパースオレンジ 25(以下、「DOr25」ともいう。)と、国際公開第2020/235560号に記載されている式(1)で表される色素及び式(2)で表される色素から選択される少なくとも1種の色素(以下、「配合色素X2」ともいう。)とを組み合わせて用いることも好ましい様態である。
【0049】
配合色素X2としては、例えば、C.I.ディスパースオレンジ 49、62、71、73、148が好ましく、C.I.ディスパースオレンジ 73がより好ましい。
【0050】
DOr25と配合色素X2との配合割合は任意で設定可能である。DOr25と配合色素X2との合計の含有量を100質量部としたとき、配合色素X2の含有量は、10質量部未満であることが好ましく、0.5~5質量部であることがより好ましい。
【0051】
上記着色剤は、粉末状あるいは塊状の乾燥着色剤でも、ウエットケーキやスラリーでも良く、色材合成中や合成後に色材粒子の凝集を抑える目的で界面活性剤等の分散剤が少量含有されたものであっても良い。市販のこれらの着色剤には、工業染色用、樹脂着色用、インキ用、トナー用、インクジェット用などのグレードがあり、製造方法、純度、顔料の粒径等がそれぞれ異なる。粉砕後の凝集性を抑えるには着色剤としてはより粒子の小さいものが好ましく、また分散安定性及びインクの吐出精度への影響からできるだけ不純物などの少ないものが好ましい。染料においてはブルー系染料を主体にオレンジ系染料及びレッド系染料を配合する事でブラック用の着色剤として用いることができる。また色調調整の範囲内で他の水不溶性着色剤を少量含んでも良い。
【0052】
上記水不溶性着色剤は配合しても良く、例えば、ブラックインクの調製においては、ブルー水不溶性着色剤を主体にオレンジ水不溶性着色剤、及びレッド水不溶性着色剤を適宜配合してブラック色に調色し、これをブラック水不溶性着色剤として用いることができる。また、例えばブルー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的で複数の水不溶性着色剤を配合しても良い。
【0053】
上記分散染料は、クマリン骨格を有する分散染料、アゾ骨格を有する分散染料、アントラキノン骨格を有する分散染料、キノフタロン骨格を有する分散染料、チオインジゴ骨格を有する分散染料から選択される少なくとも一種の分散染料であることが好ましく、クマリン骨格を有する分散染料、アゾ骨格を有する分散染料またはアントラキノン骨格を有する分散染料から選択される少なくとも一種の分散染料であることがさらに好ましい。
【0054】
本実施形態に係る着色分散液中において、水不溶性染料が粒子状で含有される場合、その平均粒子径は、60~200nmであることが好ましい。平均粒子径は、D50(50%累積体積粒子径)で算出される粒子径であり、JIS Z8825に記載の動的光散乱法やレーザー回折光法で測定される。具体的には、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計、例えば、マイクロトラックUPA、ナノトラック Wave-UT151、ナノトラック Wave-EX150(以上、マイクロトラック・ベル(株)製);ELSZ-2、DLS-8000(以上、大塚電子(株)製);LB-550((株)堀場製作所製);等で測定することができる。
【0055】
(その他成分)
上記着色分散液は、その他成分として、上記分散剤以外の、併用可能な分散剤(以下、併用分散剤と略す場合がある)、後述する防腐防黴剤や消泡剤等の添加物をさらに含んでいても良い。
【0056】
上記着色分散液中、上記分散染料に対する分散剤総量(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤と併用分散剤の合計)の質量比(分散剤総量/分散染料)は、1/10~10/1の範囲であることが好ましく、1/5~5/1がより好ましく、1/5~3/1がさらに好ましい。上記範囲内であることにより、分散染料と溶媒の両方に対する親和性の向上効果が適切に発揮され、長期間高温保存下に曝されても分散染料の分散安定性がより向上する傾向にある。
【0057】
さらに、上記着色分散液中の分散剤総量は、水不溶性着色剤総量に対して、好ましくは1~200質量%であり、より好ましくは10~150質量%であり、さらに好ましくは50~120質量%である。
【0058】
(併用可能な分散剤)
併用分散剤としては、水不溶性着色剤、インクジェット捺染用インクが含有する染料を分散できる物質であれば、上記分散剤以外のものであれば特に制限されない。そのような物質の例としては公知の分散剤、界面活性剤、及び樹脂分散剤等が挙げられる。また、併用分散剤と界面活性剤は単に呼称のみが異なり、具体的には同じ物質を指すこともある。併用分散剤の種類としては、上述した芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤以外の分散剤としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体である。共重合体の具体例としては、(α-メチル)スチレン-アクリル酸共重合体、(α-メチル)スチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリル酸共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、(α-メチル)スチレン-アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル-スチレンスルホン酸共重合体、(α-メチル)スチレン-メタクリルスルホン酸共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を含む意味として用いる。また、「(α-メチル)スチレン」は、「α-メチルスチレン」及び「スチレン」を含む意味として用いる。
【0060】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は、例えば、1000~20000が好ましく、2000~19000がより好ましく、5000~17000がさらに好ましい。スチレン-(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフ)法で測定することができる。
【0061】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の酸価は、例えば、50~250mgKOH/gが好ましく、100~250mgKOH/gがより好ましく、150~250mgKOH/gがさらに好ましい。酸価を50mgKOH/g以上とすることにより、水に対する溶解性が向上し、また、水不溶性染料に対する分散安定化力が向上する傾向にある。また、酸価を250mgKOH/g以下とすることにより、水性媒体との親和性増大に起因して印字後の画像に滲みが発生することが抑えられる傾向にある。樹脂の酸価は、樹脂1gを中和するのに要するKOHのmg数を表し、JIS-K3054に従って測定することができる。
【0062】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度は、例えば、45~135℃が好ましく、55~120℃がより好ましく、60~110℃がさらに好ましい。
【0063】
スチレン-(メタ)アクリル共重合体の市販品としては、例えば、Joncryl 67、678、680、682、683、690、52J、57J、60J、63J、70J、JDX-6180、HPD-196、HPD96J、PDX-6137A、6610、JDX-6500、JDX-6639、PDX-6102B、PDX-6124(以上、BASF社製)等が挙げられる。これらの中でも、Joncryl 67(質量平均分子量:12500、酸価:213mgKOH/g)、678(質量平均分子量:8500、酸価:215mgKOH/g)、682(質量平均分子量:1700、酸価:230mgKOH/g)、683(質量平均分子量:4900、酸価:215mgKOH/g)、690(質量平均分子量:16500、酸価:240mgKOH/g)が好ましく、Joncryl 678がより好ましい。
【0064】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩としては、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、クレゾールスルホン酸、2-ナフトール-6-スルホン酸、リグニンスルホン酸等の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)が挙げられる。これらの中でも、クレオソート油スルホン酸、ナフタレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸の各ホルマリン縮合物又はそれらの塩が好ましい。
【0065】
芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物は、市販品として入手することもできる。例えば、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールN(花王(株)製)等が挙げられる。クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールC(花王(株)製)、ラベリンWシリーズ(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。特殊芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物としては、デモールSN-B(花王(株)製)等が挙げられる。メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物としては、ラベリンANシリーズ(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。これらの中でも、デモールN、ラベリンANシリーズ、及びラベリンWシリーズが好ましく、デモールN及びラベリンWシリーズがより好ましく、ラベリンWシリーズがさらに好ましい。リグニンスルホン酸としては、バニレックスN、バニレックスRN、バニレックスG、パールレックスDP(以上、日本製紙(株)製)等が挙げられる。
【0066】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンテトラスチリルフェニルエーテル等のスチリルフェノール化合物;ポリオキシエチレンモノベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等のベンジルフェノール化合物;ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等のクミルフェノール化合物;ポリオキシエチレンナフチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンビフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェノキシフェニルエーテル;などが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルが好ましい。
【0067】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルにおけるポリオキシエチレン基の繰り返し数は、1~30が好ましく、15~30がより好ましい。繰り返し数が1以上であると、水性溶媒等との相溶性に優れる傾向にある。また、繰り返し数が30以下であると、粘度が高くなりすぎない傾向にある。
【0068】
上記ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルの市販品としては、例えば、ノイゲンEAシリーズ(第一工業製薬(株)製);パイオニンD-6112、パイオニンD-6115、パイオニンD-6120、パイオニンD-6131、パイオニンD-6512、タケサーフD-6413、DTD-51、パイオニンD-6112、パイオニンD-6320(以上、竹本油脂(株)製);TS-1500、TS-2000、TS-2600、SM-174N(以上、東邦化学(株)製);エマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンA500(以上、花王(株)製);エマルゲンB-66、ニューコール CMP系(以上、日本乳化剤(株)製);などが挙げられる。
【0069】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェートとしては、例えば、上述したポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルの硫酸塩が挙げられる。
【0070】
ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルサルフェートの市販品としては、例えば、SM-57、SM-130、SM-210(以上、東邦化学(株)製)等が挙げられる。
【0071】
ポリオキシエチレンナフチルエーテルの市販品としては、例えば、ノイゲンENシリーズ(第一工業製薬(株)製)、パイオニンD-7240(竹本油脂(株)製)等が挙げられる。
【0072】
[フィトステロールのアルキレンオキサイド付加物等]
本実施形態に係る着色分散液は、さらに、フィトステロールのアルキレンオキサイド付加物、水添フィトステロールのアルキレンオキサイド付加物、コレスタノールのアルキレンオキサイド付加物、及び水添コレスタノールのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。以下、フィトステロール及び水添フィトステロールを総称して「フィトステロール類」ともいう。また、コレスタノール及び水添コレスタノールを総称して「コレスタノール類」ともいう。
【0073】
フィトステロール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、フィトステロール類のC2-C4アルキレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイド付加物がより好ましい。また、コレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、コレスタノール類のC2-C4アルキレンオキサイド付加物が好ましく、エチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0074】
フィトステロール類又はコレスタノール類1当量当たりのアルキレンオキサイド(好ましくはC2-C4アルキレンオキサイド、より好ましくはエチレンオキサイド)の付加量は、10~50当量程度が好ましく、HLBは13~20程度が好ましい。
【0075】
フィトステロール類のエチレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、NIKKOL BPS-20、NIKKOL BPS-30(いずれも日光ケミカルズ(株)製、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物)、NIKKOL BPSH-25(同、水素添加フィトステロールのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。また、コレスタノール類のアルキレンオキサイド付加物の市販品としては、例えば、NIKKOL DHC-30(同、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。
【0076】
本実施形態に係る着色分散液が上述した芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤以外の分散剤を含有する場合、その含有量は、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
【0077】
[添加剤]
本実施形態に係る着色分散液は、上記以外の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、防腐剤、界面活性剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、粘度調整剤、色素溶解剤、酸化防止剤、樹脂エマルション等が挙げられる。
【0078】
[水溶性有機溶剤]
本実施形態に係る着色分散液は、さらに、水溶性有機溶剤として、グリコールエーテルを含有することが好ましい。グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、メトキシグリコール等のグリコールのモノアルキルエーテルが挙げられる。これらの中でも、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びメトキシグリコールが好ましく、メトキシグリコールがより好ましい。
【0079】
本実施形態に係る着色分散液がグリコールエーテルを含有する場合、その含有率は、着色分散液の総量に対して、0.01~90質量%であることが好ましく、0.01~85質量%であることがより好ましい。
【0080】
グリコールエーテル以外の水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、ピロリドン類等が挙げられる。多価アルコール類としては、例えば、アルコール性水酸基を2~3個有するC2-C6多価アルコールが挙げられる。また、ピロリドン類としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。なお、水に溶解して湿潤剤としての役割をする化合物も、便宜上、水溶性有機溶剤に含めるものとする。そのような化合物としては、例えば、尿素、エチレン尿素、糖類等が挙げられる。
【0081】
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4級アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム等が挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ロンザ社製の商品名プロキセルGXL、プロキセルXL-2等が挙げられる。
【0082】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、ノニオン系、フッ素系等の公知の界面活性剤が挙げられる。
【0083】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型リン酸エステル、アルキル型リン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。市販品としては、例えば、いずれも第一工業製薬(株)製のハイテノールLA-10、LA-12、LA-16、ネオハイテノールECL-30S、ECL-45等が挙げられる。
【0084】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0085】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0086】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;エアープロダクツジャパン(株)製のサーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTG等;ポリグリコールエーテル系(例えば、SIGMA-ALDRICH社製のTergitol 15-S-7等);などが挙げられる。
【0087】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、Capstone FS-30、FS-31(以上、DuPont社製);PF-151N、PF-154N(以上、オムノバ社製);等が挙げられる。
【0088】
本実施形態に係る着色分散液は、インクジェットプリンタでの吐出応答性を向上させ、また、表面張力を調整するため、ポリシロキサン系化合物を含有することも好ましい。ポリシロキサン系化合物としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。市販品としては、BYK-347(ビックケミー社製、ポリエーテル変性シロキサン)、BYK-348(同、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)等が挙げられる。
【0089】
本実施形態に係る着色分散液がポリシロキサン系化合物を含有する場合、その含有率は、着色分散液の総量に対して、0.01~3質量%であることが好ましく、0.01~1.5質量%であることがより好ましい。
【0090】
pH調整剤としては、調製される着色分散液に悪影響を及ぼさずに、着色分散液のpHをおおよそ5~11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられる。これらの中でも、トリエタノールアミンが好ましい。
【0091】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0092】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0093】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホン化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0094】
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0095】
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に水溶性高分子化合物が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0096】
色素溶解剤としては、例えば、尿素、ε-カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0097】
酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
【0098】
樹脂エマルションとしては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニル樹脂(塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ材料(メラニン樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂、メラニンホルムアルデヒド樹脂等)等から形成されたエマルションを挙げることができる。樹脂エマルションは、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。また、2種以上の樹脂がコア/シェル構造を形成していてもよい。樹脂エマルションの中でも、ウレタン樹脂エマルションが好ましい。
【0099】
ウレタン樹脂エマルションは、市販品として入手することができ、その多くは固形分濃度30~60質量%の乳化液である。ウレタン樹脂エマルションの市販品としては、例えば、パーマリンUA-150、200、310、368、3945、ユーコートUX-320(以上、三洋化成(株)製);ハイドランWLS-201、210、HW-312Bのラテックス(以上、DIC(株)製);スーパーフレックス150、170、470(以上、第一工業製薬(株)製);等が挙げられる。これらのうち、ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、例えば、パーマリンUA-310、3945;ユーコートUX-320;等が挙げられる。また、ポリエーテル系ウレタン樹脂としては、例えば、パーマリンUA-150、200;ユーコートUX-340;等が挙げられる。
【0100】
ウレタン樹脂エマルション中のウレタン樹脂は、SP値が8~24(cal/cm1/2であることが好ましく、8~17(cal/cm1/2であることがより好ましく、8~11(cal/cm1/2であることがさらに好ましい。なお、ウレタン樹脂のSP値は、Fedors法によって計算される。ウレタン樹脂が酸性基を有し、この酸性基を中和してエマルションを調製している場合には、中和前のウレタン樹脂のSP値を用いる。
【0101】
ウレタン樹脂エマルション中のウレタン樹脂がカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の酸性基を有する場合、酸性基がアルカリ塩化されていてもよい。例えば、酸性基を有するウレタン樹脂を水に投入して撹拌して水溶液を調製し、そこへアルカリ性化合物を投入してpHを6.0~12.0に調整することにより、酸性基をアルカリ塩化することができる。アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;などが挙げられる。アルカリ性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
[水]
上記水としては、イオン交換水、蒸留水、超純水等の不純物が少ないものが好ましい。また、滅菌処理を施した水を用いてもよい。
【0103】
水の含有率は、着色分散液の総量に対して、10~99.5質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましい。
【0104】
[着色分散液の調製方法等]
本実施形態に係る着色分散液の調製方法としては、例えば、水不溶性染料及び芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物系分散剤を含有する水性分散液を調製し、必要に応じて、その他の成分をさらに加える方法が挙げられる。
【0105】
水性分散液を調製する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、高圧乳化機等を用いて、水性分散液を構成する各成分を撹拌混合する等の公知の方法が挙げられる。例えば、サンドミルを用いる場合、まず、各成分及び分散媒体としてのビーズをサンドミルに仕込む。ビーズとしては、粒子径0.01~1mmのガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。ビーズの使用量は、分散対象1質量部に対して2~6質量部が好ましい。次いで、サンドミルを作動させ分散処理を行う。分散処理条件は、概ね1000~2000rpmで1~20時間が好ましい。そして、分散処理後にビーズを濾過等により除去することで、水性分散液が得られる。
【0106】
調製した着色分散液は、メンブランフィルター等を用いて精密濾過を行ってもよい。特に、着色分散液をインクジェット捺染用インクとして使用するときは、ノズルの目詰まり等を防止する目的で、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は、通常0.1~1μmであり、好ましくは0.1~0.8μmである。
【0107】
本実施形態に係る着色分散液の25℃における粘度は、高速での吐出応答性の点から、E型粘度計にて測定したときに、3~20mPa・s程度であることが好ましい。また、本実施形態に係る着色分散液の25℃における表面張力は、プレート法にて測定したときに、20~55mN/m程度であることが好ましい。実際には、使用するインクジェットプリンタの吐出量、応答速度、インク液滴飛行特性等を考慮して、適正な物性値になるよう調整される。
【0108】
本実施形態に係る着色分散液は、各種分野において使用することができるが、インクジェット捺染用インクとして用いることが特に好ましい。
【0109】
本実施形態に係る着色分散液によれば、保存中に着色分散液中の粒子が凝集して平均粒径が大きくなることを効果的に抑制することができ、また、保存中に粒子が沈降することも効果的に抑制することができる。すなわち、本実施形態に係る着色分散液によれば、着色分散液中の粒子の分散状態を安定して維持することができる。また、本実施形態に係る着色分散液は、臭気が少なく、作業性にも優れる。さらに、本実施形態に係る着色分散液は、スチレン-(メタ)アクリル共重合体を分散剤として含有する着色分散液に比べて、乾燥後の再分散性に優れる。このため、本実施形態に係る着色分散液をインクとして使用した場合、インクの乾燥により凝集増粘物が生じ、一時的にインクジェットプリンタのノズル詰まりが起こったとしても、後続のインクにより凝集増粘物が再分散し、容易にノズル詰まりが解消する。
【0110】
加えて、本実施形態に係る着色分散液を用いて着色した着色物は、耐光性、耐候性、耐湿性、耐洗濯性等の各種堅牢性に優れる上、発色性、色再現性、耐水性にも優れる。
【0111】
<着色分散液セット>
本実施形態に係る着色分散液セットは、本実施形態に係る着色分散液と、該着色分散液と色相が異なる少なくとも1種の他の着色分散液とを備えるものである。本実施形態に係る着色分散液及び他の着色分散液としては、いずれも、色相が異なる2種以上が含まれていてもよい。
【0112】
<記録メディア>
本実施形態に係る記録メディアは、本実施形態に係る着色分散液、又は本実施形態に係る着色分散液セットが備える各着色分散液が付着したものである。
【0113】
記録メディアとしては、普通紙、樹脂コート紙、インクジェット専用紙、光沢紙、光沢フィルム、電子写真共用紙等の情報伝達用シート;繊維、布帛;ガラス;金属;陶磁器;皮革;カラーフィルター用基材;などが挙げられる。記録メディアとしてはシート状のものが好適に用いられるが、シート状以外の球状、直方体形状等の立体的な形状を有するものであってもよい。
【0114】
インクジェット印刷に用いられる好ましい記録メディアとしては、例えば、紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが挙げられる。インク受容層は、上記基材にカチオン系ポリマーを含浸又は塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の着色分散液中の色素を吸収し得る無機微粒子を、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーとともに基材表面に塗工する方法;等により設けられる。このようなインク受容層を設けた記録メディアは、通常、インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と称される。この中でも、オゾンガス等の空気中の酸化作用を持つガスに対して影響を受けやすいとされているのが、多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等の着色分散液中の色素を吸収し得る無機微粒子を基材表面に塗工しているタイプのインクジェット専用紙である。市販品として入手できる専用紙の代表的な例としては、キヤノン(株)製、商品名 写真用紙・光沢プロ「プラチナグレード」、写真用紙・光沢ゴールド;セイコーエプソン(株)製、商品名 写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名 アドバンスフォト用紙(光沢);ブラザー(株)製、商品名 プレミアムプラスグロッシィフォトペーパー;等がある。なお、普通紙も当然利用でき、具体的にはキヤノン(株)製、商品名 PBペーパーGF500;セイコーエプソン(株)製、商品名 両面上質普通紙;PPC(プレインペーパーコピー)用紙;等が挙げられる。
【0115】
また、インクジェット記録に用いられる好ましい記録メディアとしては、繊維が挙げられる。繊維の中でも、疎水性繊維が好ましい。疎水性繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維、及びこれらの繊維を2種以上用いた混紡繊維等が挙げられる。また、これらの疎水性繊維とレーヨン等の再生繊維、木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡繊維も、本明細書においては疎水性繊維に含まれる。なお、繊維としては、繊維の構造体(布帛等)も含まれる。
【0116】
<疎水性繊維の捺染方法>
本実施形態に係る疎水性繊維の捺染方法は、本実施形態に係る着色分散液、又は本実施形態に係る着色分散液セットを用いて疎水性繊維を捺染する方法である。疎水性繊維の捺染方法は、ダイレクトプリント法と昇華転写法とに大別される。
【0117】
ダイレクトプリント法は、着色分散液の液滴を、インクジェットプリンタ等により疎水性繊維に付着させることにより、文字、絵柄等の記録画像を得るプリント工程と、プリント工程にて疎水性繊維に付着させた着色分散液中の水不溶性染料を、熱により疎水性繊維に固着させる固着工程と、疎水性繊維中に残存する未固着の水不溶性染料を洗浄する洗浄工程と、を含む。
【0118】
固着工程は、一般的には公知のスチーミング又はベーキングによって行われる。スチーミングとしては、例えば、高温スチーマーにより通常170~180℃で10分間程度、あるいは、高圧スチーマーにより通常120~130℃で20分間程度、それぞれ疎水性繊維を処理することにより、水不溶性染料を疎水性繊維に染着(湿熱固着とも称される)する方法が挙げられる。ベーキング(サーモゾル)としては、例えば、通常190~210℃で6~120秒間程度、疎水性繊維を処理することにより、水不溶性染料を疎水性繊維に染着(乾熱固着とも称される)する方法が挙げられる。
【0119】
洗浄工程は、得られた繊維を、温水、及び必要に応じて水により洗浄する工程である。洗浄に使用する温水や水は、界面活性剤を含んでいてもよい。洗浄後の疎水性繊維を、通常50~120℃で5~30分間乾燥することも好ましく行われる。
【0120】
一方、昇華転写法は、着色分散液の液滴を、インクジェットプリンタ等により中間記録媒体に付着させることにより、文字、絵柄等の記録画像を得るプリント工程と、中間記録媒体における着色分散液の付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより記録画像を疎水性繊維に転写する転写工程と、を含む。
【0121】
中間記録媒体としては、付着した着色分散液中の水不溶性染料が、その表面で凝集せず、かつ、疎水性繊維へ記録画像の転写を行うときに、水不溶性染料の昇華を妨害しないものが好ましい。そのような中間記録媒体の一例としては、シリカ等の無機微粒子でインク受容層が表面に形成されている紙が挙げられ、インクジェット用の専用紙等を用いることができる。
【0122】
転写工程における熱処理としては、通常190~200℃程度での乾熱処理が挙げられる。
【0123】
本実施形態に係る疎水性繊維の捺染方法は、滲み等を防止する目的で、疎水性繊維の前処理工程をさらに含んでいてもよい。この前処理工程としては、糊材、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液(前処理液)を、着色分散液を付着させる前の疎水性繊維に付与する工程が挙げられる。
【0124】
糊剤としては、例えば、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類;澱粉類;アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類;ペクチン酸等の植物皮類;メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体;カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊;などが挙げられ、アルギン酸ソーダが好ましい。
【0125】
アルカリ性物質としては、例えば、無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属の塩;加熱した際にアルカリを遊離する化合物;等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属塩が好ましい。具体例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機化合物のアルカリ金属塩;蟻酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム等の有機化合物のアルカリ金属塩;などが挙げられ、炭酸水素ナトリウムが好ましい。
【0126】
還元防止剤としては、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素等の尿素類等が挙げられ、尿素が好ましい。
【0127】
糊剤、アルカリ性物質、還元防止剤、及びヒドロトロピー剤は、いずれも1種類を単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0128】
前処理液中における各成分の混合比率は、例えば、糊剤が0.5~5質量%、炭酸水素ナトリウムが0.5~5質量%、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムが0~5質量%、尿素が1~20質量%、残部が水である。
【0129】
前処理液を疎水性繊維に付着させる方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40~90%程度が好ましく、より好ましくは60~80%程度である。
【0130】
2つ目の方法は、昇華転写プリント、昇華転写染色等と呼称される方法である。この方法は、前記インクの液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させ、文字及び絵柄等の画像情報が記録された中間記録媒体を得た後、該中間記録媒体のインクの液滴の付着面と、疎水性繊維(疎水性樹脂を含有する繊維)、フィルム及びシートから選択される物質とを接触させて加熱することにより、中間記録媒体に付着したインクの液滴中の水不溶性着色剤(染料)を、繊維に昇華転写させて染色を行う繊維の染色方法である。中間記録媒体としては、中間記録媒体に付着したインクの液滴中の水不溶性着色剤(染料)が、その表面で凝集せず、且つ昇華転写を行うときに染料の昇華を妨害しないものが好ましい。そのような中間記録媒体の一例としては、シリカ等の無機微粒子でインク受容層が表面に形成されている紙が挙げられ、インクジェット記録用の専用紙等を用いることができる。中間記録媒体から繊維へ、記録画像を転写するときの加熱方法としては、通常190~200℃程度で乾熱処理する方法が挙げられる。
【0131】
上記の中間記録媒体としては、特に制限はなく、「紙・板紙及びパルプ用語[JIS P 0001:1998(2008年 確認、平成10年3月20日 改正、財団法人日本規格協会 発行)]」中、第28頁~第47頁の「3.分類 f)紙・板紙の品種及び加工製品」に記載された紙・板紙の品種及び加工製品(番号6001~6284。但し、番号6235の「耐油性」、6263「フルート,段」、6273「パルプ成型品」、6276「カーボン紙」、6277「マルチコピーフォーム用紙」、6278「裏カーボンフォーム用紙」を除く);及び、セロハン(以下、「紙・板紙の品種及び加工製品;及び、セロハン」を「紙等」という。)の中から適宜選択することができる。これらの紙等のうち、昇華転写に使用できるものであれば、いずれも中間記録媒体として使用することができる。なお、前記したように、昇華転写を行うときは通常190℃~210℃程度の加熱処理を行う。従って、前記の中間記録媒体のうち、加熱処理のときに安定なものが好ましい。
【0132】
上記インクは、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク、捺染等に好適であり、インクジェット捺染用インクとして用いることが特に好ましい。
【0133】
本発明により、色糊等を用いる従来の捺染方法のように染料の種類や数を無制限に使用せずとも、従来のインクジェット捺染と比較して色再現範囲を拡大することができる。
本発明のインクジェット捺染用インクは、保管時、印刷時も不快な臭気を生じることなく使用することが可能である。また、長期に保管しても固体の凝集や沈殿等を生じることなく、保存安定性が良好である。さらに、粘度、平均粒子径等の物性の変化も極めて少ない。
【実施例0134】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例により限定されるものではない。実施例において特に断りがない限り、「部」、「%」、「ppm」はいずれも質量基準である。また、実施例における水性分散液及びインクは、いずれも上記着色分散液に含まれる。
【0135】
(実施例1)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、ゼオライトHSZ-385HUA(東ソー株式会社製、シリカ/アルミナ比100)6部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0136】
(実施例2)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、ゼオライトHSZ-940HOA(東ソー株式会社製、シリカ/アルミナ比40)6部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0137】
(実施例3)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、イオン交換樹脂HP-20 40部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0138】
(実施例4)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部を、RO膜(帝人社製)に通液させた。10サイクル通液後、固形分を測定した。
【0139】
〈分散剤の評価〉
上記各精製後、固形分、キノリン量、分散剤臭気を、それぞれ後述する評価方法にて評価した。
【0140】
〈固形分の測定〉
上記各精製後の固形分の分析は、加熱乾燥式水分計(MS-70、AND社製)を用いて、測定した。
【0141】
(分散剤中の成分の評価)
上記各精製後のキノリン量の分析は、内部標準法によって定量した。内部標準物質には、デカンを使用した。各精製後、キノリンを含む有機成分をクロロホルムで抽出した後、下記条件にて測定した。尚、上記精製をしていないラベリンW-40中のキノリン濃度は3370ppmであった(比較例1)。
-GC測定条件-
装置:GC-2014AFSPL(SHIMADZU製)
カラム:HP-5(長さ30m, 液相の膜厚0.25μm,内径0.32mm)
カラム温度:50℃3分、300℃まで毎分10℃で昇温
キャリアガス:He(流速:1.75 mL/min)
気化室温度:300℃
検出器温度:300℃
注入量:10μL
【0142】
<評価>
上記精製を行った後、以下の各評価試験を行った。
結果を下記表1に示す。
【0143】
〈分散剤臭気〉
上記で精製した各分散剤及び精製していないラベリンW-40の各10mLを、50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、分散剤臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0144】
表1に分散剤が、固形分40%とした場合のキノリン含有量、及び臭気評価の結果を示した。
【0145】
【表1】
【0146】
表1の結果から、本発明の分散剤の精製方法により、臭気が軽減されたことが分かる。
【0147】
[実施例5~15]水性分散液1~4及び6~12の調製
下記表2~3に記載の各成分に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維ろ紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、水不溶性着色剤(染料)の含有量がいずれも15%である水性分散液を得た。得られた水性分散液を、それぞれ水性分散液1~4及び6~12とする。
【0148】
[比較例2]水性分散液5の調製
下記表2に記載の各成分に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維ろ紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、水不溶性着色剤(染料)の含有量がいずれも15%である水性分散液を得た。得られた水性分散液を、水性分散液5とする。
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
上記表2~3中の略号等は、以下の意味を有し、数値は「質量部」を意味する
ラベリンW-40:ラベリンW-40(第一工業製薬株式会社製)、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物のナトリウム塩
BPS-30:ニッコールBPS-30(日光ケミカルズ株式会社製)、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物
サーフィノール104:サーフィノール104(エアープロダクツジャパン株式会社製)
プロクセルGXL(S):プロクセルGXL(S)(ロンザ社製)
【0152】
〈水性分散液の評価〉
上記のようにして得られた水性分散液1~12について、分散液臭気を、後述する評価方法にて評価した。
【0153】
<評価>
上記のようにして調製した各水性分散液を用いて、以下の評価試験を行った。結果を上記表2及び表3に示した。
【0154】
〈分散液臭気〉
上記で得た各水性分散液10mLを、50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、恒温槽にて60℃で1時間加温した後、分散液臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0155】
表2及び表3の結果から、本発明の着色分散液は、臭気が低減された分散液であることが分かる。
【0156】
[実施例16~26]インク1~4及び6~12の調製
下記表4及び5に記載の各成分を混合し、30分間攪拌することにより、インク1~4及び6~12の原液を得た。得られた各インクを孔径5.0μmのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製)で濾過することにより、水不溶性着色剤(染料)の含有量がいずれも4%であるインクジェット記録に用いる試験用の各インク1~4及び6~12を調製した。
【0157】
[比較例3]インク5の調製
下記表4に記載の各成分を混合し、30分間攪拌することにより、インク5の原液を得た。得られたインクを孔径5.0μmのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製)で濾過することにより、水不溶性着色剤(染料)の含有量が4%であるインクジェット記録に用いる試験用のインク5を調製した。
【0158】
下記表4及び表5中の略号等は、以下の意味を有し、数値は「質量部」を意味する
BYK-348:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
TEA-80:トリエタノールアミン(オクサリスケミカルズ株式会社製)
プロクセルGXL(S):プロクセルGXL(S)(ロンザ社製)
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
〈インク臭気〉
上記で得た各インク10mLを、50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、恒温槽にて60℃で2時間加温した後、インク臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0162】
上記表4及び表5の結果から、本発明のインクは臭気が低減されたインクであることが分かる。
【0163】
(実施例27)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、ゼオライトHSZ-360HUA(東ソー株式会社製、シリカ/アルミナ比15)6部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0164】
(実施例28)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、ゼオライトHSZ-320HOA(東ソー株式会社製、シリカ/アルミナ比5.5)6部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0165】
(実施例29)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、メチルエチルケトン 100部を加え、分液漏斗にて20回撹拌を行った。その後、1時間程度放置することで、上層と下層に分離した。回収した下層をエバポレーターにて80mba、水浴の温度55℃、にて1時間処理した。得られた分散剤は、乾燥固形分重量が40%となるようイオン交換水で希釈し分散剤を得た。
【0166】
(実施例30)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、ヘキサン 100部を加え、分液漏斗にて20回撹拌を行った。その後、1時間程度放置することで、上層と下層に分離した。回収した下層をエバポレーターにて80mba、水浴の温度55℃、にて1時間処理した。得られた分散剤は、乾燥固形分重量が40%となるようイオン交換水で希釈し分散剤を得た。
【0167】
(実施例31)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、酢酸エチル 100部を加え、分液漏斗にて20回撹拌を行った。その後、1時間程度放置することで、上層と下層に分離した。回収した下層をエバポレーターにて80mba、水浴の温度55℃、にて1時間処理した。得られた分散剤は、乾燥固形分重量が40%となるようイオン交換水で希釈し分散剤を得た。
【0168】
(実施例32)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、イオン交換樹脂SP850 40部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0169】
(実施例33)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部に対して、イオン交換樹脂SP825L 40部を加え、3時間撹拌した。その後、ブフナー漏斗と濾紙を用いて濾別し、固形分を測定した。
【0170】
(実施例34)
固形分濃度40%のクレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 100部を、RO膜(帝人社製)に通液させた。5サイクル通液後、固形分を測定した。
【0171】
〈分散剤臭気〉
上記実施例27~34で精製した各分散剤10mLを、各々50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、分散剤臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0172】
表6に分散剤が、固形分40%とした場合のキノリン含有量、及び臭気評価の結果を示した。
【0173】
【表6】
【0174】
表6の結果から、本発明の分散剤の精製方法により、臭気が軽減されたことが分かる。
【0175】
[実施例35~49]水性分散液13~27の調製
下記表7に記載の各成分に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液をガラス繊維ろ紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、水不溶性着色剤(染料)の含有量がいずれも15%である水性分散液を得た。得られた水性分散液を、それぞれ水性分散液13~27とする。なお、各水性分散液が含むキノリンの含有量は、実施例27~34の分散剤が含むキノリンの量から算出することが可能である。
【0176】
【表7】
【0177】
〈分散液臭気〉
上記で得た水性分散液13~27それぞれ10mLを、50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、恒温槽にて60℃で1時間加温した後、分散液臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0178】
表7の結果から、本発明の着色分散液は、臭気が低減された分散液であることが分かる。
【0179】
[実施例50~64]インク13~27の調製
下記表8に記載の各成分を混合し、30分間攪拌することにより、インク13~27の原液を得た。得られた各インクを孔径5.0μmのメンブレンフィルター(ザルトリウス社製)で濾過することにより、水不溶性着色剤(染料)の含有量がいずれも4%であるインクジェット記録に用いる試験用の各インク13~27を調製した。
【0180】
下記表8中の略号等は、以下の意味を有し、数値は「質量部」を意味する
BYK-348:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
TEA-80:トリエタノールアミン(オクサリスケミカルズ株式会社製)
プロクセルGXL(S):プロクセルGXL(S)(ロンザ社製)
【0181】
【表8】
【0182】
〈インク臭気〉
上記で得た各インクそれぞれ10mLを、50mLポリ瓶(アイボーイ広口びん、アズワン社製)に入れ、恒温槽にて60℃で2時間加温した後、インク臭気について、評価(評価者12人)した。評価基準は以下の通りである。A~Eは評価が良好であり、Fは評価が不良である。
(評価基準)
A:不快な臭気はないと感じる人が、11人以上
B:不快な臭気はないと感じる人が、9人以上10人以下
C:不快な臭気はないと感じる人が、7人以上8人以下
D:不快な臭気はないと感じる人が、5人以上6人以下
E:不快な臭気はないと感じる人が、3人以上4人以下
F:不快な臭気はないと感じる人が、2人以下
【0183】
上記表8の結果から、本発明のインクは臭気が低減されたインクであることが分かる。
【0184】
〈分散剤の評価〉
実施例1~4、実施例27~34で精製した分散剤について、保存安定性を後述する評価方法にて評価した。
【0185】
(分散剤中の成分の評価)
上記で精製した分散剤中のスルホン酸化合物の分析は、次の手順で実施した。試料を固形分が4mgになるように量り取り、2mLの水に溶解後、0.2μmフィルターで濾過し、下記条件で測定を実施した。
-LC/MS測定条件-
装置:Q-Exactive(ThermoFisherScientific製)
カラム:CORTECS C18
オーブン:40℃
溶離液:5mM酢酸アンモニウム水溶液:アセトニトリル
流量:0.30mL/min
注入量:1μL
検出波長:254nm
【0186】
分散剤の固形分が40%とした場合の、分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物量の評価基準を以下に示す。
A:3.0%以上
B:3.0%未満、2.5%以上
C:2.5%未満、2.0%以上
D:2.0%未満、1.5%以上
E:1.5%未満、0.5%以上
F:0.5%未満、0.1%以上
G:0.1%未満、0.01%以上
H:0.01%未満
【0187】
分散剤の固形分が40%とした場合の、分散剤中のスルホン酸化合物合計量の評価基準を以下に示す。
A:8.0%以上
B:8.0%未満、7.0%以上
C:7.0%未満、5.0%以上
D:5.0%未満、3.0%以上
E:3.0%未満、1.5%以上
F:1.5%未満、1.0%以上
G:1.0%未満、0.5%以上
H:0.5%未満
【0188】
実施例1~4、実施例27~34で精製した各分散剤の、分散剤中のナフタレンスルホン酸化合物量、分散剤中のスルホン酸化合物の各合計量、の評価を下記表9に示す。
【0189】
【表9】
【0190】
〈着色分散液の評価〉
上記のようにして得られた実施例5~15、実施例35~49の各水性分散液について、保存安定性を後述する評価方法にて評価した。
【0191】
[粘度変化試験]
初期及び60℃で7日間保存した分散液の粘度を、粘度計校正用標準液JS10(日本グリース株式会社製)で校正したE型粘度計(TV-200、東機産業株式会社製)を用いて、25℃の条件下、回転数50rpmで測定した。初期及び保存後の粘度から粘度変化率を算出し、以下の基準で評価した。A~Eは評価が良好であり、F~Gは評価が不良である。
-評価基準-
A:変化率の絶対値が20%未満
B:変化率の絶対値が20%以上25%未満
C:変化率の絶対値が25%以上30%未満
D:変化率の絶対値が30%以上35%未満
E:変化率の絶対値が35%以上40%未満
F:変化率の絶対値が40%以上45%未満
G:変化率の絶対値が45%以上
【0192】
実施例5~15、実施例35~49の各水性分散液の粘度変化、の評価を下記表10に示す。
【0193】
【表10】
【0194】
上記表10の結果から、本発明の着色分散液は保存安定性に優れていることが分かる。
【0195】
〈インクの評価〉
上記のようにして得られた実施例16~26、実施例50~64の各インクについて、保存安定性を後述する評価方法にて評価した。
【0196】
[粘度変化試験]
初期及び60℃で7日間保存したインクの粘度を、粘度計校正用標準液JS10(日本グリース株式会社製)で校正したE型粘度計(TV-200、東機産業株式会社製)を用いて、25℃の条件下、回転数50rpmで測定した。初期及び保存後の粘度から粘度変化値を算出し、以下の基準で評価した。A~Cは評価が良好であり、Dは評価が不良である。
-評価基準-
A:変化の絶対値が0.4未満
B:変化の絶対値が0.4以上0.7未満
C:変化の絶対値が0.7以上1.0未満
D:変化の絶対値が1.0%以上
【0197】
実施例16~26、実施例50~64の各インクの粘度変化、の評価を下記表11に示す。
【0198】
【表11】
【0199】
上記表11の結果から、本発明のインクは保存安定性に優れていることが分かる。
【0200】
[染布の調製]
各実施例の上記インク1~27を使用し、インクジェットプリンタEW-452A(セイコーエプソン社製)にてベタ柄を中間記録媒体である転写紙へ印刷した。この印刷された転写紙のインク付着面と、同じ大きさのポリエステル布(トロピカル)とを重ね合わせた後、熱プレス機(AF-65TEN、アサヒ繊維機械株式会社)を用いて200℃×60秒の条件にて熱処理し、転写紙からポリエステル布へ昇華転写染色を行ったところ、それぞれ所望の色彩を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明の分散剤の精製方法は、分散剤の低臭気化を可能とし、着色分散液(インク用分散液組成物)及びインク(水性インク組成物)は、低臭気であり、さらに保存安定性が高く、特にインクジェット用水性インク(特には、インクジェット捺染用インク)として非常に有用である。