(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065001
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139178
(22)【出願日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2022173407
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上田 昌伸
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB02
2G051AC15
2G051BA01
2G051BA20
2G051BB07
2G051CA03
2G051CA04
2G051DA06
2G051EA08
(57)【要約】
【課題】より高い精度で検査対象の表面状態を検査することを容易にした表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置を提供する。
【解決手段】表面状態の検査方法は、照明部から出射される照明光L1を検査対象の表面に照射する照射工程を備える。表面状態の検査方法は、照明光L1の照射された表面に基づいて表面状態を検査する。照明光L1は、手順1及び手順2により取得された光強度データ曲線における微分値の絶対値が、1.5/mm以下の範囲内であるグラデーションライン部GLを含む。手順1では、照明光L1により照射された検査対象のサンプルの撮像データを取得する。手順2では、撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明部から出射される照明光を検査対象の表面に照射する照射工程を備え、前記照明光の照射された前記表面に基づいて表面状態を検査する表面状態の検査方法であって、
前記照明光は、下記の手順1及び手順2:
(手順1)前記照明光により照射された前記検査対象のサンプルの撮像データを取得する
(手順2)前記撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する
により取得された前記光強度データ曲線における微分値の絶対値が、1.5/mm以下の範囲内であるグラデーションライン部を含む、表面状態の検査方法。
【請求項2】
前記照明部は、所定の方向に沿って配列される複数の光源と、前記複数の光源と前記検査対象との間に配置される光拡散部材とを備える、請求項1に記載の表面状態の検査方法。
【請求項3】
前記複数の光源の間隔は、10mm以下である、請求項2に記載の表面状態の検査方法。
【請求項4】
前記照射工程における前記照明光の照度は、500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内である、請求項1に記載の表面状態の検査方法。
【請求項5】
前記照射工程では、前記グラデーションライン部に沿って前記照明部と前記検査対象とを相対移動させる、請求項1に記載の表面状態の検査方法。
【請求項6】
前記手順1では、前記照明部の消灯時の照度が500ルクス以下の環境下、前記照明部からの距離が50cmとなる前記検査対象のサンプルの位置における照度を500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内に設定する、請求項1に記載の表面状態の検査方法。
【請求項7】
検査対象の表面に照明光を照射する照明部を備える表面状態の検査装置であって、
前記照明光は、下記の手順1及び手順2:
(手順1)前記照明光により照射された前記検査対象のサンプルの撮像データを取得する
(手順2)前記撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する
により取得された前記光強度データ曲線における微分値の絶対値が、1.5/mm以下の範囲内であるグラデーションライン部を含む、表面状態の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、透明板状体を検査する方法として、ストライプパターンの照明光を透明板状体に照射し、その反射像より透明板状体の形状を評価する方法が知られている。また、特許文献2に記載されるように、複数種のストライプパターンを用いて測定対象表面の面歪を測定する装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-345383号公報
【特許文献2】特開2007-147587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来のストライプパターンを用いた検査対象の表面状態の検査では、例えば、ストライプパターンの明暗の境界を跨ぐ位置に検査対象の欠陥が存在することで、その欠陥を検出することが可能となる。しかしながら、検査対象が比較的微細な欠陥を有する場合、その欠陥がストライプパターンと重なることで検出できないおそれがあった。このように検査対象に存在する比較的微細な欠陥を検出する等、より高い精度で検査対象の表面状態を検査するという観点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、より高い精度で検査対象の表面状態を検査することを容易にした表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置の各態様について説明する。
態様1の表面状態の検査方法は、照明部から出射される照明光を検査対象の表面に照射する照射工程を備え、前記照明光の照射された前記表面に基づいて表面状態を検査する表面状態の検査方法であって、前記照明光は、下記の手順1及び手順2により取得された前記光強度データ曲線における微分値の絶対値が、1.5/mm以下の範囲内であるグラデーションライン部を含む。手順1では、前記照明光により照射された前記検査対象のサンプルの撮像データを取得する。手順2では、前記撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する。この方法によれば、上記のグラデーションライン部を利用して検査対象の表面状態を検査することで、例えば、より微細な欠陥を検出する精度を高めることができる。
【0007】
態様2の表面状態の検査方法では、態様1において、前記照明部は、所定の方向に沿って配列される複数の光源と、前記複数の光源と前記検査対象との間に配置される光拡散部材とを備えてもよい。この方法によれば、より広い範囲にわたる照明光を用いて検査対象の表面を効率的に検査することが可能となる。
【0008】
態様3の表面状態の検査方法では、態様2において、前記複数の光源の間隔は、10mm以下であってもよい。この方法によれば、隣り合う光源の間の光量を確保することが容易となる。
【0009】
態様4の表面状態の検査方法では、態様1から態様3のいずれか一つの態様において、前記照射工程における前記照明光の照度は、500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内であってもよい。この方法によれば、例えば、撮像装置を用いた欠陥の検出や目視による欠陥の検出を容易に行うことが可能となる。
【0010】
態様5の表面状態の検査方法は、態様1から態様4のいずれか一つの態様において、前記照射工程では、前記グラデーションライン部に沿って前記照明部と前記検査対象とを相対移動させてもよい。この方法によれば、検査対象の表面を、より広い範囲にわたって容易に検査することが可能となる。
【0011】
態様6の表面状態の検査方法は、態様1から態様5のいずれか一つの態様において、前記手順1では、前記照明部の消灯時の照度が500ルクス以下の環境下、前記照明部からの距離が50cmとなる前記検査対象のサンプルの位置における照度を500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内に設定してもよい。
【0012】
態様7の表面状態の検査装置は、検査対象の表面に照明光を照射する照明部を備える表面状態の検査装置であって、前記照明光は、下記の手順1及び手順2により取得された前記光強度データ曲線における微分値の絶対値が、1.5/mm以下の範囲内であるグラデーションライン部を含む。手順1では、前記照明光により照射された前記検査対象のサンプルの撮像データを取得する。手順2では、前記撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、より高い精度で検査対象の表面状態を検査することが容易となる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態における表面状態の検査装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、照明光のグラデーションライン部を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、照明光のグラデーションライン部及び従来のストライプパターンにおける位置と光強度との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、照明光のグラデーションライン部及び従来のストライプパターンにおける位置と光強度の微分値の絶対値との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、表面状態の検査方法の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6(a),
図6(c)は、試験例1,2の表面画像であり、
図6(b),
図6(d)は、試験例1,2の表面画像の位置と光強度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7(a),
図7(c)は、試験例3,4の表面画像であり、
図7(b),
図7(d)は、試験例3,4の表面画像の位置と光強度との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8(a),
図8(c)は、試験例5,6の表面画像であり、
図8(b),
図8(d)は、試験例5,6の表面画像の位置と光強度との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9(a),
図9(c)は、試験例7,8の表面画像であり、
図9(b),
図9(d)は、試験例7,8の表面画像の位置と光強度との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、変更例における表面状態の検査装置を示す模式図である。
【
図12】
図12は、照明部から照射される照明光を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、表面状態の検査方法及び表面状態の検査装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0016】
<表面状態の検査装置>
図1に示すように、表面状態の検査装置11は、照明部12と、撮像装置13、コンピュータ14とを備えている。照明部12は、検査対象Wの表面Waに照明光L1を照射する。撮像装置13は、照明光L1が照射された検査対象Wの表面Waを撮像する。表面状態の検査装置11は、図示を省略した支持台を備えている。検査対象Wは、支持台上の所定の位置に配置される。
【0017】
(照明部12)
図2に示すように、表面状態の検査装置11における照明部12から出射される照明光L1は、グラデーションライン部GLを含む。グラデーションライン部GLは、光強度データ曲線に基づいて定義することができる。光強度データ曲線は、下記手順1及び手順2により取得することができる。
【0018】
(手順1)照明光L1により照射された検査対象Wのサンプルの撮像データを取得する。
(手順2)手順1で得られた撮像データから少なくとも一つの直線上の位置と光強度との関係を最大の光強度が1となるよう補正した光強度データ曲線を取得する。
【0019】
詳述すると、上記手順1では、まず、検査対象Wのサンプルを準備する。この検査対象Wのサンプルは、表面状態が正常と認められるものである。手順1の照明光L1の照度等の条件は、手順2で最大の光強度を1に補正するため、特に限定されない。手順1では、例えば、照明部12の消灯時の照度が500ルクス以下の環境下、照明部12からの距離が50cmとなる検査対象Wのサンプルの位置における照度を500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0020】
図3には、グラデーションライン部GLの光強度データ曲線を実線で示している。また、
図3には、従来のストライプパターンの線幅方向に沿った光強度データ曲線を破線で示している。
【0021】
図4には、グラデーションライン部GLの光強度データ曲線における微分値の絶対値を黒丸でプロットしている。また、
図4には、従来のストライプパターンの光強度データ曲線における微分値の絶対値を白抜き四角でプロットしている。
【0022】
グラデーションライン部GLにおいて、光強度データ曲線における微分値の絶対値は、1.5/mm以下の範囲内である。この光強度データ曲線における微分値の絶対値は、1.3/mm以下の範囲内であることがより好ましく、さらに好ましくは、1.2/mm以下の範囲内である。なお、微分値は、例えば、表面状態の検査で検出したい欠陥の外形寸法をD[mm]とした場合、Dの1/3の微小範囲での光強度変化量とすることができる。
【0023】
グラデーションライン部GLにおいて、光強度データ曲線における微分値の絶対値は、0.3/mm以上であることが好ましく、より好ましくは、0.4/mm以上である。この場合、検査対象Wの表面状態の検査精度をより高めることが可能となる。
【0024】
ここで、表面状態の検査で検出したい欠陥の外形寸法をD[mm]とした場合、グラデーションライン部GLは、例えば、次のように設定することができる。
図3に示す光強度データ曲線において、光強度の下限を0.1とし、光強度の上限を0.9とした場合の距離をΔX[mm]とする。このΔXは、“3D≦ΔX≦5D”の関係を満たすことが好ましい。ここで、欠陥の外形寸法であるD[mm]は、例えば、0.1以上、0.5以下の範囲内である。この場合、上記ΔX[mm]は、0.3以上、2.5以下の範囲内となる。
【0025】
グラデーションライン部GLの長さ寸法(
図2及び
図5に示すY方向に沿った方向の寸法)は、
図3に示すように、光強度データ曲線において、光強度が0.1以上となる長さ寸法D1で規定することができる。
【0026】
グラデーションライン部GLの長さ寸法D1は、3mm以上であることが好ましく、より好ましくは、5mm以上である。この場合、光強度データ曲線における微分値の絶対値をより小さく設定することが可能となる。グラデーションライン部GLの長さ寸法D1の上限は、特に限定されないが、例えば、20mm以下であることが好ましく、より好ましくは、15mm以下である。
【0027】
グラデーションライン部GLは、グラデーションライン部GLの長さ方向と直交する幅方向(
図2及び
図5に示すY方向に沿った方向)に沿って所定の範囲を形成している。すなわち、
図2に示すように、照明光L1は、平行となるいずれの直線上においても上記グラデーションライン部GLの条件を満たす有効範囲Rを有している。上記幅方向において、上記グラデーションライン部GLの条件を満たす有効範囲Rは、5mm以上であることが好ましく、より好ましくは、10mm以上である。
【0028】
図1に示すように、照明部12は、光源12aと、光源12aと検査対象Wとの間に配置される光拡散部材12bとを備えている。光源12aとしては、例えば、点光源、面光源、ライン光源等が挙げられる。光源12aは、LED光源であることが好ましい。光源12aの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。照明部12は、所定の方向(
図2及び
図5に示すY方向)に沿って配列される複数の光源12aを備えることが好ましい。複数の光源12aの間隔は、10mm以下であることが好ましい。
【0029】
光拡散部材12bは、光源12aから出射される光を拡散する。光拡散部材12bとしては、例えば、光拡散シート等が挙げられる。光拡散シートは、例えば、光透過性樹脂と、光拡散粒子とを含有する。また、光拡散部材12bは、光透過性の基材に塗装、凹凸加工等の表面処理を施したカバー部材であってもよい。
【0030】
(撮像装置13及びコンピュータ14)
表面状態の検査装置11における撮像装置13としては、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を備えたカメラを用いることができる。コンピュータ14は、コンピュータ本体14aと、ディスプレイ14bとを備えている。コンピュータ本体14aは、例えば、画像処理部と、情報記憶部と、判定部とを備えている。画像処理部では、例えば、撮像装置13で撮像された検査対象Wの画像に対して二値化処理や輝度の補正処理等の画像処理を必要に応じて行うようにすることができる。情報記憶部には、正常な検査対象Wのデータ(例えば、光強度データ曲線)や、輝度値等の閾値を予め記憶させることができる。判定部は、例えば、情報記憶部に記憶したデータに基づいて検査対象Wの欠陥の有無を判定する。判定部は、深層学習(ディープラーニング)による学習で構築された学習モデルを用いて、検査対象Wの欠陥の有無を判定するように構成することもできる。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークモデル等の人工知能(AI)モデルが挙げられる。コンピュータ本体14aは、図示を省略したプロセッサ、メモリ、ソフトウェア等により構成することができる。
【0031】
<表面状態の検査方法>
表面状態の検査方法は、照明部12から出射される照明光L1を検査対象Wの表面Waに照射する照射工程を備えている。表面状態の検査方法は、照明光L1の照射された検査対象Wの表面Waに基づいて表面状態を検査する。
【0032】
検査対象Wの基材としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等が挙げられる。検査対象Wの表面Waは、平坦面であってもよいし、曲面であってもよい。検査対象Wの表面Waは、基材により形成されていてもよいし、基材に積層された機能性膜により形成されていてもよい。
【0033】
照射工程における照明光L1の照度は、例えば、500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内であることが好ましい。この照度は、検査対象Wの位置で測定した照度である。例えば、照明部12からの距離が50cmとなる位置に検査対象Wの表面Waを配置する場合、照明部12からの距離が50cmの位置における照度をいう。
【0034】
図5に示すように、本実施形態の照射工程では、グラデーションライン部GLに沿って照明部12と検査対象Wとを相対移動させる。例えば、
図5に白抜き矢印で示すように、照明部12を検査対象Wの表面Waに沿って移動させる。これにより、検査対象Wの表面Waにおいて、より広い範囲にわたって欠陥を検出することが可能となる。例えば、
図5の検査対象Wの表面Waにおいて、破線で囲まれる範囲DAに欠陥が存在する場合、照明部12を検査対象Wの表面Waに沿って移動させることで、これらの欠陥を容易に検出することが可能となる。なお、照射工程では、グラデーションライン部GLに沿って検査対象Wを移動させてもよいし、グラデーションライン部GLに沿って照明部12と検査対象Wの両者を移動させてもよい。なお、照明部12を移動させる場合、照明部12と撮像装置13との間の相対的な位置を一定に保持することが好ましい。
【0035】
本実施形態の表面状態の検査方法では、照明光L1の照射された検査対象Wの表面Waを、撮像装置13を用いて撮像する。表面状態の検査方法では、撮像装置13により取得される画像に基づいて検査対象Wの表面状態を検査する。表面状態の検査方法は、撮像装置13により取得される画像に基づいて、検査対象Wの表面Waにおける欠陥の有無を判定する判定工程を備えている。この判定工程は、上記コンピュータ本体14aにより実行することができる。表面Waの欠陥としては、例えば、表面Waの凹凸等の局所的な歪み、異物の付着、表面Waの傷等が挙げられる。
【0036】
なお、表面状態の検査方法は、撮像装置13及びコンピュータ14を用いずに、照射工程により照明光L1が照射された検査対象Wの表面Waの欠陥を視認する検査であってもよい。
【0037】
<試験例>
次に、試験例について説明する。
図6及び
図7には、グラデーションライン部GLを含む照明光L1を用いて検査対象Wの表面状態を検査した試験例1~4を示している。検査対象Wは、板ガラスである。
図6(a)に示す試験例1では、欠陥が存在する範囲DAに照明光L1が照射されていない。
図6(b)に示すように、試験例1の表面画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、グラデーションライン部GLに基づく曲線となる。
【0038】
図6(c)に示す試験例2では、欠陥が存在する範囲DAに照明光L1のグラデーションライン部GLの少なくとも一部が照射されている。
図6(d)に示すように、試験例2の表面画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、
図6(b)に示す試験例1の光強度データ曲線とは異なる。これにより、試験例2では、検査対象Wの表面Waの欠陥を検出できることが分かる。
【0039】
図7(a)に示す試験例3、及び
図7(c)に示す試験例4においても、欠陥が存在する範囲DAに照明光L1のグラデーションライン部GLの少なくとも一部が照射されている。
図7(b)及び
図7(d)に示すように、試験例3,4の表面画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、
図6(b)に示す試験例1の光強度データ曲線とは異なる。これにより、試験例3,4では、検査対象Wの表面Waの欠陥を検出できることが分かる。
【0040】
図8及び
図9には、従来のストライプパターンの照明光を用いて検査対象Wの表面状態を検査した試験例5~8を示している。検査対象Wは、上記試験例1~4と同じ板ガラスである。
図8(a)に示す試験例5では、欠陥が存在する範囲DAに照明光が照射されていない。
図8(b)に示すように、試験例5の画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、ストライプパターンの明暗部分に基づく曲線となる。
【0041】
図8(c)に示す試験例6、及び
図9(a)に示す試験例7では、ストライプパターンの明暗の境界を跨ぐ位置に検査対象の欠陥が存在する範囲DAが配置されている。
図8(d)及び
図9(b)に示すように、試験例6,7の表面画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、
図8(b)に示す試験例5の光強度データ曲線とは異なる。これにより、試験例6,7では、検査対象Wの表面Waの欠陥を検出できることが分かる。
【0042】
図9(c)に示す試験例8では、欠陥が存在する範囲DAは、ストライプパターンの明部分に配置されている。
図9(d)に示すように、試験例8の表面画像解析の結果から得られる光強度データ曲線は、試験例5の画像解析の結果から得られる光強度データ曲線との明確な差異がないため、欠陥を検出できない。
【0043】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)表面状態の検査方法は、照明部12から出射される照明光L1を検査対象Wの表面Waに照射する照射工程を備えている。表面状態の検査方法は、照明光L1の照射された表面Waに基づいて表面状態を検査する。照明光L1は、グラデーションライン部GLを含む。グラデーションライン部GLの光強度データ曲線における微分値の絶対値、1.5/mm以下の範囲内である。光強度データ曲線は、上述した手順1及び手順2により取得される。
【0044】
この方法によれば、上記のグラデーションライン部GLを検査対象Wの表面Waに照射する照射工程を備えることで、より高い精度で検査対象Wの表面状態を検査することが容易となる。本実施形態では、検査対象Wの表面Waに存在する比較的微細な欠陥を検出する精度を高めることができる。
【0045】
(2)表面状態の検査方法における照明部12は、所定の方向に沿って配列される複数の光源12aと、複数の光源12aと検査対象Wとの間に配置される光拡散部材12bとを備えることが好ましい。この場合、より広い範囲にわたる照明光L1を用いて検査対象Wの表面Waを効率的に検査することが可能となる。
【0046】
(3)照明部12の複数の光源12aの間隔は、10mm以下であることが好ましい。この場合、隣り合う光源12aの間の光量を確保することが容易となる。
(4)表面状態の検査方法において、照射工程における照明光L1の照度は、500ルクス以上、2000ルクス以下の範囲内であることが好ましい。この場合、例えば、撮像装置13を用いた欠陥の検出や目視による欠陥の検出を容易に行うことが可能となる。
【0047】
(5)照射工程では、グラデーションライン部GLに沿って照明部12と検査対象Wとを相対移動させている。この場合、検査対象Wの表面Waを、より広い範囲にわたって容易に検査することが可能となる。
【0048】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・上記表面状態の検査方法における照射工程では、グラデーションライン部GLに沿って照明部12と検査対象Wとを相対移動させている。しかしながら、例えば、検査対象Wの表面Waの一部を検査する場合やグラデーションライン部GLの長さ寸法や有効範囲Rに対して検査対象Wが比較的小さい場合では、照明部12と検査対象Wとを相対移動させずに照射工程を行ってもよい。
【0050】
・上記表面状態の検査方法における照射工程において、照明部12と検査対象Wとの相対移動は、自動で行ってもよいし、手動で行ってもよい。
・上記表面状態の検査方法における照射工程において、複数の照明部12を用いてもよい。これにより、検査対象Wの表面Waを、より広い範囲にわたって容易に検査することが可能となる。
【0051】
・照明部12から照射される照明光L1は、白色光であってもよいし、有色光であってもよい。
・表面状態の検査方法は、表面Waに微細な凹凸を有する製品を検査対象Wとすることもできる。すなわち、表面状態の検査方法は、検査対象Wの表面Waの有する微細な凹凸の状態を確認する検査に適用してもよい。
【0052】
・
図10に示す表面状態の検査装置111のように、上記実施形態における表面状態の検査装置11の照明部12を変更することもできる。この変更例の照明部112は、長さ方向で均一な光強度の光を出射する光源112aを備えている。光源112aとしては、例えば、LEDを有するライン光源、蛍光灯等が挙げられる。また、照明部112は、光源112aと検査対象Wとの間に配置されるレンズ部材112bを備えている。
図10及び
図11に示すように、レンズ部材112bは、凸面を有するレンズ部Pを有している。詳述すると、レンズ部Pは、例えば、光源112a側に配置される平面を有するとともに、検査対象W側に配置される凸面を有する平凸レンズにより構成されている。レンズ部材112bのレンズ部Pの数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。レンズ部材112bとしては、例えば、ガラス又は樹脂から構成されたマイクロレンズが挙げられる。
図10に示すように、表面状態の検査装置111において、光源112aからレンズ部材112bに入射された光は、レンズ部材112bで集光される。これにより、
図12に示すように、上記実施形態と同様のグラデーションライン部GLを含む照明光L1を検査対象の表面に照射することができる。
【符号の説明】
【0053】
11,111…表面状態の検査装置
12,112…照明部
12a…光源
12b…光拡散部材
GL…グラデーションライン部
L1…照明光
W…検査対象
Wa…表面