(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065008
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/26 20060101AFI20240507BHJP
A47K 13/02 20060101ALI20240507BHJP
A47K 13/12 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A47K13/26
A47K13/02
A47K13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156128
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022173102
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 基義
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AA13
2D037AA14
2D037AB11
(57)【要約】
【課題】使用する素材の選択の幅を広げることが可能な便座装置を提供する。
【解決手段】着座部20と、前記着座部20を便器本体12の上面に保持する保持部30と、を有する便座装置10であって、前記着座部20の材質と前記保持部30の材質とは異なっている。このような構成によれば、使用する素材の選択の幅を広げることが可能な便座装置を提供することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部と、
前記着座部を便器本体の上面に保持する保持部と、を有する便座装置であって、
前記着座部の材質と前記保持部の材質とは異なっている、便座装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記着座部を便器本体の上面に沿って配置した状態及び前記便器本体の上面から上方に立ち上げた状態にするヒンジ部である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記着座部の熱流速は、前記保持部の熱流速よりも低い、請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
前記着座部の硬度は、前記保持部の硬度よりも低い、請求項1に記載の便座装置。
【請求項5】
前記着座部は、前記便器本体の便鉢部の上端開口に沿った環状をなし、
前記着座部の下面は略平坦である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項6】
前記着座部は、前記便器本体の便鉢部の上端開口に沿った環状をなし、
前記着座部と前記保持部とは着脱自在である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項7】
前記保持部は、前記便座装置を支持する便座支持部に対して着脱自在である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項8】
前記着座部は発泡樹脂製である、請求項1に記載の便座装置。
【請求項9】
前記着座部の外面は親水膜で覆われている、請求項1に記載の便座装置。
【請求項10】
前記着座部を前記便器本体の上面に保持した状態において、前記着座部の下面の後部と前記便器本体の上面との間には隙間が形成されている、請求項1に記載の便座装置。
【請求項11】
前記着座部及び前記保持部は、着脱自在な第一着脱部及び第二着脱部を備え、
前記第一着脱部の着脱方向と前記第二着脱部の着脱方向とは異なっている、請求項6に記載の便座装置。
【請求項12】
前記着座部及び前記保持部は、着脱自在な第一着脱部を備え、
前記第一着脱部は、前記着座部側に設けられた挿入部と前記保持部側に設けられたアーム部とを有し、前記挿入部は弾性変形しながら前記アーム部に差し込まれる、請求項6に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に記載されているように、保持部によって便器本体の上面に保持された便座が知られている。便座は、便器本体の上面に沿って配置された状態、及び便器本体の上面から上方に立ち上がった状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便座の着座部と保持部とは同一の素材であり、便座に使用できる素材の選択の幅は狭かった。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、使用する素材の選択の幅を広げることが可能な便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便座装置は、着座部と、前記着座部を便器本体の上面に保持する保持部と、を有する便座装置であって、前記着座部の材質と前記保持部の材質とは異なっているものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る便座装置であって、便器本体に取り付けられた状態を示す斜視図
【
図3】便座支持部に取り付けられた状態の便座装置を示す一部拡大斜視図
【
図4】便座支持部から取り外された状態の便座装置を示す一部拡大斜視図
【
図9】実施形態2に係る便座装置の着座部及び保持部を示す一部拡大斜視図
【
図10】実施形態3に係る便座装置であって、便座支持部に取り付けられた状態を示す一部拡大平面図
【
図12】子供用の着座部であって、便器本体に取り付けられた状態を示す斜視図
【
図13】お年寄り用の着座部であって、便器本体に取り付けられた状態を示す斜視図
【
図14】オストメイト用の着座部であって、便器本体に取り付けられた状態を示す斜視図
【
図15】オストメイト用の着座部であって、便器本体に取り付けられた状態を示す平面図
【
図16】オストメイト用の着座部であって、便器本体に取り付けられた状態を示す側面図
【
図17】オストメイトが中腰の姿勢で排せつ物を処理する様子を示す図
【
図18】オストメイトがオストメイト用の着座部に着座した楽な姿勢で排せつ物を処理する様子を示す図
【
図19】実施形態4に係る便座装置の着座部を示す斜視図
【
図22】着脱部及び保持部を取り外した状態を示す便座装置の一部拡大断面図
【
図23】着座部及び保持部を取り付けた状態を示す便座装置の一部拡大断面図
【
図32】ロック状態及びロック解除状態のロックピンを示す図
【
図33】ロック状態が解除される際のロックピンの動きを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本実施形態における便座装置10は、
図1に示すように、水洗式便器11に備えられる。水洗式便器11は、便器本体12と、便器装置15と、便座装置10と、便蓋19と、を備えている。便器本体12は陶器製である。便器本体12は、便鉢部13及びリム部14を有している。便鉢部13は、汚物を受けるための鉢状をなしている。リム部14は、便鉢部13の上端開口に沿っている。便器装置15は、便器本体12の上面に固定されている。便蓋19は、便器装置15に開閉自在に支持されている。
【0009】
以下、各構成部材において、便鉢部13が設けられている側を前側、便器装置15が取り付けられている側を後側、トイレルーム等に設置した状態における下側を下側、その反対側を上側、水洗式便器11を前側から見て右側を右側、左側を左側とする。各図において、X軸の正方向側は右側、X軸の負方向側は左側、Y軸の正方向側は上側、Y軸の負方向側は下側、Z軸の正方向側は前側、Z軸の負方向側は後側を示す。Y軸は、鉛直方向に延びている。
【0010】
便器装置15は、ケーシング18、便座支持部16及び各種の機能部品を備えている。便座支持部16は、便座装置10を回転自在に支持している。便座支持部16は、便座開閉装置16Aを備えている(
図10参照)。便座開閉装置16Aは電動式であり、電気モータ、ギア、アシストバネ及び回転位置検知センサを有している。便座開閉装置16Aは、仮想の回転軸Aを中心にトルクを発生し、便座装置10をゆっくり回転させる。便座開閉装置16Aは、手動式であってもよく、この場合、スローダウン機構を有してもよい。便座開閉装置16Aは、油圧ダンパーを有し、手動によって便座装置10を閉める際に便座装置10がバタンと閉まらないように、ゆっくり回転させるものでもよい。便座支持部16は、
図4に示すように、便座装置10の軸部33Aを支持する軸穴16Bを備えている。軸穴16Bは、ケーシング18の右側面に形成されている。各種機能部品はケーシング18に収容されている。各種機能部品は、便座開閉装置、便蓋開閉装置、局部洗浄装置、脱臭装置、乾燥装置等である。便蓋開閉装置は、便座開閉装置と同様、電動式であってもよいし、手動式であってもよい。
【0011】
便座装置10は、
図1に示すように、着座部20及び保持部30を備えている。着座部20は、便鉢部13の上端開口に沿った環状をなしている。着座部20は、開口部21の全周を囲って閉じている。着座部20は、仮想の回転軸Aを中心に回転自在である。仮想の回転軸Aは、着座部20よりも後方において左右方向に延びている。仮想の回転軸Aは、後述する左右のアーム部32の後端部を通っている。
【0012】
便座装置10は、仮想の回転軸Aを中心に回転することによって第1状態と第2状態とになる。第1状態において着座部20は、便器本体12の上面に沿って配置される。第1状態において着座部20の下面はリム部14に接触する。第2状態において着座部20は、便器本体12の上面から上方に立ち上がる。
【0013】
保持部30は、
図2に示すように、着座部20の後端部に設けられている。保持部30は、横部31、左右一対のアーム部32、ロック部33及び挿入片35を有している。横部31は、着座部20の後面に沿って左右方向に延びている。横部31の左右方向の寸法と、着座部20の後端の左右方向の寸法とは等しい。横部31は、着座部20の後面に沿って傾斜している(
図7参照)。横部31は、第1状態において前方から視認されない(
図3参照)。
【0014】
アーム部32は、
図5に示すように、横部31の左右方向両端部から後側に突出している。アーム部32は、横部31から斜め上側に延出している。左側のアーム部32は軸穴34を有している。便座開閉装置16Aの回転軸は、軸穴34に嵌め込まれる。軸穴34は方形状である。
【0015】
ロック部33は、右側のアーム部32に設けられている。ロック部33は、
図3に示すように、便座支持部16に対して便座装置10を取り付け状態に保持する。便座装置10が便座支持部16に取り付けられた状態において、仮想の回転軸Aはロック部33を通っている。ロック部33は、
図4に示すように、軸部33Aと操作部33Bとを備えている。ロック部33の軸部33Aは、便座装置10が便座支持部16に取り付けられた状態において便座支持部16の軸穴16Bに挿入される。
【0016】
ロック部33は、プッシュラッチ機構を備えている。ロック部33は、操作部33Bを左側に押し操作することによってロック状態とロック解除状態とに切りかえられる。ロック状態においてロック部33の軸部33Aは、右側のアーム部32の左側面から左側に突出する。ロック解除状態においてロック部33の軸部33Aは、右側のアーム部32の左側面から突出しない。便座装置10は、
図4に示すように、ロック部33をロック解除状態にすることで、便座支持部16から容易に取り外すことができる。
【0017】
着座部20及び保持部30は、
図5に示すように、独立した部材である。着座部20の材質と保持部30の材質とは異なっている。保持部30は、硬質樹脂製である。保持部30は、例えばポリプロピレン樹脂等である。
【0018】
着座部20は発泡樹脂製である。着座部20の弾力性は高いから、座り心地は快適である。着座部20の弾力性は高いから、着座部20の下面はゴム脚等を備えなくても良く、平坦である(
図2参照)。着座部20の下面は、第1状態において、人が着座することによる弾性でリム部14に密着する(
図7参照)。第1状態において着座部20とリム部14との間の隙間はなくなり、隙間からの尿ダレ等を防止できる。
【0019】
着座部20は、単一の樹脂材料で構成されているからリサイクルしやすい。着座部20の発泡倍率は、20~40倍程度である。着座部20の発泡密度は小さいから、着座部20は軽量である。これによって、便座装置10を回転させるためのトルクが小さくなり、便座開閉装置16Aを小型化し、水洗式便器11のコストダウンを図ることができる。
【0020】
着座部20の外面はシボ加工され、凹凸が形成されている。着座部20の外面の面積は、シボ加工されていない場合よりも増している。着座部20の外面は親水膜で覆われている。親水膜は、例えば、シボ加工を施した着座部20の外面に所定の親水性塗料を塗布して形成される。
【0021】
着座部20の硬度は、保持部30の硬度よりも低い。着座部20の熱流速は、保持部30の熱流速よりも低い。着座部20は着座者の臀部の温度を奪いにくい。着座部20の熱流速は、0.4W/m2以下であると良い。
【0022】
着座部20と保持部30とは着脱自在である。着座部20及び保持部30は、
図6に示すように、着脱構造として挿入片35とスリット22とを備えている。挿入片35は、保持部30に設けられている。挿入片35は、横部31の左右両端部に設けられている。挿入片35は、横部31から前方に突出している。挿入片35は、平面視において、クリスマスツリー形状をなしている。各挿入片35の左右方向の寸法は、全体として前端から後側へ向かって増している。
【0023】
各挿入片35は、左右両側に複数の突出部36を有している。各突出部36の後縁37は左右方向に延びている。各突出部36の前縁38は、Z軸に対して斜めに傾斜している。各突出部36の左右方向の幅寸法は、前側から後側に向かって増している。
【0024】
挿入片35は、
図7に示すように、板状をなしている。挿入片35の上面にはリブ39が設けられている。リブ39は、挿入片35の前端から横部31まで連続している。リブ39の上下方向の寸法は、前端から後端に向かって次第に増している。リブ39は、挿入片35の中心において前後方向に長く延びている(
図6参照)。
【0025】
スリット22は着座部20に形成されている。スリット22は、左右に一対設けられている(
図8参照)。スリット22は着座部20の後面に開口している。スリット22は、後方から見て左右方向に細長く延びている。挿入片35は、後方からスリット22に差し込まれる。各スリット22は、縦スリット22Aを有している。縦スリット22Aは、後方から見て上下方向に細長く延びている。縦スリット22Aは、スリット22の左右方向中心に位置している。リブ39は、後方から縦スリット22Aに差し込まれる。
【0026】
挿入片35をスリット22に差し込むと、挿入片35の突出部36は着座部20の内部に引っ掛かる。これによって、着座部20と保持部30とは一体化した状態に保持される。保持部30を着座部20から取り外す場合、保持部30の横部31を把持して後側に引くことによって、挿入片35をスリット22から引き出すことができる。
【0027】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。便座装置10は、着座部20と保持部30とを有している。保持部30は、着座部20を便器本体12の上面に保持する。着座部20の材質と保持部30の材質とは異なっている。この構成によれば、便座装置10に使用する素材の選択の幅を広げることができる。
【0028】
保持部30は、着座部20を便器本体12の上面に沿って配置した状態及び便器本体12の上面から上方に立ち上げた状態にするヒンジ部である。この構成によれば、着座部20の材質を座り心地の良いものにしながら、保持部30の材質を便座装置10の回転に耐えうる強度を有するものにして、クッションやヒーター等を用いることなく、座り心地を良くできる。
【0029】
着座部20の熱流速は、保持部30の熱流速よりも低い。この構成によれば、着座部20は臀部の熱を奪いにくいため、ヒーターを用いることなく冷たさの不快感を解消して座り心地を良くできる。
【0030】
着座部20の硬度は、保持部30の硬度よりも低い。この構成によれば、着座部20はやわらかいから、クッションを用いることなく座り心地を良くできる。
【0031】
着座部20は、便器本体12の便鉢部13の上端開口に沿った環状をなしている。着座部20の下面は平坦である。この構成によれば、着座部20の下面にゴム脚等がある場合と比べてリム部14と着座部20との間の隙間を小さくでき、リム部14と着座部20との間に尿を入りにくくできる。着座部20の下面にゴム脚等の凹凸がないから掃除しやすい。したがって、着座部20の下面を清潔にしやすくできる。着座部20の下面の全体が平坦でなくてもよい。着座部20の下面の少なくとも前側の領域だけを平坦にしてもよい。
【0032】
着座部20は弾性を有し、やわらかいことによって、リム部14と着座部20との間の隙間をより小さくできる。便器本体12は陶器製であるため便鉢部13の上面開口が平面になりづらい。仮に着座部が従来のように硬い材質でゴム脚等を有さない場合、着座部とリム部14との間にガタつきが発生することがある。着座部20はやわらかい材質であるから、ゴム脚がなくてもガタつきの発生をなくすことができる。着座時には、便鉢部13の開口部にやわらかい着座部20がわずかに喰い込むため、着座姿勢を変えた際などに起きる便座装置10の横ズレ現象も抑制することができる。
【0033】
着座部20と保持部30とは着脱自在である。この構成によれば、着座部20を保持部30から取り外し、別の着座部20を保持部30に取り付けることで、着座部20を容易に交換できる。したがって、傷や汚れ等の軽微な理由で交換できる。
【0034】
保持部30は、便座支持部16に対して着脱自在である。この構成によれば、保持部30及び着座部20を一体化したまま交換できる。着座部20のバリエーションは、開口部21が小さく前面に金隠し形状がついた子供用、便座開口の前方が広い形状のオストメイト用、補高により立ち座りが楽になるお年寄り用、猫が使えるペット用など個々の体型等にあわせて使い分けることができる。保持部30の強度や大きさは、着座部20の大きさや重さ等に適したものを用いることができる。保持部30及び着座部20を一体化したまま交換できるから、保持部30及び着座部20をセットで使用者に応じた形状ややわらかさを最適なものに容易に取り換えることができる。保持部30及び着座部20を取り外して、浴室等にて保持部30及び着座部20を丸洗いすることも可能である。保持部30から着座部20を取り外して、着座部20のみを洗浄することもできる。
【0035】
図12には、子供用の着座部20を便器本体12に取り付けた状態を示す。子供用の着座部20の開口部21は、大人用の着座部20の開口部21と比べて小さい。これによって、着座部20に着座した幼児が便器本体12の開口に落ちてしまうことを防ぐことができる。子供用の着座部20の前端部には、小水受け部25が設けられている。これによって、尿の飛散を防ぐことができる。
【0036】
図13には、お年寄りなど足腰の弱い方や立ち座りに不安を感じる方用の着座部20を便器本体12に取り付けた状態を示す。お年寄り用の着座部20は、補高便座である。お年寄り用の着座部20の上下方向の寸法は通常の便座と比べて大きく、お年寄り用の着座部20の着座面は通常の便座の着座面よりも高い位置に配置される。これによって、使用者は、着座面に座る動作や、着座面から立ち上がる動作を楽に行うことができる。
【0037】
図14から
図16には、オストメイト用の着座部20を便器本体12に取り付けた状態を示す。オストメイト用の着座部20は、通常の便座の前側の部分を無くした形状である。オストメイト用の着座部20を使用することによって、便器本体12の開口の前部領域は、通常の便座を使用する場合と比べて広くなる。オストメイト用の着座部20の着座面は、通常の便座の後部の着座面と比べて後方向に広い。オストメイトは、オストメイト用の着座部20を使用することによって、通常の便座に着座する場合よりも、約50mm後方に座ることができる。
【0038】
オストメイトは、通常の便座に着座した場合、排せつ物を処理する空間を十分に確保できないため、便座から腰を浮かせた中腰の姿勢で、排せつ物の処理をしなければならない(
図17参照)。この場合、オストメイトの足腰に負担がかかるし、高い位置から排せつ物を処理すると、排せつ物が跳ね返り、衣類や便座を汚しやすいという問題があった。オストメイトは、オストメイト用の着座部20を使用することによって、着座部20に着座した楽な姿勢で、衣類や便座を汚すことなく安心して排せつ物を処理できる(
図18参照)。
【0039】
子供用の着座部20、お年寄り用の着座部20、オストメイト用の着座部20は、着脱して使用し回動操作はしない。また、便蓋19は開状態のまま使用するか、取り外して使用をする。
【0040】
着座部20は発泡樹脂製である。この構成によれば、着座部20を軽量で座り心地の良いものにできる。着座部20は単一の樹脂材料での一体構造であるため、便鉢部13の開口部周りの汚れやすい部位の継ぎ目をなくすことができるので、汚れが付着した場合においても容易に清掃ができる利点がある。
【0041】
着座部20の外面は親水膜で覆われている。この構成によれば、着座部20は、低熱流束材質によって臀部の熱を奪いにくいことに加え、吸湿発熱効果によって着座者の体から出る蒸気等の水分を吸収することで発熱するわずかな熱でもあたたかく感じ、ヒーター等なしでも座り心地をよくできる。着座部20の外面にシボ加工をして表面積を上げ吸湿発熱効果をより高めることもできる。
【0042】
<実施形態2>
本開示を具体化した実施形態2に係る便座装置50を
図9によって説明する。便座装置50の着座部20と保持部30との着脱構造は、実施形態1と相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
便座装置50は、実施形態1と同様に、着座部20と保持部30とを有し、着座部20と保持部30とは着脱自在である。着座部20と保持部30との着脱構造は、ピン51とピン穴52,53とを有している。ピン51は、例えばタッピンねじを用いてもよい。ピン穴52は、着座部20の後端部の左右両側面に円筒状の硬質樹脂部品が埋め込まれる形態で設けられている。ピン穴53は、保持部30の左右両側面に設けられている。着座部20のピン穴52と保持部30のピン穴53とを左右方向に重ね合わせて、ピン穴52,53にピン51をねじ込むことによって、着座部20と保持部30とを一体に保持できる。ピン51をピン穴52,53から抜き取ることによって、保持部30を着座部20から取り外すことができる。
【0044】
以上のように本実施形態においては、実施形態1と同様、着座部20の材質と保持部30の材質とは異なっているから、便座装置50に使用する素材の選択の幅を広げることができる。着座部20の材質を座り心地の良いものにし、保持部30の材質を便座装置50の回転に耐えうる強度を有するものにして、クッションやヒーター等を用いることなく座り心地を良くできる。
【0045】
<実施形態3>
次に、本開示を具体化した実施形態3に係る便座装置60を
図10及び
図11によって説明する。便座装置60の着座部20と保持部30との着脱構造は、実施形態1と相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0046】
便座装置60は、実施形態1と同様に、着座部20と保持部30とを有し、着座部20と保持部30とは着脱自在である。便座装置60を支持する便座支持部16は、後側に凹んだ凹部61を有している。
【0047】
保持部30は、
図11に示すように、箱状に形成されている。保持部30は、左右の壁30A、後壁30B及び下壁30Cを有している。保持部30は、便座支持部16の凹部61に嵌め込まれる。
【0048】
着座部20は、凸部62を有している。凸部62は、着座部20の左右方向中心部に設けられている。凸部62は、着座部20の後面において後側に突出している。凸部62は保持部30の形状に合った直方体状をなしている。凸部62は、保持部30に嵌め込まれる。
【0049】
保持部30及び着座部20は、軸穴63,64を有している。着座部20の凸部62を保持部30に嵌め合わせた状態において、着座部20の軸穴64と保持部30の軸穴63とは左右方向に重なる。便座開閉装置16Aの回転軸は、左右方向に重なった状態の軸穴63,64に嵌め込まれる。
【0050】
着座部20と保持部30との着脱構造は、棒部材67と挿通穴65,66とを有している。棒部材67の長さ寸法は、凸部62の左右方向の寸法よりも大きい。挿通穴65は、保持部30の左右の壁30Aに設けられている。挿通穴65は、軸穴63よりも前側に位置している。挿通穴66は、着座部20に設けられている。挿通穴66は、凸部62を左右方向に貫通している。挿通穴66は、軸穴64よりも前側に設けられている。凸部62を保持部30に嵌め合わせた状態において、着座部20の挿通穴66と保持部30の挿通穴65とは左右方向に重なる。
【0051】
挿通穴65,66に棒部材67を差し込むことによって、着座部20と保持部30とを一体に保持できる。棒部材67を挿通穴65,66から抜き取ることによって、保持部30を着座部20から取り外すことができる。
【0052】
着座部20と保持部30とを棒部材67によって一体化した状態にし、保持部30を便座支持部16の凹部61に嵌め込む。便座開閉装置16Aの回転軸は軸穴63,64に嵌まり込む。これによって、便座装置60は、便座支持部16に対して取り付け状態に保持される。
【0053】
以上のように本実施形態においては、実施形態1と同様に、着座部20の材質と保持部30の材質とは異なっているから、便座装置60に使用する素材の選択の幅を広げることができる。着座部20の材質を座り心地の良いものにし、保持部30の材質を便座装置60の回転に耐えうる強度を有するものにして、クッションやヒーター等を用いることなく座り心地を良くできる。
【0054】
<実施形態4>
次に、本開示を具体化した実施形態4に係る便座装置100を
図19から
図33によって説明する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。便座装置100は、実施形態1と同様、水洗式便器11に備えられる(
図1参照)。水洗式便器11は、実施形態1と同様、便器本体12と、便器装置15と、便座装置100と、便蓋19と、を備えている。便器装置15は、実施形態1と同様、ケーシング18、便座支持部16及び各種の機能部品を備えている。
【0055】
便器装置15は、着座検知センサ101を備えている。着座検知センサ101は、使用者の着座部20への着座を検知する。着座検知センサ101は、
図26及び
図27に示すように、保持部30のアーム部32に設けられたプランジャ127が着座荷重を受けて下がることで着座検知できるように設けられている。着座検知センサ101は、左右のアーム部32に対応して便器装置15の左右両側に備えられている。左側の着座検知センサ101の図示は省略する。左側の着座検知センサ101は、左側のアーム部32からケーシング18側に延出する図示しない部材が着座荷重を受けて下がることで着座検知できるように設けられている。着座検知センサ101は、マイクロスイッチ式である。
【0056】
着座部20の下面は、
図20及び
図21に示すように、傾斜部102を有している。傾斜部102は、挿入片35の前端よりも前方の位置から後方の後部領域に形成されている。第1状態において、着座部20の下面の前部はリム部14に密着し、傾斜部102は、リム部14から離れている。傾斜部102は、第1状態において、前側から後側に向かって次第に上っている。第1状態において、着座部20の下面の傾斜部102とリム部14との間には隙間103が形成されている。隙間103の上下方向の寸法は、第1状態において、後方に向かって増している。着座部20の下面の後部に傾斜部102が設けられていることによって、着座による荷重が着座部20の前部に偏って作用しても、着座部20の後部は下方へ弾性変形しやすいから、マイクロスイッチを作動しやすくできる。これによって、着座部20が弾性変形しやすくても、確実に着座検知できる。
【0057】
着座検知センサが着座部の後端部の左右両側のうち一方側のみに設けられている場合、使用者が着座することによって着座部20自身が弾性変形し、着座による荷重が着座検知センサ101に伝わらないおそれがある。例えば使用者の体形や着座姿勢等に起因して、着座による荷重が着座部20の左側領域もしくは右側領域の一方に偏って作用したり、着座部20の前部に偏って作用したりする場合がある。この場合、着座部20自身の弾性変形によって、着座による荷重が着座検知センサ101に伝わりにくくなる。しかしながら、着座検知センサ101を着座部20の左右両側に設けることによって、着座による荷重が着座部20の左側領域もしくは右側領域の一方に偏って作用しても、マイクロスイッチのどちらかが作動することにより安定した着座検知が可能になる。
【0058】
便座装置100は、実施形態1と同様に、着座部20と保持部30とを有し、着座部20と保持部30とは着脱自在である(
図5参照)。着座部20及び保持部30は、
図22及び
図23に示すように、着脱自在な第一着脱部104及び第二着脱部105を備えている。第一着脱部104は、着座部20側に設けられた挿入部106と保持部30側に設けられたアーム部32とを有している。第二着脱部105は、保持部30側に設けられた挿入片35と着座部20側に設けられたスリット22とを備えている。第一着脱部104の着脱方向104Dと第二着脱部105の着脱方向105Dとは異なっている。第二着脱部105の着脱方向105Dは、第一着脱部104の着脱方向104Dと比べて、Z軸に対し平行に近い角度である。
【0059】
第一着脱部104の着脱方向104Dと第二着脱部105の着脱方向105Dとは異なっているから、着座部20と保持部30とは強固に結合される。これによって、着座部20と保持部30との結合部分は、車いすから便座への移乗、着座した使用者の体重移動、着座部20の開閉等によって作用する左右方向の荷重に対し、持ちこたえることができる。
【0060】
挿入部106は、着座部20の後端部の左右方向両端に設けられている(
図19参照)。挿入部106は、着座部20と同一素材で着座部20と一体に形成されている。左右の挿入部106はそれぞれ、着座部20から後方へ突出している。挿入部106は、アーム部32に対し弾性変形しながら挿入される。挿入部106は、アーム部32に収容された状態において弾性変形していてもよいし、弾性変形していなくてもよい。
【0061】
挿入片35は、実施形態1と同様、平面視において、クリスマスツリー形状をなし、左右両側に複数の突出部36を有している(
図26参照)。各挿入片35において左右方向内側の突出部36の数は、左右方向の外側の突出部36の数よりも少ない。
【0062】
スリット22は、
図24に示すように、着座部20の上面部107と下面部108との間に形成されている。上面部107と下面部108とは、着座部20を上下方向に2分割して形成されている。挿入部106は上面部107に設けられている。着座部20には、スリット22の縁に沿って、嵌め部109が設けられている(
図20参照)。嵌め部109は、上下方向に嵌り合う凸部111と凹部112とを有している。凸部111と凹部112とは、上面部107の下面及び下面部108の上面の一方と他方とに設けられている。
図24には、上面部107に凸部111、下面部108に凹部112を形成する場合を示す。凸部111及び凹部112は、
図25に示すように、上面部107に凹部112、下面部108に凸部111を形成してもよい。
【0063】
上面部107と下面部108とは、嵌め部109を嵌め合わせて図示しない接着剤により接着されている。接着剤を塗布する範囲ARは、
図24及び
図25に示すように、上面部107の下面及び下面部108の上面のうちスリット22を構成する部分と、嵌め部109のうちスリット22を縁取る面とを除く範囲内とされている。これによって、スリット22に接着剤がはみ出してしまうことで挿入片35がスムーズに入らなくなる現象を防止でき、かつ、着座部20の弾力性を利用して挿入片35がスリット22の側面を押し広げながら挿入できるとともに、接合部の剥がれに挿入片35が入ってしまう現象も防止できる構造のため、強固な結合力が得られる。
【0064】
左右のアーム部32はそれぞれ、
図26に示すように、ベース部113とカバー部114とによって構成されている。左右のベース部113は、横部31と一体に形成されている。左右のベース部113はそれぞれ、横部31の左右方向両端部から後側に突出している。各ベース部113は、底壁115及び左右の側壁116を備えている。ベース部113は、上方に開放されている。
【0065】
左右のベース部113はそれぞれ、第一掛かり部117及び第二掛かり部118を有している。第一掛かり部117及び第二掛かり部118は、左右の側壁116の一方と他方とに設けられている。第一掛かり部117は、側壁116に形成された開口である。第二掛かり部118は、側壁116の前端部に形成された切り欠きである。
【0066】
カバー部114は、ベース部113に嵌め合わされる。カバー部114は、天井壁119及び外壁121を有している。天井壁119は、ベース部113の底壁115と対向する。外壁121は、ベース部113の側壁116の左右方向外側に被さる。
【0067】
左右のカバー部114はそれぞれ、第一突出部122及び第二突出部123を有している。第一突出部122は、第一掛かり部117に引っ掛けられる。第二突出部123は、第二掛かり部118に差し込まれる。これによって、カバー部114は、ベース部113からの浮き上がりを防止される。
【0068】
ロック部33は、
図26に示すように、プランジャ127、バネ128、ホルダ129、スリーブ131、ロックピン132、ロックピース133及びカム134を備えている。
【0069】
ロック部33は、
図27に示すように、右側のアーム部32に取り付けられている。ロック部33のホルダ129は、右側のアーム部32の取付穴124に取り付けられている。取付穴124は、ベース部113の左右の側壁116に設けられている。
【0070】
右側のアーム部32は、
図27に示すように、ロック部33のホルダ129に嵌め込まれる突起125を有している。突起125は、底壁115に設けられている。右側のアーム部32は、
図28に示すように、ロック部33のカム134に差し込まれるボス126を有している。ボス126は、側壁116に設けられている。
【0071】
ロック部33には、
図27に示すように、複数の水抜き穴143が形成されている。水抜き穴143は、バネ収容部138、軸部33A、及びホルダ129を内外方向に貫通している。水抜き穴143は、第1状態において下向きに開口する。ロック部33の内部に入り込んだ掃除用の水、洗剤、除菌剤等は、水抜き穴143からロック部33の外側へ排出される。これによって、ロック部33の内部に掃除用の水、洗剤、除菌剤等が留まることを防ぎ、金属部品の腐食や樹脂部品の劣化を防止できる。
【0072】
プランジャ127は、
図27に示すように、軸部33A及び操作部33Bを有している。軸部33Aの外周面は、円筒状をなしている(
図26参照)。操作部33Bは、軸部33Aの右端に設けられている。操作部33Bの右面は操作面135である(
図27参照)。操作面135は、ロック部33をロック状態及びロック解除状態に操作するときに左側に押される。操作面135は、ケーシング18の外観に沿って傾斜している。
【0073】
軸部33Aは、
図27に示すように、ロック状態において便座支持部16の軸穴16Bに支持される。軸穴16Bは、軸穴部材136に形成されている。軸穴部材136は、バネ157により支持され着座の荷重を受けて上下に可動する形態でケーシング18に固定されている。軸穴16Bには、軸部33Aが回転する際の摺動異音を防止する目的の突起137が設けられている(
図26参照)。突起137は2つ設けられ、それぞれ軸部33Aに線接触する。
【0074】
プランジャ127は、
図29及び
図30に示すように、バネ128を収容するバネ収容部138を有している。操作部33Bのうちバネ収容部138に対応する位置には、バネ支持部139が設けられている。バネ128は、圧縮コイルバネである。バネ収容部138は、軸部33Aの外周面から内側に凹んで形成されている(
図31参照)。バネ収容部138は、回転軸Aに直交する断面においてU字形状をなしている。
【0075】
プランジャ127には、
図28に示すように、スリーブ131が固定されている。スリーブ131は、軸部33Aを径方向に貫通し、軸部33Aに固定されている。ロックピン132は、スリーブ131に通されている。ロックピン132は、スリーブ131に対して回転自在である。ロックピン132の一端は、ロックピース133の孔に圧入されている。
【0076】
ロックピース133は、ロックピン132の一端に固定されている。ロックピース133は、
図32及び
図33に示すように、プランジャ127の左右方向の移動に伴ってカム溝144内を左右に移動する。ロックピース133は、ロックピン132を中心に回転し、カム溝144内で姿勢を変える。ロックピース133は、一対の止部145と、一対の摺動部146とを有している。
【0077】
ホルダ129は、
図27に示すように、アーム部32に固定されている。ホルダ129の外面には、アーム部32の突起125が嵌る窪み141が設けられている。ホルダ129は、バネ支持部139を有している。バネ支持部139は、プランジャ127のバネ収容部138に配置される。
【0078】
ホルダ129は、
図31に示すように、プランジャ127の外周面に沿った円筒状をなしている。ホルダ129の外周面には、一対の外面凹部156が形成されている。外面凹部156には、カム134のホールド部147が嵌められる。ホルダ129は、左右方向に延びた2本のガイド孔142を有している。ガイド孔142には、スリーブ131及びロックピン132が貫通している。スリーブ131及びロックピン132は、ガイド孔142に沿って左右方向に移動する。スリーブ131及びロックピン132がガイド孔142を貫通していることによって、プランジャ127の径方向の位置はホルダ129に対し固定される。
【0079】
カム134は、
図31に示すように、一対のホールド部147を有している。一対のホールド部147は、間にホルダ129を挟んで保持する。カム134には、カバー部114のボス126が差し込まれるボス用孔148が設けられている(
図28参照)。カム134は、ボス126によって右側のアーム部32に位置決めされる。カム134は、2本のネジSによって右側のアーム部32に固定される(
図26参照)。
【0080】
カム134は、
図32及び
図33に示すように、ロックピース133を案内するカム溝144を有している。カム溝144は、第一溝部149、第二溝部151及び移行溝部152を有している。第一溝部149は、カム溝144の右端側に設けられている。第二溝部151は、カム溝144の左端側に設けられている。移行溝部152は、第一溝部149と第二溝部151との間に設けられている。
【0081】
第一溝部149及び第二溝部151において対向する一対のカム面153は平行である。第二溝部151の溝幅は、第一溝部149の溝幅よりも大きい。第一溝部149に配置された状態のロックピース133の姿勢を第一姿勢と称する。第二溝部151に配置された状態のロックピース133の姿勢を第二姿勢と称する。第一姿勢においてロックピース133の摺動部146は一対のカム面153に沿っている。第二姿勢においてロックピース133の止部145は、一対のカム面153から離れている。
【0082】
移行溝部152において、ロックピース133は第一姿勢から第二姿勢に変化する、もしくは第二姿勢から第一姿勢に変化する。移行溝部152は、ロック段部154を有している。ロックピース133は、
図32に示すように、ロック段部154に引っかかる。これによって、ロック部33はロック状態に保持される。
【0083】
移行溝部152は、傾斜面152A及び152Bを一対のカム面153のうち一方と他方とに有している。傾斜面152A,152Bは、異なる勾配で傾斜している。ロック段部154に形成された傾斜面152Aは、反対側のカム面153に形成された傾斜面152BよりもX軸に対して直角に近い角度で傾いている。傾斜面152A,152Bは、
図33に示すように、ロックピース133を回転させるように誘導する。
【0084】
ロック状態において、ロックピース133の止部145は、
図32に示すように、ロック段部154に引っかかる。ロックピース133は、ロック状態の操作部33Bを左側に押し操作することによって、
図33に示すように、第二溝部151に移動する。これによって、止部145とロック段部154との引っ掛かりが解除される。使用者が、操作部33Bから手を離すと、バネ128の弾性力によって、操作部33Bは右方に押され、ロックピース133は第二溝部151から移行溝部152に至る。ロックピース133の一方の摺動部146は傾斜面152Aに当たり、ロックピース133は、傾斜面152Bに沿って回転する。ロックピース133は第一姿勢になり、第一溝部149に入る。
【0085】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。着座部20を便器本体12の上面に保持した状態において、着座部20の下面の後部と便器本体12の上面との間には隙間103が形成されている。この構成によれば、着座によって着座部20の前部が弾性変形しても着座部20の後部は下方に変位しやすいから、弾性変形しやすい着座部20でも着座検知できる。
【0086】
着座部20及び保持部30は、着脱自在な第一着脱部104及び第二着脱部105を備えている。第一着脱部104の着脱方向104Dと第二着脱部105の着脱方向105Dとは異なっている。この構成によれば、第一着脱部104と第二着脱部105とを外れにくくできるから、着座部20と保持部30とを強固に固定できる。
【0087】
第一着脱部104は、着座部20側に設けられた挿入部106と保持部30側に設けられたアーム部32とを有している。挿入部106は弾性変形しながらアーム部32に差し込まれる。この構成によれば、挿入部106の弾性力によって、アーム部32から挿入部を抜けにくくできる。
【0088】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において着座部20は単一の樹脂素材によって形成されている。これに限らず、着座部20は複数の異なる素材によって形成してもよい。例えば着座部は複数の素材を層状に重ねてもよく、第1状態における上側から順に、表層、中間層、基層としてもよい。この場合、表層は、耐傷性や耐汚れ性を有する塗料を印刷した薄い層であってもよいし、様々なデザインを有するものであってよい。中間層は、発泡樹脂製であってもよい。基層は、比較的強度が大きく耐荷重、耐衝撃性を有する素材であってもよい。
(2)上記実施形態において着座部20は、着座者の臀部の温度を奪いにくい素材で形成されている。これに限らず、着座部の素材は季節にあわせて適宜変更してもよい。例えば着座部の素材は、暑い季節に心地よく感じる冷感素材であってもよい。
(3)上記実施形態においてロック部33はプッシュラッチ機講を備えている。これに限らず、ロック部としてワンタッチ操作可能な他の公知の機講を用いてよい。
(4)上記実施形態において保持部30は着座部20を直接保持している。これに限らず、保持部は着座部を間接的に保持してもよい。例えば、保持部は、保持部と着座部との間に着座部とは別の部材を介在させて、着座部を保持してもよい。
(5)上記実施形態において便座装置10,50,60,100の保持部30は、着座部20を便器本体12の上面に沿って配置した状態及び便器本体12の上面から上方に立ち上げた状態にするヒンジ部である。これに限らず、保持部は、着座部を回転させる機能を有さなくてもよい。保持部は、着座部を便器本体の上面に保持する機能を有していればよい。保持部は、便器本体の上面に対して着座部が位置ずれすることを防いだり、便器本体の上面から着座部が落下することを防いだりするものであれば良い。
(6)上記実施形態において着座検知センサ101はマイクロスイッチ式である。これに限らず、着座検知センサは、赤外線センサ式、及び電波センサ式などであってもよい。
(7)上記実施形態においてバネ128は、プランジャ127の内側に配置されている。これに限らず、バネは、プランジャの外側に配置してもよい。
(8)上記実施形態において挿入片35の形状を例示した。これに限らず、挿入片の形状は変更してもよい。
(9)上記実施形態において着座検知センサ101は左右両側に設けられている。これに限らず、着座部や保持部の剛性を確保すれば、着座検知センサは片側だけに設けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10,50,60,100…便座装置、12…便器本体、13…便鉢部、16…便座支持部、20…着座部、30…保持部、32…アーム部、103…隙間、104…第一着脱部、104D…第一着脱部の着脱方向、105…第二着脱部、105D…第二着脱部の着脱方向、106…挿入部