(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065011
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】固形パーソナルケア製品及び固形パーソナルケア製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240507BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159278
(22)【出願日】2023-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022173803
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】夏井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】平野 喬大
(72)【発明者】
【氏名】八友 大知
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB432
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD04
4C083DD21
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品を提供すること。
【解決手段】基台部10と、該基台部10の表面10aに形成された線条部20とを有し、表面10aの平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積S0あたりの線条部20の占有面積S1の比率S1/S0が、該表面10aと平行な少なくとも一方向Xに沿って変化しており、前記占有面積の比率S1/S0が変化していることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされている、固形パーソナルケア製品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有し、
前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積あたりの前記線条部の占有面積の比率が、該表面と平行な少なくとも一方向に沿って変化しており、
前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされている、固形パーソナルケア製品。
【請求項2】
前記線条部の幅及び高さの何れか一方又は両方が前記一方向に沿って変化していることにより、前記占有面積の比率が変化している、請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項3】
前記基台部及び前記線条部を含む部分が、2層以上の層が積層された積層構造を有する、請求項1又は2に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項4】
目視方向によって、前記模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が変化するようになされている、請求項1~3の何れか一項に記載の固形パーソナルケア製品。
【請求項5】
所望の画像に基づく模様を有する固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記固形パーソナルケア製品は、
基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有し、
前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積あたりの前記線条部の占有面積の比率が、該表面と平行な少なくとも一方向に沿って変化しており、
前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した前記模様が生じるようになされており、
前記製造方法は、
前記所望の画像から、前記線条部の形成予定位置上の複数の点について、それぞれに対応する画素の所定値を抽出する抽出工程と、
前記基台部の表面に前記線条部を形成する線条部形成工程とを有しており、
前記線条部形成工程では、前記抽出工程において抽出した画素の前記所定値に応じて、該所定値に対応する前記占有面積を付与することによって、前記占有面積の比率を変化させる、固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項6】
前記線条部形成工程では、前記線条部を構成する組成物をノズルから前記基台部に対して吐出して堆積させることによって前記線条部を形成する、請求項5に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項7】
前記線条部形成工程では、前記基台部の表面の一部を削り取ることによって前記線条部を形成する、請求項5に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【請求項8】
画像提供者の所望の画像を、ネットワーク又は記憶媒体等の画像伝達媒体を通じて受信する受信工程、及び受信した画像に基づき、請求項5~7の何れか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法により、固形パーソナルケア製品を製造する製造工程を含む、固形パーソナルケア製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形パーソナルケア製品及び固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石鹸や、アイシャドウやファンデーション等の固形化粧料などの固形パーソナルケア製品に模様を形成することが行われている。例えば、特許文献1には、容器に充填されて固化されている油性固形化粧料と、該油性固形化粧料の表面に対して加飾用化粧料を液摘状態で吐出して形成された模様とを有する化粧料が記載されている。また特許文献2には、化粧皿の内部に配置された立体形状の模様と、模様の下層に位置する透明色の下層用化粧料と、模様の上層に位置する透明色の上層用化粧料とを備えた模様付固形化粧料が記載されている。
【0003】
特許文献3には、化粧料の表面に模様を付した模様付化粧料が記載されている。ここでは、模様は、第1のドットと、第1のドットよりも面積の小さい第2のドットとを備え、第1のドット及び第2のドットを含む同一色の複数のドットの組み合わせにより色の濃淡が表現されている。
【0004】
模様を形成する技術に関し、特許文献4には、線画に基づくレリーフ模様を作成する方法が記載されている。ここでは、線画に複数の基準線を定義し、線画を構成する線と基準線との交点付近において基準線を迂回させ、迂回線が重複する区間についてはこれを融合する処理を施し、この迂回線と基準線の一部とによって万線を作成し、これらの万線によりレリーフ模様を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-172578号公報
【特許文献2】特開2019-108309号公報
【特許文献3】特開2017-86478号公報
【特許文献4】特開平5-158208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術では、模様を構成する化粧料をノズルから吐出することにより、化粧料(特許文献2においては下層用化粧料)の表面に模様を形成している。つまり、特許文献1及び2に記載の技術では、模様の輪郭線を描くことにより模様そのものを形成している。そのため、特許文献1及び2に記載の技術では、模様に濃淡を付すことが困難であった。
特許文献3の技術では、色の濃淡を表現することは可能であるが、立体的な模様を表現することは困難であった。
特許文献4の技術は、株券等の有価証券に施されるレリーフ模様を作成するものであり、特許文献4では、固形パーソナルケア製品に模様を形成することについて何ら検討されていない。
本発明の課題は、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、固形パーソナルケア製品に関する。
前記固形パーソナルケア製品は、基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有することが好ましい。
前記固形パーソナルケア製品は、前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積あたりの前記線条部の占有面積の比率が、該表面と平行な少なくとも一方向に沿って変化していることが好ましい。
前記固形パーソナルケア製品は、前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされていることが好ましい。
【0008】
また本発明は、所望の画像に基づく模様を有する固形パーソナルケア製品の製造方法に関する。
前記固形パーソナルケア製品は、基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有することが好ましい。
前記固形パーソナルケア製品は、前記基台部の前記表面を一方向に沿って見たときに、平面視又は斜視における単位面積あたりの前記線条部が占有する占有面積の比率が変化していることが好ましい。
前記固形パーソナルケア製品は、前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した前記模様が生じるようになされていることが好ましい。
前記製造方法は、所望の画像から、前記線条部の形成予定位置上の点と対応する画素の所定値を抽出する抽出工程と、前記基台部の表面に前記線条部を形成する線条部形成工程とを有していることが好ましい。
前記線条部形成工程では、前記抽出工程において抽出した画素の所定値に応じて、該所定値に対応する前記占有面積を付与することによって、前記占有面積の比率を変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の固形パーソナルケア製品の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す固形パーソナルケア製品の平面図である。
【
図5】
図5は、隣り合う線条部どうしの間の距離の測定方法を説明する図であり、
図2の一部模式拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、
図1に示す固形パーソナルケア製品の変形例を示す平面図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す固形パーソケアナル製品をB方向から見た斜視図である。
図6(c)は、
図6(a)に示す固形パーソナルケア製品をC方向から見た斜視図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、
図1に示す固形パーソナルケア製品における線条部の配置パターンの変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す固形パーソナルケア製品における線条部の配置パターンの別の変形例を示す図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、
図1に示す固形パーソナルケア製品における線条部の配置パターンの更に別の変形例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の製造方法で用いられる製造装置の一実施形態を模式的に表す斜視図である。
【
図12】
図12は、本実施態様の製造方法に係る抽出工程を説明する図である。
図12(a)は、線条部の形成予定位置を模式的に示す図である。
図12(b)は、本実施態様の製造方法で用いられる所望の画像の例を示す図である。
図12(c)は、実施例2の製造方法で用いられる所望の画像を示す図である。
【
図13】
図13(a)~(c)は、本実施態様の製造方法における線条部形成工程を模式的に表す断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の製造方法で用いられる製造装置の別の実施形態に係る線条部形成部を模式的に表す断面図である。
【
図15】
図15(a)及び(b)は、
図1に示す固形パーソナルケア製品における線条部の配置パターンの更に別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の固形パーソナルケア製品は、基台部10と、該基台部10の表面10aに形成された線条部20とを有することが好ましい。具体的には、固形パーソナルケア製品は、基台部10と線条部20とを有する本体部11を有していることが好ましい。
線条部20は、立体形状を有していることが好ましい。具体的には、線条部20は、基台部10の表面10aから突出して設けられていることが好ましい。
固形パーソナルケア製品は、線条部20を1つのみ有していることが好ましい。換言すれば、線条部20は、1本の線状に形成されている。この場合、線条部20は、一筆書き可能な渦巻き状であることも好ましい。
固形パーソナルケア製品の典型例は化粧料である。化粧料1は、本体部11と、該本体部11が内部に収容された容器30とを有していることが好ましい。この具体例を
図1に示す。
立体形状の線条部20は、基台部10の表面10aに形成された凸部であり、具体例を
図4に示す。
なお、固形パーソナルケア製品は、線条部20を2つ以上の複数有していてもよい。言い換えると、線条部20は部分的に線が途切れていてもよい。
【0012】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20は、該線条部20の長手方向に沿って幅Wが変化していることが好ましい。線条部20の幅Wは、該線条部20の長手方向に沿って連続的に変化していてもよいし、段階的に変化していてもよい。また線条部20の幅Wは、基台部10の表面10aと平行な少なくとも一方向X(
図2参照)に沿って変化していることが好ましい。線条部20の幅Wは、一方向Xに沿って連続的に変化していてもよいし、段階的に変化していてもよい。これらの具体例を
図1~
図3に示す。
図示例では、線条部20の幅Wは、該線条部20の長手方向に沿って連続的に変化している。
図示例では、線条部20は、一方向Xに沿ってその幅Wが連続的に変化している部分と、該一方向Xに沿って段階的に変化している部分との両方を有している。
【0013】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20は、その幅Wが広い部分(以下「幅広部」ともいう。)20aと、その幅Wが狭い部分(以下「幅狭部」ともいう。)20bとを有していることが好ましい。ここでいう幅の広狭は、他方と比べたときの相対的な意味である。線条部20は、幅広部20a及び幅狭部20bをそれぞれ複数有していることが好ましい。
固形パーソナルケア製品は、典型的には幅広部20aと幅狭部20bとを特定の配置で有しており、基台部10の表面10aの平面視又は斜め上方からの斜視において、密部21と粗部22とを有する粗密構造が形成されている。密部21は、基台部10の表面10aにおいて、線条部20が密に存在する部分であり、即ち幅広部20aが存在する部分である。粗部22は、線条部20が粗に存在する部分であり、即ち幅狭部20bが存在する部分である。
具体的には、基台部10の表面10aを、例えば一方向Xに沿って見たときに、粗部22と密部21とが交互に配されている。粗部22は、平面視又は斜め上方からの斜視における単位面積S0あたりの線条部20が占有する面積S1の比率が相対的に小さい部分である。密部21は、平面視又は斜め上方からの斜視における単位面積S0あたりの線条部20が占有する面積S1の比率が相対的に大きい部分である。前記一方向Xは、基台部10の表面10aと平行な任意の方向とすることができる。
これらの具体例を
図3及び4に示す。
【0014】
このように、本発明の固形パーソナルケア製品は、基台部10の表面10aの平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積S0あたりの線条部20が占有する占有面積S1の比率S1/S0が一方向Xに沿って変化していることが好ましい。前記占有面積の比率S1/S0は、一方向Xに限らず、基台部10の平面と平行な任意の方向に沿って変化していることがより好ましい。即ち、固形パーソナルケア製品の表面に対するいずれかの視点において、上記の占有面積S1の変化が観察されることが好ましい。
基台部10の平面と平行な任意の方向が線条部20の長手方向であるとき、占有面積S1は幅Wの変化に伴い変化する。この場合、前記専有面積の比率の変化は、線条部20の幅Wが変化する変化点Nで生じ、例えば、複数の変化点Nを結ぶ線が、密部と粗部との境界となり、主観的輪郭として視認される。
【0015】
前記占有面積の比率S1/S0が、基台部10の表面10aと平行な一方向に沿って変化しているか否かは、以下の方法により判断することができる。
<判断方法>
まず、基台部10の表面10aと平行な一方向に沿う仮想線を想定する。前記一方向は前記表面10aと平行な任意の方向とすることができる。そして、基台部10の表面10aを前記一方向に沿って見たときに、該表面10aに、線条部の密部と粗部とが存在する場合、即ち、粗密構造が形成されている場合、前記占有面積の比率S1/S0が前記一方向に沿って変化していると判定する。
【0016】
少なくとも、以下(1)~(4)の場合は、線条部の密部と粗部とが存在すると判断する。
(1)線条部が、互いに近接することにより相対的に高密度に存在する部分(密部)と、互いに離間する距離が長いことにより相対的に低密度に存在する部分(粗部)とを有する場合
このとき、線条部は、幅が相対的に広い部分である幅広部と、幅が相対的に狭い部分である幅狭部とを有し、これによって線条部の間隔が変化していることが好ましい。幅広部と幅狭部とを有する線条部は、連続する1本の線条部であってもよく(
図1参照)、不連続の複数本の線条部であってもよい。並行する複数本(例えば2本~20本)の線条部が、それらの延在方向における同じ位置又は近接する位置に、幅が変化する部分、例えば幅が拡大又は減少する部分を有することも好ましい(
図1参照)。
図3中Nは、幅が減少する部分を示す。
(2)線条部が、高さが相対的に高い部分である高部と、高さが相対的に低い部分である低部とを有する場合
この場合、斜め上方から斜視したときに、高部は、陰影が多く表れ、線条部が高密度に存在するように視認されるため、密部となる。低部は、表れる陰影が相対的に少なく、線条部が低密度に存在するように視認されるため、粗部となる。(2)の場合、高部が相対的に高密度に存在する部分(高部高存在部)と、高部が相対的に低密度に存在する部分(高部低存在部)とを有することが好ましい。
(3)線条部が屈曲する程度が大きく、一定面積内に収まる線条部の総長さが長い部分と、線条部が屈曲する程度が小さく、一定面積内に収まる線条部の総長さが短い部分とを有する場合(
図8、
図9(a)及び(b)参照)
(4)(1)~(3)の複合である場合
【0017】
前記占有面積の比率S1/S0は、以下のようにして測定することができる。
<占有面積の比率S1/S0の測定方法>
平面視における前記占有面積の比率S1/S0の測定方法について説明する。
基台部10の表面10aを平面視して、一定面積の領域を測定対象の領域とする。この測定対象の領域の面積が単位面積S0である。そして、測定対象領域内に含まれる線条部の平面視面積を測定する。このようにして測定される線条部の平面視面積が、線条部が占有する占有面積S1である。そして、占有面積S1を単位面積S0で除することにより、比率S1/S0を算出する。
また、以下のようにして、比率S1/S0を算出してもよい。まず、基台部10の表面10aを平面視した画像を取得し、例えば10mm四方で囲まれる任意の領域を測定対象の領域とする。そして、測定対象領域の画素数をカウントし、カウントされた画素数をS0とする。次に、測定対象領域内に含まれる線条部の画素数をカウントし、カウントされた画素数をS1とする。そして、線条部の画素数S1を測定対象領域の画素数S0で除することにより、比率S1/S0を算出してもよい。
測定対象とする前記一定面積の領域は、線条部の細さや分布等に応じて適宜に設定でき、例えば、10mm四方若しくは5mm四方の領域、又は直径10mm若しくは直径5mmの円形領域等とすることができる。より高精細なものを測定対象とする場合には、1mm四方若しくは0.5mm四方の領域、又は直径1mm若しくは0.5mmの円形領域等とすることもできる。
【0018】
本発明の固形パーソナルケア製品では、前記占有面積の比率S1/S0が変化していることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされていることが好ましい。具体的には、基台部10の表面10aに前記粗密構造が形成されていることによって、前記表面10aを目視したときに、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされていることが好ましい。
図1及び2に示す例では、星形と三日月形の模様が生じるようになされている。
主観的輪郭とは、輪郭線に沿った輝度や色の変化が存在しないにもかかわらず、錯視により知覚される輪郭である。即ち、物理的には存在しない輪郭線が、周囲の刺激布置により知覚されるものであり、錯覚的輪郭、認知的輪郭、異種輪郭と呼ばれることもある。
主観的輪郭は、画像を取り扱う様々な分野で広く知られている(特開2010-4178号公報、特開2005-165060号公報等)。
【0019】
本発明の固形パーソナルケア製品では、前記占有面積の比率S1/S0が変化することによって、即ち基台部10の表面10aに前記粗密構造が形成されていることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされている。そのため、固形パーソナルケア製品が有する模様を、濃淡が表現された模様とすることができる。
本発明の固形パーソナルケア製品は、線条部20は立体形状を有するので、固形パーソナルケア製品が有する模様は立体的なものとなる。また、固形パーソナルケア製品を目視したときに陰影が生じる。
本発明の固形パーソナルケア製品が有する模様は、主観的輪郭を利用して生じるものであることに加えて、目視したときに陰影が生じるので、該模様を一層印象的又は魅力的な模様とすることができる。
このように、本発明の固形パーソナルケア製品によれば、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を表現することが可能である。
【0020】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20の幅Wが、一方向Xに沿って又は線条部20の長手方向に沿って変化することに代えて、線条部20の高さT(
図4参照)が、一方向Xに沿って又は線条部20の長手方向に沿って変化することにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化していてもよい。また線条部20の幅W及び高さTの両方が一方向Xに沿って又は線条部20の長手方向に沿って変化することにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化していてもよい。
線条部20の幅及び高さの何れか一方又は両方が一方向Xに沿って又は線条部20の長手方向に沿って変化することにより前記占有面積の比率S1/S0が変化していることによって、目視したときに生じる陰影を一層はっきりさせることができるので、固形パーソナルケア製品が有する模様を一層印象的又は魅力的な模様とすることができる。また、固形パーソナルケア製品を容易に製造することが可能である。固形パーソナルケア製品の製造方法については後述する。
【0021】
平面視における線条部20の幅Wは、特に限定されないが、立体的な模様を形成し、またノズルに組成物が詰まることを抑止する観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.15mm以上である。
また、線条部20の幅Wは、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
線条部20の幅Wが前述した範囲内であるとは、線条部20における、最も幅が広い部分の幅及び最も幅が狭い部分の幅の両方が、前述した範囲内であることを意味する。
【0022】
平面視において、線条部20における、最も幅が広い部分の幅W1に対する最も幅が狭い部分の幅W2の比率W2/W1は、特に限定されないが、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくする観点から、好ましくは1.6%以上、より好ましくは2.5%以上、更に好ましくは3.3%以上である。
また、平面視において、前記比率W2/W1は、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。前記比率W2/W1は、百分率(%)で表す。後述する、比率T2/T1、比率D2/D1、比率D/W、比率R2/R1及び比率H2/H1についても同様である。
【0023】
本実施形態のように線条部20が凸部である場合、線条部20の高さTは、特に限定されないが、立体的な模様を形成する観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.12mm以上である。
また、線条部20の高さTは、線条部の崩れを抑制する観点から、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.6mm以下である。
線条部20の高さTは、線条部20の突出方向における、線条部20の基端から先端までの距離を意味する(
図4参照)。
線条部20の高さTが前述した範囲内であるとは、線条部20における、最も高さが高い部分の高さ及び最も高さが低い部分の高さの両方が、前述した範囲内であることを意味する。
【0024】
線条部20における、最も高さが高い部分の高さT1に対する最も高さが低い部分の高さT2の比率T2/T1は、特に限定されないが、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくする観点から、好ましくは2.5%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは8.3%以上である。
また、前記比率T2/T1は、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
【0025】
平面視における隣り合う線条部20どうしの間の距離Dは、特に限定されないが、後述する線条部形成工程において、先に形成された線条部20とノズル61とが接触することを防止する観点から、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上である。
また、平面視における隣り合う線条部20どうしの間の距離Dは、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくし、また、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。
【0026】
平面視における隣り合う線条部20どうしの間の距離Dのうち、最も長い距離D1に対する最も短い距離D2の比率D2/D1は、線条部20の均一性によって主観的輪郭を生じやすくする観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上である。
また、前記比率D2/D1は、線条部20の重なりを防ぎ易くする観点から、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。
【0027】
隣り合う線条部20どうしの間の距離Dは、以下のようにして測定する。まず、線条部20と交差する仮想線Lを想定する(
図2及び
図5参照)。化粧料1が線条部20を1つのみ有する場合、仮想線Lは、該線条部20における2箇所以上と交差するものである。化粧料1が線条部20を複数有する場合、仮想線Lは、複数の線条部20のうち、1つの線条部20における2箇所以上と交差するものであってもよいし、2つ以上の線条部20と交差するものであってもよい。そして、線条部20における、仮想線Lと交差する部分のうち、隣り合う該部分の中心間どうしの間の仮想線Lに沿った距離を、隣り合う線条部20どうしの間の距離Dとする。仮想線Lは線条部20に直交することが好ましいが、模様によっては線条部20に直交する仮想線Lが設定できない場合もあるため、仮想線Lは任意の場所に設定してよいものとする。
隣り合う線条部20どうしの間の距離Dが前述した範囲内であるとは、線条部20における、前記距離Dが最も大きい部分及び前記距離Dが最も小さい部分の両方において、前記距離Dが、前述した範囲内であることを意味する。
【0028】
平面視における線条部の幅Wに対する、隣り合う線条部どうしの間の距離Dの比率D/Wは、特に限定されないが、後述する線条部形成工程において、先に形成された線条部20とノズル61とが接触することを防止する観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは7.5%以上、更に好ましくは10%以上である。
また、平面視における前記比率D/Wは、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくし、また、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは5000%以下、より好ましくは4000%以下、更に好ましくは3000%以下である。
前記比率D/Wを算出するときは、線条部の幅Wの平均値を線条部の幅Wとし、隣り合う線条部どうしの間の距離Dの平均値を、隣り合う線条部どうしの間の距離Dとする。
【0029】
本発明の固形パーソナルケア製品は、基台部10及び線条部20を含む部分が、2層以上の層が積層された積層構造を有することが好ましい。この積層構造を有する部分は、固形パーソナルケア製品を使用したときに該製品の機能が発揮される部分であることが好ましく、この場合の積層構造を有する部分を機能性部分と呼ぶ。
図4に示す実施形態では、基台部10と線条部20とは別々の層になっている。即ち、この実施形態では、基台部10と線条部20とが積層された積層構造を有する本体部11が機能性部分である。
【0030】
積層構造を有する部分が、2層以上の層が積層された積層構造を有することにより、各層ごとに別々の機能を付与したり、固形パーソナルケア製品が有する模様をより複雑なものとしたり、より視認しやすいものとしたりすることが可能となる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、前記積層構造における各層を構成する組成物の組成及び色の何れか一方又は両方が異なることが好ましい。
積層構造を有する部分が、3層以上の層が積層された積層構造を有する場合、組成及び色が同じである層を複数有していてもよい。例えば、機能性部分が、3層の層が積層された積層構造を有しており、3層のうち2層の組成及び色が同じであり、該2層と残りの1層とで、層を構成する組成物の組成及び/又は色の何れか一方又は両方が異なっていてもよい。
線条部20と基台部10との間に、両者とは別の層が配されていてもよい。
線条部20が2層以上の層が積層された積層構造を有していてもよいし、基台部10が2層以上の層が積層された積層構造を有していてもよい。
また、同一層において部分的に組成物の組成及び色の何れか一方又は両方が異なっていても良い。例えば、線条部20の色が部分的に異なることで、固形パーソナルケア製品が有する模様が複数色で表現できる為、より一層印象的又は魅力的な模様とすることができる。
【0031】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20は、積層構造を有する部分における、基台部10を構成する層から最も遠くに位置している層によって形成されていることが好ましい。こうすることにより、線条部20を目視しやすくし、主観的輪郭を利用して生じる模様を認識しやすくすることができる。図示例では、基台部10を構成する層から最も遠くに位置している層は、固形パーソナルケア製品の使用時に使用者の側に向けられる側の表面を形成している層である。
なお、線条部20は、積層構造を有する部分における、基台部10を構成する層から最も遠くに位置している層以外の層によって形成されていてもよい。この場合、線条部20を形成する層よりも、基台部10を構成する層とは反対側に位置する層は透明又は半透明であり、固形パーソナルケア製品を目視したときに、線条部20を視認可能となっていることが好ましい。
【0032】
本発明の固形パーソナルケア製品は、目視方向によって、模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が変化するようになされていてもよい。ここでいう色相対比、明度対比及び彩度対比における「対比」とは、例えば明度を例にとって説明すると、基台部10の明度と線条部20の明度を同時に見たとき、基台部10の明度の影響によって線条部20の明度が異なって見えるという意味である。より具体的に説明すると、相対的に明度の高い基台部10と相対的に明度の低い線条部20を同時に見た場合、線条部20の明度は線条部20そのものの明度よりも低く見えるという意味である。色相及び彩度に関しても同様である。
目視方向によって、模様の色相対比が変化する態様には、任意の一方向から見たときと、該一方向とは異なる方向からみたときとで、固形パーソナルケア製品の模様の色相が異なって見える態様が含まれる。ここで色相が変化するというのは、例えば40等分して表現された色相環上での色相が目視方向によって別々に分類されるような場合である。また、目視方向によって、模様の明度対比が変化する態様には、任意の一方向から見たときと、該一方向とは異なる方向からみたときとで、固形パーソナルケア製品の模様の明度が異なって見える態様が含まれる。また、目視方向によって、模様の彩度対比が変化する態様には、任意の一方向から見たときと、該一方向とは異なる方向からみたときとで、固形パーソナルケア製品の模様の彩度が異なって見える態様が含まれる。
【0033】
例えば、
図6(a)~(c)に示す化粧料1は、目視する方向によって模様の明度対比が変化するようになされている。具体的には、
図6に示す化粧料1は、該化粧料1をB方向から見たときには、模様の明度対比が相対的に低くなるようになされており(
図6(b)参照)、該化粧料1をC方向から見たときには、模様の明度対比が相対的に高くなるようになされている(
図6(c)参照)。つまり、
図6に示す化粧料1は、B方向から見たときは、模様の明度が相対的に低く感じられるので、模様の形状が相対的に視認しにくく、C方向から見たときは、模様の明度が相対的に高く感じられるので、模様の形状が相対的に視認しやすい。B方向又はC方向から見たとは、より詳細には、固形パーソナルケア製品における線条部20を有する面を、斜め上方から斜視したという意味である。
【0034】
本発明の固形パーソナルケア製品を、目視方向によって、模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が変化するようにする手段としては、該固形パーソナルケア製品を平面視したときの線条部20の配向性を高めることが挙げられる。
例えば、線条部20の配置パターンがストライプ状(
図7(a)及び(b)参照)である場合は、線条部20の配置パターンが同心円状である場合(
図7(c)参照)や渦巻き状(
図7(d)参照)である場合に比して線条部20の配向性が高く、目視方向によって、模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が変化しやすい。なお、
図7(a)~(c)では、説明の便宜上、線条部20の粗密構造の図示を省略している。
【0035】
図7(a)及び(b)に示す例は、A方向から斜視したときは、B方向から斜視したときに比して、線条部20どうしの間の隙間を視認しやすい。このように、
図7(a)及び(b)に示す例は、目視する方向によって前記隙間の視認しやすさが異なるので、目視方向によって、模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が
図7(c)及び(d)に示す例よりも変化しやすくなっている。
【0036】
線条部20の配向性は、固形パーソナルケア製品を平面視した際の画像を取得し、フーリエ変換画像処理を行うことにより、定量的に評価することができる。具体的には、フーリエ変換によりパワースペクトルをもとめ、振幅の角度分布を計算する。そして振幅の角度分布から配向強度を算出し、該配向強度を配向性の指標とすることができる。配向強度は、振幅の角度分布図における近似した楕円の長軸/短軸比として算出する。配向強度が、1.1以下であれば無配向、1.1超1.2未満であれば弱い配向、1.2以上で強い配向とみなすことができる。
【0037】
本発明の固形パーソナルケア製品は、線条部20を1本のみ有していてもよいし(
図1、
図7(b)及び
図7(d)参照)、線条部20を2本以上の複数有していてもよい(
図7(a)及び
図7(c)参照)。
線条部20を1本のみ有していることにより、線条部20の端点を始点と終点のみとすることができる。後述する線条部形成工程においてノズル61から組成物Mを吐出して線条部20を形成する場合、始点や終点といった端点は意図せず線条部20の幅Wに変化が生じやすい。線条部20を1本のみ有していることにより、基台部10の表面10aに線条部20を意図したとおりに形成することが容易になり、化粧料1を容易に製造することができる。
また、線条部20を複数有することにより、化粧料1が有する模様をより多様なものとすることができる。線条部20は、始点及び終点を有する1本の線状であってもよいし、始点及び終点を有しない環状であってもよい。ここで、線条部20が始点及び終点を有しない環状であるとは、固形パーソナルケア製品に形成された線条部20を平面視又は斜め上方から斜視したときに、該線条部20が始点及び終点を有しない環状であることを意味する。始点及び終点を有しない環状である線条部20は、例えば、該線条部20を形成するときに、最初に形成される部分である形成開始点及び最後に形成される形成終了点を有していてもよい。固形パーソナルケア製品が、複数の線条部20を有する場合、線条部20の数は制限されない。
【0038】
線条部20は、該線条部20の一部又は該線条部20とは別の線条部20と交差しないように配されていてもよいし(
図1、
図7(a)~(d)参照)、該線条部20の一部又は該線条部20とは別の線条部20と交差するように配されていてもよい(
図8参照)。
後述する線条部形成工程においてノズル61から組成物Mを吐出して線条部20を形成する場合、線条部20の一部どうしが交差する箇所、又は線条部20と、該線条部とは別の線条部20とが交差する箇所では、意図せず線条部20の幅Wに変化が生じやすい。このような意図しない線条部20の幅Wの変化を抑制する観点からは、線条部20は、該線条部20の一部又は該線条部20とは別の線条部20と交差しないように配されていることが好ましい。
固形パーソナルケア製品が有する模様の表現方法を多様化する観点からは、線条部20は、該線条部20の一部又は該線条部20とは別の線条部20と交差するように配されていることが好ましい。線条部20は、該線条部20の一部又は該線条部20とは別の線条部20と交差するように配されている場合、交点の数は特に制限されない。
【0039】
図1、
図7(b)及び
図7(d)に示す例では、それぞれ、線条部20が、該線条部20の一部と交差しないように配されている。
図7(a)及び
図7(c)に示す例では、それぞれ、各線条部20が、該線条部20の一部と交差しないように配されており、且つ各線条部20どうしが交差しないように配されている。
【0040】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20の幅Wが変化することに代えて、線条部20が湾曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていてもよい(
図9(a)参照)。線条部20は、湾曲している部分を1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよい。
また線条部20が屈曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていてもよい(
図9(b)参照)。線条部20は、屈曲している部分を1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよい。
【0041】
線条部20が湾曲し且つ屈曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていてもよい。線条部20は、湾曲している部分及び屈曲している部分をそれぞれ1つずつのみ有していてもよいし、湾曲している部分を1つのみ有し且つ屈曲している部分を複数有していてもよいし、湾曲している部分を複数有し且つ屈曲している部分を1つのみ有していてもよいし、湾曲している部分及び屈曲している部分をそれぞれ複数有していてもよい。
【0042】
線条部20の幅Wの制御を簡略化し、また、後述する線条部形成工程においてノズル61に対する対象物70の相対位置をなだらかに移動させ、線条部を描く際の振動を抑制する観点からは、線条部20が湾曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていることが好ましい。
線条部20の幅Wの制御を簡略化し、また、高精細な模様を形成する観点からは、線条部20が屈曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていることが好ましい。
線条部20の幅Wの制御を簡略化し、また、模様の表現方法を多様化する観点からは、線条部20が湾曲し且つ屈曲していることにより、前記占有面積の比率S1/S0が変化するようになされていることが好ましい。
【0043】
線条部20が湾曲している場合、平面視における該線条部20の曲率半径Rは、特に限定されないが、先に吐出した線条部とノズルが接触することを防止する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上である。
また、平面視における線条部20の曲率半径Rは、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくし、また、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは1000mm以下、より好ましくは800mm以下、更に好ましくは600mm以下である。
線条部20の曲率半径Rが前述した範囲内であるとは、線条部20における、最も曲率半径が大きい部分の曲率半径及び最も曲率半径が小さい部分の曲率半径の両方が、前述した範囲内であることを意味する。
【0044】
平面視において、線条部20における最も曲率半径が大きい部分の曲率半径R1に対する、最も曲率半径が小さい部分の曲率半径R2の比率R2/R1は、特に限定されないが、先に吐出した線条部とノズルが接触することを防止する観点から、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。
また、平面視において、前記比率R2/R1は、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくし、また、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
【0045】
本発明の固形パーソナルケア製品では、線条部20は、基台部10の表面10aに形成された凸部に代えて、基台部10の表面10aに形成された凹部20Bであってもよい。換言すれば、線条部20Bは、基台部10の表面10aが窪んで形成されていてもよい。この具体例を
図10に示す。
【0046】
線条部が凹部20Bである場合、該線条部20Bの深さH(
図10参照)は、特に限定されないが、立体的な模様を形成する観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.12mm以上である。
また、線条部20Bの深さHは、隣り合う線条部20Bの間の対象物70の崩れを抑制する観点から、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.6mm以下である。
線条部20Bの深さHは、線条部20の深さ方向における、基台部10の表面10aから線条部20Bの底面までの距離を意味する(
図10参照)。
線条部20Bの深さHが前述した範囲内であるとは、線条部20Bにおける、最も深さが深い部分の深さ及び最も深さが浅い部分の深さの両方が、前述した範囲内であることを意味する。
【0047】
線条部20Bにおける、最も深さが深い部分の深さH1に対する最も深さが浅い部分の深さH2の比率H2/H1は、特に限定されないが、主観的輪郭を利用した模様を視認しやすくする観点から、好ましくは2.5%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは8.3%以上である。
また、前記比率H2/H1は、高精細な模様を形成する観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
【0048】
次に、本発明の固形パーソナルケア製品の製造方法の好ましい第1実施態様を、
図1~5に示した化粧料1を製造する方法を例に説明する。
第1実施態様の製造方法に好適に用いられる製造装置100は、典型的には、抽出部(図示せず)と、固形パーソナルケア製品の基台部10の表面10aに線条部20を形成する線条部形成部50とを有する。製造装置100は、更に搬送部80を有していてもよい。この具体例を
図11に示す。
【0049】
抽出部は、典型的には、所望の画像から、線条部20の形成予定位置(以下、「パス」ともいう。)24上の複数の点25,26,27について、それぞれに対応する画素45,46,47の所定値を抽出するようになされている。具体的には、抽出部は、電子計算機にインストールされた画像処理ソフトウェアや行列計算ソフトウェア、表計算ソフトウェア、又は画像処理プログラムを用いて、所望の画像から線条部20のパス22上の複数の点25,26,27について、それぞれに対応する画素45,46,47の所定値を抽出することができる。
パス24の平面視形状は、製造される固形パーソナルケア製品における線条部20の平面視形状に対応している。
図12に示す具体例では、パス24の平面視形状は渦巻き状である。
【0050】
線条部形成部50は、典型的には、流動性を有する組成物Mを、組成物が供給される対象物(以下、単に対象物ともいう。)70上に供給する供給部60と、供給部60と連通するように一体的に配置されたノズル61とを備える。線条部形成部50では、典型的には、平板状の対象物配置部90がノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に配されるようになっており、対象物配置部90の上面に対象物70が載置又は固定できるようになっている。
第1実施態様では、対象物70は、基台部10の表面10aに線条部20が形成される前の化粧料1である。また本実施態様では、ノズル61から吐出された組成物Mが、対象物70である基台部10の表面10aに堆積して、線条部20が形成される。
【0051】
線条部形成部50は、供給部60と対象物配置部90とを所定の位置に支持又は保持する位置調整部52を備えることが好ましい。この具体例を
図11及び
図13に示す。
位置調整部52は、ノズル61の位置及び対象物配置部90の位置を、任意の方向に相対的に移動させる位置調整機構を備えていることが好ましい。これによって、ノズル61及び対象物配置部90の少なくとも一方を、平面方向、鉛直方向又はその組み合わせの方向に移動させて、ノズル61及び対象物配置部90上の対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させることができるように構成されている。位置調整機構は手動であってもよく、あるいはコントローラなどから発信された電気信号に対応して自動的に制御されていてもよい。
【0052】
供給部60は、流動性を有する組成物Mを対象物70側に送液する部材である。供給部60は、送液部65と、組成物収容部66とを備えることが好ましい。
送液部65は、流路68を介して組成物収容部66が連通して接続されていることが好ましい。これにより、組成物収容部66から送液部65の内部に供給された組成物Mをノズル61側に連続的に又は非連続的に供給したり、あるいは供給を停止したりできる。
このような送液部65としては、組成物Mを液滴状に吐出可能なジェットディスペンサー、あるいは組成物Mを連続的に吐出可能なモーノディスペンサーやスクリューディスペンサーを用いることができる。
組成物収容部66は、その一方がエア等の加圧手段やポンプと接続されており、組成物収容部66に収容されている組成物Mを、流路68を介して、送液部65側に圧送できるように構成されていることが好ましい。
【0053】
ノズル61は、典型的には、組成物Mを供給部60から対象物70に向けて供給する管状の部材である。ノズル61は、その内部に形成された空間である組成物Mの流路が組成物Mの流動方向Pに沿って形成されている。ノズル61は、その一方の端部であるノズル先端が組成物Mの供給口を構成し、他方の端部は上述した供給部60と連通して接続されている。
ノズルの構成材料は特に限定されず、例えば金属やプラスチックなどを採用できる。
【0054】
搬送部80は、典型的には、対象物配置部90を、ノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に搬送するようになされている。具体的には、搬送部80は、対象物配置部90と、ステージ81と、制御装置(図示せず)とを有している。
製造装置100は、対象物供給・回収部50は、マニピュレータロボット51を有していることが好ましい。マニピュレータロボット51は、例えばロボットアームからなり、対象物70を把持し得るようになっている。またマニピュレータロボット51は、対象物70の把持状態を対象物配置部90上で解除し、対象物70を対象物配置部90上に載置できるようになされている。また、マニピュレータロボット51は、無把持状態から対象物配置部90上の対象物70を把持し、回収できるようになされている。この具体例を
図11に示す。
【0055】
製造装置100では、搬送部80は、所謂、「リニア搬送システム」を構成していることが好ましい。具体的には、搬送部80は、ステージ81と、対象物配置部90と、制御装置(図示せず)とを有することが好ましい。対象物配置部90は、典型的には、永久磁石からなる。ステージ81は、典型的には、電磁コイルを内蔵したセグメントからなる。ステージ81の電磁コイルに通電し磁界を発生させることにより、対象物配置部90がステージ81上を浮遊して自在に動き回ることができるようになっている。この具体例を
図11に示す。
【0056】
ステージ81は、単一のセグメントにより構成されていてもよいし、複数のセグメントにより構成されていてもよい。ステージ81が複数のセグメントからなる場合、各セグメントは、典型的には、物理的に独立したユニットであり、それぞれが電磁コイルを内蔵している。複数のセグメントは、一方向に連続して並べられていてもよいが、互いに接続されるように2次元的に配置されて、ステージ81を構成することが好ましい。
図11に示す製造装置100では、ステージ81は8個のセグメントにより構成されている。
【0057】
搬送部80は、個々のステージ81が独立して自在に対象物配置部90を搬送可能であるので、各ステージ81が搬送する対象物配置部90は、それぞれ異なる搬送経路をたどり、それぞれ別のノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に搬送されることも可能である。つまり、複数の対象物70である固形パーソナルケア製品それぞれに、別々の線条部形成工程を行うことも可能である。別々の線条部形成工程において形成される線条部20は、それぞれ、別々の模様を生じさせるものであってもよいし、同じ模様を生じさせるものであってもよい。
【0058】
本発明の製造方法は、所望の画像に基づく模様を有する固形パーソナルケア製品の製造方法である。
本発明の製造方法は、所望の画像から、パス24上の複数の点25,26,27について、それぞれに対応する画素45,46,47の所定値を抽出する抽出工程と、基台部10の表面10aに線条部20を形成する線条部形成工程とを有していることが好ましい。
また本発明の製造方法は、抽出工程よりも前に、色調変換工程と、関心領域設定工程とを有していることが好ましい。色調変換工程は、抽出工程よりも後にあってもよい。
また本発明の製造方法は、線条部形成工程よりも前に、対象物70が載置された対象物配置部90を、ノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に搬送する搬送工程を有することが好ましい。
【0059】
色調変換工程では、所望の画像を特定の色調に変換する。色調の変換方法としては、例えば、2値化、グレースケール化、単色化等が挙げられる。色調変換工程の前に、所望の画像に対してガンマ補正やコントラスト調整などの加工処理を施してもよい。また、色調変換工程後にノイズ除去などの加工処理を施してもよい。
関心領域設定工程は、色調変換工程よりも前に行ってもよいし、色調変換工程よりも後に行ってもよい。関心領域設定工程では、所望の画像から、模様として形成する部分を設定する。例えば、所望の画像から不要な部分を取り除き、該画像における模様として形成する部分のみを残してもよい。また、所望の画像から、模様として形成する部分を複数選択し、それらを再配置して、模様として形成する部分としてもよい。また、所望の画像に対して、画像サイズを変更する拡大処理や縮小処理を行なってもよい。拡大処理や縮小処理は、画像の縦横比を固定したまま行なってもよく、縦横比を変化させて行なってもよい。
【0060】
抽出工程では、抽出部により、所望の画像40から、パス24上の複数の点25,26,27について、それぞれに対応する画素45,46,47の所定値を抽出する(
図12参照)。
図12(b)において符号45,46,47で示す各画素は、それぞれ、
図12(a)において符号25,26,27で示す各点に対応する画素である。画素の所定値は、例えば、輝度、色相、明度、彩度等とすることができる。
【0061】
例えば、色調変換工程において、所望の画像を2値化した場合、抽出工程において抽出する画素の所定値は、0と255の2階調で表される輝度である。また、色調変換工程において、所望の画像をグレースケール化した場合、抽出工程において抽出する画素の所定値は、0から255までの256階調で表される輝度である。なお色相を取得する場合、色調変換工程においてカラーコードに応じたグレースケールや2階調に変換してから抽出工程を行う。
【0062】
抽出工程について詳述すると、抽出工程では、所望の画像の画素数に合わせたパスを有するパス画像を作成する。このときパス画像は例えば2値画像とし、パスに該当する座標の輝度0、パスに該当しない座標の輝度は1とする。パス画像の任意の画素P(i、j)の輝度が0である座標(i、j)において、それに対応する所望の画像における画素I(i、j)の所定値、例えば輝度、色相、明度、彩度を取得する。画素Pは、パス画像から選択された任意の画素である。画素Iは、所望の画像中の画素であり、所望の画像における、パス画像の画素Pに対応する画素である。なお、パス画像のサイズと所望の画像のサイズとが異なる場合、パス画像のサイズ又は所望の画像のサイズを調整する画像サイズ調整工程を行ってもよい。画像サイズ調整工程は、抽出工程の前に行ってもよいし、抽出工程の後に行ってもよい。例えば、パス画像が所望の画像よりも小さい場合には、画像サイズ調整工程にて、所望の画像をパス画像のサイズに縮小してサイズを調整してもよい。また、パス画像が所望の画像よりも大きい場合には、画像サイズ調整工程にて、所望の画像をパス画像のサイズに拡大してサイズを調整してもよい。画像サイズ調整工程では、典型的にはパス画像のサイズに合わせて所望の画像サイズを調整するが、所望の画像のサイズに合わせてパス画像を拡大縮小させてもよい。
【0063】
図12においては、説明の便宜上、パス24上の複数の点25,26,27と、複数の点25,26,27それぞれに対応する画素45,46,47を3つずつ示したが、前記点及び前記画素の数は特に制限されない。
またパス24上の1つの点について、該点に対応する画素は1つのみであってもよいし、複数であってもよい。例えば、線条部20の形成予定位置22上の1つの点が、所望の画像において複数の画素を含む領域であってもよい。この場合、該複数の画素の所定値の平均値を線条部20の形成予定位置22の1つの点の所定値とすることができる。該平均値は小数点第一位を四捨五入した値とすることができる。
【0064】
抽出工程では、所望の画像の画素数に合わせたパスを有するパス画像を作成し、所望の画像における画素I(i、j)の所定値を取得することに代えて、パスを有する図面をプログラム化(例えばG-code化)し、プログラム中の座標(i、j)と対応する、所望の画像における画素I(i、j)の所定値を求めてもよい。
【0065】
搬送工程では、対象物70が載置された対象物配置部90を、ノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に搬送する。具体的には、まず、ステージ81の電磁コイルに通電し磁界を発生させ、対象物配置部90を浮遊させることが好ましい。そして、マニピュレータロボット51により、対象物70を対象物配置部90上に載置することが好ましい。そして、搬送部80の制御装置(図示せず)により、対象物配置部90の位置を制御することが好ましい。具体的には、対象物配置部90を、ノズル61の下方且つノズル61と対向する位置に搬送することが好ましい。
【0066】
線条部形成工程では、基台部10の表面10aに線条部20を形成する。具体的には、搬送工程で搬送された対象物配置部90上に載置された対象物70に向かって線条部20を構成する組成物Mを吐出して堆積させることによって、線条部20を形成することが好ましい。このとき、組成物Mをノズル61から対象物70に向かって供給しながら(
図13(a)参照)、ノズル61及び対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて(
図13(b)参照)、対象物70上に組成物由来である堆積体、即ち線条部20を造形することが好ましい。線条部形成工程では、ノズル61から流動性を有する組成物Mを吐出することが好ましい。
ノズル61及び対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させるときは、対象物70に対するノズル61の相対位置がパス24に沿って移動するようにすることが好ましい。第1実施態様では、平面視して渦巻き状に線条部20が配されるように、ノズル61及び対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させることが好ましい。
【0067】
ノズル61の相対的な移動方向は、目的とする線条部20の平面視形状や立体形状、あるいは描出される模様に応じて、平面方向、鉛直方向、あるいはこれらの組み合わせの方向に移動させることができる。
本明細書における模様とは、例えば、ひらがな及びカタカナ等の日本語文字、アルファベット、アラビア数字、ローマ数字、諸外国の文字等の各種文字、直線及び曲線並びにこれらの組み合わせからなる図形や幾何学形状、記号、色、柄又はこれらの組み合わせの形状を意味する。
典型的には、模様は線条部20によって形成され、幅狭部20bで渦巻き状等の図形や幾何学形状の模様を形成し、幅広部20aによる模様や主観的輪郭を利用した模様により各種文字、直線及び曲線並びにこれらの組み合わせからなる図形や幾何学形状、記号、色、柄又はこれらの組み合わせの形状を形成する。
これらの模様は、模様が配される対象物70が本来有する地色と同一又は異なる色で着色されて表出されることが好ましい。
【0068】
線条部形成工程では、抽出工程において抽出した画素の所定値に応じて、該所定値に対応する占有面積S1を付与することによって、前記占有面積の比率S1/S0を変化させることが好ましい。例えば、抽出工程において抽出した画素の所定値に応じて、組成物Mをノズル61から対象物70に向かって供給するときの、基台部10に対するノズル61の相対移動速度V、基台部10とノズル61との間の距離F、及びノズル61から基台部10の表面10aに向かって供給される組成物Mの供給速度Qの何れか1つ以上を変化させることにより、前記所定値に対応する占有面積S1を付与することができる。前記相対移動速度V、前記距離F及び前記供給速度Qの何れか1つ以上を変化させて、対象物70上に形成される線条部20の幅Wを変化させることで、占有面積S1を所定値に対応するものとすることができる。なお、対象物70上に形成される線条部20の幅Wを変化させることに代えて、該線条部20の高さTを変化させてもよいし、該線条部20幅W及び高さTの両方を変化させてもよい。
【0069】
以下、前記相対移動速度Vを変化させる場合を例に説明する。例えば、色調変換工程において所望の画像を2値化した場合、前記所定値は0及び255の2階調で表されるところ、該所定値に応じて、前記相対移動速度Vを低速及び高速の2段階で制御することができる。前記所定値が0のときに前記相対移動速度Vを低速とし、前記所定値が1のときに前記相対移動速度Vを高速としてもよいし、その逆でもよい。前記相対移動速度Vが低速である場合、線条部20における幅広部20aに対応する部分が形成され、前記相対移動速度Vが高速である場合、線条部20における幅狭部20bに対応する部分が形成される。
【0070】
色調変換工程において所望の画像をグレースケール化した場合、前記所定値は0から255の256階調で表されるところ、例えば該所定値を0~100、101~200及び201~255の3段階に分け、該所定値が0~100の場合、相対移動速度Vを低速とし、該所定値が101~200の場合、相対移動速度Vを中速とし、該所定値が201~255の場合、相対移動速度Vを高速としてもよい。なお、前記所定値をいくつの段階に分けるかは特に制限されない。前記所定値を2段階に分けてもよいし、256段階に分けてもよい。また前記所定値を複数の段階に分ける際の閾値も特に制限されない。
また画像の階調変換の方式に従い256階調の画像を2階調、4階調、8階調、16階調・・・といった具合に階調を制限して速度を定めてもよい。例えば画像を2階調で変換した場合、所定値が0~127の場合には相対移動速度Vを低速とし、所定値が128~255の場合には相対移動速度Vを高速としてもよい。同様の考えで画像を4階調で変換した場合、0~63,64~127,128~191,192~255のように所定値を分けて、低い方から遅い方へ速度を4段階に変化させてもよい。8階調、16階調・・・の場合も同様にすることができる。
前記距離F又は前記供給速度Qを変化させる場合も、前記相対移動速度Vを変化させる場合と同様にすることができる。
相対移動速度V、前記距離F又は前記供給速度Qは、連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0071】
最後に、ノズル61からの組成物Mの供給を停止する(
図13(c)参照)。以上の工程により、対象物70上に所定の形状を有する線条部20を形成する。
これにより、例えば、化粧料スラリーを用いて形成された線条部20は、組成物由来である化粧料を含む線条部からなる立体物とすることができる。
必要に応じて、ノズル61は、対象物70に対して同一平面上に相対的に移動させたり、あるいは、相対的に離間させたりしてもよい。
【0072】
このようにして、基台部10の表面10a上に線条部20が形成されることによって、本発明の固形パーソナルケア製品が製造される。なお、このようにして製造された固形パーソナルケア製品は、これをそのまま目的とするパーソナルケア製品としてもよく、あるいは別の工程を更に行って、目的とするパーソナルケア製品としてもよい。何れの場合であっても、本発明の製造方法によれば、型枠などが必要なく、組成物の処方自体で所望のデザインを高精度且つ高精細で描出できるので、形状や寸法の精度が良好な造形及び加飾を簡便に且つ効率的に行うことができる。
【0073】
線条部形成工程において、抽出工程において抽出した画素の所定値に応じて、該所定値に対応する占有面積S1を付与することによって、前記占有面積の比率S1/S0を変化させているので、主観的輪郭を利用した模様を生じさせる線条部20を効率的に製造することができ、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する化粧料1を効率的に製造することができる。
【0074】
前記相対移動速度Vは、特に限定されないが、生産能力の向上の観点から、好ましくは1mm/min以上、より好ましくは2mm/min以上、更に好ましくは3mm/min以上である。
また前記相対移動速度Vは、供給が可能な限り特に限定されないが、現実的な観点から、好ましくは5000mm/min以下、より好ましくは500mm/min以下、更に好ましくは200mm/min以下である。
相対移動速度Vは、線幅を変化させる場合には、好ましくは10mm/min以上、より好ましくは50mm/min以上、さらに好ましくは300mm/min以上であり、また好ましくは60000mm/min以下、より好ましくは10000mm/min以下、さらに好ましくは3000mm/min以下である。
相対移動速度Vは、例えば上述した位置調整部52の駆動速度を変更することによって適宜変更可能である。また、対象物70を載置した対象物配置部90の搬送速度を変更することによっても適宜変更可能である。
また本明細書における相対移動速度Vは、絶対値として表すものとする。
【0075】
前記距離Fは、特に限定されないが、ノズル61と対象物70との接触を抑制する観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.15mm以上である。
また前記距離Fは、ノズル61と対象物70との相対的な移動に対する、吐出された組成物Mの追従性を向上する観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2mm以下である。
【0076】
前記供給速度Qは、特に限定されないが、生産能力の向上の観点から、好ましくは0.05mm3/s以上、より好ましくは0.1mm3/s以上、更に好ましくは0.4mm3/s以上である。
また前記供給速度Qは、動作が可能な限り特に限定されないが、ノズル61の相対移動速度とのバランスにより高精細な線条部の安定的な形成を行う観点から、好ましくは150mm3/s以下、より好ましくは50mm3/s以下、更に好ましくは15mm3/s以下である。
【0077】
供給速度Qは、供給部60における送液部65として例えば上述したディスペンサーを用いた場合にはローターの回転数を適宜調整したり、あるいは、ノズル61の形状や内径、組成物Mの粘度などを調整したりすることで適宜変更可能である。
【0078】
線条部形成工程では、線条部20を構成する組成物Mをノズル61から基台部10の表面10aに対して吐出して堆積させることによって線条部20を形成することが好ましい。こうすることにより、線条部20を容易に形成することができる。
【0079】
以下、本発明の製造方法の第2実施態様について説明する。
第2実施態様の製造方法については、第1実施態様の製造方法と異なる点について主に説明する。特に説明しない点については、先に述べた第1実施態様についての説明が適宜適用される。
【0080】
本発明の製造方法では、線条部形成工程において、組成物Mをノズル61から基台部10の表面10aに対して吐出して堆積させることに代えて、基台部10の表面10aの一部を削り取ることによって線条部20Bを形成してもよい。この製造方法では、形成される線条部20Bは凹部である。
第2実施態様の製造方法に好適に用いられる製造装置100の線条部形成部50Bは、切削工具33と、該切削工具33とを所定の位置に支持又は保持する位置調整部34とを備えることが好ましい。この線条部形成部50Bの例を
図14に示す。
【0081】
位置調整部34は、切削工具33の位置を、任意の方向に相対的に移動させる位置調整機構を備えていることが好ましい。これによって、切削工具33及び対象物配置部90の少なくとも一方を、平面方向、鉛直方向又はその組み合わせの方向に移動させて、切削工具33及び対象物配置部90上の対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させることができるように構成されている。位置調整機構は手動であってもよく、あるいはコントローラなどから発信された電気信号に対応して自動的に制御されていてもよい。
【0082】
切削工具33は、典型的には、少なくとも切削工具33の先端の一部が鉛直方向Z上方に向かって漸次拡径する拡径部33aを有する。拡径部33aは、連続的に拡径していてもよいし(
図14参照)、段階的に拡径していてもよい。切削工具33としては、例えば、エンドミル、ドリル、フライス等が挙げられる。
線条部形成部50Bは、削り取られた基台部10の表面10aの一部を除去する除去部(図示せず)を有していてもよい。除去部としては、例えば、送風することによって前記削り取られた一部を飛ばす送風装置、前記削り取られた一部を吸引する吸引装置等が挙げられる。
【0083】
第2実施態様の線条部形成工程では、切削工具33の一部を基台部10に挿入した状態で、該基台部10に対する該切削工具33の平面方向における相対位置を変化させて線条部20Bを形成する。前記相対位置を変化させるときは、前記相対位置がパス24に沿って移動するように、切削工具33及び対象物70の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる。
【0084】
第2実施態様では、抽出工程において抽出した画素の所定値に応じて該拡径部の挿入深さKを変化させながら線条部20Bを形成する。
例えば、色調変換工程において所望の画像を2値化した場合、前記所定値は0及び255の2階調で表されるところ、該所定値に応じて、前記深さKを2段階で制御することができる。前記所定値が0のときに前記深さKを浅くし、前記所定値が1のときに前記深さKを深くしてもよいし、その逆でもよい。前記深さKが浅い場合、線条部20Bの幅Wが相対的に狭くなり、前記深さKが深い場合、線条部20Bの幅Wが相対的に広くなる。前記深さKが浅い場合、線条部20Bにおける幅狭部20bに対応する部分が形成される。前記深さKが深い場合、線条部20Bにおける幅広部20aに対応する部分が形成される。
【0085】
色調変換工程において所望の画像をグレースケール化した場合、前記所定値は0から255の256階調で表されるところ、例えば該所定値を0~100、101~200及び201~255の3段階に分け、前記深さKを該所定値に応じて3段階に制御してもよい。例えば、該所定値が0~100の場合、前記深さKを最も浅くし、該所定値が201~255の場合、前記深さKを最も深くし、該所定値が101~200の場合、該所定値が0~100のときの前記深さKと、該所定値が201~255のときの前記深さKとの間の深さとしてもよい。なお、前記所定値をいくつの段階に分けるかは特に制限されない。前記所定値を2段階に分けてもよいし、256段階に分けてもよい。また前記所定値を複数の段階に分ける際の閾値も特に制限されない。
また画像の階調変換の方式に従い256階調の画像を2階調、4階調、8階調、16階調・・・といった具合に階調を制限して速度を定めてもよい。例えば画像を2階調で変換した場合、所定値が0~127の場合に相対移動速度Vを低速とし、所定値が128~255の場合に相対移動速度Vを高速としてもよい。同様の考えで画像を4階調で変換した場合、0~63,64~127,128~191、192~255のように所定値を分けて、低い方から遅い方へ速度を4段階に変化させてもよい。8階調、16階調・・・の場合も同様にすることができる。
前記深さKは、連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0086】
第2実施態様の製造方法によれば、第1実施態様の製造方法と同様に、主観的輪郭を利用した模様を生じさせる線条部20を効率的に製造することができ、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する化粧料1を効率的に製造することができる。また第2実施態様の製造方法によれば、凹部である線条部20Bを容易に形成することができる。
【0087】
垂直方向における前記深さKは、特に限定されないが、立体的な模様を形成する観点から、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.15mm以上である。
また、垂直方向における前記深さKは、隣り合う線条部20Bの間の対象物70の崩れを抑制する観点から、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0088】
本発明の固形パーソナルケア製品は、これを皮膚上に塗布したり、あるいは水等の溶媒に溶解又は分散させた液体を皮膚上に塗布、散布又は滴下等したりすることで、人体に適用可能なものを含む。塗布は、パフや刷毛等の塗布具を用いてもよく、塗布具を用いずに直接塗布してもよい。
このような固形パーソナルケア製品としては、例えば、化粧品、洗浄剤及び入浴剤から選ばれる1又は2以上を含む。化粧品は、メークアップ化粧品、基礎化粧品及びヘアケア製品等を含む。洗浄剤は固形シャンプー、練り石鹸及び固形石鹸等を含む。メークアップ化粧品は、化粧料粉末等を含むアイシャドウ及びファンデーション、油剤等を含む口紅等の固形化粧品を含む。
固形パーソナルケア製品は、立体的な成形を可能とする観点から、1気圧、20℃において固体であることが好ましい。
【0089】
本発明の固形パーソナルケア製品は、触覚、嗅覚、味覚等を刺激して、健康の維持、増進を図るものも含まれ、例えば、かっさ、ツボ押し器具等のマッサージ器具、ステンレスソープ、活性炭等の固形消臭剤、アロマキャンドル、アロマブロック等の固形芳香剤であってもよい。
【0090】
以下、線条部20を構成する組成物Mについて説明する。
特に断りのない限り、以下に説明する物質の状態(三態)は、1気圧、20℃を基準とする。
組成物Mは単一の成分からなるものであってもよいし、複数の成分からなるものであってもよい。
組成物Mは、該組成物Mに含まれる材料の均一分散性を向上し品質を安定化させることや、ノズルから吐出した堆積体、即ち線条部20の崩れを抑制し形状を安定化させるといった観点から、その粘度が、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1Pa・s以上である。
上記粘度は、吐出性を向上させ、成形性を向上する観点から、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以下である。
【0091】
上述した組成物Mの粘度は、組成物Mの温度をノズルからの供給時の組成物Mと同じ温度、すなわち吐出時の温度にした上で測定する。例えば組成物Mがスラリーである等といった加熱溶融液以外のものであり、室温(25℃)でノズルから供給する場合には、25℃において、B型粘度計(東機産業株式会社製、デジタル粘度計TVB-10R)を用いて測定された値とする。この場合の測定条件は、ローターをサンプルの粘度範囲に合わせてローターNo.M1、M2、M3、M4、H1、H2、H3、H4、H5、H6及びH7の何れかとし、回転数を0.5~100rpmとし、測定時間はオートストップ機能を利用する。組成物Mが加熱溶融液である場合、組成物Mの温度をノズル61からの供給時の組成物と同じ温度にした上で、前述の測定条件にて粘度を測定する。
【0092】
組成物Mは、粉体等の固体及び油剤から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
このような固体としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料及び有機粉体などの通常の化粧料成分に用いられる粉体から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などから選ばれる一種又は二種以上を含むことができる。
体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、合成金雲母、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、シリカ、アルミナ等の無機顔料及びこれらの複合粉体などから選ばれる一種又は二種以上を含むことができる。
光輝性顔料としては、雲母、合成金雲母、ガラス、シリカ、アルミナ等の板状粉体等の表面を、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、酸化スズ、水酸化クロム、金、銀、カルミン、有機顔料等の着色剤で被覆したものなど、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミ蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末などの、フィルム原反を任意形状に断裁したものなどから選ばれる一種又は二種以上を含むことができる。
有機粉体としては、シリコーンゴム粉体、シリコーン樹脂被覆シリコーンゴム粉体、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリアミドパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、ウールパウダー、セルロースパウダー、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸、これらの複合体等から選ばれる一種又は二種以上を含むことができる。
これらの着色顔料、体質顔料及び光輝性顔料は、着色しているか又は非着色(例えば、白色又は本質的に透明)であり、基材又は皮膚に対して、着色、光の回折、油分吸収、半透明性、不透明性、光沢、光沢のない外観、滑らか感などのうちの一つ以上の効果を提供し得る。
【0093】
溶媒を含む組成物M中における粉体の含有量は、その目的に応じて異なるが、乾燥を防ぐなどの生産性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
溶媒を含む組成物M中における粉体の含有量は、供給時の流動性を保つなどの生産性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
このような範囲であることで、高精細な立体形状を有する固形パーソナルケア製品を製造しやすくすることができ、また製品を使用したときの良好な使用感を高めることができる。
組成物M中における粉体の平均粒径はノズル詰まりを抑制し連続的に安定した吐出を可能とするといった観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0094】
平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される累積体積50容量%における体積累積粒径D50とする。なお、最終的な製品から粉体の平均粒径を測る場合には、まず製品を水や油に溶解させ、バインダー成分を溶かして溶媒に粒子を分散させる。その後、粒度分布計を用いて固形物としての粒度分布を測定し、得られた結果の体積累積粒径D50を平均粒径とする。
組成物M中における粉体の平均粒径は、ノズルからの安定供給性といった観点から、ノズルの断面の長さD1より小さいことが好ましい。ノズルの断面が真円でない場合は、ノズルの断面の最小長さをD1とする。組成物中における粉体の平均粒径は、上述の方法で製造された堆積体、即ち線条部20の平面視における線幅W1を細くし、立体的且つ高精細なデザインを安定的に形成するといった観点から、ノズル61の断面の長さD1との比(平均粒径/ノズル断面長さ)が、好ましくは1未満、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.35以下、より一層好ましくは0.3以下である。
平均粒径/ノズル断面長さは小さければ小さいほど好ましいが、現実的には0.001以上である。
【0095】
組成物M中に含まれ得る油剤は、1気圧、20℃で液体の油(以下、これを液体油ともいう。)、及び1気圧、20℃で固体の油(以下、これを固体油ともいう。)から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
液体油としては、例えば、直鎖又は分岐の炭化水素油、植物油、動物油、エステル油、シリコーン油、高分子アルコールが挙げられる。
直鎖又は分岐の炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。植物油としては、ホホバ油、オリーブ油等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
動物油としては、液状ラノリン等が挙げられる。エステル油としては、モノアルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
高分子アルコールとしては、ポリエチレングリコール等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
固体油としては、例えば、ワセリン、セタノール、ステアリルアルコール、セラミド等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
【0096】
組成物Mは、液媒を更に含むことも好ましい。液媒は、化粧料を溶解又は分散させる溶媒又は分散媒として使用することができる液体である。組成物Mをスラリーの形態とする場合、組成物Mは、粉体及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。組成物Mを化粧料スラリーの形態とする場合には、組成物Mは、上述した顔料を含む粉体、油剤及び液媒を少なくとも含む混合物であることが好ましい。
【0097】
上述した液体(液媒)としては、例えば、液体の状態において揮発性を有する物質(揮発性溶媒)を含むことが好ましい。
具体的には液体(液媒)としては、水、アルコール、ケトン及び炭化水素等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
アルコールとしては、例えば一価の炭素数1~6の鎖式脂肪族アルコールや、一価の炭素数3~6の環式脂肪族アルコールや、一価の芳香族アルコールから選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、プロパノール、ペンタノールなどから選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
ケトンとしては例えば炭素数3~6の鎖式脂肪族ケトンや、炭素数3~6の環式脂肪族ケトンや、炭素数8~10の芳香族ケトンから選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
それらの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどから選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
炭化水素としては、例えばイソパラフィン系炭化水素から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
その具体例としては、IPソルベントを含むことが好ましい。
【0098】
組成物Mに液媒を含む場合、組成物M中における液媒の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
組成物M中における液媒の含有量は、総量として、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
このような範囲であることで、組成物Mの構成材料の均一分散性を高めつつ、取り扱い性を高めることができる。
【0099】
基台部10及び線条部20は、粉体等の固体及び油剤から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。粉体等の固体及び油剤としては、組成物Mに含まれるものと同様のものを用いることができる。
【0100】
基台部10及び線条部20中における粉体の平均粒径は、着色力や明度、彩度等の光学的性質の調整といった観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。
基台部10及び線条部20中における油剤の含有量は、その目的に応じて異なるが、総量として、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは1.5質量%以上である。
基台部10及び線条部20中における油剤の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
このような範囲であることで、固形パーソナルケア製品としての良好な発色性や感触を高めることができる。
【0101】
基台部10及び線条部20は、目的とする固形パーソナルケア製品の種類に応じて、増粘剤、皮膜剤、界面活性剤、糖、多価アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、皮膚コンディショニング剤、ビタミン、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等から選ばれる一種又は二種以上の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
ベンゾフェノン誘導体としては、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸塩、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸塩から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。
メトキシケイ皮酸誘導体としては、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましい。紫外線散乱剤としては、例えば平均粒径が0.1μm以下の微粒子を含むことが好ましい。
紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン及びシリカ等から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0102】
基台部10及び線条部20は、パウダー化粧品等の粉体を主成分とする固形パーソナルケア製品を製造する観点から、その固形分として、粉体を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上含むことが好ましい。
基台部10及び線条部20は、成形性といった観点から、その固形分として、粉体を好ましくは99質量%以下含むことが好ましい。
線条部20このような構成とするためには、例えば組成物Mに粉体を上述の固形分の範囲で含有させたり、あるいは、液媒及び粉体を含む組成物Mを用いて対象物上に供給した後、固化工程を行って液媒を除去したりすることで達成することができる。
【0103】
以上、本発明をその実施形態及び実施態様に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態及び前記実施態様に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、
図1に示す化粧料1では、線条部20の平面視形状は、円形状の渦巻き状であったが、これに代えて、四角形状の渦巻き状(
図15(a)参照)、三角形状の渦巻き状(
図15(b)参照)等であってもよい。なお、
図15(a)及び(b)では、説明の便宜上、線条部20の粗密構造の図示を省略している。
また
図1に示す化粧料1では、基台部10の表面10aは、平面であったが、これに代えて、曲面であってもよい。
【0104】
また例えば
図14に示す線条部形成部50Bでは、凹部である線条部20Bを切削工具33により形成したが、これに代えて、凹部である線条部20Bを有する固形パーソナルケア製品を、積層造形機、いわゆる3Dプリンターを用いて形成してもよい。また凸部である線条部20を、積層造型機を用いて形成してもよい。積層造型機を用いて、線条部20を基台部10の表面10aに直接形成してもよいし、積層造型機を用いて形成された線条部20を、基台部10の表面10aに配置してもよい。また、凸部である線条部20を有する固形パーソナルケア製品を、積層造型機を用いて形成してもよい。
また対象物70にプレス成型を施すことによって線条部20を形成してもよい。その場合、プレス成型の型に、線条部20に相当する柄を施した押し型を用いて形成する。
【0105】
本発明の固形パーソナルケア製品の製造方法では、オンデマンドにより固形パーソナルケア製品を製造することもできる。具体的には、オンデマンドによる固形パーソナルケア製品の製造方法は、一般消費者やデザイナー、クリエーター等の画像提供者の所望の画像を、ネットワーク又は記憶媒体等の画像伝達手段を通じて受信する受信工程を有することが好ましい。ネットワークは、典型的にはインターネットである。
またオンデマンドにより固形パーソナルケア製品を製造方法は、前記受信工程において受信した画像に基づき、上述した第1又は第2実施態様の固形パーソナルケア製品の製造方法により、固形パーソナルケア製品を製造することが好ましい。
より具体的には、受信した画像に基づき、少なくとも抽出工程、線条部形成工程を経て、基台部10の表面10aに、主観的輪郭を利用した前記模様が生じるように、固形パーソナルケア製品を製造することが好ましい。主観的輪郭は、前記表面10aの平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積S0あたりの前記線条部20,20Bの占有面積の比率S1が、該表面10aと平行な少なくとも一方向に沿って変化させ、前記占有面積の比率S1/S0が変化していることによって生じるようにすることが好ましい。また、前記線条部形成工程では、前記線条部を構成する組成物Mをノズル61から前記基台部10に呈して吐出して堆積させることや、前記基台部10の表面10aの一部を削り取ることによって前記線条部を形成することもできる。
また受信工程では、画像提供者の所望の画像を、記憶媒体等の画像伝達媒体を通じて受信してもよい。画像伝達媒体は、写真、絵画等であってもよい。例えば、スキャナー等により写真を読み込むことにより、所望の画像を受信してもよい。
【0106】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の固形パーソナルケア製品及び固形パーソナルケア製品の製造方法を開示する。
【0107】
<1>
基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有し、
前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積あたりの前記線条部の占有面積の比率が、該表面と平行な少なくとも一方向に沿って変化しており、
前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した模様が生じるようになされている、固形パーソナルケア製品。
<2>
前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視において、前記線条部が密に存在する密部と前記線条部が粗に存在する粗部とを有する粗密構造が形成されており、該粗密構造が形成されていることによって前記占有面積の比率が変化している、前記<1>に記載の固形パーソナルケア製品。
<3>
前記線条部は、該線条部の一部又は該線条部とは別の前記線条部と交差しないように配されている、前記<1>又は前記<2>に記載の固形パーソナルケア製品。
<4>
前記線条部を1本のみ有する、前記<1>~前記<3>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<5>
前記線条部の幅及び高さの何れか一方又は両方が前記一方向に沿って変化していることにより、前記占有面積の比率が変化している、前記<1>~前記<4>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<6>
前記線条部が湾曲しているか、屈曲しているか、又は湾曲し且つ屈曲していることにより、前記占有面積の比率が変化している、前記<1>~前記<5>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
【0108】
<7>
前記基台部及び前記線条部を含む部分が、2層以上の層が積層された積層構造を有する、前記<1>~前記<6>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<8>
前記積層構造における各層を構成する組成物の組成及び色の何れか一方又は両方が異なる、前記<7>に記載の固形パーソナルケア製品。
<9>
前記線条部は、前記積層構造を有する部分における、前記基台部を構成する層から最も遠くに位置している層によって形成されている、前記<7>又は前記<8>に記載の固形パーソナルケア製品。
<10>
目視方向によって、前記模様の色相対比、明度対比及び彩度対比の少なくとも1つ以上が変化するようになされている、前記<1>~前記<9>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<11>
平面視における前記線条部の配置パターンがストライプ状である、前記<1>~前記<10>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
【0109】
<12>
平面視における前記線条部の幅が0.05mm以上3mm以下、好ましくは0.1mm以上2mm以下、より好ましくは0.15mm以上1.5mm以下である、前記<1>~前記<11>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<13>
平面視における前記線条部における、最も幅が広い部分の幅に対する最も幅が狭い部分の幅の比率が1.6%以上90%以下、好ましくは2.5%以上80%以下、より好ましくは3.3%以上70%以下である、前記<1>~前記<12>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<14>
前記線条部は、前記基台部の前記表面に形成された凸部であり、該線条部の高さが0.05mm以上2mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下、より好ましくは0.12mm以上0.6mm以下であるか、又は
前記線条部は、前記基台部の前記表面に形成された凹部であり、該線条部の深さが0.05mm以上2mm以下、好ましくは0.1mm以上1mm以下、より好ましくは0.12mm以上0.6mm以下である、前記<1>~前記<13>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<15>
前記線条部は、前記基台部の前記表面に形成された凸部であり、該線条部における最も高い部分の高さに対する最も低い部分の高さの比率が2.5%以上90%以下、好ましくは5%以上80%以下、より好ましくは8.3%以上70%以下であるか、又は
前記線条部は、前記基台部の前記表面に形成された凹部であり、該線条部における最も深い部分の深さに対する最も浅い部分の深さの比率が2.5%以上90%以下、好ましくは5%以上80%以下、より好ましくは8.3%以上70%以下である、前記<1>~前記<14>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
【0110】
<16>
平面視における隣り合う線条部どうしの間の距離が0.15mm以上15mm以下、好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である、前記<1>~前記<15>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<17>
平面視における隣り合う線条部どうしの間の距離のうち、最も長い距離D1に対する最も短い距離D2の比率D2/D1は、5%以上100%以下、好ましくは10%以上90%以下、より好ましくは20%以上80%以下である、前記<1>~前記<16>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<18>
平面視における前記線条部の幅に対する、隣り合う線条部どうしの間の距離の比率が5%以上5000%以下、好ましくは7.5%以上4000%以下、より好ましくは10%以上3000%以下である、前記<1>~前記<17>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
【0111】
<19>
平面視における前記線条部の曲率半径が0.1mm以上1000mm以下、好ましくは0.2mm以上800mm以下、より好ましくは0.3mm以上600mm以下である、前記<1>~前記<18>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
<20>
平面視における前記線条部における最も曲率半径が大きい部分の曲率半径に対する最も曲率半径が小さい部分の曲率半径の比率が0.01%以上90%以下、好ましくは0.02%以上80%以下、より好ましくは0.03%以上70%以下である、前記<1>~前記<19>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品。
【0112】
<21>
所望の画像に基づく模様を有する固形パーソナルケア製品の製造方法であって、
前記固形パーソナルケア製品は、
基台部と、該基台部の表面に形成された線条部とを有し、
前記表面の平面視又は斜め上方からの斜視における、単位面積あたりの前記線条部の占有面積の比率が、該表面と平行な少なくとも一方向に沿って変化しており、
前記占有面積の比率が変化していることによって、主観的輪郭を利用した前記模様が生じるようになされており、
前記製造方法は、
前記所望の画像から、前記線条部の形成予定位置上の複数の点について、それぞれに対応する画素の所定値を抽出する抽出工程と、
前記基台部の表面に前記線条部を形成する線条部形成工程とを有しており、
前記線条部形成工程では、前記抽出工程において抽出した画素の前記所定値に応じて、該所定値に対応する前記占有面積を付与することによって、前記占有面積の比率を変化させる、固形パーソナルケア製品の製造方法。
【0113】
<22>
前記線条部形成工程では、前記線条部を構成する組成物をノズルから前記基台部に対して吐出して堆積させることによって前記線条部を形成する、前記<21>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<23>
前記線条部形成工程では、前記基台部に対する前記ノズルの相対移動速度、前記基台部と前記ノズルとの間の距離、及び前記ノズルからの前記組成物の吐出量の何れか1つ又は2つ以上を変化させながら前記組成物を吐出する、前記<22>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<24>
前記線条形部成工程では、前記ノズルから流動性を有する前記組成物を吐出する、前記<22>又は前記<23>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<25>
前記線条形部成工程では、前記ノズル及び、前記基台部が載置された対象物配置部の少なくとも一方を、平面方向、鉛直方向又はその組み合わせの方向に移動させて、該ノズル及び該対象物配置部上の該基台部の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させる、前記<22>~前記<24>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【0114】
<26>
前記線条部形成工程では、前記基台部の表面の一部を削り取ることによって前記線条部を形成する、前記<21>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<27>
前記線条部形成工程では、
鉛直方向上方に向かって漸次拡径する拡径部を有する切削工具の一部を前記基台部に挿入した状態で、該基台部に対する該切削工具の平面方向における相対位置を変化させるとともに、前記抽出工程において抽出した画素の色の値に応じて該拡径部の挿入深さを変化させながら前記線条部を形成する、前記<26>に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
【0115】
<28>
前記線条部は、一筆書き可能であり、好ましくは渦巻き状である、前記<21>~前記<27>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<29>
さらに色調変換工程を有している前記<21>~前記<28>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<30>
さらに関心領域設定工程を有している前記<21>~前記<29>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<31>
前記抽出工程よりも前に、色調変換工程と関心領域設定工程とを有している、前記<21>~前記<30>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
<32>
画像提供者の所望の画像を、ネットワーク又は記憶媒体等の画像伝達媒体を通じて受信する受信工程、及び受信した画像に基づき、前記<21>~前記<31>の何れか一に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法により固形パーソナルケア製品を製造する、固形パーソナルケア製品の製造方法。
【実施例0116】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0117】
〔実施例1〕
第1実施態様の製造方法と同様にして、実施例1の固形パーソナルケア製品を製造した。所望の画像40として、
図12(b)に示す画像を用いた。また画像はグレースケール、即ち256階調で描かれたものを使用した。抽出工程において抽出した画素の所定値は、0から255の256階調で表される輝度とした。線条部形成工程において、相対移動速度VをV=(600/255)X+200で算出される値とし、基台部10とノズル61との間の距離FをF=(-0.2/255)X+0.4で算出される値とした。Xは前記所定値を示す。前記所定値が0のときは、相対移動速度Vを200mm/min、基台部10とノズル61との間の距離Fを0.4mmとし、前記所定値が255のときは、相対移動速度Vを800mm/min、基台部10とノズル61との間の距離Fを0.2mmとした。線条部形成工程において、ノズル61から基台部10の表面10aに向かって供給される組成物Mの供給速度Qは0.74mm
3/sとした。このようにして形成されたファンデーションを実施例1とした。実施例1の固形パーソナルケア製品を表1に示す。
組成物M及び基台部10の組成は、以下のとおりである。
【0118】
<組成物Mの組成>
(1)粉体成分
・パール粉体:52質量部
・顔料粉体:38.95質量部
(2)粉体以外の成分
・水:90質量部
・油剤:3質量部
・湿潤剤:2質量部
・増粘剤:0.55質量部
・防腐剤他:3.5質量部
【0119】
<基台部10の組成>
(1)粉体成分
・顔料粉体:89質量部
(2)粉体以外の成分
・油剤:11質量部
【0120】
【0121】
〔比較例1〕
基台部の表面にノズルにより組成物を吐出して堆積させ、基台部の表面に該堆積物からなる模様を形成し、基台部の表面に模様が形成された固形パーソナルケア製品を製造した。
ノズルにより組成物を吐出するときは、基台部に対するノズルの相対移動速度を40mm/sとし、基台部とノズルとの間の距離は0.3mmとし、ノズルから基台部の表面に向かって供給される組成物の供給速度は6mm3/sとした。このようにして形成されたファンデーションを比較例1とした。比較例1のファンデーションを表1に示す。
組成物の組成は、実施例1の組成物Mの組成と同じであり、基台部の組成は、実施例1の基台部10の組成と同じである。
【0122】
実施例1によれば、表1に示すとおり、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品が製造された。一方、比較例1のファンデーションは、表1に示すとおり、該ファンデーションが有する模様は濃淡を表現したものではない。
したがって、本発明によれば、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品を提供することができることが分かる。
【0123】
〔実施例2〕
第1実施態様の製造方法と同様にして、実施例2の固形パーソナルケア製品を製造した。所望の画像40として、
図12(c)に示す画像を用いた。また画像はグレースケール、即ち256階調で描かれたものを使用した。用いられる値は色調変換工程において0-255の輝度値を8階調に変換したものを使用した。抽出工程において抽出した画素の所定値は、0から255の256階調で表される輝度とした。この輝度に上記の8階調に変換された値が用いられる。線条部形成工程において、相対移動速度VをV=(1500/255)X+300で算出される値とし、基台部10とノズル61との間の距離FをF=(-0.2/255)X+0.4で算出される値とした。Xは前記所定値を示す。前記所定値が0のときは、相対移動速度Vを300mm/min、基台部10とノズル61との間の距離Fを0.4mmとし、前記所定値が255のときは、相対移動速度Vを1800mm/min、基台部10とノズル61との間の距離Fを0.2mmとした。線条部形成工程において、ノズル61から基台部10の表面10aに向かって供給される組成物Mの供給速度Qは1.86mm
3/sとした。このようにして形成されたアロマキャンドルを実施例2とした。実施例2の固形パーソナルケア製品を表2に示す。
組成物M及び基台部10の組成は、以下のとおりである。
【0124】
<組成物Mの組成>
Marabu candle liner (Brown)
https://www.kameyama-candle.jp/ec/shop/category_items_detail.htm?Item=X9890204に記載のものを使用した。
【0125】
<基台部10の組成>
基台部10には、モルトンブラウン製のMerry berries & Mimosa Candle (Single Wick, 190g)を用いた。
【0126】
【0127】
実施例2によれば、表2に示すとおり、立体的であり、且つ濃淡を表現可能な模様を有する固形パーソナルケア製品が製造された。
前記線条部の幅及び高さの何れか一方又は両方が前記一方向に沿って変化していることにより、前記占有面積の比率が変化している、請求項1に記載の固形パーソナルケア製品。
前記線条部形成工程では、前記線条部を構成する組成物をノズルから前記基台部に対して吐出して堆積させることによって前記線条部を形成する、請求項5に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法。
画像提供者の所望の画像を、ネットワーク又は記憶媒体等の画像伝達媒体を通じて受信する受信工程、及び受信した画像に基づき、請求項5~7の何れか一項に記載の固形パーソナルケア製品の製造方法により、固形パーソナルケア製品を製造する製造工程を含む、固形パーソナルケア製品の製造方法。