IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムテックスマート株式会社の特許一覧

特開2024-6500二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法
<>
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図1
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図2
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図3
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図4
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図5
  • 特開-二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006500
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240110BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240110BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240110BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240110BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01M4/62 Z
H01G11/86
H01M10/0565
H01M10/058
H01M4/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107414
(22)【出願日】2022-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】510009832
【氏名又は名称】エムテックスマート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078BA62
5E078BB23
5E078BB33
5H017AA03
5H017AA04
5H017AS02
5H017DD01
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM12
5H029AM16
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029HJ01
5H029HJ05
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB11
5H050DA02
5H050FA17
5H050GA03
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高速スピードでの塗布と乾燥が可能で小型の装置、低い装置イニシャルコスト、低いランニングコスト、および低い炭酸ガス排出を達成する正極の電極形成方法を提供する。
【解決手段】電極用合材スラリーを静電回転霧方式等で粒子化し乾燥して造粒して一次粒子粉体にする。必要により一次粒子粉体と溶媒又はバインダーからなるスラリーから同法で中型粒子を造粒し、必要により大型粒子を製造する。所望するサイズの粉体を集電体に塗布し粉体層を形成し少なくともプレスして瞬時に電極を形成する、または造粒した所望する径の粉体と溶媒でスラリーにし集電体に塗布して短時間で乾燥し寸体層を少なくともプレスして電極層を形成する、二次電池の製造方法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電極を形成し二次電池を製造する方法であって、少なくとも活物質とバインダーと溶媒からなる電極用合材スラリーを作成する工程と、該スラリーを造粒方法により電極用一次合材粒子粉体にするにあたり、該粉体の平均粒子径は活物質の平均粒子径の5倍以下の直径の合材平均粒子径にする工程と、前記粉体を直接集電体に塗布し粉体層を形成する工程または前記粉体と少なくとも溶媒とでスラリーにして集電体に塗布し前記溶媒を揮発させ粉体層を形成する工程と、前記粉体層を少なくともプレスして電極を形成し二次電池にすることを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記合材粒子粉体の固形分の94重量%以上が活物質粒子であって、該活物質の平均粒子径は0.5 乃至6マイクロメートルであって合材粒子の平均粒子径は12マイクロメートル以下の合材一次粒子にすることを特徴とする請求項1の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記合材粒子は正極用電極合材粒子であって導電助剤を含むことを特徴とする請求項2の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記合材粒子は全固体電池電極用合材粒子であって、活物質粒子、バインダー、電解質粒子又は繊維、イオン伝導性ポリマー、導電助剤から選択した固形分と溶媒からなるスラリーから造粒することを特徴とする請求項1の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記造粒方法はスプレイ流を360度回転させてドーナツパターンを形成するスプレイドライ方式、又は回転霧化方式であって、粒子化した微細液体粒子を静電気的に帯電させ、飛行する粒子同士を静電反発させながら移動させ乾燥して造粒することを特徴とする請求項1乃至4の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記造粒方法は回転霧化式粒子ドライ法であって、回転する円板またはベルの少なくともスラリーが遠心力で移動する表面を導電性にして静電気を導通させ、前記円板またはベルからの帯電した粒子が飛行または粒子が落下する方向にアース物体を設置する工程と、円板またはベルを高速で回転させ円板またはベルの前記導電性表面にスラリーを供給する工程と、遠心力でスラリー液膜を円板またはベルの外周に向けて薄く引き伸ばす工程と、前記円板またはベルの外周からスラリーの薄膜を線状に離脱させる工程と、スラリーの線が引き伸ばされ液滴に分離し微細な液滴とし表面張力で微細な球状の液体微粒子にする工程と、帯電した液体微粒子同士を静電反発させる工程と、該液体微粒子を乾燥させて造粒することを特徴とする請求項5の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記スラリーの円板またはベルへの供給工程の上流に異種のスラリー、溶媒、バインダー溶液から選択した1つまたは複数供給し円板またはベル上に第一の薄膜層を形成する工程と該薄膜層上に電極スラリーを供給し第二の薄膜層を形成し円板またはベルの外周から第一および第二の薄膜層が離脱し混合した粒子又は第二の薄膜層を前記第一の薄膜層でカプセル化した粒子にして造粒することを特徴とする請求項1乃至7の二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記一次合材粒子粉体のバインダーの固形重量比率を1.5パーセント以下にして造粒して少なくとも小径の一次合材粒子粉体を作成する工程と、該一次合材粒子粉体と固形分が1パーセント以下のバインダー溶液または溶媒とでスラリーを作成する工程と、造粒方法により一次合材粒子が複数個含まれ前記一次粒子の2乃至6倍の直径の中径乃至大径合材粒子粉体を造粒する工程とにより電極用粉体を製造し、電極を形成してなることを特徴とする請求項1乃至7の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも中乃至大径合材粒子粉体を直接集電体に塗布し粉体層を形成する工程または少なくとも前記中乃至大径合材粒子粉体と少なくとも溶媒とでスラリーにして集電体に塗布し前記溶媒を揮発させ乾燥させ粉体層を形成する工程と、前記粉体層を少なくともプレスして電極を形成することを特徴とする請求項8の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記集電体への電極用粉体塗布は粉体を静電気的に帯電して集電体をアースして塗布を行うことを特徴とする1乃至9の二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記集電体に合材粒子粉体を塗布する前に集電体の微細な凹凸の界面に浸透する液体を塗布する工程と塗布した該液体は少なくとも導電性を有する残留被膜形成生要素を含み該液体は集電体の界面の微細な凹凸に浸透する工程と、前記液体残留被膜と集電体及び粉体との密着性を向上させることを特徴とする請求項1乃至10の二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記集電体に合材粒子粉体または合材粒子粉体を含むスラリーを塗布する前に前記粉体平均粒子径より小さい平均粒子径の粉体と少なくとも溶媒からなるスラリーを集電体に塗布する工程を含むことを特徴とする1乃至11の二次電池の製造方法。
【請求項13】
全固体電池用粉体からなる電極を集電体に形成するにあたり、該集電体と前記粉体との密着が高い固形残留物が得られる液体を薄膜で集電体に塗布する工程と、その上に合材粒子粉体または合材粒子粉体を含むスラリーを塗布する工程と少なくともプレスする工程と、その上に前記粉体平均粒子径より小さい平均粒子径の合材粉体を塗布または少なくとも溶媒を加えてなるスラリーを塗布する工程と、少なくともプレスして電極を形成してなることを特徴とする請求項1乃至12の二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記集電体は長尺方向に移動する集電体であって前記プレスはプレスロールまたは加熱ロールプレスであることを特徴とする請求項1乃至13の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法、全固体電池の製造方法、二次電池、全固体電池に関する。
【0002】
従来、非水電解質リチウムイオンバッテリー(LIB)を含む二次電池の電極形成や、全固体電池の電極形成は電極用合材スラリーを集電体に塗布して溶媒を蒸発させて乾燥させプレスして電極密度を向上させた電極を形成していた。
LIBの正極ではリン酸鉄系や三元系等の活物質粒子、フッ素系バインダー溶液、必要により導電助剤を付加し必要により更にバインダー用の溶媒を追加して固形分濃度を調整し混合した合材スラリーにしてアルミニウム(Al)箔やステンレススティール箔などの集電体にスロットノズルなどで塗布して乾燥してプレスし電極を形成していた。負極活物質には炭素系やシリコン系が採用されバインダー溶液または水系バインダーの場合スチレンブタジエンラバー(SBR)エマルジョンと必要によりセルロース系粘度調整剤(CMC)を加え合材スラリーにして銅箔やステンレススティール箔の集電体に塗布し、乾燥させてプレスし負極を形成していた。正極、セパレーター、負極を積層し電極間に非水電解液を充填しシールしてLIBを製造していた。
【0003】
全固体電池の正極は電極活物質粒子と電解質粒子、例えば硫化物系電解質粒子または酸化物系電解質粒子、またはイオン伝導性ポリマー、その粘度等調整剤としてのセラミックス系微粒子、バインダー微粒子、バインダー溶液から選択し必要により溶媒を加えて合材スラリーにしていた。該合材スラリーを対象物の集電体や電解質層に塗布し、乾燥してプレスし、最終的に集電体、正極層、電解質層、負極層、集電体が積層された積層体として全固体電池を製造していた。
【0004】
LIBや全固体電池のバインダーは正極では一般的にフッ化ビニリデン(PVDF)、四フッ化エチレン(PTFE)等またはPTFEなどの粘度下げるためのイオン伝導性ポリマーでもあるポリエチレンオキサイド(PEO)、必要によりPEOの粘度を更に下げるためエチレングリコール(EG)が選択され単独で、又は混合して使用されていた。一般的に負極のバインダーにはPVDF、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリアミドイミド(PAI)等が使用されていた。しかしPVDF等のフッ素系樹脂を溶解するスラリー用溶媒は高沸点のDMFやノルマルメチルピロリドン(NMP)ぐらいしかなくNMPが多く使用されていた。そのためスラリー塗工ラインスピードが60m/min.以上の高速の場合、乾燥装置は100メートル以上と巨大化していた。また乾燥装置で揮発する溶剤の回収は乾燥装置全体から揮発する溶媒を回収するので巨大な設備となっていた。LIB負極のバインダーのSBRは水系のエマルジョンにするなど溶剤回収は必要としなくても被膜の突沸をさけるためゆっくり乾燥する必要もあるので水の乾燥スピードは遅く乾燥装置に使用する熱量は炭酸ガス排出源になっていた。
【0005】
本発明では電極用合材スラリーを造粒方法で合材粒子の粉体にして、粉体のまま集電体等の対象物に塗布し粉体層を形成することができる。また前記合材粒子粉体と溶媒によるスラリーを作成し、または合材粒子のバインダーを少量含むバインダー溶液又は異種の少量のバインダーと低沸点溶媒と合材粒子粉体からなるスラリーを作成し対象物に塗布し短時間で溶媒を揮発し粉体層を形成できる。又、スラリーの溶媒は沸点の低いPVDFなどのバインダーを溶解しにくい貧溶媒にすることができる。或いはPVDF等を溶解できる親溶媒と貧溶媒の混合体にして沸点の高い親溶媒を貧溶媒で共沸させることができる。いずれの方法も加熱吸着ロール等で加熱し真空吸着した集電体にスラリーを塗布することで気化熱での集電体温度低下を防止し短時間で急速に溶媒を蒸発できる。加熱ロールで集電体に熱伝達するだけでは溶媒が揮発することで集電体は気化熱で温度が低下するので熱伝達効率が悪かった。集電体と加熱ロール間は薄い断熱層があり熱伝導が悪い。しかし加熱し金属箔等の集電体を真空で吸引する加熱吸着ロールや加熱吸着ベルトを使用することで効率よい熱伝導が得られ溶媒の揮発が促進できる。
本発明では、合材粒子はそれぞれの粒子やナノレベルの繊維をメカノケミカル法で一次の合材粒子に造粒することができる。また選択された粒子とバインダー溶液とを混合してスラリーにしてスプレイドライ法で造粒することができる。 またコアシェル構造にするため例えば加温した回転する撹拌機構付き中空容器内の活物質粒子を撹拌させながらバインダー溶液を少量ずつスプレイして核となる活物質の外面にバインダーを薄膜で付着させ、または薄膜で活物質をカプセル化したバインダー被膜を形成し乾燥させ合材粒子を作成できる。導電助剤微粒子やカーボンナノファイバー、ナノチューブなどの短繊維層はバインダー溶液に所望量分散して活物質粒子にコーティングして同時に付着させることができる。乾燥後の合材粒子は例えば超音波篩などで凝集体を選別し所望するサイズの篩で所望する粒度分布にすることができる。
【背景技術】
【0006】
従来、LIB等の二次電池の電極形成は活物質、バインダー、導電助剤、バインダーを溶解する溶媒等でスラリーを作成し、移動する集電体にダイヘッド等で塗工し乾燥していた。前述のように耐熱耐薬品性の面から特に正極のバインダーはPVDFやPTFEなどのフッ素ポリマー系が良く、それを溶解できるバインダーはNMP、DMFなど特殊で沸点の高い溶剤しか選択できなかった。そのため速い塗工スピード、例えば分速60メートル以上になると乾燥炉は巨大化して全長が100m以上に及ぶことさえあった。乾燥炉の動力や熱源はトータルの炭酸ガスの排出源であり、電気自動車でカーボンニュートラル(CN)に貢献できる反面ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から大きな課題をかかえていた。また乾燥装置全体から揮発した溶剤を回収する必要があり回収設備まで巨大化していた。このためこれらの乾燥装置や溶剤回収装置を無くするか短くする以外抜本的な省スペースと電池の大幅なコストダウンにはつながらず対策が求められていた。
昨今、米国のテスラ社から電極用スラリーでの塗工から電極用粉体で電極を形成するドライプロセスの情報が開示されている。
電極用合材粒子からなる粉体を集電体に塗布し加熱圧着することで従来の大型乾燥炉を不要とし更に溶剤回収装置を必要としないので設備の接地面積が1/10以下になるとしている。又、他の課題も解決することで大幅なコストダウンの目標をかかげている。
カーボンニュートラルを追及する電気自動車のバッテリー製造工程は省資源、省エネルギー、省スペースを追求した理想的工法が望まれていた。
【0007】
更に全固体電池は電解質に溶剤タイプの電解質を使用しない固体材料だけから製造できるので安全である。本発明のLIB二次電池の電極材料の合材粒子の粉体を使用するドライ工法は全固体電池に応用できる。全固体電池の電極形成は二次電池の電極合材スラリーに電解質粒子や電解質ポリマーを加えて全固体電池電極用合材スラリーにし、造粒方法で合材粒子粉体にすることができる。更に電極ドライ工法で集電体に粉体層を形成しプレスし、必要により加熱プレスすることで電極を形成できる。金属箔の集電体はRoll to Roll法で巻き出し装置から送り出され粉体塗布装置で粉体電極層を形成しプレスロール装置でプレスして電極を形成し巻取り装置で巻き取ることができる。本発明では特に粉体としてハンドリングしづらい例えば粉体を手で握って手を開いたときサラサラ感が無い安息角がなだらかでない粉体の場合は合材粒子粉体と低沸点溶媒、あるいはバインダーの貧溶媒を主体とする溶媒でスラリーにすることができる。そして集電体に塗布後素早く溶媒を揮発できる。特に集電体は加熱吸着ロールや加熱吸着ベルトで加熱吸着することで短時間例えば秒単位で溶媒を揮発して集電体の上に粉体層を形成できる。そしてプレスすることでドライ法に限りなく近いトータルエネルギーの削減とスペース削減につなげることができる。更に液体としてハンドリングできるので装置をシンプルにできる。全固体電池の場合電解質はイオン伝導性をもつ電解質粒子、例えば硫化物系粒子、酸化物系粒子、イオン伝導性を持つ高分子ポリマー、例えばポリエチレンオキサイド(PEO)、フッ化ビニリデン(PVDF)、その他のポリマーとのマトリックス、前記ポリマーの低分子タイプ、例えばエチレングリコール(EG)、PEO等の可塑剤として使用されるセラミックス系微粒子の中から選択し混合できる。また四フッ化エチレン(PTFE)等の高融点ポリマーはPEOと混合して融点を下げたバインダーとして使用できる。そのためLIBなどの二次電池の正極材料はリン酸鉄や三元系活物質等の活物質とPVDFやPTFE等のバインダーとカーボン粒子、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどの繊維を含み選択した導電助剤の混合材料の粒子(合材粒子)とすることができる。本発明では電極用合材粉体による塗布でも良く、合材粉体とマイルドな低沸点溶媒との混合体であるスラリーであっても短時間で粉体層を形成できる。全固体電池製造工程では除湿雰囲気対応を考慮して無水有機溶剤例えばノルマルヘプタンや無水アルコール系溶剤を使用できる。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するため成されたもので
1.電極性能の良い合材粒子からなる粉体を作成し高性能電極を形成する。
2.電極形成工程で合材粒子のハンドリング性や塗工性を向上させる。
3.または合材粒子粉体塗布に他の手段を付加することで電極性能を向上させる。
4.塗工、乾燥装置に相当する装置設置面積は従来の1/5以下にする。
そのため本発明は以下に特に注力した。
a)電極用合材粉体を集電体に塗布し、少なくともプレスして電極を形成。
b)電極合材粉体からなるスラリーを集電体に塗布し短時間で溶媒を蒸発させ少しの衝撃でもズレない粉体層を形成し、プレスして電極を形成。
c)アンカー効率の高い液体又は微粒子合材粒子からなる電極用スラリーを集電体に薄膜塗布しその上に中乃至大径合材粒子粉体を積層する、または該粉体粒子と同じ平均粒子径の粉体と低沸点の溶媒からなるスラリーを塗布し溶媒を短時間で蒸発させ少なくともプレスしてハイブリッド膜電極層を形成。
本発明では合材粒子の活物質被覆のPVDFなどのバインダーの貧溶媒であるノルマルヘプタンなどを粉体に加えてスラリーにできる。仮にNMPが主体でもノルマルヘプタンを加えるとNMPの蒸発をノルマルヘプタンで共沸させ短時間で揮発させることができる。そのため本発明では少量のNMPで活物質の表面を若干でも膨潤させ溶媒蒸発後の集電体や活物質同士の密着性を向上させることもできる。合材粒子粉体をスラリーにする低沸点溶剤は回収した液化炭酸ガスを含む。液化炭酸ガスは超臨界流体にすることができエアレススプレイノズルからスプレイされる流体は瞬時に粉体になるので静電気的に帯電して塗布することができる。
本発明では、大径合材粒子粉体にすることで集電体に厚膜の粉体層を短時間で形成できるので高速生産に向いている。大径合材粒子粉体と溶媒からなるスラリーにして塗布しても、溶媒揮発流路が短いので乾燥を速くできる。そのため小さなスペースで電極を形成できる。本発明は小径粒子または中径粒子からなる合材粒子粉体のスラリーを否定するものでない。
【0009】
本発明では二次電池電極用として活物質粒子とイオン伝導性ポリマーやバインダー、導電助剤微粒子や繊維、例えばナノサイズを含むカーボン粒子、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン等の中から1種または複数種選択して予め溶媒とまたは前記ポリマーを溶液にして混合することができる。それを造粒し合材粒子粉体を作成できる。全固体電池では無機系電解質粒子や短繊維、イオン伝導性ポリマーを付加し選択した材料からなる全固体電池用合材と少なくとも溶媒とでスラリーにした後造粒装置で造粒すればよい。高分子バインダーとしても採用される単一又は複数混合したイオン伝導性ポリマーは溶融体、溶液としてまたは粒子や繊維化して採用できる。例えばメルトブローン法で作成できる繊維を混合し合材にできる。前記導電助剤は前記バインダー等の溶液と混合して、活物質粒子にスプレイし薄膜でバインダーを被覆しカプセル化できるし部分的に付着させ造粒することもできる。
本発明では最初の合材粒子を一次粒子とすると個々の一次粒子のバインダーが所望する量付着した一次粒子粒子径よりはるかに大きい安定した大粒子径の合材粒子にすることができる。小径、中径、大経粒子の製造方法は限定するものでないが、一次合材粒子と溶媒のみ、または低固形分のバインダー溶液とでスラリーにして一次粒子製造と同じ造粒方法で行うことができる。また小径粉体スラリーから中径、中径粉体スラリーから大経粉体へと段階的に大きい径にしていくことで粉体の質を安定させることができる。更に微粒子液滴同士の接触を避けるためスラリーまたは微粒子を静電気で帯電させ粒子同士を静電反発させて飛行させ乾燥させて所望する合材粒子を製造すると良い。微粒子化したスラリー粒子径は回転霧化法ではスラリー粘度と、回転数と、スラリー供給液量の調整で所望する粒子径にすることができる。そのため活物質粒子の平均粒子径が小さく粒度分布が例えば0.5乃至6マイクロメートル程度の範囲であれば一次合材粒子はできるだけ安定した小径粒子にし、中径、大経と段階的に粒径を大きくすることが望ましい。そうすることで僅かな固形分のバインダーでも大粒子径の外側をカプセル化できまたは粒子同士を固着させることができる。
既存の活物質粒子約95%、バインダーと導電助剤の比率5%程度に対し、昨今の正極の活物質と導電助剤/バインダーの比率は98:2を目標にするまでに至っている。
合材粒子を大型粒子にする場合バインダーを全固形分の2%以下にするには例えば一次粒子バインダー固形含有量を1%含有するようにし、残りのバインダー固形分を中径又は大径粒子用に使用することができる。そしてトータルバインダー量が2%以下になるようにしたら良い。なお本発明では一次粒子と大径粒子等のバインダー比率は自由に設定できる。
本発明では2ステップ或いは複数ステップで合材粒子径粉体を大径粒子にすることができる。例えば平均粒子径が20乃至70マイクロメートル程度のシャープな粒度分布にすると大きい径にするほど安息角をそれほど気にすることなくなる。又エジェクターポンプの粉体吸引をパルス的に、吸引時間を50ミリ秒以下で行うことでフルダイズ流動適性が悪い粉体であっても吸引量を安定させることができる。パルスサイクルは1乃至1000サイクル/秒の範囲で調整すると良い。粉体吸引圧を高くし吸引時間を50ミリ秒以下でパルス的に動作させるとするほど塗布量は安定する。結果として噴出量が安定する。また粉体をパルス的に、インパクトを与えて集電体に噴出することで塗布後の粉体の嵩密度を高く積層できる。ラインスピードが変化する場合は特にパルス間隔をライン追従させることができる。合材粒子径をできるだけ大きく球に近づけ粒度分布をシャープにすると粉体塗布であってもスラリー塗布でも塗布装置の流体ハンドリング性が向上し塗布が容易で粉体電極形成がしやすくなる。また粉体粒子径が大きいと電極を厚膜にしやすく、スラリータイプにしても溶媒の蒸発がしやすい。
バインダー等の貧溶媒または貧溶媒を主体にすることでバインダーを膨潤させないこともできる。溶媒は液化炭酸ガスで良い。アルコールでよく硫化物系電解質粒子を用いる場合は無水アルコールで良い。LIBの負極は水又は水とアルコールの混合溶媒で良い。また本発明では合材粒子粉体や合材粒子粉体からなるスラリーを対象物に塗布して短時間で溶媒を揮発して粉体層形成することができる。
本発明では粉体(Dry工法)と液状材料又はスラリー(Wet工法)を効率よく積層または混合することができ単独でも組み合わせでも応用することができる。
【0010】
従来、LIB等の二次電池の電極形成は活物質、バインダー、導電助剤、バインダーを溶解する溶媒等でスラリーを作成し、移動する集電体にダイヘッド等で塗工し乾燥していた。塗工スピードを上げることで乾燥炉は巨大化して全長が100m以上に及ぶことさえあった。乾燥炉の動力や熱源はトータルの炭酸ガスの排出源であり、電気自動車でカーボンニュートラル(CN)に貢献できる反面ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から課題をかかえていた。
一方電極形成時、溶剤を使用しない粉体によるドライ電極形成法は粉体電極層を形成後短時間でプレスと必要により加熱プレスとで装置設置面積が大幅に少なくて済むので理想的であった。また活物質粒子が小さく微粉になるほど表面積が広くなり理想的であった。しかし粉体は微粉になるほど凝集が多くなり嵩比重が安定しないため塗布重量で管理できない大きな課題があった。
一方、固形分の94%以上を含む活物質の平均粒子径は0.1乃至6マイクロメートルと小さいがスラリーから造粒した合材粒子粉体の平均粒子径は70マイクロメートル程度が所望され、いきなり巨大化させていた。そのため粒子形状は歪で脆く粉体のハンドリング性に欠けていた。
微粉粒子は嵩比重が不安定でフワフワして供給された粉体をドクターブレード等で厚み調整する方法や、電動スクリュー式のオーガフィーダー等の容積式フィーダーで粉体を容積的に移送し粉体塗布重量を一定にして集電体の平方センチメートル当たりの粉体重量を一定にすることは難しかった。また数マイクロメートル程度以下の微粉は凝集し嵩比重が低く堆積した粉体でもフワフワしていた。微粉粉体粒子は機械的振動等で空中に舞い上がると空気リッチの気粉混合体のエアロゾル挙動と同じで空中で希釈され浮遊し完全に気体の流れに左右されていた。
粉体粒子の塗着は高速雰囲気下では更に難しかった。例えば平均粒子径が数十マイクロメートル程度の静電粉体塗装の一般の粉体粒子でさえ帯電させても高速例えば分速30mあるいはそれ以上で移動する対象物上に発生する気流の流れに粉体流は左右され対象物が高速になればなるほど高速気流に衝突した粉体は飛散し粉体の付着量は極めて少なく対象物外に粉体が飛び散っていた。また一般的な粉体塗装用粉体は静電気的に十分帯電しやすい樹脂量で構成された粉体となっている。一方、二次電池電極形成のため活物質粒子などのバインダーは絶縁体のため電極層全固形分トータルの数パーセント以下更には1%程度を目標にするなど極めて微量であった。
このためバインダー含有率の低いLIBや全固体電池の電極用合材粒子粉体は帯電が不安定になっていた。
かつ前記の様にLIB電極形成のスラリー塗工のラインスピードは分速60m以上の高速のため、スラリーの代替の粉体による高速粉体塗膜形成は業界の常識とかけ離れていた。
本発明者は前記参考文献の詳細の説明の発明の利用分野でLIBなど二次電池電極形成に効果的としている。それは粉粒体の単位面積当たりの粉粒体重量を一定にして吸引し噴出して対象物の単位面積当たりの塗布重量を安定させることを目標にしていた。しかし既存のLIBのWet式のスラリーによる電極形成スピードは増々速くなり60m/min. 乃至80m/min. の高速であることから現行生産ラインの要望に対応する必要があった。さりとて合材スラリーからいきなる大粒子径合材粉体にするとバインダーが少なすぎるため粒子形状が不安定で粉体としてのハンドリング性に難があった。
前記のように、テスラ社から電極用スラリーでの塗工から電極用粉体での電極形成に変更するドライプロセスの情報が開示されている。電極用合材粒子からなる粉体を塗布し加熱圧着することで従来の大型乾燥炉を不要とし更に溶剤回収装置を必要としないので設備の接地面積が1/10以下になるとしている。
電気自動車のバッテリー製造工程向けは省資源、省エネルギー、省スペースを追求した理想的工法といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6760882号
【特許文献2】WO2014/171535
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は既存の二次電池や全固体電池等の従来のスラリー式電極形成の製造方法よりカーボンニュートラルにより貢献すること。性能や品質は同等で、単位ワット時当たりのコストを下げること。その為に、省資源、省エネルギー、省スペースを限りなく追求することである。また電極形成や電池セルなどの成果物トータルの生産スピードを従来工法と同等以上にすることである。更に電極などの性能をより向上させるため本発明ではWet方式とDry方式の長所を取り入れ装置の設置スペースを従来の1/3以下、可能なら1/5以下にすることも目的の一つである。そして本発明を次世代二次電池の全固体電池やスーパーキャパシター等の電極や電解質層の製造方法にも応用することができる。
【0013】
引用文献1には二次電池の電極形成で、粉体で塗布するにあたり、バインダーと溶媒からなるバインダー液を集電体に塗布し、活物質粒子とバインダーと溶媒から造粒した合材粒子粉体をホッパーから供給しスキージーで均し、プレスローラーでプレスし平均合材粒子径(D50)とプレスした後の粉体層厚み(t)の比を0.5<t/D50<1にすることを提案している。
引用文献2は本発明者により発明した粉粒体の塗布方法であって対象物に噴出する噴出口と連通する吸引口から吸引する単位面積当たりの粉体重量を一定にし、産業上の利用可能性で二次電池の電極形成などに応用できるとしている。粉粒体の単位面積当たりの塗布重量を一定にする塗布は液体と違い難しい。
溶液などの液体や溶融体は粘度を一定にし、圧力を一定にし、吐出口面積を一定にするだけで単位時間当たりの塗布重量は一定にできる。溶液や溶融体の密度を一定にすることができると容積ポンプで圧送することで塗布重量は一定になり管理しやすい。溶液やエマルジョンなどは温度を一定にすることで粘度が一定になり、装置の精度を上げることで上記の手段を一定にさえしたら短時間当たり例えば1ミリ秒あたりの塗布重量を一定にできる。しかし電極用合材粒子粉体は嵩比重が変化するので一定にすることは極めて難しかった。
粉体の塗布を安定させるには粉体の造粒を安定させ粉体合材粒子内部を安定させる必要があった。可能なら密度の高い粉体が望ましかった。一般的にNMPなどの高沸点溶媒の揮発を速めるため溶剤量を少なくするとバインダーが少なすぎることもあってスラリーのスプレイ液滴は球になりにくかった。そのため粉体粒子はいびつで粒子の内部や外部はボソボソした大粒子径になりやすかった。そもそもロールスキージ等での均しのためLIB向け電極粉体の粒子径は60乃至100マイクロメートル程度の粒子が所望されていた。
一方造粒過程のスプレイ粒子や円板やベルの回転霧化法だけではWET粒子同士が空中でお互いに付着し粒子径が安定しないなどの課題を抱えていた。
また負極の高性能化につながるシリコン粒子と炭素系の粒子や繊維のハイブリッドではバインダーのSBRなどを結着材として構造体を形成する試みがなされていた。シリコン粒子径も5マイクロメートル前後がよいとされていた。
参考文献2では単位面積当たりの粉体の塗布重量を一定にしにくい粉粒体の特性を見越して粉体の吸引量である単位面積当たりの粉体重量を安定さ流路が連通する噴出口から噴出し最終被塗物の単位面積当たりの塗布重量を安定させることを目標にしている。
しかし高速生産スピードの集電体の塗布を行うことには言及しておらず60m/min.以上の集電体の移動でも電極用粉体層を形成する必要があった。
【0014】
文献1の基材(集電体)と結着材液または乾燥結着材と活物質等の電極用合材粉体は絶縁層で縁切りされることになる。
密着性の面からは結着材塗布は重要であるが乾燥被膜の絶縁性が問題になる。昨今の正極のバインダー量は性能の面から全固形分の2%更には1%程度を目標にするなど極めて低いので界面の密着力を高めることは重要である。また粉体をホッパーから供給し粉体膜厚を均しながらプレスロールに供給することから静電気による付着力を期待できない。
一方通常粉体塗装の粉体の樹脂分は100%のクリヤー樹脂または数十%が樹脂分の為静電気的に帯電がさせやすい。一方電極用合材粒子のバインダー(樹脂)の固形量は2%程度以下帯電させにくく帯電状態は不安定になるので集電体への粉体層の形成には十分な対策が必要であった。
【0015】
帯電効果が低いと合材粒子の集合体の粉体は粉体を移送するガス例えば圧縮気体の流量に左右され対象物に衝突した粉体は気体と一緒に跳ね返るので塗着効率は極めて悪くなる。一方合材粒子は特にサラサラした粒子(安息角が低い)にできにくいので、ハンドリングが難しい。高分子イオン伝導性ポリマー例えばPEOやEGを混合したPTFEやPVDF粉体を手で握ると固着しやすい。そのようなバインダーを混合した合材粒子粉体にすると流動性が無く、微粉にすると更に裾野方面へのなだらかな広がりは無くなりハンドリングは一層困難になっていた。そのため定量式フィーダー等で移送して塗布することも難しかった。一方このようなバインダーやイオン伝導性ポリマーを溶液にすると集電体との密着性が良いのでナノサイズのカーボン粒子やファーバー、チューブと混合して集電体に塗布しそのまま、または半乾燥、乾燥してその上に粉体層を形成できる。通常フッ素系樹脂の親溶剤はNMP等でありポリマーを溶解した後貧溶媒例えば低沸点溶媒のノルマルヘプタンなどを付加しNMPと共沸させ素早く揮発できる。また対象物上の薄膜液体層の上に粉体を塗布するDry on Wet方式を採用すると集電体や粉体への濡れ性が良い液体例えば溶媒を選択すると粉体粒子間に素早く薄膜液層が浸透し溶媒は瞬時に乾燥させることができる。そのため液体の固形分は少なくて良く、例えば10%以下更には1%であっても良い。本発明では上記バインダー溶液とナノレベルの導電助剤からなるディスパージョンだけでなく該ディスパージョンと活物質を付加してスラリーにしても良い。または前記合材粒子、可能なら微粒子合材粉体と溶媒からなるスラリーでも良い。液体の活物質や合材粒子の平均粒子径は粉体層の平均粒子径より小さくすると集電体との界面が固形粒子の細密充填になるので良い。
【0016】
LIBの電極用導電助剤はバインダーに予め混合しても良く、更に活物質粒子と一緒に混合し活物質、バインダー、電助剤からなる合材スラリーにして造粒し合材粒子にしても良い。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するためなされたもので合材粒子の粉体で電極を形成するにあたり、
1. 活物質とバインダー必要により導電助剤の合材粒子のポリマー量が少ないためバインダーを均一に付着または被覆すること。
2. バインダーが少ないと合材粒子粉体は静電気による帯電効率が悪い。それでも集電体などの対象物に塗布できること。
3. 高速移動する対象物への粉体塗布はハードルが高すぎるが塗布を可能にすること。
4. 集電体等の移動速度例えば60m/min.以上であっても所望する単位面積当たりの塗布重量で粉体電極層を形成できること。
5. そして所望する回数プレスしてまたは加熱プレスして電極を形成できること。
以上を満足する必要がある。塗布は複数の薄膜積層または薄膜塗布と所望するプレスとを複数回繰り返すことができる。実験室レベルや小さい電極を形成する場合のプレスは平面プレス装置等を使用しても良い。全固形のバインダー比率が2%以下の場合、必要により加熱して10kN/cm乃至 50KN/cmの範囲の所望する線圧でプレスすると集電体と電極の密着性が向上し緻密な電極構造にできるのでプレス線圧は重要な要素になる。全固体電池で電解質中のイオン伝導性ポリマーが主の場合は加温して軟化点以上にすると高圧プレスすることでポリマーが空隙まで流動し浸透するので線圧は比較的低くても済むことになる。全固体電池の電極の場合、電極の表面は電解質層と細かい箇所まで接触または介在させる必要がある。そのため本発明では電解質ポリマーを不活性ガス等でフォーム化し更に柔軟性を上げて空隙に浸透させるなど効率よく使用することができる。また本発明では少ないバインダー量を効率的に活物質に被覆するため、活物質をバインダー溶液、必要により導電助剤を付加し被膜した一次粒子に造粒する工程を経て、一次粒子を所望数含んだ小乃至中粒子径の合材粒子を造粒することができる。中径粒子粉体からなるスラリーから造粒方法で大径の理想的な粒子形状の合材粒子を作成できる。もちろんのこと本発明では造粒方法を改良し合材一次粒子径スラリーから大粒子径粉体を造粒できる。粒子径は便宜上本発明ではおおまかに小径を15マイクロメートル以下、中粒子径を15乃至40マイクロメートル、大粒子径を40マイクロメートル以上として扱う。本発明では全固体電池電極向けの電解質は粒子、繊維に限定せず硫化物系、酸化物系から選択できる。またイオン伝導性ポリマーも粒子、溶融体、溶液等どの形態でも使用が可能である。それらの電解質を選択して単独または複合で使用可能で活物質粒子との合材粒子にすることができる。更にイオン伝導性ポリマーやその分散剤の無機系セラミックス微粒子との混合体との合材として使用できる。イオン伝導性ポリマーは必要によりバインダーと混合し溶液または微粒子にして使用できる。バインダーやイオン伝導性ポリマーは溶剤と混合して溶液にすることで活物質に容易に被覆できるので他の無機系電解質粒子例えば硫化物系や酸化物系電解質粒子や短繊維や可塑剤としてのセラミック微粒子を選択し所望する量配合し混合できる。また活物質の表面積は大きくした方が良いので活物質の粒子径は可能な限り小さい方が良い。全固体電池での電解質粒子もそれに対応する付着や被覆が望ましい。活物質の表面積を大きくするには小径だけでなくナノレベルまたはサブミクロンレベルの径の凹部や貫通孔を持つ多孔体が望ましい。カーボン粒子やファイバーのナノ孔に硫黄を充填する場合で無水電解液を使用する場合は、多孔質は無水電解液が浸透しない2ナノメートル以下にする必要がある。負極の活物質の炭素系導電材やシリコン粒子もシリコンの膨張収縮に対応する構造体形成がしやすい多孔体が良い。
【0018】
特徴ある本発明の二次電池の製造方法はその電極形成方法を例えば電気二重層コンデンサ―等を含むキャパシター電極、水電解の電極形成に応用できる。更にはDry法とスラリー法の単独または組み合わせで使用することで発展的に他分野に応用できる。
そのため本発明は以下内容で説明できる。
【0019】
本発明は二次電池の電極を形成し二次電池を製造する方法であって、少なくとも活物質とバインダーと溶媒からなる電極用合材スラリーを作成する工程と、該スラリーを造粒方法により電極用一次合材粒子粉体にするにあたり、該粉体の平均粒子径は活物質の平均粒子径の5倍以下の直径の合材平均粒子径にする工程と、前記粉体を直接集電体に塗布し粉体層を形成する工程または前記粉体と少なくとも溶媒とでスラリーにして集電体に塗布し前記溶媒を揮発させ粉体層を形成する工程と、前記粉体層を少なくともプレスして電極を形成し二次電池にすることを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の合材粒子粉体固形分の94重量%以上が活物質粒子であり、該活物質の平均粒子径は0.5 乃至6マイクロメートルであって合材粒子の平均粒子径は12マイクロメートル以下の合材一次粒子にすることを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の合材粒子は正極用電極合材粒子であって導電助剤を含むことを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の合材粒子は全固体電池電極用合材粒子であって、活物質粒子、バインダー、電解質粒子又は繊維、イオン伝導性ポリマー、導電助剤から選択した固形分と溶媒からなるスラリーから造粒することを特徴とする二次電池の製造方法。
【0023】
本発明の造粒方法はスプレイ流を360度回転させてドーナツパターンを形成するスプレイドライ方式、又は回転霧化方式であって、粒子化した微細液体粒子を静電気的に帯電させ、飛行する粒子同士を静電反発させながら移動させ乾燥して造粒することを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の造粒方法は回転霧化式粒子ドライ法であって、回転する円板またはベルの少なくともスラリーが遠心力で移動する表面を導電性にして静電気を導通させ、前記円板またはベルからの帯電した粒子が飛行または粒子が落下する方向にアース物体を設置する工程と、円板またはベルを高速で回転させ円板またはベルの前記導電性表面にスラリーを供給する工程と、遠心力でスラリー液膜を円板またはベルの外周に向けて薄く引き伸ばす工程と、前記円板またはベルの外周からスラリーの薄膜を線状に離脱させる工程と、スラリーの線が引き伸ばされ液滴に分離し微細な液滴とし表面張力で微細な球状の液体微粒子にする工程と、帯電した液体微粒子同士を静電反発させる工程と、該液体微粒子を乾燥させて造粒することを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の前記スラリーの円板またはベルへの供給工程の上流に異種のスラリー、溶媒、バインダー溶液から選択した1つまたは複数供給し円板またはベル上に第一の薄膜層を形成する工程と該薄膜層上に電極スラリーを供給し第二の薄膜層を形成し円板またはベルの外周から第一および第二の薄膜層が離脱し混合した粒子又は第二の薄膜層を前記第一の薄膜層でカプセル化した粒子にして造粒することを特徴とする二次電池の製造方法。
【0026】
本発明の前記一次合材粒子粉体のバインダーの固形重量比率を1.5パーセント以下にして造粒して少なくとも小径の一次合材粒子粉体を作成する工程と、該一次合材粒子粉体と固形分が1パーセント以下のバインダー溶液または溶媒とでスラリーを作成する工程と、造粒方法により一次合材粒子が複数個含まれ前記一次粒子の2乃至6倍の直径の中径乃至大径合材粒子粉体を造粒する工程とにより電極用粉体を製造し、電極を形成してなることを特徴とする二次電池の製造方法。
【0027】
本発明の前記少なくとも中乃至大径合材粒子粉体を直接集電体に塗布し粉体層を形成する工程または少なくとも前記中乃至大径合材粒子粉体と少なくとも溶媒とでスラリーにして集電体に塗布し前記溶媒を揮発させ乾燥させ粉体層を形成する工程と、前記粉体層を少なくともプレスして電極を形成することを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0028】
本発明の集電体への電極用粉体塗布は粉体を静電気的に帯電して集電体をアースして塗布を行うことを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の集電体に合材粒子粉体を塗布する前に集電体の微細な凹凸の界面に浸透する液体を塗布する工程と。塗布した該液体は少なくとも導電性を有する残留被膜形成生要素を含み該液体は集電体の界面の微細な凹凸に浸透する工程と、前記液体残留被膜と集電体及び粉体との密着性を向上させることを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0030】
本発明の集電体に合材粒子粉体または合材粒子粉体を含むスラリーを塗布する前に前記粉体平均粒子径より小さい平均粒子径の粉体と少なくとも溶媒からなるスラリーを集電体に塗布する工程を含むことを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0031】
本発明は全固体電池用粉体からなる電極を集電体に形成するにあたり、該集電体と前記粉体との密着が高い固形残留物が得られる液体を薄膜で集電体に塗布する工程と、その上に合材粒子粉体または合材粒子粉体を含むスラリーを塗布する工程と少なくともプレスする工程と、その上に前記粉体平均粒子径より小さい平均粒子径の合材粉体を塗布または少なくとも溶媒を加えてなるスラリーを塗布する工程と、少なくともプレスして電極を形成してなることを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0032】
本発明の集電体は長尺方向に移動する集電体であって前記プレスはプレスロールまたは加熱プレスロールにより行うことを特徴とする二次電池の製造方法を提供する。
【0033】
本発明の二次電池や全固体電池電極用合材は、少なくとも電極用活物質粒子、電解質粒子、電解質繊維、無機微粒子、バインダー、バインダー溶液、イオン伝導性ポリマー、イオン伝導性ポリマー溶液、導電助剤から選択し必要により溶媒を加え混合してスラリーにし、造粒して粉体にすることができる。核になる活物質粒子に単一または異種の材料を含むスラリーや溶液などの液体をコーティングしカプセル化しても良い。一次粒子は複数の微細粒子例えばナノ粒子等を混合しながら粒子化するミリング法やメカノケミカル法の微細粒子でもでも良い。電極用の複数の固形粒子や繊維、ポリマー固形分と溶媒とで電極ススラリーを作成しスプレイドライ法等で造粒できる。粒度分布を安定するには静電ディスクの円板や静電ベルのベルやカップを高速で回転して遠心力で液膜を薄く引き延ばしより微粒化させる工法が適している。同じ回転数で回転ブレが無いなら円板は大径ほど良い。直径が100ミリメートルより350ミリメートルが良い。特に平均粒子径が6マイクロメートル以下のサブミクロンを含む大小の活物質粒子を少なくとも数個以内大きめの粒子なら一つしか含まない一次粒子作成が理想である。活物質との重量比で1.5%以下のバインダーを被膜した微細粒子の一次合材粒子作成を所望するには静電ディスクやベルなど静電回転霧化法が適している。更に中乃至大径粒子作成にも回転数とスラリー流量を調整することで静電ディスクやベルが好ましい。本発明では静電気の有無は問わない。例えば飛行する粒子密度を租にするためスラリーの供給をパルス的に行うことができる。造粒の生産量の調整もパルス回数で変更して常に所望する平均粒子径にすることができる。所望する粒子径の造粒を行う場合、同一条件例えば円板などの回転数や連続流のスラリーの1分間間当たりの流量を一定にし、1秒間のサイクル数と1サイクルに占めるスラリーの吐出時間から造粒量を算出できる。造粒粒子径を一定にし、単位時間当たりの造粒量を変化させたい場合、本発明ではスラリーや液体の供給をパルス的に行える。この方法は空中での液状粒子同士の接触による結合や凝集を防ぐ効果があり静電反発だけで解決できない場合極めて重要である。スラリー等の供給時間が0.01秒で1秒間に10サイクルのパルス供給の場合連続供給に対し、1/10の造粒量になる。円板の回転数が12000r.p.m.の場合1秒当たり200回転、スラリー吐出時間の0.01秒当たり2回転することになる。そして円板やベルの外周より1分間に600回ドーナツ状の無数の粒子群の輪が外側に広がり粒子群が租になりながら飛散する。つまり0.1秒間隔のドーナツパターンが断続的に高速間欠で360度にわたって外に拡散していくことになる。この方法は空中での粒子同士の接触が更に少ないので粒子同士の凝集を少なくできる。液体供給吐出時間は円板やベルの回転に対して1回転以上の供給が望ましい。円板などの回転数は所望する粒子径にするため調整できる。パルスサイクルは1乃至1000から自由に選択できる。パルスは更に高サイクルで良く液体や溶融体等の流体の供給はインクジェットで行っても良い。
円板の径は限定しないが一般的に8インチから12インチと大径であるので回転数は15000回転/分以下が一般的である。小径にすると回転数は上げることが容易である。ベルの場合の径は約30乃至50mm程度であるので50000回転/分以下にするのが一般的である。それぞれ粒子径や用途に合わせて回転数は決定したらよい。本パルスでの流量制御は流量を変化させてもパルス当たりの短時間当たりの流量は連続流の短時間当たりの流量と同じである。そのため粒子化できる一番良い条件を見つけ実施し、所望する造粒量はパルス的に行うと良い。常に所望する粒子径にでき、粒度分布を一定に保つことができる。そのため各分野の液体や溶融体の造粒や短繊維化は勿論、微粒子によるコーティングや接着剤塗布分野、特に一般塗装分野に好適に応用できる。
よって本発明の回転体によるパルス的造粒方法は二次電池合材粉体以外に製薬や食品、ケミカル分野の造粒に好適に応用できることになる。
【0034】
通常リチウムイオン電池等の電極バインダーはフッ化ビニリデン(PVDF)が多く使用されそれを溶解させるにはノルマルメチルピロリドン(NMP)やDMFなど限られた高沸点溶媒のみになる。そのため電極スラリーなどの塗布後の乾燥時間が長くなり、厚膜で短時間乾燥を求めるとクラックが発生するなどの問題が発生していた。本発明では予めバインダーを活物質粒子等に薄膜でカプセル化させる、あるいは部分的に微量を付着させて造粒し一次粒子にすることができる。そのため微粒子にすると表面積が広くなり熱風と接触するチャンスが多いので急速乾燥できる。そのため造粒工程も小型でコンパクトにできる。また電解質ポリマーとして用いられるポリエチレンオキサイド(PEO)とPTFEやPVDFを混合して融点を低下せせることができる。この方法で造粒した活物質や電解質粒子等を含む合材粒子は粉体としてハンドリングし塗布することができる。塗布は本発明者が発明し権利を有する特許第6328104号、特許第6481154号を好適に応用できる。
【0035】
粉体層形成後はプレス例えば5KN/cm乃至50KN/cm程度の線圧で電極形成きる。
ロールプレスのロールはバインダーの軟化点以上に加熱することができる。
イオン伝導性ポリマーのPEOは全固体電池では電解質として使用できる。PEOは他の樹脂とのマトリックス或いはPTFE、PVDFと混合し軟化点を下げることができる。更にはセラミック微粉粒子を粘度や流動性調整剤として使用できる。更に酸化物系電解質粒子や硫化物系電解質粒子と混合して電解質材料として応用できる。PEOは粉体として使用することができるが安息角の面で粉体的ハンドリングには難があった。本発明では粉体としてサラサラ感の無い流動性の低いPEOを使用する場合はスラリーにして合材粒子粉体にして使用した方が良い。それをPVDFの貧溶媒の例えばノルマルヘプタン等や回収した液化炭酸ガス、その他の超臨界性流体等の溶媒でスラリーにし、集電体等の対象物に塗布し、特に加熱した対象物に塗布することで瞬時に粉体直接塗布より密な粉体層形成ができる。そのため後工程の加熱プレスがよりやり易くなる。
【0036】
一方、硫化物系電解質例えばアルジロダイト系はイオン伝道度が良いが露点がマイナス50℃更にはマイナス70℃以下の除湿雰囲気やアルゴンガス等の不活性ガスの封入が必要で、設備が大型化する傾向にあった。
そのため硫化物系電解質系全固体電池の電極材料を使用する場合は可能な限り除湿雰囲気体積を小さくすることがコスト削減につながることになる。本発明の電極形成は既存の非水電解液LIB以外に全固体電池では更に効力を発揮することになる。
本発明では合材粒子粉体だけの塗布と加熱だけでなく、該合材粒子粉体と溶媒からなるスラリー、前記粉体と低濃度例えば1%以下のバインダー溶液からなるスラリーを集電体等に塗布して瞬時に溶媒を揮発できる。溶媒はPVDFなどのフッ素系バインダーやポリアミドイミドなどの高分子ポリマーを溶解するNMP等でなくそれらの貧溶媒例えばノルマルヘプタンで良い。他の無水タイプの低沸点溶剤で良い。そのため微量なアンカー用薄膜液体層やスラリー更にはゲル材料とドライ法の粉体の組み合わせのDry on Wetが可能になる。もちろん小径粒子粉体乃至大経粒子粉体のあらゆる組合せが可能である。固体原料混合体の合材粒子と例えば貧溶媒主体の溶媒でスラリーにして加熱した集電体などに塗布し短時間で溶媒を揮発することができる。
更には特にPEOなど電解質ポリマーと活物質からなる合材粒子粉体を、イオン伝導性溶剤例えばPCやEC等を少量例えば15パーセント以下、可能なら5パーセント加え必要により可塑剤等を加えスラリーまたはゲルとして流動性を持たせて塗布することで必要なイオン伝導ネットワークゲルを構築できるので本発明では半固体電池製造も可能である。
【発明の効果】
【0037】
上記のように従来の二次電池や全固体電池の電極形成は少なくとも電極用活物質粒子、無機電解質粒子、無機電解質繊維、無機微粒子、フッ素系バインダーや高分子のイオン伝導性電解質ポリマー、導電助剤から選択した混合材料とPVDF等を溶解できるNMPなどの高沸点溶剤を混合しスラリーにして集電体等の対象物に塗布する構成になっていた。そのため既存の二次電池の電極形成高速ラインでは100m前後の巨大な乾燥炉を必要としていた。
既存方法は莫大な工場設置スペースと動力や乾燥の為のエネルギーを必要としていた。大型乾燥炉と大型溶媒回収設備が必要で莫大なコストを必要としていた。
本発明は二次電池などの前記電極材料の内、選択した混合材料を粒子にした粉体としてハンドリングし集電体等の対象物に塗布し、必要により熱可塑性バインダーや電解質ポリマーの軟化点以上、可能なら融点以上に加熱しプレスすることで電極を形成できる。
基本的に溶媒を使用したスラリーから造粒し粉体にすることで溶媒を揮発させる必要があるが造粒装置は小型でコンパクトなため溶剤回収も動力も既存装置の溶剤回収装置と比べて超小型で済むことになる。
また合材粒子粉体をスラリーにした場合であっても沸点の低いマイルドな溶媒を使用し基本的に加熱した集電体に塗布するので溶媒は瞬時に揮発する。その為小型でコンパクトな溶剤回収装置で済む。
無機微粒子はPEOなどのポリマーの外部に付着させ流動性を上げることができる。活物質粒子と電解質の接触や空隙の未充填の課題はプレスによるポリマーの延びで空隙への侵入を可能にできるのでその課題も解消できる。本発明では上記合材粒子やポリマー系電解質やバインダーを窒素ガス等でフォーム化できる。合材粒子をフォーム化することでプレス工程ではフォーム化したポリマーは流動し空隙に侵入する。フォームは前記線圧での圧縮でナノレベルに圧縮されるので良好な電極形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施の形態に係る電極用合材粒子粉体製造に関し合材粒子にする過程を示した回転造粒式の略平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る合材スラリーからWET微粒子化に至るまでの装置の略断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る合材粒子粉体を粉体塗布装置で集電体に塗布し粉体層を形成しプレスロールでプレスし電極を形成する過程の装置の略断面図である。
図4】本発明の実地の形態に係る合材粒子粉体と溶媒からなるスラリーまたは合材粒子粉体とバインダー溶液方なるスラリーを加熱吸着した集電体に塗布し粉体層を形成しロールプレスして電極を形成する略図断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る集電体に液体と合材粒子粉体とを塗布しロールプレスして電極を形成する装置略図の略断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る集電体にスラリーを含む液体と粉体層とロールプレスによる電極層と小径粒子径の粉体と溶媒からなるスラリーを加熱手段の上の集電体に塗布し、再度ロールプレスする装置略図の略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。尚、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0040】
図面は本発明の好適な実施の形態を機略的に示している。
【0041】
図1に於いて高速回転する円板1に滴下した合材スラリー101は遠心力で薄膜になり円板の外周から線状2で飛び出しちぎれて細長い小さな液滴になり液体の微粒子4になって飛行する。図示していない熱風雰囲気下を飛行し乾燥して合材一次粒子になる。加温は粒子のみを加熱する遠赤外線などの誘導加熱でも良い。
【0042】
図2に於いて容器210内の合材スラリー25はサクションホース211を経由してポンプ26で吸引され圧送され循環ホース202から吐出バルブ27更に循環ホース203を経由してタンクに戻る。スラリーは循環回路を常に循環するので沈殿や分離の心配はない。必要により均一な混合や分散をさせるためにスタティックミキサーやダイナミックミキサーなどの装置を付加できる。またタンク内に撹拌装置を取り付けることができる。回転霧化装置28の先端部の円盤21は高速で回転する。少なくともスラリーが移動する箇所は伝導体にすることができ、静電気で帯電できる。円板部の上流に配置した吐出バルブ27からスラリーを供給する。スラリーは高速回転の円板やベルの遠心力で瞬時に薄膜になって外周に到達し円板21外周がナイフエッジ処理では薄い液膜になり細かい液滴になる。一方外周を微細な溝加工や鋸刃状形成することで細い糸状の線となって外部に放出させ、ちぎれて微細な液滴になりスピードのエネルギーが少なくなると液体の表面張力で球状の微粒子となる。微粒子は移動にともない衝突する熱雰囲気と風の流れで乾燥し粉体となる。スラリーの粘度が低く凝集力が低いほど微粒子になり易い。円板の代わりに回転するベルやカップ形状にすることで同じ効果が得られる。造粒を常に所望する粒子径にする場合、円板等の回転数とスラリー供給流量を決定し、粘度を一定にすることで可能になる。単位時間当たりの造粒量を変え粒子径を一定にしたい場合は、吐出バルブの供給を所望するパルスで調整することで可能になる。粒子径を一定にしたい場合、造粒量は短時間吐出とパルス数を調整するやりかたが望ましい。例えば1秒当り10サイクルで吐出時間を0.015秒にすることでパルス的に行うことで飛行する粒子は粗になり粒子同士の結合や凝集が少なくなる。更に静電的に粒子をチャージし粒子同士の静電反発をサポートするため雰囲気の風量と風速をコントロールし空中での風の影響による粒子同士の結合を防ぐ必要もある。そのような点から風量風速は最低限にし、粒子加温は遠赤外線ヒーターを効率的に使うと良い。
粘度を下げ粒子径を小さくしたい場合は円板のスラリー供給部より上流に溶媒を供給し、溶剤希釈とほぼ同じ効果を得ることができるので、沈殿しやすいスラリーには効果的である。この方法は異種の液体や、スラリーの混合やカプセル化にも応用できる。
本発明では合材スラリーから造粒した粉体は二次電池集電体に直接塗布し粉体層をプレスして電極形成ができる。また合材粒子粉体と溶媒や低固形分のポリマー系バインダーやイオン伝導性ポリマーとの溶液とでスラリーにし集電体に塗布して溶媒をすばやく揮発し粉体層を形成しプレスして電極形成できる。
前記造粒し塗布する合材粒子粉体は一次粒子で良く、合材粒子粉体スラリーからいきなりまたは段階を踏んで小径粒子乃至大径粒子を作成して応用できる。
【0043】
図3においてスプレイドライ法などで造粒した粉体34を粉体供給装置301のホッパー35に充填する。粉体はエジェクターポンプ32に圧縮ガスを付加することで粉体34を吸引し流路33を経由して気粉混合体として圧送される。余剰なガス量は分岐した流路37から排出し、粉体リッチの気粉混合体は流路36を経由して粉体塗布装置31に移動し集電体30に塗布される。流路36は上流の流路33より直径を例えば1/5に小さくできる。例えば内径2mmのPTFEチューブにできる。
アースされた集電体30への粉体の付着は静電発生装置303からのケーブル304先端のコロナピンで帯電することで効率よく塗布できる。集電体と塗布された粉体層は移動してプレスロールでプレスされ電極形成できる。プレスロールは室温でも使用可能で加熱または冷却することができる。
またロール線圧は5KN/cm乃至50KN/cmから選択できる。合材粒子にポリマー量比率が多い例えばイオン伝導性ポリマーの比率が多い全固体電池では低くめの線圧で良く、バインダーを含むポリマー量が1%以下の活物質主体の比率の電極では線圧が高い方が良い。
【0044】
図4において容器410内の合材粒子粉体と溶媒からなるスラリー45または微量なバインダーと沸点の低い溶媒からなる異種のバインダーを含む低固形分溶液と合材粒子粉体からなるスラリー45をポンプ46で吸込み圧送させて循環流路431、塗布装置47、循環流路432を経由して容器410に戻り循環してスラリーの沈殿を防止する。タンク410内スラリー45は図示しない撹拌装置等で撹拌することができる。また流路内にスラリーの分散装置を設置できる。流路例えば金属性などの接液部をを摩耗させやすい粉体を使用する場合はコンタミネーションの課題があるので、少なくとも接液部はセラミックス製または処理、PTFE製品にすべきである。塗布装置先端部はスロットダイヘッドやスプレイヘッドでも良い。ヘッドがスロットダイでスラリーの粉体粒子径が50μmを超える場合は粒子または粒子凝集物がヘッド先端に残りストリークが発生する可能性があるためヘッド先端と集電体間の距離を少し離しても問題なエアアシストスロットノズルからアシストガスを噴出してスラリーを集電体40に塗布できる。またはスリットノズルから粒子化したスラリーを噴出できる。もちろんのことインパクトを持ってパルス的にスプレイすることで最終的に緻密な粉体層を形成できる。スラリー塗布時集電体は加熱吸着ロール420で加熱し吸着するので集電体は溶媒の気化熱で冷やされることを防止でき、溶媒の揮発を促進できる。そのため集電体の粉体層402はロールプレス43でプレスされ電極層405を形成し、巻き取り装置423で巻き取ることができる。プレスロールは加熱しても冷却しても良い。また複数のロールプレスを直列に配置し、条件を変えて複数回プレスしても良い。
【0045】
図5は移動する集電体50に集電体50と粉体503の密着性を上げ乾燥後導電性のある薄膜になる液体を塗布装置51で塗布し薄膜層502を形成し、次いで粉体塗布装置52で粉体503を塗布し粉体層504を形成しプレスロール53でプレスし電極層505を形成する。
【0046】
図6は移動する集電体60に液体塗布装置61で液体を塗布し、液膜層602を形成する。液体の乾燥皮膜は導電性が必要である。液体は導電材または導電助剤を含む電極用粉体と溶媒からなるスラリーであって平均粒子径が小さい微粒子粉体と溶媒からなるスラリーで良い。
次いで粉体塗布装置62で粉体603を塗布し粉体層604を形成しプレスロール63でプレスして電極を形成する。粉体の平均粒子径が中径乃至大径であると粉体層表面に粗い凹凸が形成される。特に全固体電池の場合薄膜の電解質層を損傷させない為凹凸は限りなく少なくまたは微細でなければならない。そのため次の工程で平均粒子径が小径である粉体と溶媒からなるスラリーを薄膜で塗布し、吸着ロール610等の加熱手段で溶媒を瞬時に揮発させ次いでプレスロール67でプレスして電極層607を形成する。最初の液体塗布には界面活性剤等を使用し集電体との界面の密着性を向上させることが望ましい。また集電体には微細な凹凸をつけ、または及び多孔質にすることが投錨効果の面から好ましい。更には表面張力を高める処理をすることが界面の密着性向上の点で好ましい。
【0047】
上記の様に本発明の主旨は全固体電池電極を含む二次電池電極用材料の混合体を合材粒子の粉体を形成し、気粉混合体にして粉体の凝集を防止しながら集電体等の対象物に塗布し、短時間のプレス又は加熱プレスで電極を形成することにある。粉体の対象物への付着率を上げること、塗布後のプレス工程までの間粉体の塗着形状のずれを防止するため、後工程で揮発する溶媒や可塑剤などの液体を塗布できる。また集電体等の対象物との密着性を向上させるため粉体の平均粒子径より小さい平均粒子径の粉体と溶媒からなるスラリーを塗布できる。更にはバインダーが溶解または膨潤した電極材料のスラリーを薄膜で塗布することができる。電解質層と接触する該粉体塗布面の平滑さの向上またはミクロンレベル必要によりサブミクロン以下の微細な凹凸面を設けて表面積を上げ密着性を上げるため、粉体塗布層に直接またはプレス後平均粒子径の小さい粉体と溶媒からなるスラリーを塗布し乾燥して粉体層をプレスすることができる。
【0048】
以上の様に本発明では二次電池の電極形成、全固体電池の電極形成、半固体電池の電極形成も可能になる。
【符号の説明】
【0049】
1 、21 円板
2 線状流(繊維)
3 ドロップレット
4 、24 微粒子
25、45 スラリー
26、46 液体循環ポンプ
27、 吐出バルブ
29 静電放電部
30、40、50、60 集電体
31、52、62 粉体塗布装置
32、 粉体ポンプ
37 余剰気体排出流路
38 余剰気粉混合体排出流路
47、65 スラリー 塗布装置
30、50、60、 集電体
51、61 液体塗布装置
53、63、67,302 プレスロール
301 粉体供給装置
405,505、607 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6