(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065016
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】インク画像品質を改善するためのインクジェットプリンタ内の印刷ヘッド温度のフィードフォワード制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20240507BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023176026
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】18/050,267
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】チュー-ヘン リュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エム.ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】シーミット プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ エイ.アルバレス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ケイ.ハーマン
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA28
2C056EB07
2C056EB27
2C056EB30
2C056EB40
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC13
2C056EC26
2C056EC29
2C056EC31
2C056EC36
2C056EC79
2C056FA13
2C056HA15
2C056HA29
2C056HA47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印刷中に印刷ヘッド温度を調節する。
【解決手段】インクジェットプリンタを動作させる方法は、印刷ジョブの実行中にインクジェットプリンタ内の印刷ヘッドに課される熱負荷を識別し、熱負荷が印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させる場合には、熱負荷を低減するための是正措置を識別する。熱負荷は、印刷ジョブのインク画像コンテンツデータ、印刷ジョブの印刷ジョブパラメータ、及びプリンタ内のセンサから受信された環境条件測定値から識別される。是正措置は、印刷ジョブキューの操作、印刷ジョブパラメータの変更、及びプリンタ内の印刷ヘッド又は媒体から熱を除去するための能動的冷却を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、
少なくとも1つの印刷ヘッドと、
前記少なくとも1つの印刷ヘッド及び印刷ジョブキューに動作可能に接続されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、
前記印刷ジョブキュー内の印刷ジョブのための印刷ジョブパラメータ、前記印刷ジョブのためのインク画像コンテンツデータ、及び前記プリンタ内のセンサから受信された環境条件測定値を使用して、前記印刷ジョブの実行中に生じる前記少なくとも1つの印刷ヘッドに対する熱負荷を識別し、
識別された前記熱負荷が、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させるかどうかを判定し、
前記印刷ジョブの実行が前記少なくとも1つの印刷ヘッドの前記温度を前記所定の温度範囲の前記上限閾値を超えて上昇させないように、識別された前記熱負荷を低減する是正措置を識別する、
ように構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記コントローラが、
識別された前記熱負荷が、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの前記温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させないときには、是正措置を識別しないように更に構成されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記コントローラが、
識別された前記是正措置を実施する
ように更に構成されている、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記是正措置が、前記印刷ジョブキューの操作である、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記インクジェットプリンタの印刷ゾーン内の温度を低減するために、前記印刷ジョブキュー内の両面印刷ジョブが実行される前に、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブを実行することによって、前記印刷ジョブキューの前記操作を実施する
ように更に構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記印刷ジョブキュー内の両面印刷ジョブの長さを低減することによって、前記印刷ジョブキューの前記操作を実施する
ように更に構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記コントローラが、
前記印刷ヘッドの前記温度が前記温度範囲の前記上限閾値を超える前に前記両面印刷ジョブを停止し、
前記両面印刷ジョブが停止された後に、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブを実行し、
前記片面印刷ジョブの前記実行が終了した後に、前記両面印刷ジョブの実行を再開する
ことによって、前記両面ジョブの前記長さを低減するように更に構成されている、請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記コントローラが、
前記少なくとも1つの印刷ヘッドに対する前記熱負荷のバランスをとるように、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブ及び両面印刷ジョブを編成する
ことによって、前記印刷ジョブキューの前記操作を実施するように更に構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記コントローラが、印刷ジョブパラメータを変更することによって、前記是正措置を実施するように更に構成されている、請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
変更された前記印刷ジョブパラメータが、媒体速度である、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
インクジェットプリンタを動作させる方法であって、
印刷ジョブキュー内の印刷ジョブの実行前に、少なくとも1つの印刷ヘッドに対する熱負荷を識別することであって、前記熱負荷が、前記印刷ジョブのための印刷ジョブパラメータ、前記印刷ジョブのためのインク画像コンテンツデータ、及び前記プリンタ内の環境条件測定値を使用することによって識別される、ことと、
識別された前記熱負荷が、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させるかどうかを判定することと、
前記印刷ジョブが実行されるときに、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの前記温度が前記所定の温度範囲の前記上限閾値を超えて上昇しないように、識別された前記熱負荷を低減する是正措置を識別することと、
を含む、方法。
【請求項12】
識別された前記熱負荷が、前記少なくとも1つの印刷ヘッドの前記温度を前記所定の温度範囲の前記上限閾値を超えて上昇させないときには、是正措置を識別しないこと
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
識別された前記是正措置を実施すること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
識別された前記是正措置の前記実施が、
前記印刷ジョブキューを操作すること
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記印刷ジョブキューの前記操作が、
印刷ゾーン内の温度を低減するために、前記印刷ジョブキュー内の両面印刷ジョブが実行される前に、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブを実行すること
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記印刷ジョブキューの前記操作が、
前記印刷ジョブキュー内の両面印刷ジョブの長さを低減すること
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記両面ジョブの前記長さを前記低減することが、
前記印刷ヘッドの前記温度が前記温度範囲の前記上限閾値を超える前に前記両面印刷ジョブを停止することと、
前記両面印刷ジョブが停止された後に、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブを実行することと、
前記片面印刷ジョブの前記実行が終了した後に、前記両面印刷ジョブの実行を再開することと、
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記印刷ジョブキューの前記操作が、
前記少なくとも1つの印刷ヘッドに対する前記熱負荷のバランスをとるように、前記印刷ジョブキュー内の片面印刷ジョブ及び両面印刷ジョブを編成すること
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記是正措置を前記実施することが、
印刷ジョブパラメータを変更すること
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記印刷ジョブパラメータを前記変更することが、
前記印刷ジョブの前記実行中に、印刷されている媒体の媒体速度を変更すること
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、媒体上にインク画像を生成するデバイスに関し、より詳細には、印刷中にそのようなデバイスの印刷ヘッド温度を調節することに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタとしても知られるインクジェット画像化デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受容表面上に形成する。印刷ヘッドは、アレイ状に配置された複数のインクジェットを含む。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合された熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、画像に対応するデジタルデータコンテンツに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、インクチャンバ内に膨張することによって発射信号に応答して、画像受容表面上にインク滴を噴射し、発射信号を生成するために使用されたデジタル画像コンテンツに対応するインク画像を形成する。画像受容表面は、通常、媒体材料の連続ウェブ又は一連の媒体シートである。
【0003】
色画像を生成するために使用されるインクジェットプリンタは、典型的には、複数の印刷ヘッドアセンブリを含む。各印刷ヘッドアセンブリは、典型的には、単一色のインクを噴射する1つ以上の印刷ヘッドを含む。典型的なインクジェットカラープリンタでは、4つの印刷ヘッドアセンブリが、プロセス方向において位置付けられ、各印刷ヘッドアセンブリが、異なる色のインクを噴射する。最も頻繁に使用される4つのインク色は、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックである。そのようなプリンタの一般的な名前は、CMYKカラープリンタである。一部のCMYKプリンタは、各色のインクを印刷する2つの印刷ヘッドアセンブリを有する。同じ色のインクを印刷する印刷ヘッドアセンブリは、クロスプロセス方向において隣接する印刷ジェット間の距離の1/2だけ互いにオフセットされており、2つのアセンブリにある印刷ヘッドによって噴射されるインクの色のラインの、1インチ当たりの画素数の密度を2倍にする。本明細書で使用するとき、「プロセス方向」という用語は、プリンタ内の印刷ヘッドを通過するときの画像受容表面の移動の方向を意味し、「クロスプロセス方向」という用語は、画像受容表面の平面内でプロセス方向に対して垂直な方向を意味する。
【0004】
カラーインクジェットプリンタの画像品質は、インクの化学的性質、印刷ヘッド技術、インク滴の近傍における熱、印刷プロセス設定点、空気流、並びにインクと媒体との拡散及び乾燥の相互作用などの多くの要因に依存する。画像品質を低下させる1つの問題は、印刷ジョブ中の印刷ヘッド温度の調節である。印刷ヘッドの温度は、一部のインクの特性及び安定性に悪影響を与えるレベルに達する場合がある。第2の面の印刷のために印刷ゾーンに戻る前に媒体の印刷された面を乾燥させることは、媒体の温度及びプリンタ内の周囲温度の両方を上昇させ得るので、両面印刷ジョブが印刷されているときに、印刷ヘッド温度は急速に上がる場合がある。このタイプの媒体は、第2の面の印刷のために印刷ゾーンに戻る前に熱を十分に放散しないので、両面印刷ジョブが重いストック媒体を使用するときに、この問題は悪化する場合がある。本明細書で使用される場合、「重いストック媒体」という用語は、少なくとも200グラム/平方メートル(gsm)の質量を有する媒体を意味する。印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように、印刷ヘッド温度を調節することができることが有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
カラーインクジェットプリンタは、印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように、印刷ヘッド温度を調節するように構成されている。カラーインクジェットプリンタは、少なくとも1つの印刷ヘッドと、少なくとも1つの印刷ヘッド及び印刷ジョブキューに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブのための印刷ジョブパラメータ、印刷ジョブのためのインク画像コンテンツデータ、及びプリンタ内のセンサから受信された環境条件測定値を使用して、印刷ジョブの実行中に生じる少なくとも1つの印刷ヘッドに対する熱負荷を識別し、識別された熱負荷が、少なくとも1つの印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させるかどうかを判定し、印刷ジョブの実行が少なくとも1つの印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させないように、識別された熱負荷を低減する是正措置を識別する、ように構成されている。
【0006】
カラーインクジェットプリンタを動作させる方法は、印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように、印刷ヘッド温度を調節する。カラーインクジェットプリンタを動作させる方法は、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブの実行前に、少なくとも1つの印刷ヘッドに対する熱負荷を識別することであって、熱負荷が、印刷ジョブのための印刷ジョブパラメータ、印刷ジョブのためのインク画像コンテンツデータ、及びプリンタ内の環境条件測定値を使用することによって識別される、ことと、識別された熱負荷が、少なくとも1つの印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させるかどうかを判定することと、印刷ジョブが実行されるときに、少なくとも1つの印刷ヘッドの温度が所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇しないように、識別された熱負荷を低減する是正措置を識別することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
印刷ヘッド温度がインク安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように印刷ヘッド温度を調節するカラーインクジェットプリンタ及びカラーインクジェットプリンタ動作方法の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して解釈される以下の説明で説明される。
【
図1】カラーインクジェットプリンタの概略図であり、このカラーインクジェットプリンタは、印刷ヘッド冷却器と、媒体冷却器と、印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように印刷ヘッド温度を調節するためのフィードフォワードシステムとを備えて構成されている。
【
図3】オーバーレイ粒状性を評価するために印刷されたターゲットである。
【
図4】異なる温度で動作する異なる印刷ヘッドについて、
図3のターゲットの印刷から取得されたオーバーレイ粒状性の測定値を示すグラフである。
【
図5】異なる温度で動作する印刷ヘッドから吐出される異なる色のインクに対する動作不能なインクジェット速度を示す表である。
【
図6】
図1のプリンタを動作させて、印刷ジョブを実行することによって生じる熱負荷を評価し、予測される熱負荷が印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限を超えて上昇させる可能性が高いときに是正措置を実施するプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示したプリンタ及びプリンタの動作方法のための環境、並びにプリンタ及びプリンタの動作方法の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために図面を通じて使用されている。本明細書で使用するとき、「プリンタ」という単語は、インク滴を媒体上に噴射してインク画像を形成する任意の装置を包含する。
【0009】
以下に説明するプリンタ及び方法は、印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器を備えて構成されており、コントローラは、フィードフォワード制御ループを使用して、印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器を動作させて、印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように印刷ヘッド温度を調節するように構成されている。環境条件測定値と共に、入ってくるジョブのインク画像コンテンツデータ及び印刷ジョブパラメータを分析することによって、印刷ヘッド熱負荷を予測し、潜在的な印刷ヘッド温度変化を識別することができる。これらの将来の条件を知ることにより、コントローラは、印刷ジョブが実行される前に、印刷ジョブごとに印刷ヘッド温度を適切な範囲内に維持するための適切な改善策を選択することが可能となる。
【0010】
プリンタ及び方法は、印刷ジョブの実行のための適切な温度範囲に違反する印刷ヘッド温度から生じるプリンタのハードフォールト/シャットダウンを防止するための措置をとることができる。例えば、オペレータへの警告、媒体速度の減速、印刷ジョブの一時停止、あるいは印刷ヘッド冷却器若しくは媒体冷却器又は両方の冷却器の能動的動作を使用して、印刷ヘッド温度を印刷ジョブの適切な温度範囲内に保つことができる。一部の印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器は、冷却器の熱質量に起因して、印刷ヘッド冷却又は媒体冷却に十分な熱状態を達成するために時間を必要とする。キュー内の未来の印刷ジョブに目を向けることによって、印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器の使用時間を予測することができ、印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器の始動手順を事前に実施し、そのため、印刷ヘッド冷却器及び媒体冷却器が予測された時間には準備ができている。
【0011】
印刷ヘッド温度を調節するための他の措置は、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブの順序を変更するためにオペレータにメッセージを表示することを含む。例えば、長い両面ジョブを複数の構成要素に分割し、片面印刷ジョブを両面ジョブ構成要素に混入させることができる。印刷ジョブキュー内の印刷ジョブのそのような管理は、プリンタ内の印刷ヘッドが受ける熱条件を緩和するのに役立ち、そのため、印刷ヘッドに対する熱負荷は、印刷ヘッド温度調節システムの能力を超えない。
【0012】
図1は、印刷ヘッド温度がインクの安定性に寄与する範囲内に留まり、インク画像印刷中にインクの所望の特性を保持するように、印刷ヘッド温度を調節するように構成されている高速カラーインクジェットプリンタ10を示す。例示されるように、プリンタ10は、媒体シート供給部S
1又はS
2のうちの1つから取り出された媒体シートの表面上にインク画像を直接形成するプリンタであり、シートSは、1つ以上のアクチュエータ40を動作させるコントローラ80によってプリンタ10を通って移動され、アクチュエータ40は、コンベヤ52のローラ又は少なくとも1つの駆動ローラに動作可能に接続されており、コンベヤ52は、プリンタの印刷ゾーンPZ(
図2に図示)を通過する媒体搬送部42の一部分を備える。一実施形態では、各印刷ヘッドモジュールは、プリンタによって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有するたった1つの印刷ヘッドを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、プリンタが印刷することができるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にするずらされた印刷ヘッドのアレイ状に配置されている。加えて、モジュール内、又はモジュール間の印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に噴射された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。プリンタ10は、たった2つの媒体シート供給部を伴って描写されているが、プリンタは、各々が異なる種類又はサイズの媒体を含む、3つ以上のシート供給部で構成することができる。
【0013】
図1のプリンタ10における印刷ゾーンPZを
図2に示す。印刷ゾーンPZは、シートがプロセス方向において通過する最初のインクジェットから、シートがプロセス方向において通過する最後のインクジェットまでの距離と等しいプロセス方向における長さを有し、クロスプロセス方向において互いに真向かいにある、印刷ゾーンの両側の最も外側にあるインクジェット間の最大距離である幅を有する。
図2に示す各印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34Dは、それぞれ、印刷ヘッドキャリアプレート316A、316B、316C、及び316Dのうちの1つに取り付けられた3つの印刷ヘッド204を有する。
【0014】
図1に示すように、印刷された画像は、インク画像がシートS上に印刷された後、画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、インク画像を加熱し、画像をウェブに少なくとも部分的に固定するために、赤外線加熱器、加熱空気送風機、エアリターン、又はこれらの構成要素の組み合わせを含むことができる。赤外線加熱器は、ウェブの表面上の印刷された画像に赤外線熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱空気送風機は、扇風機、又は他の加圧空気源を使用して、インク上に加熱空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、プリンタ内の他の構成要素との乾燥機空気流の干渉を低減する。
【0015】
基材が印刷され、乾燥機30によってインク画像が基材に固定された後に、媒体搬送部42からシートを受けるように二重経路72が提供される。基板は、ローラの回転によって、印刷ヘッドを通過する印刷ゾーン内の媒体移動の方向と反対の方向に移動される。二重経路72内の位置76において、基材は、媒体搬送部42によって運ばれている媒体ストリームに合流することができるように、反転され得る。コントローラ80は、シートを選択的にひっくり返すように構成されている。すなわち、コントローラ80は、シートの裏面を印刷できるようにシートを反転させるためにアクチュエータを動作させることができるか、又はシートの印刷された面を再び印刷できるように、シートを反転させることなくシートが搬送経路に戻されるように、アクチュエータを動作させることができる。枢動部材88の移動により、二重経路72へのアクセスが提供される。枢動部材88の回転は、枢動部材88に動作可能に接続されたアクチュエータ40を選択的に動作させるコントローラ80によって制御される。
図1に示すように枢動部材88が反時計回りに回転されるとき、媒体搬送部42からの基材は、二重経路72に方向転換される。枢動部材88を方向転換位置から時計回り方向に回転させることにより、二重経路72へのアクセスが閉じられるため、媒体搬送部上の基材は、容器56に移動する。別の枢動部材86が、二重経路72にある位置76と媒体搬送部42との間に位置付けられている。コントローラ80が、アクチュエータを動作させて、枢動部材86を反時計回り方向に回転させると、二重経路72からの基材は、媒体搬送部42上でジョブストリームに合流する。枢動部材86を時計回り方向に回転させることにより、媒体搬送部42への二重経路アクセスが閉じられる。
【0016】
図1に更に示すように、二重経路72に方向転換されなかった印刷済み媒体シートSは、媒体搬送部によって、これらのシートが収集されるシート容器56に運ばれる。印刷されたシートが容器56に到達する前に、これらのシートは、光学センサ84を通り過ぎる。光学センサ84は、印刷されたシートの画像データを生成し、この画像データは、コントローラ80によって分析される。コントローラ80は、印刷ジョブの媒体シート上の印刷画像における縞を検出するように構成されている。加えて、印刷ジョブ内の媒体シートのいくつかには、印刷ジョブ中に所定の間隔でテストパターン画像が印刷される。これらのテストパターン画像は、コントローラ80によって分析されて、存在する場合、テストパターンにインクを噴射するように動作された、いずれのインクジェットが実際にインクを噴射したかを判定し、インクジェットがインク滴を噴射した場合、インク滴が適切な質量でその意図された位置に降着したかどうかを判定する。噴射すると想定されたインク滴を噴射しない、又は正しい質量を有していない滴を噴射する、若しくは誤った位置に降着する任意のインクジェットは、本明細書では動作不能なインクジェットと呼ばれる。コントローラは、コントローラに動作可能に接続されたデータベース92に、動作不能なインクジェットを識別するデータを記憶することができる。テストパターンが印刷されたこれらのシートは、ランタイム欠落インクジェット(run-time missing inkjet、RTMJ)シートと呼ばれることがあり、これらのシートは、印刷ジョブの出力から廃棄される。ユーザは、ユーザインターフェース50を動作させて、動作不能なインクジェットの数及び動作不能なインクジェットが位置する印刷ヘッドを特定するインターフェース上に表示されるレポートを取得することができる。光学センサは、デジタルカメラ、LEDのアレイ、及び光検出器、又は通過表面の画像データを生成するように構成された他のデバイスとすることができる。すでに述べたように、媒体搬送部はまた、シートを反転させ、そのシートを、印刷ヘッドモジュールの前に媒体搬送部に戻すことができ、その結果、シートの反対側を印刷することができる二重経路を含む。
図1は、シート容器に収集されている印刷済みシートを示しているが、これらのシートは、媒体シートの折り畳み、丁合、綴じ、及びステープル留めなどの作業を実施する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けることができる。
【0017】
機械又はプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素及び機能の動作及び制御は、コントローラ又は電子サブシステム(electronic subsystem、ESS)80の助けを借りて実施される。ESS又はコントローラ80’は、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって印刷ヘッド)、アクチュエータ40、及び乾燥機30の構成要素に動作可能に接続されている。ESS又はコントローラ80は、例えば、電子データ記憶装置を備えた中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する自己完結型コンピュータである。ESS又はコントローラ80は、例えば、センサ入力及び制御回路、並びに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続(図示せず)などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間のインク画像コンテンツデータの流れを読み出し、捕捉し、準備し、かつ管理する。したがって、ESS又はコントローラ80は、印刷プロセスを含む他の全ての機械サブシステム及び機能を操作及び制御するための主要なマルチタスクプロセッサである。
【0018】
コントローラ80は、プログラム命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装することができる。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、メモリに記憶された命令及びデータ、並びにインターフェース回路は、以下に説明される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供され得るか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供され得る。回路の各々は、別個のプロセッサで実装することができるか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装することができる。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に説明される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0019】
プリンタ10は、媒体冷却器96及び印刷ヘッド冷却器98を備えて構成されている。これらの構成要素の各々は、コントローラ80に動作可能に接続される。これらの冷却器96及び98は、ファンなどの強制空冷、水又は他の熱吸収液体の循環などの空気力学的冷却、ヒートシンク又はフィン、ペルチェデバイスによって提供されるような熱電冷却、冷蔵ユニットなどを提供する構成要素を含むことができるが、これらに限定されない。コントローラ80は、印刷ジョブキュー、プリンタ構成要素、媒体冷却器96、及び印刷ヘッド冷却器98を動作及び制御して、印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドの温度を調節するために、以下でより完全に説明されるフィードフォワード方法を使用する。
【0020】
動作において、データベース92は、印刷ジョブが送信される印刷ジョブキューを含む。本明細書で使用される場合、「印刷ジョブ」という用語は、プリンタによって生成されるインク画像のためのインク画像コンテンツデータと、インク画像を生成するためにプリンタが動作される印刷ジョブパラメータとを意味する。インク画像コンテンツデータは、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80に送信される。インク画像コンテンツデータは、モジュール34A~34D内の印刷ヘッドに送出されるインクジェット噴射器発射信号を生成するように処理される。インク画像コンテンツデータと共に、コントローラはまた、印刷ジョブを実行するための媒体の重量、媒体の寸法、印刷速度、媒体の種類、各シートの各面上に生成されるインク領域被覆率、各シートの各面上に生成される画像の位置、媒体の色、繊維状媒体の媒体繊維配向、印刷ゾーンの温度及び湿度、媒体の含水量、媒体製造業者者などを識別する印刷ジョブパラメータを受信する。本文献で使用するとき、「印刷ジョブパラメータ」という用語は、印刷ジョブのための非画像コンテンツデータを意味し、「インク画像コンテンツデータ」という用語は、媒体シート上に印刷されるインク画像における画素を形成する各噴射されたインク滴の色及び量を識別するデジタルデータを意味する。印刷ジョブは、フィードフォワードシステムが印刷ジョブの実行によって生成される熱負荷を予測し、予測された熱負荷が、プリンタ内の任意の印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させるかどうかを判定するまで、印刷ジョブキューから解放されない。熱負荷が、印刷ヘッド温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させない場合、印刷ジョブは実行のために解放され得る。予測された熱負荷が、印刷ヘッド温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させる場合、印刷ジョブが実行のために解放され得る前に、改善策が識別される。識別された改善策は、印刷ジョブが実行される前にとられるか、又は印刷ジョブの実行中に実施される。
【0021】
画像品質の1つの尺度は、オーバーレイ粒状性である。オーバーレイ粒状性は、
図3のターゲットを印刷することによって測定され得る。ターゲット内の各正方形は、ターゲット内に異なる色相を生成する0~80%の範囲の様々な拡散度を有するCMYK色の組み合わせである。これらの正方形のうちの1つの中で、高周波粒状性測定(VNHF)が、1インチ×1インチの正方形などのより小さい正方形のグループに対して行われ、これらの測定値の二乗平均平方根(RMS)値が計算される。このRMS測定値は、印刷のオーバーレイ粒状性を示す。約1.6のRMSオーバーレイ粒状性測定値が良好であると考えられる。オーバーレイ粒状性の根本的な原因は、ウェット・オン・ウェットインク滴に作用するせん断力である。せん断力は、液滴をこすって不鮮明にするか、又は拡散させることがあり、これが粒状性を生じさせる。この粒状性は、インク滴がオフセットコーティングされた光沢ストックなどの非吸収性媒体上に吐出されるときに更に悪化する。より低い印刷ヘッド温度で動作する印刷ヘッドは、より低い温度でインク滴を吐出し、これにより、インク滴はより高い粘度を有し、したがって、せん断力の影響を受けにくくなる。その結果、インク滴は、それらが乾燥するときにそれらの形状を保持し、これは、画素の完全性を劣化させるほど十分に拡散するのではなく、適切な画素を生成する。
図4のグラフは、特定のタイプの印刷ヘッドのオーバーレイ粒状性と印刷ヘッド温度との間の関係を示す。このグラフは、印刷ヘッドが37℃の設定点、34℃の設定点、及び32℃の設定点で動作している印刷について行われたRMSオーバーレイ粒状性測定値を示す。印刷ヘッドを37℃の設定点で動作させ、印刷ヘッドを32℃の設定点で動作させた場合のRMSオーバーレイ粒状性測定値の変化は0.15であり、これは人間が観察可能である。より低温の印刷ヘッド温度のさらなる利点は、インク安定性の堅牢性の改善である。
図5の表は、様々な印刷条件下での低被覆率領域における各インク色についての動作不能なインクジェットの数が、印刷ヘッド温度が37℃であるときの色についての動作不能なインクジェットの数よりも、32℃という低い印刷ヘッド温度において少ないことを示している。しかしながら、前述したように、重いストックを印刷する両面印刷ジョブなど、一部のタイプの媒体又は印刷ジョブを印刷するときに印刷ヘッド温度を維持することは、それらが熱を容易に放散することができないために問題である。したがって、フィードフォワードシステム及び方法が、この問題に対処するために開発された。
【0022】
印刷ヘッド温度制御に影響を及ぼすパラメータは、冷却メカニズム及び加熱メカニズムの両方を伴う。印刷ヘッドの内部加熱器が印刷ヘッドを周囲空気温度を超えて加熱するため、冷却メカニズムは、周囲空気温度を含む。加えて、片面印刷中に印刷ゾーンを通過する媒体シートはほぼ室温であるため、片面印刷は冷却メカニズムである。他の冷却メカニズムは、吐出されるインクの量、並びに印刷ヘッド冷却器98及び媒体冷却器96の動作を含む。加熱メカニズムは、媒体が第1の印刷面の乾燥中に熱を吸収し、印刷ゾーンへの戻り移動中に戻り経路内のプリンタ構成要素から熱を吸収し、印刷ヘッドの内部加熱器の動作から熱を吸収するため、両面印刷を含む。印刷ヘッド温度を比較的狭い範囲に維持するためには、加熱メカニズムと冷却メカニズムとのバランスをとるべきである。印刷ジョブ中に生じる条件は、印刷ヘッドに対する熱負荷を変化させ得る。本明細書で使用される場合、「熱負荷」及び「正味の熱流」という用語は、印刷ジョブの実行中に印刷ジョブの加熱メカニズムによって生成される熱量と、印刷ジョブの冷却メカニズムによって生成される冷却量との合計を意味する。
【0023】
フィードフォワードシステム及び方法は、印刷ヘッド内の加熱器が動作していないときに正味の熱流が常に0又は負であるように設計されている。印刷ヘッド内の内部加熱器は、様々な外部条件によって生じる変動を打ち消し、印刷ヘッドへの有効な0熱流を維持するように制御される。印刷ヘッドはかなりの熱質量を有するので、瞬間的な正味の正の熱流は印刷ヘッドの温度を著しく上昇させない。一般に、印刷ヘッドに対する熱負荷を印刷ヘッドの熱質量で除算することにより、印刷ヘッド温度の潜在的な変化率の推定値が提供される。この識別された温度変化率を使用して、正の熱負荷が印刷ヘッド温度を画像品質に潜在的に有害なレベルまで上昇させる可能性が高いときを判定することができる。典型的なインクジェットプリンタでは、不都合な印刷ヘッド温度上昇の期間は、数十秒から数分かかる。したがって、「熱負荷」及び「正味の熱流」は、数十秒から数分の時間窓を用いて時間平均された方法で評価される。
【0024】
先に述べた利点を取得するために印刷ヘッド動作温度が37℃から32℃に下げられるときに、印刷ゾーンにおける冷却能力は減少し、加熱能力は増加する。コーティングされた媒体の両面印刷の延長された実行などの一部の場合において、正味の熱流は正になり、印刷ヘッド内部の加熱器の動作を、印刷ヘッドへの熱の正の流れを打ち消すために十分に低減することができない。したがって、(1)プリンタオペレータに警告を表示することができるように、(2)これらのストレス状態につながる条件を変更して熱負荷を許容レベルまで低減することができるように、又は(3)印刷ヘッド及び媒体冷却器を起動させて印刷ヘッドへの熱流を補償することができるように、印刷ヘッドへの正の熱流をもたらすストレス状態を予測する必要がある。
【0025】
以下に説明されるフィードフォワードシステム及び方法では、印刷ヘッドに対する熱負荷は、印刷キュー内の印刷ジョブがプリンタによる実行のために解放される前に、これらの印刷ジョブを分析することによって識別される。印刷ジョブのタイプ(片面又は両面)、インク被覆率の量、媒体タイプ、キュー内の印刷ジョブの混合、及び将来の印刷ジョブのシーケンスを分析することによって、印刷ヘッドに対する熱負荷を予測し、最適化することができる。このシステム及び方法への入力は、周囲空気温度、湿度、用紙温度及び湿度、インク温度、印刷ヘッド温度、印刷ヘッド加熱器のデューティサイクル、乾燥機の温度、両面印刷において印刷ゾーンに戻る媒体の温度などの環境条件測定値を含む。これらの環境条件測定値は、プリンタ内のセンサからコントローラによって受信される。印刷ヘッド加熱器のデューティサイクルを使用して、印刷ジョブの実行時間の前に熱負荷モデルの様々な側面を較正することができる。熱負荷モデルの最も重要な入力は、環境条件測定値と共に、近い将来に実施される印刷ジョブキュー内の印刷ジョブのインク画像コンテンツデータと印刷ジョブパラメータとである。印刷ヘッドに対する熱負荷にとって重要な印刷ジョブパラメータは、印刷ジョブのタイプ(片面又は両面)、基材重量、及び基材タイプ(コーティングされている、コーティングされていない)を含む。インク画像コンテンツデータを分析して、各画像の各色分解について、インク使用量(淡、中、及び濃)及びインク領域被覆率を識別する。システム及び方法の出力は、近い将来の印刷ヘッドに対する熱負荷の予測であり、その熱負荷予測は、印刷ヘッド加熱器の動作から利用可能な加熱能力と比較される。
【0026】
ここで、いくつかの例を論じる。75°F以下の温度を有する周囲環境において動作するプリンタによって実施される片面印刷ジョブの場合、印刷ヘッドによって吐出されるインクは印刷ヘッドとほぼ同じ温度であるため、印刷ヘッドがその温度を1度以上上昇させるのに十分な正味の熱流を吸収する確率は低く、そのため、印刷ゾーンを通ったその遷移間に印刷されたシートから印刷ヘッドへの実質的な熱量が流れない。基材と、媒体が印刷ヘッドを通過する際に媒体と共に引きずられる空気との温度は、印刷ヘッドの温度よりも低いため、片面印刷ジョブは、印刷ヘッドから熱を奪うことになり、そのため、印刷ヘッドに対する負の熱負荷となる。この正味の負の外部熱負荷状況では、印刷ヘッド内部加熱器の加熱電力は、負の外部熱負荷を補償するように調整され、印刷ヘッド温度を狭い所定の温度範囲内に維持しようとする。媒体が印刷ヘッド温度を超えた温度に加熱されない限り、又は乾燥機が印刷ヘッド温度を大幅に超えた温度で動作しない限り、印刷ヘッドに対する熱負荷を上昇させ、かつその温度を1度以上上昇させる外部熱源は存在しない。印刷ジョブが両面ジョブになるときに、システム及び方法は、乾燥機を出る媒体の温度を判定し、印刷ジョブパラメータによって識別される媒体タイプの熱放散率と、加熱された媒体シートを二重経路を通して媒体速度で印刷ゾーンに戻すのに必要な時間と、戻り媒体経路内の周囲温度とを使用して、媒体が印刷ゾーンに再び入るときの媒体の温度と、第2のパス中に生じる印刷中に生じる任意の温度変化とを識別する。この識別された温度が印刷ヘッド温度を超える場合、システム及び方法は、印刷ヘッドの熱質量の熱吸収率及び媒体シートからの正味の正の熱流を使用して、印刷ヘッドがその温度を少なくとも1度上昇させるのに十分な熱を吸収するのに必要な時間を識別する。この時間は、秒若しくは分などの典型的な時間単位で測定することができるか、又は第2の面の印刷のために印刷ゾーンを通過するシートの数の関数として測定することができる。この識別された期間は、是正措置を評価し、1度以上の印刷ヘッド温度上昇を防止するための適切な是正措置を選択するために使用される。本明細書で使用される場合、「是正措置」という用語は、1度以上の印刷ヘッド温度上昇を防止するのに十分な、プリンタ内の印刷ヘッドに対する予測熱負荷を低減するためにとられる制御動作を意味する。
【0027】
とることができる是正措置は多数ある。1つには、識別された期間が、印刷ヘッドへの正味の正の熱流が温度上昇を防止するのに十分に低減されるには短すぎる場合、信号が生成されて、印刷ジョブの実行中にハードシャットダウンが生じることをオペレータに注意を促す。この警告信号は、印刷ジョブが開始される前に生成される。別の措置は、印刷ジョブの実行が印刷ヘッドの温度を過度に上昇させないように、オペレータが印刷ヘッドに対する熱負荷をどのように低減することができるかを識別するメッセージであり得る。オペレータによって実施され得る熱負荷低減の一例は、印刷ジョブキューの操作である。本明細書で使用される場合、「印刷ジョブキューの操作」という用語は、印刷ジョブの実行中の印刷ヘッドに対する潜在的な熱負荷を低減するための、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブの再編成又は混合を意味する。例えば、印刷ジョブキューの操作は、両面印刷ジョブが開始される前に印刷ゾーン内の温度を低下させるために、両面ジョブが実行される前に印刷ジョブキュー内の片面ジョブを実行することを含む。別の操作は、印刷ヘッド温度が温度範囲の上限閾値を超える前に両面ジョブを停止し、片面印刷ジョブを実行し、片面ジョブの出力を異なる出力容器に振り分け、次いで両面印刷ジョブを再開し、両面印刷ジョブの出力を、両面印刷ジョブの第1の部分が向けられた出力容器に向けることによって、長い両面印刷ジョブの長さを低減することを伴う。他の印刷ジョブキュー操作は、片面印刷ジョブと両面印刷ジョブとを混合して、印刷ジョブキュー内の任意の印刷ジョブを実施する前に印刷ヘッドに対する熱負荷のバランスをとることを含む。この印刷ジョブの混合は、オペレータによって行うことができるか、又はプリンタコントローラが、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブを自動的に再編成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、プリンタのコントローラは、実行されるときに、コントローラにこれらのジョブキュー操作動作のうちの1つ以上を実施させるプログラムされた命令で構成される。
【0028】
コントローラはまた、内部加熱器が印刷ヘッドに提供する熱の量を低減するために、内部印刷ヘッド加熱器のデューティサイクルを調節するように構成することができる。コントローラによって実施され得る別の是正措置は、プリンタを通る媒体の速度などの印刷ジョブパラメータの変更である。例えば、プリンタを通る媒体の速度を低減することによって、戻された印刷されたシートの温度を、印刷ヘッドに正味の正の熱流を提供しないレベルまで低減するのに十分であるように、両面印刷ジョブにおける印刷された媒体を印刷ゾーンに戻すための時間を増加させることができる。そのような是正措置は、ハードシャットダウンを防止することができる。コントローラ80がとるように構成され得る別の是正措置は、印刷ヘッド温度が上昇し始める前に、印刷ヘッド冷却器98若しくは媒体冷却器96、又は両方の冷却器を、それらが、印刷ヘッド、二重経路内の媒体、又は両方を冷却するための動作条件に達するように起動することである。冷却器の一方又は両方のこの起動は、冷却器の各々におけるフィードバックメカニズムが、識別された設定点の周りの適切な範囲内で冷却器を動作させるように、印刷ヘッド又は媒体温度の設定点の識別を含むことができる。
【0029】
図6は、インク画像コンテンツデータ、印刷ジョブパラメータ、及び環境条件測定値を分析して、印刷ジョブが印刷ヘッドにかける熱負荷を識別し、印刷ヘッドに対する予測熱負荷を低減するためにとることができる是正措置を評価するプロセス600の流れ図を示す。プロセス600は、例示目的のために、
図1のプリンタ10を用いて実施されるものとして説明される。
【0030】
プリンタ10を動作させるプロセス600は、印刷ジョブで印刷されるインク画像の画像コンテンツデータ、印刷ジョブパラメータ、及び環境条件測定値の受信から始まる(ブロック604)。印刷ジョブパラメータ及び環境測定値を分析して、印刷ジョブが印刷ヘッドにかける熱負荷を識別する(ブロック608)。印刷ジョブ内の画像のインク画像コンテンツデータ及び環境測定値を分析して、画像の印刷中の識別された熱負荷の変化を識別し(ブロック612)、識別された熱負荷及び変化を組み合わせて、印刷ヘッドに対する全体的な熱負荷を識別する(616)。印刷ヘッドに対する全体的な熱負荷が、任意の印刷ヘッドの温度を所定の温度範囲の上限閾値を超えて上昇させない場合(ブロック620)、印刷ジョブが実行される(ブロック624)。全体的な熱負荷によって印刷ヘッド温度変化が所定の温度範囲の上限閾値を超える場合、印刷ジョブキュー内の印刷ジョブを分析して、印刷ヘッド温度変化が所定の温度範囲の上限閾値未満となるように、印刷ジョブキューの操作又は印刷速度などの印刷ジョブパラメータの修正が熱負荷を低減することができるかどうかを判定する(ブロック628)。印刷ヘッド温度変化が所定の温度範囲の上限閾値を下回ったままであるように熱負荷を低減することができる場合、印刷キューが操作されるか、又は印刷ジョブパラメータが修正され(ブロック632)、印刷ジョブが実行される(ブロック624)。印刷ジョブキュー操作又は印刷ジョブパラメータ変更によって印刷ヘッド温度変化が所定の温度範囲の上限閾値を下回ったままであるように熱負荷を低減することができない場合、印刷ヘッドが、印刷ヘッドの設定点付近の所定の温度範囲の上限閾値に近づき始める時点が識別される(ブロック636)。識別された時間を使用して、印刷ヘッド冷却器又は媒体冷却器のいずれか又は両方の起動時間を判定し(ブロック644)、印刷ジョブが実行される(ブロック624)。印刷ジョブが終了するときに、印刷ジョブキューが空でない限り(ブロック652)、プロセスが再開する(ブロック604)。その時点で、プロセスは終了する。
【0031】
様々な上で開示されるもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の「特許請求の範囲」によって包含されることも意図される、様々な現在予期されない代替、修正、変形、又は改善が、後に当業者によって行われ得る。
【外国語明細書】